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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1327428
審判番号 不服2016-7226  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-18 
確定日 2017-05-09 
事件の表示 特願2012-236138「電子機器、アプリケーション配信プログラム、及び、アプリケーション配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月12日出願公開、特開2014- 85968、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月25日の出願であって、平成27年7月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年9月9日付けで手続補正がされ、平成28年2月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年5月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成28年12月26日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年2月22日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年2月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1、8、9、15に係る発明は、以下の引用文献A-Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2004-038686号公報
B.特開2004-206188号公報
C.特開2006-244321号公報
D.特開平07-295865号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-17に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-38686号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2004-54791号公報(当審において新たに引用した文献)
3.小松深志、”Linux/スマートフォン/クラウドに見る よりよいプリント環境の作り方、第2章モバイルからのプリントを考える iPhone、Androidをとりまくプリント環境の現在”、SoftwareDesign、(株)技術評論社、2011年11月18日発行、発刊253号、p.75-83(当審において新たに引用した文献)
4.特開2006-244321号公報(拒絶査定時の引用文献C)

第4 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成29年2月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-3は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
通信端末によるアプリケーションソフトウェアの取得を支援する電子機器であって、
前記電子機器の機能を利用するための通信端末用のアプリケーションソフトウェアであって対応可能な基本ソフトウェアごとに生成されたものの所在情報と、その基本ソフトウェアの識別情報とを対応付けた管理情報を前記機能ごとに区分した態様で保存する管理情報保存手段と、
前記通信端末との接続の際、当該通信端末からその基本ソフトウェアの識別情報を取得する基本ソフトウェア情報取得手段と、
前記通信端末から取得した前記基本ソフトウェアの識別情報にもとづき、当該基本ソフトウェアに対応した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を前記管理情報から抽出し、前記通信端末に送信するアプリ情報通知手段と、を備え、
前記管理情報保存手段は、前記管理情報を記憶媒体に保存し、前記記憶媒体の容量に応じた数の基本ソフトウェアに対応する前記管理情報を保存可能であり、
前記所在情報は、前記電子機器の各機能を使用する際に必要な前記アプリケーションの所在場所を示し、
前記アプリ情報通知手段は、
前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を前記機能ごとに記述した第1のwebページであって、前記通信端末に前記機能ごとに前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を一覧表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信し、
前記識別情報が前記サポート基本ソフトウェア以外を示す場合、印刷設定の確認及びネットワークやセキュリティの設定などを一元的に管理可能な一般向けの第2のwebページを作成して前記通信端末に送信する
ことを特徴とする電子機器。

【請求項2】
・・・ことを特徴とするアプリケーション配信プログラム。

【請求項3】
・・・ことを特徴とするアプリケーション配信システム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成28年12月26日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-38686号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 段落【0002】
「【0002】
【従来の技術】
従来、プリンタやルータ等といったネットワークに接続して使用されるデバイスのユーザは、最新版のデバイスドライバやファームウェア、ユーティリティソフトウェア(以下、これらも含めデバイスを制御するためのソフトウェアを総称して「デバイス制御ソフトウェア」という。)を、デバイスメーカのホームページからダウンロードしていた。ホームページ上には、デバイス制御ソフトウェアの格納場所が、デバイスの機種名や適用するオペレーティングシステム(以下、「OS」という。)毎に掲載されていた。」

(2) 段落【0012】
「【0012】
また、上記構成のデバイスにおいて、オペレーティングシステムの種別とデバイス制御ソフトウェアの格納場所とを対応付けて記録したデータベースは、デバイスに内蔵していてもよいが、当該デバイスとネットワークを介して接続された所定のサーバに記憶されているものとしてもよい。」

