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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1323289
審判番号 不服2015-19943  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-06 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2013-262201「立体映像表示装置とその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 7744〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年12月19日(パリ条約による優先権主張 2013年6月25日 韓国)に出願したものであって、平成26年11月27日付けの拒絶理由通知に対して平成27年3月30日付けで手続補正がなされたが、平成27年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年11月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、平成28年5月17日付けで上申書が提出されたものである。


第2 平成27年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年11月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「 【請求項7】
表示パネルのデータラインにデータ電圧を供給する段階と、
前記表示パネルのゲートラインにゲートパルスを供給する段階を含み、
隣接する画素に左眼映像と右眼映像とが供給される立体映像表示装置の駆動方法であって、
前記表示パネルに3D映像が表示される3Dモードで、前記ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミングを前記データ電圧のライジングエッジ、すなわちデータ電圧信号の立ち上がる時以降に遅延させることを特徴とする立体映像表示装置の駆動方法。」
とあったところを、

「 【請求項7】
表示パネルのデータラインにデータ電圧を供給する段階と、
前記表示パネルのゲートラインにゲートパルスを供給する段階を含み、
隣接する画素に左眼映像と右眼映像とが供給される立体映像表示装置の駆動方法であって、
前記表示パネルに3D映像が表示される3Dモードで、前記ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミングを、前記データ電圧の最大のライジングエッジ時間(t11、t12、t13)以降に遅延させることを特徴とする立体映像表示装置の駆動方法。」
とする補正を含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。

本件補正について検討する。

本件補正は、本件補正前の請求項7に記載された「ライジングエッジ、すなわちデータ電圧信号の立ち上がる時以降に遅延させる」という事項について、「ライジングエッジ、すなわちデータ電圧信号の立ち上がる時」を「最大のライジングエッジ時間(t11、t12、t13)」と限定するものである。

よって、本件補正は、本件補正前の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項7に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。


2 引用例およびその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の基礎となる出願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-281957号公報(平成22年12月16日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
本発明は、液晶パネルの駆動方法に関するものであり、低温度から高温度の範囲における周囲温度で、良好な表示品位を実現するアクティブ・マトリクス型液晶パネルの駆動に好適に使用することができる。」

b「【0007】
本発明の係わる液晶パネルの駆動方法は、複数の水平走査配線および複数のデータ配線とで囲まれる複数の画素電極に接続された複数のスイッチング素子を前記水平走査配線により供給されるゲート選択信号によって導通制御し、これらのスイッチング素子を介して、前記データ配線により供給される画像データ信号を前記画素電極に供給するようにした液晶パネルの駆動方法であって、前記水平走査配線に加えられるゲート選択信号波形の、前記スイッチング素子が導通状態から非導通状態に変化するタイミングを、前記データ配線に加えられる画像データ信号波形の、前記各々の水平走査配線に接続された画素電極の表示内容に対応する画像データから次の画像データへ変化するタイミングに対して、ゲート遅延補償期間を設けて前記液晶パネルを駆動する駆動方法において、前記液晶パネルの周囲温度を検出し、前記周囲温度に応じて前記ゲート遅延補償期間を可変とすることを特徴とするものである。」

