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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E04B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E04B
管理番号 1324878
異議申立番号 異議2016-701040  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-09 
確定日 2017-01-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第5914908号発明「建物添設用独立構築物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5914908号の請求項1、5、6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5914908号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成23年1月6日に特許出願され、平成28年4月15日に特許の設定登録がされ、その後、その請求項1、5および6に係る特許に対し、特許異議申立人堀部直行(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第5914908号の請求項1、5及び6の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、5及び6に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として特公昭58-41386号公報(以下「刊行物1」という。)、及び従たる証拠として特開2007-190294号公報(以下「刊行物2」という。)、特開平11-336208号公報(周知例。以下「刊行物3」という。)、特開2005-253525号公報(周知例。以下「刊行物4」という。)、特開平9-32077号公報(周知例。以下「刊行物5」という。)、特開2005-299162号公報 (周知例。以下「刊行物6」という。)、実公平2-8022号公報(周知例。以下「刊行物7」という。)、特開2007-146523号公報(周知例。以下「刊行物8」という。)、実公平3-23460号公報(周知例。以下「刊行物9」という。)、特開2004-332317号公報(周知例。以下「刊行物10」という。)、特開2006-63546号公報(周知例。以下「刊行物11」という。)、特開2001-342690号公報(周知例。以下「刊行物12」という。)、特開昭59-179904号公報(周知例。以下「刊行物13」という。)を提出し、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また本件特許発明1、5及び6は、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、請求項1、5及び6に係る特許を取り消すものである旨主張している。

4 刊行物の記載事項
(1)刊行物1には、
「1 少くとも所定間隔をおいて互に並列する2本の縦桟2,2からなる支持柱1が1対所定間隔をおいて相対向して建植され、該1対の支持柱1,1の同じ側の縦桟2,2間に複数本の横桟4,4……がさし渡され、それぞれの支持柱1の縦桟2,2上端部間に梁5,5がさし渡されると共に横桟4と反対側に張り出され、該梁5,5間に適宜間隔をおいて複数本の母屋材6,6……がさし渡され、梁5,5の張り出し端部間に鼻隠7がさし渡され、少くとも支持柱1,1間に横桟4,4……に壁面パネル9が取付けられ、梁5,5間の母屋材6,6…に屋根パネル10がその端部を鼻隠7に当接させて取付けられ、鼻隠7の上端部にその長さ方向に沿って鼻隠7とほぼ同長の水切りパツキング11が突設一体化され、、水切りパツキング11が建物の壁面29等に当接されるようになされたことを特徴とする組立式簡易収納庫。」(特許請求の範囲)、「11は水切りパツキングであつて、ゴム、軟質合成樹脂等から作製されている。該水切りパツキング11は鼻隠7とほぼ同長となされ、鼻隠7の上端部にその長さ方向に沿って突設一体化されるものである。又、該水切りパツキング11は第9図の如く直接鼻隠7の上端部に係止されて取付けられてもよいし、第10図の如く鼻隠7の上端部にその長さ方向に沿つて取付けられた水切板21を介して取付けられていてもよい。」(4欄12?20行)、「以上詳述した如く、本発明収納庫は少くとも所定間隔をおいて互に並列する2本の縦桟からなる支持柱が1対所定間隔をおいて相対向して建植され、それぞれの支持柱の縦桟上端部間に梁がさし渡されているので、構造的に安定しており従来の如く梁を支えるのに建物の壁面に固定桟を取付ける必要がなく、その組立作業に手間がかからないと共に建物の壁面を傷つける必要もない。」(5欄18?25行)、「又、鼻隠の上端部にその長さ方向に沿つて水切りパツキングが突設一体化されているので、収納庫を建物に面して設置した際、建物の壁面に水切りパツキングを当接させて建物の壁面と鼻隠との隙間を塞いでこの隙間からの雨漏りを容易に防止することができると共に、建物の壁面を傷つけることがない。」(5欄26?32行)、と記載されている。
また、第10図?第12図を参照すると、水切りパツキング11は、板状であることが見てとれる。

