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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1327558
審判番号 不服2016-5588  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-15 
確定日 2017-04-27 
事件の表示 特願2011-258629「光学シート及びそれを用いた光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月10日出願公開、特開2013-113955〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年11月28日の出願であって、平成27年8月5日に手続補正書が提出され、平成28年1月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
なお、平成27年8月5日提出の手続補正書による手続補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするものであり、平成28年4月15日提出の手続補正書による手続補正は、明細書についてするものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成27年8月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「少なくとも一方の面に凹凸構造を有する光学シートであって、
前記凹凸構造は、突起又は窪みを形成する凹凸単位を互いに異なる少なくとも2つの方向に繰り返し配列してなり、
前記凹凸単位は、上部領域と下部領域とを有し、前記光学シートの法線を含む断面の形状の傾斜角が前記上部領域と前記下部領域との境界において不連続に変化する箇所を持ち、
前記凹凸単位が前記突起である場合には、前記下部領域の形状が大略球面の一部である輪帯状をなし、前記凹凸単位が前記窪みである場合には、前記上部領域の形状が大略球面の一部である輪帯状をなすことを特徴とする光学シート。」(以下「本願発明」という。)

3 引用文献の記載事項及び引用発明
本願の出願前に頒布された引用文献であり、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された国際公開第2010/147414号(以下「引用例」という。)には、「LIGHT EXTRACTION MEMBER AND ORGANIC LIGHT EMITTING DIODE INCLUDING THE SAME(日本語訳:光取り出し部材及びこれを含む有機発光ダイオード)」(発明の名称)に関し、図とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(1)「Claims
[Claim 1] A light extraction member comprising a plurality of unit lenses arranged on one surface thereof,
wherein each of the unit lenses comprises a combination of two or more kinds of conic lenses.
[Claim 2] The light extraction member of claim 1, wherein the pitch between the unit lenses ranges from 20 to 500μm.
[Claim 3] The light extraction member of claim 1, wherein the height of the unit lenses ranges from 10 to 100% of the pitch between the unit lenses.
[Claim 4] The light extraction member of claim 1, wherein the unit lenses are arranged in a honeycomb structure.
[Claim 5] The light extraction member of claim 1, wherein each of the unit lenses comprises a first conic lens forming the lower part of the unit lens and a second conic lens forming the upper part of the unit lens.
[Claim 6] The light extraction member of claim 5, wherein the diameter of the bottom surface of the first conic lens ranges from 80 to 116% of the pitch between the unit lenses.
[Claim 7] The light extraction member of claim 5, wherein the diameter of the bottom surface of the second conic lenses ranges from 40 to 80% of the diameter of the bottom surface of the first conic lens.
[Claim 8] The light extraction member of claim 5, wherein the first conic lens has a lens shape expressed as [Equation 1], and the second conic lens has a lens shape expressed as [Equation 2]:
[Equation 1]

where r_(1) represents a curvature radius at a virtual vertex of the first conic lens,k_(1) represents a conic constant of the first conic lens, and H_(1) represents a height from the bottom surface of the first conic lens to the virtual vertex, and
[Equation 2]