c「【0011】
実施の形態1. 図1は本実施の形態1に係わる液晶表示装置1の概略構成を示したシステム構成図である。図1において、液晶パネル2は互いに交差する複数のデータ配線3、4、5、6・・・・7と複数の水平走査配線8、9、10、11・・・・12でマトリックス状に構成されたアクティブマトリックス基板40と、それと対向する図示しない対向基板とが間隙を有して張り合わされ、その間隙に図示しない液晶を狭持している。ここで、説明の簡素化のために特定の一画素部の構成について詳しく説明し、後に液晶パネル2全体について説明する。
【0012】
ここで、液晶パネル2の表示領域を構成する画素について、破線で示した代表的な画素部41を用いて説明する。図1において、画素部41は、表示領域中の最も右の列に位置し、データ配線7と水平走査配線9の交差部に配置されている。また、スイッチング素子としてのTFT42と画素電極43を有し、TFT42のゲート電極に水平走査配線9が、ソース電極にデータ配線7がドレイン電極に画素電極43が夫々接続される。また画素電極43は前記対向基板の電極である対向電極44との間に液晶を挟んで容量を形成しており、水平走査配線9に印加されるゲート選択信号がHighレベルになるとTFT42がオンし、その時のデータ配線7の電位即ち画像データ信号が画素電極43に書き込まれ、一水平期間経過後ゲート選択信号がLowレベルとなり、TFT42がオフし書き込まれた電位を一フレーム周期以上前記容量に保持する。また、本実施の形態1においては、いわゆるドット反転駆動を行っているので、上下に隣接する画素部は、互いに逆の極性の画像データ信号波形で駆動される。
【0013】
また、液晶パネル2の水平走査配線8、9、10,11・・・・12の各左端部には水平走査配線駆動回路としてゲートドライバ15が接続され、データ配線3、4、5,6・・・・7の各下端部にはデータ配線駆動回路としてソースドライバ16が接続され、夫々タイミング制御回路17によって制御される。」

d「【0020】
図4は本実施の形態1に係わる液晶表示装置の特定の画素部のゲート選択信号波形、画像データ信号および画素電位の周囲温度に対する時間関係を示す波形図である。例えば上記特定の画素部として水平走査配線9に接続される画素部41とすると、図3で示した複数のゲート選択信号のHighレベル期間の一部(1水平期間)を取り出したものが、図4、(a)のゲート選択信号波形に相当する。次に、図4、(b)に示した常温時(例えば25℃)のゲート選択信号波形は、ゲート選択信号入力側(図1の左端)から遠い側、つまり、図1を例に挙げると表示領域の右端部領域における(例えば画素部41)例を示したものである。上記常温時のゲート選択信号波形は、図4、(a)に示した理想的なゲート選択信号と比べて、上記水平走査配線の配線抵抗および図示しない浮遊容量の影響で、有る程度の配線のRC時定数を持ち、波形鈍りが発生し、ゲート選択信号の遅延が起こる。同図において、Vghは、ゲート正電圧、Vglはゲート負電圧であり、Vs(+)は画像データ信号正極側電位、Vs(-)は同負極側電位である。また、VthはTFTのON/OFF閾値(スレッショルド)電圧である。」

e「【0032】
実施の形態2. 図5は本実施の形態2に係わる液晶表示装置のゲート選択信号波形、画像データ信号および画素電位の液晶パネル周囲温度に対する時間関係を示す波形図である。本実施の形態2においては、前述の実施の形態1で示した図3のゲート選択信号波形とは異なり、隣接する水平走査配線9(nライン)、10(n+1ライン)および11(n+2ライン)のゲート選択信号間に、後述するブランキング(blanking)期間を設けている。その他の構成は、上述の実施の形態1と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0033】
まず図5において、2本の直線状の一点鎖線は、1水平周期期間を表しており、また、図5、(c)で示した理想的な画像データ信号のVs(+)からVs(-)またはVs(-)からVs(+)への極性変化タイミングと一致しており、以後説明する基準時間となるものである。 また、本実施の形態2においても、液晶パネル2は、1水平周期期間を一周期として、最も上の行(水平走査配線8)から順に駆動され、最も下の行(水平走査配線12)に向かって一行毎に順次駆動される。
【0034】
図5、(a)で示した常温時(例えば25℃)の理想的なゲート選択信号は、1水平周期期間(H)と比較して前方でT1期間分、後方でT2期間分短くなっている。ここでT1期間およびT2期間をゲート選択信号のブランキング期間と称し、符号T1を前方ブランキング期間と称し、符号T2を後方ブランキング期間と称する。また、特に後方ブランキング期間T2は、前述の実施の形態1のゲート遅延補償期間TgsNに相当する。
【0035】
実際の常温時のゲート選択信号波形は、水平走査配線の配線抵抗と浮遊容量によるRC成分の影響で波形鈍りが生じ、図5、(b)で示した波形となる。また、画像データ信号波形も、データ配線の配線抵抗と浮遊容量によるRC成分の影響で、図5、(c)で示した理想的な画像データ信号波形から鈍りが生じ、図5、(d)で示した波形となる。図5、(a)?(d)に示したように周囲温度が常温の場合は、上記ゲート選択信号のブランキング期間は、図5、(d)の画像データ信号が立上ってからゲート選択信号が立上るように前方ブランキング期間T1を確保し、図5、(d)の画像データ信号がVth以下となり、波形が立下がってから図5、(d)の画像データ信号の極性が変化するように後方ブランキング期間T2を決める。図5、(d)で“TwN”として図示したように、画素部への充電期間は、ゲート選択信号がTFTのVth以上の期間となる。この場合、前述したように液晶パネルの解像度やパネルの大きさ、配線材料特性、各温度のおけるTFTの駆動能力、データ配線の遅延量、さらに液晶パネルのゲート選択信号の入力側および入力側から最も遠い画素部における遅延量なども勘案し、波形シミュレーションや実測値などに基づいて前方/後方ブランキング期間が決定される。」

