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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1327406
審判番号 不服2016-7092  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-16 
確定日 2017-04-13 
事件の表示 特願2012- 46967「センサパッケージ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日出願公開、特開2013-183095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年3月2日の出願であって、平成27年12月17日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成28年2月12日付けで手続補正がなされたが、同年2月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月16日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成28年5月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年5月16日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成28年5月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
本件補正前には、
「【請求項1】
基板とケースとを接合することによりケース内部が気密封止されたセンサパッケージであって、
前記ケースの接合部と接合部材を介して接合されるパッドが前記基板に形成され、かつ、
前記パッドに対向する前記ケースの接合部が、1つ以上の凸部を備え、
前記凸部と前記パッドとの間に前記接合部材が毛細管現象で入り込める間隔があり、
すべての前記パッドと前記接合部の間に前記接合部材がぬれ広がっている、
ことを特徴とするセンサパッケージ。」

とあったものが、

「【請求項1】
基板とケースとを接合することによりケース内部が気密封止されたセンサパッケージであって、
前記ケースの接合部と接合部材を介して接合されるパッドが前記基板に形成され、かつ、
前記パッドに対向する前記ケースの接合部が、当該接合部の1つの辺に2つ以上の凸部を備え、
前記凸部と前記パッドとの間に前記接合部材が毛細管現象で入り込める間隔があり、
すべての前記パッドと前記接合部の間に前記接合部材がぬれ広がっている、
ことを特徴とするセンサパッケージ。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、ケースの接合部が備える「凸部」について、単に「1つ以上」とあったのを、「当該接合部の1つの辺に2つ以上」であるとする旨の限定を付加するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-91787号公報(以下、「引用例」という。)には、「圧電振動デバイス」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
圧電振動デバイスを製造する圧電振動デバイスの製造方法において、
圧電振動片を載置するベースを複数有するとともに各ベースの周囲に形成された第1接合膜と該第1接合膜と接する位置に形成された第1窪み部とを有するベースウエハを用意する工程と、
前記圧電振動片を覆うリッドを複数有するとともに各リッドの周囲に形成された第2接合膜と該第2接合膜と接する位置に形成された第2窪み部とを有するリッドウエハを用意する工程と、
前記第1窪み部又は前記第2窪み部に接合材を載置する工程と、
前記接合材を一旦溶融して、接合材を前記第1接合膜及び前記第2接合膜に沿って流すとともに、その後凝固させて前記ベースウエハと前記リッドウエハとを接合する接合工程と、
を備える圧電振動デバイスの製造方法。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された圧電振動デバイスであって、
前記ベース又は前記リッドの周囲の前記第1接合膜又は前記第2接合膜に第1窪み部又は前記第2窪み部が形成されている圧電振動デバイス。」

イ.「【0030】
第1ベース用ウエハ40Wと第1リッド用ウエハ10Wとは、接合材ボール75を介して固定されるため、接合材ボール75が溶ける前は、第1接合膜45と第2接合膜15との間に隙間がある。このため、真空リフロー炉内などで第1パッケージウエハ80Wが保持・加熱される際、第1パッケージウエハ80Wから空気が排気される。不活性ガスで満たされたリフロー炉内などで第1パッケージウエハ80Wが保持・加熱される際には、第1パッケージウエハ80W内は不活性ガスで満たされる。
【0031】
接合材ボール75が溶けると、毛細管現象により第1接合膜45及び第2接合膜15に沿って流れて、それらの接合膜の表面を濡らすことができる。そして重ね合わされた第1パッケージウエハ80Wの第1接合膜45と第2接合膜15とは、キャビティ?22を真空又は不活性雰囲気にした状態で接合される。」

