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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1328722
審判番号 不服2016-6606  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2017-06-20 
事件の表示 特願2011-196147「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日出願公開、特開2012- 84855、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月8日(優先権主張 平成22年9月13日)の出願であって、平成26年11月5日付けで手続補正がされ、同年同月7日付けで手続補正がされ、平成27年6月1日付けで拒絶理由通知がされ(同年同月16日発送)、同年8月12日付けで手続補正がされ、同年10月1日付けで拒絶理由通知がされ(同年同月13日発送)、同年12月11日付けで手続補正がされ、平成28年2月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ(同年同月9日送達)、これに対し、同年5月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年4月11日付けで拒絶理由通知がされ、同年同月26日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成29年4月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
屈曲性を有し透光性の一対の支持体と、
前記支持体に設けられた一対の導電層と、
前記一対の支持体間に挟まれ前記導電層にそれぞれ接続される一対の電極を備えた発光素子と、前記一対の支持体間に充填された透光性を持つ電気絶縁性の樹脂で形成された中間層と、を有し、
前記支持体は前記発光素子を中心として外側に突出した状態に変形され、前記発光素子の一方の端部には、前記発光素子より面積が小さい電極が設けられ、かつ、断面形状において、前記中間層の樹脂が前記発光素子の前記一方の端部と前記電極側面周辺に亘って充填し、前記発光素子を中心として前記外側に突出した状態に変形された形状であり、前記発光素子から発光された光が前記支持体の両面から放出されることを特徴とする発光装置。」

なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-10204号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は、当審で付与したものである。以下、同様。)
「【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる発光装置50の断面図である。この第1の実施形態の発光装置は、それぞれ透光性を有し、対向して配置された2つの導電性シート10の間に、上下電極LEDチップ2が挟持されることにより構成された両面発光タイプの照明装置であり、導電性シート10を通過した光が両側に出射される。第1の実施形態において、導電性シート10は、それぞれ、対向する面(内面)に導電層14を有するベースシート12からなっており、少なくとも一方の面に導電性が付与されているので、導電性シートと称している。
【0025】
導電性シート10において、ベースシート12は、例えばポリイミド等の非導電性(絶縁性)の透明樹脂フィルムよりなり、導電層14は例えばITO(酸化インジウムスズ)フィルムよりなる。
【0026】
LEDチップ2は上方の導電性シート10の導電層14と対向する面、すなわち上面に上部電極(図示せず)を有し、下方の導電性シート10の導電層14と対向する面、すなわち下面に下部電極(図示せず)を有する上下電極LEDチップである。その上部電極または下部電極の一方が正極、他方が負極となっており、この上部電極と下部電極間に電圧を印加することにより発光させる。LEDチップ2の発光色は何色でもよく、所謂、緑色LEDチップ、赤色LEDチップ、および、青色LEDチップのいずれも使用可能である。
【0027】
第1の実施形態において、上下電極LEDチップ(以下、単に「LEDチップ」という)2は、図1に示すように透明導電性接着剤30を介して一方の導電層14に固定されている。このように、本発明において、好ましくは、LEDチップの少なくとも一方の電極は、透明導電性接着剤30を介して一方の導電層14に固定され、より好ましくは両側の導電層14に固定される。透明導電性接着剤30としては、例えばカーボン粒子やITO微粒子を用いた透明導電接着剤、有機In&Sn化合物を用いた透明導電接着剤、Ag微粒子をAuでコーティングしたAu-Ag微粒子を用いた透明導電接着剤などが用いられる。なお、本発明では、透明導電性接着剤30を用いずに、LEDチップ2の電極と導電性シート10の導電層とを単に接触させることにより導通させてもよい。
【0028】
また、第1の実施形態において、2つの導電性シート10の間には、LEDチップ2を配置した部分を除いて、導電層14が互いに接触し短絡するのを防止するように非導電接着剤22が充填されている。非導電接着剤22は、好ましくは、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、各種ホットメルトのような透光性を有する熱可塑性または熱硬化性の絶縁樹脂が貼り合わせ樹脂として用いられる。
【0029】
以上の構成により、LEDチップ2の上部電極と、上方の導電性シート10の導電層14とは接触し、導通している。一方、LEDチップ2の下部電極と、下方の導電性シート10の導電層14とは透明導電性接着剤30を介し導通している。この結果、2枚の導電層14の間に所定の電圧を印加しLEDチップ2に所望の電流を流すことが可能となり、発光させることができる。
【0030】
発光した光のうち、LEDチップ2より上方に向かった光は、上方の導電性シート10の導電層14とベースシート12とを透過し、発光装置50の外に取り出され、LEDチップ2より下方に向かった光は、透明導電性接着剤30と、下方の導電性シート10の導電層14と、ベースシート12とを透過し、発光装置50の外に取り出される。また、非導電接着剤22が透明な場合は、LEDチップ2より側方に向かった光は発光装置50の外に取り出され、全方向に発光することが可能な発光装置が得られる。ここで、本明細書において透明とは、デバイス(発光装置)への適用状態の厚みにおいて可視光の透過率が50%以上の材料を指す。
【0031】
以上のように構成された第1の実施形態の発光装置50は、LEDチップ2を2つの導電性シート10により挟持することで、LEDチップ2の電極と2つの導電性シート10の導電層14とをそれぞれ接続しているので、例えば、導電層14を導電性シート10の内面の全面に形成することも可能になり、導電性シート10に複雑な回路パターンを形成する必要がない。さらに、LEDチップ2の正極と負極が上部と下部に分離しているため、LEDチップ2を小型にしても電極間の短絡の発生も抑制できる。従って発光装置50を容易に小型化、薄型化することができる。
【0032】
また、LEDチップ2の電極が、例えば、LEDチップ2より大きい面積の導電層14のいずれかの位置で接触している限り導通が確保されるので、LEDチップ2を2つの導電層14の間に配置する際の位置合わせの精度がそれほど高くなくてもよい。したがって、製造が容易であり、加えて、より小さいLEDチップ2を用いても確実に導通を確保できるという利点を有する。
【0033】
また、製造過程において、LEDチップ2が多少動いても、導通を確保することが可能であり、例えば、非導電接着剤22のみによって固定することもできる。
【0034】
また、第1の実施形態の発光装置において、可撓性を有する導電性シート10を用いることにより、柔軟性に富み自在に湾曲させることができるフレキシブルな発光装置50を構成することもでき、例えば、曲面に沿って発光装置50を配置することも可能である。この場合、本実施形態では、LEDチップ2を小型化できることから、発光装置50を、湾曲させてもLEDチップ2にクラックが生じるリスクを小さくできる。」