f 【図1】には、液晶表示装置1が液晶パネル2を備えていることが示されている。

g 【図1】には、画素部41が画素電極43を備えていることが示されている。

h 【図5】(a)および(b)には、ゲート選択信号がパルス状の信号であることが示されている。

ア 引用例1には、「前記データ配線により供給される画像データ信号を前記画素電極に供給するようにした液晶パネルの駆動方法」(【0007】)に加え、画像データ信号について「データ配線7の電位即ち画像データ信号」(【0012】)と記載されており、また、画素部41が画素電極43を備えていること(上記g参照)が示されていることから、引用例1には、「データ配線により供給されるデータ配線の電位即ち画像データ信号を画素部の画素電極に供給する液晶パネルの駆動方法」が記載されているということができる。

イ 引用例1には、「液晶パネルの駆動方法」(【0001】,【0007】)において、「複数の画素電極に接続された複数のスイッチング素子を前記水平走査配線により供給されるゲート選択信号によって導通制御」(【0007】)することが記載されており、また、ゲート選択信号がパルス状の信号であること(上記h参照)、画素部41が画素電極43を備えていること(上記g参照)が示されていることから、引用例1には、「複数の画素部の画素電極に接続された複数のスイッチング素子を水平走査配線により供給されるパルス状のゲート選択信号によって導通制御する液晶パネルの駆動方法」が記載されているということができる。

ウ ここで、引用例1には、液晶表示装置が液晶パネルを備えること(上記f参照)が示されているから、引用例1の「液晶パネルの駆動方法」は、「液晶表示装置の液晶パネルの駆動方法」ということができる。
したがって、上記アおよびイから、引用例1には、「データ配線により供給されるデータ配線の電位即ち画像データ信号を画素部の画素電極に供給し、複数の画素部の画素電極に接続された複数のスイッチング素子を水平走査配線により供給されるパルス状のゲート選択信号によって導通制御する、液晶表示装置の液晶パネルの駆動方法」が記載されているということができる。

エ 引用例1には、「画像データ信号が立上ってからゲート選択信号が立上るように前方ブランキング期間T1を確保」(【0035】)することが記載されている。
ゲート選択信号の立ち上げは、液晶パネルの画素電極に画像データ信号が供給される際、すなわち液晶パネルに画像が表示される際に行われるものであり、ゲート選択信号の前方ブランキング期間T1を確保することは、ゲート選択信号が立ち上がるタイミングを遅延させることといえるから、「液晶パネルに画像が表示される際、ゲート選択信号が立ち上がるタイミングを、画像データ信号が立ち上がる時以降に遅延させる」ことということができる。

したがって、上記引用例1に記載された事項と上記アないしエとを総合すると、引用例1には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。

