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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21S |
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管理番号 | 1323865 |
審判番号 | 不服2015-19188 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-23 |
確定日 | 2017-01-30 |
事件の表示 | 特願2014-536063号「レーザー光源を備えた車両ヘッドライト」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月19日国際公開、WO2013/134804、平成27年 1月22日国内公表、特表2015-502628号、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年2月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年3月12日、(AT)オーストリア)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年4月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月19日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成28年8月18日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月4日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許を受けようとする発明は、平成28年11月4日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「少なくとも1つのレーザー光源(2)と、少なくとも1つの、可視光線の放射のために励起可能な光要素(3)を備え、該光要素はレーザー光源(2)によって照射可能であり、及び少なくとも1つの結像光学要素を備え、その際前記レーザー光源(2)が前記車両ヘッドライト(1)の主要放射方向(100)に見て前記光要素(3)の前に配置されており、その結果前記レーザー光源(2)の光が前記車両ヘッドライト(1)の前記主要放射方向(100)と反対に放射される車両ヘッドライト(1)において、前記少なくとも1つの結像光学要素がリフレクター(4)として形成され、その際前記光要素(3)が前記リフレクター(4)の焦点内に配置されており、及びその際前記レーザー光源(2)と前記光要素(3)との間に少なくとも1つの導光要素(9)が配置され、前記レーザー光源(2)が、波長域が200nm?450nmの間にあるレーザー光を放射し、前記車両ヘッドライト(1)は、前記光要素(3)を前記リフレクター(4)内に配置するためのキャリア要素(5)を備え、前記キャリア要素(5)には、前記光要素(3)内に生じた熱を排出するためのフィン(6)が取り付けられていることを特徴とする、車両ヘッドライト。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物等 引用文献1: 特開2004-241142号公報 引用文献2: 特開2005-150041号公報 引用文献3: 特開2008-234908号公報 引用文献4: 特開2011-65979号公報 引用文献1(【0050】、図5、図6等)には、光源(202)と、励起可能な光要素(204)を備え、光源が車両ヘッドライトの主要放射方向に見て光要素の前に配置されており、その結果光源の光が車両ヘッドライトの主要放射方向と反対に放射される車両ヘッドライト、及び、光源として、レーザー光源を用いることが記載されている。 そして、リフレクターの焦点に、励起可能な光要素を配置したヘッドライトを設けること(引用文献1、2)、及び、レーザー等の光の伝播に導光要素を用いること(引用文献3、4)は周知の技術であるから、引用文献1に記載されたヘッドライトに、上記周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 2 原査定の理由の判断 (1) 刊行物等の記載事項 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付与。以下同様。)。 (1a) 「【0016】 図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具400の構成の一例を示す。車両用灯具400は、例えば、車両の前方の予め定められた照射方向に光を照射するロービーム照射用の車両用前照灯(ヘッドランプ)である。本例の車両用灯具400は、高い精度で制御された光を照射することにより、適切な配光パターンを形成することを目的とする。車両用灯具400は、素通し状の透明カバー402とランプボディー404とで形成される灯室内に、複数の光源ユニット100を略横一列に収容する。」 (1b) 「【0018】 図2及び図3は、光源ユニット100の構成の一例を示す。