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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1326240
審判番号 不服2015-21983  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-11 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2012-526149「磁気診断プローブコネクタシステム」拒絶査定不服審判事件〔2011年3月3日国際公開、WO2011/024091、平成25年1月31日国内公表、特表2013-503425、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年8月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年8月31日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月12日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成27年3月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月5日付け(発送日:同年8月11日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成28年2月15日に前置報告がされ、その後、当審において同年6月20日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、その指定期間内の同年12月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成28年12月21日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
着脱可能な無線超音波プローブに診断又は治療装置を結合する無線超音波プローブ用の磁気接続システムにおいて、前記装置が、前記装置に結合された第1の端部及び第2の端部を持つケーブルを持ち、前記接続システムが、
前記プローブ内又は上に配置された第1のコネクタ部分であって、平らな面を有する第1のコネクタ部分と、
前記装置ケーブルの前記第2の端部を終端する第2のコネクタ部分であって、平らな面を有する第2のコネクタ部分と、
を有し、
前記第1のコネクタ部分が、第1の四極子として配置された磁石の第1の対を有し、前記第1の対を構成する第1及び第2の磁石は互いに離れて配され、前記第1のコネクタ部分の各磁石の磁極が、前記第1のコネクタ部分の前記平らな面の角の近くに位置するように配され、前記第1の磁石の磁極間の距離が、前記第2の磁石の磁極間の距離より小さく、
前記第2のコネクタ部分が、第2の四極子として配置された磁石の第2の対を有し、前記第2の対を構成する第3及び第4の磁石は互いに離れて配され、前記第2のコネクタ部分の各磁石の磁極が、前記第2のコネクタ部分の前記平らな面の角の近くに位置するように配され、前記第3の磁石の磁極間の距離が前記第1の磁石の磁極間の距離に等しく、前記第4の磁石の磁極間の距離が前記第2の磁石の磁極間の距離に等しく、前記第1及び第2のコネクタ部分は、各々、それぞれの前記平らな面に少なくとも1つの接点を有し、前記第1のコネクタ部分の前記接点が前記第1のコネクタ部分の前記平らな面に埋め込まれた接点パッドであり、
前記第1及び第2のコネクタ部分は、前記第1及び前記第3の磁石の磁気結合並びに前記第2及び前記第4の磁石の磁気結合により、前記接点が互いに接続するように構成される、磁気接続システム。
【請求項2】
前記第1及び第2のコネクタ部分が一緒に結合される場合に、前記第1の磁石及び前記第3の磁石が新たな四極子を形成し、前記第2の磁石及び前記第4の磁石が別の新たな四極子を形成するように構成される、請求項1に記載の磁気接続システム。
【請求項3】
前記第1及び第2のコネクタ部分は、所定の向きでのみ接続するように物理的に構成される、請求項1又は2に記載の磁気接続システム。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気接続システムを有するケーブルとともに使用するのに適した無線超音波プローブにおいて、
