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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1325541
審判番号 不服2016-4095  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-17 
確定日 2017-03-14 
事件の表示 特願2011-123868「可搬型検出装置用の位置感知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月 5日出願公開、特開2012- 452、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月2日(パリ条約による優先権主張2010年6月14日 米国(US))を出願日とする出願であって、平成27年4月9日付けで拒絶理由が通知され,同年6月3日に意見書が提出され,同年11月20日付けで拒絶査定がなされ,平成28年3月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正書が提出され、同年9月29日付けで当審からの拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成28年12月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。また、下線は補正箇所を示す。)。

「 【請求項1】
ワークステーション34と、可搬型X線検出器14とを備えるシステムであって、
該可搬型X線検出器14が、
複数の検出器素子を含む検出器パネルと、
当該可搬型X線検出器14の内部に設置されている3軸重力センサと、
プロセッサ28と
を備え、
前記3軸重力センサは、前記可搬型X線検出器14の中心点102の極く近傍に配置され、
前記プロセッサ28は、
前記3軸重力センサを使用して決定された前記可搬型X線検出器14の物理的配向に対応する配向情報を前記ワークステーション34へ送信するようにプログラムされており、
前記ワークステーション34は、X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている、システム。
【請求項2】
前記プロセッサ28は、
ワークステーション34から無線要求を受け取って、
地球に関する当該可搬型X線検出器14の前記物理的配向を表わす配向情報を前記3軸重力センサから前記ワークステーション34へ無線送信する
ようにさらにプログラムされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサ28は、前記3軸重力センサからの前記受け取った入力に基づいてX線源12の動作を阻止するようにさらにプログラムされている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサ28は、X線源12が当該可搬型X線検出器14に対して垂直になるように、前記3軸重力センサからの前記受け取った入力に基づいて前記X線源12の角度を調節するようにさらにプログラムされている、請求項1乃至3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
X線源12と、
ワークステーション34と、
該X線源12により発生されるX線を受光するように構成された可搬型X線検出器14と、
を備え、
前記可搬型X線検出器14は、
当該可搬型X線検出器14の内部に設置されている3軸重力センサと、該3軸重力センサに結合されているプロセッサ28とを含む可搬型X線検出器14とを備え、
前記3軸重力センサは、前記可搬型X線検出器14の中心点102の極く近傍に配置され、
前記プロセッサ28は、
前記3軸重力センサを使用して決定された前記可搬型X線検出器14の物理的配向に対応する配向情報をワークステーション34へ送信するようにプログラムされており、
前記ワークステーション34は、X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている、
医用イメージング・システム10。
【請求項6】
前記プロセッサ28は、地球に関する前記可搬型X線検出器14の前記物理的配向を表わす前記配向情報を前記3軸重力センサから前記ワークステーション34へ無線送信するようにさらにプログラムされている、請求項5に記載の医用イメージング・システム10。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1について
・請求項1-9
・引用文献等1-3
・備考
引用文献1には、
(1).【0016】,【0017】
「この第1検出部50は、例えば、手術室12内における放射線検出カセッテ24の水平方向(図3中、矢印A、B方向)の位置検出が可能な第1水平センサ52と、鉛直方向(図2中、矢印C方向)への位置検出が可能な第1鉛直センサ54と、前記放射線検出カセッテ24の変位量を検出可能な第1変位センサ56とを含む(図6参照)。第1水平センサ52は、例えば、地磁気を利用して空間内における位置を検知可能な方位センサが用いられ、第1鉛直センサ54には、重力センサが用いられ、第1変位センサ56には、放射線検出カセッテ24が変位する際の加速度を検出可能な加速度センサが用いられる。」
(2).【0047】,【0048】
「一方、撮影装置22と放射線検出カセッテ24の位置情報に基づいて位置判定部124で前記撮影装置22が前記放射線検出カセッテ24に対して鉛直上方に位置せずに正対した状態にないと判定された場合には、・・・放射線源82を含む撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが所望位置に配置されていないことを警告として、コンソール28、表示装置26等に対して行う。また、同時に、位置判定部124から制御信号が送受信機48、84を介して線源制御部86へと出力され、該線源制御部86から駆動部90に対して駆動信号が出力される。・・・」
と記載されている。また、引用文献1に記載された発明は、段落0019に記載された「放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を高精度に検出することが可能となる。」や、段落0035に記載された「表示制御部108によって処理された放射線画像情報を表示する表示部(警告手段)110とを備える。」なる事項を前提とするものである。ここで、上記2.で指摘される「コンソール28、表示装置26等」は請求項1に記載の「ワークステーション34」等に相当する。
そして、引用文献1に記載された発明に請求項1に記載の「3軸重力センサ」を採用することは、引用文献1の段落0019,0047等において開示される課題を解決するうえで、カセッテの適切な姿勢判定を行おうとする者が適宜設計的になし得たものであるか、又は、参考として引用する[引用文献3:特開2010-051698号公報]の段落0102に記載されたように周知技術である。
よって、当該請求項に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