図2は、光源ユニット100のBB垂直断面図を示す。図3は、光源ユニット100のAA水平断面図を示す。本例の光源ユニット100は、光軸寄りに集光反射させた光を、レンズを介して前方に照射するプロジェクタ型の光源ユニットであり、蛍光体204、光照射部202、LED支持部206、水平反射部118、投影レンズ104、及びリフレクタ114を有する。蛍光体204及び光照射部202は、光源ユニット100に設けられた光源を構成する。 【0019】 蛍光体204は、例えば水平反射部118の後端等の、予め定められた位置に設けられ、光照射部202から照射される光に応じて、その光と異なる波長の光を、リフレクタ114に向かって発生する。本例において、蛍光体204は、紫外光に応じて赤色光、緑色光、及び青色光をそれぞれ発生する蛍光物質により、形成される。蛍光体204は、赤色光、緑色光、及び青色光をそれぞれ略同じ強さで発生することにより、白色光を発生する。 【0020】 他の例において、蛍光体204は、例えば、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系(YAG)からなるYAG蛍光物質により形成されてもよい。この場合、蛍光体204は、青色光に応じて、その青色光の補色である黄色光を発生する。 【0021】 光照射部202は、複数のLEDモジュール210、及び複数の集光レンズ208を含む。他の例において、光照射部202は、一組のLEDモジュール210及び集光レンズ208を含んでもよい。 【0022】 LEDモジュール210は、半導体発光素子102及び封止部材108を有する。半導体発光素子102は、蛍光体204から離間して設けられた発光ダイオード素子である。本例において、半導体発光素子102は、例えば、予め定められた発光領域から蛍光体204に対して、例えば波長が400nm以下程度の紫外光を照射する。これにより、半導体発光素子102は、蛍光体204に白色光を発生させる。また、光源ユニット100は、蛍光体204が発生する白色光を、車両の前方に照射する。この場合、光源ユニット100は、例えば自動車用前照灯規格(JIS D5500)で規定される白色光領域の白色光を照射するのが好ましい。 【0023】 他の例において、半導体発光素子102は、例えばYAG蛍光物質により形成された蛍光体204に対して、例えば波長420?480nm程度の青色光を照射してもよい。これにより、半導体発光素子102は、蛍光体204に、黄色光を発生させる。光源ユニット100は、半導体発光素子102及び蛍光体204がそれぞれ発生する青色光及び黄色光に基づき、白色光を照射する。 … 【0032】 投影レンズ104は、水平反射部118及びリフレクタ114に対して車両前方に設けられ、水平反射部118又はリフレクタ114が反射する光を透過して前方の照射方向に照射する。本例において、投影レンズ104は、水平反射部118の前縁近傍に焦点を有し、この焦点を含む焦点面の像を車両前方に投影することにより、車両用灯具400(図1参照)の配光パターンの少なくとも一部を形成する。この場合、投影レンズ104は、水平反射部118の前縁形状に基づき、当該配光パターンにおける明暗境界であるカットラインの少なくとも一部を形成する。投影レンズ104は、例えば、略への字状の前縁形状に基づき、略への字状のカットラインを形成する。 【0033】 リフレクタ114は、蛍光体204が発生する光を反射又は偏向するために設けられた光学部材の一例であり、蛍光体204の後方、側方、及び上方を囲むように設けられる。そして、リフレクタ114は、蛍光体204が発生する光を前方に反射することにより、投影レンズ104に入射させ、投影レンズ104に、当該光を、照射方向に照射させる。これにより、リフレクタ114は、蛍光体204が発生する光を、照射方向に照射する。このように、リフレクタ114は、車両用灯具400が照射する光を照射するために用いられる。 … 【0037】 尚、他の例において、リフレクタ114は、蛍光体204の近傍に焦点を有する放物面状の反射鏡であってもよい。この場合、光源ユニット100は、放物面(パラボラ)状の反射鏡を用いて光を前方に照射するパラボラ型の光源ユニットであってよく、投影レンズ104に代えて、例えば素通し状の透明カバーを有する。この場合も、光源ユニット100は、高い精度で制御された光を前方に照射する。」 (1c) 「【0042】 図5及び図6は、光源ユニット100の構成の他の例を示す。図5は、光源ユニット100のBB水平断面図を示す。図6は、光源ユニット100のAA垂直断面図を示す。本例の光源ユニット100は、光源が発生する光を、投影レンズ104により前方に照射するプロジェクタ型の光源ユニットであり、蛍光体204、光照射部202、支持部材110、遮光部材112、及び投影レンズ104を有する。 【0043】 蛍光体204及び光照射部202は、図2及び図3を用いて説明した蛍光体204及び光照射部202と同一又は同様の機能を有し、光源ユニット100における光源を構成する。蛍光体204は、支持部材110の表面に、投影レンズ104に向かって固定され、光照射部202が発生する光に応じて、その光と異なる波長の光を、投影レンズ104に向かって発生する。 