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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B62M
審判 一部申し立て 2項進歩性  B62M
管理番号 1325868
異議申立番号 異議2016-700948  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-04 
確定日 2017-02-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5898778号発明「電動車両の組立方法及び組立管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5898778号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔8-13〕について訂正することを認める。 特許第5898778号の請求項1、5、8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5898778号の請求項1、5、8に係る特許についての出願は、2013年7月3日(優先権主張 2012年10月3日、日本国)を国際出願日として特許出願され、平成28年3月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 岡林茂により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年12月8日付けで取消理由を通知し、平成29年1月13日に意見書の提出及び訂正の請求があったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成29年1月13日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。
なお、下線部は訂正箇所を示す。
〔訂正事項1〕
特許請求の範囲の請求項8に、「または前記車体検査場所と比べて前記車体検査場所に地理的に近い場所である」とあるのを、「または前記車体検査場所と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項8の「または前記車体検査場所と比べて前記車体検査場所に地理的に近い場所である」との記載は、「搭載場所」を特定する記載であるが、同じ場所を比較しているため意味をなしておらず、搭載場所を特定できない。
そうすると、訂正前の請求項8の上記記載を、「または前記車体検査場所と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」とする上記訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。

本件特許の願書に添付した明細書の段落【0073】には、
「搭載場所110は、電動二輪車1の顧客がその提供を受ける場所(製造業者から見た場合の仕向地)に各検査場所112,162と比べて近い、又は当該場所そのものである。・・・」
との記載があり、搭載場所が、各検査場所と比べて電動二輪車の提供を受ける場所に近いことが示されているので、上記訂正事項1は、明細書に記載された事項の範囲内においてしたものといえ、新規事項の追加に該当しない。

上記訂正事項1は、訂正前の請求項8における「搭載場所」を、明細書の記載に基づき特定するものであるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

そして、本件訂正請求は、訂正後の請求項8?13について訂正することを求めたものであり、訂正前の請求項9?13は請求項8を直接又は間接的に引用するものであるので、訂正事項1により訂正される訂正後の請求項8?13は、一群の請求項である。

3.小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項8?13について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件特許の請求項1及び5に係る発明(以下、「本件発明1及び5」という。)は、その願書に添付された特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、また、本件訂正請求により訂正された請求項8に係る発明(以下、「本件発明8」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、それぞれ次のとおりである。

「【請求項1】
フレームと、車輪と、前記車輪に伝達される走行駆動力を発生する電気モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立方法であって、
車体組立場所で車体を組み立てる車体組立段階と、
前記車体の電気モータに車体検査場所に設置されている電源装置を接続し、前記電源装置からの電力を供給して前記電気モータから前記車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査を前記車体検査場所で実施する車体検査段階と、
前記電気モータから前記電源装置を取り外し、前記車体検査を合格した車体を、前記バッテリを搭載していない状態で、前記車体検査場所から搭載場所へ搬送する車体搬送段階と、
搬送された前記車体に前記バッテリを前記搭載場所で搭載するバッテリ搭載段階と、を有し、
前記車体組立場所および前記車体検査場所が前記車体を生産する車体生産工場であり、前記搭載場所は、前記車体生産工場とは地理的に異なる場所であって、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である、電動車両の組立方法。
【請求項5】
フレームと、車輪と、前記車輪に伝達される走行駆動力を発生する電気モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立管理方法であって、
車体組立場所で車体を組み立てる車体組立段階と、
前記車体の電気モータに車体検査場所に設置されている電源装置を接続し、前記電源装置から電力を供給して前記電気モータから前記車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査を前記車体検査場所で実施する車体検査段階と、
前記電気モータから前記電源装置を取り外し、前記車体検査を合格した車体を、前記バッテリを搭載していない状態で、前記車体検査場所から搬送する車体搬送段階と、を有し、
前記車体組立場所および前記車体検査場所が前記車体を生産する車体生産工場であり、前記車体の搬送先が、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である、電動車両の組立方法。
【請求項8】
フレームと、車輪と、前記車輪に伝達するための走行駆動力を発生する電動モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立管理方法であって、
車体検査場所で前記バッテリを搭載していない状態で実施される車体検査を合格した車体を準備する車体準備段階と、
前記バッテリを準備するバッテリ準備段階と、
前記バッテリが前記車体に搭載されるまでの待機期間のうち少なくとも一部の期間において、当該バッテリ及び当該車体を保管する保管段階と、
前記保管段階の後、バッテリを車体に搭載する搭載場所へ前記バッテリ及び前記車体を移動させる移送段階と、を含み、
前記保管段階において、前記車体を保管する車体保管区域から隔絶されたバッテリ保管部屋内で前記バッテリを保管し、前記バッテリ保管部屋の温度を所定範囲内に調整し、
前記搭載場所が、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体検査場所と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である、電動車両の組立管理方法。」

2.当審の取消理由
(1)概要
訂正前の請求項8に係る特許に対して平成28年12月8日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
[取消理由]
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の請求項8の「または前記車体検査場所と比べて前記車体検査場所に地理的に近い場所である」との記載が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)判断
本件訂正請求により、訂正前の請求項8の「または前記車体検査場所と比べて前記車体検査場所に地理的に近い場所である」は、「または前記車体検査場所と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」に訂正され、明確となった。
よって、取消理由は解消した。

