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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01D
管理番号 1324570
審判番号 不服2015-7032  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-15 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2011- 10074「インストルメントクラスタのポインタ構造」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日出願公開、特開2011-180128、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年1月20日(パリ条約による優先権主張 2010年1月25日(以下、「優先日」という。) 米国)に出願したものであって、平成26年2月28日付けの拒絶理由通知に対して平成26年6月2日付けで手続補正がなされたが、平成26年12月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年4月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、その後、当審において平成28年2月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年8月30日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)ないし請求項6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ用のポインティングデバイスであって、
前記ポインティングデバイスは回転軸の周りを回転可能に取り付けられ、
前記ポインティングデバイスは前記回転軸の近傍にシャフトエレメントを有し、
前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを前記シャフトエレメントの領域に備え、
前記ポインティングデバイスはさらに画像形成エレメント又はアパーチャの一つを備え、
前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、前記シャフトエレメントと前記回転軸周りに回転可能とされ、
前記シャフトエレメントへ入射する光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又はアパーチャに向かい、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ、さらに表示面にて反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能となり、
前記ポインティングデバイスは、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるキャリアとカバーリングエレメントとをさらに含み、前記カバーリングエレメントはユーザに視認可能であり、前記画像形成エレメント又はアパーチャの一つは前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されている、
ポインティングデバイス。
【請求項2】
前記ポインティングデバイスはさらにフォーカシングエレメントを備え、前記フォーカシングエレメントは前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されて前記回転軸の周りを前記シャフトエレメントと共に回転可能とされ、さらに前記光は前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つから前記フォーカシングエレメントに向かうことを特徴とする請求項1記載のポインティングデバイス。
【請求項3】
前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、前記シャフトエレメントと一体に形成される請求項1記載のポインティングデバイス。
【請求項4】
前記フォーカシングエレメントは、前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ
と一体に形成される請求項2記載のポインティングデバイス。
【請求項5】
自動車又は他の車両のインストルメントクラスタであり、
前記インストルメントクラスタはポインティングデバイスを備え、
前記ポインティングデバイスは回転軸の周りに回転可能なように取り付けられ、
前記ポインティングデバイスは前記回転軸の近傍にシャフトエレメントを有し、
前記ポインティングデバイスはさらに前記シャフトエレメントの領域に光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを備え、
前記ポインティングデバイスはさらに画像形成エレメント又はアパーチャの一つを備え、
前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは前記シャフトエレメントと一緒に前記回転軸の周りに回転され、
前記シャフトエレメントへ入射する光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又は前記アパーチャに向けられ、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ、さらに表示面にて反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能となり、
前記ポインティングデバイスは、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるキャリアとカバーリングエレメントとをさらに含み、前記カバーリングエレメントはユーザに視認可能であり、前記画像形成エレメント又はアパーチャの一つは前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されている、
インストルメントクラスタ。
【請求項6】
前記ポインティングデバイスはさらにフォーカシングエレメントを備え、前記フォーカシングエレメントは前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されて前記シャフトエレメントと一緒に前記回転軸の周りを回転され、前記光は前記画像形成エレメント又は前記アパーチャから前記フォーカシングエレメントに向けられる請求項5記載のインストルメントクラスタ。」

第3 原査定の拒絶理由について
1 原査定の理由の概要

「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

請求項1?12に対して
理由1,2
引用文献1
引用文献1記載の発明(【0016】?【0033】及び図1?6参照)における、計器クラスタディスプレイ,反射面25を含むポインタアセンブリ16,ポインタキャップ22の開口,レンズ68,ポインタキャップ22,ダイヤル面12のスケール14に沿って配置された反射面56が、それぞれ本願発明の、インストルメントクラスタ,光ガイドエレメント又はミラーエレメントをシャフトエレメントの領域に備えたポインティングデバイス,画像形成エレメント又はアパーチャ,フォーカシングエレメント,カバーリングエレメント又はシュラウド,アップリケに相当するから、引用文献1には請求項1?12に係る発明が記載されている。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2009-523250号公報(必要ならば対応する英語特許文献である国際公開第2007/082261号参照) 」


2 原査定の理由についての判断

(1)引用例の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2009-523250号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審で付した。以下、同様。)。

a「【技術分野】
【0001】
本発明は概して計器クラスタディスプレイに関する。特に、本発明は、計器ダイヤル上の値を指し示すための仮想的なポインタを有する、自動車のための計器クラスタディスプレイに関する。」

