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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G |
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管理番号 | 1327710 |
審判番号 | 不服2016-7971 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-31 |
確定日 | 2017-05-23 |
事件の表示 | 特願2013-123244「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月25日出願公開、特開2014-240903、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年6月11日の出願であって、平成27年10月28日付けで手続補正書が提出され、平成28年3月3日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成28年5月31日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年5月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)から下記(2)へと補正することを含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 表面にトナー像が形成される像担持体と、 前記像担持体の表面に対向する位置に設けられ、前記像担持体とのニップ部を転写位置として、前記像担持体の表面とは逆極性の転写バイアスにより、前記像担持体の表面に形成されたトナー像を記録紙に転写させる転写ベルトと、 前記転写ベルトによりトナー像が転写された前記記録紙を加熱して、当該トナー像を前記記録紙に定着させる定着部と、 前記転写位置よりも前記転写ベルトによる記録紙搬送方向における下流側に配置され、記録紙搬送方向下流端において前記転写ベルトから分離する前記記録紙を、トナー像の転写面の裏側から支持して前記定着部に案内する転写後ガイドと、 前記転写後ガイドに設けられ、前記転写位置よりも前記記録紙搬送方向における下流側となる位置において、前記記録紙が前記転写ベルトの下流端から分離する位置に向けて、当該記録紙のトナー像転写面に対する裏面から、前記転写ベルトの前記転写バイアスの極性と同極性のDC放電を行う除電器と、を備え、 前記除電器は、前記DC放電を行う除電針と、当該除電針の放電電圧を制御する電圧制御部とを有し、 前記除電針は、前記転写ベルトの幅方向に所定のピッチで配置された複数の放電針を有し、 前記放電針はその先端部が、前記記録紙が前記転写ベルトの下流側から分離する位置に向けて設けられ、 前記転写ベルトから分離した前記記録紙の面と、前記放電針の延長線とのなす放電角度が30°以上70°以下であり、 前記除電器の放電電圧は-4kV以上-3kV以下であり、 前記除電器は、前記定着部に進入した前記記録紙の帯電電圧が0.5kV以上1.2kV以下となる状態で前記記録紙を除電する画像形成装置。 【請求項2】 前記転写ベルトを挟んで前記像担持体の表面に接触する転写ローラーと、 前記転写ローラーに転写バイアス電圧を印加する電源部と、をさらに備え、 前記電源部から前記転写ローラーを介して前記転写ベルトにバイアス電圧を印加することで、前記転写ベルト上に前記記録紙を静電吸着させる請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項3】 前記画像形成装置内の温度及び湿度を検出する温湿度検出部を備え、 前記電圧制御部が、前記温湿度検出部による検出結果に応じて前記除電針の放電電圧を変化させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。 【請求項4】 記録紙の電気抵抗を検出する紙抵抗検出部を備え、 前記電圧制御部が、前記紙抵抗検出器による検出結果に応じて前記除電針の放電電圧を変化させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。 