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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F |
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管理番号 | 1328182 |
審判番号 | 不服2015-13609 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-17 |
確定日 | 2017-05-10 |
事件の表示 | 特願2011- 20946「液晶ディスプレイ装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日出願公開、特開2011-232732〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年2月2日(パリ条約による優先権主張2010年4月23日、大韓民国)の出願であって、平成26年7月18日付けで拒絶理由が通知され、同年10月29日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲が補正され、平成27年3月10日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年7月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正され、当審において平成28年4月22日付けで拒絶理由が通知(以下「当審拒絶理由」という。)され、同年8月10日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲が補正されたものである。 2.当審拒絶理由の要点 当審拒絶理由は、以下の理由3を含むものである。 (理由3) 本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 3.本願明細書及び特許請求の範囲 (1)本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。 「【請求項1】 複数の基板内に液晶層が形成され、画像を形成することに係り、 前記液晶層が形成された部分に対して離隔して配された基板の表面から形成された欠陥ホール内に気相の充填材を充填する工程と、 前記充填材が充填された欠陥ホール上にカバー部材を付着する工程と、を含み、 前記気相の充填材は二酸化炭素ガスを含む液晶ディスプレイ装置の製造方法。」 (2)本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、液晶ディスプレイ装置に係り、さらに詳細には、基板から発生した欠陥ホールをカバーした液晶ディスプレイ装置及びその製造方法に関する。」 イ 「【0011】 本発明が解決しようとする課題は、基板に形成された欠陥ホールを充填材で充填することによって、光の乱反射を減らす液晶ディスプレイ装置及びその製造方法を提供することである。」 ウ 「【0028】 図1は、通常の液晶ディスプレイパネル100を示した図面である。 【0029】 図面を参照すれば、前記液晶ディスプレイパネル100は、第1基板101と、第2基板102と、前記第1及び第2基板101,102間に形成された液晶層103と、第1基板101の上面に形成された第1機能層104と、前記第2基板102の下面に形成された第2機能層105と、前記第1基板101の外面に接着剤106を媒介として付着された第1偏光膜107と、第2基板102の外面に形成された第2偏光膜(図示せず)と、を備える。 【0030】 前記のような構成を有する液晶ディスプレイパネル100は、前記第1基板101及び第2基板102上にそれぞれ第1機能層104及び第2機能層105をパターニングした後に、第1基板101及び第2基板102に対するエッチングによって、前記第1基板101及び第2基板102の薄型化を達成する。 【0031】 この時、前記第1基板101や第2基板102には、これらを準備する過程や各機能層104,105を形成させる過程で、ディンプル(dimple)形状の欠陥ホール108が多数発生する。 【0032】 前記欠陥ホール108が形成されれば、矢印で示したように、バックライトユニットから照射された光によって、前記欠陥ホール108が形成された第1基板101や第2基板102から乱反射が発生する。乱反射が発生すれば、液晶ディスプレイ装置を視聴する時、欠陥として視認する。」 エ 「【0063】 前記欠陥ホール321が存在した状態で、第1基板201と第2基板202とを結合することによって製造された液晶ディスプレイ装置200を視聴すれば、欠陥ホール321が形成された領域で、光の乱反射が発生して、視認性が低下する。 【0064】 これを防止するために、前記欠陥ホール321には、充填材331が充填されている。すなわち、前記充填材331は、液晶層219が形成された部分に対して離隔して配された第1基板201の第1面201aに形成された欠陥ホール321に充填されている。 【0065】 前記充填材331は、前記欠陥ホール321に充填する時、前記第1基板201の第1面201aに対して水平面になっている。