b「【0016】
好適な実施形態の詳細な説明
図1を参照すると、実施例の計器クラスタアセンブリ10は概してだ円形である。一次ダイヤル面12は、だ円形に配置された複数のインジケータポイント30を備えたスケール14を有する。ポインタアセンブリ(図1には示されていない)はポインタイメージ32を生ぜしめ、このポインタイメージは、測定されたパラメータに対応するスケール14の部分を指し示すようにスケール14に沿って移動する。実施例のスケール14はエンジン速度を毎分の回転数で伝達する。実施例の計器クラスタアセンブリ10は、現在の車速を示すデジタル値を提供する二次ディスプレイ24を有する。補助的なディスプレイ26は車両内の現在の燃料レベルを示し、別の補助的なディスプレイ28は冷却液温度を示している。認められるように、実施例の計器クラスタアセンブリ10のレイアウトは、車両のオペレータに複数の異なる測定及び運転パラメータを伝達する。
【0017】
ポインタイメージ32は、現在のエンジン速度の所望の指示を提供するために、スケール14によって規定されただ円形経路に沿って移動する。ポインタイメージ32は、二次ディスプレイ24の下に隠されたポインタアセンブリから形成される。ポインタアセンブリは、固体のポインタが必要ではなく、したがってダイヤル面12のいかなる部分も妨害しないように、ポインタイメージ32を投影する。さらに、ポインタイメージ32は固体の部分ではないので、固定された中心軸線を中心に回転させられる物理的なポインタに課せられる制限なく、スケール14のだ円形状に沿って移動することができる。
【0018】
図2を参照すると、ポインタアセンブリ16は中心軸線18を中心として回転し、光ポインタキャップ22に光を通過させることによって、イメージ32を形成する。ポインタアセンブリは、光ポインタキャップ22によってカバーされた発光器20を有する。光ポインタキャップ22は、ポインタイメージ32を形成するように成形された開口を有する。反射面56は、ダイヤル面12のスケール14に沿って配置されており、ポインタアセンブリ16からの光を反射して方向付けるように、ダイヤル面12に対して傾斜させられている。反射面56は、部分的にダイヤル面12によって、部分的にマスク52によって支持されている。マスク52も、光源36から所望の領域への光を閉じ込める。
【0019】
計器クラスタアセンブリ10は、レンズ50を支持するハウジング54を有する。レンズ50は、ダイヤル面12が見えるように、透明である。反射面56は、ダイヤル面12に対して、及びポインタイメージ32を形成するためにポインタアセンブリ16から発せられる光60に対して、傾斜して配置されている。これにより、ポインタイメージ32は反射面56上に見える。ポインタアセンブリ16からの光60は、所望のポインタイメージ32の逆のイメージを投影する。これにより、ポインタイメージ32の見える反射は、反射面56によって反射されると、所望のように現れる。」

c「【0021】
光源58はポインタアセンブリ16にも光を送る。ポインタアセンブリ16は反射面25を有し、これらの反射面25は、光64を光源58から、ポインタキャップ22を通過して、反射面56へ反射する。プリント回路板34は、ポインタアセンブリ16を回転させるためのモータ40と共に光源58を支持している。
【0022】
実施例の光源58は、主回路板34に取り付けられた発光ダイオードLEDである。実施例のLED58は、特定の用途のために望まれるのに応じて、あらゆる色又は輝度であることができる。さらに、2つのLED58が示されているが、投影されるポインタイメージ32の所望の均一性を提供するためにあらゆる数のLEDが使用されることができる。」

(A)引用例1には、「計器ダイヤル上の値を指し示すための仮想的なポインタを有する、自動車のための計器クラスタディスプレイ」が記載されている(段落【0001】)。

(B)引用例1には、「ポインタアセンブリはポインタイメージ32を生ぜしめ、このポインタイメージは、測定されたパラメータに対応するスケール14の部分を指し示すようにスケール14に沿って移動する」ことが記載されている(段落【0016】)。

(C)引用例1には、「ポインタアセンブリ16は中心軸線18を中心として回転し、光ポインタキャップ22に光を通過させることによって、イメージ32を形成し、光ポインタキャップ22は、ポインタイメージ32を形成するように成形された開口を有し、反射面56は、ダイヤル面12のスケール14に沿って配置されている」ことが記載されている(段落【0018】)。

(D)引用例1には、「反射面56は、ダイヤル面12に対して、及びポインタイメージ32を形成するためにポインタアセンブリ16から発せられる光60に対して、傾斜して配置され、これにより、ポインタイメージ32は反射面56上に見える」ことが記載されている(段落【0019】)。

(E)引用例1には、「光源58はポインタアセンブリ16にも光を送り、ポインタアセンブリ16は反射面25を有し、これらの反射面25は、光64を光源58から、光ポインタキャップ22を通過して、反射面56へ反射し、プリント回路板34は、ポインタアセンブリ16を回転させるためのモータ40と共に光源58を支持している」ことが記載されている(段落【0021】、なお、前記段落【0021】に記載の「ポインタキャップ22」は「光ポインタキャップ22」の誤記とした。)。

上記記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「計器ダイヤル上の値を指し示すための仮想的なポインタを有する、自動車のための計器クラスタディスプレイにおいて、
ポインタアセンブリはポインタイメージ32を生ぜしめ、このポインタイメージは、測定されたパラメータに対応するスケール14の部分を指し示すようにスケール14に沿って移動し、
ポインタアセンブリ16は中心軸線18を中心として回転し、光ポインタキャップ22に光を通過させることによって、イメージ32を形成し、光ポインタキャップ22は、ポインタイメージ32を形成するように成形された開口を有し、反射面56は、ダイヤル面12のスケール14に沿って配置され、
反射面56は、ダイヤル面12に対して、及びポインタイメージ32を形成するためにポインタアセンブリ16から発せられる光60に対して、傾斜して配置され、これにより、ポインタイメージ32は反射面56上に見え、
光源58はポインタアセンブリ16にも光を送り、ポインタアセンブリ16は反射面25を有し、これらの反射面25は、光64を光源58から、光ポインタキャップ22を通過して、反射面56へ反射し、プリント回路板34は、ポインタアセンブリ16を回転させるためのモータ40と共に光源58を支持している、
自動車のための計器クラスタディスプレイ。」

