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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09G 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G |
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管理番号 | 1327701 |
審判番号 | 不服2016-15049 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-10-06 |
確定日 | 2017-05-23 |
事件の表示 | 特願2015-511422「目のトラッキングに基づくディスプレイの一部の選択的強調」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日国際公開、WO2013/169237、平成27年 9月24日国内公表、特表2015-528120、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成24年5月9日(国際出願) 拒絶査定: 平成28年5月30日(送達日:同年6月7日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成28年10月6日 手続補正: 平成28年10月6日 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1.(新規性)この出願の請求項1-2,5-6,13-14,17-18,25-27に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の請求項3-4,7-12,15-16,19-24に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1、または下記の刊行物1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 引用文献等一覧 1.特開平07-140967号公報 2.特開2008-083289号公報 第3 本願発明 本願請求項1-25に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明25」という。)は、平成28年10月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-25に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 コンピュータシステムのディスプレイ上のフォーカスエリアを選択的に強調するためにコンピュータにより実施される方法であって、 画像化デバイスを通して、前記コンピュータシステムの前記ディスプレイにおける1又は複数のユーザの目の動きデータを受信するステップと、 少なくとも前記受信した目の動きデータに基づいて、前記1又は複数のユーザのうちの少なくとも1のユーザについて、目のトラッキングを実行するステップと、 少なくとも前記実行した目のトラッキングに基づいて、前記コンピュータシステムの前記ディスプレイの一部分に関連付けられる関心領域を決定するステップと、 前記フォーカスエリアを選択的に強調するステップであって、前記フォーカスエリアは、前記決定された関心領域に関連付けられた前記ディスプレイの前記一部分に相当する、 ステップと、 1つ又は複数の後続のフォーカスエリアを選択的に強調するステップであって、該1つ又は複数の後続のフォーカスエリアは、1つ又は複数の後続の決定された関心領域に関連付けられる前記ディスプレイの一部分に相当する、ステップと、 前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移をグラフィカルに示すステップであって、当該グラフィカルに示される遷移は、前記選択的に強調されたフォーカスエリアと、前記1つ又は複数の選択的に強調された後続のフォーカスエリアに加えて行われる、ステップと を含む、方法。 【請求項2】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、前記フォーカスエリアをズームインすることを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、拡大された前記フォーカスエリアを元の画像の上に重ねることを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、前記フォーカスエリアをハイライトすることを含み、前記フォーカスエリアをハイライトすることは、前記フォーカスエリアにフレームを付けること、前記フォーカスエリアの色替えをすること及び/又は前記フォーカスエリアにフレームを付けて色替えをすることを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、少なくとも前記フォーカスエリアのデフォルトのエリアサイズに基づいて、前記フォーカスエリアを選択的に強調することを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、少なくとも前記関心領域を個別の表示要素に関連付けることに基づいて、前記フォーカスエリアを選択的に強調することを含み、前記個別の表示要素は、テキストボックス、テキストのパラグラフ、デフォルト数のテキスト行、ピクチャ及び/又はメニューを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 