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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B65H
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B65H
管理番号 1323803
審判番号 訂正2016-390141  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-10-31 
確定日 2017-01-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3535717号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3535717号の明細書を、本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3535717号(以下「本件特許」という。)は、平成9年11月14日の出願であって、平成16年3月19日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成28年10月31日付けで本件訂正審判の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
そして、本件特許の訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。(下線は訂正の内容を示すものである。)

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2及び請求項6を以下のとおり訂正し、その結果として請求項2を引用する請求項4、請求項2又は4を引用する請求項5、請求項6を引用する請求項8、請求項6又は8を引用する請求項9も訂正する。

(1)訂正事項2-1
「前記巻線部に設けられた回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材」を、「前記巻線部に設けられた垂直方向の回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材」に訂正する。

(2)訂正事項2-2
「その旋回部材の複数位置に設けられたチャック」を、「その旋回部材の複数位置において水平外側方向へ各々延出して設けられたチャック」に訂正する。

(3)訂正事項2-3
「前記巻線部の回転軸に同心的に接続される共通の接続部」を、「前記巻線部の回転軸に同心的に上方から接続される共通の接続部」に訂正する。

(4)訂正事項2-4
「ワーク保持治具を着脱可能に保持する複数のチャック」を、「ワーク保持治具に対し、前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられたチャック保持部を着脱可能に保持する複数のチャック」に訂正する。

(5)訂正事項2-5
「チャックにより前記巻線部の回転軸から離脱させ、」を、「チャックにより前記チャック保持部を把持した把持状態で前記巻線部の回転軸から上方へ離脱させ、」に訂正する。

(6)訂正事項2-6
「別のワーク保持治具を、前記チャックにより前記巻線部の回転軸に装着するチャック制御装置」を、「別のワーク保持治具を、前記チャックによる前記把持状態で前記巻線部の回転軸に上方から装着するチャック制御装置」に訂正する。

(7)訂正事項2-7
「チャック制御装置とを含む」を、「チャック制御装置と、を含み、前記ワーク保持治具の接続部が前記巻線部の回転軸に上方から装着されたときの前記旋回部材の位置を作動位置とした場合、前記旋回部材が前記作動位置に位置した状態で前記チャックは前記チャック制御装置により前記把持状態から開放される開放状態へと切り換えられ、前記チャックが前記開放状態でありかつ前記旋回部材が前記作動位置に位置したままの状態で前記ワーク保持部に保持された前記ワークに巻線が施され、前記ワークへの巻線終了後、前記チャックは前記チャック制御装置により前記開放状態から前記把持状態へと切り換えられ、前記旋回部材が前記作動位置から上昇するように構成されている」に訂正する。

3 訂正事項3
【発明の名称】の「巻線機のワーク保持治具、ワーク入替装置及び巻線機」の記載を、「巻線機のワーク入替装置及び巻線機」に訂正する。

4 訂正事項4
段落【0001】の
「【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線機において巻線対象のワークを保持するワーク保持治具、これを利用して巻線後のワークと巻線前のワークを入れ替えるワーク入替装置、ならびにそのワーク入替装置を含む巻線機に関する。」
の記載を、
「【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線機において巻線対象のワークを保持するワーク保持治具を利用して巻線後のワークと巻線前のワークを入れ替えるワーク入替装置、及びそのワーク入替装置を含む巻線機に関する。」
に訂正する。

5 訂正事項5
段落【0006】の
「【課題を解決するための手段】
本発明では、次のようなワーク保持治具、すなわち ワークに巻線を行う巻線部の回転軸に接続される共通の接続部と、
その接続部と一体的にかつ前記ワークの種類に応じて形成されたワーク保持部と、
前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられてチャックに保持されるチャック保持部とを備え、
ワークを保持した状態で前記チャックにより前記巻線部に接続され、巻線後はそのワークを保持した状態で前記チャックにより前記巻線部から離脱されることを特徴とする。」
の記載を
「【課題を解決するための手段】
本発明では、次のようなワーク保持治具、すなわち ワークに巻線を行う巻線部の回転軸に接続される共通の接続部と、
その接続部と一体的にかつ前記ワークの種類に応じて形成されたワーク保持部と、
前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられてチャックに保持されるチャック保持部とを備え、
ワークを保持した状態で前記チャックにより前記巻線部に接続され、巻線後はそのワークを保持した状態で前記チャックにより前記巻線部から離脱されるワーク保持治具を利用することができる。」
に訂正する。

6 訂正事項6
段落【0008】の
「本発明に係るワーク入替装置は次のようなものである。
ワークに巻線する巻線部と、その巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うアイドル部とを有する巻線機において、前記巻線機で巻線されたワークとアイドル部で供給された未巻線ワークとを入れ替える入替装置であって、
前記巻線部に設けられた回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材の複数位置に設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックのいずれかを前記巻線部に対応させ、かつそれとは別の任意のチャックを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記巻線部により巻線された後のワークを、前記ワーク保持治具とともに前記チャックにより前記巻線部の回転軸から離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークが装着されている別のワーク保持治具を、前記チャックにより前記巻線部の回転軸に装着するチャック制御装置と、
を含むことを特徴とする。」
の記載を
「本発明に係るワーク入替装置は次のようなものである。
ワークに巻線する巻線部と、その巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うアイドル部とを有する巻線機において、前記巻線機で巻線されたワークとアイドル部で供給された未巻線ワークとを入れ替える入替装置であって、
前記巻線部に設けられた垂直方向の回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材の複数位置において水平外側方向へ各々延出して設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に上方から接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具に対し、前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられたチャック保持部を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックのいずれかを前記巻線部に対応させ、かつそれとは別の任意のチャックを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記巻線部により巻線された後のワークを、前記ワーク保持治具とともに前記チャックにより前記チャック保持部を把持した把持状態で前記巻線部の回転軸から上方へ離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークが装着されている別のワーク保持治具を、前記チャックによる前記把持状態で前記巻線部の回転軸に上方から装着するチャック制御装置と、
を含み、
前記ワーク保持治具の接続部が前記巻線部の回転軸に上方から装着されたときの前記旋回部材の位置を作動位置とした場合、前記旋回部材が前記作動位置に位置した状態で前記チャックは前記チャック制御装置により前記把持状態から開放される開放状態へと切り換えられ、前記チャックが前記開放状態でありかつ前記旋回部材が前記作動位置に位置したままの状態で前記ワーク保持部に保持された前記ワークに巻線が施され、前記ワークへの巻線終了後、前記チャックは前記チャック制御装置により前記開放状態から前記把持状態へと切り換えられ、前記旋回部材が前記作動位置から上昇するように構成されていることを特徴とする。」
に訂正する。

