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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G10G 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G10G |
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管理番号 | 1325492 |
審判番号 | 不服2016-5788 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-19 |
確定日 | 2017-03-14 |
事件の表示 | 特願2011-242607「データ処理装置およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月10日出願公開、特開2013- 7988、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年11月4日(優先権主張 平成23年5月26日)の出願であって、手続きの概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成27年 7月 3日(起案日) 意見書 :平成27年 8月26日 手続補正 :平成27年 8月26日 拒絶査定 :平成28年 1月12日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成28年 4月19日 手続補正 :平成28年 4月19日 第2 平成28年4月19日付けの手続補正の適否 1.本件補正 平成28年4月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、請求項1については、本件補正前に、 「 【請求項1】 発音内容を示す発音データを取得するとともに、当該発音内容を変化させるための加工データを複数取得して、当該発音データに対して当該複数の加工データに基づく複数の加工をする加工手段と、 前記複数の加工をされた発音データの発音内容を示す楽音波形信号を解析して、予め決められた特徴を有する楽音波形信号の期間を特定する特定手段と、 前記特定された期間の楽音波形信号を解析して特徴量を算出する算出手段と、 前記特定された期間の楽音波形信号を示す特定データと前記算出された特徴量を示す特徴量データとを出力するデータ出力手段と を具備することを特徴とするデータ処理装置。」 とあったところを、 本件補正後、 「 【請求項1】 発音内容を示す発音データを取得するとともに、当該発音内容を変化させるための加工データを複数取得して、当該発音データに対して当該複数の加工データに基づく複数の加工をする加工手段と、 前記複数の加工をされた発音データの発音内容を示す楽音波形信号を解析して、予め決められた特徴を有する楽音波形信号の期間を特定する特定手段と、 前記特定された期間の楽音波形信号を解析して特徴量を算出する算出手段と、 前記特定された期間の楽音波形信号を示す特定データと前記算出された特徴量を示す特徴量データとを出力するデータ出力手段と を具備し、 前記複数の加工データは、発音内容を規定する発音データを含み、 前記加工手段は、前記取得した発音データに係る楽音波形信号に対して、前記複数の加工データに含まれる発音データに係る楽音波形信号を合成することにより前記加工をする ことを特徴とするデータ処理装置。」 とするものである。 上記本件補正の内容は、請求項1について、発明特定事項である「複数の加工データ」について「発音内容を規定する発音データを含み」と限定し、「加工手段」について「前記取得した発音データに係る楽音波形信号に対して、前記複数の加工データに含まれる発音データに係る楽音波形信号を合成することにより前記加工をする」と限定したものである。 本件補正は、発明特定事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭62-94896号公報(昭和62年5月1日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「この発明は電子楽器その他の楽音発生機器で利用される楽音信号発生装置に関し、特に、外部から与えられた波形信号をサンプリングして記憶し、これに基づき楽音信号を発生するタイプの装置の改良に関する。」(1頁右下欄3?7行) (2)「この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、外部から導入した波形信号を素材にして楽音信号形成を行う場合において、シンセサイザのように自由度の高い音作りができるようにした楽音信号発生装置を提供することを目的とする。」(2頁左上欄10?14行) (3)「(第1例) RAM1に記憶した外部からサンプリングした波形信号(これをORG波形という)を読み出して楽音処理回路13で所望の変更修正を施し、これをRAM19に一旦記憶する。そしてRAM19に記憶した変更済み波形(これをMODで示す)を大容量メモリ20に転送し記憶する。楽音処理回路13での音色制御設定内容を変えて、上述の処理を複数回行ない、複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)を大容量メモリ20に記憶する。そして、この変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)のうち1つを選択してRAM1に転送記憶する。こうして、RAM1の記憶波形はORG波形から変更済み波形に書き替えられる。」(4頁左上欄19行?右上欄12行) (4)「(第3例) 前記第1例と同様にして複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)を大容量メモリ20に記憶する。