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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1324892
異議申立番号 異議2016-701006  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-21 
確定日 2017-02-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第5911404号発明「簡易メンブレンアッセイ法及びキット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5911404号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5911404号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成14年6月27日に出願された特願2002-187781号の一部が、平成18年3月31日に新たな特許出願(特願2006-099040号)とされ、この新たな特許出願の一部が平成20年8月22日に新たな特許出願(特願2008-214432号)とされ、この新たな特許出願の一部が平成24年9月7日に新たな特許出願(特願2012-196836号)とされたものであって、平成28年4月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 笠井 素子 、 番場 大円 及び 森岡 道朗 によりそれぞれ特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明

特許第5911404号の請求項1ないし6の特許に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの本件発明1及び4は以下のとおりである。

本件発明1
「 【請求項1】
被測定物を捕捉するための捕捉試薬が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置を用いる、検体試料中の被測定物のラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法であって、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後に前記メンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被測定物の存在を検出あるいは定量することを含み、前記検体が、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液であり、前記メンブレンの孔径または保留粒子径が0.5μm以上7μm以下でかつ前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、及び前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径が0.2?2.0μmであり、前記濾過フィルターは生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする方法。」

本件発明4
「 【請求項4】
以下を含む、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液又は便懸濁液である検体試料中の被測定物の存在を検査あるいは定量するためのラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイキット;
(1)濾過フィルター、及び
(2)被測定物を捕捉するための捕捉物質が結合したメンブレンを備えたアッセイ装置、
であって、前記メンブレンの孔径または保留粒子径が0.5μm以上7μm以下でかつ前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、及び前記濾過フィルターの孔径または保留粒子径が0.2?2.0μmであり、前記濾過フィルターが生体成分がメンブレン上あるいはメンブレン中に付着することを原因とする偽陽性を防ぐことを特徴とする、上記アッセイキット。」


第3 申立理由の概要

1 特許異議申立人 笠井 素子 は、証拠として、下記の甲第1ないし9号証を提出し、本件発明4ないし6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1ないし9号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明4ないし6に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものであり、さらに、本件発明1ないし6に係る特許は、その特許請求の範囲が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消すべきものであり、また、その発明の詳細な説明の記載が同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消すべきものである旨主張している。

特許異議申立人 笠井 素子 が提出した甲第1ないし9号証
甲第1号証:特開2000-88851号公報(以下「甲K1」という。)
甲第2号証:特開平6-50973号公報(以下「甲K2」という。)
甲第3号証:特表平9-506177号公報(以下「甲K3」という。)
甲第4号証:特表平9-506434号公報(以下「甲K4」という。)
甲第5号証:特開平10-185920号公報(以下「甲K5」という。)
甲第6号証:特開平4-289456号公報(以下「甲K6」という。)
甲第7号証:特開2000-65832号公報(以下「甲K7」という。)
甲第8号証:特開2000-310640号公報(以下「甲K8」という。)
甲第9号証:特開2001-124775号公報(以下「甲K9」という。)

2 特許異議申立人 番場 大円 は、証拠として、下記の甲第1ないし11号証を提出し、本件発明1ないし6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1ないし7号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1ないし6に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものであり、さらに、本件発明1ないし6に係る特許は、その特許請求の範囲が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消すべきものであり、また、その発明の詳細な説明の記載が同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消すべきものである旨主張している。

特許異議申立人 番場 大円 が提出した甲第1ないし11号証
甲第1号証:Paek SH, Lee SH, Cho JH, Kim YS (2000) "Development of Rapid One-Step Immunochromatographic Assay" Methods 22 p.53-60(以下「甲B1」という。)
甲第2号証:Fisher Scientific 社のHP抜粋(以下「甲B2」という。)
甲第3号証:特開平9-57080号公報(以下「甲B3」という。)
甲第4号証:日本ジェネティクス株式会社の濾紙(ガラス繊維)の製品カタログ(http://www.n-genetics.com/product_Detail.html?item_id=3166)抜粋(以下「甲B4」という。)
甲第5号証:感染症学雑誌 第75巻第9号 792?799頁(以下「甲B5」という。)
甲第6号証:特表平9-511058号公報(以下「甲B6」という。)
甲第7号証:登録実用新案第3079968号公報(以下「甲B7」という。)
甲第8号証:JIS K3832-1990(以下「甲B8」という。)
甲第9号証:JIS K3835-1990(以下「甲B9」という。)
甲第10号証:特開2003-213004号公報(以下「甲B10」という。)
甲第11号証:特開平3-72261号公報(以下「甲B11」という。)