「【0048】
LEDチップ2を配置した後、下方の導電性シート10上のLEDチップ2以外の部分に非導電接着剤22を塗布した後、上方に導電性シート10を下方の導電シート10と対向して配置する。そして、2つの導電性シート10の導電層14それぞれが、LEDチップの電極と確実に導通するように、導電性シート10を上下方向から押圧するように圧着ローラ40の間を通過させる。
【0049】
圧着ローラ40を通過中および通過後に非導電接着剤22が硬化する。硬化に伴い発生する収縮応力により導電性シート10はLEDチップ2の方向に応力を受け、導電層14とLEDチップ2の電極とがより確実に導通する。
【0050】
なお、非導電接着剤22が熱硬化性樹脂で熱収縮性がある場合、あるいは、ベースシート12が熱収縮性を有し、収縮することで導電層14とLEDチップ2との間に押圧力を生じる等の場合には、圧着ローラ40に加えて、または、圧着ローラ40に代えて加熱装置が用いられる。」

「【図1】


したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「透光性を有し、対向して配置された2つの導電性シート10の間に、上下電極LEDチップ2が挟持されることにより構成された両面発光タイプの照明装置であって、
LEDチップ2は上方の導電性シート10の導電層14と対向する面、すなわち上面に上部電極を有し、下方の導電性シート10の導電層14と対向する面、すなわち下面に下部電極を有する上下電極LEDチップであり、
可撓性を有する導電性シート10を用いるものであり、
導電性シート10において、ベースシート12は非導電性(絶縁性)の透明樹脂フィルムよりなり、導電層14はITO(酸化インジウムスズ)フィルムよりなり、
2つの導電性シート10の間には、LEDチップ2を配置した部分を除いて、導電層14が互いに接触し短絡するのを防止するように非導電接着剤22が充填され、
非導電接着剤22は、透明であり、
非導電接着剤22は、熱可塑性または熱硬化性の絶縁樹脂が用いられる
照明装置。」

また、引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。
「非導電接着剤22が熱硬化性樹脂で熱収縮性がある場合、圧着ローラ40に加えて、または、圧着ローラ40に代えて加熱装置が用いられる。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平3-21983号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「特にここで問題とするのは、第1図で示すLEDチップのオーミック電極17と、透明導電性フィルム13との接触部である。本発明者が着目したのは、透明導電性フィルムが張力によりピンと張られるとLEDチップの上部のふちの所と透明導電性フィルムが接触するということで、その性質に合った電極が必要であるということである。すなわちLEDチップの上部オーミック電極は、第4図d,eに示すようなLEDチップ41のふちに電極物質42を盛り上げて形成し、中心点42は電極を非形成とする構造に形成した。この構成にて良好な電気的接続が可能となった。」(第3頁左下欄第7行?第18行)