(3) 段落【0026】-【0031】
「【0026】
B.第1実施例:
(B1)プリンタの構成:
プリンタPTは、CPU、RAM、ROMを備えており、ROMには、Webサーバとしての機能や、以下で説明する機能を実現するためのプログラムが記録されている。CPUは、このプログラムを読み出して実行する。また、ROMには、プリンタPTの機種情報も記録されている。機種情報とは、例えば、「LP-1000」や「LP-2000」といったプリンタPTの機種名を表す情報である。
【0027】
図2は、ROMに記録されたプログラムの一部を概略的に示すブロック図である。HTTP通信モジュール10は、クライアントPCとHTTP(Hyper TextTransport Protocol)に基づく通信を行う。HTTPは、文書の転送やプログラムの実行を要求する「リクエスト」と、それに対する「レスポンス」と呼ばれるメッセージにより通信を行う。例えば、ブラウザから「index.html」というファイルの転送を要求するリクエストがプリンタPTに送信されると、プリンタPTは、指定されたファイルをレスポンスとして返信する。また、ブラウザからプリンタPTにプログラムの実行要求があると、その実行結果をレスポンスとしてブラウザに通知する。
【0028】
クライアントPCにインストールされたブラウザは、プリンタPTやサーバSVにリクエストを送信する際、そのリクエストに種々の環境変数を付加する。図3は、リクエストの一例を示す説明図である。本図では、「www.***.co.jp」というホスト名のサーバのルートディレクトリにある「driver.cgi」というプログラムの実行を要求するリクエストを示している。この内、「User-Agent」と示した環境変数にクライアントPCで用いられているOSやブラウザの名称が記述されている。図によれば、「W_98」というOS上で稼動している「Browser1」というブラウザによりリクエストが送信されたことがわかる。OS判別モジュール11は、この環境変数を解析することによりリクエストを送信したクライアントPCで利用されているOSの種類を判別する。
【0029】
ドライバ所在データベース12には、OSの種別に応じたプリンタドライバの所在が記録されている。図2で示すように、例えば、「W_98」というOSに対応するプリンタドライバは、「www.***.co.jp/driver/ w98.zip」というURLに格納されている。このデータベースは、例えばXMLで記述されたデータベースとして構成してもよいし、一般的なリレーショナルデータベースやCSV形式等によって構成することができる。XMLで記述するものとすれば、インターネットとの親和性が高いため好適である。
【0030】
ドライバ所在検索モジュール13は、ドライバ所在データベース12の中から上述のOS判別モジュール11により判別したOSに対応するプリンタドライバの所在を検索する。
【0031】
HTML生成モジュール14は、ドライバ所在検索モジュール13により検索したプリンタドライバの所在へのリンクを記述したHTMLページを生成する。生成したページは、HTTPレスポンスとしてHTTP通信モジュール10によりクライアントに送信する。図4は、ブラウザに送信されたHTMLページの一例を示す説明図である。図で示した例では、OS判別モジュール11によって判別したOSの種別(W_98)とともに、プリンタドライバの格納場所であるURL(www.***.co.jp/driver/w98.zip)へのリンクを表示している。ユーザは、このリンクをマウスでクリックすることにより、クライアントPCのOSに対応したプリンタドライバを容易にダウンロードすることができる。」

(4) 【図4】
図4には、ブラウザに、HTMLページとして、「ドライバ情報 あなたのオペレーティングシステムはW_98です。最適なプリンタドライバは、以下のURLにあります。http://www.***.co.jp/driver/w98.zip」と表示させることが記載されていると認められる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プリンタやルータ等といったネットワークに接続して使用されるデバイスの、最新版のデバイスドライバやファームウェア、ユーティリティソフトウェア(以下、これらも含めデバイスを制御するためのソフトウェアを総称して「デバイス制御ソフトウェア」という。)を、デバイスメーカのホームページからダウンロードするために、
プリンタPTは、CPU、RAM、ROMを備えており、
HTTP通信モジュール10は、クライアントPCとHTTPに基づく通信を行い、
クライアントPCにインストールされたブラウザは、プリンタPTやサーバSVにリクエストを送信する際、そのリクエストに種々の環境変数を付加し、この内、『User-Agent』と示した環境変数にクライアントPCで用いられているOSやブラウザの名称が記述されており、
OS判別モジュール11は、この環境変数を解析することによりリクエストを送信したクライアントPCで利用されているOSの種類を判別し、
ドライバ所在データベース12には、OSの種別に応じたプリンタドライバの所在が記録されており、例えば、『W_98』というOSに対応するプリンタドライバは、『www.***.co.jp/driver/ w98.zip』というURLに格納されており、
ここで、オペレーティングシステムの種別とデバイス制御ソフトウェアの格納場所とを対応付けて記録したデータベースは、デバイスに内蔵しており、
ドライバ所在検索モジュール13は、ドライバ所在データベース12の中から上述のOS判別モジュール11により判別したOSに対応するプリンタドライバの所在を検索し、
HTML生成モジュール14は、ドライバ所在検索モジュール13により検索したプリンタドライバの所在へのリンクを記述したHTMLページを生成し、
生成したページは、HTTPレスポンスとしてHTTP通信モジュール10によりクライアントに送信し、
ブラウザに、HTMLページとして、『ドライバ情報 あなたのオペレーティングシステムはW_98です。最適なプリンタドライバは、以下のURLにあります。http://www.***.co.jp/driver/w98.zip』と表示させる、
プリンタPT。」