連続的な前記フォーカスエリアの選択的強調並びに前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアの選択的強調を記録するステップと を更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 連続的な前記フォーカスエリアの選択的強調、前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移並びに前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアの選択的強調を記録するステップと を更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 現在の関心領域が前記ディスプレイの外に位置するとの決定に応答して、及び/又は前記フォーカスエリアがもはやフォーカス状態ではなく、後続のフォーカスエリアも確立されていないとき、前記フォーカスエリアの選択的強調を除去するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記コンピュータシステムの前記ディスプレイに提示されているアプリケーションが、 目のトラッキングの動作用に設計されているかどうかを判断するステップを更に含み、 前記目のトラッキングの実行は、前記アプリケーションが目のトラッキングの動作用に設計されているとの判断に応答して行われる、請求項1に記載の方法。 【請求項11】 前記コンピュータシステムの前記ディスプレイに提示されているアプリケーションが、 目のトラッキングの動作用に設計されているかどうかを判断するステップであって、前記目のトラッキングの実行は、前記アプリケーションが目のトラッキングの動作用に設計されているとの判断に応答して行われる、ステップと、 現在の関心領域が前記ディスプレイの外に位置するとの決定に応答して、及び/又は前記フォーカスエリアがもはやフォーカス状態ではなく、後続のフォーカスエリアも確立されていないとき、前記フォーカスエリアの選択的強調を除去するステップと、 連続的な前記フォーカスエリアの選択的強調、前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移、並びに前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアの選択的強調を記録するステップと を更に含み、 前記フォーカスエリアの選択的強調は、前記フォーカスエリアをズームインすることと、拡大された前記フォーカスエリアを元の画像の上に重ねることと、前記フォーカスエリアをハイライトすることとを含む強調技術のうちの1つ又は複数を含み、前記フォーカスエリアをハイライトすることは、前記フォーカスエリアにフレームを付けること、前記フォーカスエリアの色替えをすること及び/又は前記フォーカスエリアにフレームを付けて色替えをすることを含み、 前記フォーカスエリアの選択的強調は、少なくとも前記フォーカスエリアのデフォルトのエリアサイズに基づいて及び/又は少なくとも前記関心領域を個別の表示要素に関連付けることに基づいて、前記フォーカスエリアを選択的に強調することを含み、前記個別の表示要素は、テキストボックス、テキストのパラグラフ、デフォルト数のテキスト行、ピクチャ及び/又はメニューを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項12】 コンピュータディスプレイのフォーカスエリアの選択的強調のためのシステムであって、 ディスプレイと、 目の動きデータをキャプチャするように構成された画像化デバイスと、 前記ディスプレイ及び前記画像化デバイスに通信可能に結合される1つ又は複数のプロセッサと、 前記1つ又は複数のプロセッサに通信可能に結合される1つ又は複数のメモリと、 前記1つ又は複数のプロセッサと前記1つ又は複数のメモリに通信可能に結合される論理モジュールであって、 前記画像化デバイスを通して、前記ディスプレイ上における1又は複数のユーザの目の動きデータを受信し、 少なくとも前記受信した目の動きデータに基づいて、前記1又は複数のユーザのうちの少なくとも1のユーザについて、目のトラッキングを実行し、 少なくとも前記実行された目のトラッキングに基づいて、前記ディスプレイの一部に関連付けられる関心領域を決定し、 前記フォーカスエリアを選択的に強調し、前記フォーカスエリアが、前記決定された関心領域に関連付けられる前記ディスプレイの前記一部に相当しており、 1つ又は複数の後続のフォーカスエリアを選択的に強調し、該1つ又は複数の後続のフォーカスエリアが、1つ又は複数の後続の決定された関心領域に関連付けられる前記ディスプレイの一部分に相当しており、 前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移をグラフィカルに示し、当該グラフィカルに示される遷移が、前記選択的に強調されたフォーカスエリアと、前記1つ又は複数の選択的に強調された後続のフォーカスエリアに加えて行われる、 ように構成される論理モジュールとを備える、 システム。 