引用文献1.特開2009-226188号公報
引用文献2.特開2008-246102号公報
引用文献3.特開2010-051698号公報(周知技術を示す文献)

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項(下線は当審で付与した。)
ア 引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明について
(ア)
【技術分野】
「【0001】
本発明は、被写体を透過した放射線を放射線画像情報に変換する放射線変換パネルを備えた放射線画像撮影システムに関する。」

(イ)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1?図3は、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム10が設置された手術室12の説明図である。手術室12には、放射線画像撮影システム10に加えて、患者14が横臥する手術台16が配置されると共に、医師18が手術に使用する各種器具が載置され
る器具台20が手術台16の側部に配置される。また、手術台16には、麻酔器、吸引器、心電計、血圧計等、手術に必要な様々な機器が配置される。
【0011】
放射線画像撮影システム10は、撮影条件に従った線量からなる放射線Xを患者14に照射する撮影装置(撮影部)22と、患者14を透過した放射線Xを検出する放射線検出器(放射線変換パネル)40(後述する)を内蔵した放射線検出カセッテ24と、放射線検出器40によって検出された放射線Xに基づく放射線画像を表示する表示装置26と、撮影装置22、放射線検出カセッテ24及び表示装置26を制御するコンソール28とを備える。撮影装置22、放射線検出カセッテ24、表示装置26及びコンソール28間では、無線通信による信号の送受信が行われる。
【0012】
また、手術室12には、撮影装置22及び放射線検出カセッテ24の3次元的な位置を検出可能なアンテナ装置(位置検出手段)29が設けられる。・・・
【0014】
図4は、放射線検出カセッテ24の内部構成図である。放射線検出カセッテ24は、放射線Xを透過させる材料からなるケーシング34を備える。ケーシング34の内部には、放射線Xが照射されるケーシング34の照射面36側から、患者14による放射線Xの散乱線を除去するグリッド38、患者14を透過した放射線Xを検出する放射線検出器40、及び、放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板42が順に配設される。なお、ケーシング34の照射面36をグリッド38として構成してもよい。
【0015】
また、ケーシング34の内部には、放射線検出カセッテ24の電源であるバッテリ44と、バッテリ44から供給される電力により放射線検出器40を駆動制御するカセッテ制御部46と、放射線検出器40によって検出した放射線Xの情報を含む信号をコンソール28との間で送受信する送受信機48と、前記放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を検出可能な第1検出部50と、アンテナ装置29から発信される電波を受信可能な第1受信部(位置検出手段)51とが収容される。
【0016】
この第1検出部50は、例えば、手術室12内における放射線検出カセッテ24の水平方向(図3中、矢印A、B方向)の位置検出が可能な第1水平センサ52と、鉛直方向(図2中、矢印C方向)への位置検出が可能な第1鉛直センサ54と、前記放射線検出カセッテ24の変位量を検出可能な第1変位センサ56とを含む(図6参照)。
【0017】
第1水平センサ52は、例えば、地磁気を利用して空間内における位置を検知可能な方位センサが用いられ、第1鉛直センサ54には、重力センサが用いられ、第1変位センサ56には、放射線検出カセッテ24が変位する際の加速度を検出可能な加速度センサが用いられる。
【0018】
そして、図6に示されるように、第1検出部50を構成する第1水平センサ52、第1鉛直センサ54及び第1変位センサ56においてそれぞれ検出された検出結果が検出信号
としてカセッテ制御部46へと出力され、該カセッテ制御部46に設けられた位置算出部104(後述する)において放射線検出カセッテ24の方向や傾き等が算出される。
【0019】
すなわち、上述したように特性の異なる複数の第1水平センサ52、第1鉛直センサ54及び第1変位センサ56を複合的に組み合わせて検出を行うことにより、放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を高精度に検出することが可能となる。」