2.引用文献2?4について
(1) 引用文献2
平成28年12月26日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2004-54791号公報)には、図面(特に、図2、図6)とともに次の事項が記載されている。

ア 段落【0091】
「【0091】
アプリケーション130は、ページ記述言語(PDL)、PCLおよびポストスクリプト(PS)を有するプリンタ用のアプリケーションであるプリンタアプリ111と、コピー用アプリケーションであるコピーアプリ112と、ファクシミリ用アプリケーションであるファックスアプリ113と、スキャナ用アプリケーションであるスキャナアプリ114と、ネットワークファイル用アプリケーションであるネットファイルアプリ115と、工程検査用アプリケーションである工程検査アプリ116と、上述のWEBアプリ117、VAS118とを有している。」

イ 段落【0108】
「【0108】
図6は、アプリケーションリスト261の一例を示す説明図である。アプリケーションリスト261は、図6に示すように、外部アプリ名と、ftpサイトアドレスと、サイト内パス(ディレクトリ)から構成される。なお、ICカード240に格納されているアプリケーションリスト243は、外部アプリ名と、パスのみが設定されており、ftpサイトアドレスは設定されていない。」

(2) 引用文献3
平成28年12月26日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3の(小松深志、”Linux/スマートフォン/クラウドに見る よりよいプリント環境の作り方、第2章モバイルからのプリントを考える iPhone、Androidをとりまくプリント環境の現在”、SoftwareDesign、(株)技術評論社、2011年11月18日発行、発刊253号、p.75-83)における「プリント専用アプリケーション」のセクション(76ページ左欄6行?右欄11行)には、図2(76ページ)、表3「プリントアプリケーションの機能」(82ページ)とともに、次に事項が記載されている。
「〇 プリント専用アプリケーション
各プリンタメーカーや、アプリケーションベンダのプリント専用アプリケーションを利用することでプリントが可能になります。基本的にプリントはアプリケーションの中から行います。アプリケーションによっては、プリントアプリケーションと連携してプリントが可能になるものがあります。
対応プリンタは各アプリケーションにより異なりますが、最新のプリンタに限らず、既存の手持ちのプリンタもプリントできる場合がありますので、アプリケーションの対応状況を確認してみてください。
各アプリケーションはプリントオブジェクトをプリンタの言語に変換して、プリンタと直接通信をしてプリントを行います(図2)。」

(3) 引用文献2,3における、上記(1)、(2)の記載より、一般に、多機能プリンタなどの「電子機器」の制御において、プリント機能などの電子機器の「機能ごとに」ソフトウエアを用意することで、必要な機能に応じて複数のソフトウエアを使い分ける点は、周知技術であると認められる。

(4) 引用文献4
平成28年12月26日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2006-244321号公報)の段落【0013】「…情報処理装置6をプリンタ3に近づけることにより、自動または手動操作により、プリンタ3の識別子(以下「ID」という)を取得する。情報処理装置6はIrDAのファイル転送機能を利用して、プリンタ3からIDを記したファイルを受信する。」の記載、段落【0016】「…また、プリンタ3の識別子を取得する手段としては、IrDA赤外線通信だけでなく、RFIDやBluetoothやUWBを用いてもよい。」の記載からみて、当該引用文献4には、省力化のために、ユーザのアドレスやID入力操作を自動化するという周知の技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「クライアントPC」は、本願発明における「通信端末」に相当する。
引用発明における「プリンタPT」は、本願発明における「電子機器」に相当する。
引用発明における「プリンタやルータ等といったネットワークに接続して使用されるデバイスの、最新版のデバイスドライバやファームウェア、ユーティリティソフトウェア」である「デバイス制御ソフトウェア」は、本願発明における「アプリケーションソフトウェア」に相当する。
よって、ユーティリティソフトウェアなどの「デバイス制御ソフトウェア」を、デバイスメーカのホームページからダウンロードする目的で、「リクエストを送信したクライアントPCで利用されているOSの種類を判別し 」、「プリンタドライバの所在へのリンクを記述したHTMLページを生成し」、「クライアントに送信する」、引用発明における「プリンタPT」は、本願発明における「通信端末によるアプリケーションソフトウェアの取得を支援する電子機器」に相当する。