3 特許異議申立人 森岡 道朗 は、証拠として、下記の甲第1ないし4号証を提出し、本件発明4ないし6は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件発明4ないし6に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものであり、また、本件発明1ないし6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1ないし4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1ないし6に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものであり、さらに、本件発明1ないし6に係る特許は、その特許請求の範囲が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消すべきものであり、また、その発明の詳細な説明の記載が同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消すべきものであり、本件発明4ないし6に係る特許は、その特許請求の範囲が同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消すべきものである旨主張している。

特許異議申立人 森岡 道朗 が提出した甲第1ないし4号証
甲第1号証:特開平4-289456号公報(以下「甲M1」という。)
甲第2号証:国際公開第2000/072012号(以下「甲M2」という。)
甲第3号証:特開2000-88851号公報(以下「甲M3」という。)
甲第4号証:特開2001-124775号公報(以下「甲M4」という。)


第4 主な証拠の記載事項

1 甲K1(甲M3)の事項

甲K1の【特許請求の範囲】、段落【0004】、【0008】、【0009】及び【0011】の記載から、甲K1には、

「 血清、血漿及びその他の体液中の成分等を被検試料とし、被検試料中の被測定物質を定量又は定性するフロースルータイプの生物学的特異反応装置であって、
保留粒子径が0.2?0.4μmのデプスフィルターと1μm以上のデプスフィルターを少なくとも組み合わせた前処理フィルター、及び
孔径が0.45μm以下であり、被測定物質を捕獲できるリガンドを保持させた反応マトリックスを備え、
これにより、反応マトリックスの目詰まりを防止して精度の高い測定が可能な生物学的特異反応装置。」

の発明(以下「甲K1発明」という。)、及び、

「フロースルータイプの生物学的特異反応装置を用いた生物学的特異反応測定において、保留粒子径が0.2?0.4μmのデプスフィルターと1μm以上のデプスフィルターを少なくとも組み合わせた前処理フィルターを用いて被検試料を前処理すること」

が記載されているものと認められる。

2 甲B1記載の事項

甲B1の第54頁左欄2行?右欄2行、第59頁左欄16?32、及び第54頁図1の記載から、甲B1には、

「 検体試料中の被測定物のラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ法であって、
Fisher Scientificから購入した厚さ0.32mmのG6等級ガラス繊維メンブレンからなるサンプル適用パッド、被測定物を捕捉するための捕捉抗体が結合した細孔径5?8μmのニトロセルロースメンブレン、及び、セルロースメンブレンからなる吸収パッドが連結された、アッセイ装置を用い、
被測定物を含む水性媒体の検体試料をガラス繊維メンブレンに付与し、
ニトロセルロースメンブレンを移動する検体試料中の被測定物を捕捉抗体により捕捉することにより、検体試料中の被測定物を定性・定量分析する方法。」

の発明(以下「甲B1方法発明」という。)、及び、

「Fisher Scientificから購入した厚さ0.32mmのG6等級ガラス繊維メンブレンからなるサンプル適用パッド、被測定物を捕捉するための捕捉抗体が結合した細孔径5?8μmのニトロセルロースメンブレン、及び、セルロースメンブレンからなる吸収パッドが連結された、ラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイ装置。」

の発明(以下「甲B1装置発明」という。)が記載されているものと認められる。

3 甲M1記載の事項

甲M1の段落【0014】、【0020】、【0021】、【0024】及び【0033】の記載から、甲K1には、

「 貯蔵パッド、第1フィルター素子、第2フィルター素子、及び、固定化物質を含む吸上膜が、この順に基板上に隣接して配置されたマイグレーション検査装置を用いる、生物学的液体試料中における分析物の存在を検出する方法であって、第2フィルター素子が大きい成分の通過を妨害して試料中に存在する不必要な成分をトラップし、感度を増大させる方法。」

