• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1326517
審判番号 不服2016-7895  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-30 
確定日 2017-04-11 
事件の表示 特願2013-164231「端末装置、エネルギーマネジメントシステム、表示制御方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月19日出願公開、特開2015- 35009、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成25年8月7日を出願日とする出願であって,平成26年10月29日付けで拒絶理由通知がなされ,同年12月26日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成27年8月19日付けで拒絶理由通知がなされ,同年10月21日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが,平成28年3月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年5月30日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成28年5月30日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否
1.本件補正後及び本件補正前の特許請求の範囲
(本件補正後)
「【請求項1】
宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部と,
第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部と,
を備え,
前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する,
端末装置。
【請求項2】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,前記特定の機器の動作状態を示す情報が含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記特定の機器の動作状態を示す情報を表示し,前記第2の表示領域に,前記特定の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,ユーザによって設定された日時に前記特定の機器に所定の動作をさせるスケジュールが含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記スケジュールを表示し,前記第2の表示領域に,前記スケジュールによって設定された動作が行われる前記特定の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,前記複数の機器に一括して動作させる情報が含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記複数の機器に一括して動作させる指示をユーザから受け付けるボタンを表示し,前記第2の表示領域に,前記一括して動作させる前記複数の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,前記エネルギーマネジメントシステム全体による総消費電力量が含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記エネルギーマネジメントシステム全体による前記総消費電力量を表示し,前記第2の表示領域に,前記総消費電力量への寄与が多い順に予め決められた個数の前記特定の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項6】
前記表示部は,前記ユーザによって設定された日時よりも第1の時間だけ前から前記ユーザによって設定された日時よりも第2の時間だけ後までの期間に含まれない日時には,第1の周期で前記第1の表示領域と前記第2の表示領域の表示を更新し,前記期間に含まれる日時には,前記第1の周期よりも短い第2の周期で前記第1の表示領域と前記第2の表示領域の表示を更新する,
請求項3に記載の端末装置。
【請求項7】
前記第1の表示領域の表示を更新させる指示をユーザから受け付け,前記第2の表示領域の表示を更新させる指示をユーザから受け付ける入力受付部を更に備え,
前記表示部は,前記入力受付部により前記第1の表示領域の表示を更新させる指示が受け付けられると,前記第1の表示領域の表示を更新し,前記入力受付部により前記第2の表示領域の表示を更新させる指示が受け付けられると,前記第2の表示領域の表示を更新する,
請求項1から6のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項8】
前記入力受付部は,前記第2の表示領域の表示を拡大又は回転させる指示をユーザから更に受け付け,
前記表示部は,前記入力受付部により前記第2の表示領域の表示を拡大又は回転させる指示が受け付けられると,前記第2の表示領域の表示を拡大又は回転する,
請求項7に記載の端末装置。
【請求項9】
宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムであって,
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部と,
第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部と,
を備え,
前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する,
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項10】
取得部が,宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得ステップと,
表示部が,第1の表示領域に,前記取得ステップにおいて取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示ステップと,
を備え,
前記表示ステップでは,前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する,
表示制御方法。
【請求項11】
コンピュータを,
宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部,
第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部,
として機能させ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する,
プログラム。」(なお,下線は補正箇所を示すものとして請求人が付加したものである。)

