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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E02D
管理番号 1323818
審判番号 無効2015-800018  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-01-21 
確定日 2016-12-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3365722号発明「スクリューポイント」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正請求書に添付された明細書のとおり訂正することを認める。 特許第3365722号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3365722号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、手続の経緯は、以下のとおりである。

平成 9年 3月31日 本件出願(特願平9-98288号)
平成14年11月 1日 設定登録(特許第3365722号)
平成27年 1月21日 本件無効審判請求
平成27年 4月30日 被請求人より答弁書提出
平成27年 5月25日 審理事項通知書(起案日)
平成27年 6月18日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年 7月 2日差出(平成27年7月16日付け)
被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成27年 7月16日 口頭審理
平成27年 8月19日 審決の予告(予告の日)
平成27年10月21日 被請求人より訂正請求書及び上申書提出

第2 本件発明
1 本件特許発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明をまとめて「本件発明」という。

「【請求項1】
地質の調査を行う試験に際して所定の長さのロッド部材先端に取り付けられ、所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって、
先端尖鋭な本体部を有し、この本体部の基端部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し、この無頭ねじ部品をロッド部材に設けためねじに螺合して連結するように構成したことを特徴とするスクリューポイント。
【請求項2】
本体部は硬度が高くなるよう構成し、また無頭ねじ部品は高い靭性を有するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のスクリューポイント。」

2 本件特許の明細書の記載事項
本件特許の明細書には、以下のとおり記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中に軸状のロッド部材を貫入して各種データを採取する地質調査試験において、ロッド部材の先端に連結されて地中に貫入されるスクリューポイントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、土地の地耐力を調査するために、貫入ロッドに荷重と回転とを付加して地中に貫入し、所定深度毎の貫入ロッドの半回転数(貫入ロッドの半回転を1として計数した回転回数)、荷重などのデータを元にその土地の地層構造を判定する、いわゆるスウェーデン式サウンディング試験が一般に広く行われている。図5に示すように、この試験において使用される貫入ロッド50は、所定の長さのロッド部材51と、このロッド部材51の先端に取り付けられるスクリューポイント52とから構成されている。前記ロッド部材51には、一端におねじ(図示せず)、他端にめねじ51aが形成されており、図示しない同一構成の他のロッド部材を継ぎ足し可能に構成されている。また、前記スクリューポイント52は、日本工業規格(JIS規格)に準じて製作されるものであり、略四角錘形状の素材をねじって先端尖鋭なドリル状に成形されている。このスクリューポイント52の基端面には、おねじ52aが一体に突出成形されており、前記ロッド部材51のめねじ51aを螺合して連結可能に構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般にスクリューポイントには、ドリル状を成す表面的な部分は、貫入時に土砂、礫などとの接触で摩耗し易いため、硬さが求められ、一方ロッド部材に接続されるおねじ部近辺は貫入時の衝撃的な曲げモーメント、あるいは回転トルクによる引っ張り応力などで破損することがないように強度および靱性が求められる。しかしながら、上記従来のスクリューポイントは、ドリル状部分もおねじ部も全て同一材料で一体に構成されているため、前述のような性質を両立させることが極めて困難である等の問題が発生している。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、各部に要求されるそれぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供することを目的とする。この目的を達成するため、本発明は、地質の調査を行う試験に際して所定の長さのロッド部材先端に取り付けられ、所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって、先端尖鋭な本体部を有し、この本体部の基端部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し、この無頭ねじ部品をロッド部材に設けためねじに螺合して連結するように構成されている。前記本体部は、その硬度が高くなるよう構成されており、また、前記無頭おねじ部材は高い靱性を有するように構成されている。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図4において、100は詳細を後記する貫入ロッドを地中に貫入して地質を調査する、いわゆる貫入試験を行うための自動貫入試験機であり、所定重量の錘110を載荷可能かつ支柱120に沿って昇降自在な載荷台130を有している。この載荷台130には、モータ140の駆動を受けて回転可能なチャック150が配置されており、このチャック150には、下方に垂下して延びる貫入ロッド200が一体に回転可能なように保持される。また、前記載荷台130には支柱120背面側に位置してスプロケット160が回転可能に取り付けられており、このスプロケット160は、支柱120背面に鉛直に延びて固定されているチェーン部材170に常時噛合している。また、このスプロケット160は前記載荷台130の内部に設けられているブレーキ機構(図示せず)に連結されており、このブレーキ機構の作動を受けて回転を制動されるようになっている。
【0006】
前記貫入ロッド200は、図1ないし図3に示すように、所定の長さに構成されたロッド部材210と、このロッド部材210先端に取り付けたスクリューポイント1とから構成されている。前記ロッド部材210には、その一端にめねじ211が、また他端にはおねじ212がそれぞれ一体形成されており、同一構成からなる他のロッド部材(図示せず)のめねじをおねじ212に螺合させて長さを延長可能に構成されている。また、前記スクリューポイント1は、先端先鋭なドリル状の本体部2を有し、この本体部2の基端面には前記ロッド部材210のめねじ211と同一構成を成すめねじ3が中心線上に延びて形成されている。この本体部2のめねじ3には、スタッドボルトなどの無頭ねじ部品4が螺合されており、この無頭ねじ部品4に前記ロッド部材210のめねじ211を螺合させて連結可能に構成されている。
【0007】
前記スクリューポイント1の本体部2は、SCM材などの焼入れ可能な材料からなり、実際に焼入れが施されてその硬度が高められている。また、前記無頭ねじ部品4もSCM材によって構成されているが、この無頭ねじ部4品には、靱性が高くなるよう熱処理が施されている。
【0008】
上記構成の自動貫入試験機100は、貫入ロッド200に所定の荷重を負荷しつつ、必要に応じて回転を加えて地中に貫入し、この貫入ロッド200が所定量貫入するごとに、その時の荷重とそれまでの回転回数とをデータとして収集する、いわゆるスウェーデン式サウンディング試験に準拠する貫入試験を行うものである。この貫入試験に際しては、まず、載荷台130に所定重量の錘110を載荷することにより載荷台130の全装備重量を100kgf[980N]にし、続いてブレーキ機構(図示せず)が作動して所定の制動力を生み、この制動力によりスプロケッ160が制動され、載荷台130に下降抵抗力が加えられる。この時、貫入ロッド200にかかる荷重は、載荷台130の装備重量100kgf[980N]から前述の抵抗力を減じた値となる。このように貫入ロッド200にかかる荷重は、ブレーキ機構の発生する制動力によって調整され、貫入ロッド200の地中への貫入速度に応じて25kgf[245N]単位で増減される。このように荷重を調整して貫入ロッド200の貫入を行い、全くブレーキ機構の制動力が作用していない100kgf[980N]の荷重でも貫入ロッド200が貫入しない場合は、モータ140の駆動によりチャック150が回転し、貫入ロッド200を回転させながら貫入(以下、回転貫入という)する。この貫入試験では、貫入ロッド200が所定量貫入する毎に、所定量貫入するに要した貫入ロッド200の半回転数(貫入ロッドの半回転を1として計数した回転回数)と、所定量貫入した時点における荷重値とが試験データとして記録される。なお、このようにして得られた試験データは、その試験地の地質を判定するための判定基準として用いられる。
【0009】
前述のように貫入ロッド200を地中に貫入する場合、スクリューポイント1には岩盤、礫などとの接触による衝撃的な曲げモーメント、回転時の回転トルクによる引っ張り応力などが作用するが、無頭ねじ部品4は靱性が高いため、このような曲げモーメント、引っ張り応力などに耐え得る。また、前述のモーメント、応力のみならず、スクリューポイント1には礫土との摩擦も作用するが、本体部2は焼入れを行うことにより硬度が高められているため、礫土との摩擦によっても容易に摩滅することがない。このように、本スクリューポイント1は、その構成部品(本体部2および無頭ねじ部品4)を別個に製作することでそれぞれに必要な特性が確保されているのである。
【0010】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のスクリューポイントは、ドリル状の本体部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を螺合することによって構成されている。このため、本体部、無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれに必要な性質を確保することができる等の利点がある。したがって、無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント、引っ張り応力などによる折損を防止するとともに、本体部には焼入れなどの熱処理を施して硬度を高め、貫入時の摩滅を抑えることができる等の利点がある。」

第3 請求人の主張
1 請求人が主張する無効理由の概要
請求人は、本件特許発明1及び2の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成27年6月18日付け口頭審理陳述要領書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出している。