【請求項5】 前記電圧制御部が、記録紙の紙種に応じて放電電圧を変化させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 表面にトナー像が形成される像担持体と、 2つのローラーに張架され、当該2つのローラー間に配置された転写ローラーを内部に有する状態で無端走行し、前記像担持体の表面に対向する位置に設けられ、前記像担持体とのニップ部を転写位置として、前記転写ローラーに印加される前記像担持体の表面とは逆極性の転写バイアスにより、前記像担持体の表面に形成されたトナー像を記録紙に転写させ、前記転写位置を通過する前記記録紙を上方向に搬送する転写ベルトと、 前記転写位置よりも前記転写ベルトによる記録紙搬送方向における下流側に配置され、前記転写ベルトによりトナー像が転写された前記記録紙を加熱して、当該トナー像を前記記録紙に定着させる定着部と、 前記転写位置よりも前記記録紙搬送方向において下流側であって、前記定着部よりも下側となる位置に配置され、前記記録紙搬送方向下流端において前記転写ベルトから分離する前記記録紙を、トナー像の転写面の裏側から支持して、前記記録紙搬送方向と同一方向に前記定着部に向けて案内する転写後ガイドと、 前記転写後ガイドに設けられ、前記転写位置よりも前記記録紙搬送方向における下流側となる位置において、前記記録紙が前記転写ベルトの下流端から分離する位置に向けて、当該記録紙のトナー像転写面に対する裏面から、前記転写ベルトの前記転写バイアスの極性と同極性のコロナ放電によるDC放電を行う除電器と、を備え、 前記除電器は、前記DC放電を行う除電針と、当該除電針の放電電圧を制御する電圧制御部とを有し、 前記除電針は、前記転写後ガイド内に前記転写ベルトの幅方向に所定のピッチで配置された複数の放電針を有し、 前記放電針はその先端部が、前記転写後ガイド内に収められて前記記録紙に非接触とされ、かつ前記記録紙が前記転写ベルトの前記下流端から分離する位置に向けて設けられ、 前記転写ベルトから分離した前記記録紙の面と、前記放電針の延長線とのなす放電角度が30°以上50°以下であり、 前記除電器の放電電圧は-4kV以上-3kV以下であり、 前記除電器は、前記定着部に進入した前記記録紙の帯電電圧が0.5kV以上1.2kV以下となる状態で前記記録紙を除電する画像形成装置。 【請求項2】 前記転写ベルトを挟んで前記像担持体の表面に接触する転写ローラーと、 前記転写ローラーに転写バイアス電圧を印加する電源部と、をさらに備え、 前記電源部から前記転写ローラーを介して前記転写ベルトにバイアス電圧を印加することで、前記転写ベルト上に前記記録紙を静電吸着させる請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項3】 前記画像形成装置内の温度及び湿度を検出する温湿度検出部を備え、 前記電圧制御部が、前記温湿度検出部による検出結果に応じて前記除電針の放電電圧を変化させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。 【請求項4】 記録紙の電気抵抗を検出する紙抵抗検出部を備え、 前記電圧制御部が、前記紙抵抗検出器による検出結果に応じて前記除電針の放電電圧を変化させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。 【請求項5】 前記電圧制御部が、記録紙の紙種に応じて放電電圧を変化させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。」(下線は平成28年5月31日付けの手続補正書のとおり。) 2 補正の適否 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の「転写ベルト」に関して、「2つのローラーに張架され、当該2つのローラー間に配置された転写ローラーを内部に有する状態で無端走行し、前記像担持体の表面に対向する位置に設けられ、前記像担持体とのニップ部を転写位置として、前記転写ローラーに印加される前記像担持体の表面とは逆極性の転写バイアスにより、前記像担持体の表面に形成されたトナー像を記録紙に転写させ、前記転写位置を通過する前記記録紙を上方向に搬送する転写ベルト」と具体的に特定し、「定着部」に関して、「前記転写位置よりも前記転写ベルトによる記録紙搬送方向における下流側に配置され、」と具体的に特定し、「転写後ガイド」に関して、「前記転写位置よりも前記記録紙搬送方向において下流側であって、前記定着部よりも下側となる位置に配置され、前記記録紙搬送方向下流端において前記転写ベルトから分離する前記記録紙を、トナー像の転写面の裏側から支持して、前記記録紙搬送方向と同一方向に前記定着部に向けて案内する転写後ガイド」と具体的に特定し、「除電器」に関して、「コロナ放電によるDC放電を行う除電器」と具体的に特定し、「除電針」に関して、「除電針は、前記転写後ガイド内に前記転写ベルトの幅方向に所定のピッチで配置された複数の放電針を有し」と具体的に特定し、「記録紙の除電」に関して、「前記放電針はその先端部が、前記転写後ガイド内に収められて前記記録紙に非接触とされ、かつ前記記録紙が前記転写ベルトの前記下流端から分離する位置に向けて設けられ、前記転写ベルトから分離した前記記録紙の面と、前記放電針の延長線とのなす放電角度が30°以上50°以下であり、前記除電器の放電電圧は-4kV以上-3kV以下であり、前記除電器は、前記定着部に進入した前記記録紙の帯電電圧が0.5kV以上1.2kV以下となる状態で前記記録紙を除電する」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1乃至5に係る発明(以下、本件補正後の前記請求項1に係る発明を「本願補正発明1」といい、同様に、本件補正後の前記請求項2に係る発明乃至本件補正後の前記請求項5に係る発明をそれぞれ「本願補正発明2」乃至「本願補正発明5」といい、これらを総称して「本願補正発明」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。 (1) 刊行物の記載事項 ア 刊行物1 本願の出願日前の平成6年4月22日に頒布された特開平6-110338号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0011】図1に示すように、このデジタルカラー複写機1においては、イエローY、マゼンタM、サイアンC、黒Kの各色に対応して4個の感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kが、それぞれこれらの順に図において右側から、すなわち用紙供給側から所定の間隔を置いて配設されている。これらの感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの外周近傍に、それぞれ一次帯電器3Y,3M,3C,3Kが配設されている。これらの一次帯電器3Y,3M,3C,3Kは、それぞれ対応する感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面を、例えば-500?800Vに均一に帯電するようになっている。 【0012】また、各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの外周近傍の一次帯電器3Y,3M,3C,3Kより回転方向下流側には、それぞれレーザービーム露光装置等の露光装置4Y,4M,4C,4Kが配設され、更に各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの外周近傍の露光装置4Y,4M,4C,4Kより回転方向下流側には、それぞれ現像装置5Y,5M,5C,5Kが配設されている。露光装置4Y,4M,4C,4Kは、色分解された光像又はこれに相当する光像を照射し、感光体ドラム2Y,2M,2C,2K上に静電潜像を形成し、現像装置5Y,5M,5C,5Kは、このように形成された感光体ドラム2Y,2M,2C,2K上の静電潜像を、トナーにより現像して可視像化する。 【0013】各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの下には転写装置6が配設されている。この転写装置6は、各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kに接して配設された所定長さの無端状の転写ベルト7と、各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの最下部の各転写ポイントに、それぞれ対向して配設された転写用帯電器8Y,8M,8C,8Kとからなる。 【0014】転写ベルト7は、誘電体からなる転写材担持シートと搬送用シートとが一体に形成されたものや、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリフツ化ビニリデン樹脂フイルムを使用した誘電体からなる搬送用シートから構成されている。また転写ベルト7は、図示しない定速性に優れた専用のモーターに連結されている駆動ローラ9と対向側に配設されている従動ローラ10との間に一定のテンションが付与されて張架され、かつ駆動ローラ9により矢印A方向、すなわち反時計方向に回動される。更にこの転写ベルト7は、転写材の剥離位置に設けられた転写材剥離手段11の剥離ローラ12及びアイドラローラ13にも架け渡されている。 【0015】また、転写用帯電器8Y,8M,8C,8Kはコロナ帯電器とされ、例えば+4.2KV?+12.0KVの範囲でそれぞれ異なる電圧が印加されると共に、転写電流は+50μA?+2000μAとされる。この転写電流により、感光体ドラム2Y,2M,2C,K上のトナーを転写材17に静電的に吸着させる。 【0016】転写ベルト7の駆動ローラ9の近傍には、転写材を転写ベルト7に吸着するための吸着用帯電器14及びこの吸着用帯電器14に対向して、転写材を転写ベルト7にガイドするガイド部材15がそれぞれ設けられている。そして、用紙供給トレイ16に収容された用紙等の転写材17が、送りローラ18により、所定のタイミングで転写ベルト7上に送り込まれ、吸着用帯電器14及びガイド部材15により転写ベルト7に吸着される。 【0017】一方、転写材剥離手段11は、剥離ローラ12の上流側で転写ベルト7の外側にこの転写ベルト7に向けて配設された剥離用外側除電用帯電器19を備えている。剥離用外側除電用帯電器19は交流電圧に直流バイアス電圧が印加可能の交流帯電器により構成されている。また転写材剥離手段11は、転写ベルト7の静電的な吸着力を弱める除電部材20と、転写剤17を転写ベルト7から剥離するための剥離爪26を備えている。