イ 原査定の備考に周知例として記載され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-329590号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、計器の指針構造に関し、詳しくは、車両用のコンビネーションメータ等の計器における指針の構造に関するものである。」

b「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図6と同一部材または同一機能のものは同一符号で示している。
【0015】図1において、指針1は、導光指針部材2と、この導光指針部材2を覆う指針キャップ3とで構成されている。
【0016】導光指針部材2は、図1及び図2(b)に示すように、先細の円柱状の本体部2aと、この本体部2aの後端部に一体に形成された基部2cとからなる導光体で形成されている。
【0017】指針キャップ3は、図1及び図2(a)に示すように、遮光性部材からなり、上面にスリット4、下面に開口部5、先端に孔6が各々形成され、導光指針部材2をスリット4及び開口部5を除く部分で覆っている。
【0018】光源(図示せず)からの光7は、図1に示すように、導光指針部材2の基部2cに導入され、テーパ面2bで反射され、本体部2aを通過し、孔6から出射され、この出射光9でポイント発光を行う。
【0019】導光指針部材2の本体部2aの先端に所望の色の着色部10を形成することにより、出射光9を光源の色とは異なった任意の色とすることができる。この着色部10は、図2(a)に示すようにカラー印刷で形成してもよいし、あるいは、図3に示すように、光透過性の着色フィルム11を、導光指針部材2の先端面あるいはこの先端面に対向する指針キャップ3に貼着するか、あるいは指針キャップ3の孔6の裏面と本体部2aの先端面との間で挟むようにしてもよい。
【0020】図4および図5に、上記指針1を使用した計器A(コンビネーションメータ)の一部、すなわち、速度計13、燃料計14を示している。速度計13は、文字板12に目盛部15を有し、この目盛部15の周囲に円弧状の反射リング16が配置され、指針1の先端部が反射リング16のテーパ面16aに対向して移動するようになっている。燃料計14も同様に、目盛部17と反射リング18とを有し、指針1の先端部が反射リング18のテーパ面18aに対向して移動するようになっている。
【0021】この実施形態では、指針1の先端の孔6から出た出射光9でテーパ面16a,18aを照射してポイント発光させる。このとき上述のように、指針1の先端に着色部10を設けることにより、所望の色のポイント発光がテーパ面16a,18aに映し出され、デザイン性に優れたポイント発光が可能となる。」

(A)引用例2には、「車両用のコンビネーションメータ等の計器における指針の構造」が記載されている(段落【0001】)。

(B)引用例2には、「指針1は、導光指針部材2と、この導光指針部材2を覆う指針キャップ3とで構成されている」ことが記載されている(段落【0015】)。

(C)引用例2には、「導光指針部材2は、先細の円柱状の本体部2aと、この本体部2aの後端部に一体に形成された基部2cとからなる導光体で形成されている」ことが記載されている(段落【0016】)。

(D)引用例2には、「指針キャップ3は、遮光性部材からなり、上面にスリット4、下面に開口部5、先端に孔6が各々形成される」ことが記載されている(段落【0016】)。

(E)引用例2には、「光源からの光7は、導光指針部材2の基部2cに導入され、テーパ面2bで反射され、本体部2aを通過し、孔6から出射され、この出射光9でポイント発光を行う」ことが記載されている(段落【0018】)。

上記記載から、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「車両用のコンビネーションメータ等の計器における指針の構造において、
指針1は、導光指針部材2と、この導光指針部材2を覆う指針キャップ3とで構成され、
導光指針部材2は、先細の円柱状の本体部2aと、この本体部2aの後端部に一体に形成された基部2cとからなる導光体で形成され、
指針キャップ3は、遮光性部材からなり、上面にスリット4、下面に開口部5、先端に孔6が各々形成され、
光源からの光7は、導光指針部材2の基部2cに導入され、テーパ面2bで反射され、本体部2aを通過し、孔6から出射され、この出射光9でポイント発光を行う、
車両用のコンビネーションメータ等の計器における指針の構造。」

(2) 対比
本願発明と、引用発明1とを対比する。

ア 本願明細書の段落0001に記載されているように、「インストルメントクラスタ」とは、組み合わせ計器、あるいは、複合計器を意味する語である。
すると、引用発明1の「計器ダイヤル上の値を指し示すための仮想的なポインタを有する、自動車のための計器クラスタディスプレイ」と、本願発明の「自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ」とは、「自動車又は他の車両の計器」である点で共通する。
一方、引用発明1の「ポインタアセンブリ」は、本願発明の「ポインティングデバイス」に相当する。
したがって、引用発明1の「計器ダイヤル上の値を指し示すための仮想的なポインタを有する、自動車のための計器クラスタディスプレイ」における「ポインタアセンブリ」は、本願発明の「自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ用のポインティングデバイス」と、「自動車又は他の車両の計器用のポインティングデバイス」である点で共通する。