第3 判断
1 訂正事項1
訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。

2 訂正事項2
(1)訂正の目的の適否
訂正事項2-1に係る訂正は、巻線部に設けられた回転軸の方向を、「垂直方向」に限定したものである。
訂正事項2-2に係る訂正は、チャックを、「水平外側方向へ各々延出して」いるものに限定したものである。
訂正事項2-3に係る訂正は、巻線部の回転軸に同心的に接続される共通の接続部を、「上方から」接続されるものに限定したものである。
訂正事項2-4に係る訂正は、チャックを、ワーク保持治具の「前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられたチャック保持部」を保持するものに限定したものである。
訂正事項2-5に係る訂正は、チャックにより「チャック保持部を把持した把持状態で」「上方へ」離脱させることに限定したものである。
訂正事項2-6に係る訂正は、別のワーク保持治具を、チャックによる「把持状態で」「上方から」装着することに限定したものである。」
訂正事項2-7に係る訂正は、「前記ワーク保持治具の接続部が前記巻線部の回転軸に上方から装着されたときの前記旋回部材の位置を作動位置とした場合、前記旋回部材が前記作動位置に位置した状態で前記チャックは前記チャック制御装置により前記把持状態から開放される開放状態へと切り換えられ、前記チャックが前記開放状態でありかつ前記旋回部材が前記作動位置に位置したままの状態で前記ワーク保持部に保持された前記ワークに巻線が施され、前記ワークへの巻線終了後、前記チャックは前記チャック制御装置により前記開放状態から前記把持状態へと切り換えられ、前記旋回部材が前記作動位置から上昇するように構成されている」点を付加して、特許請求の範囲を限定するものである。
以上より、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無
ア 訂正事項2-1
段落【0014】には「巻線部2は、垂直方向のスピンドル3を有し」との記載がある。この記載において、「スピンドル3」の方向は「巻線部に設けられた回転軸」の方向を意味していることは自明であるから、「巻線部に設けられた回転軸」が「垂直方向」であることが記載されているといえる。
また、図面の【図1】、【図4】、【図6】、【図8】、【図9】、【図11】、【図15】、【図16】、【図18】、【図19】、【図22】、【図23】、【図28】、【図29】においても、「巻線部2」の回転軸が垂直方向であることが記載されている。
したがって、訂正事項2-1に係る訂正は、願書に添付した明細書又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。

イ 訂正事項2-2
【図1】、【図4】、【図20】ないし【図23】、【図28】、【図29】には、ターンテーブル(旋回部材)16の複数位置において水平方向に各々延出して設けられているチャック13が記載されている。
したがって、訂正事項2-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

ウ 訂正事項2-3及び訂正事項2-6
段落【0015】には「この巻線部2のスピンドル3には、ワーク保持治具(以下、単に治具という)10が同心的に接続されるようになっている。治具10は後に詳しく述べるが、スピンドル3に着脱可能に嵌合される軸状の接続部11と、これと同心的かつ一体的に形成されたワーク保持部12と、これらの中間に位置しチャック13により保持されるチャック保持部14とを備え、これらが軸状につながったものである。」とあり(下線は当審にて付した。以下同じ。)、段落【0018】には「各チャック13はメカニカルなもので、それぞれ治具10を一時的に把持することができる。これらのチャック13はターンテーブル16に取り付けられているため、そのターンテーブル16とともに旋回し、一方のチャック13が巻線部2に位置しているときは、他方のチャック13はアイドル部15に位置する関係にある。」とあり、段落【0031】には「その結果、巻線部2において治具10に保持された巻線後のワークWは反対側のアイドル部15に移動し、逆にアイドル部15において治具10に保持された巻線前のワークWが180度旋回して巻線部2にいたる。その後昇降シリンダ25によりターンテーブル16が下降し、巻線部2の治具10がスピンドル3に連結させられる。」との記載がある。これらの記載を総合すれば、本件特許明細書等には、「接続部」が「巻線部の回転軸に同心的に上方から接続される」こと、及び「巻線前のワークが装着されている別のワーク保持治具を、前記チャックによる前記把持状態で前記巻線部の回転軸に上方から装着する」ことが記載されているといえる。
したがって、訂正事項2-3及び訂正事項2-6に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

エ 訂正事項2-4
段落【0006】に「前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられてチャックに保持されるチャック保持部」との記載があり、また、段落【0015】に「スピンドル3に着脱可能に嵌合される軸状の接続部11と、これと同心的かつ一体的に形成されたワーク保持部12と、これらの中間に位置しチャック13により保持されるチャック保持部14」との記載がある。
したがって、訂正事項2-4に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

オ 訂正事項2-5
段落【0015】には「この巻線部2のスピンドル3には、ワーク保持治具(以下、単に治具という)10が同心的に接続されるようになっている。」とあり、段落【0018】には、「各チャック13はメカニカルなもので、それぞれ治具10を一時的に把持することができる。これらのチャック13はターンテーブル16に取り付けられているため、そのターンテーブル16とともに旋回し、一方のチャック13が巻線部2に位置しているときは、他方のチャック13はアイドル部15に位置する関係にある。」との記載があり、段落【0031】には「チャック13が巻線部2の治具10を保持した状態となる。その状態で図4に示すように昇降シリンダ25が収縮し、ターンテーブル16を上昇させる。これにより治具10の接続部11はスピンドル3から離脱する。」との記載があり、チャック13がワーク保持治具10を保持した状態で上昇して離脱することが記載されている。これらの記載を総合すれば、本件特許明細書等には、「チャックにより前記チャック保持部を把持した把持状態で前記巻線部の回転軸から上方へ離脱させ」ることが記載されているといえる。
したがって、訂正事項2-5に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

