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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1326436
審判番号 不服2016-4891  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-04 
確定日 2017-04-11 
事件の表示 特願2013-503972「POS(pointofsale)誘導性システムと方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月13日国際公開、WO2011/127334、平成25年 8月22日国内公表、特表2013-533522、請求項の数(40)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成23年4月8日(優先権主張 2010年4月8日 米国,2010年12月29日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年3月13日付けで拒絶理由通知がなされ,同年6月16日に手続補正がなされたが,同年12月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成28年4月4日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年4月4日の手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容

本件補正は,特許請求の範囲の請求項32を以下のように補正するものである(下線は,当審において付与した。)。

<補正前の請求項32>
「 POS(point of sale)ディスプレイによって支持され,一次タンク回路を含む誘導性リーダであって,
該誘導性リーダは,
(1)前記POS(point of sale)ディスプレイに,インピーダンス素子を有する誘導性回路を含む製品コンテナを追加することと,
(2)POS(point of sale)ディスプレイから,
前記誘導性リーダから分離されているインピーダンス素子を有する誘導性回路を含む複数の製品コンテナのうちの1つを除去することと,
の少なくとも1つに応じて,一次タンク回路において電力の特性の変化に対応する前記POS(point of sale)ディスプレイによってサポートされた複数の製品コンテナの累積反射インピーダンスにおける変化を検出するのに適合する,誘導性リーダを備える,POS(point of sale)ディスプレイの製品モニター・システム。」

<補正後の請求項32>
「 POS(pointofsale)ディスプレイにおける複数の製品コンテナの製品モニター・システムであって,
該複数の製品コンテナは,該複数の製品コンテナが,全体的に,累積的反射インピーダンスを規定するように,インピーダンス素子を有する誘導性回路を含み,
POS(pointofsale)ディスプレイによって支持され,一次タンク回路を含む誘導性リーダであって,
該誘導性リーダは,前記複数の製品コンテナからのデータ通信が存在せず,
(1)前記POS(pointofsale)ディスプレイにおける前記複数の製品コンテナに,インピーダンス素子を有する誘導性回路を含む製品コンテナを追加することと,
(2)POS(pointofsale)ディスプレイから,前記誘導性リーダから分離されているインピーダンス素子を有する誘導性回路を含む複数の製品コンテナのうちの1つを除去することと,の少なくとも1つに応じて,一次タンク回路において電力の特性の変化に対応する前記POS(point of sale)ディスプレイによってサポートされた{前記}複数の製品コンテナの累積反射インピーダンスにおける変化を検出するのに適合する,誘導性リーダを備える,製品モニター・システム。」

2.補正の適否

(1)補正事項について

本件補正は,請求項32において,次の補正をするものである。
ア.「POS(pointofsale)ディスプレイにおける複数の製品コンテナの製品モニター・システムであって,」の記載を追加すると共に,末尾に記載された「POS(point of sale)ディスプレイの製品モニター・システム」を「製品モニター・システム」とする補正。
イ.「該複数の製品コンテナは,該複数の製品コンテナが,全体的に,累積的反射インピーダンスを規定するように,インピーダンス素子を有する誘導性回路を含み,」の記載を追加する補正。
ウ.「該誘導性リーダは,」を「該誘導性リーダは,前記複数の製品コンテナからのデータ通信が存在せず,」とする補正。

前記ア.の補正は,実質,補正前の「製品モニター・システム」を,「複数の製品コンテナの製品モニター・システム」に限定するものである。
前記イ.の補正は,補正前の「複数の製品コンテナ」を,「全体的に,累積的反射インピーダンスを規定するように,インピーダンス素子を有する誘導性回路」を含む「複数の製品コンテナ」に限定するものである。
前記ウ.の補正は,補正前の「誘導性リーダ」を,「複数の製品コンテナからのデータ通信が存在」しないものに限定するものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項32に記載された発明(以下,「補正後の請求項32発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(2) 刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-115152号公報(以下,「引用文献5」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。


ア.「【0009】
本発明の目的は,前述の従来技術による不具合を除去することであり,顧客が商品を棚から取って戻す動作を検知すること,個々の商品毎の関心度の高さ(手に取られた時間の長さ)並びに購入された数量を分析すること,陳列棚のどの場所に陳列された商品が手に取られた/戻された/購入されたかの情報を収集することができること,商品の転倒等による誤検知を防止することの何れか1つ以上の機能を達成することができる商品陳列棚システム及び購買行動分析プログラムを提供することである。」

イ.「【0016】
本実施形態に適用されるRFIDタグRは,そのタグ固有に付与されたタグシリアル番号(UID)と,該タグシリアル番号のRFIDタグを貼り付ける製品毎に付与された製品コードと,該タグが再利用された回数とを記憶するメモリを格納し,外部からの磁界を受けることにより起電して任意のデータの送受信を行うものである。」

ウ.「【0017】
前記インテリジェント棚100の各棚に搭載される商品A?Cは,例えば図2に示す如く,その底面又は表面の一部にRFIDタグRが貼り付けられているものであり,例えば,これら商品を陳列する商品陳列棚110は,図3に示す如く,複数の仕切110dにより仕切られ,各部位に前記RFIDタグRとのデータの送受信を行うためのアンテナ112a?112cが内蔵された棚部110a?110cを一体的に構成し,各アンテナ112a?112cから信号線113が導出される様に構成されている。本実施形態による商品陳列棚110は,前記各々の棚部110a?110cに陳列された商品の底面又は表面の一部に貼られたRFIDタグRが所定領域(例えば30mm)以内に接近した状態にあるときにデータの交信を行うものであり,各棚部110a?110c間に配した仕切110dにより隣接する棚部と電波的に干渉しない様に構成されている。」

エ.「【0019】
また前記管理用コンピュータ200は,図4及び図5に示したRFIDタグ毎に登録した商品の経緯を登録したタグテーブル201と,複数のRFIDタグと該複数タグを貼り付けた商品との対応関係を登録したタグ-商品ID登録テーブル202とを格納し,前記インテリジェント棚100の各商品陳列棚110?130の各アンテナにより検出したRFIDタグの識別ID(タグシリアル番号)と,前記インテリジェント棚100の前面に配した複数の人体センサSから人体検出信号とを入力し,前記タグテーブル201及び202を参照して前記インテリジェント棚/商品陳列棚/該商品陳列棚のアンテナ毎に配置された商品の取り出し/戻しや顧客の動き等の各種情報を収集するものである。」

オ.「【0026】
この状態において本実施形態による商品陳列棚システムは,例えばインテリジェント棚100の各商品陳列棚120の左/中央/右に配した各アンテナ112a?112cが,個々のアンテナ112a?112c上に陳列された商品A?CのRFIDタグRと交信し,この交信により得たRFIDタグRのタグシリアル番号(UID)を切替器151により切り替えてリーダライタ152を介して管理用コンピュータ200に送信する。
【0027】
この送信を受けた管理用コンピュータ200は,RFIDタグRのタグシリアル番号(UID)並びに送信を受けたアンテナを基に,タグ-商品ID登録テーブル202を参照し,どの商品が,どの棚の何段目のどの位置(左/中央/右)に置かれたかを認識して図示しない記憶装置に格納する。
【0028】
この状態で,棚から商品が顧客の手に取られた場合,本システムは,アンテナがRFIDタグRからの交信が途絶えることによって,どの商品がどの棚の何段目のどの位置(左/中央/右)から取られたかを検知し,これら情報並びにその時刻を記憶する。更に本システムは,その手に取られた商品が同一棚に返却された場合,再度,アンテナが同一のRFIDタグRとの交信が再開されることによって,同一商品が戻されたことを検知することができる。特に本実施形態においては,個々の商品に貼られたRFIDタグR固有のタグシリアル番号をアンテナ毎に検出するため,商品種に限らず,個々の商品が棚から取られたこと(離れたこと)を記憶することができる。」

前記ア.?オ.によれば,引用文献5には次の発明(以下,「引用文献5発明」という。)が記載されている。

<引用文献5発明>
「陳列棚のどの場所に陳列された商品が手に取られた/戻された/購入されたかの情報を収集することができる商品陳列棚システムであって(【0009】),
インテリジェント棚100の各棚に搭載される商品は,RFIDタグRが貼り付けられ(【0017】),
当該RFIDタグRは,そのタグ固有に付与されたタグシリアル番号(UID)をメモリに格納し,外部からの磁界を受けることにより起電して任意のデータの送受信を行い(【0016】),
これら商品を陳列する商品陳列棚110は,各部位に前記RFIDタグRとのデータの送受信を行うためのアンテナ112a?112cが内蔵された棚部110a?110cを一体的に構成し(【0017】),
商品陳列棚110は,陳列された商品のRFIDタグRが所定領域以内に接近した状態にあるときにデータの交信を行い(【0017】),この交信により得たRFIDタグRのタグシリアル番号(UID)は,リーダライタ152を介して,管理用コンピュータ200に送信され(【0026】),
この送信を受けた管理用コンピュータ200は,RFIDタグRのタグシリアル番号(UID)並びに送信を受けたアンテナを基に,どの商品がどの棚の何段目のどの位置に置かれたかを認識して記憶装置に格納し(【0027】),棚から商品が顧客の手に取られた場合,アンテナとRFIDタグRとの交信が途絶えることによって,どの商品が取られたかを検知し,これら情報並びにその時刻を記憶し(【0028】),その手に取られた商品が同一棚に返却された場合,再度,アンテナと同一のRFIDタグRとの交信が再開されることによって,同一商品が戻されたことを検知し(【0028】),商品の取り出し/戻しの情報を収集する(【0019】),
商品陳列棚システム。」

(3) 対比

補正後の請求項32発明は,製品コンテナが「累積的反射インピーダンスを規定するように,インピーダンス素子を有する誘導性回路」を含む。
これに対し,引用文献5発明の商品には,「タグ固有に付与されたタグシリアル番号(UID)をメモリを格納し,外部からの磁界を受けることにより起電して任意のデータの送受信」するRFIDタグが貼り付けられているにすぎず,このRFIDタグは,累積的反射インピーダンスを規定するものでも,そのためのインピーダンス素子を有するものでもない。
したがって,引用例5発明は,補正後の請求項32発明に係る「累積的反射インピーダンスを規定するように,インピーダンス素子を有する誘導性回路」を含んでいない。
また,補正後の請求項32発明は,「一次タンク回路において電力の特性の変化に対応する前記POS(point of sale)ディスプレイによってサポートされた{前記}複数の製品コンテナの累積反射インピーダンスにおける変化を検出するのに適合する,誘導性リーダを備える」ものである。
これに対し,引用文献5発明のアンテナ及びリーダライタ152は,タグシリアル番号(UID)を伝送する電波(RF)を受信するものであって,上記のような複数の製品コンテナの累積反射インピーダンスにおける変化を検出するものではない。
したがって,引用文献5発明は,補正後の請求項32発明に係る上記誘導性回路及び上記誘導性リーダを有しておらず,補正後の請求項32発明は,引用文献5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび

本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明

本件補正は上記のとおり,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから,本願の請求項1?40に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?40に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そのうち,本願の請求項1に係る発明(以下,「請求項1発明」という。)は,以下のとおりである。

「【請求項1】
時間変動電磁場を生成するのに適合した誘導性リーダを使用するための製品センサであって,
該製品センサは,製品のための格納デバイスと,前記誘導性リーダから分離され,該格納デバイスによって支持され,可変インピーダンス素子に電気的に結合された二次コイルを含む製品センサ回路と,
前記時間変動電磁場に応じて,前記製品を加熱するのに適している加熱素子と,
を備え,
前記可変インピーダンス素子のインピーダンスは,前記製品の特性に比例して変動し,
前記製品センサ回路は,前記可変インピーダンス素子のインピーダンスの関数として変動する反射インピーダンスを有し,前記時間変動電磁場に応じて,前記製品の特性を,前記製品センサ回路の前記反射インピーダンスに基づいて,前記誘導性リーダにより,遠隔で決定できるようになっている,製品センサ。」

第4 原査定の理由の概要

この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-144683号公報
2.特開平07-139991号公報
3.特開2000-190457号公報
4.国際公開第2009/143334号
5.特開2007-115152号公報

・請求項1,2,5-16,19,20,22-31
・引用文献1,4
引用文献4(特に,第2頁第3?9行参照)に開示された技術を引用文献1記載の発明に適用して,引用文献1記載の発明においても,電磁誘導により加熱される加熱素子を有するようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

・請求項3,17
・引用文献1,2,4
引用文献2には,検出対象荷重に応じてコイルのインピーダンスを変化させる技術が開示されていることから,この技術を引用文献1記載の発明に適用して,温度センサに換えて検出対象荷重に応じてコイルのインピーダンスを変化させるものを用いることにより,重量を測定することは容易に想到し得たことである。

・請求項4,18,21
・引用文献1.3,4
引用文献3には,容器12内の液量に応じて,静電容量が変化するコンデンサCを第2コイル22に接続することにより,液体の量を検出する技術が開示されていることから,この技術を引用文献1記載の発明に適用して,引用文献1記載の発明においても,温度に依存して容量が変化するコンデンサCに換えて,液量に応じて静電容量が変化するコンデンサを用いることにより,液量を測定するようにすることは容易に想到し得たことである。

・請求項32-40
・引用文献5
引用文献5記載の商品陳列棚システムにおいて,RFIDタグRからの情報の受信は,アンテナ112a?112cの電力の特性の変化を検出することにより行われている。引用文献5記載の発明においても,タンク回路とインピーダンス素子を用いるようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

第4 当審の判断

1.刊行物の記載事項

(1)特開2004-144683号公報

原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-144683号公報(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

ア.「【0016】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は,実施の形態1における温度測定システム1を保冷箱又は保温箱に適用した場合の全体構成を示す図である。
同図のように,温度測定システム1は温度測定装置10と温度センサ50とから構成され,本体5と蓋6とからなり保冷及び保温作用を有する保冷箱4に対して蓋6の裏側に温度センサ50が貼り付けられている。保冷箱4には,例えば,ビール,ジュースなどの飲料水や野菜,肉,魚などの保冷すべき生鮮食料品,冷凍食品,暖かい弁当,熱々の麺類や焼きたてのピザなどの保温すべき食料品等が収められる。
【0017】
温度センサ50は,アンテナコイルLと,このアンテナコイルLに並列に接続されるコンデンサCとからなる共振回路を備える無線タグであって,温度に依存して共振周波数が変化する構成となっている。
【0018】
温度測定装置10は,温度センサ50に対して温度を測定するための電波を出射し,電波による電磁誘導によって非接触で温度センサ50の共振回路を共振させ,その共振周波数の値によって温度センサ50の温度を測定する。」

イ.「【0026】・・・(中略)・・・この共振回路は,温度に応じてコンデンサCの容量が変化することから,温度に応じて共振周波数も変化する。」

ウ.「【0033】
温度測定装置10は,大きく分けて入出力部20とコントロール部30とアンテナ部40とからなる。
・・・(中略)・・・
【0034】
コントロール部30は,その内部にプログラムを予め格納したROM,操作部21に操作されたボタン種別などのデータを一時的に保持するメモリ,プログラム実行時のワークエリアを提供するメモリ,時刻を計時するタイマ,プログラムを実行するCPU等により1チップで構成されるマイコン部31と,D/A変換部32と,印加電圧に応じた発振周波数の高周波信号を出力する発振器であるVCO(Voltage-Controled Oscillator)33と,アンテナ部40によって受信された電波を復調する復調部34と,A/D変換部35と,温度センサ50の周波数対温度特性を示す温度テーブル36aと,温度の履歴を格納するための履歴テーブル36bなどを記憶する不揮発性メモリ36とを備える。
【0035】
アンテナ部40は,VCO33から出力された信号を増幅する増幅器41と,増幅器41によって増幅された信号を出射する送信用アンテナコイル42と,温度センサ50から電波を受信する受信用アンテナコイル43と,受信用アンテナコイル43によって受信された電気信号を増幅する増幅器44とを備える。」

エ.「【0040】
現在温度Tcの測定処理は,図11に示すサブルーチンに従ってなされる。同図において,マイコン部31は,D/A変換部32を介してVCO33に与える電圧を徐々に変化させることにより,送信用アンテナコイル42から出射される検知電波の周波数をスイープさせ(S120),受信用アンテナコイル43によって受信された電波の受信レベルが最低となるときの周波数を特定し(S121,図12(a)参照),温度テーブル36aから特定された周波数に対応する温度を読み出して現在の温度Tcとする(S122)。」

前記ア.?エ.によれば,引用文献1には次の発明(以下,「引用文献1発明」という。)が記載されている。

<引用文献1発明>
「温度測定装置10と温度センサ50とから構成され(【0016】),
温度センサ50は,保冷箱4に対して蓋6の裏側に貼り付けられ(【0016】),
保冷箱4には,ビール,ジュースなどなどの飲料水や冷凍食品,暖かい弁当などの保温すべき食料品等が収められ(【0016】),
温度センサ50は,アンテナコイルLと,このアンテナコイルLに並列に接続されるコンデンサCとからなる共振回路を備える無線タグであって(【0017】),温度に応じてコンデンサCの容量が変化することから,温度に依存して共振周波数が変化し(【0026】),
温度測定装置10は,印加電圧に応じた発振周波数の高周波信号を出力する発振器であるVCO33と,温度センサ50の周波数対温度特性を示す温度テーブル36aと,送信用アンテナコイル42と,温度センサ50から電波を受信する受信用アンテナコイル43とを備え(【0034】【0035】),
VCO33に与える電圧を徐々に変化させることにより,送信用アンテナコイル42から出射される検知電波の周波数をスイープさせ,電波による電磁誘導によって非接触で温度センサ50の共振回路を共振させ,受信用アンテナコイル43によって受信された電波の受信レベルが最低となるときの周波数を特定し,温度テーブル36aから特定された周波数に対応する温度を読み出して現在の温度Tcとする(【0040】),温度測定システム1。」

(2)特開平07-139991号公報

原査定の拒絶の理由に引用された特開平07-139991号公報(以下,「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

「【0016】図1に示す荷重検出装置1は,回路基板2と,この回路基板2の一方の表面に設けられたコイル3と,このコイル3に検出対象荷重Fの作用方向に関し間隔をおいて対向する磁性体4と,その回路基板2と磁性体4との間に間に介在するバネ5とを備える。その回路基板2上には,コイル3を励磁する発振回路(図示省略)とコイル3の荷重検出回路(図示省略)とが形成されている。その磁性体4に検出対象荷重Fが作用することでバネ5が弾性変形し,その検出対象荷重Fに比例した距離だけ磁性体4はコイル3に対し移動する。
【0017】そのコイル3は,回路基板2の一方の表面上で導線を渦巻き状に巻くことにより構成され,コイル3を構成する導線の外周側端部3aが回路基板2上の荷重検出回路に接続され,内周側端部3bから引き出された信号線6が回路基板2上の発振回路に接続される。その発信回路からコイル3に交流電圧が印加され,そのコイル3の出力電圧が荷重検出回路に入力される。その検出回路の出力は,例えば荷重表示装置や荷重制御回路に送られ,検出荷重の表示やトラッククレーンにおけるブームの伸縮制御等が行なわれる。
【0018】上記構成によれば,コイル3と磁性体4との対向間隔が検出対象荷重に比例した距離だけ変化すると,交流電圧により励磁されたコイル3のインピーダンスおよび磁気抵抗が変化するため,そのインピーダンスあるいは磁気抵抗に対応するコイル3の出力を測定することで,検出対象荷重を求めることができる。そのコイル3は回路基板2の一面上で導線を渦巻き状に巻くことにより構成されているので,コイルインダクタンスを小さくすることなく検出対象荷重の作用方向に関する寸法を極めて小さくできる。」

上記記載によれば,引用文献2には,次の発明(以下,「引用文献2発明」という。)が記載されている。

<引用文献2発明>
「回路基板2と,この回路基板2の一方の表面に設けられたコイル3と,このコイル3に検出対象荷重Fの作用方向に関し間隔をおいて対向する磁性体4と,その回路基板2と磁性体4との間に間に介在するバネ5とを備え(【0016】),
コイル3を構成する導線の外周側端部3aが回路基板2上の荷重検出回路に接続され,内周側端部3bから引き出された信号線6が回路基板2上の発振回路に接続され,その発信回路からコイル3に交流電圧が印加され,そのコイル3の出力電圧が荷重検出回路に入力され(【0017】),
コイル3と磁性体4との対向間隔が検出対象荷重に比例した距離だけ変化すると,交流電圧により励磁されたコイル3のインピーダンスおよび磁気抵抗が変化するため,そのインピーダンスあるいは磁気抵抗に対応するコイル3の出力を測定することで,検出対象荷重を求める(【0018】),荷重検出装置1。」

(3)特開2000-190457号公報

原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-190457号公報(以下,「引用文献3」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,容器内の液量,例えば印刷機のインクの残量を検出する方法及びその装置に関するものである。」

イ.「【0011】・・・(中略)・・・また容器12はボール紙により直方体状に形成されたボール箱13(図1及び図3?図5)と,この箱13に収容された塩化ビニル製の袋14(図3及び図4)とを有し,インク11は袋14に貯留される。」

ウ.「【0012】図1及び図2に詳しく示すように,ボール箱13には共振回路17が設けられる。この共振回路17はボール箱13の周面及び底面にそれぞれ設けられた一対の電極18と,一対の電極18の一方の電極18aに接続された第1コイル21と,一対の電極18の他方の電極18bに接続された第2コイル22とを備える。一方の電極18aはボール箱13の一方の側壁13a内面の下部に設けられ,他方の電極18bはボール箱13の底壁13c上面に一方の側壁13aに接近して設けられる(図1)。上記電極18と容器12に貯留されたインク11とによりコンデンサが構成され,容器12に貯留されたインク11の量が変化することによりこのコンデンサの静電容量C及び共振回路のQ値(Q値は高周波回路においてコイルやコンデンサの抵抗損失分が少ないことを表す値であり,電圧拡大率とも呼ばれる。)が変化するように構成される。第1コイル21はボール箱13の他方の側壁13b内面にボール箱13外方の励磁コイル23(図2及び図5)に対向して設けられ,第2コイル22はボール箱13の他方の側壁13b内面にボール箱13外方の検出コイル24(図2及び図5)に対向して設けられる。・・・(中略)・・・
【0013】一方の電極18aは第1コイル21の一端に電気的に接続され,他方の電極18bは第2コイル22の一端に電気的に接続され,更に第1コイル21の他端は第2コイル22の他端に電気的に接続される(図2)。・・・(中略)・・・
【0014】また励磁コイル23は所定の周波数の電圧を発生する高周波電源27に電気的に接続され,検出コイル24には電圧計28及びコントローラ29を介して警報手段31が電気的に接続される(図2)。高周波電源27の発生する電圧の周波数は検出コイル24に誘導される電圧が容器12内にインク11の十分にある場合の方が容器12内にインク11の無い場合より高くかつその差が大きく,しかも容器12内のインク11が無くなりかけたときに共振回路17が共振する周波数に近い周波数に設定される。・・・(中略)・・・
【0015】上記電圧計28は検出コイル24に誘導された電圧を検出し,警報手段31は警報ブザー及び警報ランプのいずれか一方又は双方により構成される。具体的には電圧計28の検出出力がコントローラ29の制御入力に接続され,コントローラ29の制御出力が警報手段31に接続され,コントローラ29は電圧計28の検出出力に基づいて警報手段31を制御するように構成される(図2)。即ち,コントローラ29は検出コイル24の検出する電圧が所定値未満になったときに警報手段31を作動させるように構成される。またコントローラ29は低耐圧コンデンサ26が破壊して上記所定値より更に低い所定の電圧を検出したとき印刷機10を停止させるように構成される。なお,上記警報ランプは印刷機10の操作パネル10f(図5)に表された文字等の表示装置(図示せず)であってもよい。
【0016】このように構成された容器12内のインク11量の検出装置の動作を説明する。高周波電源27により発生された所定の周波数の電圧は励磁コイル23に印加される。この励磁コイル23に印加された所定の周波数の電圧は第1コイル21に誘導され,共振回路17に高周波電流が流れる。この高周波電流により第2コイル22に所定の周波数の電圧が印加され,この第2コイル22に印加された所定の周波数の電圧が検出コイル24に誘導される。この検出コイル24に誘導された所定の周波数の電圧が電圧計28により検出される。この電圧計28の検出出力はコントローラ29に入力される。印刷機10を稼働して,容器12内のインク11が所定量以上あるときには,検出コイル24に誘導される電圧が所定値以上であるので,コントローラ29は警報手段31を作動させない。
【0017】容器12内のインク11が所定量未満になると,検出コイル24に誘導される電圧が所定値未満になるので,コントローラ29は電圧計28の検出出力に基づいて警報手段31を作動させる。この結果,作業者はこの警報により容器12内のインク11が残り僅かであることを知ることができ,インク11残量の少ない容器12をインク11の十分に貯留された新しい容器12と交換する準備を前もって行うことができる。なお,容器12内のインク11量が所定量未満になると,検出コイル24に誘導される電圧が所定値未満になるのは,容器12内のインク11の量が減って一対の電極18間に発生する電気力線がインク11中ではなく空気中を通過するようになり,一対の電極18の静電容量が小さくなって共振回路17の共振周波数が高くなる方向に移行するためである(図14及び図15)。」

前記ア.?ウ.によれば,引用文献3には,次の発明(以下,「引用文献3発明」という。)が記載されている。

<引用文献3発明>
「容器内のインクの残量を検出する装置であって(【0001】),
容器12は,直方体状に形成されたボール箱13と,このボール箱13に収容され,インク11を貯留した袋14とを有し(【0011】),
共振回路17がボール箱13に設けられ,この共振回路17はボール箱13の周面及び底面にそれぞれ設けられた一対の電極18a,18bと,第1コイル21と,第2コイル22とを備え(【0012】),一対の電極18a,18bと容器12に貯留されたインク11とによりコンデンサが構成され,インク11の量が変化することによりコンデンサの静電容量C及び共振回路のQ値が変化するように構成され(【0012】),
励磁コイル23が,第1コイル21に対向して設けられ(【0012】),励磁コイル23は所定の周波数の電圧を発生する高周波電源27に接続され(【0014】),励磁コイル23に印加された所定の周波数の電圧は,第1コイル21に誘導されて共振回路17に高周波電流が流れ(【0016】),
高周波電源27の発生する電圧の周波数は,容器12内のインク11が無くなりかけたときに共振回路17が共振する周波数に近い周波数に設定され(【0014】),
検出コイル24が,第2コイル22に対向して設けられ(【0012】),第2コイル22に印加された所定の周波数の電圧が検出コイル24に誘導され(【0016】),
検出コイル24には電圧計28及びコントローラ29を介して警報手段31が接続され(【0014】),
電圧計28は,検出コイル24に誘導された電圧を検出し(【0015】),
コントローラ29は,容器12内のインク11が所定量未満になると,検出コイル24に誘導される電圧が所定値未満になるので,検出された電圧が所定値未満になったときに警報手段31を作動させる(【0015】【0017】),装置。」

(4)国際公開第2009/143334号

原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/143334号(以下,「引用文献4」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

ア.「An inductively-heated applicator system in accordance with an embodiment of the present invention is shown in Figs. 1-3. The applicator system 10 generally includes a heating module 12 and an applicator 14. The heating module 12 includes circuitry 16 for generating a varying electromagnetic field. The circuitry 16 may include a primary 18 for generating the electromagnetic field. The heating module 12 may also include a dock 43 for removably retaining the applicator 14 in the presence of the electromagnetic field. The heating module 12 may include a magnet 44, or other retaining mechanism to assist in retaining the applicator 14. The applicator 14 includes a dispensing system, an applicator system and a heating element 22. The heating element 22 may be independent or part of the dispensing or applicator system. In the illustrated embodiment, the heating element 22 is a roller element that is inductively heated when positioned within the electromagnetic field. In an alternative embodiment the heating element 22 may be conductive tip 86 attached to the end of the applicator 14, as shown in Fig. 8. The applicator system 12 may include temperature monitoring circuitry for monitoring the heating element 22 and providing feedback to the applicator system 10 to control the temperature of the heating element 22. 」(5ページ9行?23行)
(当審訳:「本発明の一実施の形態による誘導加熱アプリケータシステムを図1?3に示す。アプリケータシステム10は,一般的に,加熱モジュール12及びアプリケータ14を有する。加熱モジュール12は,変動電磁界を生成する回路16を有する。回路16は,電磁界を生成する1次回路18を有することができる。加熱モジュール12は,電磁界の存在の下でアプリケータ14を取り外し自在に保持するドック43を有することもできる。加熱モジュール12は,アプリケータ14を保持するのを助ける磁石44又は他の保持機構を有することができる。アプリケータ14は,ディスペンサーシステム,アプリケータシステム及び加熱素子22を有する。加熱素子22は,ディスペンサーシステム若しくはアプリケータシステムから独立し又はディスペンサーシステム若しくはアプリケータシステムの一部となることができる。図示した実施の形態において,加熱素子22を,電磁界内に配置されたときに誘導的に加熱されるローラ要素とする。他の実施の形態において,加熱素子22を,図8に示すように,アプリケータ14の先端に取り付けられた導電性チップ86とすることができる。アプリケータシステム12は,加熱素子22の温度を制御するために加熱素子22を監視するとともにアプリケータシステム10にフィードバックを提供する温度監視回路を有することができる。」)

イ.「The circuitry 16 may include a temperature monitoring subcircuit 34 having one or more temperature sensors to control the applicator 14 temperature. In the illustrated embodiment, temperature sensor 130 provides the controller 36 with a signal indicative of the temperature of the applicator 14 for temperature control purposes and an over-temperature sensor 133 to shut down the half-bridge driver 102 if the applicator 14 exceeds a maximum temperature. The temperature sensor 130 may be a temperature- to- voltage converter, such as the TCl 047 A available from Microchip Technology Inc. 」(9ページ1行?7行)
(当審訳:「 回路16は,アプリケータ14の温度を制御するために1個以上の温度センサを有する温度監視サブ回路34を有することができる。図示した実施の形態において,温度センサ130は,温度制御のために,アプリケータ14の温度を表す信号をコントローラ36に供給し,過熱防止(over-temperature)センサ133は,アプリケータ14が最大温度を超える場合にハーフブリッジドライバ102をシャットダウンする。温度センサ130を,マイクロチップテクノロジー社から市販されているTC1047のような温度-電圧コンバータとすることができる。」)

前記ア.イ.によれば,引用文献4には次の発明(以下,「引用文献4発明」という。)が記載されている。

<引用文献4発明>
「加熱モジュール12及びアプリケータ14を有するアプリケータシステム10であって,
前記加熱モジュール12は,回路16と,アプリケータ14を保持する磁石44又は他の保持機構とを有し,
前記回路16は,変動電磁界を生成する1次回路18と,加熱素子22の温度を制御するための,温度センサを有する温度監視サブ回路34とを有し,前記温度センサ130は温度-電圧コンバータであり,
前記アプリケータ14は,ディスペンサーシステム及び加熱素子22を有し,前記加熱素子22は,前記変動電磁界内に配置されたときに誘導的に加熱される,
アプリケータシステム10。」

2.対比

次に,請求項1発明と引用文献1発明とを対比する。

・引用文献1発明の温度測定装置は,送信用アンテナコイルから出射される検知電波の周波数をスイープさせることから,「時間変動電磁場を生成する」ものである。
また,温度測定装置10は,電波による電磁誘導によって非接触で温度センサ50の共振回路を共振させることから「誘導性」の装置ということができ,また,受信用アンテナコイルによって受信された電波の受信レベルが最低となるときの周波数を特定することから,温度センサの共振状態を取得する「リーダ」である。
したがって,引用文献1発明の温度測定装置は,請求項1発明の「時間変動電磁場を生成するのに適合した誘導性リーダ」に相当する。

・引用文献1発明の「温度センサ50」と,請求項1発明の「時間変動電磁場を生成するのに適合した誘導性リーダを使用するための製品センサ」は,「時間変動電磁場を生成するのに適合した誘導性リーダを使用するためのセンサ」の点で共通する。

・引用文献1発明の「ビール,ジュースなどなどの飲料水や冷凍食品,暖かい弁当などの保温すべき食料品等が収められ」る「保冷箱」と,請求項1発明の「製品のための格納デバイス」は,「格納デバイス」の点で共通する。

・引用文献1発明の「温度センサ」は,「保冷箱」の蓋の裏側に貼り付けられるもので,温度測定装置とは分離されており,また,アンテナコイルとコンデンサCとからなる共振回路を備える。このコンデンサは温度に応じての容量が変化することから可変インピーダンス素子である。また,「温度センサ」のアンテナコイルは,温度測定装置の送信用アンテナコイル(一次コイル)に対する二次コイルに相当する。
したがって,引用文献1発明の「温度センサ」及び「保冷箱」と,請求項1発明の「該製品センサは,製品のための格納デバイスと,前記誘導性リーダから分離され,該格納デバイスによって支持され,可変インピーダンス素子に電気的に結合された二次コイルを含む製品センサ回路と,前記時間変動電磁場に応じて,前記製品を加熱するのに適している加熱素子と,を備え」は,「該センサは,格納デバイスと,前記誘導性リーダから分離され,該格納デバイスによって支持され,可変インピーダンス素子に電気的に結合された二次コイルを含むセンサ回路と,を備え」の点で共通する。

・引用文献1発明の「コンデンサ」は,温度に応じての容量が変化することから,そのインピーダンスは保冷箱の温度特性に比例して変動するといえる。
したがって,引用文献1発明における,「コンデンサ」の容量が保冷箱の温度に応じて変化することと,請求項1発明の「前記可変インピーダンス素子のインピーダンスは,前記製品の特性に比例して変動し」は,「前記可変インピーダンス素子のインピーダンスは,特性に比例して変動し」の点で共通する。

・引用文献1発明の「受信用アンテナコイル43によって受信された電波の受信レベルが最低となるときの周波数を特定し」は,検知電波の周波数が共振回路の共振周波数と一致したときに,共振回路の反射インピーダンスが低下し,これにより検知電波の送信レベルが低下する現象(すなわち,ディップ(dip))を測定するものであることは,共振周波数の測定技術における技術常識であり,その反射インピーダンスが,「コンデンサ」のインピーダンスの関数として変動することも技術常識である。
したがって,引用文献1発明の共振回路と,請求項1発明の「前記製品センサ回路は,前記可変インピーダンス素子のインピーダンスの関数として変動する反射インピーダンスを有し」は,「前記センサ回路は,前記可変インピーダンス素子のインピーダンスの関数として変動する反射インピーダンスを有し」の点で共通する。

・引用文献1発明の「VCO33に与える電圧を徐々に変化させることにより,送信用アンテナコイル42から出射される検知電波の周波数をスイープさせ,電波による電磁誘導によって非接触で温度センサ50の共振回路を共振させ,受信用アンテナコイル43によって受信された電波の受信レベルが最低となるときの周波数を特定し,温度テーブル36aから特定された周波数に対応する温度を読み出して現在の温度Tcとする」は,「検知電波」という時間変動電磁場に応じて,「温度」という特性を,共振回路の反射インピーダンスに基づいて,「温度測定装置」という誘導性リーダにより決定できるようになっているといえる。
また,温度測定装置は,「電波による電磁誘導によって非接触で温度センサ50の共振回路を共振させ,受信用アンテナコイル43によって受信された電波の受信レベルが最低となるときの周波数を特定」するから,温度センサ50に対して遠隔(リモート)装置であり,温度を,温度センサから遠隔で決定するものである。
したがって,引用文献1発明の上記構成と,請求項1発明の「前記時間変動電磁場に応じて,前記製品の特性を,前記製品センサ回路の前記反射インピーダンスに基づいて,前記誘導性リーダにより,遠隔で決定できるようになっている」は,「前記時間変動電磁場に応じて,特性を,前記センサ回路の前記反射インピーダンスに基づいて,前記誘導性リーダにより,遠隔で決定できるようになっている」の点で共通する。

したがって,請求項1発明と引用文献1発明の一致点,相違点は次のとおりである。

<一致点>
「時間変動電磁場を生成するのに適合した誘導性リーダを使用するためのセンサであって,
該センサは,格納デバイスと,前記誘導性リーダから分離され,該格納デバイスによって支持され,可変インピーダンス素子に電気的に結合された二次コイルを含むセンサ回路と,
を備え,
前記可変インピーダンス素子のインピーダンスは,特性に比例して変動し,
前記センサ回路は,前記可変インピーダンス素子のインピーダンスの関数として変動する反射インピーダンスを有し,前記時間変動電磁場に応じて,特性を,前記センサ回路の前記反射インピーダンスに基づいて,前記誘導性リーダにより,遠隔で決定できるようになっている,センサ。」

<相違点1>
センサが,請求項1発明では「製品センサ」であるのに対し,引用文献1発明では「保冷箱4に対して蓋6の裏側に貼り付けられ」た温度センサである点。

<相違点2>
格納デバイスが,請求項1発明では「製品のための格納デバイス」であるのに対し,引用文献1発明では「保冷箱」である点。

<相違点3>
特性が,請求項1発明では「製品の特性」であるのに対し,引用文献1発明では「保冷箱」の温度である点。

<相違点4>
請求項1発明は,「前記時間変動電磁場に応じて,前記製品を加熱するのに適している加熱素子」を備えるのに対し,引用文献1発明は上記加熱素子を備えていない点。

3.判断

上記相違点1?4について検討する。

(1)相違点1?3について

製品を保冷,保温する箱は,例えば,アイスクリームを収容した発泡スチロール(ポリスチレンフォーム)の保冷箱のように周知であるから,引用発明において,保冷箱を製品の保冷箱とすることは格別困難ではない。その場合,保冷箱は製品コンテナということができ,センサは製品センサということができ,保冷箱の温度は製品の特性ということができる。
してみると,引用発明において,保冷箱を,周知の製品の保冷箱とすることにより,相違点1?3に係る構成とすることは容易に想到し得ることである。

(2)相違点4について

請求項1発明の加熱素子は,誘導性リーダによって生成される時間変動電磁場に応じて,製品を加熱する。
これに対し,引用文献4発明の加熱素子は,加熱モジュールによって生成された変動電磁界によって加熱されるものであって,その変動電磁界は,誘導性リーダによって生成されたものではない。
したがって,引用文献1発明の保冷箱に引用文献4発明の加熱素子を付加したとしても,温度測定装置とは別に引用文献4発明の加熱モジュールを設け,その加熱モジュールによって生成された時間変動電磁場によって加熱素子を加熱することが想到されるだけであり,共振周波数を検出する目的で生成された温度測定装置の電波を,使用目的が全く異なる加熱電力供給にも利用することは容易に想到し得ない。
したがって,誘導性リーダによって生成された時間変動電磁場を加熱にも利用して,上記加熱素子を,誘導性リーダによって生成された時間変動電磁場に応じて,製品を加熱するのに適している加熱素子とすることは,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また,「前記時間変動電磁場に応じて,前記製品を加熱するのに適している加熱素子」は,引用文献2,3にも,記載も示唆もされていない。
よって,請求項1発明は,引用文献1発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

本願の請求項2,5?14に係る発明は,請求項1発明を更に限定したものであるから,引用文献1発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項3に係る発明は,請求項1発明を更に限定したものであり,上記加熱素子は引用文献2にも記載されていないから,引用文献1発明,引用文献2発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項4に係る発明は,請求項1発明を更に限定したものであり,上記加熱素子は引用文献3にも記載されていないから,引用文献1発明,引用文献3発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項15に係る発明は,誘導性リーダによって生成される「前記時間変動電磁場に応じて,前記製品を加熱するのに適している加熱素子」を含む製品センサーシステムであるから,請求項1発明と同様に,引用文献1発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項16,19,20,22?27に係る発明は,請求項15に係る発明を更に限定したものであるから,引用文献1発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項17に係る発明は,請求項15に係る発明を更に限定したものであり,上記加熱素子は引用文献2にも記載されていないから,引用文献1発明,引用文献2発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項18,21に係る発明は,請求項15に係る発明を更に限定したものであり,上記加熱素子は引用文献3にも記載されていないから,引用文献1発明,引用文献3発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項28に係る発明は,誘導性リーダの「時間変動電磁場に応じて,前記製品を加熱するのに適している加熱素子を提供するステップ」を含む方法であるから,請求項1発明と同様に,引用文献1発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項29?31に係る発明は,請求項28に係る発明を更に限定したものであるから,引用文献1発明及び引用文献4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項32に係る発明は,前記「第2 平成28年4月4日の手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否」において検討したとおり,引用文献5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項33?40の係る発明は,請求項32に係る発明を更に限定したものであるから,請求項32と同様に,引用文献5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび

以上のとおり,本願の請求項1?40に係る発明は,いずれも,当業者が引用文献1発明?引用文献5発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-27 
出願番号 特願2013-503972(P2013-503972)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保 正典  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 手島 聖治
相崎 裕恒
発明の名称 POS(pointofsale)誘導性システムと方法  
代理人 森 啓  
代理人 榎原 正巳  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  

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