イ 引用発明1の「ポインタアセンブリ16」は「中心軸線18を中心として回転」するものであって「ポインタアセンブリ16を回転させるためのモータ40」を有するから、中心軸線18の周りを回転可能に取り付けられているということができる。
したがって、引用発明1の「ポインタアセンブリ16」が中心軸線18の周りを回転可能に取り付けられていることは、本願発明の「前記ポインティングデバイスは回転軸の周りを回転可能に取り付けられ」ることに相当する。

ウ 引用発明1において、「ポインタアセンブリ16は反射面25を有」するから、本願発明の「前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを前記シャフトエレメントの領域に備え」ることと、「前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを備え」る点で共通する。

エ 引用発明1において、「ポインタイメージ32を形成するように成形された開口」は、本願発明の「画像形成エレメント又はアパーチャ」に相当する。
したがって、引用発明1の「ポインタアセンブリ16は」「光ポインタキャップ22に光を通過させることによって、イメージ32を形成し、光ポインタキャップ22は、ポインタイメージ32を形成するように成形された開口を有」することは、本願発明の「前記ポインティングデバイスはさらに画像形成エレメント又はアパーチャの一つを備え」ることに相当する。

オ 引用発明1において、「ポインタアセンブリ16は「反射面25」及び「ポインタイメージ32を形成するように成形された開口」を有し、また、「ポインタアセンブリ16は中心軸線18を中心として回転」するから、「反射面25」及び「ポインタイメージ32を形成するように成形された開口」についても「中心軸線18を中心として回転」するということができる。
したがって、引用発明1において、「反射面25」及び「ポインタイメージ32を形成するように成形された開口」についても「中心軸線18を中心として回転」することと、本願発明の「前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、前記シャフトエレメントと前記回転軸周りに回転可能とされ」ることとは、「前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、前記回転軸周りに回転可能とされ」る点で共通する。

カ 引用発明1において、「光源58はポインタアセンブリ16にも光を送り、ポインタアセンブリ16は反射面25を有し、これらの反射面25は、光64を光源58から、光ポインタキャップ22を通過」するものであり、ここで、「光ポインタキャップ22は、ポインタイメージ32を形成するように成形された開口を有」するものであるから、引用発明1は、光源58からの光が、ポインタアセンブリ16の反射面25を介して、ポインタイメージ32を形成するように成形された開口を通過するものと捉えることができる。
すると、引用発明1において、光源58からの光が、ポインタアセンブリ16の反射面25を介して、ポインタイメージ32を形成するように成形された開口を通過することと、本願発明の「前記シャフトエレメントへ入射する光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又はアパーチャに向かい、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ」ることと、「光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又はアパーチャに向かい、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ」る点で共通する。

キ 引用発明1において、「反射面56は、ダイヤル面12に対して、及びポインタイメージ32を形成するためにポインタアセンブリ16から発せられる光60に対して、傾斜して配置され、これにより、ポインタイメージ32は反射面56上に見え」るものであって、「ダイヤル面12」は、本願発明の「表示面」に相当するから、本願発明の「さらに表示面にて反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能とな」ることと、「さらに反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能とな」る点で共通する。

以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「自動車又は他の車両の計器用のポインティングデバイスであって、
前記ポインティングデバイスは回転軸の周りを回転可能に取り付けられ、
前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを備え、
前記ポインティングデバイスはさらに画像形成エレメント又はアパーチャの一つを備え、
前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、前記回転軸周りに回転可能とされ、
光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又はアパーチャに向かい、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ、さらに反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能となり、
ポインティングデバイス。」


(相違点1)
本願発明は、「自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ用のポインティングデバイスであるのに対し、引用発明1は、「インストルメントクラスタ」との特定がない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記ポインティングデバイスは前記回転軸の近傍にシャフトエレメントを有し」ているのに対し、引用発明1では、このような特定はない点。

(相違点3)
本願発明は、光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを「前記シャフトエレメントの領域に」備えるのに対し、引用発明1では、このような特定がない点。

(相違点4)
本願発明は、前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、「前記シャフトエレメントと」前記回転軸周りに回転可能とされるのに対し、引用発明1では、このような特定がない点。

(相違点5)
光について、本願発明は、「前記シャフトエレメントへ入射する」光であるのに対し、引用発明1では、このような特定はない点。

(相違点6)
反射について、本願発明は、「表示面にて」反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能となるのに対し、引用発明1では、反射面56は、ダイヤル面12のスケール14に沿って配置されるものの、表示面との特定がない点。

(相違点7)
本願発明は、「前記ポインティングデバイスは、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるキャリアとカバーリングエレメントとをさらに含み、前記カバーリングエレメントはユーザに視認可能であり、前記画像形成エレメント又はアパーチャの一つは前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されている」のに対し、引用発明1では、このような特定がない点。