本件特許発明1及び2は、本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明1及び2についての特許は無効とされるべきものである。
本件特許の各発明と各刊行物(証拠)との対応関係は以下のとおりである。
(1)無効理由1(本件特許発明1に対する理由1)
本件特許発明1は、甲第7号証又は甲第6号証に記載された発明、及び、甲第2号証、甲第5号証又は甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)無効理由2(本件特許発明1に対する理由2)
本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第10号証又は甲第4号証に記載された発明、及び、甲第11ないし15号証に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)無効理由3(本件特許発明1に対する理由3)
本件特許発明1は、甲第3号証、甲第4号証又は甲第6号証に記載された発明、及び、甲第2号証、甲第5号証、甲第8号証又は甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)無効理由4(本件特許発明2に対する理由)
本件特許発明2は、無効理由1ないし3で引用した各甲号証に加えて、甲第5号証又は甲第2号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(証拠方法)
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特許第3365722号公報(本件特許公報)
甲第2号証:実願平1-111883号(実開平3-50624号)のマイクロフィルム
甲第3号証:登録実用新案第3025256号公報
甲第4号証:「図解ボーリング便覧」の76,77,92,93,100?113頁、株式会社ラテイス、昭和43年5月21日発行
甲第5号証:「土と基礎 Vol.12 No.7」の23?29頁、資料-76「JIS原案 スウェーデン式サウンディング試験法」、社団法人土質工学会、昭和39年7月25日発行
甲第6号証:「土質工学会誌 土と基礎 Vol.30 No.6」の57?61頁、社団法人土質工学会、昭和57年6月25日発行
甲第7号証:「Indian Standard」IS:4968(Part2(審決注:「Part2」の「2」は、原文ではローマ数字である。以下同じ。))-1976、サブタイトル「METHOD FOR SUBSURFACE SOUNDING FOR SOILS」、BUREAU OF INDIAN STANDARDS(インド規格局)、April 1977(1977年4月)発行
甲第7号証の1:甲第7号証の日本語翻訳文
甲第8号証:「貫入試験と地盤調査」の52?55頁、鹿島出版会、昭和51年7月5日発行
甲第9号証:米国特許第5313825号明細書
甲第9号証の1:甲第9号証の書誌的事項及び要約書の日本語翻訳文
甲第9号証の2:甲第9号証の第3欄60行?第4欄18行の日本語翻訳文
甲第10号証:米国特許第4332160号明細書
甲第10号証の1:甲第10号証の書誌的事項及び要約書の日本語翻訳文
甲第10号証の2:甲第10号証の第7欄1?12行の日本語翻訳文
甲第11号証:特開平7-133649号公報
甲第12号証:特開平8-86047号公報
甲第13号証:特開昭58-50344号公報
甲第14号証:特表昭62-501515号公報
甲第15号証:特開平7-161472号公報
甲第16号証:「スウェーデン式サウンディング試験方法 JIS A 1221-1995」、財団法人日本規格協会、平成7年6月30日発行
甲第17号証:「土質工学会誌 土と基礎 Vol.41 No.10」の98?105頁、社団法人土質工学会、平成5年10月1日発行
甲第18号証:「土と基礎 Vol.11 No.11」の3?9頁、社団法人土質工学会、昭和38年11月25日発行

2 無効理由の具体的な主張
(1)無効理由1(本件特許発明1に対する理由1)
甲第7,6号証には、「地質調査の貫入試験用の先端部であるコーンの基端部にめねじを設け、同先端部のめねじに無頭ねじ部品を介してロッドの下端のめねじと螺合して、先端部(コーン)をロッド下端に連結した地質調査用先端部とロッドとの連結構造」の発明(技術的思想)が開示されている。
本件特許発明1は、甲第7又は6号証に記載の発明との構成上の差異は、貫入の先端部が「コーン」であるか、「スクリューポイント」であるかの構成上の差異しかない。
しかも、「コーン」と「スクリューポイント」は貫入試験での貫入の先端部として日本・世界で広く使用され、両者とも周知の貫入の先端部である。
したがって、この甲第7,6号証のインド規格の貫入試験の先端部の「コーン」を「スクリューポイント」に置換することは容易である。
すなわち、甲第7,6号証の発明と甲第2,5又は8号証に記載の「貫入する先端部をスクリューポイントとした発明」又は出願時のJIS規格で採用された「スクリューポイントの技術」を組み合せることで、本件特許発明1の構成となるものであり、これら発明から容易に発明をすることができたものである。
(審判請求書6頁25行?7頁12行、平成27年6月18日付け口頭審理陳述要領書10頁26行?11頁8行を参照。)

(2)無効理由2(本件特許発明1に対する理由2)
本件特許発明1は、甲第2号証に記載の「貫入する先端部としてスクリューポイントを採用し、ロッドとはめねじとおねじ又はその逆のおねじとめねじでもってねじ螺合して連結した発明」の「めねじ」と「おねじ」の直接のねじ連結を、甲第10,4号証に記載の「両端おねじを有する中間部材を使用した発明」(甲第4号証の107頁の「ロッドカップリング」又は甲第10号証のFIG.5の「おねじカップリング33」による連結技術)、又はこれに加えて周知技術を示す甲第11?15号証に記載の「無頭ねじによる二つの部材のねじ連結技術」とを組み合せることで容易に発明をすることができたものである。
(審判請求書7頁13?22行を参照。)

(3)無効理由3(本件特許発明1に対する理由3)
本件特許発明1は、甲第3,4又は6号証に記載の「貫入の先端部とロッドとを中間部材(甲第3号証の「アタッチメント2」、甲第4号証の「サンプラ」、甲第6号証の「無頭ねじ」)を介してねじ螺合連結する発明」と、甲第2,5,8又は10号証に記載の「貫入の先端部をスクリューポイントとした発明」、特に甲第8号証で基端部に「めねじ」を設けた発明、甲第10号証の無頭ねじ33でロッドを連結する発明とを組み合せることで、容易に発明をすることができたものである。
(審判請求書7頁23行?8頁1行を参照。)

(4)無効理由4(本件特許発明2に対する理由)
本件特許発明2は、本件特許発明1の無効理由1ないし3で容易とした出願前公知資料(各甲号証)に加え、甲第5号証の26頁の右欄の「2.2ロッド」、「2.3スクリューポイント」の記載に、「連結部に強ジン特殊鋼を用いたり、」、「ロッドの先端に・・・摩耗しにくいものが必要である。・・・高炭素鋼・・・炭素工具鋼などを使用すればよい」との「ロッド」と「スクリューポイント」の素材の記載から、無頭ロッドの素材も容易に想致できるものである。又、甲第2号証の3頁下から1?6行目の素材のポイントの記載及び6頁の7?15行目にも「スクリュウーポイント」と「ロッド」の素材に必要な性質の記載があり、本件特許発明2の特徴的構成・作用効果は明示・暗示されていることであり、本件特許発明1で引用した各甲号証に、甲第5,2号証を考慮することで容易に発明をすることができたものである。
(審判請求書8頁2?13行を参照。)

第4 被請求人の主張
1 主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成27年4月30日付け答弁書、同年7月16日付け口頭審理陳述要領書を参照。)。

本件特許発明1及び2は、本件特許の出願前に頒布された刊行物(請求人が提出した甲各号証)に記載された発明に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものではない、すなわち進歩性を有するものである。

(証拠方法)
提出された証拠は、以下のとおりである。
乙第1号証の1:「Indian Standard」IS:4968(Part1(審決注:「Part1」及び後記「PART1」の「1」は、原文ではローマ数字である。以下同じ。))-1976、サブタイトル「METHOD FOR SUBSURFACE SOUNDING FOR SOILS PART1 DYNAMIC METHOD USING 50mmCONE WITHOUT BENTONITE SLURRY」、BUREAU OF INDIAN STNDARDS(インド規格局)、May 1977(1977年5月)発行
乙第1号証の2:乙第1号証の1の第3枚目、第8?11枚目の日本語翻訳文

2 無効理由に対する具体的な反論
(1)無効理由1(本件特許発明1に対する理由1)に対する反論
インド規格のIS4968には、パート1とパート2があり、パート1(乙第1号証を参照。)には、本件特許発明1の「無頭ねじ部品」に相当する構成は記載されていない。
動的コーン貫入試験を前提とする甲第7号証に記載の発明において、円錐状のコーンを、甲第2、5、8号証にあるドリル状のスクリューポイントに置換すると、ハンマーによる打ち込み時に地中から受ける抵抗が増大し、100mm貫入させるのに要する打撃回数が増加し、試験自体に支障を来すのは明らかである。
そもそも、スクリューポイントは、静的貫入試験に分類されるスウェーデン式サウンディング試験に用いられるものであって、ドリル状に形成され、この形状は、荷重及び回転力を加えて地中に貫入させるのに適し、打撃による貫入(動的貫入)には適していない。それにもかかわらず、甲第7号証に記載の発明において打撃によって貫入されるのに適した形状のコーンを、動的貫入に不向きなスクリューポイントにわざわざ置換するのは、技術的に全く理に適っていない。
しかも、甲第7号証に記載の発明では、ベントナイトスラリーを循環させるため、コーンにはベントナイトスラリーの流路となる貫通孔が設けられている。一方、甲第2、5、8号証のスクリューポイントには、このような貫通孔が設けられていない。したがって、甲第7号証に記載の発明のコーンを甲第2号証等に記載のスクリューポイントに置換すると、ベントナイトスラリーはスクリューポイントの上側にまでしか流れなくなってしまうことになり、この点でも上記置換には阻害要因がある。また、甲第7号証に記載の発明において無頭ねじ部品を用いているのは、ベントナイトスラリーを流す上で、コーンと無頭ねじ部品とを一体成形することができないからに過ぎない。
要するに、甲第7号証に記載されている動的貫入コーン試験の実施方法からすると、甲第7号証に接した当業者が、甲第7号証に記載の発明のコーンを敢えて甲第2号証等に記載のスクリューポイントに変更する動機付けはなく、当業者が当然に試みることでもないから、当業者にとって、相違点に係る本件特許発明1の構成を容易に想到し得るとはいえない。
(平成27年4月30日付け答弁書10頁20行?14頁14行を参照。)