where r_(2) represents a curvature radius at the vertex of the second conic lens, k_(2) represents the conic constant of the second conic lens, H_(2) represents a height from the bottom surface of the second conic lens to the vertex, and y_(0) represents a height from the bottom surface of the first conic lens to a position where the diameter of the bottom surface of the second conic lens is equalized to the diameter of the cross-section of the first conic lens.
[Claim 9] The light extraction member of claim 8, wherein r_(1) ranges from 0.1 to 200% of the diameter of the bottom surface of the first conic lens.
[Claim 10] The light extraction member of claim 8, wherein k_(1) ranges from -25 to - 1.2.
[Claim 11] The light extraction member of claim 8, wherein r_(2) has a different value from r_(1).
[Claim 12] The light extraction member of claim 11, wherein r_(2) ranges from 50 to 3000% of the diameter of the bottom surface of the second conic lens.
[Claim 13] The light extraction member of claim 8, wherein k_(2) has a different value from k_(1).
[Claim 14] The light extraction member of claim 13, wherein k_(2) ranges from -2.5 to 0.
[Claim 15] An organic light emitting diode (OLED) comprising the light extraction member of any one of claims 1 to 14.」(12頁1行?13頁19行)
(日本語訳:特許請求の範囲
[請求項1]
一面に配列された複数の単位レンズからなり、前記単位レンズの各々は2又はそれ以上の種類のコーニックレンズの結合からなる光取り出し部材。
[請求項2]
前記複数の単位レンズの間のピッチは、20から500μmの範囲である請求項1に記載の光取り出し部材。
[請求項3]
前記複数の単位レンズの高さは、単位レンズ間のピッチの10から100%の範囲である請求項1に記載の光取り出し部材。
[請求項4]
前記複数の単位レンズはハニカム構造で配列される請求項1に記載の光取り出し部材。
[請求項5]
前記複数の単位レンズの各々は、単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズと単位レンズの上部を形成する第2コーニックレンズとからなる請求項1に記載の光取り出し部材。
[請求項6]
前記第1コーニックレンズの底面の直径は、前記単位レンズ間のピッチの80から116%の範囲である請求項5に記載の光取り出し部材。
[請求項7]
前記第2コーニックレンズの底面の直径は、前記第1コーニックレンズの底面の直径の40から80%の範囲である請求項5に記載の光取り出し部材。
[請求項8]
前記第1コーニックレンズは下記数式1で表されるレンズ形状を有し、前記第2コーニックレンズは下記数式2で表されるレンズ形状を有する請求項5に記載の光取り出し部材。
[数式1]

前記数式1において、r_(1)は第1コーニックレンズの仮想の頂点での曲率半径を表し、k_(1)は第1コーニックレンズのコーニック定数を表し、H_(1)は第1コーニックレンズの底面から仮想の頂点までの高さを表し、
[数式2]

前記数式2において、r_(2)は第2コーニックレンズの頂点での曲率半径を表し、k_(2)は第2コーニックレンズのコーニック定数を表し、H_(2)は第2コーニックレンズの底面から頂点までの高さを表し、y_(0)は第2コーニックレンズの底面の直径が第1コーニックレンズの断面の直径と等しくなる位置の第1コーニックレンズの底面からの高さを表す。
[請求項9]
前記r_(1)は、前記第1コーニックレンズの底面の直径の0.1から200%の範囲である請求項8に記載の光取り出し部材。
[請求項10]
前記k_(1)は、-25から-1.2の範囲である請求項8に記載の光取り出し部材。
[請求項11]
前記r_(2)はr_(1)と異なる値を有する請求項8に記載の光取り出し部材。
[請求項12]
前記r_(2)は、前記第2コーニックレンズの底面の直径の50から3000%の範囲である請求項11に記載の光取り出し部材。
[請求項13]
前記k_(2)は前記k_(1)と異なる値を有する請求項8に記載の光取り出し部材。
[請求項14]
前記k_(2)は-2.5から0の範囲である請求項13に記載の光取り出し部材。
[請求項15]
請求項1から14の何れか1項に記載の光取り出し部材を含む有機発光素子。)