3.特許異議申立理由
(1)概要
特許異議申立人による特許異議申立理由は、要旨次のとおりである。
[申立理由1]
本件発明1及び5は、下記の甲第1号証に記載の発明及び下記の甲第2号証?甲第7号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明8は、下記の甲第1号証に記載の発明及び下記の甲第2号証?甲第9号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

甲第1号証.特開2008-104257号公報
甲第2号証.特開2003-267278号公報
甲第3号証.特開2006-205894号公報
甲第4号証.SofBank831SH User Guide 取扱説明書、2009年11月、第5版、表紙、第vii頁、第ix頁、第x頁、第15-4頁、奥付、写し
甲第5号証.Panasonic 取扱説明書 品番HDC-TM35、表紙、第6頁、第11頁、奥付、写し
甲第6号証.特開平6-43592号公報
甲第7号証.特開2004-173467号公報
甲第8号証.特開2010-239705号公報
甲第9号証.特開2009-193832号公報
(以下、「甲1」ないし「甲9」という。)

[申立理由2]
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の請求項8の「または前記車体検査場所と比べて前記車体検査場所に地理的に近い場所である」との記載が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)甲1?9の記載
ア 甲1
甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下、同様である。
(ア-1)
「【0001】
本発明は,ハイブリッド(HV)車両に搭載される駆動ユニットの性能を検査する検査装置に関する。さらに詳細には,駆動ユニットの性能検査を低コストかつ省スペースで実現する検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,低公害等の観点から,エンジンとモータとを動力源とし,それらを統合制御しながら走行するハイブリッド車が注目されている。このハイブリッド車には,モータやエンジンから得られる動力をトランスミッションを介して駆動軸に出力するハイブリッド駆動ユニット(HVトランスアクスル)が搭載されている(ハイブリッドシステムの公知の文献としては,例えば特許文献1)。
【0003】
駆動ユニットでは,噛み合わされたギア間に作用する力が変動することで振動し,その振動がギアやシャフト等を通じて伝達されることによってギアノイズが生じる。一般的な車両に搭載されるオートマチックトランスミッション(A/T)ユニットのノイズ検査では,通常,入力軸(すなわち,エンジンの出力軸)を回転させることでA/Tユニットを稼動させ,ケース表面に設置されたセンサによって振動状態を検出している。あるいは,マイクを被検体ユニットの近くに配置し,騒音状態を検出している。
【0004】
しかし,HVトランスアクスルは,エンジンによって生じる動力を減速ギアを介して車軸に伝達する系と,モータによって生じる動力を減速ギアを介して車軸に伝達する系との2つの動力伝達系を有する。そのため,HVトランスアクスルの特性を検査する際,HVトランスアクスルの入力軸(すなわち,エンジンの出力軸)を回転させるのみの検査では,ハイブリッド車特有のモータ特性に関する検査ができない。」
(ア-2)
「【0005】
そのため,HVトランスアクスルの検査装置では,HVトランスアクスル内のモータを回転させるための電力供給源が必要となる。そこで,図4に示すように,ハイブリッド車に実際に搭載されるものと同じ仕様のバッテリ50を備え,被検体のHVトランスアクスル1内のモータMG1,MG2がバッテリ50から電力供給をインバータ2を介して受けるようにしている。そして,モータMG1,MG2を回転させることでモータ特性の検査を可能にしている。例えば,被検体であるHVトランスアクスル1のケース表面にセンサ4を設置して振動状態を検出することにより,あるいはHVトランスアクスル1の近くにマイク40を配置して騒音状態を検出することにより,検査制御部80がHVトランスアクスル1のギアノイズやモータノイズの良否を判断している。
・・・
【0007】
そこで,近年,HVトランスアクスルの検査装置では,図5に示すように,工場電源5から交流電力(3相交流電力)を取得し,コンバータ31によって直流電力に変換する電源制御部31を備えている。このようなHVトランスアクスルの検査装置では,工場電源5を利用することで安定した電力供給を実現している。」
(ア-3)
【図5】には、HVトランスアクスル1の出力軸には負荷モータ71,72が接続されていることが記載されている。

上記(ア-1)の段落【0004】には「HVトランスアクスルの特性を検査する際」と記載され、上記(ア-3)のとおり、【図5】にはHVトランスアクスル1の出力軸に負荷モータ71,72が接続されることが記載されていることからみて、【図5】に記載のものは、HVトランスアクスル1からなるハイブリッド車両用駆動ユニットを車体に組み付ける前に(車体に組み付けない状態で)検査するものと認められる。
上記記載事項及び認定事項からみて、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「HVトランスアクスル1内のモータMG1,MG2が、工場電源5から交流電力(3相交流電力)を取得し、コンバータ31によって直流電力に変換する電源制御部31から電力供給をインバータ2を介して受けるようにし、モータMG1,MG2を回転させることでモータ特性の検査を行う、ハイブリッド車両用駆動ユニットの検査方法。」