(2)無効理由2(本件特許発明1に対する理由2)に対する反論
請求人は、無効理由2における主引例発明(甲第2号証に記載の発明)である、スクリューポイントに雌ねじ部を設け、これにロッド部材の雄ねじ部を連結する発明のみならず、甲第2号証に記載の従来例であるロッド部材の雌ねじ部とスクリューポイントの雄ねじ部とを連結する発明にも基づいて、本件特許発明1の進歩性欠如を主張している。
しかし、まず、甲第2号証における従来例を主引例発明とすることは甲第2号証に開示されている技術的思想自体に反し、この点で阻害要因がある上、仮に、甲第2号証における従来例をも考慮に入れたとしても、甲第2号証に記載の発明はせいぜい、スクリューポイントとロッドの一方におねじ、他方に対応するめねじを設け、両者をねじ連結するものになるに過ぎず、このように一方におねじ、他方に対応するめねじを設けてあれば、それを利用して両者を問題なく連結することができる。
したがって、甲第2号証に接した当業者が、甲第2号証に記載の発明において互いに連結されるおねじとめねじを、敢えて、めねじどうしとし、かつ、これらを甲第10号証等に記載された両端おねじを有する中間部材等で連結するように変更する動機付けはなく、当業者が当然に試みることでもないから、当業者にとって、相違点に係る本件特許発明1の構成を容易に想到し得るとはいえない。
(平成27年4月30日付け答弁書14頁15行?15頁24行を参照。)

(3)無効理由3(本件特許発明1に対する理由3)に対する反論
ア 本件特許発明1と甲第3号証に記載の発明との対比
甲第3号証に記載の発明では、電動ブレーカー5の振動力によって、先端ポイント1を地盤に貫入させるのであり(段落【0009】)、荷重と回転とによってスクリューポイントを貫入させるものではなく、また、先端ポイント1に形成するのは角孔部1aであってめねじではなく、さらに、先端ポイント1にアタッチメント2を嵌合するのであって螺合しないので、無頭ねじ部品に該当する構成も存在しない。
しかも、甲第3号証に記載の発明の先端ポイント1を、甲第2,5,8号証のスクリューポイントに置換する動機付けは、甲第3号証からは決して得られない。なぜなら、上述のように、甲第3号証に記載の発明では、貫入手段に荷重と回転ではなく振動を採用しているのであり、このような振動による貫入を行う場合に、ドリル状のスクリューポイントを採用すると、抵抗が大きくなるだけで、メリットが無いからである。そもそも、甲第3号証の例えば段落【0001】には、「本考案は、スウェーデン式サウンディング試験機を利用した地下水位測定装置に関する。」と記載されているが、スウェーデン式サウンディング試験との関連で実際に利用しているといえるのはスウェーデンロッド3のみであり、他の器具はスウェーデン式サウンディング試験で用いられるものではない。このことは、甲16(JIS A 1221)の記載からも明らかである。
その上、甲第3号証に記載の発明のアタッチメント2を、甲第10号証の図5に記載の両端に雄ねじを有する結合部33に置換する動機付けは、甲第3号証からは決して得られない。なぜなら、甲第3号証に記載の発明では、地下水位を測定する上で、先端ポイント1と集水パイプ6を埋め殺しにする必要があるにもかかわらず(段落【0009】)、アタッチメント2の角形突起部2aをおねじにし、先端ポイント1の角孔部1aをめねじにすると、先端ポイント1及び集水パイプ6を埋め殺しにすることができなくなるからである。
要するに、甲第3号証に接した当業者が、甲第3号証に記載の発明の先端ポイント及びアタッチメントを敢えて甲第2号証等に記載のスクリューポイント等に変更する動機付けはなく、当業者が当然に試みることでもないから、当業者にとって、相違点に係る本件特許発明1の構成を容易に想到し得るとはいえない。
また、上述したように、甲第3号証に記載の発明の先端ポイント及びアタッチメントをスクリューポイント等に置換すると、地下水位の測定に支障を来し、甲第3号証に記載の発明の本来の目的が達成されなくなり、種々の不都合も生じるのであって、これらのことが阻害要因になる。
イ 本件特許発明1と甲第4号証,甲第6号証に記載の発明との対比
甲第4号証,甲第6号証に記載の発明は、何れも動的貫入試験装置に係るものであり、この点で、上記理由1で述べた甲第7号証に記載の発明と同様のものに過ぎない。
したがって、甲第4,6号証に接した当業者が、甲第4号証,甲第6号証に記載の発明の貫入の先端部を敢えて甲第2号証等に記載のスクリューポイントに変更する動機付けはなく、当業者が当然に試みることでもないから、当業者にとって、相違点に係る本件特許発明1の構成を容易に想到し得るとはいえない。
また、上述したように、甲第4号証,甲第6号証に記載の発明の貫入の先端部をスクリューポイントに置換すると、試験自体に支障を来し、甲第4号証,甲第6号証に記載の発明の本来の目的が達成されなくなり、種々の不都合も生じるのであって、これらのことが阻害要因になる。
(平成27年4月30日付け答弁書15頁25行?17頁23行を参照。)

(4)無効理由4(本件特許発明2に対する理由)に対する反論
甲第5号証、甲第2号証の何れにも、無頭ねじ部品を用いることはもちろん、その素材に関する開示、示唆が皆無であるので、これらを参照しても、無頭ねじ部品の素材を限定する本件特許発明2に想到するのは困難である。
そもそも、本件特許発明2は、本件特許発明1に従属する発明であり、本件特許発明1と同様に進歩性を有するものである。
(平成27年4月30日付け答弁書17頁24行?18頁7行を参照。)

第5 訂正請求について
被請求人は、審決の予告があった後、本件特許について、平成27年10月21日に訂正請求書(当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)を提出している。
本件訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」という。)は、上記訂正請求書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
スウェーデン式サウンディング試験に際して、一端に有底のめねじ、他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ、ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され、所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって、
先端尖鋭な本体部を有し、この本体部の基端部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し、この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成したことを特徴とするスクリューポイント。
【請求項2】
本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し、また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のスクリューポイント。」

そこで、本件訂正の適否について検討する。

1 訂正内容
本件訂正は、本件特許の明細書を本件訂正請求書に添付した明細書のとおり訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「地質の調査を行う試験」とあるのを、「スウェーデン式サウンディング試験」に訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。以下同様。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「所定の長さのロッド部材先端に取り付けられ」とあるのを、「一端に有底のめねじ、他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって」とあるのを、「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され、所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「ロッド部材に設けためねじ」とあるのを、「ロッド部材のめねじ」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「本体部は硬度が高くなるよう構成し、また無頭ねじ部品は高い靭性を有するように構成した」とあるのを、「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し、また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成した」に訂正する。

(6)訂正事項6
本件特許の明細書の段落【0004】(上記第2の2を参照。)を以下のように訂正する(下線部は、訂正箇所を示す。)。
「【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、各部に要求されるそれぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供することを目的とする。この目的を達成するため、本発明は、スウェーデン式サウンディング試験に際して、一端に有底のめねじ、他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ、ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され、所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって、先端尖鋭な本体部を有し、この本体部の基端部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し、この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成されている。前記本体部は、無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成されており、また、前記無頭ねじ部品は本体部に対して高い靱性を有するように構成されている。」

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「地質の調査を行う試験」について、「スウェーデン式サウンディング試験」であることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は、訂正前に特定されていた「地質の調査を行う試験」についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許の明細書(願書に添付した明細書)の段落【0008】には、「上記構成の自動貫入試験機100は、貫入ロッド200に所定の荷重を負荷しつつ、必要に応じて回転を加えて地中に貫入し、この貫入ロッド200が所定量貫入するごとに、その時の荷重とそれまでの回転回数とをデータとして収集する、いわゆるスウェーデン式サウンディング試験に準拠する貫入試験を行うものである。」と記載されているとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(2)訂正事項2ないし4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2ないし4は、それらの訂正内容からみて、「ロッド部材」について、「他端におねじが一体成形された」ものとし、「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」たことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。なお、「ロッド部材」は、「スクリューポイント」を構成するものではないが、請求項1において、「スクリューポイント」は「ロッド部材」に連結されて用いられること(用途)が特定されているので、訂正事項2ないし4は、「スクリューポイント」の用途をより限定したものと解することができる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2ないし4は、訂正前に特定されていた(用途を特定する)「ロッド部材」についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許の明細書(願書に添付した明細書)の段落【0006】には、「前記貫入ロッド200は、図1ないし図3に示すように、所定の長さに構成されたロッド部材210と、このロッド部材210先端に取り付けたスクリューポイント1とから構成されている。前記ロッド部材210には、その一端にめねじ211が、また他端にはおねじ212がそれぞれ一体形成されており、同一構成からなる他のロッド部材(図示せず)のめねじをおねじ212に螺合させて長さを延長可能に構成されている。」と記載されているとおり、訂正事項2ないし4は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(3)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、その訂正内容からみて、本体部と無頭ねじ部品の硬度及び靭性の大小関係を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項5は、本体部の硬度及び無頭ねじ部品の靭性についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許の明細書(願書に添付した明細書)の段落【0007】には、「前記スクリューポイント1の本体部2は、SCM材などの焼入れ可能な材料からなり、実際に焼入れが施されてその硬度が高められている。また、前記無頭ねじ部品4もSCM材によって構成されているが、この無頭ねじ部品4には、靱性が高くなるよう熱処理が施されている。」と記載されているとおり、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(4)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項1ないし5に伴い特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載を整合させるための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、結論のとおり、本件訂正を認める。