(ウ)
「【0039】
本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
・・・
【0043】
次に、手術室12内における撮影装置22及び放射線検出カセッテ24の位置関係に基づいて位置判定部124で前記撮影装置22が前記放射線検出カセッテ24に対して正対した鉛直上方(矢印C方向)に配置されているか否かが判断される。換言すれば、撮影装置22が患者14の患部に正対する所定位置に移動して配置されているか否かが判定される。
【0044】
そして、位置判定部124において撮影装置22が放射線検出カセッテ24に対して鉛直上方に位置して正対した状態にあると判定された場合に、第1検出部50を構成する第1水平センサ52、第1鉛直センサ54及び第1変位センサ56によって放射線検出カセッテ24の方向や傾き等が検出され、第2検出部88を構成する第2検出部88の第2水平センサ92、第2鉛直センサ94及び第2変位センサ96によって撮影装置22の方向や傾き等が検出される。この第1検出部50によって検出された検出結果が検出信号としてカセッテ制御部46の位置算出部104へと出力され、第2検出部88によって検出された検出結果が検出信号として線源制御部86の位置算出部126へと出力された後、それぞれの検出結果に基づいて撮影装置22及び放射線検出カセッテ24の方向や傾き等が算出される。その情報が送受信機48、84を通じてコンソール28へと発信され、前記コンソール28の送受信機112を通じて位置判定部124へと出力される。
【0045】
これにより、位置判定部124において撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが同一方向で傾斜することなく正対していることが確認される。
・・・
【0047】
一方、撮影装置22と放射線検出カセッテ24の位置情報に基づいて位置判定部124で前記撮影装置22が前記放射線検出カセッテ24に対して鉛直上方に位置せずに正対した状態にないと判定された場合には、撮影装置22からの放射線Xが、患者14の患部及び放射線検出カセッテ24の放射線検出器40に対して照射されることがなく、所望の放射線画像の撮影が行われないおそれがあるとして、放射線源82を含む撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが所望位置に配置されていないことを警告として、コンソール28、表示装置26等に対して行う。」

(エ) 図4



(オ) 図4より、第1検出部50が、放射線検出カセッテ24の端部に位置することが見てとれる

(カ)上記(ア)?(オ)の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「手術室12に設置された放射線画像撮影システム10であって、
撮影装置(撮影部)22と、患者14を透過した放射線Xを検出する放射線検出器(放射線変換パネル)40を内蔵した放射線検出カセッテ24と、放射線検出器40によって検出された放射線Xに基づく放射線画像を表示する表示装置26と、撮影装置22、放射線検出カセッテ24及び表示装置26を制御するコンソール28とを備え、
撮影装置22、放射線検出カセッテ24、表示装置26及びコンソール28間では、無線通信による信号の送受信が行われ、
放射線検出カセッテ24は、内部には信号をコンソール28との間で送受信する送受信機48と、前記放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を検出可能な第1検出部50と、アンテナ装置29から発信される電波を受信可能な第1受信部(位置検出手段)51とが収容され、
第1検出部50は、放射線検出カセッテ24の端部に位置し、手術室12内における放射線検出カセッテ24の水平方向の位置検出が可能な第1水平センサ52と、鉛直方向への位置検出が可能な第1鉛直センサ54と、前記放射線検出カセッテ24の変位量を検出可能な第1変位センサ56とを含み、
第1鉛直センサ54には、重力センサが用いられ、
コンソール28の位置判定部124において撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが同一方向で傾斜することなく正対していることが確認された状態にないと判定された場合には所望位置に配置されていないことを警告として、表示装置26等に対して行う、
放射線画像撮影システム10。」(以下,「引用発明1」という。)

(2)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「放射線検出カセッテ24」は、本願発明1の「可搬型X線検出器14」に相当する。
また、引用発明1の「放射線画像撮影システム10」は、「撮影装置(撮影部)22」と、「放射線検出カセッテ24」と、「表示装置26」と、「コンソール28」とを備えている。
そうすると、引用発明1の「コンソール28」は、「撮影装置22、放射線検出カセッテ24及び表示装置26を制御する」のであるから、「放射線画像撮影システム10」を制御しているといえるので、本願発明1の「ワークステーション34」に相当し、引用発明1の「放射線画像撮影システム10」は、「放射線検出カセッテ24」と「コンソール28」とを備えているので、本願発明1の「システム」に相当する。