イ 甲2
甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(イー1)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両を製造する際に用いられる車両の組立ラインに関するものである。」
(イ-2)
「【0034】図3は、本発明の第1の実施形態の組立ラインの構成図(上段)及びレイアウト図(下段)である。・・・
・・・
【0036】本実施の形態においては、この並行組付ラインにおいて、インテリアゾーンZ3と下廻りゾーンZ4の作業が同時並行的に行われる。・・・
【0037】また、このインテリアゾーンZ3の作業と並行して、下部フロア6では下廻りゾーンZ4において、燃料タンク、リアサスペンションユニット、エンジン、フロントサスペンションアッシー、サイレンサ、ブレーキホースパイプ、タイヤ等が車体底部より組付けられる。
・・・
【0041】次に、車体は、複合保証ゾーンZ6に搬送され、車体上部からブレーキオイル、ウオッシャ液、エンジンオイル、ガソリン等を注入され、バッテリ等が組付けられ、車両が完成する。ここまでが組立ラインであり、これ以降の工程は、完成車検査ラインとなる。完成車検査ラインにおいては、完成車が満たすべき性能を満足しているかどうかが検査される。」

ウ 甲3
甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ウ-1)
「【0001】
本発明は、センサ装置からの検出信号に応じて電気アクチュエータを駆動制御する車両の電気制御装置に係り、特に電気アクチュエータを駆動するための駆動回路への電力供給に関する。」
(ウ-2)
「【0017】
次に、上記のような電動パワーステアリング装置を車両に搭載する車両の製造工程において、回転角センサ装置17およびトルクセンサ装置20のゲイン、零点補正などの調整作業について説明する。なお、この調整の時点では、図1の高電圧バッテリ装置44のみが車両に搭載されていない。この状態で、イグニッションスイッチ42を投入すると、低電圧バッテリ装置43からの低電圧が、イグニッションスイッチ42および低電圧電源ラインL1を介して制御系電源回路33に供給される。したがって、制御系電源回路33は制御回路31に低電圧を供給し始め、制御回路31は前述のような作動を開始する。
【0018】
一方、低電圧電源ラインL1上の低電圧はダイオード34を介して高電圧電源ラインL2に供給され、この低電圧が高電圧電源ラインL2を介してモータ駆動回路32に供給される。モータ駆動回路32および電動モータ15は、前記高電圧の供給時ほどではないが、この低電圧の供給によっても作動可能に構成されている。したがって、この状態で、作業者が操舵ハンドルを回動操作すれば、電動モータ15が作動するとともに、この電動モータ15による操舵アシストによって操舵ハンドル11すなわちステアリングシャフト12も回動する。
【0019】
したがって、この作業状態では、ステアリングシャフト12を自由に回動させることができるので、ステアリングシャフト12内に介装されている図示しない弾性部材に残留応力が存在しない状態で、回転角センサ装置17およびトルクセンサ装置20のゲイン、零点補正などの調整作業を行える。このように、上記のように構成した電動パワーステアリング装置によれば、車両の製造工程において、高電圧バッテリ装置44が車両に搭載されていない状態であっても、電動モータ15を低電圧によって駆動しながら、回転角センサ装置17およびトルクセンサ装置20の調整作業を行うことができるようになるので、車両の製造工程における制約を排除できる。さらに、高電圧バッテリ装置44または降圧回路45のフェイル時にも、一時的に電動モータ15を作動を確保できるので、緊急避難的なアシスト力を確保できるようにもなる。」

エ 甲4
甲4には、次の事項が記載されている。
(エ-1)
「付属品 ■電池パック(SHBCC1)」(vii頁右欄下段)
(エ-2)
「本機に使用する電池パック・充電器(オプション品)・・・は、ソフトバンクが指定したものを使用してください。」(ix頁左欄上段)
(エ-3)
15-4頁の図面から、電池パックを取り付け、取り外すことを看取しうる。
(エ-4)
表紙、vii頁の「目次/付属品」の内容、15-4頁の図面からみて、電池パックは携帯電話用と認められる。

オ 甲5
甲5には、次の事項が記載されている。
(オ-1)
「取扱説明書 デジタルハイビジョンビデオカメラ」(表紙)
(オ-2)
「付属品 バッテリーパック VW-VBK180」(6頁)
(オ-3)
11頁には「1 電源の準備」として、バッテリーを取り付け、取り外すことが記載されている。