前記充填材331は、液状や気相及び固状のうちいずれか一つの素材を利用して形成しうる。 【0066】 ここで、本明細書中における水平面とは、第1面201aに形成された欠陥ホール321に充填された充填材331の形成する面が、例えば第1面201aに平行であり、及び/又は第1面201aの面内にあることをいうものとする。他の面に形成された欠陥ホールについても同様である。 【0067】 液状の素材を利用する場合、前記充填材331は、アクリル系素材が望ましい。また、気相の素材を利用する場合、前記充填材331は、一種のガス、または二つ以上のガスを混合したものであって、二酸化炭素(CO_(2))ガスを含むことが望ましい。 【0068】 この時、前記充填材331は、液状の素材を利用する場合、前記第1基板201の屈折率に対して±10%以内の屈折率を有し、気相の素材を利用する場合、前記第1基板201の屈折率に近い値の屈折率を有する。望ましくは、前記充填材331の屈折率は、前記第1基板201の屈折率と同じであることが望ましい。 【0069】 例えば、前記第1基板201が透明なガラス基板からなる場合、前記第1基板201の屈折率は、約1.5である。この時、前記欠陥ホール321に充填されたアクリル系素材のような液状の充填材331の屈折率も、前記第1基板201と実質的に同一に1.5であることが望ましい。 【0070】 さらに、前記欠陥ホール321に充填された二酸化炭素(CO_(2))ガスを含む気相の充填材331の屈折率も、第1基板201の屈折率に対して近い値を有する。 【0071】 前記液状や気相の充填材331が充填された欠陥ホール321を備える前記第1基板201の第1面201aには、接着剤311を媒介としてカバー部材の役割を行う第1偏光膜221が付着されている。前記第1偏光膜221によって、液状や気相の充填材331が充填された欠陥ホール321をカバーしている。 【0072】 前記のような構成を有する液晶ディスプレイ装置200は、発光部の役割を行うバックライトユニット260から光を照射すれば、直進性を有する光は、第1偏光膜221及び接着剤311を透過して、第1基板201の第1面201aに入射する。 【0073】 この時、前記欠陥ホール321が形成された領域では、光の乱反射が発生するが、本実施形態では、液状や気相の充填材331が欠陥ホール321を充填し、第1基板201の第1面201aに対して充填材331が同じ水平面になり、しかも、液状の素材を利用する場合、前記第1基板201の屈折率に対して±10%の屈折率を有する充填材331が充填され、気相の素材を利用する場合、前記第1基板201の屈折率に近い値の屈折率を有する充填材331が充填されることによって、図3の矢印で示したように、屈折率の偏差による光の乱反射を除去し、光の直進性を確保しうる。」 オ 「【0091】 一方、気相の充填材631を形成させる方法を説明すれば、次の通りである。 【0092】 以下、欠陥ホール621が形成された第1基板201を抜粋して示すが、実質的に第1基板201と第2基板202とが結合された状態である。 【0093】 図6Aに示したように、気相の素材を利用する場合、機能層203が形成された第1基板201を真空チャンバ601に配置する。この時、前記真空チャンバ601内の雰囲気は、一種のガス、または二つ以上のガスを混合したものであって、二酸化炭素(CO2)ガス602を含んでいる。前記二酸化炭素ガス602は、充填材用原素材として利用される。前記第1基板201aが真空チャンバ601内に配されているので、前記欠陥ホール621にも二酸化炭素ガス602が存在する。 【0094】 この時、前記真空チャンバ601内の二酸化炭素ガス602の屈折率は、約1.5の屈折率である第1基板201に対して近い値を有する。 【0095】 次いで、図6Bに示したように、前記第1基板201の第1面201aには、接着剤311を媒介としてカバー部材の役割を行う第1偏光膜221を付着させる。このように、前記第1偏光膜221によって気相の充填材631が充填された欠陥ホール621をカバーする。」 カ 「【0096】 前記のような構成を有する液晶ディスプレイ装置200の作用は、次の通りである。 【0097】 図2を参照すれば、ゲート電極207、ソース電極209、及びドレイン電極229によって制御された外部信号によって、第1電極213と第2電極216との間に電位値が形成され、電位差によって液晶層219の配列が決定され、液晶層219の配列によってバックライトユニット260から提供される光が遮蔽または透過される。透過された光は、カラーフィルタ層215を透過しつつ色を帯びて画像を具現する。 【0098】 この時、図3に示したように、前記第1基板201の第1面201aや第2基板202の第1面202aと反対になる表面には、基板を準備する過程や第1機能層203及び第2機能層214を準備する過程で、ディンプル形状の欠陥ホール321が形成されうるが、前記欠陥ホール321には、液状や気相の充填材331が充填されている。 【0099】 この時、前記充填材331の屈折率は、液状の素材を利用する場合、前記第1基板201や第2基板202の屈折率に対して±10%以内の値、気相の素材を利用する場合、前記第1基板201や第2基板202の屈折率に近い値、望ましくは、同じ値を有するので、前記欠陥ホール321が形成された部分で屈折率の偏差による光の乱反射を除去する。」 キ 図1、図3は以下のとおりである。 「【図1】 」 「【図3】 」 4.判断 本願の請求項1に係る発明は、上記3.(1)のとおりの液晶ディスプレイ装置の製造方法の発明である。 一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明に関して以下の説明がなされていると認められる。 すなわち、液晶ディスプレイ装置の製造方法に関し、【0032】に記載されるように、基板に欠陥ホールが形成されると、バックライトユニットから照射された光によって、図1の矢印のように乱反射が発生し、液晶ディスプレイ装置を視聴する時、欠陥として視認されるので、【0064】に記載されるように、これによる視認性の低下を防止するために、欠陥ホールに充填材を充填し、充填材としては、【0067】に記載されるように二酸化炭素(CO_(2))ガスを含む気相の素材が利用でき、このとき、【0070】に記載されるように、欠陥ホールに充填された二酸化炭素(CO_(2))ガスを含む気相の充填材の屈折率が、基板の屈折率に対して近い値を有するので、【0073】に記載されるように、図3の矢印で示されるように、屈折率の偏差による光の乱反射を除去し、光の直進性を確保しうると記載され、【0091】?【0095】に、二酸化炭素ガスを含む雰囲気の真空チャンバ内で、基板に接着剤を媒介としてカバー部材の役割を行う偏光膜を付着させることにより、欠陥ホールに二酸化炭素ガスを含むガスを充填することが記載され、欠陥ホールに充填する二酸化炭素ガスを含む気相の充填材の屈折率について、【0094】に記載されるように「約1.5の屈折率である第1基板201に対して近い値」あるいは【0099】に記載されるように「基板の屈折率に対して近い値、望ましくは、同じ値」を有すると記載されている。 しかしながら、二酸化炭素ガスの屈折率は、当審拒絶理由で指摘したように1.00045程度であり、上記の「屈折率の偏差による光の乱反射を除去し、光の直進性を確保しうる」という作用効果を奏するような「約1.5の屈折率である第1基板201に対して近い値」あるいは「基板の屈折率に対して近い値、望ましくは、同じ値を有する」の屈折率を有するものとは認められず、上記の作用効果を奏する屈折率を有する「二酸化炭素ガスを含む気相の充填材」がどういうものであるのか不明であり、基板の欠陥ホールに充填する二酸化炭素ガスを含む気相の充填材として、どのようなものを採用すれば、上記のように、屈折率が基板の屈折率に対して近い値、望ましくは、同じ値となり、光の乱反射を除去し、光の直進性を確保しうるという作用効果を奏する液晶ディスプレイ装置を製造することができるのか不明である。 この点について、請求人は、平成26年10月29日提出の意見書において、「二酸化炭素ガス(CO_(2))そのものではなく、二酸化炭素(CO_(2))ガスを含む所定の組成の気相の充填材331を選択すると、所定の条件の下において、第1基板201の屈折率に対して±10%以内の近似値を有する1.63の屈折率を実現し得ることは当業者に明らかです。」というが、「所定の組成」及び「所定の条件」がどのようなものであるかについての説明は、平成28年8月10日提出の意見書においてもなされておらず、上記のように、光の乱反射を除去し、光の直進性を確保しうるという作用効果を奏する程度に、屈折率が基板の屈折率に対して近い値を有する「二酸化炭素(CO2)ガスを含む所定の組成の気相の充填材」をどのように実現するのかが当業者に明らかであるとは認められない。 請求人はまた、平成28年8月10日提出の意見書において、「気相の充填材が空気に対して基板の屈折率に近い値の屈折率を有することにより、『屈折率の偏差による光の乱反射を除去し、光の直進性を確保』という作用効果を一定の程度で生じることは当業者に明らかです。」と主張するが、気相の充填材を空気に対して基板の屈折率に近い値の屈折率とすることは、本願明細書の発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないから、請求人の当該主張は根拠がなく採用できない。 以上のとおりであって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない。 5.むすび したがって、本願は、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-12-06 |
結審通知日 | 2016-12-13 |
審決日 | 2016-12-27 |
出願番号 | 特願2011-20946(P2011-20946) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(G02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 廣田 かおり |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
河原 英雄 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 液晶ディスプレイ装置及びその製造方法 |
代理人 | 辻 徹二 |
代理人 | 松永 宣行 |