の発明(以下「甲M1方法発明」という。)、及び、

「 貯蔵パッド、第1フィルター素子、第2フィルター素子、及び、固定化物質を含む吸上膜が、この順に基板上に隣接して配置されたマイグレーション検査装置。」

の発明(以下「甲M1装置発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 甲B6記載の事項

甲B6の第10頁5?9行及び第12頁6?23行の記載から、甲B6には、吸収パッドで裏打ちされたニトロセルロース膜上に特異的な結合物質を固定した装置を用いる検査において、フィルターによりサンプルを濾過することにより、偽陽性の原因となる物質を除去することが記載されているものと認められる。


第5 判断

1 特許法第29条の規定に係る申立てについて

(1)本件発明1について

本件発明1と甲B1方法発明又は甲M1方法発明とを対比すると、甲B1方法発明又は甲M1方法発明のいずれも、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後にメンブレン上に滴下する工程を備えていない。
甲K1ないし9、甲B2ないし11、甲M2ないし4のうち、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後にメンブレン上に滴下することは、甲K1(甲M3)及び甲B6に記載されていると認められるが、甲K1(甲M3)及び甲B6はいずれもフロースルー式のアッセイに関するものである。
甲B1方法発明又は甲M1方法発明は、アッセイ装置に滴下された試料がアッセイ装置上のフィルターを通過することにより不必要な成分を除去する簡易なアッセイ装置を用いるものであるところ、甲B1方法発明又は甲M1方法発明において、フィルターをアッセイ装置から切り離し、濾過工程を独立して行うようにすることは、検査工程を煩雑化させるものであって、利益のないものと認められることから、甲B1方法発明又は甲M1方法発明に甲K1(甲M3)及び甲B6に記載された上記事項を適用する動機があるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲B1方法発明又は甲M1方法発明、並びに甲K1ないし9、甲B2ないし11、及び甲M2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2及び3について

本件発明2及び3は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲B1方法発明又は甲M1方法発明、並びに甲K1ないし9、甲B2ないし11、及び甲M2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明4について

本件発明4は、「濾過フィルター」及び「メンブレンを備えたアッセイ装置」からなる「アッセイキット」であるから、「濾過フィルター」及び「メンブレンを備えたアッセイ装置」は、「アッセイキット」を構成する独立した要素である。

ア 本件発明4と甲K1とを対比すると、両者は少なくとも本件発明4はラテラルフロー式であるのに対し、甲K1発明はフロースルータイプである点において相違する。
ラテラルフロー式のアッセイ装置は従来周知であるが、甲K2ないし9、甲B1ないし11、及び甲M1ないし4には、フロースルータイプである甲K1発明を形式の異なるラテラルフロー式に変更する動機付けとなる記載があるとは認められない。
よって、本件発明4は、甲K1発明、並びに甲K2ないし9、甲B1ないし11、及び甲M1ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明4と甲B1装置発明又は甲M1装置発明とを対比すると、甲B1装置発明又は甲M1装置発明のいずれも、アッセイ装置から独立した濾過フィルターを備えていない。
(ア)よって、本件発明4は甲M1に記載された発明ではない。
(イ)甲K1ないし9、甲B2ないし11、甲M2ないし4のうち、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後にメンブレン上に滴下することは、甲K1(甲M3)及び甲B6に記載されていると認められるが、甲K1(甲M3)及び甲B6はいずれもフロースルー式のアッセイに関するものである。
甲B1装置発明又は甲M1装置発明は、アッセイ装置に滴下された試料が装置上のフィルターを通過することにより不必要な成分を除去することができる簡易なアッセイ装置であるところ、甲B1装置発明又は甲M1装置発明において、フィルターをアッセイ装置から切り離し、濾過工程を独立して行うような使用形態のものにすることは、キットの構成要素を増加させるとともに使用時の検査工程を煩雑化させるものであって、利益のないものと認められることから、甲B1装置発明又は甲M1装置発明において、甲K1(甲M3)及び甲B6に記載された上記事項に基づいてフィルターを独立したものとする動機があるとはいえない。
よって、本件発明4は、甲B1装置発明又は甲M1装置発明、並びに甲K1ないし9、甲B2ないし11、及び甲M2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明5及び6について