「データ配線により供給されるデータ配線の電位即ち画像データ信号を画素部の画素電極に供給し、複数の画素部の画素電極に接続された複数のスイッチング素子を水平走査配線により供給されるパルス状のゲート選択信号によって導通制御する液晶表示装置の液晶パネルの駆動方法であって、液晶パネルに画像が表示される際、ゲート選択信号が立ち上がるタイミングを、画像データ信号が立ち上がる時以降に遅延させる液晶表示装置の液晶パネルの駆動方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の基礎となる出願の出願前に頒布された刊行物である国際公開2012/063830号(平成24年5月18日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

「[0002] 近年、画像を二次元的に表示する(以下、「2D(平面)画像を表示する」ともいう)機能に加え、画像を立体視可能に表示する(以下、「3D(立体)画像を表示する」ともいう)機能を有する液晶表示装置が実現されている。
[0003] 立体画像を表示する技術としては、アクティブシャッター方式、裸眼レンチキュラー(lenticular)方式、及び、パターン化位相差板方式(偏光方式、PR方式とも呼ぶ)等が知られている。何れの方式においても、右目用画像がユーザの右目のみに提示され、左目用画像がユーザの左目のみに提示されることによって、ユーザは画像を立体的に視認することができる。」

「[0006] パターン化位相差板を用いる液晶表示装置では、例えば奇数番目の水平走査線を介して選択される画素により右目用の画像が表示され、偶数番目の水平走査線を介して選択される画像により左目用の画像が表示される。」

「[0008] バックライトユニット50は、液晶パネル60に対して、該液晶パネル60の背面から光を照射する。液晶パネル60には、水平走査線(横方向走査線)HL1?HLN(Nは水平走査線の総数)、および、垂直信号線(縦方向信号線)VL1?VLM(Mは垂直信号線の総数)のそれぞれによって画定される画素が形成されている。
[0009] 液晶パネル60は、各画素の液晶の配向を制御することによって、光の透過率を画素毎に制御することができる。また、液晶パネル60は、奇数番目の水平走査線HL1、HL3、…を介して選択される画素(以下、奇数番目画素という)によって、右目用の画像を表示し、偶数番目の水平走査線HL2、HL4、…を介して選択される画素(以下、偶数番目画素という)によって、左目用の画像を表示する。」

「[0014] また、パターン化位相差板方式の液晶表示装置は、奇数番目画素行、および、偶数番目画素行の双方を用いて、視差の無い2D画像を通常どおりに表示することもできる。この場合、ユーザは、3D用メガネを用いることなく、当該液晶表示装置の表示する画像をただ観測すればよい。」

ア 引用例2には、「画像を二次元的に表示する(以下、「2D(平面)画像を表示する」ともいう)機能に加え、画像を立体視可能に表示する(以下、「3D(立体)画像を表示する」ともいう)機能を有する液晶表示装置」([0002])が記載されている。

イ 引用例2には、「液晶パネル60は、奇数番目の水平走査線HL1、HL3、…を介して選択される画素(以下、奇数番目画素という)によって、右目用の画像を表示し、偶数番目の水平走査線HL2、HL4、…を介して選択される画素(以下、偶数番目画素という)によって、左目用の画像を表示する」([0009])ことが記載されており、奇数番目画素と偶数番目の画素は隣接するものであり、また右目用の画像および左目用の画像の表示は3D画像を表示する際に行われることである([0003])から、「3D画像を表示する際に、隣接する画素によって左目用の画像と右眼用の画像とを表示する」ことが記載されているということができる。

したがって、上記引用例2に記載された事項及び上記アおよびイを総合すると、引用例2には、次の事項が記載されている。

「液晶パネルに2D画像を表示する機能に加え、3D画像を表示する機能を有する液晶表示装置において、3D画像を表示する際に、隣接する画素によって左目用の画像と右眼用の画像とを表示する液晶表示装置。」