前記接続システムの前記第1のコネクタ部分を有するプローブケースであって、前記第1のコネクタ部分が平らな面を有する、プローブケースと、
前記ケース内に配置されたアレイトランスデューサと、
前記ケース内に配置され、前記アレイトランスデューサに結合された取得回路と、
前記ケース内に配置され、画像情報信号をホストシステムに無線で送信するように機能する送受信器と、
前記ケース内に配置され、前記アレイトランスデューサ、前記取得回路及び前記送受信器に電力供給電圧を提供するように動作する電力回路と、
前記ケース内に配置され、前記電力回路に結合されたエネルギ蓄積装置と、
前記ケーブルに結合され、前記接続システムの前記第2のコネクタ部分を有するケーブルコネクタであって、前記2のコネクタ部分が平らな面を有する、ケーブルコネクタと、
を有し、
前記第1のコネクタ部分が、第1の四極子として配置された磁石の第1の対を有し、前記第1の対を構成する第1及び第2磁石は互いに離れて配され、前記第1のコネクタ部分の各磁石の磁極が、前記第1のコネクタ部分の前記平らな面の角の近くに位置するように配され、前記第1の磁石の磁極間の距離が、前記第2の磁石の磁極間の距離より小さく、
前記第2のコネクタ部分が、第2の四極子として配置された磁石の第2の対を有し、前記第2の対を構成する第3及び第4の磁石は互いに離れて配され、前記第2のコネクタ部分の各磁石の磁極が、前記第2のコネクタ部分の前記平らな面の角の近くに位置するように配され、前記第3の磁石の磁極間の距離が前記第1の磁石の磁極間の距離に等しく、前記第4の磁石の磁極間の距離が前記第2の磁石の磁極間の距離に等しく、
前記第1及び第2のコネクタ部分は、各々、それぞれの前記平らな面に少なくとも1つの接点を有し、前記第1のコネクタ部分の前記接点が前記平らな面に埋め込まれた接点パッドであり、
前記第1及び第2のコネクタ部分は、前記第1及び前記第3の磁石の磁気結合並びに前記第2及び前記第4の磁石の磁気結合により、前記接点が互いに接続するように構成される、無線超音波プローブ。
【請求項5】
前記ケーブルが、前記エネルギ蓄積装置を充電する電力供給電位を伝達する、請求項4に記載の無線超音波プローブ。
【請求項6】
前記ケーブルが、超音波画像の表示のためにホストシステムに画像情報信号を伝達する、請求項4又は5に記載の無線超音波プローブ。
【請求項7】
前記ケーブルが、ホストシステムから前記プローブに制御信号を伝達する、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の無線超音波プローブ。
【請求項8】
前記第1のコネクタ部分が、少なくとも部分的に前記ケース内に配置され、保護皮膜により覆われる、請求項4乃至7のいずれか1項に記載の無線超音波プローブ。
【請求項9】
前記第1のコネクタ部分が、複数の接点を有し、前記第2のコネクタ部分が、第2の複数の接点を有し、前記第1及び第2の複数の接点は、前記第1のコネクタ部分が前記第2のコネクタ部分に結合される場合に、それぞれ一致する、請求項4乃至8のいずれ1項に記載の無線超音波プローブ。
【請求項10】
前記第1及び第2のコネクタ部分が一緒に結合される場合に、前記第1の磁石及び前記第3の磁石が新たな四極子を形成し、前記第2の磁石及び前記第4の磁石が別の新たな四極子を形成するように構成される、請求項4乃至9のいずれか1項に記載の無線超音波プローブ。
【請求項11】
前記第1及び第2のコネクタ部分は、所定の向きでのみ接続するように物理的に構成される、請求項4乃至10のいずれか1項に記載の無線超音波プローブ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
平成27年3月17日の手続補正により補正された請求項1ないし13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:国際公開第2008/146205号
刊行物2:米国特許第07329128号明細書(周知技術を示す文献)
刊行物3:特公昭50-9990号公報(周知技術を示す文献)
刊行物4:特表2003-504815号公報(周知技術を示す文献)
刊行物5:特開平11-144803号公報(周知技術を示す文献)

刊行物1には、プローブの第1コネクタ部分と、ケーブルの第2コネクタ部分と、を磁石で接続する技術が記載されている。
また、コネクタ部分とコネクタ部分を磁石で接続する際に、四極子として磁石を配置する技術は周知であり(例えば、刊行物2?刊行物4等を参照。) 、刊行物1に記載された発明に上記周知技術を適用して、プローブの第1コネクタ部分と、ケーブルの第2コネクタ部分と、を磁石で接続する際に、四極子として磁石を配置することは、当業者が容易に想到し得たことである。
コネクタに凸部を設ける等により接点が所定の1つの形でのみ接続するこうに構成する技術は、周知であり(例えば、刊行物5の特に段落【0020】等を参照。)、この点に、格別なものは見出せない。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物
ア 刊行物1
原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物1には、「WIRELESS ULTRASOUND PROBE CABLE」(無線超音波プローブケーブル)に関して、図面(特に、FIG.1a、FIG.1b、FIG.10a、FIG.10b参照)とともに、次の事項が記載されている。仮訳は、刊行物1に関連する特表2010-528698号公報による。下線は当審で付した。以下同様。

(ア)1ページ3行?5行
(仮訳 上記関連公報の段落【0001】)
本発明は、医療診断超音波システムに関し、特に、無線超音波プローブのためのケーブルに関する。

(イ)22ページ23行ないし25ページ7行
(仮訳 上記関連公報の段落【0032】ないし段落【0035】)
図10aは、本発明の無線プローブでの使用に適したケーブルを示す。無線プローブに関して様々なタイプの多導体ケーブル及びコネクタが使用されることができるが、この例は、1つの端部でタイプAのUSBコネクタ310を備える多導体USBケーブル300である。タイプAのUSBアダプタ312が、コネクタ310から延在する。代替的にデジタルカメラで使用されるようなタイプB及びミニBといった他のUSBフォーマットが使用されることができるか、又は他の望ましい特性を備える完全にカスタムなコネクタが使用されることができる。USBケーブルは事実上任意のデスクトップ又はラップトップコンピュータに差し込まれることができる。これは、無線プローブが事実上、任意のコンピュータから充電されることを可能にする。ホストシステムが図2b及び図6aに示されるようにラップトップスタイルの超音波システム50であるとき、USBタイプのケーブルが、ホストへ及びホストからの電源通信だけでなく信号通信に関しても使用されることができる。
無線プローブへの接続のため、同じスタイルのUSBコネクタが、ケーブル300の他端に提供されることができる。その場合、無線プローブは、嵌合するUSBコネクタを持つ。プローブコネクタは、ケース内部にへこむ形で提供されることができ、使用しないとき、水密キャップ又は他の液密のリムーバブルシールにより覆われることができる。図示された例において、プローブに対するコネクタ302は、4つのUSB導体308を含む。導体が無線プローブ上の嵌合する導体に対して良好な接触をしつつ押すことになるよう、導体308はばね荷重式である。導体308は、1つの方向においてのみプローブと嵌合することを必要とするため、1つの端部306に配置される(keyed)凹型(recessed)又は突設するコネクタ終片部304に配置される。
図10aのケーブルに関する嵌合無線プローブ10が、図10bに示される。プローブのコネクタ310は、この例では近位端部14にあり、完全に密閉される。コネクタ310のプローブ接触部314は、ケーブルの突設又は凹型終片部304と嵌合する、凹型又は突設領域316に配置され、適切な接続のため参照符号312に同じように配置される。ケーブルコネクタ302がプローブの嵌合領域316に差し込まれるとき、ケーブルのばね荷重式の導体308が、プローブのプローブ接触部314にもたれかかり、プローブとのUSB接続が完了される。
図10a及び図10bのプローブ及びケーブルの追加的な側面の原理によれば、プローブの嵌合領域316は、突設又は凹型ではないが、周囲のプローブ表面と同じ高さである。嵌合領域316は、接触部314を囲む磁気又は鉄物質で作られ、磁気的に引力がある。ケーブルコネクタ302の嵌合終片部304は、同様に突設又は凹型である必要がないが、コネクタ302の端部と同じ高さとすることができ、プローブの嵌合領域316へと引きつける磁化物質で作られる。終片部304の磁化物質は、永久に磁化されることができるか、又はオン及びオフにされることができるよう電気的に磁化されることができる。従って、ケーブルは、物理的な係合プラグではなく、(有極性による)キーイング(keying)及び自己配置(self-seating)の両方を提供することができる磁気引力によって、プローブに接続される。これは、無線プローブに関する複数の利点を提供する。1つは、掃除及び除去するのが困難であるゲル及び他の汚染物質を閉じ込める可能性がある突起及びへこみを、プローブのコネクタ310が持つ必要がないということである。コネクタ310は、プローブケース8、嵌合領域316、及び掃除するのが容易で、汚染物質を閉じ込めない接触部314のスムーズで連続する表面とすることができる。同じ利点は、ケーブルコネクタ302にも当てはまる。物理的接続ではなく磁気的接続であるということは、プローブに損傷を与えることなく接続が物理的に切断されることができることを意味する。無線プローブを使用するのに慣れている検査技師は、ケーブルがないことが当たり前と想い、スキャンするときケーブル300が存在することを忘れる可能性がある。例えば、ケーブル上を走る又はその上で転ぶことにより、検査技師がケーブルにストレスをかける場合、その力が、ケーブルをプローブに接続する磁気引力を上回ることになる。その場合、ケーブル300は、損傷を与えることなくプローブ10から無害な態様で切り離されるだろう。好ましくは、ケーブルからぶら下げられるとき、プローブの重量及びモーメントをサポートするくらい、磁気引力が十分に強い。これは、無線プローブが300グラム以下であることにより支援される。従って、ケーブル接続されるプローブが検査テーブルで落ちる場合、プローブは磁気ケーブルにより懸架されることになり、落下し床でクラッシュすることもないだろう。こうして、無線プローブは損傷から保護される。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「着脱可能な嵌合無線プローブ10に超音波システム50を結合する無線プローブ10用の磁気的接続構造において、前記超音波システム50が、前記超音波システム50に結合された1つの端部及び他端を持つ多導体USBケーブル300を持ち、前記磁気的接続構造が、
前記無線プローブ10表面に配置されたコネクタ310であって、周囲のプローブ表面と同じ高さの嵌合領域316を有するコネクタ310と、
前記ケーブル300の前記他端に提供されるケーブルコネクタ302であって、ケーブルコネクタ302の端部と同じ高さの嵌合終片部304を有するケーブルコネクタ302と、
を有し、
前記嵌合領域316は、接触部314を囲む磁気又は鉄物質で作られ、磁気的に引力があり、
前記嵌合終片部304は、永久に磁化され、前記嵌合領域316へと引きつけられる、磁気的接続構造。」

イ 刊行物2
原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物2には、「CABLE CONNECTOR」(ケーブルコネクタ)に関して、図面(特に、FIG.4参照)とともに、次の事項が記載されている。仮訳は当審による。

(ア)2欄33行?3欄13行
(仮訳)
図2-4を参照すると、改良されたケーブルコネクタ40が示されている。ケーブルコネクタ40は、プラグ42とレセプタクル44を備えている。プラグ42は、ハウジング46、嵌合面48と、嵌合面48から延びており、電気コード52に電気的に接続されるピンコネクタ50とを備えている。示されている実施形態において、嵌合面48は、わずかに筐体46に嵌め込まれて係合壁54は、本質的に、ハウジング46の一部に囲まれている。レセプタクル44は、摩擦フィットあるいはスナップフィット接続でプラグ42を受容する大きさ及び形状にされる。より具体的には、レセプタクル44は、プラグ42の係合壁54よりも一回り小さい大きさ及び形状に凹部58に囲まれた嵌合面56を含み、摩擦フィットあるいはスナップフィットで係合壁54を受容する。本発明に従えば、凹部58及び係合壁54は、任意の構成であり、本発明の目的を達成するために必要ではない。レセプタクル44は、プラグ42のピンコネクタ50を受容するために配置された整列されたピン孔または受容体60とを備え、レセプタクル44に関連する装置62とレセプタクル44との間を電気的に接続する。典型的には、装置62は、コンピュータまたは周辺デバイス、プリンタ、モニタ、カメラ、プロジェクタ、モデムなどを含むことができる。本発明は、多くの種類の電子装置に適用可能であることは、当業者によって認識されるであろう、本明細書で例示されたもの以外のものである。
磁石64、66は、プラグ42上に設けられており、磁石68、70は、レセプタクル44に設けられる。図3及び4に示されるように、プラグ42とレセプタクル44が嵌合位置に向いている場合には、磁石64、66及び68、70の反対の極は、互いにプラグ42とレセプタクル44との接続を促進すると、ピンコネクタ50及びピン受容体60との間の正確な位置合わせを促進する。より具体的には、プラグ42上の磁石64は、接触面56に向けて外向きに、それぞれN極を有している。プラグ上の磁石66は、接触面56に向けて外向きに、それぞれS極を有している。レセプタクルの接触面56に対応する位置に、磁石68は、そのN極を外向きに有し、磁石70は、そのS極を外向きに有することが好ましい。プラグ42をレセプタクル44から一定距離以内になると、磁石64と磁石70と対向する極が互いに引き付けている。同様に、磁石66と磁石68とは反対側の極に引き付けられる。これにより、プラグ42とレセプタクル44とピンコネクタ50及びピン受容体60との間に促進される適切な物理的及び電気的に接続される。

(イ)FIG.4には、プラグ42の4つの角の近くに2つの磁石64のN極と2つの磁石66のS極とを交互に配置し、同様に、レセプタクル44の4つの角の近くに2つの磁石68のN極と2つの磁石70のS極を交互に配置することが示されており、プラグ42の4つの角の近くに配置された2つの磁石64と2つの磁石66とが四極子を構成し、同様に、レセプタクル44の4つの角の近くに配置された2つの磁石68と2つの磁石70が四極子を構成することは明らかである。

ウ 刊行物3
原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物3には、「接続装置」に関して、図面(特に、第2図参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、拗促音は小文字で表記した。

(1)2欄14行?32行
「第2図は本発明の一実施例における電気接続装置で、4はジャック、5はプラグである。ジャック4はプラグ5の端子51の受け口41を有し、受け口41中にはプラグの端子51と接触する接点42が設けられている。プラグ5とジャック4とが接触する面の周縁には各々リング状の磁石6,6′が設けられており、一方の例えばプラグ側の磁石6はプラグに固定されており他方の磁石、例えばジャック側の磁石6′は回転可能になっている。ジャック4と、プラグ5とを接続する場合はジャックの受け口41にプラグの端子51を差し込みジャックの磁石6′を回転して、プラグの磁石6のS極あるいはN極とソケットの磁石6′のN極あるいはS極を合わせることによってプラグとソケットが引き合い電気的にも接続される。またプラグ5をジャックから抜く場合には、ジャックの磁石6′を少し回転させると磁石6,6′の間に同極同士の反発力が働らくためプラグ5をソケット4から容易に抜くことがでる。(当審注:「できる。」の誤記)」

(2)第2図(a)には、リング状の磁石6,6′が円周方向にN極、S極を交互に配置することが記載されている。

エ 刊行物4
原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物4には、「電気機械接続装置」に関して、図面(特に、図1、図2参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0018】
図1,2は、ハウジング1aを有する電流若しくはデータ供給装置1を示し、ハウジング1aには、平面接点として形成された4つの接点素子2が配置されている。これは、使用者接続若しくはデータ読出し装置3のハウジング3aに配置され、必要な場合、平面接点として形成される接点素子4と共に、電流源から使用者までの接続装置を確立するために共同作用する。同時に、接点素子2はスイッチング磁石又は磁気スイッチとして、また、同時に接点素子4は引き外し磁石或いは引き外し部材として形成されている。
電流若しくはデータ供給装置1の接点素子2は、夫々単独で導線接続部5を介して、図示されていない電流、電圧又はバルス源に接続されている。これは使用者接続若しくはデータ読出し装置3の接点素子4にも同様に当てはまり、それによって、夫々の接続導線から図示されていない使用者まで導かれる。接点素子4が使用者又は電流、電圧或いはバルス取り出し点に直接配置されていれば、場合によっては、この接続導線を除いてもよい。
原則的に、使用者接続若しくはデータ読出し装置3は、電流若しくはデータ供給装置1と同じ構成からなってよく、従って、同じ部分に関しては、同じ参照符号が付されている(例外:接点要素2,4)。」

(2)「【0034】
磁気接続を行うために、例えば電流若しくはデータ供給装置1の接点素子2が磁石として形成され、使用者接続若しくはデータ読出し装置3の接点素子4が例えば鉄のような磁性材料からなれば、十分である。それでも、まだ反転する配置が可能であることは明らかである。
【0035】
専ら磁石部分を使用する場合、それらは電流若しくはデータ供給装置1と使用者接続若しくはデータ読出し装置3とのそれそれぞれの接点素子が、異なった極性を向き合って置かれるように配置される。同じくEP0573471又はDE19512334C1による電気機械接続装置の場合のように、異なった接点素子2,4の正確な関係づけを保つように対応する、“コード化”された磁石2,4が接点素子として備えられる。」

オ 刊行物5
原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物5には、「スープラ用コネクタ」に関して、図面(特に、図1ないし図7参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。本発明に係る第1の実施の形態のスープラ用コネクタ11は、図1?図3に示すように、磁石23の吸引力を利用したものであり、そのプラグ2は、合成樹脂製の円筒状のプラグケース21内に磁石23が配置され、この磁石23に接触して磁性材料部材である鉄製円筒部材24がプラグケース21の内側に設けられている。
【0017】更に、この鉄製円筒部材24の内側に嵌合されたプラグ端子支持部材25が、田の字状に4本のプラグ端子22を保持し、この各プラグ端子22の後方にコード4の各芯線が接続されている。一方、このプラグ2に着脱可能に接合するソケット3は、合成樹脂製の円筒状のソケットケース31の内側に磁性材料部材である鉄製円筒部材34が設けられ、更に、その内側にソケット端子支持部材35が嵌合され、ソケット端子32を田の字状に保持し、この各ソケット端子32の後方にコード4の各芯線が接続されている。」

(2)「【0026】・・・(略)・・・次に、本発明に係る第2の実施の形態のスープラ用コネクタ12は、図4?図7に示すように、磁石63の吸引力を利用したものであるが、その形状はプラグ端子62を4本横に並べるために小判型のフラットな形状となっており、プラグ6の磁石63で直接、ソケット7の磁力によって吸引される磁性材料部材である鉄片74を吸引するように構成されている。
【0027】このプラグ6は、図4及び図7に示すように、合成樹脂製の偏平な筒状のプラグケース61の内側の両端部に磁石63が配置され、内側にプラグ端子62を保持したプラグ端子支持部材65を嵌合して形成されている。また、一方のソケット7は、図4及び図6に示すように、合成樹脂製の偏平な筒状のソケットケース71の内側の両端部に鉄片74が配置され、内側にソケット端子72を保持したソケット端子支持部材75を嵌合して形成されている。」

カ 刊行物6
前置報告において引用され、本願の優先日前に頒布された特開2000-353571号公報(以下「刊行物6」という。)には、「コネクタ装置およびコネクタ装置を備える電子機器」に関して、図面(特に、図6、図11ないし図13参照)とともに、次の事項が記載されている。

「【0031】図11?図13は、図6のコネクタ装置14の構造例を示している。コネクタ装置14は、すでに述べたように、接点体保持部22と複数の接点体20を有している。この接点体保持部22の内面の左右位置には、マグネット50,50が設けられている。すなわちマグネット50,50は、ホルダー部26の左右位置に配置されている。これらのマグネット50,50に対応して、図6に示すように、筐体12には、金属板52,52が固定されている。これらの金属板52,52は、マグネット50,50により磁気的に吸着される金属、たとえば鉄板により作られている。このマグネット50と金属板52の組み合わせにより、磁気的吸着力を発揮し、これによりコネクタ装置14は、筐体12の電気接点保持部16側に所定の接点圧力で確実に支持することができる。このような支持状態では、コネクタ装置14の各接点体20は、図8に示す対応する位置の電気接点44に対して上述した適切な接点圧力を用いて電気的に接触する。」

(2)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「嵌合無線プローブ10」は医療診断超音波システムに関するものであるから前者の「無線超音波プローブ」に相当し、以下同様に、「無線プローブ10表面」は「プローブ内又は上」に、「超音波システム50」は「診断又は治療装置」に、「無線プローブ10用の磁気的接続構造」は「無線超音波プローブ用の磁気接続システム」に、「多導体USBケーブル300」は「ケーブル」及び「装置ケーブル」に、多導体USBケーブル300の「1つの端部及び他端」はケーブルの「第1の端部及び第2の端部」に、「コネクタ310」は「第1のコネクタ部分」に、「周囲のプローブ表面と同じ高さの嵌合領域316」は「平らな面」に、「ケーブルコネクタ302」は「第2のコネクタ部分」に、「他端に提供される」ことは「第2の端部を終端する」ことに、「コネクタ302の端部と同じ高さの嵌合終片部304」は「平らな面」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「着脱可能な無線超音波プローブに診断又は治療装置を結合する無線超音波プローブ用の磁気接続システムにおいて、前記装置が、前記装置に結合された第1の端部及び第2の端部を持つケーブルを持ち、前記接続システムが、
前記プローブ内又は上に配置された第1のコネクタ部分であって、平らな面を有する第1のコネクタ部分と、
前記装置ケーブルの前記第2の端部を終端する第2のコネクタ部分であって、平らな面を有する第2のコネクタ部分と、
を有する、磁気接続システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明1は、「前記第1のコネクタ部分が、第1の四極子として配置された磁石の第1の対を有し、前記第1の対を構成する第1及び第2の磁石は互いに離れて配され、前記第1のコネクタ部分の各磁石の磁極が、前記第1のコネクタ部分の前記平らな面の角の近くに位置するように配され、前記第1の磁石の磁極間の距離が、前記第2の磁石の磁極間の距離より小さく、前記第2のコネクタ部分が、第2の四極子として配置された磁石の第2の対を有し、前記第2の対を構成する第3及び第4の磁石は互いに離れて配され、前記第2のコネクタ部分の各磁石の磁極が、前記第2のコネクタ部分の前記平らな面の角の近くに位置するように配され、前記第3の磁石の磁極間の距離が前記第1の磁石の磁極間の距離に等しく、前記第4の磁石の磁極間の距離が前記第2の磁石の磁極間の距離に等しく、前記第1及び第2のコネクタ部分は、各々、それぞれの前記平らな面に少なくとも1つの接点を有し、前記第1のコネクタ部分の前記接点が前記第1のコネクタ部分の前記平らな面に埋め込まれた接点パッドであり、前記第1及び第2のコネクタ部分は、前記第1及び前記第3の磁石の磁気結合並びに前記第2及び前記第4の磁石の磁気結合により、前記接点が互いに接続するように構成される」のに対し、
引用発明は、前記嵌合領域316は、接触部314を囲む磁気又は鉄物質で作られ、磁気的に引力があり、前記嵌合終片部304は、永久に磁化され、前記嵌合領域316へと引きつけられる点。

イ 判断
上記相違点に係る本願発明1の構成について検討する。
刊行物2には、レセプタクル44が、第1の四極子として配置された2つの磁石68と2つの磁石70を有し、前記磁石68,70は互いに離れて配され、前記レセプタクル44の磁石68,70の磁極が、前記レセプタクル44の角の近くに位置するように配され、プラグ42が、第2の四極子として配置された2つの磁石64と2つの磁石66を有し、前記磁石64,66は互いに離れて配され、前記プラグ42の磁石64,66の磁極が、前記プラグ42の角の近くに位置するように配され、前記プラグ42及びレセプタクル44は、各々、ピンコネクタ50及びピン受容体60を有し、前記プラグ42及びレセプタクル44は、前記磁石64及び前記磁石70の磁気結合並びに前記磁石66及び前記磁石68の磁気結合により、ピンコネクタ50及びピン受容体60が互いに接続するように構成されることが記載されているが、少なくとも、本願発明1の「第1のコネクタ部分が、第1の四極子として配置された磁石の第1の対を有し、前記第1の対を構成する第1及び第2の磁石は互いに離れて配され」、「前記第1の磁石の磁極間の距離が、前記第2の磁石の磁極間の距離より小さく」、「第2のコネクタ部分が、第2の四極子として配置された磁石の第2の対を有し、前記第2の対を構成する第3及び第4の磁石は互いに離れて配され」、「前記第3の磁石の磁極間の距離が前記第1の磁石の磁極間の距離に等しく、前記第4の磁石の磁極間の距離が前記第2の磁石の磁極間の距離に等しく、」「前記第1及び第2のコネクタ部分は、前記第1及び前記第3の磁石の磁気結合並びに前記第2及び前記第4の磁石の磁気結合により、前記接点が互いに接続するように構成される」ことについて何ら記載も示唆もされていない。

また、刊行物3には、プラグ5とジャック4とが接触する面の周縁に各々リング状の磁石6,6′を設け、その円周方向にN極、S極を交互に配置することが記載され、刊行物4には、4つの接点素子2及び4つの接点素子4をそれぞれ磁石2,4とすることが記載され、刊行物5には、磁石23に接触して磁性材料部材である鉄製円筒部材24をプラグケース21の内側に設けること、及びプラグケース61の内側の両端部に磁石63を配置することが記載され、刊行物6には、コネクタ装置14の接点体保持部22の左右位置にマグネット50,50を設けることが記載されるにとどまり、刊行物3ないし刊行物6にも、上記相違点に係る本願発明1の上記構成について何ら記載も示唆もされていない。

そして、本願発明1は、上記構成により、最小化された漂遊磁界を提供するとともに、反対の間違った形で磁気的に結合されることを防止するものである(本願明細書の段落【0026】及び段落【0027】)。

したがって、引用発明に刊行物2ないし刊行物6にそれぞれ記載された事項を適用しても、上記相違点に係る本願発明1の構成を導き出し得たとはいえない。

ウ 小括
以上から、本願発明1は、当業者が引用発明及び刊行物2ないし刊行物6にそれぞれ記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本願発明2ないし11について
本願発明2ないし11は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明及び刊行物2ないし刊行物6にそれぞれ記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)まとめ
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)本願は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1、5の「前記接点が所定の1つの形でのみ接続」及び請求項3、4、12、13の「前記接点が所定の形でのみ接続」は、意味不明である。

イ 請求項2、11の「前記磁石の第1及び第2の対の少なくとも2つは、前記第1及び第2のコネクタ部分が一緒に結合される場合に、少なくとも1つの追加の四極子を形成するように配置される」は、次の点で意味不明である。
(ア)「磁石の第1及び第2の対の少なくとも2つ」とはどういうことか意味不明である。
すなわち、「第1及び第2の対」という記載は「対が2つ」あることを意味しており、それにも拘わらず、その2つの対の「少なくとも」が何を意味しているのか、不明である。

(イ)「少なくとも1つの追加の四極子を形成するように配置」するとはどういうことか意味不明である。

(2)本願は、発明の詳細な説明の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

本願発明における第1の四極子及び第2の四極子により第1及び第2のコネクタを結合することの技術的意義が不明瞭である。

2 当審拒絶理由の判断
(1)特許請求の範囲の記載について
ア 請求項1、4において、元の請求項にあった「前記接点が所定の1つの形でのみ接続する」の記載を、「前記第1及び前記第3の磁石の磁気結合並びに前記第2及び前記第4の磁石の磁気結合により、前記接点が互いに接続する」と補正し、請求項3、11において、元の請求項にあった「前記接点が所定の形でのみ接続する」の記載を、「所定の向きでのみ接続する」と補正された。また、元の請求項3、12は削除された。これらの補正により、特許請求の範囲の記載は、明確になった。

イ 請求項2、10において、「前記第1及び第2のコネクタ部分が一緒に結合される場合に、前記第1の磁石及び前記第3の磁石が新たな四極子を形成し、前記第2の磁石及び前記第4の磁石が別の新たな四極子を形成するように構成される」と補正された。この補正により、第1及び第2のコネクタ部分が結合される場合に形成される2つの四極子の構成が明確になった。

(2)発明の詳細な説明の記載について
請求項1、4において、「前記第1の磁石の磁極間の距離が、前記第2の磁石の磁極間の距離より小さく」、「前記第3の磁石の磁極間の距離が前記第1の磁石の磁極間の距離に等しく、前記第4の磁石の磁極間の距離が前記第2の磁石の磁極間の距離に等しく」、「前記第1のコネクタ部分の前記接点が前記平らな面に埋め込まれた接点パッドであり」、「前記第1及び第2のコネクタ部分は、前記第1及び前記第3の磁石の磁気結合並びに前記第2及び前記第4の磁石の磁気結合により、前記接点が互いに接続するように構成される」と補正された。本願発明の構成によれば、無線超音波プローブ及びケーブルのコネクタ部分において最小化された漂遊磁界を提供することができるとともに、無線超音波プローブとケーブルの間の不正確な接点接続を回避することができ、技術上の意義は、発明の詳細な説明から明確に理解できるものとなった。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2012-526149(P2012-526149)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01R)
P 1 8・ 121- WY (H01R)
P 1 8・ 537- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 段 吉享  
特許庁審判長 阿部 利英
特許庁審判官 冨岡 和人
中川 隆司
発明の名称 磁気診断プローブコネクタシステム  
代理人 笛田 秀仙  

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