• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E04B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E04B
管理番号 1322289
異議申立番号 異議2016-700024  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-14 
確定日 2016-10-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5749087号発明「コンクリート充填鋼管柱」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5749087号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第5749087号の請求項3に係る特許を維持する。 特許第5749087号の請求項1、2に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5749084号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成23年6月8日に特許出願され、平成27年5月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人株式会社レクレアル(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年4月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月6日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正」という。)があり、これらに対して、申立人より同年7月29日に意見書が提出されたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正内容
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記補強手段が、前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、
前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅以上とされている請求項1または請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱。」と記載されているのを、
「水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、
前記鋼管仕口部に設けられたダイアフラムと、
前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、
前記柱鋼管の内壁面に設けられると共に前記ダイアフラムに端部が接合され、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対して、該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強し、火災時における前記軸方向端部の局部座屈を抑制する補強手段と、
を備え、
前記補強手段が、前記鋼管本体部における前記軸方向中間部には設けられず、前記軸方向端部に設けられ、前記ダイアフラムに端部が溶接されると共に前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、
前記ダイアフラムから前記軸方向中間部側へ延びる前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅の2倍以上とされているコンクリート充填鋼管柱。」に訂正する。

エ 訂正事項4
前記アの訂正事項1(請求項1の削除)に伴い、特許請求の範囲の請求項4に「前記端部補強部材が、前記鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が前記鋼管仕口部から前記鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように該軸方向端部を補強する請求項3に記載のコンクリート充填鋼管柱。」とあるうち、請求項1の記載を引用する請求項3の記載をさらに引用するものについて、独立形式に改め、
「水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、
前記鋼管仕口部に設けられたダイアフラムと、
前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、
前記柱鋼管の内壁面に設けられると共に前記ダイアフラムに接合され、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対し、該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強する補強手段と、
を備え、
前記補強手段が、前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、
前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅以上とされ、
前記端部補強部材が、前記鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が前記鋼管仕口部から前記鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように該軸方向端部を補強するコンクリート充填鋼管柱。」に訂正する。

オ 訂正事項5
前記イの訂正事項2(請求項2の削除)に伴い、同様に、特許請求の範囲の請求項4に「前記端部補強部材が、前記鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が前記鋼管仕口部から前記鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように該軸方向端部を補強する請求項3に記載のコンクリート充填鋼管柱。」とあるうち、請求項2の記載を引用する請求項3の記載をさらに引用するものについて、独立形式に改め、
「水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、
前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、
前記柱鋼管の内壁面に設けられ、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対して該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強し、火災時における前記軸方向端部の局部座屈を抑制する補強手段と、
を備え、
前記補強手段が、前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、
前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅以上とされ、
前記端部補強部材が、前記鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が前記鋼管仕口部から前記鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように該軸方向端部を補強するコンクリート充填鋼管柱。」に訂正する。

カ 訂正事項6
明細書の段落【0007】、【0008】、【0010】にそれぞれ「請求項1」と記載されているのを、「第1態様」に訂正する。
明細書の段落【0010】に「請求項2」と記載(2箇所)されているのを、「第2態様」に訂正する。
明細書の段落【0010】?【0012】にそれぞれ「請求項3」と記載されているのを、「第3態様」に訂正する。
明細書の段落【0012】、【0013】にそれぞれ「請求項4」と記載されているのを、「第4態様」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
ア 訂正事項1及び訂正事項2
上記訂正事項1及び訂正事項2は、訂正前の請求項1及び請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項3
(ア)まず、上記訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2の記載を引用した記載であったものを、請求項2の記載を引用しないものとした上で、請求項1の記載を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

(イ)次に、上記訂正事項3は、補強手段が、ダイアフラムに端部が溶接されること、火災時における軸方向端部の局部座屈を抑制すること、鋼管本体部における軸方向中間部には設けられず、軸方向端部に設けられ、ダイアフラムに端部が溶接される端部補強部材であること、ダイアフラムから軸方向中間部側へ延びる端部補強部材の長さが、鋼管本体部の幅の2倍以上であること、に限定するから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ)上記(イ)の限定事項に関連する記載について、「補強手段」と「ダイアフラム」との関係の根拠として、段落【0024】に「また、縦補強リブ20の上端部は内ダイアフラム18に突き当てられて溶接等で接合されており、当該上端部の回転が拘束されている。これにより、縦補強リブ20の上端部が回転自由の構成と比較して、鋼管上端部12BUに大きな面外剛性が付与されるようになっている。」と記載され、「補強手段」の機能の根拠として、段落【0027】の「図3に示されるように、例えば、火災時に鉄骨梁16が熱膨張によって軸方向(水平方向)へ伸張すると、鋼管仕口部12Aに水平力Fが作用し、鋼管本体部12Bに曲げモーメントMが発生する。・・・この状態で、鉄骨梁16から鋼管仕口部12Aへ水平力Fが作用すると、前述したように鋼管中間部12BMと比較して大きな曲げモーメントが発生する鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの圧縮側(矢印C側)側面に局部座屈Kが発生し易くなる。」、及び段落【0029】に「この対策として本実施形態では、鋼管中間部12BMの面外剛性に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの面外剛性が大きくなるように鋼管本体部12Bが縦補強リブ20によって補強されている。これにより、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの局部座屈Kの発生が抑制される。」と記載され、「端部補強部材」の配置の根拠として、段落【0023】に「具体的には、図2(A)及び図2(B)に示されるように、鋼管本体部12Bにおける鋼管上端部(柱頭部)12BUの4つの内壁面には、端部補強部材としての縦補強リブ20がそれぞれ設けられている。」、及び段落【0024】に「鋼管上端部12BUと同様に、図1に示されるように、鋼管下端部(柱脚部)12BLの4つの側壁は、複数の縦補強リブ20によって補強されている。」、さらに段落【0025】に「一方、鋼管本体部12Bにおける鋼管中間部12BMの内壁面には、縦補強リブ20が設けられていない。」と記載され、端部補強部材の鋼管本体部の軸方向に沿った長さの根拠として、段落【0036】に「従って、局部座屈Kの発生を抑制する観点からすると、縦補強リブ20の長さLはD以上が好ましく、2D以上がより好ましい。」、及び段落【0024】に「また、鋼管本体部12Bの幅(柱せい)をDとしたときに、」と記載され、また、端部補強部材が「ダイアフラムから軸方向中間部側へ延びる」ことの根拠として、図2(A)等を参照すると、端部補強部材が「ダイアフラムから軸方向中間部側へ延びる」ことが明らかである。
よって、上記(イ)の限定事項は、特許明細書に記載されているものと認められる。