カ 甲6
甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。
(カ-1)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ストロボ装置を備えたレンズ付きフイルムユニットに関し、詳しくはメインコンデンサへの充電を使用時まで停止させるようにしたレンズ付きフイルムユニットに関するものである。」
(カ-2)
「【0014】しかし、まだ包装袋12から出されていないレンズ付きフイルムユニット2は通電されないように、+接片22と電池20の端子20bの間に絶縁テープ15の先端が挟み込まれて通電を遮断している。また、この絶縁テープ15の他の一端は外装体4に設けられた挿通口9から外装体4の外部に挿出されて図1に示すように包装袋12の閉じ部12aに共に接着されている。
【0015】レンズ付きフイルムユニット2は包装袋12で密封包装した状態で工場から出荷されるが、この出荷時には絶縁テープ15の一端が電源電池20と+接片との間に挟まれているためストロボ装置への通電は行われていない。したがって、この状態では電源電池20は自然放電により消耗するだけであるから、例えば製造後2年間は使用可能である。そして、製造時点からその2年間の使用可能期限が前記第一及び第二表示部7,8の一部に表示されている。
【0016】使用時には、ユーザーは包装袋12をノッチ13から破いてレンズ付きフイルムユニット2を取り出す。このとき、絶縁テープ15の先端は包装袋12の閉じ部12aに接着されているため、レンズ付きフイルムユニット2の取り出しによって、絶縁テープ15の他端が電池20の端子20bと+接片22との間から引き抜かれ、この時点から電池20によりストロボ装置に通電が開始される。」

キ 甲7
甲7には、図面とともに次の事項が記載されている。
(キ-1)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力をエネルギー源とするモータ駆動車両における電力供給方法に関する。」
(キ-2)
「【0029】
モータ駆動車両利用者は、モータ駆動車両に搭載されている充電済み蓄電池の残数が少なくなった場合(手順101)に、最寄りの蓄電池の交換施設へモータ駆動車両にて移動する(手順102)。蓄電池の交換施設では使用済み蓄電池の数が確認(手順103)されて使用済みの蓄電池のみが車両本体から取外され、受け入れ可能な蓄電池(蓄電池管理業者が所有・管理する蓄電池)であるかどうかが確認される(手順104)。受け入れ可能な蓄電池であれば、充電済みの蓄電池が充電済み蓄電池収納場所から取り出され、車両本体に搭載される(手順105)。モータ駆動車両利用者は充電済み蓄電池の交換代金を支払い(手順106)、電力供給を終える。」

ク 甲8
甲8には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ク-1)
「【0026】
バッテリパック30は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されるが、工場出荷後、輸送にかかる期間に加え、所定期間だけ倉庫等に保管された後に電動車両に搭載されるため、輸送や保管中に自己放電によりSOCが低下する。どのような温度条件下で保管されるかは任意である。補充電器10は、自己放電したバッテリバック30を所望のSOCまで補充電するために用いられる。」
(ク-2)
「【0061】
すなわち、充電終了条件保持部18に記憶される、充電開始前のOCVと所望のSOC(SOC=60%)に到達するまでの端子電圧の変化量ΔVとの関係は、以下の2つの方法のいずれかで作成することができる。
(1)複数の二次電池に対し、種々の保管温度で保管した後で、種々の温度条件で補充電する。
(2)複数の二次電池に対し、種々の保管温度で保管した後で、一定の温度条件で補充電する。
【0062】
保管温度は、工場出荷後の保管場所における温度管理の有無や、夏期、冬季などの季節要因で変動し得る。また、補充電時において、補充電すべき二次電池がどのような保管温度で保管されていたかを事前に知ることは困難である。一方、補充電時の温度は、ある程度ユーザがコントロールできる可能性がある。したがって、補充電時の温度をコントロールできる場合には(2)を用い、そうでない場合には(1)を用いることが好適である。(1)及び(2)の場合の関係をともに充電終了条件保持部18に記憶しておき、ユーザが補充電時の温度コントロールの有無に応じて適宜選択することも可能であろう。」

ケ 甲9
甲9には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ケ-1)
「0001】
本発明は、車両に設置され車両の駆動に使用するバッテリ冷却システムの技術分野に属する。」
(ケ-2)
「【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、駐車中のバッテリの温度上昇を抑制することができ、電池を長寿命化することができるバッテリ冷却システムを提供することにある。」
(ケ-3)
「【0017】
・・・
実施例1では、バッテリ3の下方に、ケース2と一体に蓄冷部6を設け、走行時にバッテリ3と同様に冷却ファン4により冷却している。そのため、バッテリ3が駐車中に温度上昇する熱が、蓄冷部6に吸熱されることになる。よって、駐車時のバッテリ3の温度上昇は、バッテリが劣化し、電池寿命を短くするほどにならないように抑制される。これにより電池を長寿命化することができる。
【0018】
・・・
言わば、蓄冷部6により、バッテリ3は温度変化にダンパを設けたようになる。すると、寿命に影響するようなバッテリの高温化を生じることが少なくなり、電池を長寿命化することができる。」

(3)当審の判断
[申立理由2]は、上記2.(1)で述べた、当審の[取消理由]と同じであるので、上記2.(2)で述べたとおり解消している。
以下、[申立理由1]について検討する。

ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「HVトランスアクスル1内のモータMG1,MG2」は、本件発明1の「車体の電気モータ」と、「電気モータ」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「工場」は、HVトランスアクスル1の検査を行う場所であるので、検査場所といえ、本件発明1の「車体検査場所」と、「検査場所」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「工場電源5」は、本件発明1の「車体検査場所に設置されている電源装置」と、「検査場所に設置されている電源装置」である限りにおいて一致する。
甲1発明のHVトランスアクスル1内のモータMG1,MG2が「工場電源5から交流電力(3相交流電力)を取得し、コンバータ31によって直流電力に変換する電源制御部31から電力供給をインバータ2を介して受けるように」することは、本件発明1の電気モータに「電源装置を接続し、電源装置からの電力を供給」することに相当する。
甲1発明の工場電源5からの電力で「モータMG1,MG2を回転させることでモータ特性の検査を行う」ことは、モータMG1,MG2の回転により発生する出力に基づいた検査を行うことであるので、本件発明1の「電気モータから車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査を車体検査場所で実施する」ことと、「電気モータからの出力に基づいた検査を検査場所で実施する」限りにおいて一致する。
甲1発明の「ハイブリッド車両用駆動ユニットの検査方法」は、本件発明1の「車体検査段階」と、「検査段階」である限りにおいて一致する。
また、甲1発明の「ハイブリッド車両用駆動ユニットの検査方法」は、ハイブリッド車両は電動車両の一種といえ、その製造に関わる一工程といえるので、本件発明1の「車体検査段階」を有した「電動車両の組立方法」と、「電動車両の製造に関わる方法」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「電気モータに検査場所に設置されている電源装置を接続し、前記電源装置からの電力を供給して前記電気モータからの出力に基づいた検査を検査場所で実施する検査段階を有した、
電動車両の製造に関わる方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
本件発明1は、
「フレームと、車輪と、前記車輪に伝達される走行駆動力を発生する電気モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立方法」であって、
「車体組立場所で車体を組み立てる車体組立段階」、
「前記車体の電気モータ」に電力を供給して「前記電気モータから前記車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査」を実施する「車体検査段階」、
「前記電気モータから前記電源装置を取り外し、前記車体検査を合格した車体を、前記バッテリを搭載していない状態で、前記車体検査場所から搭載場所へ搬送する車体搬送段階」、
「搬送された前記車体に前記バッテリを前記搭載場所で搭載するバッテリ搭載段階」
を有し、
「前記車体組立場所および前記車体検査場所が前記車体を生産する車体生産工場であり、前記搭載場所は、前記車体生産工場とは地理的に異なる場所であって、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」
と特定されているのに対して、
甲1発明は、ハイブリッド車両用駆動ユニットを検査する方法である点。

上記相違点1について検討する。
〔相違点1について〕
甲2には、「車両の組立ライン」に関して、下廻りゾーンZ4においてエンジンが車体に組み付けられ、次に車体が複合保証ゾーンZ6に搬送されバッテリが組み付けられ、ここまでが組立ラインであり、完成車検査ラインで検査が行われることが記載されているが(上記(2)イ参照)、車体にエンジンが組み付けられる下廻りゾーンZ4とバッテリが組み付けられる複合保証ゾーンZ6とは、いずれも組立てラインにあり、生産工場内にあるといえ、また、下廻りゾーンZ4から複合保証ゾーンZ6へ搬送される車体は、完成車検査を行う前のものである。そうすると甲2は、相違点1に係る本件発明1の「車体検査を合格した車体を」、「車体生産工場とは地理的に異なる場所であって、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」「搭載場所へ搬送する車体搬送段階」を開示または示唆するものではなく、「搬送された前記車体に前記バッテリを前記搭載場所で搭載するバッテリ搭載段階」を開示または示唆するものでもない。
甲3には、「電気アクチュエータを駆動するための駆動回路への電力供給」に関して、高電圧バッテリ装置44のみが車両に搭載されていない状態で、低電圧電源ラインL1から低電圧をモータ駆動回路32に供給することが記載されているが(上記(2)ウ参照)、相違点1に係る本件発明1の「車体搬送段階」、「バッテリ搭載段階」に関する事項は記載も示唆もされていない。
甲4?甲6には、製品(携帯電話、デジタルハイビジョンビデオカメラ、レンズ付きフイルムユニット)の使用開始時に、バッテリを製品に取り付けることが記載されている(上記(2)エ?カ参照)。
甲7には、「モータ駆動車両における電力供給方法」に関して、モータ駆動車両に搭載されている充電済み蓄電池の残数が少なくなった場合、使用済みの蓄電池のみが車両本体から取外され、充電済みの蓄電池が車両本体に搭載されることが記載されているが(上記(2)キ参照)、相違点1に係る本件発明1の「車体搬送段階」、「バッテリ搭載段階」に関する事項は記載も示唆もされていない。