本件発明5及び6は、本件発明4を更に減縮したものであるから、上記本件発明4についての判断と同様の理由により、甲M1に記載された発明ではなく、甲K1発明、並びに甲K2ないし9、甲B1ないし11、及び甲M1ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、甲B1装置発明又は甲M1装置発明、並びに甲K1ないし9、甲B2ないし11、及び甲M2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

2 特許法第36条第6項第1号に規定する要件に係る申立てについて

特許異議申立人 笠井 素子 及び 森岡 道朗 は、本件発明1ないし6はラテラルフロー式のアッセイに係るものであるのに対し、実施例において偽陽性の発生を抑制することができるという作用効果が確認されているのはフロースルー式のアッセイのみであり、ラテラルフロー式のアッセイとフロースルー式のアッセイとでは偽陽性が発生するメカニズムが異なることから、ラテラルフロー式のアッセイにおいてフロースルー式のアッセイと同等の作用効果が得られるとはいえない旨主張している。
しかしながら、試料を濾過フィルターで濾過することにより夾雑物等が減少することは明らかであるから、ラテラルフロー式のアッセイにおいては偽陽性の発生を抑制することができないとまではいえない。

特許異議申立人 番場 大円 は、本件発明1ないし6が奏する作用効果は濾過フィルターの孔径又は保留粒子径の微妙な差により大きく変動しうるものであり、また、濾過フィルターの孔径又は保留粒子径は測定方法により変動することが技術常識であるが、発明の詳細な説明には濾過フィルターの孔径及び保留粒子径の測定方法については記載されていないから、実施例の再現により本件発明1ないし6が奏する作用効果を確認することは不可能であり、本件発明1ないし6はその課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない旨主張している。
しかしながら、甲B9の第2頁4?5行に「4. 器具 器具は,次のとおりとする。(1) 分析用精密ろ過膜 直径142mm,孔径0.45μm以下のもの。」と、第9頁3?6行に「2. 器具 器具は,次のとおりとする。・・・(3) メンブレンフィルタ 格子マーク付き、直径 約50mm,孔径0.45μm以下のもの。」と記載されているように、フィルターの孔径は、JISにおいても測定方法の提示をすることなく用いられる規格である。
よって、上記特許異議申立人 番場 大円 の主張は理由がない。

以上のとおりであるから、本件発明1ないし6は発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

3 特許法第36条第4項第1号に規定する要件に係る申立てについて

特許異議申立人 笠井 素子 、 番場 大円 及び 森岡 道朗 は、本件発明1ないし6は発明の詳細な説明に記載したものとはいえないことから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし6を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない旨主張している。
しかしながら、上記「2」で説示したように、本件発明1ないし6は発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、上記特許異議申立人 笠井 素子 、 番場 大円 及び 森岡 道朗 の主張は理由がない。

4 特許法第36条第6項第2号に規定する要件に係る申立てについて

特許異議申立人 森岡 道朗 は、本件発明4ないし6は、検体試料を濾過フィルターを用いて濾過した後にメンブレン上に滴下し、前記検体試料中の被測定物の存在を検出あるいは定量することを特定していないから、効果を達成することができず、明確でない旨主張している。
しかしながら、本件発明4ないし6はラテラルフロー式簡易メンブレンアッセイキットに係る物の発明であるから、その使用方法が特定されていないことをもって明確でないということはできない。
よって、上記特許異議申立人 森岡 道朗 の主張は理由がない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-02-06 
出願番号 特願2012-196836(P2012-196836)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01N)
P 1 651・ 537- Y (G01N)
P 1 651・ 536- Y (G01N)
P 1 651・ 113- Y (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 草川 貴史  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
登録日 2016-04-08 
登録番号 特許第5911404号(P5911404)
権利者 デンカ生研株式会社
発明の名称 簡易メンブレンアッセイ法及びキット  
代理人 辻居 幸一  
代理人 市川 さつき  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 箱田 篤  
代理人 浅井 賢治  
代理人 山崎 一夫  

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