(本件補正前)
「【請求項1】
宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部と,
第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部と,
を備え,
前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記特定の機器についての情報に基づくメッセージを結合させて表示する,
端末装置。
【請求項2】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,前記特定の機器の動作状態を示す情報が含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記特定の機器の動作状態を示す情報を表示し,前記第2の表示領域に,前記特定の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,ユーザによって設定された日時に前記特定の機器に所定の動作をさせるスケジュールが含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記スケジュールを表示し,前記第2の表示領域に,前記スケジュールによって設定された動作が行われる前記特定の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,前記複数の機器に一括して動作させる情報が含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記複数の機器に一括して動作させる指示をユーザから受け付けるボタンを表示し,前記第2の表示領域に,前記一括して動作させる前記複数の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報には,前記エネルギーマネジメントシステム全体による総消費電力量が含まれ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に,前記エネルギーマネジメントシステム全体による前記総消費電力量を表示し,前記第2の表示領域に,前記総消費電力量への寄与が多い順に予め決められた個数の前記特定の機器を表す画像を強調した前記レイアウト図を表示する,
請求項1に記載の端末装置。
【請求項6】
前記表示部は,前記ユーザによって設定された日時よりも第1の時間だけ前から前記ユーザによって設定された日時よりも第2の時間だけ後までの期間に含まれない日時には,第1の周期で前記第1の表示領域と前記第2の表示領域の表示を更新し,前記期間に含まれる日時には,前記第1の周期よりも短い第2の周期で前記第1の表示領域と前記第2の表示領域の表示を更新する,
請求項3に記載の端末装置。
【請求項7】
前記第1の表示領域の表示を更新させる指示をユーザから受け付け,前記第2の表示領域の表示を更新させる指示をユーザから受け付ける入力受付部を更に備え,
前記表示部は,前記入力受付部により前記第1の表示領域の表示を更新させる指示が受け付けられると,前記第1の表示領域の表示を更新し,前記入力受付部により前記第2の表示領域の表示を更新させる指示が受け付けられると,前記第2の表示領域の表示を更新する,
請求項1から6のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項8】
前記入力受付部は,前記第2の表示領域の表示を拡大又は回転させる指示をユーザから更に受け付け,
前記表示部は,前記入力受付部により前記第2の表示領域の表示を拡大又は回転させる指示が受け付けられると,前記第2の表示領域の表示を拡大又は回転する,
請求項7に記載の端末装置。
【請求項9】
宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムであって,
前記エネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部と,
第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部と,
を備え,
前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記特定の機器についての情報に基づくメッセージを結合させて表示する,
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項10】
取得部が,宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得ステップと,
表示部が,第1の表示領域に,前記取得ステップにおいて取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示ステップと,
を備え,
前記表示ステップでは,前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記特定の機器についての情報に基づくメッセージを結合させて表示する,
表示制御方法。
【請求項11】
コンピュータを,
宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部,
第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部,
として機能させ,
前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記特定の機器についての情報に基づくメッセージを結合させて表示する,
プログラム。」

2.補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,
「前記特定の機器についての情報」について,「前記第1の表示領域に表示される」との事項を追加する補正(以下,「補正事項1」という。),
また,「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,「基づく」との事項を「概略内容を表す」との事項に変更する補正(以下,「補正事項2」という。)を含んでいる。
(2)請求項9について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項9を,
「前記特定の機器についての情報」について,「前記第1の表示領域に表示される」との事項を追加する補正(以下,「補正事項3」という。),
また,「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,「基づく」との事項を「概略内容を表す」との事項に変更する補正(以下,「補正事項4」という。)を含んでいる。
(3)請求項10について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項10を,
「前記特定の機器についての情報」について,「前記第1の表示領域に表示される」との事項を追加する補正(以下,「補正事項5」という。),
また,「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,「基づく」との事項を「概略内容を表す」との事項に変更する補正(以下,「補正事項6」という。)を含んでいる。
(4)請求項11について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項11を,
「前記特定の機器についての情報」について,「前記第1の表示領域に表示される」との事項を追加する補正(以下,「補正事項7」という。),
また,「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,「基づく」との事項を「概略内容を表す」との事項に変更する補正(以下,「補正事項8」という。)を含んでいる。