【請求項13】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、前記フォーカスエリアをズームインすることを含む、請求項12に記載のシステム。 【請求項14】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、拡大された前記フォーカスエリアを元の画像の上に重ねることを含む、請求項12に記載のシステム。 【請求項15】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、前記フォーカスエリアをハイライトすることを含み、前記フォーカスエリアをハイライトすることは、前記フォーカスエリアにフレームを付けること、前記フォーカスエリアの色替えをすること及び/又は前記フォーカスエリアにフレームを付けて色替えをすることを含む、請求項12に記載のシステム。 【請求項16】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、少なくとも前記フォーカスエリアのデフォルトのエリアサイズに基づいて、前記フォーカスエリアを選択的に強調することを含む、請求項12に記載のシステム。 【請求項17】 前記フォーカスエリアの選択的強調は、少なくとも前記関心領域を個別の表示要素に関連付けることに基づいて、前記フォーカスエリアを選択的に強調することを含み、前記個別の表示要素は、テキストボックス、テキストのパラグラフ、デフォルト数のテキスト行、ピクチャ及び/又はメニューを含む、請求項12に記載のシステム。 【請求項18】 前記論理モジュールは、連続的な前記フォーカスエリアの選択的強調と前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアの選択的強調を記録する ように更に構成される、請求項12に記載のシステム。 【請求項19】 前記論理モジュールは、連続的な前記フォーカスエリアの選択的強調、前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移、並びに前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアの選択的強調を記録する ように更に構成される、請求項12に記載のシステム。 【請求項20】 前記論理モジュールは、現在の関心領域が前記ディスプレイの外に位置するとの決定に応答して、及び/又は前記フォーカスエリアがもはやフォーカス状態ではなく、後続のフォーカスエリアも確立されていないとき、前記フォーカスエリアの選択的強調を除去するように更に構成される、請求項12に記載のシステム。 【請求項21】 前記目のトラッキングの実行は、前記ディスプレイに提示されているアプリケーションが目のトラッキングの動作用に設計されているとの判断に応答して行われる、請求項12に記載のシステム。 【請求項22】 前記目のトラッキングの実行は、前記ディスプレイに提示されているアプリケーションが目のトラッキングの動作用に設計されているとの判断に応答して行われ、 前記フォーカスエリアの選択的強調は、前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移をグラフィカルに示すことを含み、前記フォーカスエリアの選択的強調は、現在の関心領域が前記ディスプレイの外に位置するとの決定に応答して、及び/又は前記フォーカスエリアがもはやフォーカス状態ではなく、後続のフォーカスエリアも確立されていないときに、前記フォーカスエリアの選択的強調を除去することを含み、 前記フォーカスエリアの選択的強調は、前記フォーカスエリアをズームインすることと、拡大された前記フォーカスエリアを元の画像の上に重ねることと、前記フォーカスエリアをハイライトすることとを含む強調技術のうちの1つ又は複数を含み、前記フォーカスエリアをハイライトすることは、前記フォーカスエリアにフレームを付けること、前記フォーカスエリアの色替えをすること及び/又は前記フォーカスエリアにフレームを付けて色替えをすることを含み、 前記フォーカスエリアの選択的強調は、少なくとも前記フォーカスエリアのデフォルトのエリアサイズに基づいて及び/又は少なくとも前記関心領域を個別の表示要素に関連付けることに基づいて、前記フォーカスエリアを選択的に強調することを含み、前記個別の表示要素は、テキストボックス、テキストのパラグラフ、デフォルト数のテキスト行、ピクチャ及び/又はメニューを含み、 前記論理モジュールは、連続的な前記フォーカスエリアの選択的強調、前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移、並びに前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアの選択的強調を記録するように更に構成される、請求項12に記載のシステム。 