ウ 判断

(ア)事案に鑑み、まず、(相違点7)について検討する。
引用発明1には、ポインタアセンブリ16(本願発明の「前記ポインティングデバイス」に相当(上記(2)ア))が、「ポインタイメージ32を形成するように成形された開口」(本願発明の「画像形成エレメント又はアパーチャ」に相当(上記(2)エ))を有するものであるが、ポインタアセンブリ16がキャリアとカバーリングエレメントとをさらに含み、また、前記開口が、前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されているものではなく、また、引用例2には、このような固定を示唆する記載もない。

引用発明2は、「車両用のコンビネーションメータ等の計器における指針の構造において、指針1は、導光指針部材2と、この導光指針部材2を覆う指針キャップ3とで構成され」たものにおいて、「指針キャップ3は、遮光性部材からなり、」「先端に孔6が」「形成」されるものであり、「光源からの光7は、導光指針部材2の基部2cに導入され、テーパ面2bで反射され、本体部2aを通過し、孔6から出射され」るものであるから、「孔6」は、本願発明の「画像形成エレメント又はアパーチャ」に相当する。
しかしながら、引用発明2の「孔6」は、「指針キャップ3」に形成されるものであって、この「孔6」が、部材と、この部材をカバーする部材のとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されるものではなく、また、引用例2には、このような固定を示唆する記載もない。

したがって、上記(相違点7)に係る本願発明の構成は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

よって、本願発明は、上記(相違点1)ないし(相違点6)について検討するまでもなく、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)他の請求項について
本願の請求項2ないし4に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、請求項5に係る発明は、「ポインティングデバイス」を含む「自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ」の発明であって、「ポインティングデバイス」に係る発明特定事項は、本願発明と同様のものであるから、請求項5に係る発明は、本願発明と同様の理由により、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに、本願の請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 小括
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要

「第1 この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献については引用文献一覧参照)
1 請求項1
引用文献1,2
2 請求項2
引用文献1?3
3 請求項3?7
引用文献1,2、又は、引用文献1?3
4 請求項8
引用文献1,2
5 請求項9
引用文献1?3
引 用 文 献 一 覧
1.実願平1-55153号(実開平2-146319号)のマイクロフィルム
2.特開2000-329590号公報
3.特表2009-523250号公報

第2 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項2,9には「前記入射光」とあるが、「入射光」は前記されていない。
(2)請求項6における「前記前記アパーチャ」なる記載は誤記である。
(3)請求項8には「前記光入射」とあるが、「光入射」は前記されていない。
よって、請求項2,6,8,9、及び、それらを引用する各請求項に係る発明は明確でない。 」

2 当審の拒絶理由「第1」についての判断

(1)引用例の記載事項
ア 当審の拒絶理由に引用文献1として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願平1-55153号(実開平2-146319号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載がある(なお、引用例3は、平成27年6月18日付け前置報告書に記載された引用文献3である。)。

a「[産業上の利用分野]
本考案は例えば自動車に設備されるアナログ式計器であって、特に夜間時における視認性を高めることができる指示計器に関するものである。」(第1頁第16行ないし第2頁第1行)

b「[実 施 例]
以下に本考案を第1図乃至第3図に示す実施例に基いて詳細に説明する。
第1図及び第2図において、11は計器の文字板でこの文字板11の表面周辺部には昼間は反射光で表示されるが、夜間時にあっては透過光で表示される数字12が施されている。またこの数字表示帯域の内側には、正面円弧形状に形成されるレンズ体13が取付けられており、さらにこのレンズ体13の内側辺縁に沿って、反射光のみで表示される例えば黒色の目盛14が施されている。またこの目盛14の背景色は白色に印刷されているものである。前記文字板11の裏側には、前記数字12を透過照明するため、さらには文字板11の裏側に取付けられている導光体15に入光せしめるための光源16が配置されている。17は文字板11の表面側に位置される指針であるが、この指針17は、前記導光体15より導かれる導光を受ける透明材料で形成されているが、この指針17の指示部17’の先端面17”を除く表面には遮光性のホットスタンプ等からなる光反射層18が形成されており、さらにこの光反射層18の表面には無反射とする黒色層19が施されている。
従ってこのように構成されている指示計器にあっては、昼間においては数字12及び目盛14は反射光によって白色及び黒色に、また指針17は黒色に表示される。また夜間時等において光源16を点灯すれば、数字12は透過光により表示されると共に指針17の先端面17”からは導光体15及び指針17内を経た光がレンズ体13に向けて放射されるために、放射光により、レンズ体13の一部分すなわち指針17の先端との対向部が発光表示20されるものである。
従って指針17により指される数字部の近傍が発光表示20されるので、その発光表示20により視認性が高められる指示計器が提供できる。」(明細書第4頁第1行ないし第5頁第19行)

(A)引用例3には、「自動車に設備されるアナログ式の指示計器」が記載されている(上記a)。

(B)引用例3には、「指針17により指される数字部の近傍が発光表示20されるので、その発光表示20により視認性が高められる指示計器が提供できる。」と記載されており(上記b)、「指針17」が「指示計器」用のものであることがわかる。
よって、引用例3には、「指示計器用の指針17」が記載されているということができる。