カ 訂正事項2-7
段落【0020】には、以下の記載がある。
「巻線部2の両側には、チャック13を開放するチャック制御装置としてチャック開放シリンダ40、41が設けられている。チャック開放シリンダ40は支柱42にブラケット43を介して支持され、そのピストンロッド44に固定の押圧部45は、一方のサイドメンバ32から一定量突出した支持軸34と同軸的に対向している。他方のチャック開放シリンダ41も同様に支柱46にブラケット47を介して支持され、それのピストンロッド48に固定の押圧部49が、他方のサイドメンバ32から一定量突出した支持軸33に同軸的に対向している。チャック13が巻線部2に位置した状態でチャック開放シリンダ40が伸長すれば、その押圧部45が支持軸34に突き当たってこれを横方向に移動させ、その結果クランプ片31がスプリング35の付勢力に抗して外側に移動する。他方、チャック開放シリンダ41が伸長すれば、その押圧部49が支持軸33に当接してこれをスライドさせ、クランプ片30がスプリング35の付勢力に抗して外側へよる。これらチャック開放シリンダ40及び41が同期して作動することにより、巻線部2に位置するチャック13が開放され、これらチャック開放シリンダ40、41が収縮すれば、チャック13は両側の圧縮スプリング35の付勢力で閉じた状態となる。」
また、段落【0030】、【0031】には、以下の記載がある。
「【0030】次に、以上のような治具10、巻線部2とアイドル部15との間でワークの入替えを行うワーク入替装置、さらにはこれらを含む巻線機の作動を説明する。まず図1において、ターンテーブル16の各チャック13には、治具10が保持される。そして使用される治具10は接続部11やチャック保持部14は全て共通であり、ワーク保持部12がワークWの種類に応じて使い分けられる。図1のように治具10が巻線部2のスピンドル3に装着され巻線が行われる際には、図3のチャック開放シリンダ40、41が互いに伸長してチャック13を開いた状態に維持し、治具10の割出回転でチャック13がこれに干渉しないようにされる。図1のフライヤー1はワークWの各極に対しフライヤー巻を施し、モータ6、タイミングベルト8及びスピンドル3を介して治具10が順次割出回転され、フライヤー巻が完了する。
【0031】その後、図3に示すように、チャック開放シリンダ40、41が退いて、チャック13が巻線部2の治具10を保持した状態となる。その状態で図4に示すように昇降シリンダ25が収縮し、ターンテーブル16を上昇させる。これにより治具10の接続部11はスピンドル3から離脱する。この状態でロータリアクチュエータ22が作動し、ターンテーブル16が180度回転する。その結果、巻線部2において治具10に保持された巻線後のワークWは反対側のアイドル部15に移動し、逆にアイドル部15において治具10に保持された巻線前のワークWが180度旋回して巻線部2にいたる。その後昇降シリンダ25によりターンテーブル16が下降し、巻線部2の治具10がスピンドル3に連結させられる。その後チャック13が開いて前述と同様にフライヤー1により新たなワークWに対し巻線が行われる。」
上記記載、及び上記ウ、オに記載した段落【0015】、【0018】の記載を総合すれば、本件特許明細書等には、「前記ワーク保持治具の接続部が前記巻線部の回転軸に上方から装着されたときの前記旋回部材の位置を作動位置とした場合、前記旋回部材が前記作動位置に位置した状態で前記チャックは前記チャック制御装置により前記把持状態から開放される開放状態へと切り換えられ、前記チャックが前記開放状態でありかつ前記旋回部材が前記作動位置に位置したままの状態で前記ワーク保持部に保持された前記ワークに巻線が施され、前記ワークへの巻線終了後、前記チャックは前記チャック制御装置により前記開放状態から前記把持状態へと切り換えられ、前記旋回部材が前記作動位置から上昇するように構成されている」ことが記載されているといえる。
したがって、訂正事項2-7に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

よって、上記アないしカのとおり、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2に係る訂正は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、発明のカテゴリーや対象や目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるとはいえない。

(4)独立特許要件
訂正事項2に係る訂正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは前記のとおりであるところ、訂正後における特許請求の範囲の請求項に記載される事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

(5)小括
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。

3 訂正事項3ないし6
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3ないし6に係る訂正は、いずれも明細書の特許請求の範囲の記載と、発明の名称の記載と、発明の詳細な説明の記載との整合を図るために訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3ないし6に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。訂正事項6に係る訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることについては、「2 訂正事項2」の「(2)新規事項の有無」のとおりである。
訂正事項3なしい6は、構成要件の削除、請求項の追加、実施例の追加ではなく、発明のカテゴリーや対象や目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるとはいえない。