ウ.「【0045】
<第3実施形態;第3圧電振動デバイス120の構成>
図6(a)は、第3リッド用ウエハ10WB側から見た第3パッケージウエハ80WBの上面図であり、(b)は、第3パッケージウエハ80WBをD-D断面線で切った拡大断面図である。また、説明の都合上、図6は第3リッド用ウエハ10WBが透明の状態で、第3ベース用ウエハ40Bに載置された音叉型水晶振動片30が理解できるように描かれている。また、第3パッケージウエハ80WBは、1つの第3圧電振動デバイス120の外形(XY平面の大きさ)に相当する領域を仮想線(二点鎖線)で表示している。また、理解を容易にするため、キャビティ?22が網目で示されている。
【0046】
第3圧電振動デバイス120と第1圧電振動デバイス100との違いは、第1接合膜45の四辺のほぼ中央に第1窪み部66Bが形成され、第2接合膜15の四辺のほぼ中央に第2窪み部67Bが形成されている点である。以下、第1圧電振動デバイス100と異なる部分について説明し、同一符号の説明は省略する。
【0047】
また、図6(a)に示されるように、第3リッド用ウエハ10WBに形成された第2接合膜15及び第3ベース用ウエハ40WBに形成された第1接合膜45は、XY平面において重なり合うように形成されている。また、第2接合膜15及び第1接合膜45は、切断溝60に接することがないように、第3水晶振動デバイス120の外形の内側に形成されている。
【0048】
第1接合膜45に形成された第1窪み部66Bは、矩形枠の第1接合膜45の各四辺の中央にそれぞれ設けられている。第2接合膜15に形成された第2窪み部67Bは、矩形枠の第2接合膜15の各四辺の中央にそれぞれ設けられている。第1窪み部66B及び第2窪み部67Bは半球状に形成されており、すなわち、隣り合う第1窪み部66B及び第2窪み部67Bまでの距離はほぼ均等である。このため、接合材ボール75が溶けると、溶けた接合材ボール75は毛細管現象により第1接合膜45及び第2接合膜15の接触面に沿って流れて、第1接合膜45及び第2接合膜15の表面を濡らす。
【0049】
図6(b)に示されるように、第3パッケージウエハ80WBの第1窪み部66B及び第2窪み部67Bは切断溝60とZ方向に重なっていない。このため、ダイシングブレードで切断する際にブレードに金属が詰まるおそれがない。」

エ.「【0060】
ステップS156において、パッケージウエハ80Wは、不図示のダイシングシートの粘着剤に接着され、切断溝60に沿ってダイシングブレードで切断される。ダイシングシートと切断溝60との空間が形成されるため、ダイシングブレードの先端はダイシングシート及び粘着剤に接しない状態でも切断できる。このため、第1圧電振動デバイス100にチッピングやバリが発生しない。
以上により第1圧電振動デバイス100が完成する。第1圧電振動デバイス100のパッケージ内部は真空中又は不活性ガスで満たされており、第1圧電振動デバイス100は安定した振動が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上、本発明の好適実施形態である複数の種類の圧電振動デバイスについて説明したが、リッド及びベースに形成された接合膜と窪み部と接合材とでパッケージを形成することにより、圧電振動デバイスの気密性を向上することができる。」

・上記引用例に記載の「圧電振動デバイス」は、上記「ア.」、「エ.」の段落【0061】の記載事項によれば、圧電振動片を載置するベースと該圧電振動片を覆うリッドとを接合材により接合することでパッケージを形成してなる圧電振動デバイスに関し、
さらに上記「ア.」の記載事項、及び図6によれば、ベースの周囲には第1接合膜が形成されるとともに、該第1接合膜には第1窪み部が形成され、リッドの周囲には第2接合膜が形成されるとともに、該第2接合膜には第2窪み部が形成され、第1窪み部又は第2窪み部に載置された接合材を一旦溶融して、該接合材を第1接合膜及び第2接合膜に沿って流すとともに、その後凝固させてベースとリッドとを接合してなるものである。
・上記「ウ.」の記載事項、及び図6によれば、第1窪み部は第1接合膜の各四辺のほぼ中央にそれぞれ形成され、同様に、第2窪み部は第2接合膜の各四辺のほぼ中央にそれぞれ形成され、特に図6(a)によれば、第1窪み部の幅(直径)は第1接合膜の幅よりも広く、同様に、第2窪み部の幅(直径)は第2接合膜の幅よりも広いと見て取ることができる。
・上記「イ.」、「ウ.」の段落【0048】、「エ.」の記載事項によれば、ベースとリッドとを接合材(接合材ボール)により接合する際、接合材が溶ける前は、第1接合膜と第2接合膜との間に隙間があり、接合材が溶けると、溶けた接合材は毛細管現象により第1接合膜及び第2接合膜の接触面に沿って流れて、それら接合膜の表面を濡らすことができ、接合後には、パッケージ内部(キャビティー)は気密性があり真空又は不活性ガスで満たされてなるものである。