(C)引用例3には、「指針17は、導光体15より導かれる導光を受ける透明材料で形成され」ており、「この指針17の指示部17’の先端面17”を除く表面には遮光性のホットスタンプ等からなる光反射層18が形成されており、さらにこの光反射層18の表面には無反射とする黒色層19が施されている」ことが記載されている(上記b)。

(D)引用例3には、「昼間においては指針17は黒色に表示される」ことが記載されている(上記b)。

(E)図1には、「指針17は指示計器の半径方向に沿って延びている」ことが見て取れる。

(F)図2には、導光体15から指針17内に導かれた導光は、いったん反射してから先端面17”へ向かうようにガイドされることが見て取れる。

(G)図2には、導光体15及び指針17内を経て先端面17”からレンズ体13に向けて放射された光は、文字板11の表面にて反射されて指示計器のユーザに視認可能となることが見て取れる。

上記記載から、引用例3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「自動車に設備されるアナログ式の指示計器用の指針17であって、
前記指針17は、導光体15より導かれる導光を受ける透明材料で形成されており、この指針17の指示部17’の先端面17”を除く表面には遮光性のホットスタンプ等からなる光反射層18が形成されており、さらにこの光反射層18の表面には無反射とする黒色層19が施されており、
前記指針17は指示計器の半径方向に沿って延びており、
昼間においては指針17は黒色に表示され、
導光体15から指針17内に導かれた導光は、いったん反射してから先端面17”へ向かうようにガイドされ、
導光体15及び指針17内を経て先端面17”からレンズ体13に向けて放射された光は、文字板11の表面にて反射されて指示計器のユーザに視認可能となる、
指針17。」


イ 当審の拒絶理由で引用した引用文献2は、原査定の備考に周知例として記載され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-329590号公報と同一であって、その記載事項は、上記「第3 2(1)イ」に引用例2及び引用発明2として記載したとおりである(以下、引用文献2、及び引用文献2に記載された発明を、それぞれ、引用例2、引用発明2という。)。

ウ 当審の拒絶理由で引用した引用文献3は、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2009-523250号公報と同一であって、その記載事項は、上記「第3 2(1)ア」に引用例1及び引用発明1として記載したとおりである(以下、引用文献3、及び引用文献3に記載された発明を、それぞれ、引用例1、引用発明1という。)。

(2) 対比
本願発明と、引用発明3とを対比する。

ア 本願明細書の段落0001に記載されているように、「インストルメントクラスタ」とは、組み合わせ計器、あるいは、複合計器を意味する語である。
すると、引用発明3の「自動車に設備されるアナログ式の指示計器」と、本願発明の「自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ」とは、「自動車又は他の車両の計器」である点で共通する。
また、引用発明3の「指針17」は、本願発明の「ポインティングデバイス」に相当する。
したがって、引用発明3の「自動車に設備されるアナログ式の指示計器用の指針17」は、本願発明の「自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ用のポインティングデバイス」と、「自動車又は他の車両の計器用のポインティングデバイス」である点で共通する。

イ「自動車に設備されるアナログ式の指示計器」において、指針とは何らかの回転軸の周りを回転するものであることは技術常識である。
よって、引用発明3の「指針17」は、本願発明の「回転軸の周りを回転可能に取り付けられ」た「ポインティングデバイス」に相当する。

ウ 引用発明3は、「導光体15から指針17内に導かれた導光は、いったん反射してから先端面17”へ向かうようにガイドされ」されるものであって、反射することから、指針17がミラーエレメントを有することは明らかである。したがって、引用発明3の「導光体15から指針17内に導かれた導光は、いったん反射してから先端面17”へ向かうようにガイドされ」されることと、本願発明の「前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを前記シャフトエレメントの領域に備え」ることとは、「前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを備え」る点で共通する。

エ 一般に、光学系における「アパーチャ」とは、光を通すために設けられた開口のことである。
そして、引用発明3において、「指針17」は、指示部17’の「先端面17”」を除く表面に遮光性のホットスタンプ等からなる光反射層18が形成されており、さらにこの光反射層18の表面には無反射とする黒色層19が施されている。さらに、「先端面17”」からは導光体15及び指針17内を経た光が放射される。すると、「先端面17”」とは、光を放射するために、「光反射層18」や「黒色層19」を設けないようにした、開口といえる。そして、その開口の形によって、放射される光の形が規定される、すなわち画像が形成されることは当業者にとって明らかである。
したがって、引用発明1の「先端面17”」を設けることは、本願発明の「ポインティングデバイスはさらに画像形成エレメント又はアパーチャの一つを備え」ることに相当する。