第6 無効理由についての当審の判断
1 本件発明について
上記のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(本件訂正発明1及び2)は、本件訂正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された上記第5のとおりのものである。

よって、請求人の主張する無効理由1ないし4(上記第3を参照。)については、本件訂正発明1及び2に対して主張されたものとして検討する。

2 証拠について
(1)甲第2号証について
ア 甲第2号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第2号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。

(ア)「(産業上の利用分野)
本考案は、土層に差し込んで土質を測定するのに用いられる土質貫入試験杆に関する。」(明細書1頁18?20行)
(イ)「(従来の技術)
一般に、建築物を建てる場合、建築後に地盤が弱いために建築物に変化、異常などが起こらないように予め地盤の調査を行う。特に、一般住宅は小建築物のように地盤荷重の少ないものであってもこの調査を省くことができない。
この調査には、一般にスエーデン式の土質貫入試験杆が使用される。
この試験杆は、第5図に示すように、スクリュウーポイントaに継手ロッドbを結合して、この継手ロッドbの上方に装着された台板c上に、所定の重さの載荷板d…を取手eを持って載せ、継手ロッドbの上端に装着されたハンドルfを回転させて、調査しようとする箇所の土地に前記スクリュウーポイントaと継手ロッドbを貫入させ、各荷重段階での貫入量及び一定重量載荷し回転させて一定深さ貫入させるに要する回転数を測定することによって、その地点における土層(地盤)の土質(強度)を測定する。
そして、継手ロッドbが地中に貫入して残り少なくなったら、ハンドルf、載荷板d…、及び台板cを継手ロッドbから外して次の継手ロッドbを接続し、その上方に台板c、載荷板d…及びハンドルfを再び装着して同様の操作を繰り返して土層(地盤)の土質(強度)を測定するようにしている。
従来の前記スクリュウーポイントaと継手ロッドbの結合形態は、第6図に示すようにスクリュウーポイントaの上端に雄ねじ部a1が突出されていて、この雄ねじ部a1に第7図に示すように継手ロッドbの下端に設けられた雌ねじ部b1が螺合されることにより結合されるようになっていた。」(同2頁1行?3頁13行)
(ウ)「(考案が解決しようとする課題)
ところが、スクリュウーポイントaはクロムモリブデン鋼やセラミック等の固い材料で形成されているものであるために、前記雄ねじ部a1が根元から折れてしまう場合があった。このように、雄ねじ部a1が折れてしまうとこのスクリュウーポイントaは使用不可能となってしまう欠点があり、しかもスクリュウーポイントaは一般に高価なものであるために経済的損失が大きいといった問題点があった。
本考案は、上記従来の実情に鑑みて、前記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、スクリュウーポイントに従来設けられていた雄ねじ部をなくして、代わりにスクリュウーポイントに雌ねじ部を設けるとともに、継手ロッドに雄ねじ部を設けてこれらスクリュウーポイントと継手ロッドとを結合するように構成することにより、スクリュウーポイントの長期使用ができ、経済的に有利である土質貫入試験杆を提供することにある。」(同3頁14行?4頁13行)
(ウ)「(課題を解決するための手段)
本考案は、ハンドルと、捩り角錐形状のスクリュウーポイントと、前記ハンドルとスクリュウーポイントとの間に配される複数本の継手ロッドとを備え、定量の載荷板を載荷して土層に差し込んで回転させることによって土質を測定するのに用いられる土質貫入試験杆であって、下端に配置される前記スクリュウーポイントの上部に雌ねじ部が設けられ、このスクリュウーポイントに結合される継手ロッドの下部に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられているものである。」(同4頁14行?5頁4行)
(エ)「(作用)
まず、土層(地盤)の土質を測定するときに、スクリュウーポイントの上部に設けられた雌ねじ部に継手ロッドの下部に設けられた雄ねじ部を螺合してスクリュウーポイントと継手ロッドとを結合する。次に、継手ロッドの上部に定量の載荷板を載荷し、この継手ロッドの上端にハンドルを取りつける。
このようにした状態で、前記スクリュウーポイントを土層に差し込んでハンドルを回転させながら、その箇所の土層(地盤)の土質(強度等)を測定する。」(同5頁5?16行)
(オ)「(実施例)
以下、本考案に係る土質貫入試験杆の実施例について図面に基づいて説明する。
第1図は土質貫入試験杆のスクリュウーポイントの斜視図、第2図は土質貫入試験杆のスクリュウーポイントと継手ロッドとハンドルを示す分解斜視図、第3図はスクリュウーポイントと継手ロッドとの結合状態を示す要部の断面図、第4図は土質貫入試験杆の全体構造を示すものであって、土層に差し込んだ状態の正面図である。
この土質貫入試験杆は、ハンドル1と、クロムゼリブデン鋼(審決注:「クロムモリブデン鋼」の誤記である。)、セラミック等の固い材料からなる捩り角錐形状のスクリュウーポイント2と、前記ハンドル1と捩り角錐形状のスクリューポイント2との間に配され、S45C、SS41等の鋼材からなる複数本の継手ロッド3…と、最上段の継手ロッド3…に装着される台板4と、この台板4上に載荷され取手51を有する所定の重さ(普通100kg)の載荷板5…とからなるものである。
本考案では、前記スクリューポイント2の上部に雌ねじ21が設けられ、このスクリュウーポイント2に結合される継手ロッド3の下部に前記雌ねじ部21に螺合される雄ねじ部31が設けられている。
更に、この継手ロッド3の上部には、この継手ロッド3に結合される他の継手ロッド3の雌ねじ部21(審決注:「31」の誤記である。)に螺合される雌ねじ部32が設けられている。
また、前記スクリュウーポイント2の上端部分両側には、スパナ等の工具を係止するための切欠段部22、22が形成されている。
尚、11はハンドル1の中央部下方向きに設けられ、前記継手ロッド3の雌ねじ部32に螺合される雄ねじ部である。
次に、この土質貫入試験杆の使用方法について説明する。
まず、地盤Tの土質を測定するときに、スクリュウーポイント2の上部に設けられた雌ねじ部21に継手ロッド3の下部に設けられた雄ねじ部31を螺合してスクリュウーポイント2と継手ロッド3とを結合する。
このとき、スクリュウーポイント2の上端部分の切欠段部22、22にスパナ等の工具を嵌めて係止してから前記結合を行うと、スクリュウーポイント2を回転阻止して固定した状態でスクリュウーポイント2と継手ロッド3との結合を行うことができるので、この作業が行い易い。
次に、継手ロッド3の上部に台板4を装着し、この台板4上に所定の重さの載荷板5…を載荷し、この継手ロッド3の上端にハンドル1を取り付ける。
このようにした状態で、前記スクリュウーポイント2を土層(地盤)Tに差し込んでハンドル1を回転させながら、各荷重段階での貫入量及び一定重量載荷し回転させて一定深さ貫入させるに要する回転数を測定することによって、その箇所の土層(地盤)Tの土質(強度等)を測定する。
そして、継手ロッド3が地中に貫入して残り少なくなったら、ハンドル1、載荷板5…、及び台板4を継手ロッド3から外して次の継手ロッド3を接続し、その上方に台板4、載荷板5…及びハンドル1を再び装着して同様の操作を繰り返して土層(地盤)の土質(強度)を測定する。」(同5頁17行?8頁19行)
(カ)「(考案の効果)
以上説明したように、本考案によれば、下端に配置される前記スクリュウーポイントの上部に雌ねじ部が設けられ、このスクリュウーポイントに結合される継手ロッドの下部に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられていることにより、従来、スクリュウーポイントに雄ねじ部が設けられていたもののように、雄ねじ部が折れてスクリュウーポイントが使用不可能となるようなことがない。
このことにより、スクリュウーポイントの長期使用ができ、経済的に有利である等の効果を奏する。」(同8頁20行?9頁12行)
(キ)図面について
第1図には、スクリュウーポイント2の斜視図が図示されており、当該図からは、スクリュウーポイント2が先端尖鋭な形状であること、及び、スクリュウーポイント2の基端部に雌ねじ部21が形成されていることが理解できる。
第2図には、土質貫入試験杆の分解斜視図が図示されており、当該図からは、継手ロッド3は、所定の長さを有していること、及び、複数の継手ロッド3が連結されていることが理解できる。

イ 甲第2号証に記載の発明の認定
上記ア(イ)で摘記した事項からみて、甲第2号証には、スエーデン式の土質貫入試験杆を使用して土層(地盤)の土質を測定すること、すなわち、スウェーデン式サウンディング試験について記載されていると認められる。
また、上記ア(オ)で摘記した事項及び第2図の図示内容からみて、甲第2号証に記載されている継手ロッド3は、下部である一端に雄ねじ部31、上部である他端に雌ねじ部32が設けられた所定の長さを有し、継手ロッド3の雌ねじ部32に他の継手ロッド3の雄ねじ部31を連結して延長可能に構成されていると認められる。
よって、甲第2号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「スウェーデン式サウンディング試験に際して、一端に雄ねじ部31、他端に雌ねじ部32が設けられた所定の長さの継手ロッド3の雄ねじ部31に取り付けられ、継手ロッド3の雌ねじ部32に他の継手ロッド3の雄ねじ部31を連結して延長可能に構成され、所定の重さと、回転とによって継手ロッド3と一体に地中に貫入されるスクリュウーポイント2であって、
スクリュウーポイント2は先端尖鋭な形状であり、このスクリュウーポイント2の基端部に雌ねじ部21を形成し、この雌ねじ部21に継手ロッド3の雄ねじ部31が螺合して連結するように構成したスクリュウーポイント。」