(2)「[27] FIG. 1 is a diagram illustrating an example of a light extraction member according to an embodiment of the present invention. Referring to FIG. 1, the light extraction member 10 according to the embodiment of the present invention includes a plurality of unit lenses 20 two-dimensionally arranged on one surface thereof.
[28] The unit lens 20 according to the embodiment of the present invention includes a combination of two or more kinds of conic lenses.
[29] Each of the conic lenses refers to a lens formed in a shape having a curved surface. For example, the conic lens may include a hemisphere lens, an elliptical lens, a parabolic lens, a hyperbolic lens and so on. The shape of the conic lens is expressed as a function in which a curvature radius at the vertex of the lens and a conic constant are set to parameters. The curvature radius is usually represented by r, and the conic constant is usually represented by k. In this case, the conic constant k may determine the shape of the lens. When k=0, a circular lens is formed. When k=-l, a parabolic lens is formed. When -l (日本語訳:
[27]Fig.1は、本発明の一実施形態による光取り出し部材の一例を説明する図面である。Fig.1を参照すると、本発明の実施形態による光取り出し部材10は、その一面に2次元的に配列された複数の単位レンズ20を含む。
[28]本発明の実施形態の単位レンズ20は、2又はそれ以上の種類のコーニックレンズの結合を含む。
[29]各コーニックレンズは、曲面を有する形状に成形されたレンズに該当する。例えば、前記コーニックレンズは、半球型レンズ、楕円型レンズ、放物線型レンズ、双曲線型レンズなどを含む。前記コーニックレンズの形状は、レンズの頂点での曲率半径とコーニック定数を変数とする関数で表される。曲率半径は、通常、rで表され、コーニック定数は、通常、kで表される。この場合において、前記コーニック定数kはレンズの形状を定める。k=0のとき、円型レンズが形成される。k=-1のとき、放物線型レンズが形成される。-1<k<0のとき、楕円型レンズが形成される。k<-1のとき、双曲線型レンズが形成される。)

(3)「[34] Meanwhile, the two-dimensional arrangement form of the unit lenses is not specifically limited, and a designer may select a proper form. FIG. 3 illustrates an arrangement example of the unit lenses 20 according to the embodiment of the present invention, showing an arrangement state of the bottom surfaces of the unit lenses. Referring to FIG. 3, the unit lenses according to the embodiment of the present invention may be arranged in a honeycomb structure. When the arrangement of the unit lenses has a honeycomb structure, a flat space (referred to as a gap) between the respective lenses may be minimized. The arrangement may exhibit an excellent light extraction effect, compared with other arrangements. Furthermore, although not illustrated, the unit lenses according to the embodiment of the present invention may be arranged in such a manner as to have a slight gap between the lenses.」(5頁7行?17行)
(日本語訳:
[34]一方、前記単位レンズの2次元配列の形態は特に限定されず、設計者が適切な形態を選択することができる。Fig.3は本発明の実施形態による単位レンズ20の配列の一例を説明するためのもので、前記単位レンズの底面の配列状態を示している。Fig.3を参照すると、本発明の実施形態による単位レンズは、ハニカム構造に配列されてよい。前記単位レンズの配列がハニカム構造であるとき、個々のレンズ間の平らな空間(以下「隙間」という。)を最小化することができる。当該配列は、他の配列と比べて、優れた光取り出し効果を示し得る。さらに、図示されていないが、本発明の実施形態による単位レンズは、レンズ間に僅かな隙間を有するような形態で配列されてもよい。)

(4)Fig.1、Fig.2及びFig.3は次のとおりのものである。
[Fig.1]


[Fig.2]


[Fig.3]


(5)上記(1)ないし(4)から、引用例には、その特許請求の範囲において、請求項8に係る発明として、次の発明が記載されているものと認められる。
「一面に配列された複数の単位レンズからなり、前記単位レンズの各々は2又はそれ以上の種類のコーニックレンズの結合からなる光取り出し部材であって、
前記複数の単位レンズの各々は、単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズと単位レンズの上部を形成する第2コーニックレンズとからなり、
前記第1コーニックレンズは下記数式1で表されるレンズ形状を有し、前記第2コーニックレンズは下記数式2で表されるレンズ形状を有する、
光取り出し部材。
[数式1]

前記数式1において、r_(1)は第1コーニックレンズの仮想の頂点での曲率半径を表し、k_(1)は第1コーニックレンズのコーニック定数を表し、H_(1)は第1コーニックレンズの底面から仮想の頂点までの高さを表し、
[数式2]

前記数式2において、r_(2)は第2コーニックレンズの頂点での曲率半径を表し、k_(2)は第2コーニックレンズのコーニック定数を表し、H_(2)は第2コーニックレンズの底面から頂点までの高さを表し、y_(0)は第2コーニックレンズの底面の直径が第1コーニックレンズの断面の直径と等しくなる位置の第1コーニックレンズの底面からの高さを表する。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「単位レンズ」は、2又はそれ以上の種類のコーニックレンズの結合からなるところ、2種類のコーニックレンズが結合したものは、引用例のFig.2から見ても明らかなように、凸構造を有する突起状のものである。したがって、引用発明の「単位レンズ」は、本願発明の「突起」「を形成する凹凸単位」に相当する。
また、引用発明の「光取り出し部材」は、複数の「単位レンズ」が一面に配列されたシート状のものである(このことは、引用例のFig.1からも見てとれる。)ところ、「単位レンズ」が光学部材であることは明らかである。したがって、引用発明の「光取り出し部材」は、本願発明の「光学シート」に相当する。
さらに、引用発明の「単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズ」及び「単位レンズの上部を形成する第2コーニックレンズ」は、各々、「単位レンズ」(本願発明の「凹凸単位」に相当。以下、引用発明の構成に相当する本願発明の構成を括弧内に記す。)の下部及び上部に位置する領域であるから、本願発明の「凹凸単位」が有する「下部領域」及び「上部領域」に相当する。

(2)上記(1)に示したとおり、引用発明の「光取り出し部材」(「光学シート」)は、複数の「単位レンズ」(「凹凸単位」)が一面に配列されたシート状のものであり、「単位レンズ」(「凹凸単位」)が配列されたシートは凹凸構造を有するから、引用発明の「光取り出し部材」と、本願発明の「光学シート」とは、「少なくとも一方の面に凹凸構造を有する光学シートであ」る点で一致する。

(3)引用発明の「光取り出し部材」(「光学シート」)が有する凹凸構造は、上記(1)に示したとおり、「単位レンズ」(「凹凸単位」)が一面に配列されたものであるところ、前記「単位レンズ」(「凹凸単位」)は、凸構造を有する突起状のものである(上記(1)参照。)。
また、引用発明の「単位レンズ」(「凹凸単位」)は、一面に、すなわち、2次元的に繰り返し配列されている。
したがって、引用発明の「光取り出し部材」における「凹凸構造」と、本願発明の「光学シート」における「凹凸構造」とは、「突起を形成する凹凸単位を繰り返し配列してな」る点で一致する。

(4)引用発明の「単位レンズ」(「凹凸単位」)は、上記(1)に示したとおり、その「下部を形成する第1コーニックレンズ」(下部領域)と、その「上部を形成する第2コーニックレンズ」(上部領域)とを有するところ、第1コーニックレンズは上記3(4)の数式1で表されるレンズ形状を有し、第2コーニックレンズは上記3(4)の数式2で表されるレンズ形状を有するものである。ここで、上記数式1で表されるレンズ形状と上記数式2で表されるレンズ形状とは、一般的には相似形でない。そうすると、第2コーニックレンズと第1コーニックレンズとが相似形でないのであるから、前者を上部に後者を下部にして両者を重ねた場合、その断面における輪郭線の傾斜角が、両者が接続する箇所において不連続となることは明らかである(なお、このことは、引用例のFig.2からも見てとれる。)。
したがって、引用発明の「単位レンズ」と、本願発明の「凹凸単位」とは、「上部領域と下部領域とを有し、前記光学シートの法線を含む断面の形状の傾斜角が前記上部領域と前記下部領域との境界において不連続に変化する箇所を持」つ点で一致する。

(5)上記(1)ないし(4)からみて、本願発明と引用発明とは、
「少なくとも一方の面に凹凸構造を有する光学シートであって、
前記凹凸構造は、突起を形成する凹凸単位を繰り返し配列してなり、
前記凹凸単位は、上部領域と下部領域とを有し、前記光学シートの法線を含む断面の形状の傾斜角が前記上部領域と前記下部領域との境界において不連続に変化する箇所を持つ、
光学シート。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記「凹凸単位」の「繰り返し配列」が、
本願発明では、「互いに異なる少なくとも2つの方向」への配列であるのに対し、
引用発明では、互いに異なる少なくとも2つの方向への配列とは特定されていない点。

相違点2:
前記「凹凸単位」が、
本願発明では、「前記突起である場合」には、「前記下部領域の形状が大略球面の一部である輪帯状」をなし、「前記窪みである場合」には、「前記上部領域の形状が大略球面の一部である輪帯状」をなすのに対し、
引用発明では、突起である単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズの形状が大略球面の一部であるとは特定されていない点。

5 判断
(1)相違点1について
ア 引用発明では、「単位レンズ」(「凹凸単位」)の「光取り出し部材」(「光学シート」)の「一面」への「配列」は、規則的な配列であるとも、不規則な配列であるとも、いずれとも特定されていないから、当該配列は任意の配列であってよい。
また、引用例の段落[34]には、「…the two-dimensional arrangement form of the unit lenses is not specifically limited, and a designer may select a proper form. (日本語訳:・・・前記単位レンズの2次元配列の形態は特に限定されず、設計者が適切な形態を選択することができる。)」との記載がある。

イ 引用例の段落[27]の「Referring to FIG. 1, the light extraction member 10 according to the embodiment of the present invention includes a plurality of unit lenses 20 two-dimensionally arranged on one surface thereof.(日本語訳:Fig.1を参照すると、本発明の実施形態による光取り出し部材10は、その一面に2次元的に配列された複数の単位レンズ20を含む。)」との記載及びFig.1からは、「単位レンズ」(「凹凸単位」)が正方格子を形成するような形態で2次元的に配列されている状況が把握でき、また、引用例の段落[34]の「Referring to FIG. 3, the unit lenses according to the embodiment of the present invention may be arranged in a honeycomb structure.(日本語訳:Fig.3を参照すると、本発明の実施形態による単位レンズは、ハニカム構造に配列されてよい。)」との記載及びFig.3からは、「単位レンズ」(「凹凸単位」)がハニカム構造に配列されている状況が把握できる。ここで、正方格子を形成するような形態での2次元的な配列においては、「単位レンズ」(「凹凸単位」)は、互いに異なる4つの方向(0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向)に繰り返し配列され、また、ハニカム構造の配列においては、「単位レンズ」(「凹凸単位」)は、互いに異なる3つの方向(0°方向、60°方向及び120°方向)に繰り返し配列されるものである。

ウ 上記ア及びイからみて、引用発明において、「単位レンズ」(「凹凸単位」)の「光取り出し部材」(「光学シート」)の「一面」への「配列」を、互いに異なる3つの方向又は4つの方向への繰り返し配列となすこと、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用例の記載に基づいて容易になし得たことである。

(2)相違点2について
ア 引用例の段落[27]ないし[29](上記3(2)参照。)には、「Referring to FIG. 1, the light extraction member 10 according to the embodiment of the present invention includes a plurality of unit lenses 20 two-dimensionally arranged on one surface thereof. The unit lens 20 according to the embodiment of the present invention includes a combination of two or more kinds of conic lenses. Each of the conic lenses refers to a lens formed in a shape having a curved surface. For example, the conic lens may include a hemisphere lens, an elliptical lens, a parabolic lens, a hyperbolic lens and so on. The shape of the conic lens is expressed as a function in which a curvature radius at the vertex of the lens and a conic constant are set to parameters. The curvature radius is usually represented by r, and the conic constant is usually represented by k. In this case, the conic constant k may determine the shape of the lens. When k=0, a circular lens is formed. When k=-l, a parabolic lens is formed. When -l 上記3(5)の数式1や数式2、すなわち、レンズの頂点での曲率半径rとコーニック定数kを変数とする関数で表される引用発明のコーニックレンズは、引用例の段落[29]に記載されているように、コーニック定数kが当該レンズの形状を定めるものであり、k=0のとき円型レンズが、k=-1のとき放物線型レンズが、-1<k<0のとき楕円型レンズが、k<-1のとき双曲線型レンズが、それぞれ形成されるものである。

イ 本願発明の凹凸単位の下部領域(ただし、前記凹凸単位が突起である場合に限る。)の形状は、大略球面の一部である輪帯状である。ここで、「大略球形」の意味は、本願明細書の段落【0022】に、「ここで、凹凸単位13の形状または対称性につき『大略』とは、必ずしも幾何学的に厳密な各形状または各対称性であるもののみならず、全体形状において幾何学的に厳密な形状または対称性からのずれがあってもよく、または部分的に幾何学的に厳密な形状または対称性からの変形があってもよいことを意味する。但し、このずれ又は変形は、凹凸単位13の縦断面形状の傾斜角に不連続を生じさせない程度のものである。」と記載されていることからみて、厳密な球状、すなわち真球形を含むが、真球形からの形状のずれや変形(ただし、当該ずれ又は変形は、凹凸単位の縦断面形状の傾斜角に不連続を生じさせない程度のもの)があってもよいのであるから、例えば、楕円体をも含み得るとの意味に解される。
すなわち、本願発明の凹凸単位の下部領域(ただし、前記凹凸単位が突起である場合に限る。)の形状は、球面の一部である輪帯状であり得るとともに、楕円体面の一部である輪帯状でもあり得る。

ウ 上記アからみて、引用発明において、上記3(5)の数式1のコーニック定数k_(1)を、k_(1)=0となすこと(すなわち、「単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズ」(下部領域)の形状を円型レンズの一部となすこと)、あるいは、-1<k_(1)<0となすこと(すなわち、「第1コーニックレンズ」(下部領域)の形状を楕円型レンズの一部となすこと)は、当業者が引用例の記載に基づいて容易になし得たことである。

エ 引用発明において、「単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズ」(下部領域)の上部には、「単位レンズの上部を形成する第2コーニックレンズ」(上部領域)が結合しており、「第1コーニックレンズ」(下部領域)は、その頂点(Fig.2のA点)付近が「第2コーニックレンズ」(上部領域)の底面によって水平に切り取られた形状となっている(Fig.2では、頂点付近の切り取られた部分が破線で表現されている。)。すなわち、当該「第1コーニックレンズ」(下部領域)は、輪帯形状である。
引用発明において、k_(1)=0となした態様、すなわち、「単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズ」(下部領域)の形状を円型レンズの一部となした態様や、-1<k_(1)<0となした態様、すなわち、「単位レンズの下部を形成する第1コーニックレンズ」(下部領域)の形状を楕円型レンズの一部となした態様においては、「第1コーニックレンズ」(下部領域)が円型レンズ又は楕円型レンズの一部である輪帯形状となる。

オ 上記エからみて、引用発明においてk_(1)=0又は-1<k_(1)<0となした場合の「第1コーニックレンズ」(下部領域)の形状は、円形レンズの一部である輪帯状又は楕円型レンズの一部である輪帯状であり、また、上記イからみて、本願発明の凹凸単位の下部領域(ただし、前記凹凸単位が突起である場合に限る。)の形状は、球面の一部である輪帯状であり得るとともに、楕円体面の一部である輪帯状でもあり得る。そうすると、引用発明において、引用例の記載に基づいて、k_(1)=0又は-1<k_(1)<0となしたものは、相違点2に係る本願発明の構成を具備したものとなる。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用例には「・・・一方、コーニック定数であるk_(1)は-1.2より大きいか、-25より小さい時には光取り出しの改善効果が殆ど現れず、」との記載があり(当審注:当該記載は、引用例の段落[41]にある。)、光取り出しの改善効果のためには第1コーニックレンズは双曲線型のレンズを用い、「双曲線型以外のレンズ」(例えば、半球型レンズ)が排除されることは明らかである等、縷々主張する。
しかしながら、請求人が指摘する記載は、引用例の下位クレーム(請求項10)に対応する実施形態に関する記載であって、引用例に記載の光取り出し部材全般に当てはまるものではないから、引用発明における「第1コーニックレンズ」を円型レンズや楕円形レンズとすることに対する阻害要因というほどのものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(4)まとめ
上記(1)ないし(3)からみて、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-21 
結審通知日 2017-02-28 
審決日 2017-03-15 
出願番号 特願2011-258629(P2011-258629)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹山▲崎▼ 和子小西 隆  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 渡邉 勇
西村 仁志
発明の名称 光学シート及びそれを用いた光学装置  
代理人 仲野 孝雅  
代理人 関口 正夫  

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