3.補正の適否
(1)請求項1について
本件補正による補正事項1は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき「前記第1の表示領域に表示される」ものであるとの限定を付加するものである。
また,本件補正による補正事項2は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき,上記「基づく」との事項をより具体的な「概略内容を表す」ものであることに限定するものである。
そして,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
ア.引用例
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/074053号(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付与したものである。
a.「[0041] [実施の形態1]
<ネットワークシステムの全体構成>
まず,本実施の形態に係るネットワークシステムの全体構成について説明する。図1は,本実施の形態に係るネットワークシステム1の全体構成を示す図である。
[0042] 図1を参照して,本実施の形態に係るネットワークシステム1は,たとえば,住宅やオフィスなどに設置される。ネットワークシステム1は,リビングルームに設置されるエアコン200Aと,リビングルームに設置されるテレビ200Bと,リビングルームに設置されるカーテン開閉装置200Cと,キッチンに設置される冷蔵庫200Dと,ダイニングルームに設置されるライト200Eなどの家電(電気機器)を含む。
[0043] ネットワークシステム1は,太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zを含む。なお,バッテリー200Yは,住宅などに設置されるものであってもよいし,自動車用のバッテリーを住宅用のバッテリーとして兼用するものであってもよい。
[0044]ネットワークシステム1は,家電200A?200E,太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zなどを制御するためのホームコントローラ100を含む。ホームコントローラ100は,有線あるいは無線のネットワーク401を介して,家電200A?200E,太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zなどとデータ通信が可能である。」
b.「[0048] 図1および図2を参照して,本実施の形態に係るホームコントローラ100は,ネットワーク401を介して,住宅に設置される複数の家電200A?200Eのそれぞれから,家電200A?200Eの消費電力や動作状態や入力された命令などを受信する。
[0049] ホームコントローラ100は,受信した家電200A?200Eの消費電力や動作状態や入力された命令などを順次蓄積することによって,家電200A?200Eの消費電力が所定の条件を満たすか否かを判断する。本実施の形態に係るホームコントローラ100は,消費電力および消費電力の積算値に基づいて,家電200A?200Eが使用中であるか不使用であるか,家電200A?200Eを使い過ぎであるか否か,を判断する。ホームコントローラ100は,家電200A?200Eからの情報に基づいて,家電200A?200Eが故障中であるか否かを判断する。また,ホームコントローラ100は,受信した家電200A?200Eの消費電力から住宅全体の消費電力を算出し表示し,またはパワーコンディショナ200Zから住宅全体の消費電力を取得し表示する(図2参照)。
[0050] ホームコントローラ100は,家電200A?200Eに対応づけて(たとえば,間取り図上の家電200A?200Eが配置される位置に対応する箇所に),家電200A?200Eの状態をディスプレイ102に表示する。より詳細には,ホームコントローラ100は,家電200A?200Eの各々が2つの以上の状態に該当する場合,以下の優先順位に基づいて状態を表示する。」
c.「[0156] ホームコントローラ100Cは,受信した家電200A?200Eの消費電力のデータを蓄積することによって,家電200A?200Eの消費電力量を所定期間にわたって累積加算し,累積加算した消費電力量の多い順に従って家電200A?200Eを順位付けする(以下,これをランキングという)。ホームコントローラ100Cは,ランキングの情報の画面を表示するとともに,各家電について消費電力量の推移を示すグラフなど電力の消費傾向を示す情報の画面を表示する。ホームコントローラ100Cは,予め設定されている画面の階層構造に基づいて,ディスプレイ102または後述のディスプレイ202に,複数種類の画面を切替えて表示させる。」
d.「[0205] <ランキングの画面遷移>
コントローラ100Cは,ユーザの操作に従って,ディスプレイ102にランキングの画面を切替ながら表示する。図20?図22にはランキングの画面10A?10Dが例示される。ランキングの情報を表示するための画面は,複数枚の画面からなる。複数枚の画面は,階層構造に従って関連付けされており,表示するべき画面は階層構造に従って遷移させることができる。
・・・(途中省略)・・・
[0208] このようなユーザの操作に連動して切替られる画面について説明する。まず,ユーザによりランキングの要求がされると,図20の画面10Aが表示される。画面10Aの左下枠には,ランキングに従う消費電力量の多い方からの順位,すなわちワーストランク(ワースト1位?ワースト3位)付けされた家電を一意に特定するための特定情報として機器名が,順位と関連付けて一覧表示される。画面10Aの他の領域には,他のコンテンツが表示される。
[0209] 画面10Aのランキングの表示用データは,ランキング情報生成部303Aにより生成される。具体的には,ランキング情報生成部303Aは,消費電力量テーブル305Aの各レコードRの本日積算消費電力量3051のトータル3061を値が大きい順に従ってランキングする。ランキング結果に基づき,1位?3位のレコードRのそれぞれから読出した“機器名”に,順位付けすることにより,表示用データが生成される。
[0210] ユーザが,タブレット103を操作することにより,画面10Aの左下枠を指定した状態でボタン104の“決定”ボタンを操作すると,表示画面は画面10Aから図21の画面10Bに切替わる。画面10Bの表示中にボタン104の“戻る”ボタンが操作されると,表示画面は画面10Bから画面10Aに切替わる。
[0211] 画面10Bは,画面上部にワーストランキングの順位を指す“1”?“10”の数字の列が表示されて,その数字列の“1”が強調表示されている。
[0212] 画面10Bの数字列の下段には,間取図が表示される。間取図上ではリビングのエアコンのマークが,拡大など強調のための所定態様で表示がされている。
・・・(途中省略)・・・
[0225] 一方,画面10Bの表示中に“→”キーが操作されると,次位のワーストランキング(2位)の家電の情報を表示するための画面10Dに切替わる。画面10Dの表示中に“←”キーが操作されると上位のワーストランキング(1位)の画面10Bに戻り,“→”キーが操作されると,次位のワーストランキング(3位)の家電の情報を表示するための画面(図示せず)が表示される。また,画面10Dの表示中に“戻る”ボタンが操作されると,上位階層の画面10Aに切替わり,“決定”ボタンが操作されると画面10Dの情報のより詳細な情報を表示する画面に切替る。
[0226] 画面10Dでは,ワースト“2位”の書斎のエアコンについて画面10Bと同様に表示処理がされる。」
e.[図20]



f.[図21]


画面10Bには,左下枠にワーストランキングの一覧が表示され,他の領域には画面上部にワーストランキングの順位を示す数字列と,数字列の下段に間取図上で各家電機器の設置場所に前記機器を表すマークが表示され,リビングのエアコンのマークが拡大及び強調されて表示されている。

g.[図22]


h.以上のa?gの記載によれば,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「住宅やオフィスなどに設置されるネットワークシステム1であって,
ネットワークシステム1は,
リビングルームに設置されるエアコン200Aと,リビングルームに設置されるテレビ200Bと,リビングルームに設置されるカーテン開閉装置200Cと,キッチンに設置される冷蔵庫200Dと,ダイニングルームに設置されるライト200Eなどの家電(電気機器),太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zと,家電200A?200E,太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zなどを制御するためのホームコントローラ100を含み,
ホームコントローラ100は,
有線あるいは無線のネットワーク401を介して,家電200A?200E,太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zなどとデータ通信が可能であり,
ネットワーク401を介して,住宅に設置される複数の家電200A?200Eのそれぞれから,家電200A?200Eの消費電力や動作状態や入力された命令などを受信し,
受信した家電200A?200Eの消費電力のデータを蓄積することによって,家電200A?200Eの消費電力量を所定期間にわたって累積加算し,累積加算した消費電力量の多い順に従って家電200A?200Eを順位付けし(以下,これをランキングという),ランキングの情報の画面を表示するものであり,
ユーザによりランキングの要求がされると,画面10Aの左下枠には,ランキングに従う消費電力量の多い方からの順位,すなわちワーストランク(ワースト1位?ワースト3位)付けされた家電を一意に特定するための特定情報として機器名が,順位と関連付けて一覧表示され,画面10Aの他の領域には,他のコンテンツが表示され,
ユーザが,画面10Aの左下枠を指定した状態でボタン104の“決定”ボタンを操作すると,表示画面は画面10Aから画面10Bに切替わり,画面10Bは,他の領域において,画面上部にワーストランキングの順位を指す“1”?“10”の数字の列が表示されて,その数字列の“1”が強調表示され,画面10Bの数字列の下段には,間取図上で各家電機器の設置場所に前記機器を表すマークが表示され,リビングのエアコンのマークが,拡大など強調のための所定態様で表示がされ,
画面10Bの表示中に“→”キーが操作されると,次位のワーストランキング(2位)の家電の情報を表示するための画面10Dに切替わり,ワースト“2位”の書斎のエアコンについて同様に表示処理がされる,
ネットワークシステム1。」

(イ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-254916号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付与したものである。
a.「【0032】
レイアウト表示部31には,遊技機島60の形を模擬表示した遊技機島画像34が店内での遊技機島60の配置に習って配置されたレイアウト図が表示される。各遊技機島画像34の左肩には遊技機島番号が表示される。また,該当する遊技機島60における遊技球の貯流量を棒グラフの長さと数値で表わした遊技球量レベル画像35が遊技機島画像34の中央に表示される。
・・・(途中省略)・・・
【0036】
異常内容表示部33には,マーク表示部32に表示されている異常マーク41に対応する異常の内容を示すメッセージがテロップを流すようにして順次表示される。表示順序は,マーク表示部32の左端からの並び順に従っている。
・・・(途中省略)・・・
【0054】
さらに図8に示す稼動状態監視画面30aでは,異常の内容が異常内容表示部33に表示中の異常マーク41に対応する異常の発生箇所をレイアウト図において識別可能に表示するようになっている。ここでは,異常発生箇所の遊技機島画像34aの色を特別な色にしている。色に代えて,点滅表示や,縁取りなどで識別表示してもよい。」
b.以上のaの記載によると,引用例2には以下の技術(以下,「引用例2記載技術」という。)が記載されているものと認められる。
「レイアウト表示部31には,遊技機島60の形を模擬表示した遊技機島画像34が店内での遊技機島60の配置に習って配置されたレイアウト図が表示され,
異常内容表示部33には,マーク表示部32に表示されている異常マーク41に対応する異常の内容を示すメッセージがテロップを流すようにして順次表示され,
動状態監視画面30aでは,異常の内容が異常内容表示部33に表示中の異常マーク41に対応する異常の発生箇所をレイアウト図において識別可能に表示するようになっており,異常発生箇所の遊技機島画像34aの色を特別な色,点滅表示や,縁取りなどで識別表示する技術。」

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-273457号公報(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付与したものである。
a.「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わる広域分散型電力系統監視制御システムの構成図である。この第1の実施の形態は,図8に示した従来例に対し,電力系統監視制御装置11から大型表示装置用計算機16へ状変解析情報を連携することにより大型表示装置15へ詳細情報を吹き出し表示25やカーソル26で表示するようにしたものである。カーソル26は後述するように吹き出し表示25の表示を透過状態にした場合に,その透過状態を解除する際に用いられる。図8と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0016】
電力系統監視制御装置18は,状変解析処理手段27,状変解析変換処理手段28,送信処理手段29を有する。状変解析処理手段27は,伝送装置13より広域ネットワーク回線12を介して入力される表示・計測情報を入力し,電力系統設備14からの系統状態に基づいて系統の状態変化を解析し状変解析情報を状変解析変換処理手段28に出力する。状変解析変換処理手段28は,状変解析情報を発生時刻/所名番号/故障区分/設備番号/機器番号/計測器番号/解析結果番号へ変換し,送信処理手段29は,広域ネットワーク回線12を介して大型表示装置用計算機16へ状変解析情報を送信する。
【0017】
大型表示装置用計算機16は,大型表示系統図フォーマット19,表示処理手段20に加え,データ変換処理手段30,吹き出し表示処理手段31を有する。データ変換処理手段30は,広域ネットワーク回線12を介して電力系統監視制御装置18から受信した状変解析情報を状変解析結果としてメッセージへデータ変換し,吹き出し表示処理手段31は,大型表示装置15の該当する吹き出し表示の座標へ吹き出し表示25を表示する。その際に,吹き出し表示25内に状変解析結果をメッセージ表示することにより,運転員は監視操作卓17を操作することなく,必要な情報を迅速に知ることができる。」
b.以上のaの記載によると,引用例3には以下の技術(以下,「引用例3記載技術」という。)が記載されているものと認められる。
「電力系統監視制御装置11から大型表示装置用計算機16へ状変解析情報を連携することにより大型表示装置15へ詳細情報を吹き出し表示25を行う分散型電力系統監視制御システムにおいて,
電力系統監視制御装置18は,電力系統設備14からの系統状態に基づいて系統の状態変化を解析し状変解析情報を発生時刻/所名番号/故障区分/設備番号/機器番号/計測器番号/解析結果番号へ変換し,広域ネットワーク回線12を介して大型表示装置用計算機16へ状変解析情報を送信し,
大型表示装置用計算機16は,広域ネットワーク回線12を介して電力系統監視制御装置18から受信した状変解析情報を状変解析結果としてメッセージへデータ変換し,大型表示装置15の該当する吹き出し表示の座標へ吹き出し表示25を表示する技術。」

イ.対比
補正発明1と引用発明を対比する。
(ア)補正発明1の「宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部」との事項について
引用発明の「住宅やオフィスなどに設置されるネットワークシステム1であって」及び「ネットワークシステム1は,リビングルームに設置されるエアコン200Aと,リビングルームに設置されるテレビ200Bと,リビングルームに設置されるカーテン開閉装置200Cと,キッチンに設置される冷蔵庫200Dと,ダイニングルームに設置されるライト200Eなどの家電(電気機器),太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zと,家電200A?200E,太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zなどを制御するためのホームコントローラ100を含み」との事項によると,引用発明の「ネットワークシステム1」は,住宅に設置される各種家電機器,太陽光発電装置,バッテリー,パワーコンディショナ,及び,ホームコントローラから構成され,当該ホームコントローラによりこれらの各種機器が制御されるシステムであることから,引用発明の「ネットワークシステム1」は,補正発明1の「宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステム」に相当するものである。
また,引用発明の「ホームコントローラ100」は,「有線あるいは無線のネットワーク401を介して,家電200A?200E,太陽光発電装置200X,バッテリー200Y,それらを制御するためのパワーコンディショナ200Zなどとデータ通信が可能であり」及び「ネットワーク401を介して,住宅に設置される複数の家電200A?200Eのそれぞれから,家電200A?200Eの消費電力や動作状態や入力された命令などを受信し」との事項によると,ネットワークを介して設置された各種機器から消費電力や動作状態などを受信する,すなわち取得するものであって,当該消費電力や動作状態は「ネットワークシステム1」,つまり「エネルギーマネジメントシステム」についての情報であることは明らかであるから,引用発明の「ホームコントローラ100」は,補正発明1の「宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部」を備えているといえる。
そうすると,補正発明1と引用発明は,
「宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部」
を備える点で一致する。
(イ)補正発明1の「第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部」との事項について
引用発明の「ホームコントローラ100」は,「受信した家電200A?200Eの消費電力のデータを蓄積することによって,家電200A?200Eの消費電力量を所定期間にわたって累積加算し,累積加算した消費電力量の多い順に従って家電200A?200Eを順位付けし(以下,これをランキングという),ランキングの情報の画面を表示するものであり」,及び,「ユーザによりランキングの要求がされると,画面10Aの左下枠には,ランキングに従う消費電力量の多い方からの順位,すなわちワーストランク(ワースト1位?ワースト3位)付けされた家電を一意に特定するための特定情報として機器名が,順位と関連付けて一覧表示され,画面10Aの他の領域には,他のコンテンツが表示され」及び「ユーザが,画面10Aの左下枠を指定した状態でボタン104の“決定”ボタンを操作すると,表示画面は画面10Aから画面10Bに切替わり,画面10Bは,他の領域において,画面上部にワーストランキングの順位を指す“1”?“10”の数字の列が表示されて,その数字列の“1”が強調表示され,画面10Bの数字列の下段には,間取図上で各家電機器の設置場所に前記機器を表すマークが表示され,リビングのエアコンのマークが,拡大など強調のための所定態様で表示がされる」との事項によると,受信した各家電機器の消費電力データを累積加算して消費電力量の多い順に家電機器をランキング付けし,該ランキングの情報を画面の左下枠に表示するものであり,このランキングの情報は,「ホームコントローラ100」が取得した情報に基づく情報であることから,これは補正発明1の「第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し」に相当するものである。
また,「ホームコントローラ100」は,上記左下枠に対する他の領域に,間取図上で各家電機器の設置場所に前記機器を表すマークを表示するものであり,この間取図はいわゆる宅内のレイアウト図であり,また,機器を表すマークは一般に画像として表示されることから,これは補正発明1の「第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する」に相当するものである。
そして,「ホームコントローラ100」は,上記左下枠と他の領域に上記の情報を表示する画面を備えるものである。
そうすると,補正発明1と引用発明は,
「第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部」
を備える点で一致する。
(ウ)補正発明1の「前記表示部は,前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する」との事項について
引用発明の「ホームコントローラ100」は,上記(イ)で示したように画面の左下枠に消費電力量の多い順のランキング情報を表示し,その他の領域にワーストランキングの順位を示す数字列を上部に,また,その数字列の下段に間取図上で各家電機器の設置場所に前記機器を表すマークを表示するものである。
また,引用発明の「ホームコントローラ100」は,「その数字列の“1”が強調表示され,画面10Bの数字列の下段には,間取図上で各家電機器の設置場所に前記機器を表すマークが表示され,リビングのエアコンのマークが,拡大など強調のための所定態様で表示がされ,画面10Bの表示中に“→”キーが操作されると,次位のワーストランキング(2位)の家電の情報を表示するための画面10Dに切替わり,ワースト“2位”の書斎のエアコンについて同様に表示処理がされる」との事項によると,ユーザがその他の領域に表示されるワーストランキングの順位を示す数字列のうち,表示を所望するワーストランキングの数字を選択することにより,間取図上で各家電機器の設置場所に表示された前記機器を表すマークのうち,選択されたワーストランキングに対応する家電機器を,拡大など強調のための所定態様で表示するものである。
してみれば,引用発明の「ホームコントローラ100」は,画面のその他の領域において,間取図上で各家電機器の設置場所に表示された前記機器を表すマークのうち,選択されたワーストランキングに対応する家電機器を,拡大など強調のための所定態様で表示する点において,補正発明1の「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する」と共通するとはいえるものの,当該強調して表示するための条件が,引用発明ではユーザによる選択であり,補正発明1では「前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合」である点で相違するものである。
さらに,表示する内容として,補正発明1が「前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する」点においても相違するものである。
そうすると,補正発明1と引用発明は,
「前記表示部は,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する」
点で共通するものの,
補正発明1が,
「前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合」との表示のための条件を備えた上で,「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する」点で相違する。
(エ)補正発明1の「端末装置」について
引用発明の「ホームコントローラ100」は,上記(ア)?(ウ)で示したように,「ネットワークシステム1」を構成する各種機器を制御し,また,当該機器からの情報を受信し,住宅内の間取図を含めた各種情報を表示する画面と,ユーザからの入力を受け付けるものであることから,補正発明1の「端末装置」に相当するものといえる。
そうすると,補正発明1と引用発明は,
「端末装置」
を備える点で一致する。
(オ)以上の(ア)?(エ)によると,補正発明1と引用発明は以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点)
「宅内に設置される複数の機器を制御するエネルギーマネジメントシステムについての情報を取得する取得部と,
第1の表示領域に,前記取得部により取得された情報を表示し,第2の表示領域に,前記宅内における前記機器の設置場所に前記機器を表す画像を配置したレイアウト図を表示する表示部と,
を備え,
前記表示部は,前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する,
端末装置。」

(相違点)
補正発明1では「前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合」との表示のための条件を備えた上で,「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する」ものであるのに対し,引用発明ではユーザの選択に基づいて「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する」というものである点。

ウ.判断
上記相違点について検討する。
引用例2における引用例2記載技術には,表示部に異常の内容を示すメッセージと,レイアウト図に異常の発生箇所の遊技機島画像の色を特別な色,点滅表示や,縁取りなどで識別表示する技術が,また,引用例3における引用例3記載技術には,状変解析情報を状変解析結果としてメッセージへデータ変換し,大型表示装置の該当する吹き出し表示の座標へ吹き出し表示する技術が示されているものの,どちらも補正発明1における「前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合」との表示のための条件については記載も示唆もない。
また,表示態様として補正発明1の「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する」ことが引用例2記載技術からも公知であり,また,引用例3記載技術のように大型表示装置の該当する吹き出し表示の座標へ吹き出し表示することが公知であるとしても,補正発明1では「第1の表示領域」に表示される内容と関連して「前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージ」を表示するものであり,そもそも上記引用例3記載技術には補正発明1における「第1の表示領域」に相当するものが存在しないのであるから,上記引用例2記載技術及び引用例3記載技術を考慮したとしても,補正発明1の上記表示態様についての構成を導き出せるものではない。
してみれば,引用発明に上記引用例2記載技術,及び引用例3記載技術を適用したとしても,上記相違点を当業者が容易に想到し得たものということはできない。
したがって,補正発明1は,引用発明,引用例2記載技術,及び引用例3記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって,本件補正の補正事項1及び2は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)請求項9について
本件補正による補正事項3は,請求項9に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき「前記第1の表示領域に表示される」ものであるとの限定を付加するものである。
また,本件補正による補正事項4は,請求項9に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき,上記「基づく」との事項をより具体的な「概略内容を表す」ものであることに限定するものである。
そして,本件補正前の請求項9に記載された発明と本件補正後の請求項9に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項9に記載された発明(以下,「補正発明9」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
ア.引用例
上記第2.3.(1)ア.に示したとおりである。

イ.対比
補正発明9と引用発明を対比する。
補正発明9は「エネルギーマネージメントシステム」であって,実質的に補正発明1の「端末装置」を含めて「エネルギーマネージメントシステム」としたものであることを考慮して対比すると,引用発明の「ネットワークシステム1」が補正発明9の「エネルギーマネージメントシステム」に相当し,その他補正発明1と同様に以下の点で相違するものである。
(相違点)
補正発明9では「前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合」との表示のための条件を備えた上で,「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する」ものであるのに対し,引用発明ではユーザの選択に基づいて「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する」というものである点。