(2)小括
したがって、訂正事項3ないし6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項までの規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
巻線機のワーク入替装置及び巻線機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】 ワークに巻線する巻線部と、その巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うアイドル部とを有する巻線機において、前記巻線機で巻線されたワークとアイドル部で供給された未巻線ワークとを入れ替える入替装置であって、
前記巻線部に設けられた垂直方向の回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材の複数位置において水平外側方向へ各々延出して設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に上方から接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具に対し、前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられたチャック保持部を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックのいずれかを前記巻線部に対応させ、かつそれとは別の任意のチャックを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記巻線部により巻線された後のワークを、前記ワーク保持治具とともに前記チャックにより前記チャック保持部を把持した把持状態で前記巻線部の回転軸から上方へ離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークが装着されている別のワーク保持治具を、前記チャックによる前記把持状態で前記巻線部の回転軸に上方から装着するチャック制御装置と、
を含み、
前記ワーク保持治具の接続部が前記巻線部の回転軸に上方から装着されたときの前記旋回部材の位置を作動位置とした場合、前記旋回部材が前記作動位置に位置した状態で前記チャックは前記チャック制御装置により前記把持状態から開放される開放状態へと切り換えられ、前記チャックが前記開放状態でありかつ前記旋回部材が前記作動位置に位置したままの状態で前記ワーク保持部に保持された前記ワークに巻線が施され、前記ワークへの巻線終了後、前記チャックは前記チャック制御装置により前記開放状態から前記把持状態へと切り換えられ、前記旋回部材が前記作動位置から上昇するように構成されていることを特徴とする巻線機のワーク入替装置。
【請求項3】 ワークに巻線する複数の巻線部と、それらの巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うために前記複数の巻線部と同数設けられた複数のアイドル部とを有する巻線機において、前記巻線機で巻線された複数のワークとアイドル部で供給された複数の未巻線ワークとを一括して入れ替える入替装置であって、
前記巻線部にそれぞれ設けられた回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材に前記複数の巻線部及び前記複数のアイドル部の総数以上設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックの一方のグループを前記巻線部に対応させ、他方のグループを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記複数の巻線部により巻線された後の複数のワークを、前記各ワーク保持治具とともに前記チャックの一方のグループにより前記複数の巻線部の各回転軸から一括して離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークがそれぞれ装着されている別の複数のワーク保持治具を、前記チャックの他方のグループにより前記複数の巻線部の各回転軸に一括して装着するチャック制御装置と、
を含むことを特徴とする巻線機のワーク入替装置。
【請求項4】 前記旋回部材に設けられた前記チャックはばね部材により常時閉方向へ付勢され、他方、前記チャック制御装置は少なくとも前記巻線部の近傍に位置固定に設けられ、前記旋回部材の静止状態において前記チャックに直接又は他部材を介して間接的に作用し、前記チャックを前記ばね部材の付勢力に抗して開方向へ移動させるアクチュエータを含む請求項2又は3に記載の巻線機のワーク入替装置。
【請求項5】 前記旋回部材が複数並列して設けられ、かつ各旋回部材の最大回転軌跡が隣り合う旋回部材同士で互いに一部オーバーラップするように設定されるとともに、各旋回部材を回転させる前記回転駆動機構は、隣り合う旋回部材同士が衝突しないように回転開始のタイミング・速度・回転方向その他の回転形態を制御する請求項2ないし4のいずれかに記載の巻線機のワーク入替装置。
【請求項6】 ワークに巻線する巻線部と、
その巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うアイドル部と、
前記巻線部に設けられた垂直方向の回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材の複数位置において水平外側方向へ各々延出して設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に上方から接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具に対し、前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられたチャック保持部を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックのいずれかを前記巻線部に対応させ、かつそれとは別の任意のチャックを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記巻線部により巻線された後のワークを、前記ワーク保持治具とともに前記チャックにより前記チャック保持部を把持した把持状態で前記巻線部の回転軸から上方へ離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークが装着されている別のワーク保持治具を、前記チャックによる前記把持状態で前記巻線部の回転軸に上方から装着するチャック制御装置と、
を含み、
前記ワーク保持治具の接続部が前記巻線部の回転軸に上方から装着されたときの前記旋回部材の位置を作動位置とした場合、前記旋回部材が前記作動位置に位置した状態で前記チャックは前記チャック制御装置により前記把持状態から開放される開放状態へと切り換えられ、前記チャックが前記開放状態でありかつ前記旋回部材が前記作動位置に位置したままの状態で前記ワーク保持部に保持された前記ワークに巻線が施され、前記ワークへの巻線終了後、前記チャックは前記チャック制御装置により前記開放状態から前記把持状態へと切り換えられ、前記旋回部材が前記作動位置から上昇するように構成されていることを特徴とする巻線機。
【請求項7】 ワークに巻線する複数の巻線部と、
それらの巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うために前記複数の巻線部と同数設けられた複数のアイドル部と、
前記巻線部にそれぞれ設けられた回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材に前記複数の巻線部及び前記複数のアイドル部の総数以上設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックの一方のグループを前記巻線部に対応させ、他方のグループを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記複数の巻線部により巻線された後の複数のワークを、前記各ワーク保持治具とともに前記チャックの一方のグループにより前記複数の巻線部の各回転軸から一括して離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークがそれぞれ装着されている別の複数のワーク保持治具を、前記チャックの他方のグループにより前記複数の巻線部の各回転軸に一括して装着するチャック制御装置と、
を含むことを特徴とする巻線機。
【請求項8】 前記旋回部材に設けられた前記チャックはばね部材により常時閉方向へ付勢され、他方、前記チャック制御装置は少なくとも前記巻線部の近傍に位置固定に設けられ、前記旋回部材の静止状態において前記チャックに直接又は他部材を介して間接的に作用し、前記チャックを前記ばね部材の付勢力に抗して開方向へ移動させるアクチュエータを含む請求項6又は7に記載の巻線機。