「第1図


「第4図


上記第1図には、「透明導電性フィルム13は、LEDチップを中心として外側に突出した状態になっていること。」が見て取れるから、上記引用文献2には、「透明導電性フィルムを、LEDチップを中心として外側に突出させる。」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2006-86193号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0028】
このような構造のLEDの製造工程を図3(a)?(e)に示す。まず、(a)第一の電極2の上部に第二の電極3を設けたランプハウス1を一体化してLEDパッケージ12を作成する。そして(b)このLEDパッケージ12の第一の電極2に導電性接着剤4を介してLEDチップ5を接着固定し、(c)LEDチップ5の上側電極13及び第二の電極3が覆われない程度まで第一のキヤビティ9内に透光性樹脂7を充填して加熱硬化し、LEDチップ5の大部分を封止する。」

「【図2】



上記図2には、「LEDチップ5より面積が小さい上側電極13」が見て取れるから、上記引用文献3には、「LEDチップより面積が小さい上側電極。」という技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2008-34473号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0013】
本実施の形態の面状光源は、互いに対向し、かつ両側に電極を有する複数のLED11Bチップと、LEDチップ11Bを上下から挟んでLEDチップ11Bと電気的に接続する一対のフレキシブル基板10a,10bと、フレキシブル基板に挟まれた領域を充填する充填層15を備えている。」
「【0024】
ここで、図4(b)に示すように、LEDチップ12Bの搭載部以外の部分はフレキシブル基板10c,10dが接触するようにしてもよい。この場合、フレキシブル基板1010dのフレキシブル基板10cと対向する面に接着膜(図示せず。)を形成するとよい。
上記の構成を有する本実施の形態の面状光源によれば、LEDチップと電気的に接続させる配線パターンを設けるフレキシブル基板が1枚で済むため、安価に面状光源を製造することができる。」

「【図4】(b)


上記図4(b)には、「フレキシブル基板10cは、LEDチップを中心として外側に突出した状態になっていること。」が見て取れるから、上記引用文献4には、「フレキシブル基板を、LEDチップを中心として外側に突出させる。」という技術的事項が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平11-177147号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0042】上記第2のフィルム3は、上記LEDチップ1の光反射層11の反対側となる電極層13の表面に貼着されるものであり、その貼着面には、複数のLEDチップ1それぞれに接続する複数の電極31が形成されている。これら電極31は、複数のLEDチップ1それぞれと整合する位置でマトリクス状の平面パターンをもって薄膜形成されており、第2のフィルム3の厚みに比べて十分に薄く形成されることから透光性を有している。また、これら電極31は、互いに導通することなく第2のフィルム3の一端へと引き延ばされた配線パターン32に接続されており、このような配線パターン32も、電極31と同様にして薄膜形成されたものである。なお、これら電極31と配線パターン32とは、いわゆるITO膜などの透明電極膜によって構成することも可能である。」

「【図3】


したがって、上記引用文献5には、「第2のフィルム3の貼着面には、複数のLEDチップ1それぞれに接続する複数の電極31が形成される。」という技術的事項が記載されていると認められる。

6.引用文献6について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開平8-76697号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0022】図1に本発明の第1実施例の断面を示す。この第1実施例は、光アドレス型表示装置であり、光照射時点灯型である。この第1実施例は、発光素子としての発光ダイオード1が、層厚1μmのa-SiCからなる光導電層2上に所定の間隔を隔てて複数個配置されている。上記複数の発光ダイオード1は、平面的に配列されている。上記発光ダイオード1は、下端に形成された下部電極6aと上端に形成された上部電極6bとを備えている。上記下部電極6aは、発光部Dの下端面D1の全面を覆っている。また、上記上部電極6bは、発光部Dの上端面D2の中央を部分的に覆っている。そして、上記下部電極6aは、Ag粒子が分散されているエポキシ樹脂からなる下部接着層7aによって上記光導電層2に接着されている。また、上記上部電極6bは、Ag粒子が分散されているエポキシ樹脂からなる上部接着層7bによって上部透明電極3bに接着されている。そして、この上部透明電極3bは、その上の上部透明基板4bに接合されている。」
「【図1】


したがって、上記引用文献6には、「発光ダイオード1の上部電極6bは、発光部Dの上端面D2の中央を部分的に覆っている。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「透光性を有し、対向して配置された2つの導電性シート10」は、「可撓性を有する」ものであるから、引用発明の「2つの導電性シート10」は、本願発明1の「屈曲性を有し透光性の一対の支持体」に相当する。

引用発明における「LEDチップ」及び「両面発光タイプの照明装置」は、それぞれ本願発明1における「発光素子」及び「前記発光素子から発光された光が前記支持体の両面から放出される」「発光装置」に相当する。

引用発明において、「導電性シート10において、ベースシート12は、透明樹脂フィルムよりなり、導電層14はITO(酸化インジウムスズ)フィルムよりな」るから、引用発明の「対向して配置された2つの導電性シート10」の「導電層14」は、本願発明1の「前記支持体に設けられた一対の導電層」に相当する。