イ 引用発明における「デバイス制御ソフトウェア」である「プリンタドライバの所在」は、本願発明における「所在情報」に相当する。
引用発明における、リクエストを送信したクライアントPCで利用されている「OSの種別」は、本願発明における「基本ソフトウェアの識別情報」に相当する。
引用発明における「ドライバ所在データベース12」は、本願発明における「管理情報保存手段」に相当する。
よって、引用発明における「ドライバ所在データベース12には、OSの種別に応じたプリンタドライバの所在が記録されており、例えば、『W_98』というOSに対応するプリンタドライバは、『www.***.co.jp/driver/ w98.zip』というURLに格納されて」いることは、本願発明における「前記電子機器の機能を利用するための通信端末用のアプリケーションソフトウェアであって対応可能な基本ソフトウェアごとに生成されたものの所在情報と、その基本ソフトウェアの識別情報とを対応付けた管理情報を前記機能ごとに区分した態様で保存する管理情報保存手段」と、「前記電子機器の機能を利用するための通信端末用のアプリケーションソフトウェアであって対応可能な基本ソフトウェアごとに生成されたものの所在情報と、その基本ソフトウェアの識別情報とを対応付けた管理情報を、保存する管理情報保存手段」である点で共通するといえる。

ウ 引用発明における「OS判別モジュール11」は、本願発明における「基本ソフトウェア情報取得手段」に相当する。
よって、引用発明における「クライアントPCにインストールされたブラウザは、プリンタPTやサーバSVにリクエストを送信する際、そのリクエストに種々の環境変数を付加し、この内、『User-Agent』と示した環境変数にクライアントPCで用いられているOSやブラウザの名称が記述されており」、「OS判別モジュール11は、この環境変数を解析することによりリクエストを送信したクライアントPCで利用されているOSの種類を判別し 」ている、引用発明における「OS判別モジュール11」は、本願発明における「前記通信端末との接続の際、当該通信端末からその基本ソフトウェアの識別情報を取得する基本ソフトウェア情報取得手段」に相当する。

エ 引用発明における「ドライバ所在検索モジュール13は、ドライバ所在データベース12の中から上述のOS判別モジュール11により判別したOSに対応するプリンタドライバの所在を検索し」、「HTML生成モジュール14は、ドライバ所在検索モジュール13により検索したプリンタドライバの所在へのリンクを記述したHTMLページを生成し」、「生成したページは、HTTPレスポンスとしてHTTP通信モジュール10によりクライアントに送信する」という一連の処理を行う、引用発明のプリンタPTにおける「ドライバ所在検索モジュール13」、「HTML生成モジュール14」、「HTTP通信モジュール10」は全体として、本願発明における「前記通信端末から取得した前記基本ソフトウェアの識別情報にもとづき、当該基本ソフトウェアに対応した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を前記管理情報から抽出し、前記通信端末に送信するアプリ情報通知手段」に相当する。

オ 引用発明のプリンタPTが備える「RAM、ROM」は、本願発明における「記憶媒体」に相当する。
よって、引用発明における「ドライバ所在データベース12には、OSの種別に応じたプリンタドライバの所在が記録されており、例えば、『W_98』というOSに対応するプリンタドライバは、『www.***.co.jp/driver/ w98.zip』というURLに格納されており」、「ここで、オペレーティングシステムの種別とデバイス制御ソフトウェアの格納場所とを対応付けて記録したデータベースは、デバイスに内蔵して」いることは、本願発明における「前記管理情報保存手段は、前記管理情報を記憶媒体に保存し、前記記憶媒体の容量に応じた数の基本ソフトウェアに対応する前記管理情報を保存可能であ」ることと、「前記管理情報保存手段は、前記管理情報を記憶媒体に保存し、基本ソフトウェアに対応する前記管理情報を保存可能であ」る点で共通するといえる。

カ 引用発明における「ドライバ所在データベース12には、OSの種別に応じたプリンタドライバの所在が記録されており、例えば、『W_98』というOSに対応するプリンタドライバは、『www.***.co.jp/driver/ w98.zip』というURLに格納されて」いることは、本願発明における「前記所在情報は、前記電子機器の各機能を使用する際に必要な前記アプリケーションの所在場所を示し」ていることに相当する。