更に、転写材剥離手段11の下流側には定着装置21が設けられており、この定着装置21により転写材17上に転写されたトナー像が定着される。定着が完了した転写材17は用紙排出トレイ22に収容される。」 (イ)「【0041】図6に示すように、本実施例においては、剥離ロール(審決注:「剥離ローラ」の誤記と思われる。以下「剥離ローラ」とする。)12の近傍に除電針27を配設し、この除電針27を通して直流電圧を印加するようにしている。したがって、本実施例も除電針27を介して直流電圧が転写材17に印加されるので、前述の実施例と同じ効果を得ることができるとともに、除電針27は前述の剥離爪26の機能も有している。この除電針27としては、図7に示すようにのこぎりの歯の形状を有する平板状に形成することもできる。 【0042】また、このような除電針27のかわりに、除電ブラシ等の放電部材を配置することもできる。」 (ウ)図6から、除電針には、正極性の直流電圧が印加され、除電針はその先端部が、転写材が転写ベルトの下流側から分離する位置に向けて設けられていることが看取できる。 そうすると、上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「イエローY、マゼンタM、サイアンC、黒Kの各色に対応して4個の感光体ドラムが、それぞれ、用紙供給側から所定の間隔を置いて配設され、これらの感光体ドラムの外周近傍に、それぞれ一次帯電器が配設され、これらの一次帯電器は、それぞれ対応する感光体ドラムの表面を、例えば-500?800Vに均一に帯電するようになっており、 各感光体ドラムの下には転写装置が配設され、この転写装置は、各感光体ドラムに接して配設された所定長さの無端状の転写ベルトと、各感光体ドラムの最下部の各転写ポイントに、それぞれ対向して配設された転写用帯電器とからなり、 転写ベルトは、定速性に優れた専用のモーターに連結されている駆動ローラと対向側に配設されている従動ローラとの間に一定のテンションが付与されて張架され、更にこの転写ベルトは、転写材の剥離位置に設けられた転写材剥離手段の剥離ローラ及びアイドラローラにも架け渡されており、 転写用帯電器はコロナ帯電器とされ、例えば+4.2KV?+12.0KVの範囲でそれぞれ異なる電圧が印加されると共に、転写電流は+50μA?+2000μAとされ、この転写電流により、感光体ドラム上のトナーを転写材に静電的に吸着させ、 転写材剥離手段の下流側には定着装置が設けられており、この定着装置により転写材上に転写されたトナー像が定着され、 剥離ローラの近傍に除電針を配設し、この除電針を通して正極性の直流電圧を印加するようにし、除電針はその先端部が、転写材が転写ベルトの下流側から分離する位置に向けて設けられ、除電針として、のこぎりの歯の形状を有する平板状に形成し、 除電針のかわりに、除電ブラシ等の放電部材を配置することもできる、デジタルカラー複写機。」 イ 刊行物2 本願の出願日前の平成22年11月11日に頒布された特開2010-256574号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 電子写真方式を用いて画像を記録紙に形成する画像形成装置において、 トナー像が形成される外周面を有する感光体ドラムと、 前記感光体ドラムと当接して設けられ、前記感光体ドラムの外周面に形成された前記トナー像を記録紙に転写する転写手段と、 前記転写手段に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段と、 前記転写手段より記録紙の搬送方向の下流側に配置され、前記トナー像が転写された記録紙を除電する除電部材と、 前記除電部材に除電バイアスを印加する除電バイアス印加手段と、 前記除電部材より下流側に配置され、前記除電部材を通過した記録紙の搬送をガイドする搬送ガイドと、 前記記録紙の先端領域が前記除電部材を通過してから前記記録紙の先端が前記搬送ガイドに接するまでの間における前記除電部材と前記記録紙との間の電位差が、前記記録紙の先端領域が前記除電部材を通過している間における電位差より小さくなるように、前記除電バイアス印加手段を制御するコントローラと、 を備えることを特徴とする画像形成装置。 … 【請求項5】 温度と湿度とのうち少なくとも一方を含む環境条件を検知する検知手段を備え、 前記コントローラは、前記検知手段によって検知された環境条件に基づいて設定された前記除電バイアスが、前記記録紙の先端が前記搬送ガイドに接した後に前記除電部材へ印加されるように、前記除電バイアス印加手段を制御することを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の画像形成装置。」 (イ)「【0070】 記録紙80の先端81が搬送ガイド30に当接するタイミング(d4)で、除電バイアスが、-1.0kVから環境条件に応じた値に引き上げられる。この環境条件に応じた値は、プリンタコントローラ70によって、温度センサ61及び湿度センサ62から入力される温度及び湿度と、除電バイアステーブルとに基づいて設定される。