したがって、特に図6に示される第3実施形態に係る第3圧電振動デバイス120(切断溝60に沿って切断後の個々の圧電振動デバイス)に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「圧電振動片を載置するベースと該圧電振動片を覆うリッドとを接合材により接合することでパッケージを形成してなる圧電振動デバイスであって、
前記ベースの周囲には第1接合膜が形成されるとともに、該第1接合膜の各四辺のほぼ中央にそれぞれ第1窪み部が形成され、同様に、前記リッドの周囲には第2接合膜が形成されるとともに、該第2接合膜の各四辺のほぼ中央にそれぞれ第2窪み部が形成され、
前記第1窪み部の幅(直径)は前記第1接合膜の幅よりも広く、同様に、前記第2窪み部の幅(直径)は前記第2接合膜の幅よりも広く、
前記ベースと前記リッドとを前記接合材により接合する際、前記第1窪み部又は前記第2窪み部に載置された前記接合材が溶ける前は、前記第1接合膜と前記第2接合膜との間に隙間があり、前記接合材が溶けると、溶けた該接合材は毛細管現象により前記第1接合膜及び前記第2接合膜の接触面に沿って流れてそれら接合膜の表面を濡らすことができ、
その後接合材を凝固させて前記ベースと前記リッドとを接合し、接合後には、パッケージ内部は気密性があり真空又は不活性ガスで満たされてなる圧電振動デバイス。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「圧電振動片を載置するベースと該圧電振動片を覆うリッドとを接合材により接合することでパッケージを形成してなる圧電振動デバイスであって、・・・・その後接合材を凝固させて前記ベースと前記リッドとを接合し、接合後には、パッケージ内部は気密性があり真空又は不活性ガスで満たされてなる圧電振動デバイス。」によれば、
(a)引用発明における「ベース」、「リッド」は、それぞれ本願補正発明でいう「基板」、「ケース」に相当するといえ、
引用発明にあっても、ベースとリッドを接合することでパッケージを形成するものであり、そのパッケージ内部は気密性があり真空又は不活性ガスで満たされてなるものであるから、「気密封止」されてなるものであることは明らかである(この点については、引用例の段落【0003】の記載も参照)。
(b)そして、引用発明の「圧電振動デバイス」は、上述したようにベースとリッドを接合することでパッケージを形成してなるものであることから、当該引用発明の「圧電振動デバイス」と本願補正発明の「センサパッケージ」とは、「デバイスパッケージ」である点で共通するということができる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「基板とケースとを接合することによりケース内部が気密封止されたデバイスパッケージ」である点で共通するといえる。
ただし、デバイスパッケージが、本願補正発明では、「センサ」パッケージであるのに対し、引用発明では、「圧電振動デバイス」パッケージである点で相違している。

イ.引用発明における「前記ベースの周囲には第1接合膜が形成されるとともに、該第1接合膜の各四辺のほぼ中央にそれぞれ第1窪み部が形成され、同様に、前記リッドの周囲には第2接合膜が形成されるとともに、該第2接合膜の各四辺のほぼ中央にそれぞれ第2窪み部が形成され、・・・・前記接合材が溶けると、溶けた該接合材は毛細管現象により前記第1接合膜及び前記第2接合膜の接触面に沿って流れてそれら接合膜の表面を濡らすことができ、その後接合材を凝固させて前記ベースと前記リッドとを接合し・・」によれば、
引用発明における、リッドの周囲に形成された「第2接合膜」、「接合材」は、それぞれ本願補正発明でいう、ケースの「接合部」、「接合部材」に相当し、
引用発明における、ベースの周囲に形成された「第1接合膜」は、接合材を介してリッドに形成された第2接合膜と接合されるものであることから、本願補正発明でいう「パッド」に相当するといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「前記ケースの接合部と接合部材を介して接合されるパッドが前記基板に形成され」てなるものである点で一致する。

ウ.引用発明における「・・前記リッドの周囲には第2接合膜が形成されるとともに、該第2接合膜の各四辺のほぼ中央にそれぞれ第2窪み部が形成され、前記第1窪み部の幅(直径)は前記第1接合膜の幅よりも広く、同様に、前記第2窪み部の幅(直径)は前記第2接合膜の幅よりも広く」によれば、
引用発明においても、第2接合膜についてみると、第2窪み部が各四辺のほぼ中央にそれぞれ形成され、しかも第2窪み部の幅(直径)は第2接合膜の幅よりも広いことから、第2接合膜の各辺において、第2窪み部を挟んで両側の第2接合膜の各部分が、本願補正発明でいう「凸部」に相当し、1つの辺に2つの「凸部」を有するとみることができる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記パッドに対向する前記ケースの接合部が、当該接合部の1つの辺に2つの凸部」を備える点で一致するということができる。