オ 引用発明3は、「導光体15から指針17内に導かれた導光は、いったん反射してから先端面17”へ向かうようにガイドされ」るものであって、指針17内に導かれた導光を反射させる部材、及び「先端面17”」は、いずれも「指針17」に設けられているものである。そして、上記「(イ)」において述べたように、「指針17」が回転軸の周りを回転するものであることは技術常識である。
すると、指針17内に導かれた導光を反射させる部材、及び「先端面17”」が、回転軸周りに一体に回転可能であることは明らかである。
よって、引用発明3において、「指針17」に「先端面17”」が存在すること、及び、指針17内に導かれた導光を反射させる部材を備え、両者が、回転軸周りに一体に回転可能であることは、本願発明の「前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、前記シャフトエレメントと前記回転軸周りに回転可能とされ」ることに相当する。

カ 本願発明において、「シャフトエレメント」は「ポインティングデバイス」が有するものである。すると、本願発明において、「前記シャフトエレメントへ入射する光」は、「ポインティングデバイス」への光入射ということになる。
次に、引用発明3において、「指針17」(「ポインティングデバイス」に相当)に導かれた導光、すなわち、「指針17内」への光入射は、いったん反射してから先端面17”(「画像形成エレメント又はアパーチャの一つ」に相当)へ向かうようにガイドされ、先端面17”から放射された光は、表示面にて反射されて指示計器のユーザに視認可能となるものである。ここで、光が先端面17”から放射されることは、光が先端面17”を通りすぎることにほかならない。
また、「指針17」には、先端面17”を除く表面に光反射層18及び黒色層19が形成されているのであるから、「先端面17”」以外に、「指針17」に導かれた光が放射される部分は無い。さらに、先端面17”から放射されて指示計器のユーザに視認される光は、文字板11の表面にて反射されたものである。すると、指針17に導かれた導光は、いったん反射してから先端面17”(「画像形成エレメント又はアパーチャの一つ」に相当)へ向かうようにガイドされ、先端面17”から放射され、さらに文字板11の表面、すなわち表示面にて反射されて初めて指示計器のユーザに視認可能となることは、当業者にとって明らかである。
すると、引用発明3の「指針17の指示部17’の先端面17”を除く表面には遮光性のホットスタンプ等からなる光反射層18が形成されており、さらにこの光反射層18の表面には無反射とする黒色層19が施されて」いること、及び、「導光体15から指針17内に導かれた導光は、いったん反射してから先端面17”へ向かうようにガイドされ、」「先端面17”からレンズ体13に向けて放射された光は、文字板11の表面にて反射されて指示計器のユーザに視認可能となる」ことと、本願発明の「前記シャフトエレメントへ入射する光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又はアパーチャに向かい、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ、さらに表示面にて反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能とな」ることとは、「前記ポインティングデバイスへ入射する光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又はアパーチャに向かい、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ、さらに表示面にて反射されて初めて計器のユーザに視認可能とな」る点で共通する。

キ 引用発明3において、「指針17」は、昼間においては黒色に表示されるものであるが、この黒色の表示が、「指針17」に設けられた「黒色層19」の色が指示計器のユーザに視認されることによって生じていることは、当業者にとって明らかである。
さらに、引用発明3において、「前記指針17は指示計器の半径方向に沿って延びて」いるのであるから、その「指針17」に設けられた「黒色層19」も、指示計器の半径方向に沿って延びていることは明らかであって、引用発明3の「黒色層19」と、本願発明の「前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるキャリアとカバーリングエレメント」とは、「前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるエレメント」である点で共通する。
すると、引用発明3において、「この指針17の指示部17’の先端面17”を除く表面には遮光性のホットスタンプ等からなる光反射層18が形成されており、さらにこの光反射層18の表面には無反射とする黒色層19が施され」、「前記指針17は指示計器の半径方向に沿って延び」、「昼間においては指針17は黒色に表示され」ることと、本願発明の「前記ポインティングデバイスは、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるキャリアとカバーリングエレメントとをさらに含み、前記カバーリングエレメントはユーザに視認可能であ」ることとは、「前記ポインティングデバイスは、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるエレメントとをさらに含み、前記エレメントはユーザに視認可能であ」る点で共通する。

以上のことから、本願の本願発明と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「自動車又は他の車両の計器用のポインティングデバイスであって、
前記ポインティングデバイスは回転軸の周りを回転可能に取り付けられ、
前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを備え、
前記ポインティングデバイスはさらに画像形成エレメント又はアパーチャの一つを備え、
前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、前記シャフトエレメントと前記回転軸周りに回転可能とされ、
前記ポインティングデバイスへ入射する光は、前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つから前記画像形成エレメント又はアパーチャに向かい、画像形成エレメント又はアパーチャの一つを通りすぎ、さらに表示面にて反射されて初めてインストルメントクラスタのユーザに視認可能となり、
前記ポインティングデバイスは、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びるエレメントとをさらに含み、前記エレメントはユーザに視認可能である、
ポインティングデバイス。」

(相違点1)
本願発明の「ポインティングデバイス」は自動車又は他の車両の「インストルメントクラスタ用」であるのに対し、引用発明3の「指針17」は自動車に設備されるアナログ式の「指示計器用」である点。

(相違点2)
本願発明は、「前記ポインティングデバイスは前記回転軸の近傍にシャフトエレメントを有し」ているのに対し、引用発明3では、このような特定はない点。

(相違点3)
前記ポインティングデバイスはさらに光ガイドエレメント又はミラーエレメントの少なくとも一つを備えることについて、本願発明は、「前記シャフトエレメントの領域に」備えるのに対し、引用発明3では、このような特定がない点。

(相違点4)
本願発明は、前記画像形成エレメント又は前記アパーチャの一つ及び前記光ガイドエレメント又は前記ミラーエレメントの一つは、「前記シャフトエレメントと」前記回転軸周りに回転可能とされるのに対し、引用発明3では、このような特定がない点。

(相違点5)
前記ポインティングデバイスへ入射する光について、本願発明は、「前記シャフトエレメントへ入射する」光であるのに対し、引用発明3では、このような特定がない点。

(相違点6)
本願発明は、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びる「キャリアとカバーリングエレメント」とをさらに含み、「前記カバーリング」エレメントはユーザに視認可能であり、「前記画像形成エレメント又はアパーチャの一つは前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されている」のに対し、引用発明3では、指示計器の半径方向に沿って延びる「黒色層19」(本願請求項1に係る発明の「ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びる」「エレメント」に相当(上記キ))を有するものの、その余の事項について特定がない点。

(3)判断
ア 事案に鑑み、まず、(相違点6)について検討する。
引用発明3では、指示計器の半径方向に沿って延びる「黒色層19」(本願発明の「ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びる」「エレメント」に相当)を有するものの、前記ポインティングデバイスの半径方向に沿って延びる「キャリアとカバーリングエレメント」とを含むものではない。加えて、引用発明3の「先端面17”」は、本願発明の「前記画像形成エレメント又はアパーチャの一つ」に相当するものの、先端面17”において開放されていることでもって「前記画像形成エレメント又はアパーチャの一つ」に相当するものであって、本願発明のように「前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されている」ものではなく、また、このような固定を示唆する記載もない。

また、引用発明2は、「車両用のコンビネーションメータ等の計器における指針の構造において、指針1は、導光指針部材2と、この導光指針部材2を覆う指針キャップ3とで構成され」たものにおいて、「指針キャップ3は、遮光性部材からなり、」「先端に孔6が」「形成」されるものであり、「光源からの光7は、導光指針部材2の基部2cに導入され、テーパ面2bで反射され、本体部2aを通過し、孔6から出射され」るものであるから、「孔6」は、本願発明の「画像形成エレメント又はアパーチャ」に相当する。
しかしながら、引用発明2の「孔6」は、「指針キャップ3」に形成されるものであって、この「孔6」が、部材と、この部材をカバーする部材のとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されるものではなく、また、このような固定を示唆する記載もない。

さらに、引用発明1は、ポインタアセンブリ(本願発明の「前記ポインティングデバイス」に相当(上記第3 2(2)ア))が、「ポインタイメージ32を形成するように成形された開口」(本願発明の「画像形成エレメント又はアパーチャ」に相当(上記第3 2(2)エ))を有するものであるが、ポインタアセンブリ16がキャリアとカバーリングエレメントとをさらに含み、また、前記開口が、前記キャリアと前記カバーリングエレメントとの間に挟まれて機械的にしっかりと固定されているものではなく、また、このような固定を示唆する記載もない。

したがって、上記(相違点6)に係る本願発明の構成は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

よって、本願発明は、上記(相違点1)ないし(相違点5)について検討するまでもなく、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 他の請求項について
本願の請求項2ないし4に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、請求項5に係る発明は、「ポインティングデバイス」を含む「自動車又は他の車両のインストルメントクラスタ」の発明であって、「ポインティングデバイス」に係る発明特定事項は、本願発明と同様のものであるから、請求項5に係る発明は、本願発明と同様の理由により、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

さらに、本願の請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
したがって、当審の拒絶理由「第1」によっては、本願を拒絶することができない。

3 当審の拒絶理由「第2」についての判断

(1)本件補正によって、本件補正後の請求項2及び請求項6(本件補正前の請求項9)は、「前記光」と補正され、本件補正後の請求項1及び請求項5(本件補正前の請求項8)は、「入射する光」と補正された。このことにより、「前記」という語による引用関係が整理され、本件補正後の請求項2及び請求項6に係る発明は明確になった。

(2)本件補正によって、本件補正後の請求項4(本件補正前の請求項6)は「前記アパーチャ」と補正された。このことにより、本件補正後の請求項4に係る発明は明確になった。

(3)本件補正によって、本件補正後の請求項5(本件補正前の請求項8)は「入射する光」と補正された。このことにより、本件補正後の請求項5に係る発明は明確になった。

また、本件補正後の請求項2、請求項4、請求項5、請求項6、及びそれらを引用する請求項に係る発明は明確になった。

(4)まとめ
したがって、当審の拒絶理由「第2」によっては、本願を拒絶することができない。

4 小括
以上のとおり、当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-16 
出願番号 特願2011-10074(P2011-10074)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01D)
P 1 8・ 537- WY (G01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 榮永 雅夫  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
関根 洋之
発明の名称 インストルメントクラスタのポインタ構造  
代理人 伊藤 正和  
代理人 原 裕子  
代理人 三好 秀和  

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