【請求項9】 前記旋回部材が複数並列して設けられ、かつ各旋回部材の最大回転軌跡が隣り合う旋回部材同士で互いに一部オーバーラップするように設定されるとともに、各旋回部材を回転させる前記回転駆動機構は、隣り合う旋回部材同士が衝突しないように回転開始のタイミング・速度・回転方向その他の回転形態を制御する請求項6ないし8のいずれかに記載の巻線機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線機において巻線対象のワークを保持するワーク保持治具を利用して巻線後のワークと巻線前のワークを入れ替えるワーク入替装置、及びそのワーク入替装置を含む巻線機に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、巻線機では、モータ回転子となる複数の極に、例えばフライヤーで巻線を施す。そして、巻線後のワークを巻線部から取り出し、巻線前の新たなワークをその巻線部に位置させるのが普通である。
【0003】
従来そのために、ターンテーブルに複数の巻線部を設け、各巻線部にはそのスピンドルにモータを付属させて割出し回転等を可能とし、かつそのターンテーブルを所定角度回転させ、ある巻線部がフライヤーに対向し、別の巻線部がワーク供給部に対応するように位置させる技術がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の装置では、ターンテーブルに設けた巻線部の各スピンドルにそれぞれモータを付属させ、各巻線部が回転駆動部となるため、構造が複雑になる欠点がある。また、ターンテーブルの回転によりいずれかの巻線部がフライヤーに順次対向することとなるが、フライヤーと、順次それに対応する巻線部との相対的な位置精度を高く維持できない問題もある。つまり、フライヤーと巻線部とが画一的に1対1で対応せず、ターンテーブルの回転により巻線部がフライヤー等に対し位置決めされることとなるため、その位置決め誤差により、固定的に1対1で対応する場合に比べると、フライヤー等と巻線部との位置精度は低くならざるを得ない。
【0005】
本発明の課題は、巻線後のワークと巻線前のワークとを入れ替えることが可能で、かつ回転駆動をともなう巻線部は最小限として構造を簡単にし、しかもフライヤー等と巻線部とを1対1で対応させることができる技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、次のようなワーク保持治具、すなわち
ワークに巻線を行う巻線部の回転軸に接続される共通の接続部と、
その接続部と一体的にかつ前記ワークの種類に応じて形成されたワーク保持部と、
前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられてチャックに保持されるチャック保持部とを備え、
ワークを保持した状態で前記チャックにより前記巻線部に接続され、巻線後はそのワークを保持した状態で前記チャックにより前記巻線部から離脱されるワーク保持治具を利用することができる。
【0007】
このようなワーク保持治具により、ワークの種類が異なっても、その共通の接続部を介して汎用的に巻線部に接続することができる。従って、巻線部はワークの種類にかかわらず、その交換等を要せず固定的なものとすることができる。
【0008】
本発明に係るワーク入替装置は次のようなものである。
ワークに巻線する巻線部と、その巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うアイドル部とを有する巻線機において、前記巻線機で巻線されたワークとアイドル部で供給された未巻線ワークとを入れ替える入替装置であって、
前記巻線部に設けられた垂直方向の回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材の複数位置において水平外側方向へ各々延出して設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に上方から接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具に対し、前記接続部とワーク保持部との間にこれらと一体的に設けられたチャック保持部を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックのいずれかを前記巻線部に対応させ、かつそれとは別の任意のチャックを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記巻線部により巻線された後のワークを、前記ワーク保持治具とともに前記チャックにより前記チャック保持部を把持した把持状態で前記巻線部の回転軸から上方へ離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークが装着されている別のワーク保持治具を、前記チャックによる前記把持状態で前記巻線部の回転軸に上方から装着するチャック制御装置と、
を含み、
前記ワーク保持治具の接続部が前記巻線部の回転軸に上方から装着されたときの前記旋回部材の位置を作動位置とした場合、前記旋回部材が前記作動位置に位置した状態で前記チャックは前記チャック制御装置により前記把持状態から開放される開放状態へと切り換えられ、前記チャックが前記開放状態でありかつ前記旋回部材が前記作動位置に位置したままの状態で前記ワーク保持部に保持された前記ワークに巻線が施され、前記ワークへの巻線終了後、前記チャックは前記チャック制御装置により前記開放状態から前記把持状態へと切り換えられ、前記旋回部材が前記作動位置から上昇するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このようなワーク入替装置では、巻線部はフライヤー等の巻線手段と1対1に対応させ、共通のワーク保持治具を保持する複数のチャックが巻線部とアイドル部とをつなぐように旋回することで、その旋回部材に複数の回転機構部を設ける必要がなく、共通のワーク保持治具を保持するチャックを設けておけばよいため、構造が簡単になる。かつ、上述のように巻線部はフライヤー等の巻線手段と1対1で対応させ、両者間の位置精度を高めることができる。
【0010】
さらに別の発明は、
ワークに巻線する複数の巻線部と、それらの巻線部から離れて位置し、ワークの供給・排出を行うために前記複数の巻線部と同数設けられた複数のアイドル部とを有する巻線機において、前記巻線機で巻線された複数のワークとアイドル部で供給された複数の未巻線ワークとを一括して入れ替える入替装置であって、
前記巻線部にそれぞれ設けられた回転軸と平行な軸線周りに回転する旋回部材と、
その旋回部材に前記複数の巻線部及び前記複数のアイドル部の総数以上設けられたチャックであって、前記巻線部の回転軸に同心的に接続される共通の接続部及びその接続部と一体的で前記ワークの種類に応じたワーク保持部を有するワーク保持治具を着脱可能に保持する複数のチャックと、
それらのチャックの一方のグループを前記巻線部に対応させ、他方のグループを前記アイドル部に対応させるように、前記旋回部材を回転させる回転駆動機構と、
前記複数の巻線部により巻線された後の複数のワークを、前記各ワーク保持治具とともに前記チャックの一方のグループにより前記複数の巻線部の各回転軸から一括して離脱させ、前記旋回部材の回転後に、巻線前のワークがそれぞれ装着されている別の複数のワーク保持治具を、前記チャックの他方のグループにより前記複数の巻線部の各回転軸に一括して装着するチャック制御装置と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、1つの旋回部材で複数のワーク保持治具ひいては巻線後の複数のワークを一括して複数の巻線部から排出し、代わりに別の複数のワーク保持治具ひいては巻線前の複数のワークを一括して複数の巻線部に供給することができる。従って、構造が簡単で工程効率がよい。
【0012】
なお、上述のワーク保持治具を構成要件に入れてワーク入替装置を規定することもできるし、それを含まないで規定することも可能である。
【0013】
さらに、上記のようなワーク入替装置を含んで請求項6又は7のように巻線機を構成することができる。このような巻線機とすることで、上述の共通のワーク保持治具、及びワーク入替装置により、巻線部は必要最小限として構造を簡単にし、かつ巻線部をフライヤー等の巻線手段と1対1で対応させることにより、両者間の相対的な位置精度を高くし、ひいては巻線の品質を高めることができる。また、請求項7の巻線機では、複数のワークを一挙に入れ替えできるから、ワークの供給・排出の効率が高まる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を参照しつつ説明する。
図1において、1は巻線機構の主体をなすフライヤーであり、これに1対1で対応して巻線部2が設けられている。巻線部2は、垂直方向のスピンドル3を有し、これがハウジング4に回転可能に保持される。スピンドル3にはプーリ5が固定され、割出回転用のインデックスモータ(以下、単にモータという)6のプーリ7との間にタイミングベルト8が巻掛けられ、スピンドル3が所定角度で割出回転するようになっている。なお、モータ6は、スピンドル3を割出回転させることも、連続的に回転させることもできるサーボモータ等が採用される。
【0015】
この巻線部2のスピンドル3には、ワーク保持治具(以下、単に治具という)10が同心的に接続されるようになっている。治具10は後に詳しく述べるが、スピンドル3に着脱可能に嵌合される軸状の接続部11と、これと同心的かつ一体的に形成されたワーク保持部12と、これらの中間に位置しチャック13により保持されるチャック保持部14とを備え、これらが軸状につながったものである。ワーク保持部12は、モータコアとなる複数極のワークWの中央孔が嵌合される軸状の部分で、このワーク保持部12はワークWの種類に応じて形成される。巻線部2では、ワークWの各極に対しフライヤー1により巻線が施され、ある極の巻線が終了すると、スピンドル3がモータ6により割出回転させられて、別の極に巻線が行われ、一般には全ての極に対する巻線が行われる。
【0016】
一方、巻線部2から一定距離隔ててアイドル部15が設けられ、このアイドル部15で、巻線後のワークWと未巻線の新たなワークWとの入替えが行われる。上述の巻線部2とアイドル部15とに跨るように旋回部材としてのターンテーブル16が設けられ、ターンテーブル16は回転軸17の上部に連結されている。回転軸17は円筒状のハウジング18内で軸受19、20により回転可能に保持され、この回転軸17のターンテーブル16とは反対側の端部にカップリング21を介して旋回用のロータリアクチュエータ22(エアシリンダ)が連結されている。ロータリアクチュエータ22は、例えばピニオンを挟んで並列するラックが空気圧により互いに逆向きにスライドすることにより、そのピニオンを介してターンテーブル16を180度の角度範囲で往復回転させるもので、図2にも示すように昇降フレーム23にブラケット24を介して吊下状態で支持されている。なお、図2に示すように、その180度の往復回転の移動限度を規定するストッパSが位置固定に設けられ、ストッパ当接部Saがターンテーブル16に設けられている。
【0017】
回転軸17を回転可能に保持する前述のハウジング18は、昇降フレーム23に固定され、この昇降フレーム23にはターンテーブル16の昇降シリンダ25のピストンロッド26が連結されている。昇降シリンダ25はメインフレーム27に取り付けられ、前述の巻線部2のスピンドル3のハウジング4もこのメインフレーム27に固定されている。ターンテーブル16の回転軸17のハウジング18は、このメインフレーム27を貫通し、その貫通孔28において昇降可能となっている。昇降シリンダ25のピストンロッド26が収縮すれば、ハウジング18を介して回転軸17及びターンテーブル16が上昇し、これにともなってロタリアクチュエータ22も一体的に上昇する。また、その上昇した状態で、ロータリアクチュエータ22の作動によりターンテーブル16は例えば180度の回転角度で往復回転(同方向の回転でもよい)することができる。
【0018】
ターンテーブル16の両端には上述のチャック13が回転軸17の軸線に関し対称位置に設けられている。各チャック13はメカニカルなもので、それぞれ治具10を一時的に把持することができる。これらのチャック13はターンテーブル16に取り付けられているため、そのターンテーブル16とともに旋回し、一方のチャック13が巻線部2に位置しているときは、他方のチャック13はアイドル部15に位置する関係にある。
【0019】
図3にチャック13の平面図を示す。各チャック13は互いに接近離間可能な一対のクランプ片30、31を有し、このクランプ片で治具10を把持する。各クランプ片30、31は旋回フレームとしての一対のサイドメンバ32を横断する支持軸33、34に支持され、支持軸33、34は、各クランプ片30、31の基端側部分を貫通している。クランプ片30は支持軸33に固定される一方で支持軸34とは摺動可能な非固定状態にあり、クランプ片31は、支持軸34に固定され、支持軸33とは摺動可能な非固定状態にある。そして、クランプ片30と一方のサイドメンバ32との間、ならびにクランプ片31と他方のサイドメンバ32との間には、それぞれ圧縮スプリング35が予圧縮状態で挿入されている。これらの圧縮スプリング35はチャック13を閉じる方向に付勢する付勢手段の役割を果たすもので、クランプ片30、31の接近方向の移動限度は、軸33に設けられたフランジ状のストッパ37と、支持軸34に設けられた同様なフランジ状のストッパ38によって規定される。
【0020】
巻線部2の両側には、チャック13を開放するチャック制御装置としてチャック開放シリンダ40、41が設けられている。チャック開放シリンダ40は支柱42にブラケット43を介して支持され、そのピストンロッド44に固定の押圧部45は、一方のサイドメンバ32から一定量突出した支持軸34と同軸的に対向している。他方のチャック開放シリンダ41も同様に支柱46にブラケット47を介して支持され、それのピストンロッド48に固定の押圧部49が、他方のサイドメンバ32から一定量突出した支持軸33に同軸的に対向している。チャック13が巻線部2に位置した状態でチャック開放シリンダ40が伸長すれば、その押圧部45が支持軸34に突き当たってこれを横方向に移動させ、その結果クランプ片31がスプリング35の付勢力に抗して外側に移動する。他方、チャック開放シリンダ41が伸長すれば、その押圧部49が支持軸33に当接してこれをスライドさせ、クランプ片30がスプリング35の付勢力に抗して外側へよる。これらチャック開放シリンダ40及び41が同期して作動することにより、巻線部2に位置するチャック13が開放され、これらチャック開放シリンダ40、41が収縮すれば、チャック13は両側の圧縮スプリング35の付勢力で閉じた状態となる。
【0021】
なお、チャック開放シリンダ40、41は巻線部2に対応してのみ設けられ、これと反対側のアイドル部15には設けられていない。つまり、チャック13は巻線部2では開放される機会があるが、アイドル部15では閉じたままの状態に保たれることとなる。
【0022】
各チャック開放シリンダ40、41の押圧部45、49は、旋回フレームたるサイドメンバ32の旋回時にこれと干渉しないように、各支持軸33及び34と一定の間隔を保つ。なお、各チャック開放シリンダ40、41の支柱42、46は、図1及び2に示したメインフレーム27に固定されている。図2では、チャック開放シリンダ40、41の位置のみを示す。また、図2において51は昇降フレーム23に固定されたガイドポストであり、これがメインフレーム27に取り付けられたガイドブッシュ52に摺動可能に嵌合して、上述の旋回フレーム32を主体とするターンテーブル16の昇降をガイドする。図4はそのようにターンテーブル16が上昇した状態を示している。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、旋回フレーム32の上部にはカバープレート53が被せられ、平面視では図5に示すような形態のターンテーブル16となる。
【0024】
図6に前述のワーク保持治具10の一例を拡大して示す。治具10は下から前述の接続部11、チャック保持部14及びワーク保持部12を有する。この治具10は接続部11及びチャック保持部14は複数の治具10について共通であり、ワーク保持部12はワークの種類に応じて異なるものが用意される。そして、治具10は下側部分55と上側部分56との2分割構造となっている。すなわち図15に示すように、上側部分56には下側に突出する軸部57が形成され、これが下側部分55の挿入孔58に挿入されるとともに、下側からボルト59で結合されている。また、横方向にねじ込まれたセットスクリュー60が上側部分56と下側部分55の一体性を強化している。また、下側部分55には軸方向と平行に延びるU字状の溝61が被係合部として形成され、前述のスピンドル3にはこのU字状の溝61に入り込む位置決めピン62が係合部として設けられている。この溝61と位置決めピン62が係合するとともに、下側部分55の前記接続部11がスピンドル3の中心孔63に入り込むことで、治具10とスピンドル3とが回止め状態で着脱可能に結合される。
【0025】
図6に戻って、その上端部のワーク保持部12には、例えば図7に巻線前と巻線後の状態を示すワークWの中心孔65を、相対回転不能に嵌合する回止め嵌合部64(図6)が多角形状に形成され、ここにワークWの中心孔65がはまりこむ。図8は、ワークWがはまった治具10がさらにスピンドル3に装着された状態を示すものである。
【0026】
図9は、例えば図10に示すようなワークWを装着するためのワーク保持部66を備えた治具10を示している。図10に示すワークWは、中心孔67の内周面に軸方向と平行にのびる溝68を有し、治具10のワーク保持部66にはこの溝68と係合する軸方向と平行な突条69が形成されていて(図9)、これらが互いに係合することにより、図10のワークWが、治具10のワーク保持部66に相対的に回転不能状態で嵌合される。つまり、治具10の下側部分55は、図6と同様であるが、上側部分70が、図10に示すワークWに特有のものとなっている。図11はそのようなワークWがはめ込まれた治具10が、スピンドル3に連結された状態を示している。
【0027】
図12は、前述のチャック13の各クランプ片30、31を拡大して示すものである。各クランプ片30、31は互いに平行な平面で構成されるクランプ面71と、それに隣接して形成された円弧状のクランプ凹部72とを有している。図13に示す治具10のチャック保持部14は、図14に示すように、2平面取りされた互いに平行な被クランプ面73と、その下側に円弧状に突出した被クランプ凸部74を備えており、チャック13の互いに対向するクランプ面71が治具10の2平面取りされた被クランプ面73に押し付けられることで、治具10のチャック13に対する回転位相が一義的に定まり、チャック13の円弧状のクランプ凹部72が治具10の円弧状の被クランプ凸部74に係合することで、チャック13に対する治具10の中心位置が一義的に定まることとなる。
【0028】
なお、図6に示すワーク保持部12に代えて、図16に示すように、治具10’の先端に軸線から偏心したワーク保持部75が形成され、このワーク保持部75に治具軸線と直交する方向にワークWの中心軸Waを挿入する挿入孔75aが設けられた治具を採用することもできる。この場合は、ワーク保持部75の挿入孔75aにワークWの中心軸Waが挿入された治具10’がターンテーブル16のチャック13により、巻線部2のスピンドル3に接続される。ワークWは治具10’のほぼ中心に位置し、スピンドル3の連続回転によりワークWが一方向へ連続回転させられつつ、ノズルNから供給されるワイヤWiがワークWの任意の極にいわゆるスピンドル巻で巻線される。ワークWの治具10’に対する回転位相は凸曲面のストッパ75bがスプリング75cによりワークWの極間隙間に押し付けて固定される。ある極の巻線が終わればワークWを割出回転させる送り部材75dが極間隙においてワークWを所定角度回転させるように押し動かし、別の極へのスピンドル巻が可能な状態となる。この際、ストッパ75bはスプリング75cの付勢力に抗して退避させられ、ワークWの割り出し回転を許容する。
【0029】
このように図6の治具10にワークWを装着してこれにフライヤー巻を施したり、図16の治具10’にワークWを装着してこれにスピンドル巻を行ったりすることができる。これらの巻方法のいずれを選択するかは、ワークの用途に応じて適宜ワーク保持治具を選択して決めることができる。
【0030】
次に、以上のような治具10、巻線部2とアイドル部15との間でワークの入替えを行うワーク入替装置、さらにはこれらを含む巻線機の作動を説明する。まず図1において、ターンテーブル16の各チャック13には、治具10が保持される。そして使用される治具10は接続部11やチャック保持部14は全て共通であり、ワーク保持部12がワークWの種類に応じて使い分けられる。図1のように治具10が巻線部2のスピンドル3に装着され巻線が行われる際には、図3のチャック開放シリンダ40、41が互いに伸長してチャック13を開いた状態に維持し、治具10の割出回転でチャック13がこれに干渉しないようにされる。図1のフライヤー1はワークWの各極に対しフライヤー巻を施し、モータ6、タイミングベルト8及びスピンドル3を介して治具10が順次割出回転され、フライヤー巻が完了する。
【0031】
その後、図3に示すように、チャック開放シリンダ40、41が退いて、チャック13が巻線部2の治具10を保持した状態となる。その状態で図4に示すように昇降シリンダ25が収縮し、ターンテーブル16を上昇させる。これにより治具10の接続部11はスピンドル3から離脱する。この状態でロータリアクチュエータ22が作動し、ターンテーブル16が180度回転する。その結果、巻線部2において治具10に保持された巻線後のワークWは反対側のアイドル部15に移動し、逆にアイドル部15において治具10に保持された巻線前のワークWが180度旋回して巻線部2にいたる。その後昇降シリンダ25によりターンテーブル16が下降し、巻線部2の治具10がスピンドル3に連結させられる。その後チャック13が開いて前述と同様にフライヤー1により新たなワークWに対し巻線が行われる。
【0032】
なお、巻線中に反対側のアイドル部15では、例えば作業者が巻線後のワークWを治具10から取り外し、巻線前の新たなワークWを治具10に装着して待機することができる。以後同様にターンテーブル16の180度の旋回を伴い、巻線されたワークWと巻線前のワークWとが入れ替えられることとなる。また、このアイドル部15に隣接して搬送コンベアが設けられる場合、アイドル部15と搬送コンベアとの間でワーク保持治具10の受け渡しを行うロード・アンロード装置(例えばロボット)を設けて、アイドル部12で治具10ごと巻線後のワーク及び未巻線のワークの受渡しを行うこともできる。この場合、アイドル部12にもチャック開放シリンダ40等を設置することとなる。
【0033】
次に、図17以降に基づいて本発明の別の実施例を説明する。この実施例ではターンテーブル78に対し、その中心Oに均等な位置に4個のチャック13が設けられ、各チャック13に治具10が保持された4軸タイプのものである。そして、ターンテーブル78は長方形状をなし、その一方の側の長辺に設けられた2つのチャック13がそれぞれ巻線部2に対応する。言い換えれば各フライヤー1に対応する。反対側の長辺に位置する2個のチャック13はそれぞれアイドル部15に対応する。つまりこの例ではチャック13の2個が同時にそれぞれ巻線部2に位置し、反対側のチャック13が同時にそれぞれアイドル部15に位置する。そして、各フライヤー1に1対1で対応するように各巻線部2に位置固定にインデックス等のスピンドル3が設置されている。また、2箇所の巻線部2を挟んでその両側にチャック開放シリンダ40、41が位置固定に設けられている。
【0034】
図26に示すように、片側2個のチャックは旋回フレーム79に摺動可能に掛け渡された2本の支持軸80、81に支持されている。各支持軸80、81は各チャック13のクランプ片30、31を貫通している。各チャック13のクランプ片30は支持軸80に固定される一方で、支持軸81に対しては摺動可能である。相手方のクランプ片31は支持軸81に固定される一方で、支持軸80に対しては摺動可能である。そして両側の旋回フレーム79とクランプ片30及び31との間には前述と同様の圧縮スプリング35が予圧縮状態で挿入されている。37、38は、各支持軸80、81にフランジ状の形態で設けられて中間の旋回フレーム79に当接し、各チャックの接近距離を規定するストッパである。
【0035】
そして、図27に示すように、チャック開放シリンダ40が支持軸81を一方の側に移動させ、チャック開放シリンダ41が支持軸80を他方の側に移動させることにより、それぞれの巻線部2に位置している2個のチャック13が同時に開放される。アイドル部15側にあるチャックは閉じたままで開放はされない。これらのチャック13の作動は、2連が同時に動くことを除いては、図3に示すものと基本的には同様のものである。
【0036】
また、図20?図23に示すように、ターンテーブル78の中心部には回転軸17が連結され、この回転軸17がロータリアクチュエータ22により180度ずつ往復回転させられる。なお、ターンテーブル78を昇降させる昇降シリンダ25等の昇降機構、ならびに巻線部2にあるスピンドル3をインデックス回転又は連続回転させる回転駆動機構は、図1及び図2に示すものと同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図18に示すように、メインフレーム27には門形フレーム83が形成され、この門形フレーム83から下方に垂下する状態で回転ガイド軸84が設けられている。各回転ガイド軸84は巻線部2のスピンドル3と同心的に設けられ、上端が共通の昇降フレーム85に支持されるとともに、その昇降フレーム85が昇降シリンダ86に連結されることで、フレーム85を介して昇降させられるようになっている。
【0038】
図19に示すように、各回転ガイド軸84は、治具10の上端側に位置するワーク保持部12(ワークWを貫通して上方に突出する部分)に上側から相対回転不能に嵌合するようになっており、回転ガイド軸84は、昇降フレーム85に対して回転可能に取り付けられている。そのため、回転ガイド軸84が治具10に対し上方から同軸的に結合した状態では、治具10がスピンドル3によりインデックス回転させられるのにともなって、回転ガイド軸84もこれと一体に回転し、治具10の回転に伴う芯ブレを防止する。なお、治具10の上端には、図6に示すように直径方向の係合溝64aが形成され、図18の回転ガイド軸84の下端にはその係合溝64aに嵌まり込む図示しない係合突起が形成されていて、これら係合溝64aと係合突起との結合により、回転ガイド軸84と治具10との同軸性が付与され、かつ相対回転が阻止される。
【0039】
また、図18に示すように、巻線部2における各治具10のワークWに対応して巻線ガイド87が設けられている。各巻線ガイド87は、フライヤー1によりワークWに巻線をするときだけ退避位置から前進して、ワークWの近傍に至り、フライヤー1がワークWの1つの極に巻線を行う際、その線材が隣合う極と干渉するのを防いで、線材がその極に容易に落とし込まれるようにガイドする。巻線が終了すれば、各巻線ガイド87は退避位置へ後退する(図18の紙面に直角な方向)。これにより、旋回フレーム79の治具10と巻線ガイド87が干渉することはない。
【0040】
次に、以上のような4軸構成のワーク入替装置を含む巻線機の作動を説明する。
まず、図17に示す形態で、巻線部2でそれぞれのフライヤー1により巻線が行われる状態では、図20及び図22に示すようにターンテーブル78が下降した状態にあり、また図27に示すように、巻線部2側の2個のチャック13はいずれも開放状態とされる。また、図24に示すように、回転ガイド軸84が下降した状態で各治具10の先端部にはまり込み、治具10のインデックス回転をガイドする。図17の各フライヤー1により2個のワークに対し同時に巻線工程が実施され、その巻線工程では治具10ひいてはワークWがインデックス回転させられる。
【0041】
2個のワークWに対する巻線が完了すると、図25に示すように、回転ガイド軸84が昇降シリンダ86の作動により上昇して各治具10から離間する。また、図26に示すように、巻線部2側の2個のチャック13が同期して閉じ、巻線が完了したワークWを保持している治具10をクランプする。さらに図21及び図23に示すように、昇降シリンダ25が作動して、ターンテーブル78がチャック13及び治具10とともに上昇する。これにより、巻線部2の治具10がスピンドル3から切り離される。その後図21及び図23のロータリアクチュエータ22が作動して、ターンテーブル78が180度回転し、図17において、巻線後のワークを保持する治具10は、アイドル部15に旋回して移動し、アイドル部15において、未巻線ワークを保持した治具10は、これと入れ替わって巻線部2に位置させられる。
【0042】
以上の工程を経時的に示したのが図28及び図29である。図28(a)に示すように巻線動作が行われ、(b)に示すように巻線機構(フライヤー1)が後退し、(c)に示すように回転ガイド軸84が上昇する。かつ、図29(a)に示すように、ターンテーブル78が上昇、及び180度の回転により巻線後のワークと巻線前のワークが入れ替えられ、同図(b)に示すように、ターンテーブル78の下降(治具10とスピンドル3との接続)、さらに同図(c)に示すように回転ガイド軸84の下降(フライヤー1の前進)、チャック13の開放、巻線の開始となる。
【0043】
以上のように、巻線部2において2以上のワークに対し同時に巻線を行い、かつ2以上の未巻線ワークを巻線部2と入れ替えるためには、図30(b)に示すように、図1?図3に示したターンテーブル16を有する2軸型のワーク入替装置を横方向に2連つないで設けることもできる。ただし、その場合は横方向寸法のL2が大きくなる。言い換えればフライヤーのピッチPbがある程度大きくなる。これに対し図30(a)に示すように、ターンテーブル78を有する4軸のワーク入替装置とすれば、横方向寸法のL1はL2より相当小さくでき、フライヤー間のピッチ(言い換えれば巻線部間のピッチ)Paを小さくでき、限られたスペースでより多くの巻線部を設定することができる。
【0044】
さらに、図30(a)に示す4軸のワーク入替装置を横方向に連ねることも可能である(図31)。その際、4軸のターンテーブル78の最大回転軌跡Sが互いに干渉しないように各軌跡S間に所定の隙間をもって横方向に連ねることができる。つまり、各ターンテーブル78を同時に回転させる場合は、それらの最大回転軌跡Sがオーバーラップすると、互いに干渉を起こして回転困難となったりするので、最大回転軌跡Sは、オーバーラップしないように配置する形態がまず考えられる。ただ、そのような配置形態で、チャック13間の間隔、言い換えれば巻線部のピッチL3が、横方向に連なる各ターンテーブルにおいて常に等しく設定困難な場合がある。例えば1つのターンテーブル78間のチャック間隔L3と、隣合うターンテーブル78間のチャック間隔が異なってしまうと、巻線部ひいてはフライヤー等が等間隔で配置されているものに対応できない場合も生じる。
【0045】
そこで、複数のターンテーブル78間にわたって全てチャック間隔L3が等しくなるように、各ターンテーブル78の最大回転軌跡Sをオーバーラップして配置する。このようにオーバーラップさせた場合、各ターンテーブル78を同期して回転させると、隣合うターンテーブル78間で部材の衝突等が生ずるおそれがあるので、これを回避するために、各ターンテーブルの回転時期を互いにずらしたり、回転方向を逆にしたりするとかができる。例えば、第1番目、第2番目、第3番目のターンテーブル78が順次相前後して回転を開始し、また180度の回転を終了するように、それぞれの旋回機構を互いに関係付けて制御する。あるいは隣り合うターンテーブル78の回転方向が互いに逆になるように制御する。これによって各ターンテーブルの78の最大回転軌跡Sがオーバーラップしても、部材の衝突等は回避でき、かつ横方向に連なるチャック間のピッチを同一にすることができる。なお、このことは、図30(b)のように、2軸2連のターンテーブル16の最大回転軌跡Sを互いにオーバーラップさせるときでも実質上同じである。
【0046】
図32に示すターンテーブル88のように、例えば6軸のチャック13を設け、これを例えば180度回転させることもできる。なお、この場合その最大回転軌跡S’は4軸の場合よりある程度大きくなるので、それを考慮したスペースの確保が必要である。また、図32に示すような例えば6軸のターンテーブル88を横方向に連ねることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例である2軸1連のターンテーブルを含むワーク入替装置の側面図。
【図2】
図1の正面図。
【図3】
図1の平面図(ただし、ターンテーブル16のカバープレートは取り外した状態を示す)。
【図4】
図1のターンテーブルが上昇した状態を示す側面図。
【図5】
そのターンテーブルの平面図。
【図6】
ワーク保持治具の一例とスピンドルの関係を示す正面図。
【図7】
巻線前後のワークの一例を示す正面図。
【図8】
ワークを保持した治具がスピンドルに装着された状態を示す正面図。
【図9】
図6とは異なるワーク保持治具とスピンドルとの関係を示す正面図。
【図10】
図7とは異なる巻線状態のワークの一例を示す正面図。
【図11】
そのワークWを保持した治具がスピンドルに装着された状態を示す正面図。
【図12】
チャックの要部を示す斜視図。
【図13】
チャックが治具を把持した状態の正面図。
【図14】
図13のA-A断面図(ただし、チャックは省略)。
【図15】
治具とスピンドルとの結合状態の断面図。
【図16】
スピンドル巻に使用される治具の一例とワークの関係を示す図。
【図17】
本発明の他の実施例である4軸1連のターンテーブルを含むワーク入替装置の平面図。
【図18】
図17の正面図。
【図19】
図18の側面図。
【図20】
図17のターンテーブルの下降状態の正面図。
【図21】
同じく上昇状態の正面図。
【図22】
図19のターンテーブルの下降状態の断面図。
【図23】
同じく上昇状態の断面図。
【図24】
回転ガイド軸の下降状態の正面図。
【図25】
同じく上昇状態の正面図。
【図26】
図17のチャックのクランプ状態の平面図。
【図27】
その開放状態の平面図。
【図28】
図17等のワーク入替装置の作動を経時的に示す工程図。
【図29】
図28に続く工程図。
【図30】
2軸のターンテーブルを2連つなげたもの(2連2軸)と、4軸1軸のターンテーブルとを比較して示す平面図。
【図31】
4軸のターンテーブルを複数横方向に連ね、かつ各最大回転軌跡をオーバーラップさせた例を示す平面図。
【図32】
6軸1連のターンテーブルの一例を示す平面図。
【符号の説明】
1 フライヤー(巻線機構)
2 巻線部
3 スピンドル
10 ワーク保持治具
11 接続部
12 ワーク保持部
13 チャック
14 チャック保持部
15 アイドル部
16、78、88 ターンテーブル(旋回部材)
17 回転軸
22 ロータリアクチュエータ
25 昇降シリンダ
30、31 クランプ片
35 圧縮スプリング
40、41 チャック開放シリンダ
55 治具の下側部分
56 治具の上側部分
71 クランプ面
72 クランプ凹部
73 被クランプ面
74 被クランプ凸部
84 回転ガイド軸
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-12-02 
結審通知日 2016-12-06 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願平9-330932
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B65H)
P 1 41・ 851- Y (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
植田 高盛
登録日 2004-03-19 
登録番号 特許第3535717号(P3535717)
発明の名称 巻線機のワーク入替装置及び巻線機  
代理人 張川 隆司  
代理人 張川 隆司  

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