【請求項23】 プロセッサによって実行されると、該プロセッサに、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。 【請求項24】 請求項23に記載のコンピュータプログラムを記憶する少なくとも1つのコンピュータ読取可能記憶媒体。 【請求項25】 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段 を備える、装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、視線の動きで表示手段上に表示されている映像の拡大、スクロールを行なう画像表示装置に関するものである。」 「【0010】図1において、1はハイビジョンモニタなどの表示手段、2はアイカメラ等を用いた視線検出手段、3は画像データを記憶する磁気ディスクなどの記憶手段、4は記憶手段3に記憶されている画像データの特定の部分を拡大して表示手段1に出力する拡大手段、5は視線検出手段2と表示手段1との相対位置関係を測定する相対位置検出手段、6は視線検出手段2によって検出された視線の方向と相対位置検出手段5で検出された相対位置関係より視線の表示手段1上の表示面での位置を検出する視線位置検出手段である。 【0011】7は視線位置検出位置手段6によって検出された表示手段1上の表示面の特定の位置にどれだけの時間視線が注視しているかを測定し、ある一定以上の時間視線がある特定の位置に注視していれば注視されている位置を出力する時間測定手段、8は時間測定手段7によって出力された注視位置を受けることにより視線位置検出手段6によって検出された表示手段1上の位置近傍の画像データを記憶手段3より読み出すように指示し、読み出された画像データを表示手段1の表示面全体に表示できるように拡大手段4に拡大指示を出す制御手段である。 【0012】以上のように構成された画像表示装置の動作について説明すると、まず、視線位置検出手段6は視線検出手段2上の視線の位置情報と、相対位置検出手段5が検出する表示手段1と視線検出手段2との相対位置情報を用いて、表示手段1を見ている人が見ている表示手段1上の表示面における座標を求める。時間測定手段7は、視線位置検出手段6が求めた座標を、ある一定時間間隔でサンプリングすることにより、視線の集中している表示手段1上の表示面の位置を出力する。 【0013】制御手段8は、記憶手段3より、時間測定手段7により出力された視線注視位置を受けとることにより、記憶手段3より視線注視位置近傍の映像情報を出力させ、拡大手段4に記憶手段3が出力した映像情報を表示手段1上の表示面全体に表示できるように制御する。 【0014】以上のように本実施例によれば、表示手段の表示面のある特定の方向を注視することにより、注視された部分の画像が表示手段の表示面に拡大されて表示される。尚、本実施例では、表示面のある特定の方向を注視することにより、注視された部分の画像が表示面に拡大されて表示される構成としたが、画像をスクロールするようにしてもよく、さらに複数の注視位置によって、種々の映像効果を得るようにしてもよいことは言うまでもない。」 上記記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ハイビジョンモニタなどの表示手段上に表示されている映像の拡大を行なう画像表示方法であって、 視線位置検出手段6は、アイカメラ等を用いた視線検出手段2上の視線の位置情報と、相対位置検出手段5が検出する表示手段1と視線検出手段2との相対位置情報を用いて、表示手段1を見ている人が見ている表示手段1上の表示面における座標を求め、 時間測定手段7は、視線位置検出手段6が求めた座標を、ある一定時間間隔でサンプリングすることにより、視線の集中している表示手段1上の表示面の位置を出力し、 制御手段8は、記憶手段3より、時間測定手段7により出力された視線注視位置を受けとることにより、記憶手段3より視線注視位置近傍の映像情報を出力させ、拡大手段4に記憶手段3が出力した映像情報を表示手段1上の表示面全体に表示できるように制御する、方法。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、例えば眼鏡型もしくは頭部装着型の装着ユニットなどによりユーザに装着された状態で、ユーザが視認する方向を被写体方向として撮像し、ユーザの眼の前方で撮像画像の表示を行う撮像表示装置と、撮像表示方法に関する。」 「【0031】 [3.表示例] システムコントローラ10が、取得した外界情報に応じて撮像動作や表示動作に関する制御を行うことは、結果として表示部2における多様な表示態様としてユーザに認識される。図3から図11により、各種の表示態様を例示する。 図3(a)は表示部2がスルー状態となっている場合を示しているとする。つまり、表示部2は単なる透明の板状体となっており、ユーザが視界光景を透明の表示部2を介して見ている状態である。 図3(b)は、モニタ表示状態として、撮像部3で撮像した画像が表示部2に表示された状態である。例えば図3(a)の状態で撮像部3,撮像信号処理部15,表示画像処理部12,表示駆動部13が動作し、これらの部位が撮像画像を通常に表示部2に表示した状態である。