また、RAM1から読み出したORG波形も大容量メモリ20に記憶する。こうして大容量メモリ20に記憶した複数の波形の中から所望の2以上の波形を選んでこれらを適宜の演算処理により合成し、合成された波形をRAM1に記憶する(若しくは大容量メモリ20に記憶して別の波形合成演算処理で利用し得るようにする)。波形合成演算処理には種々の形態が考えられるが、例えば、ORG波形のアタック部と変更済み波形の持続部を結合して新波形を作る、等のやり方がある。その場合、結合箇所において滑らかな接続が実現されるようにするために、前部の波形を立下りエンベロープで減衰させ、これに交差させて後部の波形を立上りエンベロープで立上らせ、両者を加算合成するクロスフェード補間演算を採用するとよい。」(4頁左下欄5行?右下欄2行) 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)引用例1には、「外部から与えられた波形信号をサンプリングして記憶し、これに基づき楽音信号を発生する楽音信号発生装置」が記載されている(摘示事項(1))。 (b)RAM1に記憶した外部からサンプリングした波形信号(これをORG波形という)を読み出して楽音処理回路13で所望の変更修正を施し、これをRAM19に一旦記憶する。そしてRAM19に記憶した変更済み波形(これをMODで示す)を大容量メモリ20に転送し記憶する。楽音処理回路13での音色制御設定内容を変えて、上述の処理を複数回行ない、複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)を大容量メモリ20に記憶する(摘示事項(3))。 (c)RAM1から読み出したORG波形も大容量メモリ20に記憶する。こうして大容量メモリ20に記憶した複数の波形の中から所望の2以上の波形を選んでこれらを適宜の演算処理により合成し、合成された波形をRAM1に記憶する(摘示事項(4))。 以上を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「外部から与えられた波形信号をサンプリングして記憶し、これに基づき楽音信号を発生する楽音信号発生装置であって、 RAM1に記憶した外部からサンプリングした波形信号(これをORG波形という)を読み出して楽音処理回路13で所望の変更修正を施し、これをRAM19に一旦記憶し、 そしてRAM19に記憶した変更済み波形(これをMODで示す)を大容量メモリ20に転送し記憶し、 楽音処理回路13での音色制御設定内容を変えて、上述の処理を複数回行ない、複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)を大容量メモリ20に記憶し、 RAM1から読み出したORG波形も大容量メモリ20に記憶し、 こうして大容量メモリ20に記憶した複数の波形の中から所望の2以上の波形を選んでこれらを適宜の演算処理により合成し、合成された波形をRAM1に記憶する楽音信号発生装置。」 3.対比 そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。 (1)データ処理装置 引用発明の「楽音信号発生装置」は、外部から与えられた波形信号をサンプリングして記憶し、これに基づき楽音信号を発生するものであるから、「データ処理装置」といえる。 (2)加工手段 引用発明は、外部から与えられた波形信号をサンプリングして記憶するから、「発音内容を示す発音データを取得する」といえる。また、RAM1に記憶した外部からサンプリングした波形信号(これをORG波形という)を読み出して楽音処理回路13で所望の変更修正を施し、これをRAM19に一旦記憶し、そしてRAM19に記憶した変更済み波形(これをMODで示す)を大容量メモリ20に転送し記憶し、楽音処理回路13での音色制御設定内容を変えて、上述の処理を複数回行ない、複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)を大容量メモリ20に記憶するから、「当該発音内容を変化させるための加工データを複数取得して、当該発音データに対して当該複数の加工データに基づく複数の加工をする」といえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「発音内容を示す発音データを取得するとともに、当該発音内容を変化させるための加工データを複数取得して、当該発音データに対して当該複数の加工データに基づく複数の加工をする加工手段」を具備する点で一致する。 (3)特定手段 本件補正発明は、「前記複数の加工をされた発音データの発音内容を示す楽音波形信号を解析して、予め決められた特徴を有する楽音波形信号の期間を特定する特定手段」を具備するのに対し、引用発明は、そのような手段を具備しない点で相違する。 (4)算出手段 本件補正発明は、「前記特定された期間の楽音波形信号を解析して特徴量を算出する算出手段」を具備するのに対し、引用発明は、そのような手段を具備しない点で相違する。 (5)データ出力手段 本件補正発明は、「前記特定された期間の楽音波形信号を示す特定データと前記算出された特徴量を示す特徴量データとを出力するデータ出力手段」を具備するのに対し、引用発明は、そのような手段を具備しない点で相違する。 (6)複数の加工データ 引用発明は、複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)を大容量メモリ20に記憶し、RAM1から読み出したORG波形も大容量メモリ20に記憶し、こうして大容量メモリ20に記憶した複数の波形の中から所望の2以上の波形を選んでこれらを適宜の演算処理により合成するから、ORG波形と複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)とを合成する場合に着目すると、「変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)」は、「複数の加工データ」ともいえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記複数の加工データは、発音内容を規定する発音データを含」む点で一致する。 (7)加工手段の詳細 また、本件補正発明と引用発明とは、「前記加工手段は、前記取得した発音データに係る楽音波形信号に対して、前記複数の加工データに含まれる発音データに係る楽音波形信号を合成することにより前記加工をする」点でも一致する。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「発音内容を示す発音データを取得するとともに、当該発音内容を変化させるための加工データを複数取得して、当該発音データに対して当該複数の加工データに基づく複数の加工をする加工手段 を具備し、 前記複数の加工データは、発音内容を規定する発音データを含み、 前記加工手段は、前記取得した発音データに係る楽音波形信号に対して、前記複数の加工データに含まれる発音データに係る楽音波形信号を合成することにより前記加工をする ことを特徴とするデータ処理装置。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> (1)本件補正発明は、「前記複数の加工をされた発音データの発音内容を示す楽音波形信号を解析して、予め決められた特徴を有する楽音波形信号の期間を特定する特定手段」を具備するのに対し、引用発明は、そのような手段を具備しない点。 (2)本件補正発明は、「前記特定された期間の楽音波形信号を解析して特徴量を算出する算出手段」を具備するのに対し、引用発明は、そのような手段を具備しない点。 (3)本件補正発明は、「前記特定された期間の楽音波形信号を示す特定データと前記算出された特徴量を示す特徴量データとを出力するデータ出力手段」を具備するのに対し、引用発明は、そのような手段を具備しない点。 4.判断 そこで、上記相違点(1)ないし(3)について検討する。 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2008-250049号公報(平成20年10月16日公開、以下「引用例2」という。)には、「楽音素片データベース63は、楽音の素片の波形を示す楽音素片データをその特徴量に対応付けて格納するデータベースである。楽音素片データは、楽器演奏曲の音響波形を示す曲データを分割することにより得られるデータである。」(【0013】)との記載がある。 また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平10-26986号公報(平成10年1月27日公開、以下「引用例3」という。)には、「2つの波形を複数の周波数帯域に分割してそれぞれの振幅エンベロープを抽出し、抽出された振幅エンベロープを任意の割合でミックスしたものを、元の帯域成分の振幅エンベロープを一定にしたものに乗算し、その結果を合成して、新たな波形を作成する」(【0005】)との記載がある。 しかしながら、引用発明は、外部から与えられた波形信号をサンプリングして記憶し、これに基づき楽音信号を発生する楽音信号発生装置であって、複数の変更済み波形MOD_(1)?MOD_(n)を解析して、予め決められた特徴を有する楽音波形信号の期間を特定する必要性、特定された期間の楽音波形信号を解析して特徴量を算出する必要性、及び特定された期間の楽音波形信号を示す特定データと算出された特徴量を示す特徴量データとを出力する必要性のいずれも認められないから、本件補正発明の「特定手段」、「算出手段」、及び「データ出力手段」のような手段を具備するようにすることは、当業者が容易に想到するとはいえない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たす。 請求項2ないし5は、請求項1を直接若しくは間接に引用する請求項であるから、それらについてする補正の内容は、上記請求項1についてする補正の内容と同じである。 したがって、請求項2ないし5についてする補正も、請求項1についてする補正と同様に、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たす。 請求項6は、コンピュータを、請求項1に記載されたデータ処理装置の各手段として機能させるためのプログラムが記載された請求項であって、それについてする補正の内容は、上記請求項1についてする補正の内容と同じである。 したがって、請求項6についてする補正も、請求項1についてする補正と同様に、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たす。 5.本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項に規定する要件を満たす。 第3 本願発明について 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項に規定する要件を満たすから、本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-02-20 |
出願番号 | 特願2011-242607(P2011-242607) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WY
(G10G)
P 1 8・ 121- WY (G10G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 間宮 嘉誉 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 酒井 朋広 |
発明の名称 | データ処理装置およびプログラム |
代理人 | 特許業務法人朝日特許事務所 |