甲1発明は、上記(2)アで述べたとおり、ハイブリッド車両用駆動ユニットを車体に組み付ける前に、トランスアクスル1自体の特性を検査する検査方法であり、これを車体に組み付けた状態で検査する検査方法とする合理的な動機付けはない。
仮に、甲1発明に、甲2に記載の事項を適用し、甲1発明のハイブリッド車両用駆動ユニットの組み付け及び検査を、甲2に記載の車両の組立てラインにおけるエンジン等の駆動機構の組み付けに付加することができたとしても、相違点1に係る本件発明1の「車体搬送段階」、「バッテリ搭載段階」に関する構成のようにすることはできない。
また、甲1発明に、甲2に記載の事項を適用したものに、さらに甲4?甲6に記載の製品の使用開始時にバッテリを取り付けるとの事項を適用することが、当業者にとって容易想到とは言い難く、加えて、甲1や甲2に記載されているような車両の生産形態が、甲4?甲6に記載された製品の生産形態のように、バッテリの性能が低下するほどの期間、在庫となるように生産が行われるものではないことに鑑みれば、甲4?甲6に記載の事項を適用する動機付けもないといえる。
さらに、甲3に記載の低電圧電源ラインL1から低電圧をモータ駆動回路32に供給するとの事項、及び、甲7に記載の使用済み蓄電池を充電済み蓄電池に交換するとの事項から、相違点1に係る本件発明1の「車体搬送段階」、「バッテリ搭載段階」に関する構成が容易想到ともいえない。

したがって、甲1発明を、相違点1に係る本件発明1のように構成することは、甲2?甲7に記載の事項から当業者が容易に想到することができるとはいえない。

イ 本件発明5について
本件発明5と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「HVトランスアクスル1内のモータMG1,MG2」は、本件発明5の「車体の電気モータ」と、「電気モータ」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「工場」は、HVトランスアクスル1の検査を行う場所であるので、検査場所といえ、本件発明5の「車体検査場所」と、「検査場所」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「工場電源5」は、本件発明5の「車体検査場所に設置されている電源装置」と、「検査場所に設置されている電源装置」である限りにおいて一致する。
甲1発明のHVトランスアクスル1内のモータMG1,MG2が「工場電源5から交流電力(3相交流電力)を取得し、コンバータ31によって直流電力に変換する電源制御部31から電力供給をインバータ2を介して受けるように」することは、本件発明5の電気モータに「電源装置を接続し、電源装置から電力を供給」することに相当する。
甲1発明の工場電源5からの電力で「モータMG1,MG2を回転させることでモータ特性の検査を行う」ことは、モータMG1,MG2の回転により発生する出力に基づいた検査を行うことであるので、本件発明5の「電気モータから車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査を車体検査場所で実施する」ことと、「電気モータからの出力に基づいた検査を検査場所で実施する」限りにおいて一致する。
甲1発明の「ハイブリッド車両用駆動ユニットの検査方法」は、本件発明5の「車体検査段階」と、「検査段階」である限りにおいて一致する。
また、甲1発明の「ハイブリッド車両用駆動ユニットの検査方法」は、ハイブリッド車両は電動車両の一種といえ、その製造に関わる一工程といえるので、本件発明5の「車体検査段階」を有した「電動車両の組立方法」と、「電動車両の製造に関わる方法」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明5と甲1発明とは、
「電気モータに検査場所に設置されている電源装置を接続し、前記電源装置から電力を供給して前記電気モータからの出力に基づいた検査を検査場所で実施する検査段階を有した、
電動車両の製造に関わる方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点2〕
本件発明5は、
「フレームと、車輪と、前記車輪に伝達される走行駆動力を発生する電気モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立管理方法」であって、
「車体組立場所で車体を組み立てる車体組立段階」、
「前記車体の電気モータ」に電力を供給して「前記電気モータから前記車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査」を実施する「車体検査段階」、
「前記電気モータから前記電源装置を取り外し、前記車体検査を合格した車体を、前記バッテリを搭載していない状態で、前記車体検査場所から搬送する車体搬送段階」、
を有し、
「前記車体組立場所および前記車体検査場所が前記車体を生産する車体生産工場であり、前記車体の搬送先が、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」
と特定されているのに対して、
甲1発明は、ハイブリッド車両用駆動ユニットを検査する方法である点。

上記相違点2について検討する。
〔相違点2について〕
甲2?甲7に記載の事項は、上記アの〔相違点1について〕で述べたとおりである。

そうすると、上記アの〔相違点1について〕で述べたと同様に、甲1発明を、ハイブリッド車両用駆動ユニットを車体に組み付けた状態で検査する検査方法とする合理的な動機付けはなく、また、甲1発明に甲2?甲7に記載の事項を適用しても、相違点2に係る本件発明5の、「利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」「車体の搬送先」へ「車体検査を合格した車体を、バッテリを搭載していない状態で、車体検査場所から搬送する車体搬送段階」に関する構成のようにすることはできない。