(イ)
(イ-1) 引用発明1の「放射線検出器(放射線変換パネル)40」は、本願発明1の「複数の検出器素子を含む検出器パネル」に相当する。

(イ-2) また、引用発明1の「放射線検出カセッテ24」は、「内部には信号をコンソール28との間で送受信する送受信機48と、前記放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を検出可能な第1検出部50と、アンテナ装置29から発信される電波を受信可能な第1受信部(位置検出手段)51とが収容され、」「撮影装置22、放射線検出カセッテ24、表示装置26及びコンソール28間では、無線通信による信号の送受信が行われ」るのであるから、本願発明1の「プロセッサ28」に相当する構成を備えていることは自明といえる。

(イ-3) そうすると、引用発明1の「内部には信号をコンソール28との間で送受信する送受信機48と、前記放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を検出可能な第1検出部50と、アンテナ装置29から発信される電波を受信可能な第1受信部(位置検出手段)51とが収容され、
第1検出部50は、放射線検出カセッテ24の端部に位置し、
手術室12内における放射線検出カセッテ24の水平方向の位置検出が可能な第1水平センサ52と、鉛直方向への位置検出が可能な第1鉛直センサ54と、前記放射線検出カセッテ24の変位量を検出可能な第1変位センサ56とを含み、
第1鉛直センサ54には、重力センサが用いられ」る「放射線検出カセッテ24」と、
本願発明1の「複数の検出器素子を含む検出器パネルと、
当該可搬型X線検出器14の内部に設置されている3軸重力センサと、
プロセッサ28と
を備え」、「前記可搬型X線検出器14の中心点102の極く近傍に配置され」る「該可搬型X線検出器14」とは、
「複数の検出器素子を含む検出器パネルと、
当該可搬型X線検出器の内部に設置されている重力センサと、
プロセッサ28と
を備え」る「該可搬型X線検出器」の点で共通する。

(ウ) 引用発明1の「放射線検出カセッテ24」は、「内部には信号をコンソール28との間で送受信する送受信機48と、前記放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を検出可能な第1検出部50と、アンテナ装置29から発信される電波を受信可能な第1受信部(位置検出手段)51とが収容され」ており、「撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが同一方向で傾斜することなく正対していることが確認され正対した状態にないと判定された場合には所望位置に配置されていないことを警告とし、て表示装置26等に対して行う」ためのものであるから、上記(イ-2)に照らせば、引用発明1の「放射線検出カセッテ24」は、「コンソール28」へ「記放射線検出カセッテ24の方向や傾き等」を送るための構成を備えているといえる。
そうすると、引用発明1の「内部には信号をコンソール28との間で送受信する送受信機48と、前記放射線検出カセッテ24の方向や傾き等を検出可能な第1検出部50と、アンテナ装置29から発信される電波を受信可能な第1受信部(位置検出手段)51とが収容され」ており、「撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが同一方向で傾斜することなく正対していることが確認され正対した状態にないと判定された場合には所望位置に配置されていないことを警告として、コンソール28、表示装置26等に対して行う」「放射線検出カセッテ24」と、
本願発明1の「前記3軸重力センサを使用して決定された前記可搬型X線検出器14の物理的配向に対応する配向情報を前記ワークステーション34へ送信するようにプログラムされて」いる「前記プロセッサ28」とは、
「前記重力センサを使用して決定された前記可搬型X線検出器14の物理的配向に対応する配向情報を前記ワークステーションへ送信するようにプログラムされて」いる「前記プロセッサ」である点で共通する。

(エ)引用発明1の「撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが同一方向で傾斜することなく正対していることが確認された状態にないと判定された場合には所望位置に配置されていないことを警告として、コンソール28、表示装置26等に対して行う」ことは、コンソール28を用いて「撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが同一方向で傾斜することなく正対」するように、操作する人に指示しているといえる。
そうすると、引用発明1の「コンソール28の位置判定部124において撮影装置22と放射線検出カセッテ24とが同一方向で傾斜することなく正対していることが確認された状態にないと判定された場合には所望位置に配置されていないことを警告として、表示装置26等に対して行う」ことと、
本願発明1の「前記ワークステーション34は、X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている」こととは、
「前記ワークステーションは、X線源に前記可搬型X線検出器が整列するように前記可搬型X線検出器14を動かすように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている」点で共通する。