以上のことから、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「少くとも所定間隔をおいて互に並列する2本の縦桟2,2からなる支持柱1が1対所定間隔をおいて相対向して建植され、該1対の支持柱1,1の同じ側の縦桟2,2間に複数本の横桟4,4……がさし渡され、それぞれの支持柱1の縦桟2,2上端部間に梁5,5がさし渡されると共に横桟4と反対側に張り出され、該梁5,5間に適宜間隔をおいて複数本の母屋材6,6……がさし渡され、梁5,5の張り出し端部間に鼻隠7がさし渡され、少くとも支持柱1,1間に横桟4,4……に壁面パネル9が取付けられ、梁5,5間の母屋材6,6…に屋根パネル10がその端部を鼻隠7に当接させて取付けられ、鼻隠7の上端部にその長さ方向に沿って鼻隠7とほぼ同長で板状の水切りパツキング11が突設一体化され、水切りパツキング11が建物の壁面29等に当接されるようになされた組立式簡易収納庫であって、
水切りパツキング11は、ゴム、軟質合成樹脂等から作製されたものであり、直接鼻隠7の上端部に係止されて取付けられるか、または鼻隠7の上端部にその長さ方向に沿つて取付けられた水切板21を介して取付けられており、
建物に面して設置した際、建物の壁面に水切りパツキングを当接させて建物の壁面と鼻隠との隙間を塞いでこの隙間からの雨漏りを容易に防止する、
組立式簡易収納庫。」


(2)刊行物2には、
「【0009】・・・目地材12は樹脂の押出し品で形成されており、・・・」、「【0015】・・・図4では、壁パネル9に浴槽8の垂下片8bを当接させて設置し、浴槽8のフランジ部8a上に上面が開放された断面略コの字状の目地材受け15をビス17で固定させておき、この目地材受け15に対し上方側から目地材16を取り付けるように構成したものである。目地材受け15は、ビス17でフランジ部8aに固定される固定片15aから上方へ立ち上がる爪を有する爪片15b,15bを備え、目地材16は、この爪片15b,15bの爪に引っ掛かる係合片16a,16aを備えて構成されている。」、「【0016】目地材16の取付状態では、目地材16の上端側が壁パネル9に当接し、下端側が浴槽のフランジ部8aに当接するものである。このような構成では、浴槽8の上下方向の変形と共に目地材16も浴槽と共に上下方向に動くこととなるため、防水パンの形状にかかわらず浴槽8との間に隙間が生ずることがなくなるものである。」、と記載されている。

(3)刊行物3には、
「【0002】【従来の技術】従来、例えば浴室内において、浴室と周囲の壁面との間には僅かな隙間が生じるのが不可避であり、このような僅かな隙間をコーキング剤等で充填して隙間を塞ぎ且つ化粧していた。」と記載されている。

(4)刊行物4には、
「【0002】従来、たとえばユニットバスにおいて浴槽と浴室壁面との間に僅かな隙間が生じるので、この隙間に水が侵入するのを防止するためにコーキング剤の充填により隙間を塞ぐ工法が採用されていた。」、と記載されている。

(5)刊行物5には、
「【0010】・・・この漏水受け部材5の他端からは当接片8が突設されており、当接片8の先部は仕切壁部aの外面に当接されている。」、「【0011】当接片8は漏水受け部材5の他端に設けられた連結片13に係合連結される連結基部14の上部より斜め上方に向けて一体に突設されており、連結基部14及び当接片8は弾性を有する部材にて形成され、当接片8は弾性変形しながら仕切壁部aの外面に隙間無く当接させることができるようになっている。・・・」、「【0013】・・・給水用配管4の継ぎ目部分等から飛散して仕切壁部aの外面に付着して仕切壁部aの外面を伝って下方に流れる漏水は当接片8によってガイドされて漏水受け部材5内に流れ込むものであり、さらに、壁パネル2の外面を伝って下方に流れる漏水は防水材15によってガイドされて漏水受け部材5内に流れ込むものであり、・・・」、と記載されている。

(6)刊行物6には、
「【0030】目地部材6は、浴槽端縁面3と浴室の壁面1との間の目地5を水密的に閉塞するシーリング部7と、シーリング部7とは別体に形成され浴槽端縁面3と浴室の壁面1との間の目地5に差し込まれる固定部8を有する。シーリング部7は、軟質樹脂(例えば、オレフィン系エラストマー等)により構成されている。固定部8は硬質樹脂(例えば、ポリプロピレン等)により構成されている。」、「【0035】次いで、浴槽2の固定作業が終わった後に、シーリング部7を固定部8に接合しシーリングする。この場合、凸部10を凹部9に押し込むだけで簡単に接合することができる。」、と記載されている。

