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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
管理番号 1327252
審判番号 不服2015-16122  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-01 
確定日 2017-04-11 
事件の表示 特願2013-523350「ロケーション情報の相対的変化に基づくターゲットデバイスのロケーションの決定」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日国際公開、WO2012/019055、平成25年11月21日国内公表、特表2013-542405〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・当審拒絶理由

特許出願: 平成23年8月4日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2010年8月6日、米国、2010年8月18日、米国、2011年8月3日、米国)を伴う国際出願)
拒絶査定: 平成27年4月27日付け(送達日:同年5月1日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成27年9月1日
拒絶理由通知: 平成28年7月21日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月25日)
手続補正: 平成28年10月24日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成28年10月24日

そして、当審拒絶理由は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし32に係る発明は、本願の優先日前に国内又は外国において頒布された刊行物である特開2004-233058号公報(発明の名称:携帯電話及び測位システム、出願人:株式会社日立製作所、以下「引用例」という。)に記載された発明などと周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし32に係る発明は、本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし32に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「モバイルデバイスのロケーションを取得するための方法であって、
前記モバイルデバイスのローカルセンサを使用して前記モバイルデバイスのロケーションの相対的変化を算出するステップと、
ロケーションサーバによって前記モバイルデバイスの絶対ロケーションを推定するために、前記モバイルデバイスによって、Long Term Evolution (LTE) Positioning Protocol Extensions (LPPe)プロトコルに従って、前記ロケーションの相対的変化を前記ロケーションサーバに伝送するステップと、
前記モバイルデバイスによって、LPPeプロトコルに従って、前記ロケーションの相対的変化の少なくとも1つの誤差推定を伝送するステップと
を含む方法。」(以下「本願発明」という。)


第3 引用例記載の事項・引用発明
これに対して引用例には、「携帯電話及び測位システム」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。

(a)
「【請求項6】
携帯電話と、基地局と、サーバと、を有する測位システムにおいて、
前記携帯端末は、
人工衛星からの信号を受信する衛星信号受信手段と、
少なくとも2軸の磁気方位センサーと、
少なくとも2軸の加速度センサーと、
前記衛星信号受信手段から得られる情報及び2つのセンサーから得られる情報を、前記基地局を介して前記サーバに送信する送信手段と、を有し、
前記サーバは、
前記送信手段から送信された人工衛星から得られた情報に基づき第1の位置情報を算出し、
前記2つのセンサーから得られる情報を用いて、前記人工衛星からの信号を受信することで得られた第1の位置情報を補正する位置情報補正手段と、
を備えることを特徴とする測位システム。」

(b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、測位機能を有する携帯電話に関し、測位位置の精度を向上させた携帯電話及び測位システムに関する。」

(c)
「【0019】
本発明のもう一つの実施の形態である携帯電話21の位置情報をサーバで処理する測位システムにおいて、前記各種センサーを用いて位置測位を補完する測位システムを図1及び図2を用いて説明する。なお、携帯電話21の携帯電話機としての処理は一般的なものであり、説明は省略する。また、各種センサーの詳細な説明に関しては、既に説明した実施の形態と同じであるため省略する。」

(d)
「【0024】
本実施の形態では、携帯電話21は遮蔽物53等によりGPS衛星を補足できない際に各種センサーを用いて位置測位を補完することが特徴である。位置測位はサーバで行われるため端末21内部ではセンサーからの情報を処理して位置測位を補完することができないが、センサーからの情報を処理して図3のX、Y、Z軸成分、すなわち東西、南北、上下成分の移動距離、若しくは東西、南北成分のみ移動距離を地球中心からの角度に変換した数値を携帯電話送受信部117を用いてサーバ22に送信し、サーバ22が送られてきた移動距離情報を前回の測位結果に加味して測位結果を算出することができる。サーバ22はこの算出された測位結果を地図情報に盛り込み端末21に送信することで、端末21の表示部114に測位結果を表示することが可能となる。」