そうすると、両者は、
<一致点>
「ワークステーションと、可搬型X線検出器とを備えるシステムであって、
該可搬型X線検出器が、
複数の検出器素子を含む検出器パネルと、
当該可搬型X線検出器の内部に設置されている重力センサと、
プロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記重力センサを使用して決定された前記可搬型X線検出器の物理的配向に対応する配向情報を前記ワークステーションへ送信するようにプログラムされており、
前記ワークステーション34は、X線源に前記可搬型X線検出器が整列するように前記可搬型X線検出器14を動かすように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている、
システム。」
である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

<相違点1>
可搬型X線検出器に配置された重力センサの種類について、
本願発明1では、「3軸重力センサ」であるのに対して、
引用発明1では、構成を特定していない点

<相違点2>
可搬型X線検出器に配置された重力センサの配置位置について、
本願発明1では、「可搬型X線検出器14の中心点102の極く近傍」であるのに対して、
引用発明1では、放射線検出カセッテ24の端部に位置している点。

<相違点3>
X線源に前記可搬型X線検出器が整列するように前記可搬型X線検出器14を動かすように操作者に指示する態様について、
本願発明1では、「X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように」指示するのに対して、
引用発明1では、所望位置に配置されていないことを警告として、表示装置26等に対して行う点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点2について
相違点2について検討するに、引用文献2?3のいずれにも、「可搬型X線検出器の中心点の極く近傍に」「重力センサ」を配置する構成は記載されてなく、また、そのような構成を示唆する記載もない。
また、そのような構成が周知であるともいえない。
したがって、引用発明1において、本願発明1の上記相違点2に係る構成は、引用文献2?3に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、相違点1、3を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明1及び引用文献2?3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2-4は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2?3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明5は、本願発明1を、イメージング・システムとして限定して構成した発明であるから、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2?3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに、本願発明6は、本願発明5をさらに限定したものであるので、本願発明5と同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2?3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1) 請求項1には、「前記ワークステーション34は、前記配向情報に基づいて前記可搬型X線検出器14に対する被検体の表示画像を再配向して表示することにより、X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている」と記載されている。
以下、上記記載の「前記ワークステーション34は、前記配向情報に基づいて前記可搬型X線検出器14に対する被検体の表示画像を再配向して表示すること」を「再配向して表示する前半部」と呼び、上記記載の「X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている」ことを「操作者に指示する命令を発生する後半部」とも呼ぶ

(2) 本願明細書の発明の詳細な説明には「再配向して表示する前半部」と「操作者に指示する命令を発生する後半部」とは、異なる実施例として記載されており、同じ実施例としては記載されていないし示唆もされていない。

(3) そうすると、請求項1に記載の「前記ワークステーション34は、前記配向情報に基づいて前記可搬型X線検出器14に対する被検体の表示画像を再配向して表示することにより、X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている」ことは発明の詳細な説明には記載されていないといえる。

したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?5も同様である。
請求項1と同じ構成を備える請求項6、請求項6を直接または間接的に引用する請求項7、8も同様である。」

2 当審拒絶理由についての判断
平成28年12月22日付け手続補正書によって、本願の請求項1は「第2 本願発明」に記載したとおり補正された。
この補正により、本願発明1から、「前記配向情報に基づいて前記可搬型X線検出器14に対する被検体の表示画像を再配向して表示することにより」との構成が削除され、「前記ワークステーション34は、X線源に前記可搬型X線検出器14が整列する少なくとも1つの方向に前記可搬型X線検出器14を回転するように操作者に指示する命令を発生するようにプログラムされている」構成を備えるものとなり、発明の詳細な説明の実施例に記載された発明となった。
また、本願発明2?4も同様である。
さらに、本願発明5、6も同様である。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-24 
出願番号 特願2011-123868(P2011-123868)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 九鬼 一慶  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 田中 洋介
信田 昌男
発明の名称 可搬型検出装置用の位置感知装置  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  

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