この場合の表示部2に表示される撮像画像(通常撮像画像)は、スルー状態の場合とほぼ同様となる。つまりユーザにとっては、通常の視界を、撮像された画像として見ている状態である。 【0032】 図3(c)は、システムコントローラ10が撮像制御部11を介して撮像部3に望遠撮像を実行させた場合であり、望遠画像が表示部2に表示されている。 図示しないが、逆にシステムコントローラ10が撮像制御部11を介して撮像部3に広角撮像を実行させれば、近距離の光景が広角に映し出された画像が表示部2に表示されることになる。なお、望遠-広角の制御は、撮像部3におけるズームレンズの駆動制御の他、撮像信号処理部15での信号処理でも可能である。 【0033】 図4(a)は表示部2がスルー状態となっている場合を示しているとする。例えばユーザが新聞等を見ている状態である。 図4(b)は、いわゆる広角ズームとした状態である。即ち近距離の焦点位置状態でズーム撮像を行い、例えば新聞等の文字がユーザに拡大されるように表示部2に表示されている状態である。 【0034】 図5(a)は、表示部2に通常撮像画像が表示されている場合、もしくは表示部2がスルー状態とされている場合を示している。 このときにシステムコントローラ10が、表示制御部14を介して表示画像処理部12に対して画像拡大処理を指示することで、図5(b)のような拡大画像が表示部2に表示されることになる。」 「【0038】 図9(a)は、表示部2がスルー状態とされている場合を示している。 システムコントローラ10が表示制御部14(表示画像処理部12、表示駆動部13)に対して分割表示及び分割画面での拡大表示を指示することにより、図9(b)のような画像を表示部2に表示させることができる。即ち表示部2の画面上を領域AR1、AR2に分割し、領域AR1はスルー状態又は通常画像表示とし、領域AR2には拡大画像とした例である。 また図9(c)は他の分割表示の例を示しており、この場合は表示部2の画面上を領域AR1、AR2、AR3,AR4に分割するとともに、各領域には、所定時間間隔で撮像画像の1フレームを抽出して表示させている。例えば表示画像処理部12に、撮像画像信号において0.5秒間隔で1フレームを抽出させ、抽出したフレームの画像を領域AR1→AR2→AR3→AR4→AR1→AR2・・・と順に表示させていく。これは、いわゆるストロボ表示と呼ばれるような画像を表示部2で分割表示により実行した例である。」 「【0040】 図11(a)(b)は特定の対象として、画像内に例えば鳥が含まれている場合に、その鳥を強調させるようにハイライト表示させた表示例である。 画像内で、鳥が検知される場合に、その鳥の部分をハイライト表示させることで、ユーザが対象を見失いにくいようにした表示を実現できる。 ハイライト画像処理としては、画像内で注目部分のみを輝度を上げたり、注目部分以外の輝度を下げたり、注目部分をカラー表示で注目部分以外をモノクロ表示とするなどの手法が考えられる。また注目部分に注目枠やカーソル、ポインタマーク等、何らかのキャラクタ画像を表示させることで画像内の特定部分を強調しても良い。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 まず、引用発明において「表示手段上に表示されている映像の拡大を行なう」ことは、本願発明1において「ディスプレイ上のフォーカスエリアを選択的に強調する」ことに相当するから、引用発明の「ハイビジョンモニタなどの表示手段上に表示されている映像の拡大を行なう画像表示方法」と、本願発明1の「コンピュータシステムのディスプレイ上のフォーカスエリアを選択的に強調するためにコンピュータにより実施される方法」とは、共に「ディスプレイ上のフォーカスエリアを選択的に強調するために実施される方法」である点で共通するといえる。 また、引用発明の「視線位置検出手段6は、アイカメラ等を用いた視線検出手段2上の視線の位置情報と、相対位置検出手段5が検出する表示手段1と視線検出手段2との相対位置情報を用いて、表示手段1を見ている人が見ている表示手段1上の表示面における座標を求め」ることは、本願発明1の「画像化デバイスを通して、前記コンピュータシステムの前記ディスプレイにおける1又は複数のユーザの目の動きデータを受信するステップ」に相当する。 次に、引用発明の「時間測定手段7は、視線位置検出手段6が求めた座標を、ある一定時間間隔でサンプリングすることにより、視線の集中している表示手段1上の表示面の位置を出力」することは、本願発明1の「少なくとも前記受信した目の動きデータに基づいて、前記1又は複数のユーザのうちの少なくとも1のユーザについて、目のトラッキングを実行するステップ」及び、「少なくとも前記実行した目のトラッキングに基づいて、前記コンピュータシステムの前記ディスプレイの一部分に関連付けられる関心領域を決定するステップ」に相当する。 