(7)刊行物7には、
「而して、タイル貼り作業が完了した後、本体1の垂直片3上端の溝3_(2)にへの字型の封止板4の下端部を嵌合させれば、上端部が壁面にその弾性により密着し、本案巾木による防水施工が完了する。つまり、本考案に係る防水巾木によれば、床下地とタイルとの間に挾着される水平片と、同水平片に連続する段部付の垂直片及び垂直片上端の溝に嵌着される軟質の封止板とから成るものであるから、通常の巾木としての機能はいうに及ばず、床に溜つた雨水は本体によつて、壁面に沿うて落ちる雨水は封止板によつてそれぞれ堰止められ、床下地には浸入することがない防水機能をも奏し得るもので、従来のように防水不全による階下への水漏れ事故は完全に防止できるものである。」(2欄26行?3欄12行)、と記載されている。

(8)刊行物8には、
「【0022】また、ジョイント材9は、弾性率(以下、単に弾性と記す。)が異なる2種の樹脂材料を二色成形(同時成形)して形成されるエラストマー樹脂製の部材であり、弾性変形可能な程度の弾性を有する軟らかいエラストマー樹脂からなる軟部10と、軟部10よりも弾性が高くて硬いエラストマー樹脂からなる硬部11とから構成されている。・・・」、と記載されている。

(9)刊行物9には、
「該シール材4は硬質合成樹脂の基部41と軟質合成樹脂の舌片部42とより成り、両者は同時押出によつて一体的に形成されたものである。」(4欄19?22行)、と記載されている。

(10)刊行物10には、
「【0014】前記パッキン8は、弾性変形可能なゴム質ないし軟質樹脂、例えばサーモ・プラスチック・エラストマー(TPE)系の材料からなり、押出成形により、図1の紙面に垂直方向に連続した長尺に形成されている。・・・」、と記載されている。

(11)刊行物11には
、「【0018】・・・止水材1の材質としてはエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)に代表される合成ゴムや熱可塑性エラストマー(TPE)等を用い、シール板2と底上げ板4を押出等により一体成形する。・・・」、と記載されている。

(12)刊行物12には、
「【0014】ここで、以上のような目地シール材は多色押出し成形で製造されるのが通常である。すなわち例えばエラストマー用の合成樹脂材と硬質用の合成樹脂材を一体的に押出し成形する多色押出し成形によりバネ板部11、湾曲部12、およびヒレ部14、15を同時的に成形して製造されるのが通常である。」、と記載されている。

(13)刊行物13には、
「道路や橋の舗装部分における継手の封鎖装置として種々の構造が提案されている。その目的は隣接するコンクリート舗装部分の間のスペース、いわゆる継手に水や異物が侵入するのを防止することにある。なお、かかる継手はコンクリート舗装部分の温暖時または熱間時の膨張、および寒冷時の収縮を可能たらしめるためのものである。従来から使用されている或る種の封鎖装置においては種々の外部および内部幾何学的形状を有するエラストマ材料の押出成形物を設けたり、金属製フレーム、ビーム等と、これらのフレーム、ビーム等の間のエラストマ部材とを組合わせることによつて封鎖機能を発揮させると共に温度変化によるコンクリートの膨張・収縮に伴なう継手の幅の変化に順応せしめている。」(2頁右下欄15行?3頁左上欄9行)、と記載されている。

5 対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と刊行物1発明とを対比すると、
建物壁面と屋根の先端である屋根自由端との間に形成された空隙について、本件特許発明1は、揺動撓み空隙であるのに対し、刊行物1発明は、そのような空隙か不明であり、また、空隙を閉塞させている閉塞部材について、本件特許発明1は、下方に凸に屈曲されると共に、舌状先端を躯体に対して上下方向に摺動自在に弾性圧接させられており、被嵌溝又は嵌合条で屋根自由端に設けられた取付枠に固定されているのに対し、刊行物1発明は、水切りパツキング11が、そのような構成の閉塞部材かどうか不明な点、で相違している。