したがって、甲1発明を、相違点2に係る本件発明5のように構成することは、甲2?甲7に記載の事項から当業者が容易に想到することができるとはいえない。

ウ 本件発明8について
本件発明8と甲1発明とを対比する。
(ア)
本件発明8の「車体検査場所で前記バッテリを搭載していない状態で実施される車体検査を合格した車体を準備する車体準備段階」について、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0055】?【0057】には次のとおり記載されている。
「【0055】
図4は、図1に示す電動二輪車1(特に新車)の組立方法及び組立管理方法を示すフローチャートである。図4に示すように、完成車両としての電動二輪車1を組み立て上げるには、まず、車体2が車体組立場所111で組み立てられる(車体組立段階)。組み立てられた車体2は、その車体2にバッテリユニット3が搭載されないまま移動し、車体検査を車体検査場所112で実施する(車体検査段階)。車体検査では、車体検査場所112に設置されている電源装置101が電気モータ12に接続される。具体的には、電源装置101に接続された検査時給電コネクタ(図示せず)が、車体側給電コネクタ32(図3参照)に機械的に電気的に接続され、それにより電源装置101によって電気モータ12を駆動可能にする。なお、低圧バッテリ24(図3参照)が車体検査前に車体2に搭載されているので、車両制御装置26(図3参照)を駆動することも可能であり、そのためインバータ25(図3参照)にスイッチング動作を行わせることも可能になるし、灯火器系の動作を行わせることも可能になる。
【0056】
車体検査は、運転者の操作系、駆動系及び灯火器系など、走行に関係する構成の全件検査である。このような車体検査には、例えば、電気モータ12からの車輪13,14への動力伝達状態を確認することが含まれる。典型的には、車輪13,14を試験台102に乗せて駆動輪14を回転させ、車体2を対地移動させることなく試験台102上で疑似的に走行させることにより動力伝達状態を確認する。車体検査が終了すると、電源装置101が車体2から取り外される。
【0057】
車体検査を合格した車体2には車体製造番号が付与される。そしてこの車体2は、出荷物としてバッテリユニット3との組付けのために準備され、車体検査場所112から搭載場所110へと手押し又は機械搬送されていく(車体準備段階、車体搬送段階)。本実施形態では、作業者1人でも操舵用ハンドルを把持して手押しで車体2を移動させることができ、しかも車体2の走行方向を変えることができる。このように、本実施形態に係る組立方法及び組立管理方法は、操舵用ハンドルを把持した状態で手押し可能な車体2を備える車両に適用されると有益である。」
上記記載によれば、本件発明8の「車体検査」は、バッテリユニット以外が取り付けられた車体に対して行う検査であり、車体の電気モータの動力伝達状態の確認を行うのみならず、「運転者の操作系、駆動系及び灯火器系など、走行に関係する構成の全件検査」を行うものである。
甲1発明は、ハイブリッド車両用駆動ユニットを検査するものであるものの、検査対象のハイブリッド車両用駆動ユニットは車体に組み付ける前のものであり、車体の検査を何ら伴うものではなく、検査合格した車体を準備するとまではいえない。
そうすると、甲1発明の「ハイブリッド車両用駆動ユニットの検査方法」は、本件発明8の「車体検査」及びその「車体検査を合格した車体を準備する車体準備段階」と一致するところはない。
そして、ほかに本件発明8と甲1発明との一致点を見出すことはできない。
そうしてみると、本件発明8は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たということはできない。

(イ)
また、少なくとも、本件発明8は、
「フレームと、車輪と、前記車輪に伝達するための走行駆動力を発生する電動モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立管理方法」であって、
「前記バッテリを準備するバッテリ準備段階」、
「前記バッテリが前記車体に搭載されるまでの待機期間のうち少なくとも一部の期間において、当該バッテリ及び当該車体を保管する保管段階」、
「前記保管段階の後、バッテリを車体に搭載する搭載場所へ前記バッテリ及び前記車体を移動させる移送段階」
を有し、
「前記保管段階において、前記車体を保管する車体保管区域から隔絶されたバッテリ保管部屋内で前記バッテリを保管し、前記バッテリ保管部屋の温度を所定範囲内に調整し」、
「前記搭載場所が、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体検査場所と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」
と特定されている点で、甲1発明と相違する(以下、「相違点3」という。)。

甲2?甲7に記載の事項は、上記アの〔相違点1について〕で述べたとおりである。
甲8には、「工場出荷後の保管場所における温度管理の有無」と記載されており(上記(2)ク(ク-2)参照)、二次電池が工場出荷後に温度管理されて保管されることが示唆されているといえるが、相違点3に係る本件発明8の「利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体検査場所と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である」「バッテリを車体に搭載する搭載場所へバッテリ及び車体を移動させる移送段階」は記載も示唆もされていない。
甲9には、「バッテリ冷却システム」は開示されているものの、相違点3に係る本件発明8の「移送段階」に関する事項は記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明に、甲2?甲9に記載の事項を適用できたとしても、相違点3に係る本件発明8の「移送段階」に関する構成のようにすることはできない。