3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「データ配線」、「データ配線の電位即ち画像データ信号」、「画素部」、「水平走査配線」、「パルス状のゲート選択信号」、「液晶パネル」は、本願補正発明の「データライン」、「データ電圧」、「画素」、「ゲートライン」、「ゲートパルス」、「表示パネル」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明は、「画素部の画素電極に画像データ信号が供給される液晶表示装置の液晶パネルの駆動方法」であって、液晶表示装置において画像データ信号によって映像を表示することは常套手段であるから、本願補正発明の「隣接する画素に左眼映像と右眼映像とが供給される立体映像表示装置の駆動方法」と、「画素に映像が供給される映像表示装置の駆動方法」である点で共通する。

(3)引用発明は、「液晶パネルに画像が表示される際、ゲート選択信号が立ち上がるタイミングを、画像データ信号が立ち上がる時以降に遅延させる」ものであって、画像データ信号によって映像を表示することは常套手段であるから(上記(2))、本願補正発明の「前記表示パネルに3D映像が表示される3Dモードで、前記ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミングを、前記データ電圧の最大のライジングエッジ時間(t11、t12、t13)以降に遅延させる」ことと、「表示パネルに映像が表示される際、ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミングを、データ電圧のライジングエッジ時間以降に遅延させる」点で共通する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>

「表示パネルのデータラインにデータ電圧を供給する段階と、
前記表示パネルのゲートラインにゲートパルスを供給する段階とを含み、
画素に映像が供給される映像表示装置の駆動方法であって、
前記表示パネルに映像が表示される際、前記ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミングを、前記データ電圧のライジングエッジ時間以降に遅延させる映像表示装置の駆動方法。」

<相違点>

(ア)本願補正発明は、「隣接する画素に左眼映像と右眼映像とが供給される立体映像表示装置の駆動方法であって、表示パネルに3D映像が表示される3Dモード」を有するのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

(イ)ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミングについて、本願補正発明は、データ電圧の「最大の」ライジングエッジ時間以降に遅延させるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。


4 判断

上記<相違点>(ア)および(イ)について判断する。

<相違点>(ア)について

例えば、引用例2に記載されているように(上記2(2)参照)、「液晶パネルに2D画像を表示する機能に加え、3D画像を表示する機能を有する液晶表示装置において、3D画像を表示する際に、隣接する画素によって左目用の画像と右眼用の画像とを表示する液晶表示装置」は周知技術である。
引用発明の液晶表示装置において、前記周知技術を用いて、隣接する画素によって左目用の画像と右眼用の画像とを表示する3Dモードを設けることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

よって、本願補正発明の<相違点>(ア)に係る構成のようにすることは、格別なことではない。

<相違点>(イ)について

引用例1には、「液晶パネルの解像度やパネルの大きさ、配線材料特性、各温度のおけるTFTの駆動能力、データ配線の遅延量、さらに液晶パネルのゲート選択信号の入力側および入力側から最も遠い画素部における遅延量なども勘案し、波形シミュレーションや実測値などに基づいて前方/後方ブランキング期間が決定される」(【0035】)ことも記載されており、最も遠い画素部における遅延量を勘案することは、最も遅延する画素部における遅延量を勘案することであるから、「表示パネルに映像が表示される際、ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミングを、データ電圧のライジングエッジ時間以降に遅延させる」にあたって、「ゲートパルスのライジングタイミング、すなわちゲートパルス信号の立ち上がるタイミング」を、種々の遅延量のうち最大の遅延量に基づいて遅延させることは、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願補正発明の<相違点>(イ)に係る構成のようにすることは、格別なことではない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成27年11月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1本件補正」の本件補正前の「請求項7」として記載したとおりのものである。


2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例およびその記載事項は、上記「第2[理由]2引用例およびその記載事項」に記載したとおりである。


3 対比・判断

本願発明は、本願補正発明から、上記「第2[理由]1本件補正」で検討した本件補正に係る限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2[理由]4判断」に示したとおり、引用発明および周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-21 
結審通知日 2016-07-26 
審決日 2016-08-19 
出願番号 特願2013-262201(P2013-262201)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 高橋 克
須原 宏光
発明の名称 立体映像表示装置とその駆動方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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