(イ)なお、申立人は、上記相違点の構成が、刊行物1に記載されていると主張している。
しかしながら、刊行物1発明の組立式簡易収納庫は、「少くとも所定間隔をおいて互に並列する2本の縦桟2,2からなる支持柱1が1対所定間隔をおいて相対向して建植され、該1対の支持柱1,1の同じ側の縦桟2,2間に複数本の横桟4,4……がさし渡され、それぞれの支持柱1の縦桟2,2上端部間に梁5,5がさし渡されると共に横桟4と反対側に張り出され、該梁5,5間に適宜間隔をおいて複数本の母屋材6,6……がさし渡され、・・・少くとも支持柱1,1間に横桟4,4……に壁面パネル9が取付けられ、梁5,5間の母屋材6,6…に屋根パネル10が・・・取付けられ」た構成を備え、それゆえに、刊行物1に記載された「構造的に安定しており従来の如く梁を支えるのに建物の壁面に固定桟を取付ける必要がな」いとの効果を奏するものである。
よって、刊行物1発明の組立式簡易収納庫は強固な構造であるから、その屋根パネル10の端部の鼻隠7の先端は、強風や積雪等により全く揺動しないとはいわないまでも、積極的に揺動することは考慮されていない。
そうすると、刊行物1発明の隙間は、揺動撓み空隙とはいえず、そして、閉塞部材は、下方に凸に屈曲され、舌状先端を躯体に対して上下方向に摺動自在に弾性圧接させたものとはいえない。
また、刊行物1の図面を参照しても、「被嵌溝又は嵌合条が屋根自由端に設けられた取付枠に固定されている」ことは記載されていない。
よって、申立人の主張は採用することができない。

(ウ)ここで、申立人が提出した刊行物2をみると、「浴槽8の上下方向の変形と共に目地材16も浴槽と共に上下方向に動くこととなるため、防水パンの形状にかかわらず浴槽8との隙間が生ずることがなくなる」ことが記載され、また、【図4】を参照すると、目地材16が若干下に凸の状態で、その先端が壁パネル9に当接していることが理解できるものの、当該目地材16は、浴槽8と壁パネル9との隙間を塞ぐものであるから、刊行物1発明の組立式簡易収納庫である簡易建物とは、技術分野が相違し、さらに、隙間並びにその隙間を閉塞する部材の大きさも異なっている。
また、刊行物1発明の組立式簡易収納庫は、上記(イ)で述べたように、強固な構造であるから、鼻隠7が揺動することを考慮するものではない。
よって、刊行物1発明の水切りパツキング11を、刊行物2に記載の目地材14に代える動機付けは存在しない。
そもそも、刊行物1発明の鼻隠は積極的に揺動することを考慮するものではないから、刊行物1発明の建物の壁面と鼻隠との隙間は、揺動撓み空隙とはいえず、また、刊行物2に記載の目地材14が塞ぐであろう隙間も、微細なものと認められるから、仮に、刊行物1発明の水切りパツキング11を刊行物2に記載の目地材14に代えたとしても、上記相違点に係る構成である、揺動撓み空隙を閉塞させている閉塞部材を、下方に凸に屈曲させ、舌状先端を躯体に対して上下方向に摺動自在に弾性圧接させたものとすることはできない。

(エ)その他、刊行物3ないし7をみても、簡易建物の分野において、揺動する先端部と壁との揺動撓み空隙の閉塞を、舌状先端を上下方向に揺動自在に弾性圧接させた閉塞部材により行ったものは、記載されていない。
したがって、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明ではなく、また、刊行物1発明、刊行物2に記載の事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明5及び6について
申立人は、本件特許発明5及び6に対して、さらに甲第8ないし13号証を提出し、請求項5及び6に記載された構成は、周知技術である旨、主張している。
しかしながら本件特許発明5及び6は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、本件特許発明1についての判断と同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-01-19 
出願番号 特願2011-972(P2011-972)
審決分類 P 1 652・ 113- Y (E04B)
P 1 652・ 121- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 湊 和也  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2016-04-15 
登録番号 特許第5914908号(P5914908)
権利者 株式会社LIXIL
発明の名称 建物添設用独立構築物  
代理人 鈴木 三義  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 川渕 健一  
代理人 清水 雄一郎  

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