【0044】 光照射部202は、それぞれ半導体発光素子102及び封止部材108を含む複数のLEDモジュール210を有する。本例において、封止部材108は、図1を用いて説明した集光レンズ208と同一又は同様の機能を有し、半導体発光素子102が発生する光を、蛍光体204に向かって偏向する。他の例において、光照射部202は、複数のLEDモジュール210に対応して設けられた複数の封止部材108を更に有してもよい。 【0045】 本例において、複数のLEDモジュール210は、遮光部材112における後方の面に固定され、車両の更に後方に設けられた蛍光体204に向かって光を照射する。この場合、光照射部202は、蛍光体204から投影レンズ104へ至る光路の外側に固定されるため、蛍光体204が発生する光を、投影レンズ104に、効率よく入射させることができる。 【0046】 支持部材110は、車両の前方を向く表面上に蛍光体204を支持して固定する板状体である。遮光部材112は、蛍光体204の近傍に、蛍光体204を略挟んで支持部材110の表面と対向して設けられた板状体であり、蛍光体204が発生する光の一部を上縁において遮ることにより、当該上縁の正面方向への投影形状に基づき、投影レンズ104に入射する光の明暗境界を規定する。当該投影形状は、例えば、車両の略左右方向に延伸する直線状である。当該投影形状は、略への字状であってよい。 【0047】 投影レンズ104は、蛍光体204が発生する光を反射又は偏向するために設けられた光学部材の一例であり、蛍光体204が発生する光を透過することにより、当該光を、車両前方の照射方向に照射する。 【0048】 本例において、投影レンズ104は、蛍光体204の近傍に光学的中心を有する。この場合、投影レンズ104は、小さな領域に設けられた蛍光体204が発生する光に基づき、高い精度で制御された光を前方に照射することができる。投影レンズ104は、蛍光体204の近傍の一例として、例えば遮光部材112の上縁近傍に光学的中心を有してよい。」 (1d) 「【0050】 図7は、光照射部202の構成の他の例を示す。本例の光照射部202は、LEDモジュール210に代えて、それぞれ半導体発光素子102を含む複数の半導体レーザモジュール120を有する。本例において、半導体発光素子102は、例えば紫外光又は青色光等のレーザ光を発生する半導体レーザ素子である。 【0051】 この場合、複数の半導体レーザモジュール120は、蛍光体204に向けて、それぞれ異なる方向からレーザ光を照射する。そのため、本例によれば、蛍光体204に多量の光を照射することができる。また、これにより、小さな領域に設けられた蛍光体204を、高い輝度で発光させることができる。 【0052】 尚、上記の点を除き、図7において、図2及び図3、又は図5及び図6と同じ符号を付した構成は、これらの図における構成と同一又は同様の機能を有するため説明を省略する。この光照射部202及び蛍光体204は、図2及び図3、又は図5及び図6を用いて説明した光源ユニット100に用いられてよい。これらの場合も、この光源ユニット100は、適切な配光パターンを形成することができる。」 (1e) 引用文献1の図1、2、3、5、6には、それぞれ以下の図が示されている。 3 引用文献に記載された発明 (1) 引用文献1には、 ア (ア) 車両用灯具400は、車両用前照灯(ヘッドランプ)であること(摘示(1a)【0016】)、 (イ) 車両用灯具400は、光源ユニット100を収容するものであること(摘示(1a)【0016】)、 イ 図5及び図6の光源ユニット100に関し、 (ア) 光源ユニット100は、蛍光体204、光照射部202、支持部材110及び投影レンズ104を有すること(摘示(1c)【0042】)、 (イ) a 光照射部202は、複数のLEDモジュール210を有すること(摘示(1c)【0044】)、 b 複数のLEDモジュール210は、遮光部材112における後方の面に固定され、車両の更に後方に設けられた蛍光体204に向かって光を照射すること(摘示(1c)【0045】)、 (ウ) a 蛍光体204は、支持部材110の表面に固定されること(摘示(1c)【0043】)、 b 蛍光体204は、光照射部202が発生する光と異なる波長の光を、投影レンズ104に向かって発生すること(摘示(1c)【0043】)、 が記載されている。また、 ウ 図2及び図3の光源ユニット100に関し、 (ア) 光源ユニット100は、光を車両の前方に照射するものであること(摘示(1b)【0022】)、 (イ) LEDモジュール210は、半導体発光素子102を有するものであり、半導体発光素子102は、蛍光体204に波長が400nm以下程度の紫外光を照射するものであること(摘示(1b)【0022】)、 (ウ) 蛍光体204は、白色光を発生するものであること(摘示(1b)【0019】及び【0022】)、 が記載されているところ、図5及び図6の光源ユニット100においては、「蛍光体204及び光照射部202は、図2及び図3を用いて説明した蛍光体204及び光照射部202と同一又は同様の機能を有し、光源ユニット100における光源を構成する」(摘示(1c)【0043】)ものであるから、図5及び図6の光源ユニット100も上記「(ア)」?