エ.引用発明における「前記ベースと前記リッドとを前記接合材により接合する際、前記第1窪み部又は前記第2窪み部に載置された前記接合材が溶ける前は、前記第1接合膜と前記第2接合膜との間に隙間があり、前記接合材が溶けると、溶けた該接合材は毛細管現象により前記第1接合膜及び前記第2接合膜の接触面に沿って流れてそれら接合膜の表面を濡らすことができ、その後接合材を凝固させて前記ベースと前記リッドとを接合し、接合後には、パッケージ内部は気密性があり真空又は不活性ガスで満たされてなる・・」によれば、
(a)引用発明においても、第1接合膜と第2接合膜との間には、溶けた接合材が毛細管現象により入り込める隙間つまり間隔があり、
(b)また、引用発明においても、接合材を凝固させた接合後には、パッケージ内部は気密性があり真空又は不活性ガスで満たされており、上記「ア.(a)」でも述べたとおり「気密封止」されているのであるから、当然、すべての第1接合膜と第2接合膜の間に(つまり両接合膜の四辺すべての間に)接合材がぬれ広がっているといえるものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記凸部と前記パッドとの間に前記接合部材が毛細管現象で入り込める間隔があり、すべての前記パッドと前記接合部の間に前記接合部材がぬれ広がっている」点で一致するということができる。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「基板とケースとを接合することによりケース内部が気密封止されたデバイスパッケージであって、
前記ケースの接合部と接合部材を介して接合されるパッドが前記基板に形成され、かつ、
前記パッドに対向する前記ケースの接合部が、当該接合部の1つの辺に2つの凸部を備え、
前記凸部と前記パッドとの間に前記接合部材が毛細管現象で入り込める間隔があり、
すべての前記パッドと前記接合部の間に前記接合部材がぬれ広がっている、
ことを特徴とするデバイスパッケージ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
デバイスパッケージが、本願補正発明では、「センサ」パッケージであるのに対し、引用発明では、「圧電振動デバイス」パッケージである点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
例えば特開2006-339369号公報(特に段落【0011】?【0017】、【0045】?【0047】、図1?3、図14を参照)、特開2007-67400号公報(特に段落【0021】?【0023】、図9を参照)、特開2009-158713号公報(特に段落【0002】?【0003】、図1を参照)に見られるように、気密封止されるパッケージ内に搭載されるデバイスの一つとして、「センサ」が挙げられることは周知の技術事項であり、引用発明におけるパッケージ構造を、センサのパッケージに用いること、すなわち引用発明において、搭載するデバイスとして圧電振動片に代えてセンサとし、相違点1に係る構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

<<予備的見解>>
上記「(2)」においては、引用例の図6(a)より、リッド側の第2窪み部の幅(直径)は、第2接合膜の幅よりも広いとして引用発明を認定したが、一般にこれら図面は設計図のように寸法等が正確なものでないこともあることから、図6(a)のみからでは必ずしも、第2窪み部の幅(直径)が第2接合膜の幅よりも広いとはいえず、本願補正発明と引用発明とはさらに以下の点で相違するものと認められるとした場合についても検討しておく。
[相違点2]
ケースの接合部が備える凸部について、本願補正発明では、接合部の1つの辺に「2つ以上」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定がない点。

そこで、上記相違点2について検討すると、
引用発明において、第2窪み部の幅(直径)は、接合材の量(すべての第1接合膜と第2接合膜の間にぬれ広がることができるような量)などに応じて適宜定められるものであるといえるところ、第2接合膜の幅よりも狭くなければ毛細管現象によりぬれ広がることができないといった技術的制限があるわけでもないことから、引用発明においても、第2窪み部の幅(直径)を第2接合膜の幅よりも広いものとし、第2接合膜の各辺において、第2窪み部を挟んで両側に本願補正発明でいう、2つの「凸部」を有するものとすること、すなわち相違点2に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成28年5月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年2月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基板とケースとを接合することによりケース内部が気密封止されたセンサパッケージであって、
前記ケースの接合部と接合部材を介して接合されるパッドが前記基板に形成され、かつ、
前記パッドに対向する前記ケースの接合部が、1つ以上の凸部を備え、
前記凸部と前記パッドとの間に前記接合部材が毛細管現象で入り込める間隔があり、
すべての前記パッドと前記接合部の間に前記接合部材がぬれ広がっている、
ことを特徴とするセンサパッケージ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、ケースの接合部が備える「凸部」について、単に「1つ以上」とあったのを、「当該接合部の1つの辺に2つ以上」であるとする旨の限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項(上記相違点2に係る構成)を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明から上記他の限定事項(上記相違点2に係る構成)を省いた本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-13 
結審通知日 2017-02-14 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2012-46967(P2012-46967)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 洋介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 國分 直樹
井上 信一
発明の名称 センサパッケージ及びその製造方法  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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