したがって、甲1発明を、相違点3に係る本件発明8のように構成することは、甲2?甲9に記載の事項から当業者が容易に想到することができるとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件請求項1、5、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、5、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、車輪と、前記車輪に伝達される走行駆動力を発生する電気モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立方法であって、
車体組立場所で車体を組み立てる車体組立段階と、
前記車体の電気モータに車体検査場所に設置されている電源装置を接続し、前記電源装置からの電力を供給して前記電気モータから前記車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査を前記車体検査場所で実施する車体検査段階と、
前記電気モータから前記電源装置を取り外し、前記車体検査を合格した車体を、前記バッテリを搭載していない状態で、前記車体検査場所から搭載場所へ搬送する車体搬送段階と、
搬送された前記車体に前記バッテリを前記搭載場所で搭載するバッテリ搭載段階と、を有し、
前記車体組立場所および前記車体検査場所が前記車体を生産する車体生産工場であり、前記搭載場所は、前記車体生産工場とは地理的に異なる場所であって、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である、電動車両の組立方法。
【請求項2】
前記車体搬送段階で前記車体検査場所から前記搭載場所に搬送するまでに、前記バッテリを搭載していない状態の車体と前記バッテリとを保管する保管段階を有し、
前記保管段階において、前記車体及び前記バッテリを分離して保管し、前記車体を保管する車体保管区域と比べて前記バッテリを厳しく温度管理する、請求項1に記載の電動車両の組立方法。
【請求項3】
前記車体組立場所から離れたバッテリ組立場所でバッテリを組み立てるバッテリ組立段階を有し、
前記バッテリ組立段階においては、前記バッテリ組立場所で前記バッテリを、前記車体組立場所で組み立てられている前記車体と比べて厳しく温度管理および絶縁管理する、請求項1又は2に記載の電動車両の組立方法。
【請求項4】
前記バッテリ搭載段階において、前記車体に付与される車体識別情報と、前記バッテリに付与されるバッテリ識別情報とに基づいて、予め定める規則に従って当該バッテリの車体への搭載可否を決定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動車両の組立方法。
【請求項5】
フレームと、車輪と、前記車輪に伝達される走行駆動力を発生する電気モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立管理方法であって、
車体組立場所で車体を組み立てる車体組立段階と、
前記車体の電気モータに車体検査場所に設置されている電源装置を接続し、前記電源装置から電力を供給して前記電気モータから前記車輪への動力伝達状態の確認を含む車体検査を前記車体検査場所で実施する車体検査段階と、
前記電気モータから前記電源装置を取り外し、前記車体検査を合格した車体を、前記バッテリを搭載していない状態で、前記車体検査場所から搬送する車体搬送段階と、を有し、
前記車体組立場所および前記車体検査場所が前記車体を生産する車体生産工場であり、前記車体の搬送先が、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体生産工場と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である、電動車両の組立方法。
【請求項6】
前記車体搬送段階で搬送された前記車体と、前記バッテリとを保管する保管段階を更に備え、
前記保管段階において、前記車体を保管する車体保管区域から隔絶されたバッテリ保管部屋内で前記バッテリを保管し、前記バッテリ保管部屋の温度を所定範囲内に調整する、請求項5に記載の電動車両の組立方法。
【請求項7】
前記車体搬送段階で搬送された前記車体と前記バッテリとを保管する保管段階を更に備え、前記保管段階において、前記バッテリの再充電又は検査を実施する、請求項5又は6に記載の電動車両の組立方法。
【請求項8】
フレームと、車輪と、前記車輪に伝達するための走行駆動力を発生する電動モータとを含む車体に、前記電気モータの電源となるバッテリを搭載してなる電動車両の組立管理方法であって、
車体検査場所で前記バッテリを搭載していない状態で実施される車体検査を合格した車体を準備する車体準備段階と、
前記バッテリを準備するバッテリ準備段階と、
前記バッテリが前記車体に搭載されるまでの待機期間のうち少なくとも一部の期間において、当該バッテリ及び当該車体を保管する保管段階と、
前記保管段階の後、バッテリを車体に搭載する搭載場所へ前記バッテリ及び前記車体を移動させる移送段階と、を含み、
前記保管段階において、前記車体を保管する車体保管区域から隔絶されたバッテリ保管部屋内で前記バッテリを保管し、前記バッテリ保管部屋の温度を所定範囲内に調整し、
前記搭載場所が、利用者に完成車両が引き渡される車両提供場所、または前記車体検査場所と比べて前記車両提供場所に地理的に近い場所である、電動車両の組立管理方法。
【請求項9】
前記バッテリを前記搭載場所へ移送する際、前記バッテリを、前記搭載場所へと移送されている前記車体と比べて厳しい温度条件下で管理する、請求項2、5又は8に記載の電動車両の組立方法。
【請求項10】
前記バッテリを前記搭載場所へ移送する際、前記バッテリを、前記搭載場所へと移送されている前記車体と比べて厳しい振動条件下で管理する、請求項2、5又は8に記載の電動車両の組立方法。
【請求項11】
前記バッテリを前記搭載場所へ移送する際、前記バッテリを、前記搭載場所へと移送されている前記車体と比べて厳しい湿度条件下で管理する、請求項2、5又は8に記載の電動車両の組立方法。
【請求項12】
前記搭載場所が、利用者に前記完成車両を小売りする前記車両提供場所としての小売店舗、または利用者に前記完成車両を貸し出す前記車両提供場所としての賃貸店舗である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電動車両の組立方法。
【請求項13】
前記電動車両が鞍乗型車両である、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電動車両の組立方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-30 
出願番号 特願2014-539582(P2014-539582)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B62M)
P 1 652・ 537- YAA (B62M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清水 康  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森林 宏和
平田 信勝
登録日 2016-03-11 
登録番号 特許第5898778号(P5898778)
権利者 川崎重工業株式会社
発明の名称 電動車両の組立方法及び組立管理方法  
代理人 特許業務法人有古特許事務所  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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