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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1326274
審判番号 不服2016-5539  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-14 
確定日 2017-04-10 
事件の表示 特願2013-504372「照明機能を持つ布地製品及びその製造のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日国際公開、WO2011/128825、平成25年 6月20日国内公表、特表2013-525835、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月11日(パリ条約に基づく優先権主張2010年4月16日、欧州)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月9日付けで拒絶査定(謄本送達日同年同月18日)がなされ、これに対して平成28年4月14日に審判請求書が提出され、同年11月14日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年2月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、平成29年2月21日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであって、以下のとおりのものである。

【請求項1】
布地の第1の側に第1の布地被覆を持つ布地を有する被覆布地構造体と、基板表面を持つ基板及び前記基板表面に含まれる光源を有する照明ユニットとを有し、前記照明ユニットは、第1の布地被覆を通って光を供給するために前記被覆布地構造体内に設けられ、前記基板表面は、導電コネクタ部分が電源に電気的に接続されるとき、前記光源に電力を供給する前記導電コネクタ部分を更に有する、照明機能を持つ布地製品。
【請求項2】
前記被覆布地構造体は、前記光源から離れる前記光源の光の少なくとも一部をガイドする光ガイドを更に有する、請求項1に記載の布地製品。
【請求項3】
前記照明ユニットは複数の導電コネクタを有する、請求項1又は2に記載の布地製品。
【請求項4】
布地の第2の側に充填材を有する第2の布地被覆を持ち、第1の布地被覆は、第1の布地被覆の総量に対して、第2の布地被覆の総量に対する充填物より少ない充填物を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の布地製品。
【請求項5】
200℃より低く50℃より高い温度で溶解するはんだで前記基板が前記布地に付着されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の布地製品。
【請求項6】
前記照明ユニットは複数の光源を有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の布地製品。
【請求項7】
複数の照明ユニットを有し、2つ以上の照明ユニットが、前記被覆布地構造体内に設けられた導電ワイヤにより電気的に接続されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載の布地製品。
【請求項8】
前記布地製品が1つの照明ユニットに対し複数の導電ワイヤを有する、請求項7に記載の布地製品。
【請求項9】
トレーラー布地、家具カバー、帆、防水布、カーテン、建築的アウトドア布地、建築的インドア布地及びテント布地を有する被覆織物のグループから選択される布地製品であって、請求項1乃至8の何れか一項に記載の布地製品。
【請求項10】
布地の第1の側に第1の布地被覆を持つ布地を有する被覆布地構造体と、基板表面を持つ基板及び前記基板表面に含まれる光源を有する照明ユニットとを有し、前記照明ユニットは、第1の布地被覆を通って光を供給するために前記被覆布地構造体内に設けられ、前記基板表面は、少なくとも一部が第1の被覆によりカバーされていない導電コネクタ部分を更に有し、前記導電コネクタ部分は、電源に電気的に接続されるとき、前記光源へ電力を供給する、照明機能を持つ布地製品。
【請求項11】
前記導電コネクタと物理的且つ電気的に接続され、前記光源へ電力を給電するための電源を更に有する、請求項1乃至10の何れか一項に記載の布地製品。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の布地製品を製造するための方法であって、基板表面を持つ基板と前記基板表面に含まれる光源とを有する照明ユニットを布地に付与するステップと、前記照明ユニットが第1の布地被覆を通って光を供給するために第1の被覆プロセスで前記照明ユニットを持つ前記布地を第1の布地被覆で被覆するステップとを有し、前記基板表面は、導電コネクタ部分が電源に電気的に接続されるとき、前記光源に電力を供給する前記導電コネクタ部分を更に有する、方法。
【請求項13】
200℃より低く50℃より高い温度で溶解するはんだで前記布地上に前記照明ユニットを配するステップと、第1の布地被覆で前記布地及び前記照明ユニットを被覆するステップとを有し、前記はんだ及び第1の被覆プロセス条件が、第1の被覆プロセスの間で前記はんだを融解するために選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
布地製品及び電源を供給するステップと、前記電源と前記導電コネクタ部分とを電気的に接続するステップと、電力を前記光源へ供給するステップとを有する、請求項1乃至11の何れか一項に記載の照明機能を持つ前記布地製品を照明させるための方法。

第3 原査定の理由の概要
請求項1に係る発明は、特表2005-524783号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明、及び特開2003-223121号公報(以下「引用文献2」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項2、3、6ないし10、12、15に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、及び特開2004-44029号公報(以下「引用文献3」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、特許法第29条第2項の規定により、本願は特許を受けることができない。

第4 原査定の理由の判断
1 刊行物の記載事項
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、以下の記載がある。

「【0013】
図1は、本発明の実施形態を含む織物100の例の概略平面図であり、図2は、図1の織物に関する電子回路機能の例を含む糸150の概略平面図である。織物100は、絶縁糸110及び導電糸120を縦糸に含み、且つ絶縁糸130及び機能糸150を横糸に含む平織りの織物である。織物100は、横糸に導電糸も含み得る。絶縁糸110は、縦糸における隣り合う導電糸120の間に配置されて、導電糸120の間に絶縁セパレータをもたらす。絶縁糸130は、縦糸における隣り合う機能糸150(及び/又は、あれば導電糸)の間に配置されて、これらの糸の間に絶縁セパレータをもたらす。
【0014】
図2の機能糸150は、電気又は電子絶縁基板152上に複数の導電体154,156,158及び電子装置160を含む。図1及び2の特定の例において、電子装置160は、与えられた電気信号に応答して発光する発光ダイオード(LED)160である。基板152は、柔軟な絶縁材料、例えば、ポリイミド若しくはポリエステル、又は、電気基板として用いるのに好適なその他の材料からつくられた細長いストリップである。導電体154?158は、任意の適切な手段により基板152上に形成され、例えば、柔軟な電気プリント回路などを作製するための知られた方法を用いて、基板152に取り付けた導電金属層、例えば銅層をエッチングすることにより形成される。図示されているように、導電体154は基板152の長さにほぼ延在して、全てのLED160への共通接続部を基板152上にもたらし、この接続部に、LED160を作動させるための電気信号が送信される。導電体158は電気接触部158を有し、ここに、LED160を作動させるための電気信号が送信され、また、各接触部158は、対応するLED160に、導電体156により接続されている。
【0015】
縦糸における導電糸120と、横糸における機能糸150及び/又は導電糸との電気接続は、典型的な糸締り及び/又は糸密度を有する平織りにおけるこれらの糸の物理的接触により、これらの糸の機械的結合を全く有さずとも十分に形成される。或いは、各接続部158にて、物理的接触、例えば摩擦接触によりもたらされる電気接続を、機械的結合、例えば、導電性接着剤又ははんだのスポットにより補助してもよい。適切な電気接触のために、機能糸150は、機能糸150上の接触部158の各々が、機能糸が導電糸120と交差する位置にて導電糸120の下にあるように位置合わせされる。このために、機能糸150は、1以上の位置合わせマーク又は表示180を機能糸150の一端に含むことができ、これにより、織機は、織り工程にてこの位置を検知し、適切な位置合わせを行い得る。」

上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「導電糸120を縦糸に含み、且つ機能糸150を横糸に含む平織りの織物であって、
機能糸150は、電子絶縁基板152上に複数の導電体154,156,158及び電子装置160を含み、
電子装置160は、発光ダイオード(LED)160であり、
基板152は細長いストリップであり、
導電体154は基板152の長さにほぼ延在して、全てのLED160への共通接続部を基板152上にもたらし、
導電体158は電気接触部158を有し、対応するLED160に、導電体156により接続され、
縦糸における導電糸120と、横糸における機能糸150との電気接続が形成され、
機能糸150は、機能糸150上の接触部158の各々が、機能糸が導電糸120と交差する位置にて導電糸120の下にあるように位置合わせされる、
織物。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、以下の記載がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】可撓性に富む柔軟な面状基材に導電用細線を配設し、これらと連結され通電時発光する発光素子を一体的に設けてなる発光表示材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、織物や樹脂等柔軟な素材からなる衣服、旗、のれん、袋等の表面に配設し、そこで発光表示させることにより広告、ファッション、表示等の用に供する分野に利用できる。」

イ 「【0007】今1例として、図1に本材の平面(上面)概念図、図2に同側面(断面)概念図を示すが、夫々に設けられた破断線はその周縁を概念的に現わす。ここに発光素子(1)は例えばLED(発光ダイオード)とする場合、これに電力を供給するべき夫々一対の入力端子(図示しない)には一対の導電線が設けられこれと電気的に接合される。この導電線は縦列導電線(2)および横列導電線(3)の群として充填基材(4)と一体的に設けられる。具体的には前二者は十分に柔軟であり、後者が織物の場合は織り込まれたり樹脂の場合には包含されるが、夫々別途添着されることも可能である。なお、縦列導電線(2)および横列導電線(3)は図1のように夫々複数線が互いに平行に適当な間隔で並び、かつ図2のように異なる夫々の平面内に配設される。夫々は電気的に絶縁されている。また縦列導電線(2)と横列導電線(3)のなす角度は図1のように上面から見てほぼ直角でこの交点の夫々に発光素子(1)が適宜対応して設けられる。ここにこの発光素子(1)を密に置くほど画素が増加し表示効果能力が向上する。これの発光は外部に設けられる電源(図示しない)および制御装置(図示しない)により各々の導電線に適宜電力を印加することによりその交点上の発光素子(1)に通電され可能となる。この制御は基本的には液晶やELですでに用いられているPM(パッシヴマトリックス)制御とほぼ同様で、発光や表示のプログラム選択や変更など多様な制御が可能で、表示内容は色種、文字、動画あるいは静止画等自在に設定できる。なお、発光素子(1)はこの他に従来型の発光電球等を用いても同様である。被覆(5)は防水等必要に応じ設ける。」

上記ア、イより、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「可撓性に富む柔軟な面状基材に導電用細線を配設し、これらと連結され通電時発光する発光素子を一体的に設けてなる発光表示材であって、
織物や樹脂等柔軟な素材からなる衣服、旗、のれん、袋等の表面に配設し、
被覆を防水等必要に応じ設ける、発光表示材。」

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3の【特許請求の範囲】の【請求項1】には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

「衣服本体と、
前記衣服本体に取り付けられ、内部を光が伝導可能であり、かつ、所定の発光箇所で外部に発光することにより、前記衣服本体の一部からの発光を可能とするライトガイドと、
前記ライトガイド内部に前記光を供給する光供給手段と、
前記光供給手段を制御して、前記ライトガイドの前記所定の発光箇所から発せられる光量を制御し、前記衣服本体の所望の箇所から所望の発光量を得るための制御手段とを、
有する発光型衣服。」

2 対比・判断
(1)本願発明1
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「織物」と本願発明1の「布地を有する布地被覆構造体」とは、「布地を有する布地構造体」の点で共通する。
引用発明1の「電子絶縁基板152」は、基板表面を持つことは自明であるから、本願発明1の「基板表面を持つ基板」に相当する。
引用発明1の「発光ダイオード(LED)160」は「電子絶縁基板152上」にあるから、本願発明1の「基板表面に含まれる光源」に相当する。
引用発明1の「電子絶縁基板152」と、「電子絶縁基板152」上にある「発光ダイオード(LED)160」、「基板152の長さにほぼ延在して、全てのLED160への共通接続部を基板152上にもたらす導体154」、及び「対応するLED160に、導電体156により接続され、縦糸における導電糸120と、横糸における機能糸150との電気接続が形成される電気接触部158」は、本願発明の「布地構造体内に設けられた照明ユニット」に相当する。
引用発明1の「発光ダイオード(LED)160」を備える「織物」は、本願発明1の「照明機能を持つ布地製品」に相当する。

以上より、本願発明1と引用発明1とは、
「布地を有する布地構造体と、基板表面を持つ基板及び前記基板表面に含まれる光源を有する照明ユニットとを有し、前記照明ユニットは布地構造体内に設けられた、照明機能を持つ布地製品。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1は、「布地の第1の側に第1の布地被覆を持つ被覆布地構造体」を有し、照明ユニットは、「第1の布地被覆を通って光を供給するために前記被覆布地構造体」内に設けられているのに対し、引用発明1は、「布地の第1の側に第1の布地被覆」を持たず、「被覆布地構造体」を有しておらず、照明ユニットが「第1の布地被覆を通って光を供給するために前記被覆布地構造体」内に設けられていない点。

[相違点2]
本願発明1では、「基板表面は、導電コネクタ部分が電源に電気的に接続されるとき、光源に電力を供給する前記導電コネクタ部分を更に有する」のに対し、引用発明1では、「基板表面は、導電コネクタ部分が電源に電気的に接続されるとき、光源に電力を供給する前記導電コネクタ部分」を有しない点。

イ 判断
上記相違点1に先立ち、相違点2について検討する。
引用発明2は、相違点2に係る本願発明1の「導電コネクタ部分が電源に電気的に接続されるとき、前記光源に電力を供給する前記導電コネクタ部分」の発明特定事項を備えていない。また、当該発明特定事項が設計的事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は当該発明特定事項により「布地を任意の長さに切断可能にする」(本願の発明の詳細な説明【0011】)という、格別な効果を奏するものである。
したがって、引用発明2に基づいて、上記相違点2にかかる本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本願発明2、3、6ないし9、11、14について
平成29年2月21日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)によって、原査定時の請求項8は削除され、原査定時の請求項2、3、6、7、9、10、12、15は、本件補正後の請求項2、3、6ないし9、11、14にそれぞれ対応している。
本願発明2、3、6ないし9、11、14について検討すると、本願発明1同様、上記(1)アの相違点2に係る「基板表面は、導電コネクタ部分が電源に電気的に接続されるとき、前記光源に電力を供給する前記導電コネクタ部分を更に有する」との発明特定事項を備えている。
一方、引用発明2は、上記(1)イのとおり当該発明特定事項を備えていない。引用発明3についても、当該発明特定事項を備えていない。また、当該発明特定事項が設計的事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明2、3、6ないし9、11、14は上記(1)イのとおり格別な効果を奏するものである。
したがって、本願発明2、3、6ないし9、11、14は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 原査定の理由の判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
請求項8及び9には意味が不明な記載があるから、本願は特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない。

2 当審拒絶理由についての判断
本件補正によって、請求項8は削除され、また、請求項9の「(ガーデン)家具カバー」の記載が「家具カバー」に補正されて意味が明確となったため、当審拒絶理由は解消した。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2013-504372(P2013-504372)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G09F)
P 1 8・ 121- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 荒井 隆一砂川 充藤井 達也  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
植田 高盛
発明の名称 照明機能を持つ布地製品及びその製造のための方法  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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