ウ.判断
上記相違点について検討する。
上記相違点については,補正発明1と同様の相違点であり,前記第2.3.(1)ウ.で示したように,引用発明に上記引用例2記載技術,及び引用例3記載技術を適用しても,上記相違点を当業者が容易に想到し得たものということはできない。
したがって,補正発明9は,引用発明,引用例2記載技術,及び引用例3記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって,本件補正の補正事項3及び4は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(3)請求項10について
本件補正による補正事項5は,請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき「前記第1の表示領域に表示される」ものであるとの限定を付加するものである。
また,本件補正による補正事項6は,請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき,上記「基づく」との事項をより具体的な「概略内容を表す」ものであることに限定するものである。
そして,本件補正前の請求項10に記載された発明と本件補正後の請求項10に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項10に記載された発明(以下,「補正発明10」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
ア.引用例
上記第2.3.(1)ア.に示したとおりである。

イ.対比
補正発明10と引用発明を対比する。
補正発明10は「表示制御方法」であって,実質的に補正発明1の「端末装置」を「表示制御方法」としたものであることを考慮して対比すると,補正発明1と同様に以下の点で相違するものである。
(相違点)
補正発明10では「前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合」との表示のための条件を備えた上で,「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する」ものであるのに対し,引用発明ではユーザの選択に基づいて「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する」というものである点。

ウ.判断
上記相違点について検討する。
上記相違点については,補正発明1と同様の相違点であり,前記第2.3.(1)ウ.で示したように,引用発明に上記引用例2記載技術,及び引用例3記載技術を適用しても,上記相違点を当業者が容易に想到し得たものということはできない。
したがって,補正発明10は,引用発明,引用例2記載技術,及び引用例3記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって,本件補正の補正事項5及び6は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(4)請求項11について
本件補正による補正事項7は,請求項11に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき「前記第1の表示領域に表示される」ものであるとの限定を付加するものである。
また,本件補正による補正事項8は,請求項11に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記特定の機器についての情報に基づくメッセージ」について,明細書の第【0113】,【0130】段落等の記載に基づき,上記「基づく」との事項をより具体的な「概略内容を表す」ものであることに限定するものである。
そして,本件補正前の請求項11に記載された発明と本件補正後の請求項11に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項11に記載された発明(以下,「補正発明11」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
ア.引用例
上記第2.3.(1)ア.に示したとおりである。

イ.対比
補正発明11と引用発明を対比する。
補正発明11は「プログラム」であって,実質的に補正発明1の「端末装置」を「プログラム」としたものであることを考慮して対比すると,補正発明1と同様に以下の点で相違するものである。
(相違点)
補正発明11では「前記第1の表示領域に表示される情報の中に,前記複数の機器のうちの特定の機器についての情報が含まれると判別した場合」との表示のための条件を備えた上で,「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示するとともに,前記特定の機器を表す画像に,前記第1の表示領域に表示される前記特定の機器についての情報の概略内容を表すメッセージを結合させて表示する」ものであるのに対し,引用発明ではユーザの選択に基づいて「前記第2の表示領域において前記特定の機器を表す画像を相対的に強調して表示する」というものである点。

ウ.判断
上記相違点について検討する。
上記相違点については,補正発明1と同様の相違点であり,前記第2.3.(1)ウ.で示したように,引用発明に上記引用例2記載技術,及び引用例3記載技術を適用しても,上記相違点を当業者が容易に想到し得たものということはできない。
したがって,補正発明11は,引用発明,引用例2記載技術,及び引用例3記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって,本件補正の補正事項5及び6は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

4.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3.本願発明
本件補正は,上記のとおり,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから,本願の請求項1-11に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして,本件補正により補正された請求項1に係る発明(補正発明1),請求項9に係る発明(補正発明9),請求項10に係る発明(補正発明10),及び請求項11に係る発明(補正発明11)は,上記第2.3.のとおり,当業者が引用発明,引用例2記載技術,及び引用例3記載技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また,請求項1を直接または間接的に引用する請求項2-8は,補正発明1をさらに限定した発明であるから,同様に当業者が引用発明,引用例2記載技術,及び引用例3記載技術にに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-27 
出願番号 特願2013-164231(P2013-164231)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 貝塚 涼  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 金子 幸一
石川 正二
発明の名称 端末装置、エネルギーマネジメントシステム、表示制御方法、及び、プログラム  
代理人 木村 満  
代理人 美恵 英樹  
代理人 八島 耕司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