上記記載における「測位システム」が測位方法を実施するものであることは明らかである。そうすると、上記記載(a)ないし(d)、及び図面の第1?2図の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「携帯電話21の位置情報をサーバで処理する測位方法において、
前記携帯電話21の、磁気方位センサーと加速度センサーからの情報を処理して、位置測位を補完する東西、南北、上下成分の移動距離を地球中心からの角度に変換した数値、及び衛星信号受信手段から得られる情報をサーバ22に送信し、サーバ22が送られてきた移動距離情報を前回の測位結果に加味して測位結果を算出する測位方法。」(以下「引用発明」という。)


第4 対比
本願発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。

まず、引用発明における「携帯電話21」は、本願発明における「モバイルデバイス」に相当するから、引用発明における「携帯電話21の位置情報をサーバで処理する測位方法」は、本願発明における「モバイルデバイスのロケーションを取得するための方法」に相当するといえる。
また、引用発明においては、「前記携帯電話21の、磁気方位センサーと加速度センサーからの情報を処理して、位置測位を補完する東西、南北、上下成分の移動距離を地球中心からの角度に変換した数値」を「サーバ22に送信し」ているのであるから、「前記携帯電話21の、磁気方位センサーと加速度センサーからの情報を処理して、位置測位を補完する東西、南北、上下成分の移動距離を地球中心からの角度に変換した数値」を算出する工程を有することは明らかであるし、引用発明における「前記携帯電話21の、磁気方位センサーと加速度センサー」、及び「位置測位を補完する東西、南北、上下成分の移動距離を地球中心からの角度に変換した数値」は、それぞれ本願発明における「前記モバイルデバイスのローカルセンサ」、及び「前記モバイルデバイスのロケーションの相対的変化」に相当する。そうすると、引用発明における「前記携帯電話21の、磁気方位センサーと加速度センサーからの情報を処理して、位置測位を補完する東西、南北、上下成分の移動距離を地球中心からの角度に変換した数値」を算出する工程は、本願発明における「前記モバイルデバイスのローカルセンサを使用して前記モバイルデバイスのロケーションの相対的変化を算出するステップ」に相当し、また引用発明の「前記携帯電話21の、磁気方位センサーと加速度センサーからの情報を処理して、位置測位を補完する東西、南北、上下成分の移動距離を地球中心からの角度に変換した数値」を「サーバ22に送信し」て、「サーバ22が送られてきた移動距離情報を前回の測位結果に加味して測位結果を算出する」工程は、本願発明の「ロケーションサーバによって前記モバイルデバイスの絶対ロケーションを推定するために、前記モバイルデバイスによって、Long Term Evolution (LTE) Positioning Protocol Extensions (LPPe)プロトコルに従って、前記ロケーションの相対的変化を前記ロケーションサーバに伝送するステップ」と、「ロケーションサーバによって前記モバイルデバイスの絶対ロケーションを推定するために、前記モバイルデバイスによって、前記ロケーションの相対的変化を前記ロケーションサーバに伝送するステップ」である点で共通する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「モバイルデバイスのロケーションを取得するための方法であって、
前記モバイルデバイスのローカルセンサを使用して前記モバイルデバイスのロケーションの相対的変化を算出するステップと、
ロケーションサーバによって前記モバイルデバイスの絶対ロケーションを推定するために、前記モバイルデバイスによって、前記ロケーションの相対的変化を前記ロケーションサーバに伝送するステップと、
を含む方法。」

(相違点1)
本願発明においては、「ロケーションの相対的変化」を「ロケーションサーバに伝送」する際は「Long Term Evolution (LTE) Positioning Protocol Extensions (LPPe)プロトコルに従って」行われているのに対し、引用発明においては、どのような伝送方式に従っているかが不明である点。

(相違点2)
本願発明が「前記モバイルデバイスによって、LPPeプロトコルに従って、前記ロケーションの相対的変化の少なくとも1つの誤差推定を伝送するステップ」を有するのに対し、引用発明においては、そのようなステップを有していない点。