キ 引用発明における「ドライバ所在検索モジュール13は、ドライバ所在データベース12の中から上述のOS判別モジュール11により判別したOSに対応するプリンタドライバの所在を検索し」、「HTML生成モジュール14は、ドライバ所在検索モジュール13により検索したプリンタドライバの所在へのリンクを記述したHTMLページを生成し」、「生成したページは、HTTPレスポンスとしてHTTP通信モジュール10によりクライアントに送信し」、クライアントPC側で、「ブラウザに、HTMLページとして、『ドライバ情報 あなたのオペレーティングシステムはW_98です。最適なプリンタドライバは、以下のURLにあります。http://www.***.co.jp/driver/w98.zip』と表示させる」ことは、本願発明における「前記アプリ情報通知手段は、前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を前記機能ごとに記述した第1のwebページであって、前記通信端末に前記機能ごとに前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を一覧表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信し、前記識別情報が前記サポート基本ソフトウェア以外を示す場合、印刷設定の確認及びネットワークやセキュリティの設定などを一元的に管理可能な一般向けの第2のwebページを作成して前記通信端末に送信する」ことと、「前記アプリ情報通知手段は、前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を、記述した第1のwebページであって、前記通信端末に、前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を、表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信し」ている点で共通するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「通信端末によるアプリケーションソフトウェアの取得を支援する電子機器であって、
前記電子機器の機能を利用するための通信端末用のアプリケーションソフトウェアであって対応可能な基本ソフトウェアごとに生成されたものの所在情報と、その基本ソフトウェアの識別情報とを対応付けた管理情報を、保存する管理情報保存手段と、
前記通信端末との接続の際、当該通信端末からその基本ソフトウェアの識別情報を取得する基本ソフトウェア情報取得手段と、
前記通信端末から取得した前記基本ソフトウェアの識別情報にもとづき、当該基本ソフトウェアに対応した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を前記管理情報から抽出し、前記通信端末に送信するアプリ情報通知手段と、を備え、
前記管理情報保存手段は、前記管理情報を記憶媒体に保存し、基本ソフトウェアに対応する前記管理情報を保存可能であり、
前記所在情報は、前記電子機器の各機能を使用する際に必要な前記アプリケーションの所在場所を示し、
前記アプリ情報通知手段は、
前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を、記述した第1のwebページであって、前記通信端末に、前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を、表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信する
ことを特徴とする電子機器。」である点。

(相違点1) 本願発明1の「管理情報保存手段」は、アプリケーションソフトウェアの所在情報と、基本ソフトウェアの識別情報とを対応付けた管理情報を、「前記機能ごとに区分した態様で」保存するという構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2) 本願発明1の「管理情報保存手段」は「前記記憶媒体の容量に応じた数の」基本ソフトウェアに対応する前記管理情報を保存可能であるという構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点3)本願発明1の「アプリ情報通知手段」は、前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「前記機能ごとに」記述した第1のwebページであって、前記通信端末に「前記機能ごとに」前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「一覧」表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信し、「前記識別情報が前記サポート基本ソフトウェア以外を示す場合、印刷設定の確認及びネットワークやセキュリティの設定などを一元的に管理可能な一般向けの第2のwebページを作成して前記通信端末に送信する」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討すると、相違点3に係る本願発明1の「アプリ情報通知手段」は、前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「前記機能ごとに」記述した第1のwebページであって、前記通信端末に「前記機能ごとに」前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「一覧」表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信し、「前記識別情報が前記サポート基本ソフトウェア以外を示す場合、印刷設定の確認及びネットワークやセキュリティの設定などを一元的に管理可能な一般向けの第2のwebページを作成して前記通信端末に送信する」という構成は、上記引用文献1-4には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2、3について
本願発明2、3も、本願発明1の「アプリ情報通知手段」は、前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「前記機能ごとに」記述した第1のwebページであって、前記通信端末に「前記機能ごとに」前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「一覧」表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信し、「前記識別情報が前記サポート基本ソフトウェア以外を示す場合、印刷設定の確認及びネットワークやセキュリティの設定などを一元的に管理可能な一般向けの第2のwebページを作成して前記通信端末に送信する」という同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年2月22日付けの補正により、補正後の請求項1-3は、「アプリ情報通知手段」は、前記識別情報がサポート基本ソフトウェアを示す場合、前記管理情報から抽出した前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「前記機能ごとに」記述した第1のwebページであって、前記通信端末に「前記機能ごとに」前記アプリケーションソフトウェアの所在情報を「一覧」表示させる第1のwebページを前記通信端末に送信し、「前記識別情報が前記サポート基本ソフトウェア以外を示す場合、印刷設定の確認及びネットワークやセキュリティの設定などを一元的に管理可能な一般向けの第2のwebページを作成して前記通信端末に送信する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Dには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-3は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2012-236138(P2012-236138)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 電子機器、アプリケーション配信プログラム、及び、アプリケーション配信システム  
代理人 渡邊 喜平  
代理人 岡野 功  

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