引用発明の「LEDチップ2は上方の導電性シート10の導電層14と対向する面、すなわち上面に上部電極を有し、下方の導電性シート10の導電層14と対向する面、すなわち下面に下部電極を有する上下電極LEDチップ」は、本願発明1の「前記一対の支持体間に挟まれ前記導電層にそれぞれ接続される一対の電極を備えた発光素子」に相当する。

引用発明において、「2つの導電性シート10の間には、LEDチップ2を配置した部分を除いて、導電層14が互いに接触し短絡するのを防止するように非導電接着剤22が充填され、」「非導電接着剤22は、透明であ」るから、引用発明の「非導電接着剤22」は、本願発明1の「前記一対の支持体間に充填された透光性を持つ電気絶縁性の樹脂で形成された中間層」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「屈曲性を有し透光性の一対の支持体と、
前記支持体に設けられた一対の導電層と、
前記一対の支持体間に挟まれ前記導電層にそれぞれ接続される一対の電極を備えた発光素子と、前記一対の支持体間に充填された透光性を持つ電気絶縁性の樹脂で形成された中間層と、を有し、
前記発光素子から発光された光が前記支持体の両面から放出される発光装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「前記支持体は前記発光素子を中心として外側に突出した状態に変形され、」「断面形状において、」「前記発光素子を中心として前記外側に突出した状態に変形された形状であ」るのに対し、引用発明はそのような断面形状に変形されていない点。

(相違点2)本願発明1は「前記発光素子の一方の端部には、前記発光素子より面積が小さい電極が設けられ、かつ、」「前記中間層の樹脂が前記発光素子の前記一方の端部と前記電極側面周辺に亘って充填し」ているという構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献1には、「非導電接着剤22が熱硬化性樹脂で熱収縮性がある場合、圧着ローラ40に加えて、または、圧着ローラ40に代えて加熱装置が用いられる。」との技術事項が記載されている。
また、引用文献3に「LEDチップより面積が小さい上側電極。」との技術事項が記載され、引用文献6に「発光ダイオード1の上部電極6bは、発光部Dの上端面D2の中央を部分的に覆っている。」との技術事項が記載されているように、発光素子の一方の端部である上端に、発光素子より面積が小さい電極を設ける構成は、本願の優先権主張の日前に周知であるといえる。
しかしながら、引用発明に前記周知の発光素子より面積が小さい電極を設ける構成を採用し、圧着ローラ40に加えて、または、圧着ローラ40に代えて加熱装置を用いて照明装置を得たとしても、引用発明は、「2つの導電性シート10の間には、LEDチップ2を配置した部分を除いて、」「非導電接着剤22が充填され」るものであるから、熱可塑性または熱硬化性の絶縁樹脂である非導電接着剤22が、圧着ローラ40及び加熱装置の作用により、LEDチップ2の端部と小さい電極の側面周辺に亘って充填するとまではいえない。
また、引用文献2、4及び5には、「前記発光素子の一方の端部には、前記発光素子より面積が小さい電極が設けられ、かつ、」「前記中間層の樹脂が前記発光素子の前記一方の端部と前記電極側面周辺に亘って充填し」ているという構成を備えることについて記載されていない。
よって、本願発明1の相違点2に係る構成は、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に想到し得たものであるとはいえない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「前記発光素子の一方の端部には、前記発光素子より面積が小さい電極が設けられ、かつ、」「前記中間層の樹脂が前記発光素子の前記一方の端部と前記電極側面周辺に亘って充填し」ているという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1.特許法第29条第2項について
原査定は、請求項1-10について、上記引用文献1-6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年4月26日付け手続補正により補正された請求項1及び2は、それぞれ「前記発光素子の一方の端部には、前記発光素子より面積が小さい電極が設けられ、かつ、」「前記中間層の樹脂が前記発光素子の前記一方の端部と前記電極側面周辺に亘って充填し」ているという構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1及び2は、引用発明及び上記引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
よって、この拒絶の理由は解消している。

2.特許法第17条の2第3項について
原査定は、請求項8ないし10に係る発明は、当初明細書に記載された事項ではなく、特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年4月26日付けの補正において、対象となる請求項は削除されており、存在しない。
よって、この拒絶の理由は解消している。

3.原査定についての判断のまとめ
上記1及び2のとおり、特許法第29条第2項及び特許法第17条の2第3項についての拒絶の理由は解消していることから、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)について
当審では、請求項3-6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決する手段が反映されてるとはいえず、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年4月26日付けの補正において、請求項3-6を削除する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-06 
出願番号 特願2011-196147(P2011-196147)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 森 竜介
河原 英雄
発明の名称 発光装置  
代理人 田辺 恵基  

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