第5 判断
上記相違点1について検討する。
請求人も本願明細書の段落【0004】?【0009】において述べているように、また例えば「LPP Extensions Specification」(Draft Version 1.0-08 June 2010、[online]、Open Mobile Alliance、[平成28年11月8日検索]、インターネット)の記載からもわかるように、そもそもLPPeプロトコルは、携帯電話などを想定した通信規格であるLTEを前提とする測位及び測位情報の伝送に関する周知な通信プロトコルであり、これをセンサー出力から得られた数値と衛星信号受信手段から得られる情報をサーバに送信するようにした携帯電話の測位方法である引用発明における伝送プロトコルとして採用することは当業者が容易になし得たものである。

上記相違点2について検討する。
移動体の測位方法において、位置情報と共に、本願発明の誤差推定に相当する情報(誤差推定量、精度情報)を送信することは下記の周知例1,2にも記載されているように周知である。また、デバイスのセンサが出力する移動量(本願発明における「モバイルデバイスのローカルセンサを使用して」算出される「モバイルデバイスのロケーションの相対的変化」に相当。)が測定誤差を含むことも自明(必要であれば、下記の周知例3を参照。)であるから、引用発明において「位置測位を補完する東西、南北、上下成分の移動距離を地球中心からの角度に変換した数値」を「サーバ22に送信」する際に、その誤差推定を共に送信することは、当業者が容易になし得たものである。また、上記数値と誤差推定とを共に送信するのであれば、両者を同一のプロトコルを用いて送信することも、当業者が通常採用を検討すべき範囲内のものに過ぎない。

周知例1:特開2001-124566号公報
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動体用緊急通報装置に関し、特に、事故等の緊急事態発生時にセンタに現在位置を送信する移動体用緊急通報装置に関する。
・・・
【0003】緊急通報では、一般的に、位置データのそれぞれに対して、その誤差推測量を添付して送信する。GPS等で絶対位置が得られた場合には、その位置誤差推定量、または誤差を推定できる物理量(HDOP等)を送信する。位置の誤差情報に基づいて、センタでは緊急事態の発生位置の範囲を判断する。」

周知例2:特開2004-317442号公報
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示手段に現在位置を地図に重畳して表示させる地図情報を処理する地図情報処理装置、地図情報処理システム、位置情報表示装置、それらの方法、それらのプログラム、および、それらのプログラムを記録した記録媒体に関する。」
「【0075】
このステップS1における位置情報および精度情報の取得後、端末装置400は、位置・精度情報取得手段472が位置情報処理装置320から位置情報および精度情報とともに送信された接続情報に基づいて送受信器410を動作させ、図8に示すように、位置情報および精度情報をサーバ装置500へネットワーク200を介して送信する(ステップS2)。このステップS2における送信の際、端末固有情報も合わせて送信する。」

周知例3:特開平9-145386号公報
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は移動体の親局制御運行支援及び管理方法に係り、特に移動体と親局間の双方向通信が可能な通信システムを用いて多数の移動体の運行管理を行うのに適した親局制御に関する。」
「【0013】こうして一旦現在位置が正確に地図情報上に記録されると、それからの移動に伴う位置決めはジャイロ情報と地図情報を用いて一定時間毎に行われる。即ち、現在位置がある時点に定まると、次の時点ではその現在位置にジャイロ情報が示す移動量を加えて新しい現在位置を求め、これが地図上で道路(一般には移動体が通行可能な経路、以下同様)からずれているときは、例えば直近の道路上の位置まで動かしてその位置を新しい現在位置とする。この方法によると、上記一定時間の間の移動量のジャイロスコープによる測定誤差が、通常の道路間隔と比べて十分小さければ、各時点で常に正確な位置決めが可能となり、ジャイロスコープを用いたことによる誤差の累積も生じない。・・・」

また、引用発明に上記周知技術を採用することにより、新たな作用効果が奏されるものでもない。


第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-10 
結審通知日 2016-11-14 
審決日 2016-11-25 
出願番号 特願2013-523350(P2013-523350)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
大和田 有軌
発明の名称 ロケーション情報の相対的変化に基づくターゲットデバイスのロケーションの決定  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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