(エ)以上のことから、上記訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項4
上記訂正事項4は、訂正前の請求項4が、請求項1又は2の記載を引用する請求項3の記載をさらに引用する記載であったところ、請求項2の記載を引用しないものとした上で、請求項1の記載を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項5
上記訂正事項5は、訂正前の請求項4が、請求項1又は2の記載を引用する請求項3の記載をさらに引用する記載であったところ、請求項1の記載を引用しないものとして、請求項2の記載を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項6
上記訂正事項6は、上記訂正事項1ないし訂正事項5に係る請求項の訂正に伴い、訂正前の請求項1ないし4に関係する記載を実施態様と改めて、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1?4は、請求項1または請求項2の記載を請求項3が引用し、その請求項3の記載を請求項4が引用しているから、一群の請求項である。
したがって、これら訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?5も、一群の請求項である。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に適合する。

(4)本件特許の発明の詳細な説明の訂正について
訂正事項6で訂正する訂正後の段落【0007】,【0008】,【0010】?【0013】は、訂正事項1ないし訂正事項5で訂正した特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5と関係する。
そして、願書に添付した明細書の訂正である訂正事項6と関係する全ての請求項が訂正の対象とされている。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に適合するものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕についての訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正により訂正された訂正請求項3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし3に係る特許に対して、平成28年4月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
「1.本件特許の請求項1?3に係る発明は、刊行物1ないし3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2.本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、刊行物1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、その発明の特許は、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
〈 刊 行 物 一 覧 〉
刊行物1:特開平6-294160号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平7-71088号公報
(前審における検索報告書の提示文献2)
刊行物3:特開平5-125794号公報(甲第4号証)
刊行物4:特開平4-52353号公報(甲第2号証)
刊行物5:特開2005-220698号公報(甲第3号証)」

(3)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
刊行物1には、「【0002】・・・鋼管コンクリート柱と梁の接合部に関しては従来、通しダイヤフラム、内ダイヤフラム、及び外ダイヤフラム形式が用いられた。」、「【0005】・・・梁4のフランジが取りつく鋼管内側に縦リブを設置して、該部位に梁4のフランジを溶接し、コンクリート5を充填する。」、「【0007】円形の孔を搾孔したダイヤフラム3の梁4のフランジを溶接する部位に縦リブ2を溶接した補強治具を、鋼管柱1の梁4のフランジを溶接しようとする部位に溶接する。該部位で鋼管柱1と梁4を溶接して仕口を構成する。しかる後鋼管柱1にコンクリートを充填する。」、「【0009】・・・図3(a)は・・・、(b)は二枚のダイヤフラム3の外側に溶接した例である。」、「【0011】この縦リブは、孔を大きくしたダイヤフラムの耐力の不足分を鋼管の内外抵抗でとるように鋼管を補強したものである。」と記載されている。
また、鋼管柱1は、上下に仕口を、その仕口間に伸びる本体部を有することは明らかである。(一般的には、刊行物2の第1図、刊行物4の第1図または刊行物5の【図1】等に例示されるとおりである。)
以上の記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「梁4を溶接して構成した上下の仕口(接合部)と、仕口間に伸びる本体部と、を有する鋼管柱1と、
仕口に用いられた(内)ダイヤフラム3と、
鋼管柱1に充填されたコンクリートと、
鋼管柱1の内側に溶接されると共にダイヤフラム3の外側に溶接され、孔を大きくしたダイヤフラムの耐力の不足分を鋼管の内外抵抗でとるように鋼管を補強した縦リブ2と、
を備える鋼管コンクリート柱。」

イ 刊行物2
刊行物2には、「【0007】・・・1は柱材主体を構成する角形鋼管で、内部にコンクリート2が充填されている。」、【0008】・・・十字形補強鋼板3がコンクリート充填角形鋼管柱Pの上下端部の柱梁接合部R断面内に溶接接合されればよく、必らずしも柱の全長に亘って設ける必要はなく、・・・」、「【0009】また図9に示すような柱上下端部の局部座屈a′部分に対しても、この部分の角形鋼管1内部に十字形補強鋼板3による補強を施すことによって、局部座屈が生じにくくなる。・・・前記十字形補強鋼板3によって、角形鋼管1の面外変形内部コンクリート2の拘束効果が大になる。」、「【0010】・・・図5は・・・コンクリート充填前における角形鋼管部の組立方法を示し、予め角形鋼管を構成する3枚の鋼板4によって溝形断面材を組立て、これと同時に十字形補強鋼板3を組立て、更にダイヤフラム5を組立てる。・・・最後に前記溝型断面材の開口面を、切り欠き6aを有する鋼板6で閉塞し、溶接するとともに同切り欠き6aを十字形補強鋼板3と係合溶着する。」と記載されている。
また、【図1】及び【図5】をみると、ダイヤフラム5は柱梁接合部R断面内に設けられていることが読み取れ、また角型鋼管1は柱梁接合部R間に本体部を有することが明らかである。さらに上記段落【0010】を参照して【図1】及び【図5】をみると、ダイヤフラム5は、鋼板4及び十字形補強鋼板3に接合されていることが明らかである。
以上の記載によれば、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。
「上下端部の柱梁接合部Rと、柱梁接合部R間に延びる本体部と、を有する角形鋼管1と、
柱梁接合部Rに設けられたダイヤフラム5と、
角型鋼管1の内部に充填されたコンクリートと、
柱上下端部の局部座屈a′部分の角形鋼管1内部に施され、ダイヤフラム5に接合されて、柱梁接合部R断面内に溶接接合されればよく、必ずしも柱全長に亘って設ける必要がない、十字形補強鋼板3を備え、
局部座屈が生じにくくなり、角形鋼管1の面外変形内部コンクリート2の拘束効果が大になる、
コンクリート充填角形鋼管柱P。」

ウ 刊行物3
刊行物3には、「【0007】・・・1は鋼管材を構成する鋼板で、柱端部内面に想定される座屈長さ1.0?1.5D(Dは鋼管材1の直径)に亘って、管軸方向と同管軸と直角方向との2方向に亘って岐出する十字型の補強材2を溶接wするとともに、水平ダイヤフラム3を溶接し、前記鋼板1を組立てて箱型断面の鋼管材Aを組立てる。(図3参照)
施工現場において前記鋼管材A内にコンクリートBを打設して、箱型断面の充填型鋼管コンクリート柱を構成する。(図1及び図2参照)
図中Cは鉄骨梁である。」、「【0008】図示の実施例は前記補強材2によって、充填型鋼管コンクリート柱の柱端における鋼管材Aの各面の面外剛性、強度が増大され、材端の局部座屈が防止され、柱端を補強しない従来のものに比して耐力と靱性とが向上される。・・・」と記載されている。
また、【図1】をみると、柱端部には、鉄骨梁Cを接合した仕口部が形成され、該仕口部の内部には水平ダイヤフラム3が設けられていることが読み取れる。
さらに、鋼管材Aが、上下に仕口部を、その仕口部間に延びる本体部を有することは明らかである(刊行物2の第1図、刊行物4の第1図または刊行物5の【図1】等参照。)。
以上の記載によれば、刊行物3には、次の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されていると認められる。
「鉄骨梁Cが接合される上下の柱端部の仕口部と、仕口部間に延びる本体部と、を有する鋼管材Aと、
仕口部内部に設けられた水平ダイヤフラム3と、
鋼管材A内に打設したコンクリートBと、
柱端部内面に想定される座屈長さ1.0?1.5D(Dは鋼管材1の直径)に亘って溶接wされ、充填型鋼管コンクリート柱の柱端における鋼管材Aの各面の面外剛性、強度を増大し、材端の局部座屈を防止する、管軸方向と同管軸と直角方向との2方向に亘って岐出する十字型の補強材2と、
を備える充填型鋼管コンクリート柱。」

エ 刊行物4
刊行物4には、「長さ方向に複数条のリブを配列することによって、鋼管柱の局部座屈耐力が向上する。即ち、・・・鋼管柱の外面側への曲げ変形を抑え、かつ内面のコンクリートとの拘束効果により、著しい曲げ座屈耐力の向上が期待できる。」(2頁左下欄1?7行)と、記載されている。

オ 刊行物5
刊行物5には、「【0004】・・・曲げモーメントが最も大きくなる柱頭部および柱脚部について、角型鋼管の内面に補強部材を固着配設して、角型鋼管を構成する鋼板を面外補強することにより、鋼板が面外にはらみ出すのを防止する。・・・」、「【0009】・・・曲げモーメントが大きくなる柱頭部1cおよび柱脚部1bでは、角型鋼管10を構成する鋼板10a、10bが面外にはらみ出すのを防止するため、平断面視で十字形を形成するように、対向する鋼板10a、10a間および対向する鋼板10b、10b間にそれぞれリブプレート11(補強部材)が溶接されている。・・・」と、記載されている。

(4)対比・判断
ア 請求項3に係る発明と甲1発明ないし甲3発明を対比すると、甲1発明ないし甲3発明は、少なくとも、請求項3に係る発明の「ダイアフラムから軸方向中間部側へ延びる端部補強部材の鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅の2倍以上とされている」事項を有していない。
また、当該事項は、刊行物4ないし刊行物5、並びに特許異議申立書に添付されたが取消理由に用いていない甲第5号証(特開昭64-75763号公報)及び甲第6号証(「建築構造学大系13 トラス・ラーメン」、北村弘・大沢胖著、株式会社彰国社、昭和41年11月10日第1版第1刷、173-194頁)にも記載されていない。
そして、当該事項により、補強手段の材料コストを削減しつつ、火災時の柱鋼管の上端部及び下端部の局部座屈の発生を抑制することができる、という顕著な効果を奏するものである。
したがって、請求項3に係る発明は、当業者が甲第1号証?甲第5号証に記載された発明及びその他の証拠に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 申立人の意見について
(ア)申立人は、請求項3に係る発明の「ダイアフラムから軸方向中間部側へ延びる端部補強部材の鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅の2倍以上とされている」事項について、(a)刊行物2には、その段落0008の「従って本発明においては十字形補強鋼板3がコンクリート充填角形鋼管柱Pの上下端部の柱梁接合部R断面内に溶接接合されればよく、必らずしも柱の全長に亘って設ける必要はなく、」との記載からみて、十字型補強鋼板3の柱Pの軸線方向に沿った長さが、柱Pの幅の2倍以上とされていることも記載されている旨、(b)刊行物3の段落0003に「一般の充填型鋼管コンクリート柱では材端に特別な補強を施さず、柱の曲げ降伏とほぼ同時にcで示すように局部座屈が発生し、その後の繰返し荷重によって軸方向の縮みが増大するという問題点があった。なお材端部の座屈長Lは1.0?1.5D程度(Dは柱直径)である。」と記載され、建物の安全率を考えて当該範囲よりも広い範囲を補強するよう設計して、座屈長Lが1.0?1.5Dである領域の上限を2.0D以上とすることは、当業者が適宜行う設計的事項に過ぎない旨、主張する。
しかしながら、上記(a)については、刊行物2の段落【0008】の上記記載中、特に「十字形補強鋼板3がコンクリート充填角形鋼管柱Pの上下端部の柱梁接合部R断面内に溶接接合されればよく、」からみて、十字形補強鋼板3の柱の軸方向長さを長くする必要性はないから、「必ずしも柱の全長に亘って設ける必要がなく、」との記載が、該長さをより長くすることを示唆するものではない。
また、上記(b)については、仮に安全率を考慮するとしても、刊行物3において、十字型の補強材2を、1.5D(Dは柱直径)を越えてどの程度まで長くするのか示唆されておらず、また該長さと要求される強度の関係についてさらなる検討を要するものである。
したがって、幅の2倍以上とすることが、当業者が容易になし得たこととはいえず、申立人の主張は採用できない。

(イ)また、申立人は、訂正後の請求項3に係る発明では、端部補強部材の鋼管本体部の軸線方向に沿った長さの上限が規定されておらず、また、「軸方向中間部」及び「軸方向端部」の境界が規定されていないため、全体として発明を把握することができず、よって、特許第36条第6項第2号の要件を満たしていない旨、主張する。
しかしながら、「軸方向中間部」と「軸方向端部」は、その用語の一般的な意味から明確であって、不明確な点は見いだせない。また、請求項3に係る発明の把握においても、両者の差異が明確でなければならない必然性はないものと考えられる。
加えて、補強手段の材料コストを削減し、火災時の柱鋼管の上端部及び下端部の局部座屈の発生を抑制する、との課題を考慮すれば、当該長さの上限が限定されず、仮に若干の隙間を空けて、鋼管本体部のほぼ全長となるような長さを採用するとは考え難いから、火災時に座屈が発生すると予想される程度の長さであることは明らかである。
よって、申立人の主張は採用できない。

(5)請求項1,2について
前記「2(1)ア及びイ」のとおり、訂正により請求項1,2は削除された。
その結果、請求項1,2に係る発明についての特許異議の申立ては、その対象を欠くこととなったので、不定法な申立てであり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

(6)むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件請求項3に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項3に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
また、請求項1,2に係る発明についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コンクリート充填鋼管柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート充填鋼管柱に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管内にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管(CFT(Concrete Filled Steel Tube))柱が知られている。CFT柱では、一般に、中空の鋼管柱と比較して負担可能な軸力(負担軸力)が大きく、またコンクリートが充填されている分、熱容量が増加するため、耐火性能に優れている。そのため、設計条件(例えば、柱の負担軸力が比較的小さく火災継続時間が短い場合など)によっては、CFT柱の耐火被覆を省略することが可能である。
【0003】
ここで、特許文献1に開示された技術では、鋼管の内壁面に、当該鋼管の軸方向へ延びるリブ(フラットバー)が点溶接で取り付けられている。そして、火災時に、鋼管とコンクリートとの熱膨張差によってコンクリートに発生する軸方向の引張り力にリブを抵抗させ、コンクリートのひび割れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-204993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように鋼管の内壁面にリブを点溶接する構成では、火災時におけるコンクリートのひび割れは抑制されるものの、加熱されて耐力、剛性が低下した鋼管の変形を十分に規制することができず、当該鋼管に局部座屈が発生する可能性がある。また、特許文献1に開示された技術では、鋼管の全長に渡ってリブを設ける構成であるため、不経済となる。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、材料コストを削減しつつ、柱鋼管の局部座屈の発生を抑制することができるコンクリート充填鋼管柱を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係るコンクリート充填鋼管柱は、水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、前記鋼管仕口部に設けられたダイアフラムと、前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、前記柱鋼管の内壁面に設けられると共に前記ダイアフラムに接合され、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対し、該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強する補強手段と、を備えている。
【0008】
第1態様に係るコンクリート充填鋼管柱によれば、鋼管本体部の内壁面に設けられると共にダイアフラムに接合された補強手段によって、鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対し、鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように柱鋼管が補強されている。これにより、鋼管本体部における軸方向端部の局部座屈の発生が抑制される。
【0009】
更に、鋼管本体部の全長に渡って鋼管本体部に面外剛性を一律に付与する構成と比較して、補強手段の材料コストを削減することができる。
【0010】
第2態様に係るコンクリート充填鋼管柱は、水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、前記柱鋼管の内壁面に設けられ、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対して該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強し、火災時における前記軸方向端部の局部座屈を抑制する補強手段と、を備えている。
第3態様に係るコンクリート充填鋼管柱は、第1態様または第2態様に係るコンクリート充填鋼管柱において、前記補強手段が、前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅以上とされている。
【0011】
第3態様に係るコンクリート充填鋼管柱によれば、端部補強部材の鋼管本体部の軸方向に沿った長さを鋼管本体部の幅以上としたことにより、材料コストを削減しつつ、鋼管本体部における軸方向端部の局部座屈の発生を抑制することができる。鋼管本体部の軸方向端部では、前述した端部補強部材の長さの領域内において局部座屈が発生し易いためである。
【0012】
第4態様に係るコンクリート充填鋼管柱は、第3態様に係るコンクリート充填鋼管柱において、前記端部補強部材が、前記鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が前記鋼管仕口部から前記鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように該軸方向端部を補強する。
【0013】
第4態様に係るコンクリート充填鋼管柱によれば、端部補強部材によって、鋼管本体部の軸方向端部の面外剛性が鋼管仕口部から鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように、柱鋼管が補強されている。
【0014】
ここで、補強範囲を局部座屈の発生し易い軸方向端部に限定した場合、補強範囲の曲げ剛性が無補強範囲の曲げ剛性に比べ大きくなるため、補強範囲と無補強範囲の境界面付近を中心とした回転変形(大きな曲率を伴う曲げ変形)が生じ、上記境界面付近の無補強部分に応力が集中する。梁等の水平部材の軸方向(水平方向)への伸び出し量や柱の負担軸力が大きい場合は、補強範囲と無補強範囲の境界面付近の無補強部分に局部座屈を生じる場合がある。
【0015】
この対策として本発明では、端部補強部材によって、鋼管本体部の軸方向端部の面外剛性が鋼管仕口部から鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように、柱鋼管が補強されている。これにより、面外剛性の急激な変化に伴う応力集中が低減されるため、鋼管本体部の局部座屈の発生が抑制される。
【0016】
なお、ここでいう「鋼管本体部の軸方向端部の面外剛性が、鋼管仕口部から鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように」は、鋼管本体部の軸方向端部の面外剛性を鋼管仕口部から鋼管本体部の軸方向中間部に向けて段階的に小さくする構成や、徐々に小さくする構成を含む概念である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記の構成としたので、材料コストを削減しつつ、柱鋼管の局部座屈の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱を示す縦断面図である。
【図2】(A)は図1の一部拡大図であり、(B)は図2(A)の2B-2B線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の応力状態を示す図1に相当する縦断面図である。
【図4】一般的なコンクリート充填鋼管柱と梁で構成された架構を示す立面図であり、(A)は火災前の状態を示し、(B)は火災後の状態を示している。
【図5】一般的なコンクリート充填鋼管柱の耐火性能評価に用いられる実験評価モデルを示すモデル図であり、(A)は水平力を載荷する前の状態を示し、(B)は水平力が載荷された際のコンクリート鋼管柱の変形状態、及び応力状態を示し、(C)はコンクリート鋼管柱の構成する鋼管に局部座屈が発生した状態を示している。
【図6】(A)は本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す図2(A)に相当する拡大図であり、(B)は図6(A)の6B-6B線断面図である。
【図7】(A)?(C)は、本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す図2(B)に相当する断面図である。
【図8】(A)は本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す図2(B)に相当する断面図であり、(B)は本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す斜視図である。
【図9】(A)は本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す図2(B)に相当する断面図であり、(B)は本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す斜視図である。
【図10】(A)は本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す図2(A)に相当する拡大図であり、(B)は図10(A)の10B-10B線断面図である。
【図11】本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す図2(A)に相当する拡大図である。
【図12】(A)は本発明の一実施形態における端部補強部材の変形例を示す図2(A)に相当する拡大図であり、(B)は図12(A)の12B-12B線断面図である。
【図13】本発明の一実施形態における補強手段の変形例を示す図1に相当する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、各図において適宜示される矢印Zは、本実施形態における柱鋼管の軸方向(上下方向)を示している。
【0020】
図1には、一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10が示されている。コンクリート充填鋼管柱10は、柱鋼管12と、柱鋼管12内に充填される充填コンクリート14と、補強手段としての縦補強リブ20と、を備えている。柱鋼管12は角形鋼管で構成されており、水平部材としての鉄骨梁16が接合される上下の鋼管仕口部12Aと、これらの鋼管仕口部12A間に延びる鋼管本体部12Bを有している。
【0021】
鉄骨梁16はH形鋼で構成され、上下一対のフランジ部16Aとフランジ部16Aを繋ぐウェブ部16Bを有し、その端部が鋼管仕口部12Aの外側面に突き当てられて溶接等によって接合されている。一方、鋼管仕口部12Aの内壁面には、上下一対の内ダイアフラム18が設けられている。各内ダイアフラム18は、鉄骨梁16のフランジ部16Aと連続するように設けられており、この内ダイアフラム18によって鋼管仕口部12Aが補強されている。また、各内ダイアフラム18の中央部には充填孔18Aが形成されており、これらの充填孔18Aを通して柱鋼管12内に充填コンクリート14が充填されるようになっている。
【0022】
ここで、上下の鉄骨梁16の間にある鋼管本体部12Bは、複数の縦補強リブ20によって鋼管本体部12Bにおける軸方向中間部としての鋼管中間部12BMの面外剛性に対し、軸方向端部としての鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの面外剛性が大きくなるように補強されている。
【0023】
具体的には、図2(A)及び図2(B)に示されるように、鋼管本体部12Bにおける鋼管上端部(柱頭部)12BUの4つの内壁面には、端部補強部材としての縦補強リブ20がそれぞれ設けられている。各縦補強リブ20は平板状の鋼板で構成され、軸方向を柱鋼管12の軸方向(矢印Z方向)にすると共に、幅方向一端部20A(長手方向に沿った一端部、図2(B)参照)が鋼管上端部12BUの内壁面の幅方向中央部に突き当てられて溶接、接着剤等で接合されている。
【0024】
また、鋼管本体部12Bの幅(柱せい)をDとしたときに、各縦補強リブ20の長さL(鋼管本体部12Bの軸方向に沿った長さ)が、鋼管本体部12Bの幅Dの1.0倍以上とされている。これらの縦補強リブ20によって鋼管上端部12BUの4つの側壁に面外剛性(図2(B)において、矢印R方向の剛性)が付与されている。また、縦補強リブ20の上端部は内ダイアフラム18に突き当てられて溶接等で接合されており、当該上端部の回転が拘束されている。これにより、縦補強リブ20の上端部が回転自由の構成と比較して、鋼管上端部12BUに大きな面外剛性が付与されるようになっている。なお、縦補強リブ20の上端部は、必要に応じて内ダイアフラム18に接合すれば良い。鋼管上端部12BUと同様に、図1に示されるように、鋼管下端部(柱脚部)12BLの4つの側壁は、複数の縦補強リブ20によって補強されている。
【0025】
一方、鋼管本体部12Bにおける鋼管中間部12BMの内壁面には、縦補強リブ20が設けられていない。これにより、鋼管中間部12BMにおける各側壁の面外剛性に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの各側壁の面外剛性が大きくなっている。
【0026】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0027】
図3に示されるように、例えば、火災時に鉄骨梁16が熱膨張によって軸方向(水平方向)へ伸張すると、鋼管仕口部12Aに水平力Fが作用し、鋼管本体部12Bに曲げモーメントMが発生する。この曲げモーメントMは、鋼管中間部12BMから鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに向って徐々に大きくなる。一方、柱鋼管12は、火災時に熱膨張によって軸方向(矢印Z方向)へ伸張するが、温度上昇に伴う剛性の低下によって軸方向への伸張は徐々に小さくなり、ある温度に達すると軸方向への伸張変形は止まり、収縮変形に転じる。この状態で、鉄骨梁16から鋼管仕口部12Aへ水平力Fが作用すると、前述したように鋼管中間部12BMと比較して大きな曲げモーメントが発生する鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの圧縮側(矢印C側)側面に局部座屈Kが発生し易くなる。特に、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLが鋼管仕口部12Aを介して鉄骨梁16に剛接合されていて、かつ、鉄骨梁16の軸方向への伸び出し量が大きい場合は、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに大きな曲率を伴う変形が生じる。この変形により鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの圧縮側(矢印C側)側面に大きな圧縮応力度が発生し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに局部座屈Kが生じる。
【0028】
鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに局部座屈が発生すると、コンクリート充填鋼管柱10の曲げ剛性は著しく低下する。コンクリート充填鋼管柱10に作用する軸力(鉛直荷重)Vが大きい場合は、局部座屈Kの発生後、曲げモーメントMによる変形が急激に進展し、局部座屈K側の充填コンクリート14に圧壊を生じる。この結果、コンクリート充填鋼管柱10は荷重支持能力を喪失し、脆性的に崩壊に至る場合がある。
【0029】
この対策として本実施形態では、鋼管中間部12BMの面外剛性に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの面外剛性が大きくなるように鋼管本体部12Bが縦補強リブ20によって補強されている。これにより、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの局部座屈Kの発生が抑制される。
【0030】
また、本実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10では、鋼管本体部12Bの全長に渡って鋼管本体部12Bに面外剛性を一律に付与する構成と比較して、施工性の向上、工期短縮、及びコスト削減を図ることができる。
【0031】
更に、例えば、縦補強リブ20の幅方向一端部20Aを当該縦補強リブ20の長手方向に沿って鋼管上端部12BUの内壁面に連続溶接することにより、鋼管上端部12BUと縦補強リブ20との一体性が向上する。これにより、従来技術(例えば、特許文献1)のように、鋼管の側壁にリブを点溶接する構成と比較して、鋼管上端部12BUの面外剛性が大きくなるため、鋼管上端部12BUの局部座屈の発生をより確実に抑制することができる。なお、鋼管下端部12BLについても同様である。
【0032】
ここで、図4(A)には、一般的なコンクリート充填鋼管柱からなる柱100と梁102A,102Bとで構成された架構の一例が示されている。この架構内で、例えば図4(B)に示されるように火災104が発生すると、梁102Aが水平方向(矢印J方向)に伸び出すため、柱100に同図に示されるような変形が生じる。
【0033】
また、図5(A)には、一般的なコンクリート充填鋼管柱からなる柱110の耐火性能評価に用いられる実験評価モデルが示されている。この実験評価モデルでは、加熱時に、図5(B)に示されるような変形状態、応力状態を示すことから、図4(B)に示される柱100の変形状態、応力状態を適切に模擬することができると言われている。そこで、図5(A)に示される実験評価モデルを用いて載荷加熱実験を行ったところ、以下に示す新たな知見が得られた。
【0034】
即ち、加熱された柱110の柱上端部に生じる水平変位(水平力F)が大きい場合や柱110に生じる軸力Vが大きい場合は、図5(C)に示されるように、柱110を構成する柱鋼管の上端部及び下端部に局部座屈Kを生じることが確認された。また、加熱時間が比較的短く、柱110の充填コンクリートが十分耐力を残している状態であっても、柱110は前述した柱鋼管の局部座屈Kによって荷重支持能力を喪失し、崩壊することが確認された。
【0035】
本実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10を例により具体的に説明すると、局部座屈Kに関しては以下のことが確認された。即ち、鋼管本体部12Bの幅をD(図2(B)参照)としたときに、鋼管上端部12BUにおける局部座屈Kは、その上端から2Dまでの領域内で発生し易く、特に、上端からDの領域内で発生し易い。これと同様に、鋼管下端部12BLにおける局部座屈Kは、その下端から2Dまでの領域内で発生し易く、特に、下端からDの領域内で発生し易い。
【0036】
従って、局部座屈Kの発生を抑制する観点からすると、縦補強リブ20の長さLはD以上が好ましく、2D以上がより好ましい。更に、施工性、材料コストを考慮すると、縦補強リブ20の長さLはD≦L≦2Dとすることが望ましい。これにより、縦補強リブ20の材料コストを削減しつつ、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの局部座屈Kの発生を抑制することができる。
【0037】
なお、前述した局部座屈Kによる破壊はこれまで実験で確認されなかった現象である。これまでは柱110の断面を小断面(例えば、300mm×300mm程度)で実施してきたが、前述した局部座屈Kが確認された実験では、柱110の断面を大面積(600mm×600mm)で実施している。柱鋼管の上端部及び下端部に発生する圧縮ひずみは、柱110の中立軸位置から柱鋼管までの距離に比例して大きくなる。断面が大きくなれば、柱鋼管に生じる圧縮ひずみもこれに比例して大きくなる。このため、火災によって大断面の柱(例えば、600mm×600mm以上)の柱上端部に大きな水平力が生じると、柱の上端部及び下端部には大きな圧縮ひずみが発生する。前述の実験では、柱鋼管に生じた圧縮ひずみが当該柱鋼管の局部座屈に対する許容圧縮ひずみを超過したために発生したものと考えられる。この圧縮ひずみは、長期軸力に起因する長期圧縮ひずみε1と、梁の伸長による強制変形(水平力F)に起因する圧縮ひずみε2と、同梁の伸長による付加曲げモーメントに起因する圧縮ひずみε3の和と考えることも可能である。
【0038】
なお、本実施形態のように鋼管仕口部12Aの両側に鉄骨梁12が接合される構成では、各鉄骨梁12の伸長に伴って鋼管仕口部12Aの両側に反対向きの水平力が作用するため、これらの水平力が打ち消し合う。従って、前述した圧縮ひずみε2,ε3が小さくなり易い。一方、外周柱のように、鋼管仕口部12Aの片側にのみ鉄骨梁16が接合される構成では、上記圧縮ひずみε2,ε3が大きくなり易い。特に、鋼管仕口部12Aの片側に接合される鉄骨梁16の梁スパンが長くなると(例えば、10mm以上)、火災時における鉄骨梁16の伸長量が増加し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの水平変位(強制変形)が大きくなるため(例えば、1/50rad以上)、上記圧縮ひずみε2,ε3が過大となる可能性がある。本実施形態は、このように鋼管仕口部12Aの片側に、若しくは鋼管仕口部12Aに3方向から鉄骨梁16が接合されるコンクリート充填鋼管柱の補強に適している。
【0039】
次に、端部補強部材の変形例について説明する。なお、以下では、各種の変形例を鋼管上端部12BUに適用した場合を例に説明するが、これらの変形例は鋼管下端部12BLにも適用可能である。
【0040】
先ず、図6(A)及び図6(B)に示される変形例では、端部補強部材として、長さが異なる2種類の縦補強リブ22,24が用いられている。具体的には、縦補強リブ22は、その長さL_(1)が縦補強リブ24の長さL_(2)の略半分とされている。これらの縦補強リブ22,24は、軸方向を鋼管本体部12Bの軸方向(矢印Z方向)にすると共に、幅方向一端部22A,24A(図6(B)参照)が鋼管上端部12BUの内壁面に突き当てられて溶接等で接合されている。これにより、鋼管上端部12BUの面外剛性が、鋼管仕口部12Aから鋼管中間部12BMに向って段階的に小さくなっている。
【0041】
このように縦補強リブ22,24の長さを変え、鋼管上端部12BUに作用する曲げモーメントM(図3参照)に応じて鋼管上端部12BUの面外剛性を鋼管仕口部12Aから鋼管中間部12BMに向って段階的に小さくすることにより、過剰な補強を無くすことができる。従って、縦補強リブ22,24の材料コストを削減することができる。
【0042】
また、全ての縦補強リブ20の長さLを略同じにした上記実施形態(図1参照)では、鋼管上端部12BUの曲げ剛性が鋼管中間部12BMの曲げ剛性に比べて大きくなるため、鋼管上端部12BUと鋼管中間部12BMの境界面付近(縦補強リブ20の先端付近)を中心とした回転変形(大きな曲率を伴う曲げ変形)が生じ、上記境界面付近の鋼管中間部12BMに応力が集中する。鉄骨梁16の軸方向(水平方向)への伸び出し量やコンクリート充填鋼管柱10の負担軸力が大きい場合は、上記境界面付近の鋼管中間部12BMに局部座屈を生じる場合がある。
【0043】
これに対して本変形例では、鋼管上端部12BUの面外剛性を鋼管仕口部12Aから鋼管中間部12BMに向って段階的に小さくすることにより、鋼管上端部12BUと鋼管中間部12BMとの境界面付近(縦補強リブ24の先端付近)の鋼管中間部12BMの応力集中が低減される。従って、上記境界面付近の柱鋼管12の局部座屈の発生が抑制される。
【0044】
なお、本変形例では、鋼管上端部12BUに作用する曲げモーメントM(図3参照)に応じて、鋼管上端部12BUの面外剛性を鋼管仕口部12Aから鋼管中間部12BMに向って段階的に小さくしたが、例えば、長さが異なる3種類以上の補強リブを用いて、鋼管上端部12BUの面外剛性を鋼管仕口部12Aから鋼管中間部12BMに向って徐々に小さくしても良い。また、本変形例では、縦補強リブ22,24の長さを変えたが、縦補強リブ22,24の板厚や材料強度を変えても良いし、長さ、板厚、材料強度が異なる補強リブを適宜組み合わせて用いても良い。
【0045】
次に、図7(A)に示される変形例では、端部補強部材として断面T字形状の縦補強リブ26が用いられている。縦補強リブ26はT形鋼で構成されており、そのフランジ部26Fが鋼管上端部12BUの内壁面と対向するように配置されると共に、そのウェブ部26Wの幅方向一端部が鋼管上端部12BUの内壁面に突き当てられて溶接等で接合されている。
【0046】
このように縦補強リブ26のフランジ部26Fを鋼管上端部12BUの内側面に対向させることにより、フランジ部26F及び鋼管上端部12BUの側壁の断面2次モーメントが増加する。これにより、鋼管上端部12BUの面外剛性が飛躍的に大きくなる。従って、鋼管上端部12BUの局部座屈の発生をより確実に抑制することができる。
【0047】
なお、図示を省略するが、縦補強リブとしては、C形鋼、L形鋼、H形鋼、I形鋼等を用いても良い。また、図7(B)に示されるように、縦補強リブ20の幅方向他端部20B(先端部)に沿って鉄筋、PC鋼棒等からなる棒状部材28を設けても良いし、図7(C)に示されるように、鋼管上端部12BUの内壁面に端部補強部材としての鉄筋、PC鋼棒等からなる棒状部材30を溶接等で接合しても良い。
【0048】
次に、図8(A)及び図8(B)に示される変形例では、端部補強部材としてメッシュ筋32が用いられている。メッシュ筋32は、複数の縦筋32Aと複数の横筋32Bとを格子状に連結して構成されており、鋼管上端部12BUの各内壁面に溶接等で接合されている。このように隣接する縦筋32Aを複数の横筋32Bで連結することにより、鋼管上端部12BUに付与される面外剛性が大きくなる。
【0049】
更に、図9(A)及び図9(B)に示される変形例では、端部補強部材として連結プレート34が用いられている。連結プレート34は、長手方向を上下方向にして鋼管上端部12BUの4つのコーナー部にそれぞれ設けられている。各連結プレート34は、隣り合う鋼管上端部12BUの側壁間にまたがって配置されており、幅方向両端部34A,34Bが鋼管上端部12BUの内壁面に溶接等で接合されている。即ち、連結プレート34によって隣り合う鋼管上端部12BUの側壁が連結されている。また、各連結プレート34には、複数の貫通孔36が形成されている。これらの貫通孔36を通して鋼管上端部12BUのコーナー部に充填コンクリート14が充填されるようになっている。なお、貫通孔36の形状、大きさ、数は適宜変更可能である。
【0050】
このように連結プレート34によって隣り合う鋼管上端部12BUの側壁を連結することにより、局部座屈に対して隣り合う鋼管上端部12BUの側壁同士が協同で抵抗可能になる。従って、鋼管上端部12BUの局部座屈の発生をより確実に抑制することができる。
【0051】
次に、図10(A)及び図10(B)に示される変形例では、端部補強部材として横補強プレート38が用いられている。横補強プレート38は平面視にて矩形の鋼板で構成され、鋼管本体部12Bの軸方向(矢印Z方向)に間隔を空けて複数(本変形例では、2枚)設けられている。各横補強プレート38の外周部は、鋼管上端部12BUの内壁面に突き当てられて溶接等で接合されている。これにより、鋼管上端部12BUに面外剛性が付与されている。また、鋼管本体部12Bの幅をDとしたときに、鋼管上端部12BUの上端から、鋼管中間部12BMに最も近い(最下段)横補強プレート38までの距離Hは1.0倍以上とされている。更に、各横補強プレート38の中央部には、矩形の貫通孔40が形成されており、これらの貫通孔40を通して柱鋼管12内に充填コンクリート14が充填されるようになっている。
【0052】
このように横補強プレート38によって鋼管上端部12BUを補強することにより、縦補強リブ20によって鋼管上端部12BUを補強する構成(図1参照)と比較して、鋼管上端部12BUの軸剛性を小さく抑えつつ、鋼管上端部12BUの面外剛性を大きくすることができる。従って、鋼管上端部12BUの局部座屈の発生を効率的に抑制することができる。
【0053】
また、図11に示されるように、鋼管上端部12BUに作用する曲げモーメントM(図3参照)に応じて、隣接する横補強プレート38の間隔(ピッチ)H_(1),H_(2),H_(3),H_(4)を鋼管仕口部12Aから鋼管中間部12BMに向って広くし(H_(1)<H_(2)<H_(3)<H_(4))、鋼管上端部12BUの面外剛性を鋼管仕口部12Aから鋼管中間部12BMに向って徐々に小さくすることも可能である。これにより、過剰な補強を無くすことができる。また、鋼管中間部12BMに最も近い(最下段)横補強プレート38付近の鋼管中間部12BMに対する応力集中が低減されるため、当該鋼管中間部12BMの局部座屈の発生が抑制される。
【0054】
なお、本変形例では、隣接する横補強プレート38の間隔を変えたが、隣接する横補強プレート38の板厚や材料強度を変えても良いし、隣接する横補強プレート38の間隔や、板厚、材料強度が異なる横補強プレートを適宜組み合わせて用いても良い。また、本変形例では、貫通孔40を有する横補強プレート38を用いたが、鋼管上端部12BUの側壁に沿って当該側壁の幅方向に延びる横補強リブを用いても良い。
【0055】
次に、図12(A)及び図12(B)に示される変形例では、端部補強部材としてクロス補強部材42が用いられている。クロス補強部材42は、鋼製の角材44,46を平面視にて十字形状に連結して構成されており、鋼管本体部12Bの軸方向に間隔を空けて複数(本変形例では、2つ)設けられている。各角材44,46の両端部44A,44B,46A,46Bは、鋼管上端部12BUの内壁面の幅方向中央部に突き当てられて溶接等で接合されている。これらのクロス補強部材42によって鋼管上端部12BUにおける対向する側壁同士が連結されている。なお、鋼管上端部12BUの上端から、鋼管中間部12BMに最も近い(最下段)クロス補強部材42までの距離Hは1.0倍以上とされている。
【0056】
このようにクロス補強部材42よって鋼管上端部12BUにおける対向する側壁同士を連結することにより、当該側壁同士の断面2次モーメントが増加する。これにより、鋼管上端部12BUの面外剛性が飛躍的に大きくなる。従って、鋼管上端部12BUの局部座屈の発生をより確実に抑制することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、縦補強リブ20等の端部補強部材によって鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLにのみ面外剛性を付与したが、これに限らない。柱鋼管12は、鋼管中間部12BMの面外剛性に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの面外剛性が大きくなるように補強されていれば良く、例えば、図13に示されるように、補強手段としての縦補強リブ20に加えて、柱鋼管12の全長に渡る補強手段としての補強リブ52を柱鋼管12の内壁面に溶接等で接合しても良い。この場合、端部補強部材としての縦補強リブ20の分だけ、鋼管中間部12BMの面外剛性に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの面外剛性が大きくなる。
【0058】
また、上記実施形態では、内ダイアフラム18を用いた内ダイアフラム形式のコンクリート充填鋼管柱10を例に説明したが、上記実施形態は、通しダイアフラム形式や外ダイアフラム形式のコンクリート充填鋼管柱にも適用可能である。
【0059】
更に、柱鋼管12は、断面略正方形の角形鋼管に限らず、断面長方形の角形鋼管や丸形鋼管を用いても良い。なお、断面長方形の角形鋼管では、短辺の長さが鋼管本体部の幅Dに相当し、丸形鋼管では、その直径が鋼管本体部の幅Dに相当する。また、柱鋼管12には、耐火被覆を施しても良い。更に、上記実施形態では、水平部材として鉄骨梁16を例に説明したが、鉄骨梁16に替えてスラブ(例えば、RC床スラブやフラットスラブ)等でも良い。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 コンクリート充填鋼管柱
12 柱鋼管
12A 鋼管仕口部
12B 鋼管本体部
12BU 鋼管上端部(軸方向端部)
12BM 鋼管中間部(軸方向中間部)
12BL 鋼管下端部(軸方向端部)
14 充填コンクリート
16 鉄骨梁(水平部材)
20 縦補強リブ(補強手段、端部補強部材)
22 縦補強リブ(補強手段、端部補強部材)
24 縦補強リブ(補強手段、端部補強部材)
26 縦補強リブ(補強手段、端部補強部材)
28 棒状部材(補強手段、端部補強部材)
30 棒状部材(補強手段、端部補強部材)
32 メッシュ筋(補強手段、端部補強部材)
34 連結プレート(補強手段、端部補強部材)
38 横補強プレート(補強手段、端部補強部材)
42 クロス補強部材(補強手段、端部補強部材)
52 補強リブ(補強手段)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、
前記鋼管仕口部に設けられたダイアフラムと、
前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、
前記柱鋼管の内壁面に設けられると共に前記ダイアフラムに端部が溶接され、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対して該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強し、火災時における前記軸方向端部の局部座屈を抑制する補強手段と、
を備え、
前記補強手段が、前記鋼管本体部における前記軸方向中間部には設けられず、前記軸方向端部に設けられ、前記ダイアフラムに端部が溶接されると共に前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、
前記ダイアフラムから前記軸方向中間部側へ延びる前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅の2倍以上とされているコンクリート充填鋼管柱。
【請求項4】
水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、
前記鋼管仕口部に設けられたダイアフラムと、
前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、
前記柱鋼管の内壁面に設けられると共に前記ダイアフラムに接合され、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対し、該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強する補強手段と、
を備え、
前記補強手段が、前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、
前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅以上とされ、
前記端部補強部材が、前記鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が前記鋼管仕口部から前記鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように該軸方向端部を補強するコンクリート充填鋼管柱。
【請求項5】
水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、
前記柱鋼管内に充填された充填コンクリートと、
前記柱鋼管の内壁面に設けられ、前記鋼管本体部における軸方向中間部の面外剛性に対して該鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が大きくなるように前記柱鋼管を補強し、火災時における前記軸方向端部の局部座屈を抑制する補強手段と、
を備え、
前記補強手段が、前記鋼管本体部における軸方向端部を補強する端部補強部材を有し、
前記端部補強部材の前記鋼管本体部の軸方向に沿った長さが、該鋼管本体部の幅以上とされ、
前記端部補強部材が、前記鋼管本体部における軸方向端部の面外剛性が前記鋼管仕口部から前記鋼管本体部の軸方向中間部に向うに従って小さくなるように該軸方向端部を補強するコンクリート充填鋼管柱。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-30 
出願番号 特願2011-128514(P2011-128514)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (E04B)
P 1 652・ 121- YAA (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星野 聡志  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2015-05-22 
登録番号 特許第5749087号(P5749087)
権利者 株式会社竹中工務店
発明の名称 コンクリート充填鋼管柱  
代理人 加藤 和詳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  
代理人 福田 浩志  
代理人 松浦 孝  
代理人 中島 淳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