また、甲第2号証には、「スクリュウーポイント2は、クロムモリブデン鋼、セラミック等の固い材料からなり、継手ロッド3は、S45C、SS41等の鋼材からなること」(材質に係る技術事項)も記載されていると認められるので、甲2発明において上記材質に係る技術事項を特定した発明(以下「甲2発明の2」という。)も記載されているといえる。

(2)甲第4号証について
ア 甲第4号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第4号証には、次の事項が記載されている。

(ア)104?107頁には、「土の標準貫入試験方法」について記載されている。
(イ)105頁の「標準貫入試験装置」の図には、「標準貫入試験用サンプラ」と「ボーリングロッド」とが連結されていることが図示されている。
(ウ)106頁の「(a)スピリットパレルサンプラ」の図には、「コネクターヘッド」と「ロッド」とを「ロッドカップリング」で連結していることが図示されている。
(エ)107頁の「ノッキングヘッド」の図には、「ロッドカップリング」が図示されており、「ロッドカップリング」が無頭ねじの構造であることが理解できる。

イ 甲第4号証に記載の発明の認定
甲第4号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「標準貫入試験装置におけるサンプラのコネクターヘッドとロッドとを連結するロッドカップリングが無頭ねじである構造。」

(3)甲第5号証について
ア 甲第5号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第5号証には、次の事項が記載されている。

(ア)26?29頁には、「スウェーデン式サウンディング試験法解説」について記載されている。
(イ)「2.試験用具
試験に用いる用具は、スクリューポイント、ロッド、オモリ、載荷用クランプ、底板および全体を回転させるためのハンドルから構成され、測定後それを引抜くための引抜き装置が付属する。」(26頁右下欄の「2.試験用具」欄)
(ウ)「2.2ロッド
材質は機械構造用炭素鋼を使用するのが一般である。・・・(略)・・・また連結部に強ジン特殊鋼を用いたり、テーパーネジとすることにより、連結部の強さを増加させる試みがなされている。」(26頁右下欄の「2.2ロッド」欄)
(エ)「2.3スクリューポイント
・・・(略)・・・
これはロッドの先端に連結して土中に貫入するものであるから、強さが大きくなければならないことはもちろん、摩耗しにくいものであることが必要である。したがって材質としては焼き入れが可能なものを使用し、すくなくともS-50-C以上の高炭素鋼、あるいはSK-2以上の炭素工具鋼などを使用すればよいと思われる。・・・(略)・・・」(26頁右下欄?27頁右欄の「2.3スクリューポイント」欄)

イ 甲第5号証に記載の技術事項の認定
甲第5号証には、上記アで摘記した事項からみて、
「スウェーデン式サウンディング試験に用いる試験用具において、ロッドの連結部に強ジン特殊鋼を用いること、及びスクリューポイントの材質として焼入れ可能なものを使用すること」
が記載されていると認められる。

(4)甲第10号証について
ア 甲第10号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第10号証には、次の事項が記載されている。

(ア)甲第10号証には、「土壌などの棒入度試験装置」に関する発明が開示されている(甲第10号証の要約書の日本語翻訳文である甲第10号証の1を参照。)。
(イ)「図5は雄ネジを螺刻した結合部33を示し、この結合部33は、ロッド32が雌ネジ結合部を設けていればこのロッド32が連結するために、または、遭遇する様々なロッドおよび構成部品に必要なその他のあらゆる連結に使用できる。」(第7欄1?5行、甲第10号証の日本語翻訳文である甲第10号証の2を参照。)
(ウ)FIG.5(図5)には、「結合部33」が図示されており、「結合部33」は無頭ねじの構造であることが理解できる。

イ 甲第10号証に記載の発明の認定
甲第10号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されていると認められる。

「土壌などの棒入度試験装置におけるロッドおよび構成部品の連結に使用できる結合部33が無頭ねじである構造。」

(5)甲第11号証について
ア 甲第11号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第11号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄筋の締結に使用するための鉄系形状記憶合金を用いた継手に関する。」
(イ)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は鉄筋の締結作業が特別な技能を要せず締結工具も使わずに、狭所や高所においても簡単に作業でき、かつ信頼性の高い締結ができる継手を提供する。特に構造物の規模が大きくなり、太径ものの鉄筋が使用される場合にも特別な困難を伴わずに容易に施工できるものとすることを課題とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも端部にねじを有する鉄筋用の継手であって、鉄系形状記憶合金製円筒の内面に雌ねじが形成されており、加熱によって円筒内径が収縮する方向に形状記憶処理が行なわれている鉄筋用継手、ならびに雌ねじ部を有する締結用スリーブを端部に固定された鉄筋の締結に使用する継手であって、鉄系形状記憶合金製棒材の両端に雄ねじが形成されており、加熱によって棒の直径が拡がる方向に形状記憶処理が行なわれている鉄筋用継手である。」
(ウ)「【0024】
なお本実施例のようにテーパーねじを利用する場合、鉄筋を継手にセットするときに、いずれか一方の鉄筋を回転させないとねじ込みができないという不都合が生じる。鉄筋を回転させることが問題のない作業環境であればともかく、一般的には鉄筋は止めておき継手を回すだけでセットできることが望まれるのが普通である。そのような場合には、鉄系形状記憶合金製継手の左右の開口部の雌ねじを逆ねじにすることが有効である。鉄筋の端部に形成するテーパー雄ねじの方も、これに合わせて正ねじのものと逆ねじのものの二種類を用意することが必要となるが、本発明の効果は、これによって何等の支障も生じるものではないから、このような実施形態も本発明に包含される。
【0025】
実施例3
D29サイズの鉄筋端部にS45C製で外径45mm、長さ150mmのスリーブを、鉄筋に90mmだけ被せた状態でダイスを通して引き抜いて固定をした。次に鉄筋に固定したのと反対側のスリーブ内面に、端部から中央に向かってM36のメートル並目雌ねじ(JIS-B-205)を切削加工した。このような予備加工を施した鉄筋に対して、32%Mn-6%Siを含有する鉄ベースの鉄系形状記憶合金で製作したボトル形状の継手を用いて締結することを試みた(図1(c))。」
(エ)図面
図1の(c)には、継手3により鉄筋30を連結する構造が図示されており、継手3は無頭ねじの構造であることが理解できる。

イ 甲第11号証に記載の技術事項の認定
甲第11号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲11技術」という。)が記載されていると認められる。

「鉄筋30を連結する継手3が無頭ねじである構造。」

(6)甲第12号証について
ア 甲第12号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第12号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、建築,土木等の分野において鉄筋コンクリート構造体の打ち継ぎ工法等に用いられる鉄筋連結装置に関する。」
(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前者の方法では、鉄筋と継手の連結強度を高めるために大きなトルクでロックナットを締め付けなければならず、打ち継ぎ現場において大型の締付装置を必要とし、作業性が悪かった。後者の工法では、注入管を必要とするため継手の構成が複雑であった。」
(ウ)「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1?4の発明に係わる鉄筋連結装置は、一対の端継手と1つの中央継手とを備えている。・・・(略)・・・」
(エ)「【0007】
【実施例】
以下、本発明の第1実施例を図1を参照して説明する。図1において、符号10は、ねじ鉄筋1,2を連結するための鉄筋連結装置10を示す。鉄筋連結装置10は、一対の端継手11,12と、1つの中央継手13とを備えている。端継手11,12は、それぞれ筒形状をなし、全長にわたって六角形の断面形状を有しており、その外周が工具掛け部11x,12xとなっている。なお、中央部にのみ工具掛け部を有し、その両側部を円筒部としてもよい。
【0008】
上記一方の端継手11(図中左側の端継手)は、第1雌ねじ部11aと第2雌ねじ部11b(微細ねじ部)を有している。これら雌ねじ部11a,11bは、端継手11の中心軸に沿って延びるとともに一直線をなして連なっている。第1雌ねじ部11aは端継手11の一端面(図中左端面)に開口し、第2雌ねじ部11bは端継手11の他端面(図中右端面)に開口している。
【0009】
上記一方の端継手11の第1雌ねじ部11aは上記ねじ鉄筋1,2の等しいピッチP1を有しており、そのねじ方向はねじ鉄筋1,2と同様に右ねじである。上記第2雌ねじ部11bは上記第1雌ねじ部11aより遥かに小さなピッチP2を有しており、通常の機械ねじと同程度の微細ねじをなしている。例えば、第1雌ねじ部11aのピッチP1が10数mmであり、第2雌ねじ部11bのピッチP2が1?2mm程度である。
【0010】
他方の端継手12も上記端継手11と同寸法で同じ構造を有しており、工具掛け部12xと、ピッチP1の第1雌ねじ部12aと、ピッチP2の第2雌ねじ部12b(微細ねじ部)とを有している。ただし、端継手11の第2雌ねじ部11bが右ねじであるのに対して、端継手12の第2雌ねじ部12bが、これとは逆に左ねじとなっている。
【0011】
上記中央継手13は、中央部に断面六角形の工具掛け部13xを有し、この工具掛け部13xの両側に互いに一直線をなして延びる一対の雄ねじ部13a,13b(微細ねじ部)を有している。これら雄ねじ部13a,13bは互いに長さが等しく、上記端継手11,12の第2雌ねじ部11b,12bと同一ピッチP2の微細ねじをなしている。また、これら雄ねじ部13a,13bは、ねじ方向が逆であり、一方の雄ねじ部13aは右ねじであり、他方の雄ねじ部13bは左ねじである。」
(オ)図面
図1には、鉄筋1,2を中央継手13を用いて連結する構造が図示されており、中央継手13が両端部に雄ねじ部13a,13bを形成した無頭ねじの構造であることが理解できる。

イ 甲第12号証に記載の技術事項の認定
甲第12号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲12技術」という。)が記載されていると認められる。

「鉄筋1,2を連結する中央継手13が無頭ねじである構造。」

(7)甲第13号証について
ア 甲第13号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第13号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「以下、この発明の一実施例について第1図ないし第4図を参照して説明する。このワイヤー継手は、一方のワイヤー1の一端部に取り付けられるカラー2と、他方のワイヤー3の一端部に取り付けられるカラー4と、これら両カラー2、4を接続するカラー接続部材5とからなつている。カラー2の一端側には他端側に向かつて拡開するテーパ孔6が軸線方向に延びて設けられ、またその他端側には右めねじ部7がテーパ孔6に同軸的に連続して設けられている。また、カラー2の側部で右ねじ部7が設けられている個所には貫通孔8が設けられている。他方、カラー4の一端側には他端側に向かって拡開するテーパ孔9が軸線方向に延びて設けられ、またその他端側には左めねじ部10がテーパ孔9に同軸的に連続して設けられている。また、カラー4の側部で左めねじ部10が設けられている個所には貫通孔11が設けられている。カラー接続部材5の中央部には周縁部にローレツト加工がなされたつば部12が設けられ、またつば部12の両端には右おねじ部13および左おねじ部14がそれぞれ軸線方向に延びるように設けられている。なお、これら右おねじ部13および左おねじ部14は前記カラー2、4のめねじ部7、10にそれずれ螺合されるようになされている。また、カラー接続部材5のおねじ部13、14の側部には前記カラー2、4の貫通孔8、11と同径の貫通孔15、16がそれぞれ設けられている。」(2頁右上欄6行?左下欄13行)
(イ)図面
第1図には、ワイヤー継手が縦断側面図として図示されており、カラー接続部材5は、両端に右おねじ部13と左おねじ部14とを有する無頭ねじの構造であることが理解できる。

イ 甲第13号証に記載の技術事項の認定
甲第13号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲13技術」という。)が記載されていると認められる。

「ワイヤー1,2を連結するカラー接続部材5が無頭ねじである構造。」

(8)甲第14号証について
ア 甲第14号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第14号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「第1図は上部にテーパー付外部ねじ3を、下部に同様のねじ4を設け、管体8と9の接続部内にそれぞれ形成したテーパー付内部ねじ6と7と耐密接続するようにするカップリング2から成る管接続器を20で示す。」(3頁左上欄21?24行)
(イ)図面
FIG.1(図1)には、対向する管体8,9の内面に内部ねじ6,7を設け、その間を両端外側に外部ねじ3,4を設けたカップリング2とで連結する構造が図示されており、カップリング2は筒状の無頭ねじの構造であることが理解できる。

イ 甲第14号証に記載の技術事項の認定
甲第14号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲14技術」という。)が記載されていると認められる。

「管体8,9を連結するカラー接続部材5が無頭ねじである構造。」

(9)甲第15号証について
ア 甲第15号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第15号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「【従来の技術】
従来構造の炭素電極においては、図14に示すように、炭素または黒鉛の部材10と20を通常の電極継手構造で連結している。この電極継手構造は図15にも示されている。相互に対向する電極部材10、20は、好ましくは同軸に配置され、横方向衝合面113、115間の接触界面110において衝合関係にねじ込み係合され、機械的応力を避けるためそれぞれねじ山を備えたソケット117、119を有する。これらの電極部材の長手方軸線30、40は、図1および図2に示されているように相互に一致し、また、円筒形のねじ山を有するニップル70の中心軸線60とも一致している。」
(イ)図面
図14には、電極部材10,20をニップル70で連結する構造が図示されており、ニップル70は、無頭ねじの構造であることが理解できる。

イ 甲第15号証に記載の技術事項の認定
甲第15号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の技術事項(以下「甲15技術」という。)が記載されていると認められる。

「電極部材10,20を連結するニップル70が円筒形のねじ山を有する無頭ねじである構造。」

3 無効理由2(本件特許発明1に対する理由2)について
本件訂正発明1は、少なくとも無効理由2により、特許を受けることができないものといえるので、以下に当該理由について検討する。

(1)本件訂正発明1と甲2発明との対比
ア 本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると以下のとおりである。
(ア)甲2発明の「スクリュウーポイント2」は、その構造及び機能からみて、本件訂正発明1の「スクリューポイント」の「本体部」に相当し、
以下同様に、
甲2発明の(スクリュウーポイント2の基端部に形成した)「雌ねじ部21」は、本件訂正発明1の(本体部の基端部に形成した)「めねじ」に、
甲2発明の「継手ロッド3」は、本件訂正発明1の「ロッド部材」に、
それぞれ相当する。
(イ)甲2発明の(「一端に雄ねじ部31、他端に雌ねじ部32が設けられた所定の長さの継手ロッド3」の)「雄ねじ部31」と、本件訂正発明1の「無頭ねじ部品」とは、「スクリューポイント」の「本体部」と「ロッド部材」とを連結する「ねじ部」である点で共通する。
(ウ)「重さ」は「荷重」に相当し、「必要に応じて付与される回転」は、「回転」を付与することを当然に含むから、甲2発明の「所定の重さと、回転とによって」「地中に貫入される」ことは、本件訂正発明1の「所定の荷重と、回転とによって」「地中に貫入される」ことに相当する。
(エ)本件訂正発明1の「スクリューポイント」は、「ロッド部材のめねじに取り付けられ、・・・・ロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイント」と特定されているように、「ロッド部材」に取り付けられることを前提とするものであって、「本体部」と(「本体部」と「ロッド部材」を連結する)「無頭ねじ部品」を含めたものであるから、甲2発明の「スクリュウーポイント2」と(「スクリュウーポイント2」と「継手ロッド3」を連結する)「雄ねじ部31」からなるものが、本件訂正発明1の「スクリューポイント」に対応する。
(オ)甲2発明の「一端に雄ねじ部31、他端に雌ねじ部32が設けられた」「継手ロッド3の雌ねじ部32に他の継手ロッド3の雄ねじ部31を連結して延長可能に構成され」たことと、本件訂正発明1の「一端に有底のめねじ、他端におねじが一体成形された」「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」こととは、「ロッド部材に他のロッド部材をおねじとめねじにより連結して延長可能に構成されたこと」である点で共通する。

イ したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点1で相違する。

(一致点)
「スウェーデン式サウンディング試験に際して、所定の長さのロッド部材に取り付けられ、ロッド部材に他のロッド部材をおねじとめねじにより連結して延長可能に構成され、所定の荷重と、回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって、
先端尖鋭な本体部を有し、この本体部の基端部にめねじを形成し、このめねじにねじ部を螺合し、このねじ部でロッド部材を連結するように構成したスクリューポイント。」

(相違点1)
ねじ部について、
本件訂正発明1は、「(本体部の基端部に形成した)めねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し、この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成した」のに対し、
甲2発明は、「雌ねじ部21に継手ロッド3の雄ねじ部31が螺合して連結するように構成した」ものである点。

(相違点2)
ロッド部材同士の連結構造(おねじとめねじ)について、
本件訂正発明1は、「他端におねじが一体成形された」「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」ているのに対し、
甲2発明は、「他端に雌ねじ部32が設けられた」「継手ロッド3の雌ねじ部32に他の継手ロッド3の雄ねじ部31を連結して延長可能に構成され」ている点。
すなわち、連結部におけるロッド部材に設けたおねじとめねじの配置が、本件訂正発明1と甲2発明とでは逆の関係である点。

(2)相違点1に係る判断
ア 本件発明と甲2発明の課題について
本件発明は、一般にスクリューポイントには、ドリル状を成す表面的な部分は、貫入時に土砂、礫などとの接触で摩耗し易いため、硬さが求められ、一方ロッド部材に接続されるおねじ部近辺は貫入時の衝撃的な曲げモーメント、あるいは回転トルクによる引っ張り応力などで破損することがないように強度および靱性が求められるところ、従来のスクリューポイントは、ドリル状部分もおねじ部も全て同一材料で一体に構成されているため、上記のような性質を両立させることが極めて困難である等の問題が発生していたので、そのような課題を解決するために、各部に要求される、それぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供することを目的とするものである(段落【0003】,【0004】、上記第2の1を参照。)。
これに対して、甲2発明も、従来のスクリュウーポイントと継手ロッドの結合形態は、スクリュウーポイントの上端に雄ねじ部が突出されていて、この雄ねじ部に継手ロッドの下端に設けられた雌ねじ部が螺合されることにより結合されるようになっていたが(上記第5の2(1)ア(イ)を参照。)、スクリュウーポイントはクロムモリブデン鋼やセラミック等の固い材料で形成されているものであるために、雄ねじ部が根元から折れてしまう場合があったので、このような課題を解決するために、スクリュウーポイントに従来設けられていた雄ねじ部をなくして、代わりにスクリュウーポイントに雌ねじ部を設けるとともに、継手ロッドに雄ねじ部を設けてこれらスクリュウーポイントと継手ロッドとを結合するように構成したものである(上記第5の2(1)ア(ウ)を参照。)。
そうすると、甲2発明は、スクリューポイントの各部、すなわち本体部とねじ部に要求される、それぞれ異なった性質を備えることを目的(課題)とする点で、本件発明と共通しているといえる。

イ ロッドとの結合について
甲第2号証には、従来技術として、スクリュウーポイントの上端に雄ねじ部が突出されていて、この雄ねじ部に継手ロッドの下端に設けられた雌ねじ部が螺合されることも開示されている(上記第5の2(1)ア(イ)を参照。)。

ウ 無頭ねじ部品について
甲第4号証及び甲第10号証には、上記2(2)及び(4)で説示したように、「標準貫入試験装置におけるサンプラのコネクターヘッドとロッドとを連結するロッドカップリングが無頭ねじである構造。」(甲4発明)、及び「土壌などの棒入度試験装置におけるロッドおよび構成部品の連結に使用できる結合部33が無頭ねじである構造。」(甲10発明)が開示されているから、地質試験装置における継手(連結)手段として、無頭ねじ部品を用いることは、本件特許出願前から公知である。
また、甲第11ないし15号証には、上記2(5)ないし(9)で説示したように、無頭ねじを用いた継手(連結)手段が開示されているから、一般的に、継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは、本件特許出願前から周知である。

エ 無頭ねじ部品の適用について
上記アないしウで説示したように、甲2発明は、スクリューポイントの各部、すなわち本体部とねじ部に要求される、それぞれ異なった性質を備えることを課題とするものであり、甲第2号証には、スクリュウーポイント(スクリューポイントの本体部)の上端に雄ねじ部(ねじ部)が突出されていて、この雄ねじ部(ねじ部)に継手ロッド(ロッド部材)の下端に設けられた雌ねじ部(めねじ)が螺合されることも開示されており、甲2発明の技術分野と共通するところの地質試験装置における継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは公知であり、また、一般的に継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは周知であるから、甲2発明において、ねじ部として無頭ねじ部品を用いて、スクリューポイントの本体部とロッド部材とを連結すること、すなわち、本件訂正発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点2に係る判断
本件訂正発明1の「スクリューポイント」は、「ロッド部材のめねじに取り付けられ、・・・・ロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイント」と特定されているように、「ロッド部材」に取り付けられることを前提とするものではあるが、「ロッド部材」は「スクリューポイント」そのものの構成ではないから、「ロッド部材」同士を連結するための構造である「他端におねじが一体成形された」「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」たことが、「スクリューポイント」の構成(構造)を特定するものとはいえない。
そうすると、相違点2は、実質的な相違点とはいえない。
また、仮に実質的な相違点であったとしても、「ロッド部材」同士の連結に際して、「めねじ」と「おねじ」を連結部における上下どちら側に設けるかは、当業者が適宜に決定し得る程度の事項であるといえる。

(4)効果について
本件発明は、「本体部、無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれに必要な性質を確保することができる等の利点がある。したがって、無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント、引っ張り応力などによる折損を防止するとともに、本体部には焼入れなどの熱処理を施して硬度を高め、貫入時の摩滅を抑えることができる等の利点がある。」(段落【0010】、上記第2の2を参照。)との効果を奏するものであるが、甲2発明も本体部とねじ部を別個に製作するものであるから、本件発明と同様の効果を奏するといえる。また、上記(2)エで適用することが当業者にとって容易に想到できたこととしたところの、ロッド部材とも別個に製作することができる無頭ねじ部品を用いれば、ねじ部品の性質をより自由に設定、変更できることは明らかである。

(5)被請求人の主張について
ア 被請求人は、甲第2号証における従来例を主引例発明とすることは甲第2号証に開示されている技術的思想自体に反し、この点で阻害要因がある上、仮に、甲第2号証における従来例をも考慮に入れたとしても、甲第2号証に記載の発明はせいぜい、スクリューポイントとロッドの一方におねじ、他方に対応するめねじを設け、両者をねじ連結するものになるに過ぎず、このように一方におねじ、他方に対応するめねじを設けてあれば、それを利用して両者を問題なく連結することができるので、甲第2号証に接した当業者が、甲第2号証に記載の発明において互いに連結されるおねじとめねじを、敢えて、めねじどうしとし、かつ、これらを甲第10号証等に記載された両端おねじを有する中間部材等で連結するように変更する動機付けはなく、当業者が当然に試みることでもないから、当業者にとって、相違点に係る本件訂正発明1の構成を容易に想到し得るとはいえない旨を主張している。

イ しかしながら、上記(2)で検討したとおり、甲2発明において、両端おねじを有する中間部材等(無頭ねじ部品)で連結することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、一般的に、器具や装置などを構成する複数の部品(部分)をそれぞれ製作し、その後組み付けて一体のものとするか、複数の部品(部分)を一体成形するかは、当業者がそれぞれの有利な点、不利な点を考慮して適宜に決定し得ることであるといえるところ、ねじ部品とロッドとをそれぞれに必要な性質を確保することができるように、またそれぞれの部品の製作がし易いように別体に製作することは、当業者が容易に着想し得たことといえる。
よって、被請求人の主張は採用できない。

ウ 被請求人は、平成27年10月21日付け上申書において、甲2発明の継手ロッド3から雄ねじ部31を分離して無頭ねじ部品を用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得ない旨を主張しているが、上記(2)及び上記イで述べたとおり、本件訂正発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)予備的検討
無効理由1の証拠として提出された甲第6号証及び甲第7号証には、ロッドとコーンとを無頭ねじ部品で連結することが開示されており、また、無効理由3の証拠として提出された甲第3号証には、ロッドとコーンとを中間部材で連結することが開示されている。なお、コーンは、土質試験を行うために地中に貫入するロッドの先端に取り付けられる部材として、本件発明のスクリューポイントと共通する。
このような知見を有する当業者であれば、ロッドとスクリューポイントとを、無頭ねじ部品や中間部材などのようなロッドとスクリューポイントとは別な部材で連結することを容易に着想し得たといえる。

(7)むすび
以上のとおり、本件訂正発明1は、当業者が、甲2発明、甲第10号証又は甲第4号証に記載された発明、及び、甲第11ないし15号証に記載の周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正発明1の特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

4 無効理由4(本件特許発明2に対する理由)について
(1)本件訂正発明2と甲2発明の2との対比
本件訂正発明2は、本件訂正発明1に従属するものであって、本件訂正発明1のすべての発明特定事項を含むとともに、「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し、また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成したこと」との発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件訂正発明2と(甲2発明において材質に係る技術事項を特定した発明である)甲2発明の2とを対比すると、上記相違点1及び2(上記3(1)参照。)に加えて、次の相違点3で相違する。

(相違点3)
本件訂正発明2は、「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し、また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成した」のに対し、
甲2発明の2は、スクリュウーポイント2(スクリューポイントの本体部)は「クロムモリブデン鋼、セラミック等の固い材料」からなり、「継手ロッド3は、S45C、SS41等の鋼材からなる」点。

(2)判断
相違点1及び2については、上記3(2)及び(3)で検討したとおりであるので、相違点3について検討する。
ア 甲2発明の2について
甲2発明の2は、従来のスクリュウーポイントと継手ロッドの結合形態は、スクリュウーポイントの上端に雄ねじ部が突出されていて、この雄ねじ部に継手ロッドの下端に設けられた雌ねじ部が螺合されることにより結合されるようになっていたが(上記2(1)ア(イ)を参照。)、スクリュウーポイントはクロムモリブデン鋼やセラミック等の固い材料で形成されているものであるために、雄ねじ部が根元から折れてしまう場合があったので、このような課題を解決するために、スクリュウーポイントに従来設けられていた雄ねじ部をなくして、代わりにスクリュウーポイントに雌ねじ部を設けるとともに、継手ロッドに雄ねじ部を設けてこれらスクリュウーポイントと継手ロッドとを結合するように構成したものであって(上記2(1)ア(ウ)を参照。)、スクリュウーポイント2(スクリューポイントの本体部)を「クロムモリブデン鋼、セラミック等の固い材料」としたものであるから、スクリュウーポイント2(スクリューポイントの本体部)は、本件訂正発明2の本体部と同様に「硬度が高くなるよう構成」されているといえる。
また、継手ロッドに設けた雄ねじ部(本件発明の「無頭ねじ部品」と「ねじ部」として共通する。)は、折れないような材料であるといえる。ところで、本件特許の明細書には、「無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント、引っ張り応力などによる折損を防止する」(段落【0010】、上記第2の2を参照。)と記載されているように、無頭ねじ部品に高い靱性を持たせるのは、折損を防止するためであると解される。そうすると、甲2発明の2の雄ねじ部にも、スクリューポイントと比べて高い靱性を有する材料を用いることが示唆されているといえる。
イ 甲第5号証について
甲第5号証には、上記2(3)で説示したように、「スウェーデン式サウンディング試験に用いる試験用具において、ロッドの連結部に強ジン特殊鋼を用いること、及びスクリューポイントの材質として焼入れ可能なものを使用すること」が開示されている。
そして、「強ジン特殊鋼」が高い靱性を有する材料であることは技術常識であるから、スウェーデン式サウンディング試験用具の連結部に高い靱性を有する材料を用いることは、本件特許の出願前から知られていたことであるといえる。
ウ まとめ
上記ア及びイのとおりであるから、相違点3は当業者が適宜なし得たことである。