温度は高くなるほど、また、湿度が高くなるほど、記録紙80は感光体ドラム20から剥離しにくくなるので、除電バイアステーブルでは、高温高湿な環境条件ほど除電バイアスが高くなるように設定されている。」 そうすると、上記(ア)及び(イ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「電子写真方式を用いて画像を記録紙に形成する画像形成装置において、 トナー像が形成される外周面を有する感光体ドラムと、 前記感光体ドラムと当接して設けられ、前記感光体ドラムの外周面に形成された前記トナー像を記録紙に転写する転写手段と、 前記転写手段に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段と、 前記転写手段より記録紙の搬送方向の下流側に配置され、前記トナー像が転写された記録紙を除電する除電部材と、 前記除電部材に除電バイアスを印加する除電バイアス印加手段と、 前記除電部材より下流側に配置され、前記除電部材を通過した記録紙の搬送をガイドする搬送ガイドと、 前記記録紙の先端領域が前記除電部材を通過してから前記記録紙の先端が前記搬送ガイドに接するまでの間における前記除電部材と前記記録紙との間の電位差が、前記記録紙の先端領域が前記除電部材を通過している間における電位差より小さくなるように、前記除電バイアス印加手段を制御するコントローラと、 を備え、 温度と湿度とのうち少なくとも一方を含む環境条件を検知する検知手段を備え、 前記コントローラは、前記検知手段によって検知された環境条件に基づいて設定された前記除電バイアスが、前記記録紙の先端が前記搬送ガイドに接した後に前記除電部材へ印加されるように、前記除電バイアス印加手段を制御する画像形成装置。」 ウ 刊行物3 本願の出願日前の平成14年3月22日に頒布された特開2002-82496号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】像担持体上に形成された静電潜像を現像して得られたトナー画像を記録材に形成して転写・定着する画像形成手段を備えた画像形成装置において、 少なくとも記録材を1枚テストプリントして記録材の特性を測定する記録材特性測定手段と、 前記記録材特性測定手段により記録材の特性を測定させ、測定させた該記録材の特性に基づいて、記録材に画像を形成する画像形成時の前記画像形成手段の画像形成条件を制御する制御手段と、 を備えることを特徴とする画像形成装置。 … 【請求項6】前記記録材特性測定手段により測定される記録材の特性とは、記録材の抵抗値、記録材の厚み、記録材の温度、または、記録材のサイズであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。」 (イ)「【0144】ただし、除電針電流値または除電針電圧値が大きすぎると、転写電流が除電針に流出し、転写電流/転写電圧不足となったり、記録材除電をし過ぎると、記録材上にトナーを保持できずに、下流の加熱装置において、トナーが定着ローラや定着フィルムに付着し、定着ローラや定着フィルム1周後に記録材を汚してしまう「静電オフセット」現象が発生してしまう。 【0145】従って、記録材に応じて、除電針バイアス値を適正値に設定する必要がある。 【0146】そこで、本実施の形態では、除電針バイアス方式の画像形成装置において、記録材特性測定モードのテストプリント時に、実施の形態1および実施の形態2で検知した記録材抵抗値、または実施の形態3で検知した記録材厚み等の記録材特性記憶手段601に記憶された記録材特性データに基づいて、プリント時に除電針に印加するバイアス値を変更する構成のものである。 【0147】記録材抵抗値検知は、記録材特性測定モードのテストプリントによって、実施の形態1および実施の形態2で述べている検知方法により検知し、記録材特性記憶手段601に記憶された記録材抵抗値によって、プリント時には、CPU302により所定の比較値と比較して「高抵抗記録材」の場合には、所定の除電針バイアス値を大きくする。または、CPU302により記録材抵抗値に基づいて計算された除電針バイアス値を、除電針バイアス電源801により印加することにより、前記分離不良を防止することができる。」 そうすると、上記(ア)及び(イ)の記載事項から、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「像担持体上に形成された静電潜像を現像して得られたトナー画像を記録材に形成して転写・定着する画像形成手段を備えた画像形成装置において、 少なくとも記録材を1枚テストプリントして記録材の特性を測定する記録材特性測定手段と、 前記記録材特性測定手段により記録材の特性を測定させ、測定させた該記録材の特性に基づいて、記録材に画像を形成する画像形成時の前記画像形成手段の画像形成条件を制御する制御手段と、 を備え、 前記記録材特性測定手段により測定される記録材の特性とは、記録材の抵抗値、記録材の厚み、記録材の温度、または、記録材のサイズである画像形成装置。」 (2)対比 そこで、本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、 ア.後者の「イエローY、マゼンタM、サイアンC、黒Kの各色に対応して4個の感光体ドラム」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「表面にトナー像が形成される像担持体」に相当する。 イ.後者の「転写ベルト」、「転写ポイント」及び「転写材」は、前者の「転写ベルト」、「転写位置」及び「記録紙」に相当し、後者の「転写ベルト」は、定速性に優れた専用のモーターに連結されている駆動ローラと対向側に配設されている従動ローラとの間に一定のテンションが付与されて張架されるものであるから、「2つのローラーに張架され、無端走行し」といえ、後者の「転写ポイント」は、「各感光体ドラムの最下部」で、「各感光体ドラムの下には転写装置が配設され、この転写装置は、各感光体ドラムに接して配設された所定長さの無端状の転写ベルトと、それぞれ対向して配設された転写用帯電器とからな」るものであるから、「像担持体の表面に対向する位置に設けられ、像担持体とのニップ部」である「転写位置」といえる。 ウ.後者の感光体ドラムの表面は、-500?800Vに均一に帯電される一方、各感光体ドラムの最下部の各転写ポイントに、それぞれ対向して配設された転写用帯電器は、+4.2KV?+12.0KVの範囲でそれぞれ異なる電圧を印加するものであるから、転写用帯電器により印加される電圧は「像担持体の表面とは逆極性の転写バイアス」といえ、さらに、後者の転写用帯電器は、+4.2KV?+12.0KVの範囲でそれぞれ異なる電圧が印加されると共に、転写電流は+50μA?+2000μAとされ、この転写電流により、感光体ドラム上のトナーを転写材に静電的に吸着させるものであるから、後者の「転写ベルト」は、「像担持体の表面とは逆極性の転写バイアスにより、像担持体の表面に形成されたトナー像を記録紙に転写させ、転写位置を通過する記録紙を上方向に搬送する転写ベルト」といえる。 エ.後者の「定着装置」は、転写材剥離手段の下流側に設けられ、「転写材上に転写されたトナー像を定着」するものであるから、「転写位置よりも転写ベルトによる記録紙搬送方向における下流側に配置され、トナー像を記録紙に定着させる定着部」といえる。 オ.後者の「除電針」は、転写材の剥離位置に設けられた剥離ローラの近傍に配設され、正極性の直流電圧を印加するようにし、除電針はその先端部が、転写材が転写ベルトの下流側から分離する位置に向けて設けられ、除電針として、のこぎりの歯の形状を有する平板状に形成したものであって、後者の「除電針」は、その構造、機能、作用等から、「転写位置よりも記録紙搬送方向における下流側となる位置において、記録紙が転写ベルトの下流端から分離する位置に向けて、記録紙のトナー像転写面に対する裏面から、転写ベルトの転写バイアスの極性と同極性のDC印加を行う除電器と、を備え、前記除電器は、前記DC印加を行う除電針と、当該除電針の印加電圧を制御する電圧制御部とを有し、前記除電針は、前記転写ベルトの幅方向に所定のピッチで配置された複数の放電針を有し、前記放電針はその先端部が、前記記録紙が前記転写ベルトの下流側から分離する位置に向けて設けられた除電器」といえる。 カ.後者の「デジタルカラー複写機」は、先端部が、転写材が転写ベルトの下流側から分離する位置に向けて設けられた除電針を備えるものであるから、「記録紙を除電する画像形成装置」といえる。 したがって、両者は、 「表面にトナー像が形成される像担持体と、 2つのローラーに張架され、無端走行し、前記像担持体の表面に対向する位置に設けられ、前記像担持体とのニップ部を転写位置として、前記像担持体の表面とは逆極性の転写バイアスにより、前記像担持体の表面に形成されたトナー像を記録紙に転写させ、前記転写位置を通過する前記記録紙を上方向に搬送する転写ベルトと、 前記転写位置よりも前記転写ベルトによる記録紙搬送方向における下流側に配置され、当該トナー像を前記記録紙に定着させる定着部と、 前記転写位置よりも前記記録紙搬送方向における下流側となる位置において、前記記録紙が前記転写ベルトの下流端から分離する位置に向けて、当該記録紙のトナー像転写面に対する裏面から、前記転写ベルトの前記転写バイアスの極性と同極性のDC印加を行う除電器と、を備え、 前記除電器は、前記DC印加を行う除電針と、当該除電針の印加電圧を制御する電圧制御部とを有し、 前記除電針は、前記転写ベルトの幅方向に所定のピッチで配置された複数の除電針を有し、 前記除電針はその先端部が、前記記録紙が前記転写ベルトの前記下流端から分離する位置に向けて設けられ、 前記記録紙を除電する画像形成装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明1が、「2つのローラー間に配置された転写ローラーを内部に有する状態」で無端走行する転写ベルトであるのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。 [相違点2] 本願補正発明1が、像担持体の表面とは逆極性の転写バイアスが「転写ローラーに印加される」ものであるのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。 [相違点3] 本願補正発明1が、「転写ベルトによりトナー像が転写された記録紙を加熱して」、当該トナー像を前記記録紙に定着させる定着部であるのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。 [相違点4] 本願補正発明1が、「転写位置よりも記録紙搬送方向において下流側であって、定着部よりも下側となる位置に配置され、記録紙搬送方向下流端において転写ベルトから分離する記録紙を、トナー像の転写面の裏側から支持して、記録紙搬送方向と同一方向に定着部に向けて案内する転写後ガイド」を有するのに対し、引用発明1では、そのようなものを有していない点。 [相違点5] 本願補正発明1が、「転写後ガイドに設けられ」、転写ベルトの転写バイアスの極性と同極性の「コロナ放電によるDC放電を行う」除電器であるのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。 [相違点6] 本願補正発明1が、除電針は、「転写後ガイド内に」転写ベルトの幅方向に所定のピッチで配置された複数の放電針を有し、放電針はその先端部が、「転写後ガイド内に収められて記録紙に非接触とされ」ているのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。 [相違点7] 本願補正発明1が、「転写ベルトから分離した記録紙の面と、前記放電針の延長線とのなす放電角度が30°以上50°以下であり、除電器の放電電圧は-4kV以上-3kV以下であり、除電器は、定着部に進入した記録紙の帯電電圧が0.5kV以上1.2kV以下となる状態で記録紙を除電する」ものであるのに対し、引用発明1では、そのようなものでない点。 (3)判断 上記相違点7について以下検討する。 本願補正発明1は、図5の検証結果から、転写ベルトから分離した記録紙の面と、前記放電針の延長線とのなす放電角度が30°以上50°以下であり、除電器の放電電圧は-4kV以上-3kV以下であり、除電器は、定着部に進入した記録紙の帯電電圧が0.5kV以上1.2kV以下となる状態で記録紙を除電することにより、機内飛散、定着オフセット、飛散画像のいずれも改善するものである。(【0047】?【0054】参照。) そうすると、転写ベルトから分離した記録紙の面と、放電針の延長線とのなす放電角度と、除電器の放電電圧とは、一体不可分の発明特定事項である。 そして、転写ベルトから分離した記録紙の面と、放電針の延長線とのなす放電角度について、当業者にとって設計的事項とする根拠はない。 しかも、本願補正発明1は、上記相違点7に係る本願補正発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「適切な電圧及び適切な方向でDC放電を行うことにより、機内飛散、定着オフセット、飛散画像のいずれも改善できることがわかる。」(【0055】参照。)という作用効果を奏するものである。 また、原審で提示された引用文献2及び引用文献3を見ても、上記相違点7に係る本願補正発明1の発明特定事項は記載されていない。 したがって、本願補正発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 3 むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1乃至請求項5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願補正発明1は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明1乃至3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 また、本願補正発明2乃至5は、本願補正発明1の発明特定事項に加えて、更なる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「第2 2 (3)」と同様の理由により、引用発明1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-05-08 |
出願番号 | 特願2013-123244(P2013-123244) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G03G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 孝幸 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
森次 顕 藤本 義仁 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 田中 米藏 |