「(ウ)」の構成を備えているといえること、 エ 上記「ア」より、「光源ユニット100」は「車両用灯具400」をなすものであるから、車両用灯具400が「蛍光体204、光照射部202、支持部材110及び投影レンズ104を有する」(上記「イ(ア)」)といえること、 オ (ア) 上記「イ(イ)b」、「ウ(ア)」及び摘示(1e)より、「車両の後方」から「車両の前方」に向かう方向が車両用灯具400の主要照射方向であるといえること、 (イ) 上記「(ア)」、「イ(イ)b」、「イ(ウ)」及び摘示(1e)の図5より、蛍光体204は、半導体発光素子102よりも車両用灯具400の主要照射方向において後方に配置されていること、 (ウ) 上記「(イ)」、「イ(ウ)b」及び摘示(1e)の図5より、半導体発光素子102の照射方向は、車両用灯具400の主要照射方向と反対であるといえること、 が明らかである。 (2) これらのことから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「車両用前照灯(ヘッドランプ)である車両用灯具400において、 車両の後方から車両の前方に向かう方向が車両用灯具400の主要照射方向であり、 車両用灯具400は、蛍光体204、光照射部202、支持部材110及び投影レンズ104を有し、 光照射部202は、複数のLEDモジュール210を有し、 複数のLEDモジュール210の半導体発光素子102は、蛍光体204に向かって波長が400nm以下程度の紫外光を照射し、 半導体発光素子102の照射方向は、車両用灯具400の主要照射方向と反対であり、 蛍光体204は、半導体発光素子102よりも車両用灯具400の主要照射方向において後方に配置され、 蛍光体204は、白色光を発生し、 蛍光体204は、支持部材110の表面に固定される、 車両用灯具400。」 4 対比・判断 (1) 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「車両用灯具400」は「車両用前照灯(ヘッドランプ)である」から、本願発明の「車両ヘッドライト」に相当する。 イ 引用発明の「車両用灯具400の主要照射方向」は本願発明の「車両ヘッドライト(1)の前記主要放射方向(100)」に相当する。 ウ 引用発明の「複数のLEDモジュール210の半導体発光素子102」は本願発明の「少なくとも1つのレーザー光源(2)」と、「少なくとも1つの半導体発光素子」である限度で一致する。 エ 引用発明の「蛍光体204」は、「波長が400nm以下程度の紫外光を照射」されて「白色光を発生」するものであるから、技術常識に照らして、本願発明の「少なくとも1つの、可視光線の放射のために励起可能な光要素(3)」に相当する。 オ 引用発明の「複数のLEDモジュール210の半導体発光素子102は、蛍光体204に向かって波長が400nm以下程度の紫外光を照射」することは、本願発明の「光要素はレーザー光源(2)によって照射可能であ」ることと、「光要素は半導体発光素子によって照射可能であ」る限度で一致し、また、「レーザー光源(2)が、波長域が200nm?450nmの間にあるレーザー光を放射」することと、「半導体発光素子が、特定の波長域にある光を放射」する限度で一致する。 カ 引用発明の「半導体発光素子102の照射方向は、車両用灯具400の主要照射方向と反対であ」ることは、本願発明の「レーザー光源(2)の光が前記車両ヘッドライト(1)の前記主要放射方向(100)と反対に放射される」ことと、「半導体発光素子の光が前記車両ヘッドライト(1)の前記主要放射方向(100)と反対に放射される」限度で一致する。 キ 引用発明の「蛍光体204は、半導体発光素子102よりも車両用灯具400の主要照射方向において後方に配置され」ることは、本願発明の「前記レーザー光源(2)が前記車両ヘッドライト(1)の主要放射方向(100)に見て前記光要素(3)の前に配置され」ることと、「半導体発光素子が前記車両ヘッドライト(1)の主要放射方向(100)に見て前記光要素(3)の前に配置され」る限度で一致する。 ク 引用発明の「蛍光体204は、支持部材110の表面に固定される」ことは、本願発明の「車両ヘッドライト(1)は、前記光要素(3)を前記リフレクター(4)内に配置するためのキャリア要素(5)を備え」ることと、「車両ヘッドライト(1)は、前記光要素(3)を配置するためのキャリア要素(5)を備え」る限度で一致する。 (2) 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「少なくとも1つの半導体発光素子と、少なくとも1つの、可視光線の放射のために励起可能な光要素を備え、該光要素は半導体発光素子によって照射可能であり、その際前記半導体発光素子が前記車両ヘッドライトの主要放射方向に見て前記光要素の前に配置されており、その結果前記半導体発光素子の光が前記車両ヘッドライトの前記主要放射方向と反対に放射される車両ヘッドライトにおいて、前記半導体発光素子が、特定の波長域にある光を放射し、前記車両ヘッドライトは、前記光要素を配置するためのキャリア要素を備える、車両ヘッドライト。」 [相違点1] 本願発明では、半導体発光素子が「レーザー光源」であり、半導体発光素子が放射する、特定の波長域にある光が「波長域が200nm?450nmの間にあるレーザー光」であるのに対し、引用発明では、半導体発光素子が「半導体発光素子102」であり、半導体発光素子が放射する、特定の波長域にある光が「波長が400nm以下程度の紫外光」である点。 [相違点2] 本願発明では、「少なくとも1つの結像光学要素を備え」、「前記少なくとも1つの結像光学要素がリフレクター(4)として形成され、その際前記光要素(3)が前記リフレクター(4)の焦点内に配置されて」いるのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。 [相違点3] 本願発明では、「レーザー光源(2)と前記光要素(3)との間に少なくとも1つの導光要素(9)が配置され」ているのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。 [相違点4] 本願発明では、キャリア要素は、「光要素(3)を前記リフレクター(4)内に配置する」ものであって、「キャリア要素(5)には、前記光要素(3)内に生じた熱を排出するためのフィン(6)が取り付けられている」のに対し、引用発明の「支持部材110」はそのような構成を有していない点。 (3) 判断 ア 事案に鑑み、相違点2について検討する。 引用文献1には、図2及び図3の例においてリフレクタ114を備えることが記載されている(摘示(1b)【0018】)ものの、当該リフレクタ114を引用発明に対応する図5及び図6の例に採用し得ることは記載も示唆もされていない。引用発明に対応する図5及び図6の例は、リフレクタを用いずに車両の前方に光を照射可能としたものであるから、引用発明にリフレクタを設ける動機付けは存在しないといえる。 そして、引用文献2には、反射鏡208(本願発明の「リフレクター」に相当。)を蛍光体112(本願発明の「光要素」に相当。)がその焦点となるように配置する技術が記載されている(【0033】及び図3)ものの、当該技術は蛍光体112をレーザーダイオード104(本願発明の「レーザー光源」に相当。)の前に配置する構成のものであるから、「蛍光体204」が「半導体発光素子102よりも車両用灯具400の主要照射方向において後方に配置され」た引用発明に当該技術を適用することは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 さらに、当該相違点2に係る本願発明の構成は、引用文献3及び引用文献4にも記載も示唆もされていない。 イ したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献1?4の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4) 小括 本願の請求項2?12に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明及び引用文献1?4の記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 記 (1) 請求項2の「レーザー光源(2)の放射方向(200)が前記車両ヘッドライト(1)の光学軸(400)に対して0°?90°の角度(300)で伸びている」との記載に関し、当該角度が90°の場合(例えば図2で角度300が90°の場合に相当するものと認められる。)には、レーザー光源(2)と光要素(3)との位置関係は、車両ヘッドライト(1)の主要放射方向(100)に見て同じ位置となるから、当該記載は請求項1の「レーザー光源(2)が前記車両ヘッドライト(1)の主要放射方向(100)に見て前記光要素(3)の前に配置されており」との記載と整合したものでない。 (2) 請求項3の「前記レーザー光源(2)が前記光要素(3)に対して直円錐(11)の円錐側面上に配置されており、その際前記円錐(11)の頂点は…、前記円錐軸(500)は…、及び…前記円錐側面の母線(12)が…」との記載に関し、円錐軸と母線との角度が90°の場合、円錐を構成することができないことが明らかであるから、請求項3が請求項2を引用する場合において、当該記載は請求項2の「レーザー光源(2)の放射方向(200)が前記車両ヘッドライト(1)の光学軸(400)に対して0°?90°の角度(300)で伸びている」との記載と整合したものでない。 2 当審拒絶理由の判断 平成28年11月4日になされた手続補正により、本願の請求項2において、「0°?90°の角度(300)」との記載が「0°以上90°未満の角度(300)」と補正された。 よって当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-01-05 |
出願番号 | 特願2014-536063(P2014-536063) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(F21S)
P 1 8・ 121- WY (F21S) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 柿崎 拓、松田 長親 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 小原 一郎 |
発明の名称 | レーザー光源を備えた車両ヘッドライト |
代理人 | ▲吉▼川 俊雄 |