(3)むすび
以上のとおり、本件訂正発明2は、当業者が、甲2発明の2、甲第10号証又は甲第4号証に記載された発明、甲第11ないし15号証に記載の周知技術、及び、甲第5号証に記載の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正発明2の特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スクリューポイント
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スウェーデン式サウンディング試験に際して、一端に有底のめねじ、他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ、ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され、所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって、
先端尖鋭な本体部を有し、この本体部の基端部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し、この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成したことを特徴とするスクリューポイント。
【請求項2】
本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し、また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のスクリューポイント。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中に軸状のロッド部材を貫入して各種データを採取する地質調査試験において、ロッド部材の先端に連結されて地中に貫入されるスクリューポイントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、土地の地耐力を調査するために、貫入ロッドに荷重と回転とを付加して地中に貫入し、所定深度毎の貫入ロッドの半回転数(貫入ロッドの半回転を1として計数した回転回数)、荷重などのデータを元にその土地の地層構造を判定する、いわゆるスウェーデン式サウンディング試験が一般に広く行われている。図5に示すように、この試験において使用される貫入ロッド50は、所定の長さのロッド部材51と、このロッド部材51の先端に取り付けられるスクリューポイント52とから構成されている。前記ロッド部材51には、一端におねじ(図示せず)、他端にめねじ51aが形成されており、図示しない同一構成の他のロッド部材を継ぎ足し可能に構成されている。また、前記スクリューポイント52は、日本工業規格(JIS規格)に準じて製作されるものであり、略四角錘形状の素材をねじって先端尖鋭なドリル状に成形されている。このスクリューポイント52の基端面には、おねじ52aが一体に突出成形されており、前記ロッド部材51のめねじ51aを螺合して連結可能に構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般にスクリューポイントには、ドリル状を成す表面的な部分は、貫入時に土砂、礫などとの接触で摩耗し易いため、硬さが求められ、一方ロッド部材に接続されるおねじ部近辺は貫入時の衝撃的な曲げモーメント、あるいは回転トルクによる引っ張り応力などで破損することがないように強度および靱性が求められる。しかしながら、上記従来のスクリューポイントは、ドリル状部分もおねじ部も全て同一材料で一体に構成されているため、前述のような性質を両立させることが極めて困難である等の問題が発生している。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、各部に要求されるそれぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供することを目的とする。この目的を達成するため、本発明は、スウェーデン式サウンディング試験に際して、一端に有底のめねじ、他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ、ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され、所定の荷重と、必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって、先端尖鋭な本体部を有し、この本体部の基端部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し、この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成されている。前記本体部は、無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成されており、また、前記無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成されている。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図4において、100は詳細を後記する貫入ロッドを地中に貫入して地質を調査する、いわゆる貫入試験を行うための自動貫入試験機であり、所定重量の錘110を載荷可能かつ支柱120に沿って昇降自在な載荷台130を有している。この載荷台130には、モータ140の駆動を受けて回転可能なチャック150が配置されており、このチャック150には、下方に垂下して延びる貫入ロッド200が一体に回転可能なように保持される。また、前記載荷台130には支柱120背面側に位置してスプロケット160が回転可能に取り付けられており、このスプロケット160は、支柱120背面に鉛直に延びて固定されているチェーン部材170に常時噛合している。また、このスプロケット160は前記載荷台130の内部に設けられているブレーキ機構(図示せず)に連結されており、このブレーキ機構の作動を受けて回転を制動されるようになっている。
【0006】
前記貫入ロッド200は、図1ないし図3に示すように、所定の長さに構成されたロッド部材210と、このロッド部材210先端に取り付けたスクリューポイント1とから構成されている。前記ロッド部材210には、その一端にめねじ211が、また他端にはおねじ212がそれぞれ一体形成されており、同一構成からなる他のロッド部材(図示せず)のめねじをおねじ212に螺合させて長さを延長可能に構成されている。また、前記スクリューポイント1は、先端先鋭なドリル状の本体部2を有し、この本体部2の基端面には前記ロッド部材210のめねじ211と同一構成を成すめねじ3が中心線上に延びて形成されている。この本体部2のめねじ3には、スタッドボルトなどの無頭ねじ部品4が螺合されており、この無頭ねじ部品4に前記ロッド部材210のめねじ211を螺合させて連結可能に構成されている。
【0007】
前記スクリューポイント1の本体部2は、SCM材などの焼入れ可能な材料からなり、実際に焼入れが施されてその硬度が高められている。また、前記無頭ねじ部品4もSCM材によって構成されているが、この無頭ねじ部品4には、靭性が高くなるよう熱処理が施されている。
【0008】
上記構成の自動貫入試験機100は、貫入ロッド200に所定の荷重を負荷しつつ、必要に応じて回転を加えて地中に貫入し、この貫入ロッド200が所定量貫入するごとに、その時の荷重とそれまでの回転回数とをデータとして収集する、いわゆるスウェーデン式サウンディング試験に準拠する貫入試験を行うものである。この貫入試験に際しては、まず、載荷台130に所定重量の錘110を載荷することにより載荷台130の全装備重量を100kgf[980N]にし、続いてブレーキ機構(図示せず)が作動して所定の制動力を生み、この制動力によりスプロケッ160が制動され、載荷台130に下降抵抗力が加えられる。この時、貫入ロッド200にかかる荷重は、載荷台130の装備重量100kgf[980N]から前述の抵抗力を減じた値となる。このように貫入ロッド200にかかる荷重は、ブレーキ機構の発生する制動力によって調整され、貫入ロッド200の地中への貫入速度に応じて25kgf[245N]単位で増減される。このように荷重を調整して貫入ロッド200の貫入を行い、全くブレーキ機構の制動力が作用していない100kgf[980N]の荷重でも貫入ロッド200が貫入しない場合は、モータ140の駆動によりチャック150が回転し、貫入ロッド200を回転させながら貫入(以下、回転貫入という)する。この貫入試験では、貫入ロッド200が所定量貫入する毎に、所定量貫入するに要した貫入ロッド200の半回転数(貫入ロッドの半回転を1として計数した回転回数)と、所定量貫入した時点における荷重値とが試験データとして記録される。なお、このようにして得られた試験データは、その試験地の地質を判定するための判定基準として用いられる。
【0009】
前述のように貫入ロッド200を地中に貫入する場合、スクリューポイント1には岩盤、礫などとの接触による衝撃的な曲げモーメント、回転時の回転トルクによる引っ張り応力などが作用するが、無頭ねじ部品4は靱性が高いため、このような曲げモーメント、引っ張り応力などに耐え得る。また、前述のモーメント、応力のみならず、スクリューポイント1には礫土との摩擦も作用するが、本体部2は焼入れを行うことにより硬度が高められているため、礫土との摩擦によっても容易に摩滅することがない。このように、本スクリューポイント1は、その構成部品(本体部2および無頭ねじ部品4)を別個に製作することでそれぞれに必要な特性が確保されているのである。
【0010】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のスクリューポイントは、ドリル状の本体部にめねじを形成し、このめねじに無頭ねじ部品を螺合することによって構成されている。このため、本体部、無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれに必要な性質を確保することができる等の利点がある。したがって、無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント、引っ張り応力などによる折損を防止するとともに、本体部には焼入れなどの熱処理を施して硬度を高め、貫入時の摩滅を抑えることができる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るスクリューポイントの一部を切り欠いた分解説明図である。
【図2】
本発明に係るスクリューポイントの一部切欠断面図である。
【図3】
本発明に係るスクリューポイントをロッド部材に連結した状態を示す正面図である。
【図4】
本発明に係るスクリューポイントを地中に貫入するに用いる自動貫入試験機の正面図である。
【図5】
従来のスクリューポイントの説明図である。
【符号の説明】
1 スクリューポイント
2 本体部
3 めねじ
4 無頭ねじ部品
100 自動貫入試験機
130 載荷台
150 チャック
160 スプロケット
170 チェーン部材
210 ロッド部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-12-08 
結審通知日 2015-12-10 
審決日 2015-12-25 
出願番号 特願平9-98288
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (E02D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 赤木 啓二
小野 忠悦
登録日 2002-11-01 
登録番号 特許第3365722号(P3365722)
発明の名称 スクリューポイント  
代理人 西村 幸城  
代理人 戸島 省四郎  
代理人 藤本 英夫  
代理人 西村 幸城  
代理人 富永 夕子  
代理人 富永 夕子  
代理人 金 順雅  
代理人 藤本 英二  
代理人 藤本 英二  
代理人 金 順雅  
代理人 藤本 英夫  

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