さらに、引用発明の「制御手段8は、記憶手段3より、時間測定手段7により出力された視線注視位置を受けとることにより、記憶手段3より視線注視位置近傍の映像情報を出力させ、拡大手段4に記憶手段3が出力した映像情報を表示手段1上の表示面全体に表示できるように制御する」ことは、本願発明1の「前記フォーカスエリアを選択的に強調するステップであって、前記フォーカスエリアは、前記決定された関心領域に関連付けられた前記ディスプレイの前記一部分に相当する、ステップ」に相当する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「ディスプレイ上のフォーカスエリアを選択的に強調するために実施される方法であって、 画像化デバイスを通して、前記コンピュータシステムの前記ディスプレイにおける1又は複数のユーザの目の動きデータを受信するステップと、 少なくとも前記受信した目の動きデータに基づいて、前記1又は複数のユーザのうちの少なくとも1のユーザについて、目のトラッキングを実行するステップと、 少なくとも前記実行した目のトラッキングに基づいて、前記コンピュータシステムの前記ディスプレイの一部分に関連付けられる関心領域を決定するステップと、 前記フォーカスエリアを選択的に強調するステップであって、前記フォーカスエリアは、前記決定された関心領域に関連付けられた前記ディスプレイの前記一部分に相当する、ステップと、 を含む、方法。」 (相違点) 相違点1:本願発明1は、「コンピュータシステムのディスプレイ上のフォーカスエリアを選択的に強調するためにコンピュータにより実施される方法」であるのに対し、引用発明においては、「ハイビジョンモニタ」がコンピュータシステムをなすものであるのか、また「画像表示方法」がコンピュータにより実施されるのか、が明示されていない点。 相違点2:本願発明1は、「1つ又は複数の後続のフォーカスエリアを選択的に強調するステップであって、該1つ又は複数の後続のフォーカスエリアは、1つ又は複数の後続の決定された関心領域に関連付けられる前記ディスプレイの一部分に相当する、ステップ」を備えるのに対し、引用発明はそのようなステップを有さない点。 相違点3:本願発明1は、「前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移をグラフィカルに示すステップであって、当該グラフィカルに示される遷移は、前記選択的に強調されたフォーカスエリアと、前記1つ又は複数の選択的に強調された後続のフォーカスエリアに加えて行われる、ステップ」を備えるのに対し、引用発明はそのようなステップを有さない点。 (2)相違点についての判断 本願発明1の内容に鑑みて、上記相違点3から検討する。 本願発明1の上記相違点3に係る構成は引用文献2に記載されておらず、周知技術でもない。したがって、上記相違点1,2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明12について 本願発明12は、本願発明1の方法をシステムとして表現したものであって、本願発明1の相違点3に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明2-11,13-25について 本願の請求項2-11,13-25は、本願の請求項1または12を直接または間接的に引用するものであり、本願発明1の相違点3に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 1.理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について 審判請求時の補正により、本願発明1-25は、上記相違点3に係る構成である、「前記フォーカスエリアと前記1つ又は複数の後続のフォーカスエリアとの間の遷移をグラフィカルに示すステップであって、当該グラフィカルに示される遷移は、前記選択的に強調されたフォーカスエリアと、前記1つ又は複数の選択的に強調された後続のフォーカスエリアに加えて行われる、ステップ」もしくはこれに対応する事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明であるとも、拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて、容易に発明できたものであるともいえない。したがって、原査定の理由1及び2を維持することはできない。 2.理由3(特許法第36条第6項第2号)について 審判請求時の補正により、「前記1つまたは複数のメモリストア」という記載は「前記1つまたは複数のメモリ」に補正されており、原査定の理由3を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-05-09 |
出願番号 | 特願2015-511422(P2015-511422) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G) P 1 8・ 537- WY (G09G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 橋本 直明 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 中塚 直樹 |
発明の名称 | 目のトラッキングに基づくディスプレイの一部の選択的強調 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |