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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B |
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管理番号 | 1328791 |
審判番号 | 不服2016-13439 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-07 |
確定日 | 2017-06-21 |
事件の表示 | 特願2012-254155「X線透視撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日出願公開、特開2014-100301、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月20日の出願であって、平成27年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月30日付けで拒絶査定されたところ、同年9月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれの発明を「本願発明1」などという。)は、平成28年2月4日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載の事項により特定されるとおりのものであり、分説して符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。 「【請求項1】 A) 被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、 B) 前記被検体を載置する可動式天板を有し、室内に配置された検診台と、 C) 前記検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、 D) 前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段と を備え、 E) 前記位置制御手段は、 ある時点における前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置を登録する検診台登録手段と、 前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段と を有し、 F) 前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御する ことを特徴とするX線透視撮影装置。」 「【請求項2】 A) 被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、 C') 前記被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、 D) 前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段と を備え、 E) 前記位置制御手段は、 ある時点における前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置を登録する検診台登録手段と、 前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段と を有し、 F) 前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御する ことを特徴とするX線透視撮影装置。」 「【請求項3】 A) 被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、 C'') 室内に配置された可動式あるいは可搬式の周辺機器とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、 D) 前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段と を備え、 E') 前記位置制御手段は、 ある時点における前記X線撮像手段に対する前記周辺機器の位置を登録する周辺機器登録手段と、 前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段と を有し、 F') 前記周辺機器の位置が前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記周辺機器と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記周辺機器の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の周辺機器の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御する ことを特徴とするX線透視撮影装置。」 第3 原査定の理由の概要 本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用例1:特開2008-272290号公報 第4 当審の判断 (1) 引用例1に記載された事項 引用例1には、以下の記載がある(下線は当審において付加したものである。)。 (引1-ア) 「【請求項1】 被検体に対する医用画像の撮影に応じて移動する移動体と、 検査に関連する情報であって異なる複数の検査関連情報にそれぞれ対応付けられ、前記移動体の移動経路に干渉する干渉物の周囲の空間領域であって異なる複数の干渉領域を記憶する記憶部と、 前記検査関連情報に基づいて前記記憶部から前記干渉領域を選択する手段と、 選択した前記干渉領域に基づいて前記移動体の移動を制御する手段と、 を備えることを特徴とする医用画像撮影装置。」 (引1-イ) 「【0009】 図1に示すように、本発明の実施の一形態に係る医用画像撮影装置1は、患者等の被検体Tが載置される寝台2と、その寝台2上の被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する撮影部3と、その撮影部3を撮影位置まで移動可能に保持する保持部4と、撮影部3を撮影位置まで移動させる駆動部5と、撮影部3及び保持部4の各々の位置を検出する位置検出部6と、寝台2、撮影部3及び駆動部5等の各部を制御する制御装置7とを備えている。このような医用画像撮影装置1としては、例えば、被検体Tの血管等の医用画像を撮影するX線透視撮影装置等が挙げられる。 【0010】 寝台2は、水平方向及び鉛直方向に移動可能に形成され被検体を載せる天板2aと、その天板2aを支持して水平方向及び鉛直方向に移動させる天板駆動部2bとにより構成されている。天板駆動部2bは、天板2aを移動させるための移動機構及び移動のための駆動力を供給する駆動源等により構成されている。この天板駆動部2bは制御装置7に電気的に接続されている。このような寝台2は、天板駆動部2bにより天板2aを移動させ、天板2a上の被検体Tを所定の位置に位置付ける。 【0011】 撮影部3は、寝台2の天板2a上の被検体Tに対してX線を照射するX線照射部3aと、そのX線照射部3aにより照射されたX線を検出するX線検出部3bとを備えている。この撮影部3は、寝台2の天板2aの周囲を移動可能に設けられており、撮影位置から天板2a上の被検体Tの各部位の医用画像を撮影する。」 (引1-ウ) 「【0015】 保持部4は、X線照射部3a及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4aと、その保持アーム4aをスライド移動可能に保持するアーム保持部4bと、そのアーム保持部4bを回動可能に保持して天井面に移動可能及び回動可能に設けられた保持部材4cとを備えている。この保持部4は制御装置7に電気的に接続されている。このような保持部4は、天板2a上の被検体Tの周囲を移動可能に撮影部3を支持する。」 (引1-エ) 「【0020】 位置検出部6は、エンコーダやポジションセンサ等の位置検出センサにより構成されている。この経路検出部6は、天板2aの現在位置、さらに、保持アーム4aの現在位置(すなわち、撮影部3の現在位置)等を検出し、位置情報(例えば、動作軸データ)として制御装置7に送信する。すなわち、経路検出部6は、撮影位置まで移動する撮影部3や保持アーム4c等の移動体の現在位置(通過点)を順次検出し、例えば動作軸データとして制御装置7に送信する。ここで、撮影部3の撮影位置は、撮影部3のX線照射部3a及びX線検出部3bが被検体Tに対して医用画像を撮影する撮影動作を行うときの位置である。 【0021】 制御装置7は、各部を制御するマイクロプロセッサ等の制御部7aと、各種のプログラムや各種のデータを記憶する記憶部7bと、術者や助手等の操作者からの入力操作を受け付ける入力部7cと、医用画像等の画像を表示する表示部7dと、外部装置とネットワーク等の通信網を介して通信を行う通信部7eとを備えている。これらの各部7a?7eはバス7fにより電気的に接続されている。 【0022】 制御部7aは、記憶部7bに記憶された各種のプログラムやデータ等に基づいて各部を制御し、特に、それらのプログラムやデータ等に基づき、入力部7cに対する操作者の入力操作に応じて各部を制御する。また、制御部7aは、各種のプログラムに基づいて、各種データの計算又は加工等を行う一連のデータ処理、及び医用画像等の画像を表示する画像表示処理等を実行する。 【0023】 記憶部7bは、制御部7aが実行する各種のプログラム及び各種のデータを記憶する記憶装置であって、さらに、制御部7aのワークエリアとしても機能する記憶装置(メモリ)である。特に、記憶部7bは、各種のデータとして、位置検出部6から送信された動作軸データを順次記憶し、さらに、撮影した医用画像を記憶する記憶装置である。この記憶部7bとしては、例えば、ROMやRAM、磁気ディスク装置、半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)等を用いる。」 (引1-オ) 「【0024】 この記憶部7bには、図2に示すように、干渉領域Rの設定に用いる干渉領域設定テーブルT1が格納されている。この干渉領域設定テーブルT1には、異なる複数の干渉領域R(例えば、領域a、領域b、領域c、…)が、異なる複数の検査関連情報(例えば、情報A、情報B、情報C、…)にそれぞれ対応させて登録されている。これらの干渉領域Rは、入力部7cに対する入力操作等により予め登録されている。なお、異なる複数の干渉領域Rは、大きさや形状等が異なっている領域である。また、検査関連情報は、医用画像を撮影する検査に関連する情報である。この検査関連情報としては、例えば、検査内容(例えば、検査プロトコル等)や検査情報(例えば、術者情報(身長)や検査部位等)が挙げられる。 【0025】 ここで、干渉領域Rは、図3及び図4に示すように、移動体である撮影部3及び保持アーム4aの移動経路に干渉する干渉物である被検体T及び天板2a等の周囲の空間領域である。すなわち、干渉領域Rは、移動体(例えば、撮影部3及び保持アーム4a)と干渉物(被検体T、天板2a、天板駆動部2b、床及び壁等)が接触しないように予め注意を促すため、干渉物の周囲に設定された空間領域である。」 (引1-カ) 「【0030】 次に、前述の医用画像撮影装置1が行う接触回避動作及び干渉領域最適化動作について説明する。医用画像撮影装置1の制御部7aが、記憶部7bに格納されたプログラムに基づいて接触回避処理及び干渉領域最適化処理を実行する。 【0031】 接触回避処理では、図5に示すように、制御部7aは、まず、入力部7cに対する入力操作により入力された検査関連情報、あるいは、外部装置等から通信部7eを介して受信した検査関連情報に基づいて、記憶部7bに格納された干渉領域設定テーブルT1から干渉領域Rを選択して設定する(ステップS1)。 【0032】 例えば、図2に示すように、検査関連情報が情報Aである場合には、領域aが干渉領域Rとして設定され、検査関連情報が情報Bである場合には、領域bが干渉領域Rとして設定され、同様に、検査関連情報が情報Cである場合には、領域cが干渉領域Rとして設定される。このように、検査関連情報に応じて様々な干渉領域Rが設定されて用いられることになる。 【0033】 次いで、制御部7aは、撮影部3及び保持アーム4a等の角や縁等に初期の干渉ポイントを設定し(ステップS2)、その後、検査(撮影動作)が開始されたか否かを判断し(ステップS3)、検査開始に待機する(ステップS3のNO)。例えば、干渉ポイントは空間座標により設定される。 【0034】 ここで、操作者は入力部7cを入力操作して、撮影部3を撮影位置まで移動させるマニュアル操作を行い、検査を開始する。これに応じて、撮影部3及び保持アーム4a等の移動体は移動を開始し、撮影位置まで移動する。このとき、移動体の現在位置は、位置検出部6により検出され、位置情報である動作軸データとして制御部7aに順次送信される。この動作軸データは、記憶部7bに順次格納される。これにより、移動体が撮影位置に到達するまで、移動体の現在位置、すなわち通過点が順次記憶部7bに移動体の移動径路として格納される。 【0035】 検査が開始されたと判断した場合には(ステップS3のYES)、記憶部7bから動作軸データを順次読み込み(ステップS4)、初期の干渉ポイントを現状の干渉ポイントに変換する干渉ポイント座標変換を行い(ステップS5)、移動中の撮影部3及び保持アーム4a等の移動体と、被検体Tや天板2a等の干渉物とのクリアランス(離間距離)を算出する(ステップS6)。すなわち、移動体の現状の干渉ポイントと干渉物とのクリアラスが算出される。 【0036】 次いで、制御部7aは、算出したクリアランスに基づいて、移動体(干渉ポイント)が干渉領域Rの減速領域Raに入るか否かを判断し(ステップS7)、移動体が減速領域Raに入ると判断した場合には(ステップS7のYES)、移動中の撮影部3及び保持アーム4a等の移動体を減速する(ステップS8)。一方、移動体が減速領域Raに入らないと判断した場合には(ステップS7のNO)、移動体が干渉領域Rの警告領域Rbに入るか否かを判断する(ステップS9)。 【0037】 移動体が警告領域Rbに入ると判断した場合には(ステップS9のYES)、警告音を鳴らす(ステップS10)。これにより、移動体が干渉物に接触するという警告が操作者に報知される。一方、移動体が警告領域Rbに入らないと判断した場合には(ステップS9のNO)、タッチセンサC1、C2がオン状態(起動状態)であるか否かを判断する(ステップS11)。」 (2) 引用例1より認定できる事項及び引用発明 ア 上記(引1-ア)及び(引1ーイ)より、医用画像撮影装置がX線透視撮影装置であること、及び、該医用画像撮影装置が、患者等の被検体Tが載置される寝台2と、その寝台2上の被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する撮影部3と、その撮影部3を撮影位置まで移動可能に保持する保持部4と、撮影部3を撮影位置まで移動させる駆動部5と、撮影部3及び保持部4の各々の位置を検出する位置検出部6と、寝台2、撮影部3及び駆動部5等の各部を制御する制御装置7とを備えるものであることが理解できる。 イ 上記(引1-イ)より、寝台2は、水平方向及び鉛直方向に移動可能に形成され被検体を載せる天板2aと、その天板2aを支持して水平方向及び鉛直方向に移動させる天板駆動部2bとにより構成される点、及び、撮影部3は、寝台2の天板2a上の被検体Tに対してX線を照射するX線照射部3aと、そのX線照射部3aにより照射されたX線を検出するX線検出部3bとを備え、この撮影部3は、寝台2の天板2aの周囲を移動可能に設けられる点が理解できる。 ウ 上記(引1-ウ)より、保持部4は、X線照射部3a及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4aと、その保持アーム4aをスライド移動可能に保持するアーム保持部4bと、そのアーム保持部4bを回動可能に保持して天井面に移動可能及び回動可能に設けられた保持部材4cとを備える点が理解できる。 エ 上記(引1-エ)に示した段落【0020】には、部材の番号として「6」が付された部材として、「位置検出部6」と「経路検出部6」の、二つの部材が記載されているが、上記段落【0020】には、「この経路検出部6」と記載されており、それ以前に「経路検出部」の記載が存在しないことに鑑みるに、「経路検出部6」は「位置検出部6」をさすと認められる。 そして、上記(引1-エ)より、位置検出部6は、天板2aの現在位置、及び、保持アーム4aの現在位置(すなわち、撮影部3の現在位置)等を検出し、位置情報として制御装置7に送信する点が理解できる。 オ 上記(引1-エ)より、制御装置7は、各部を制御する制御部7aと、各種のプログラムや各種のデータを記憶する記憶部7bと、操作者からの入力操作を受け付ける入力部7cを備える点が理解できる。 カ 上記(引1-オ)の段落【0025】には、干渉領域Rは、撮影部3及び保持アーム4aと干渉物(天板2a)が接触しないように予め注意を促すため、干渉物の周囲に設定された空間領域である点が記載されている。 また、上記(引1-カ)の段落【0031】には、制御部7aは、検査関連情報に基づいて、記憶部7bに格納された干渉領域設定テーブルT1から干渉領域Rを選択して設定する点が記載されている。 したがって、上記の記載事項より、制御部7aは、検査関連情報に基づいて、記憶部7bに格納された干渉領域設定テーブルT1から、撮影部3及び保持アーム4aと天板2aが接触しないように予め注意を促すため、天板2aの周囲に設定された空間領域である干渉領域Rを選択して設定する点が理解できる。 キ 上記(引1ーカ)の段落【0033】より、干渉領域Rの選択及び設定の後、制御部7aは、撮影部3及び保持アーム4a等の角や縁等に初期の干渉ポイントを設定し、検査開始に待機する点が理解できる。 ク 上記(引1-カ)の段落【0035】には、「検査が開始されたと判断した場合には」「移動中の撮影部3及び保持アーム4a等の移動体と、被検体Tや天板2a等の干渉物とのクリアランス(離間距離)を算出する(ステップS6)。」と記載され、また、段落【0036】には、「制御部7aは、算出したクリアランスに基づいて、移動体(干渉ポイント)が干渉領域Rの減速領域Raに入るか否かを判断し(ステップS7)、移動体が減速領域Raに入ると判断した場合には(ステップS7のYES)、移動中の撮影部3及び保持アーム4a等の移動体を減速する(ステップS8)。一方、移動体が減速領域Raに入らないと判断した場合には(ステップS7のNO)、移動体が干渉領域Rの警告領域Rbに入るか否かを判断する(ステップS9)。」 と記載されていることから、制御部7aは、検査が開始されたと判断した場合には、撮像部3及び保持アーム4aと、天板2aとのクリアランス(離間距離)を算出し、算出された離間距離に基づいて、干渉領域Rに入るか否かを判断することによって撮像部3及び保持アーム4aの移動の制御を行っているといえる。 よって、上記記載事項(引-ア)ないし(引-カ)及び上記認定事項アないしクから、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「a) 患者等の被検体Tが載置される寝台2と、その寝台2上の被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する撮影部3と、その撮影部3を撮影位置まで移動可能に保持する保持部4と、撮影部3を撮影位置まで移動させる駆動部5と、撮影部3及び保持部4の各々の位置を検出する位置検出部6と、寝台2、撮影部3及び駆動部5等の各部を制御する制御装置7とを備えたX線透視撮影装置であり、 b) 寝台2は、水平方向及び鉛直方向に移動可能に形成され被検体を載せる天板2aと、その天板2aを支持して水平方向及び鉛直方向に移動させる天板駆動部2bとにより構成され、 c) 撮影部3は、寝台2の天板2a上の被検体Tに対してX線を照射するX線照射部3aと、そのX線照射部3aにより照射されたX線を検出するX線検出部3bとを備え、この撮影部3は、寝台2の天板2aの周囲を移動可能に設けられており、 d) 保持部4は、X線照射部3a及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4aと、その保持アーム4aをスライド移動可能に保持するアーム保持部4bと、そのアーム保持部4bを回動可能に保持して天井面に移動可能及び回動可能に設けられた保持部材4cとを備え、 e) 位置検出部6は、天板2aの現在位置、及び、保持アーム4aの現在位置(すなわち、撮影部3の現在位置)等を検出し、位置情報として制御装置7に送信し、 f) 制御装置7は、各部を制御する制御部7aと、各種のプログラムや各種のデータを記憶する記憶部7bと、操作者からの入力操作を受け付ける入力部7cを備え、 g-1) 制御部7aは、検査関連情報に基づいて、記憶部7bに格納された干渉領域設定テーブルT1から、撮影部3及び保持アーム4aと天板2aが接触しないように予め注意を促すため、天板2aの周囲に設定された空間領域である干渉領域Rを選択して設定し、 g-2) 次いで、制御部7aは、撮影部3及び保持アーム4a等の角や縁等に初期の干渉ポイントを設定し、その後、検査開始に待機し、 g-3) 検査が開始されたと判断した場合には、移動中の撮影部3及び保持アーム4a等の移動体と、被検体Tや天板2a等の干渉物とのクリアランス(離間距離)を算出し、算出された離間距離に基づいて、干渉領域Rに入るか否かを判断することによって撮像部3及び保持アーム4aの移動の制御を行う X線透視撮影装置。」 (3) 対比・判断 ア 本願発明1について 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア) 本願発明1のA)の特定事項について a 引用発明の「被検体T」は、本願発明1の「被検体」相当し、引用発明の「被検体Tの医用画像を撮影する」ことは、本願発明1の「被検体の透視あるいは撮影を行う」ことに相当する。 b よって、引用発明の「被検体Tの医用画像を撮影する」「X線透視撮影装置」は、本願発明1の「被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置」に相当する。 (イ) 本願発明1のB)の特定事項について a 引用発明の「寝台2」、「水平方向及び鉛直方向に移動可能に形成され被検体を載せる天板2a」は、それぞれ、本願発明1の「検診台」、「被検体を載置する可動式天板」に相当する。 b よって、引用発明の「水平方向及び鉛直方向に移動可能に形成され被検体を載せる天板2a」「より構成され」る「寝台2」は、本願発明1の「被検体を載置する可動式天板を有し、室内に配置された検診台」に相当する。 (ウ) 本願発明1のC)の特定事項について a 引用発明の「X線照射部3a」、「X線検出部3b」は、それぞれ、本願発明1の「X線源」、「X線検出器」に相当する。 b 引用発明の「保持アーム4a」は、「X線照射部3a及びX線検出部3b」を保持するものであり、一方、本願発明1の「X線撮像手段」は、「X線源とX線検出器とを保持」するものである。 c 引用発明の「撮像部3」は、「寝台2上の被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する」ものであり、一方、本願発明1の「X線撮像手段」は、「検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行う」ものである。 d 上記b及びcより、「X線照射部3a及びX線検出部3b」を「保持する」「保持アーム4a」と、「寝台2上の被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する」「撮像部3」を合わせたものが、本願発明1の「X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段」に相当するといえる。 e 引用発明における「保持アーム4a」及び「撮像部3」が、室外ではなく、室内に配置されるべきものであることは、当業者にとって明らかである。 f よって、本願発明1と引用発明は、「室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段」を備える点で共通する。 (エ) 本願発明1のD)の特定事項について a 引用発明の「制御装置7」は「制御部7a」を備えるものであり、「制御部7a」は、「撮像部3及び保持アーム4aの移動の制御を行う」ものである。 b 一方、本願発明1の「位置制御手段」は、「X線撮像手段の位置を制御する」ものである。 c そして、本願発明1において、「X線撮像手段の位置」は、X線撮像手段の移動によって変化するものであるから、本願発明1の「位置制御手段」は、X線撮像手段の移動の制御を行うことは明らかである。 d また、上記(ウ)で検討したように、引用発明の「保持アーム4a」と「撮像部3」を合わせたものが、本願発明1の「X線撮像手段」に相当するものである。 e よって、本願発明1と引用発明は、「X線撮像手段」の移動を「制御する」「制御手段」を備える点で共通する。 (オ) 本願発明1のE)の特定事項について 引用発明の「保持アーム4aの現在位置(すなわち、撮影部3の現在位置)等を検出」することは、本願発明1の「X線撮像手段の現在の位置を検出する」ことに相当し、引用発明の「位置検出部6」は、「保持アーム4aの現在位置(すなわち、撮影部3の現在位置)等を検出」も行うことから、本願発明1の「X線撮像手段位置検出手段」に相当する。 よって、本願発明1と引用発明は、「X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段」を有する点で共通する。 (カ) 本願発明1のF)の特定事項について a 引用発明は、「撮影部3及び保持アーム4aと天板2aが接触しないように」するための制御を行っていることは明らかである。一方、本願発明1は、「X線撮像手段の動作によって」「可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように」「制御する」ものである。 b よって、本願発明1と引用発明は、X線撮像手段の動作によって可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように制御する点で共通する。 そうすると、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致する。 <一致点> 「A) 被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、 B) 前記被検体を載置する可動式天板を有し、室内に配置された検診台と、 C''') 室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、 D') 前記X線撮像手段の移動を制御する制御手段を備え、 E'') 前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段を有し、 F'') 前記X線撮像手段の動作によって可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように制御する X線透視撮影装置。」 また、両者は、以下の点で相違している。 <相違点A> X線撮像手段に関して、 本願発明1は、C)にあるように、前記X線撮像手段が、検診台と独立して配置され、D)にあるように、前記X線撮像手段の移動の制御が位置制御手段によって行われ、E)にあるように、その移動の制御にあたって、前記位置制御手段が有する検診台登録手段により、ある時点におけるX線撮像手段に対する可動式天板の鉛直方向の位置を登録し、F)にあるように、前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御するのに対して、 引用発明は、撮像部及び保持部4が、寝台2と独立して配置されたものであることが明らかでなく、また、保持アーム4aの現在位置(すなわち撮影部3の現在位置)の検出に加えて天板2aの現在位置も位置情報として制御装置7に送信するものであり、また、移動中の撮影部3及び保持アーム4a等の移動体と、被検体Tや天板2a等の干渉物とのクリアランス(離間距離)を算出していることから、X線撮像手段が、検診台と独立して配置されたものとはいえず、検診台登録手段を有しておらず、さらに、登録されたある時点におけるX線撮像手段に対する可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御するとはいえない点。 上記相違点Aについて以下に検討する。 本願発明1の上記相違点Aに係る構成は、引用例1には記載されておらず、また、本願出願前において周知技術であるともいえない。 そして、本願発明1の上記相違点Aに基づく構成は、ハイブリッド手術室システムのように、外科用手術台とX線撮像部間でお互いの情報を一切交換せず、検診台(例えば外科用手術台)の形状や位置をX線撮像部では知り得ないということに対する技術課題(本願明細書の段落【0009】?【0011】)を解決したものであり、引用例1には、そもそもそのような技術課題がないのであるから、上記相違点Aの構成を採用する動機付けはない。 してみると、引用例1に接した当業者といえども、上記相違点Aに係る本願発明1の発明特定事項を想起することができない。 よって、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1における、 「B) 前記被検体を載置する可動式天板を有し、室内に配置された検診台と、 C) 前記検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、」 の特定事項が、 「C') 前記被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、」 とされている点で、本願発明1と相違するものである。 そこで、本願発明2のC')の発明特定事項について以下に検討する。 a 引用発明の「寝台2」、「水平方向及び鉛直方向に移動可能に形成され被検体を載せる天板2a」は、それぞれ、本願発明2の「検診台」、「被検体を載置する可動式天板」に相当する。 b よって、引用発明の「水平方向及び鉛直方向に移動可能に形成され被検体を載せる天板2a」「より構成され」る「寝台2」は、本願発明2の「被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台」に相当する。 c 引用発明の「X線照射部3a」、「X線検出部3b」は、それぞれ、本願発明2の「X線源」、「X線検出器」に相当する。 d 引用発明の「保持アーム4a」は、「X線照射部3a及びX線検出部3b」を保持するものであり、一方、本願発明2の「X線撮像手段」は、「X線源とX線検出器とを保持」するものである。 e 引用発明の「撮像部3」は、「寝台2上の被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する」ものであり、一方、本願発明2の「X線撮像手段」は、「検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行う」ものである。 f 上記d及びeより、「X線照射部3a及びX線検出部3b」を「保持する」「保持アーム4a」と、「寝台2上の被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する」「撮像部3」を合わせたものが、本願発明2の「X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段」に相当するといえる。 g 引用発明における「保持アーム4a」及び「撮像部3」が、室外ではなく、室内に配置されるべきものであることは、当業者にとって明らかである。 h よって、本願発明2と引用発明は、「室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、」「被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台」「に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段」を備える点で共通する。 そして、上記「ア 本願発明1について」において検討された、本願発明2のその余の発明特定事項の検討をふまえ、本願発明2と引用発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。 <一致点> 「A) 被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、 C'''') 室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、 D') 前記X線撮像手段の移動を制御する制御手段を備え、 E'') 前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段を有し、 F'') 前記X線撮像手段の動作によって可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように制御する X線透視撮影装置。」 また、両者は、以下の点で相違している。 <相違点B> X線撮像手段に関して、 本願発明2は、C'')にあるように、前記X線撮像手段が、検診台と独立して配置されるとともに、D)にあるように、前記X線撮像手段の移動の制御が位置制御手段によって行われ、E)にあるように、前記位置制御手段が有する検診台登録手段により、ある時点におけるX線撮像手段に対する可動式天板の鉛直方向の位置を登録し、F)にあるように、前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御するのに対して、 引用発明は、撮像部及び保持部4が、寝台2と独立して配置されたものであることが明らかでなく、また、保持アーム4aの現在位置(すなわち撮影部3の現在位置)の検出に加えて天板2aの現在位置も位置情報として制御装置7に送信し、移動中の撮影部3及び保持アーム4a等の移動体と、被検体Tや天板2a等の干渉物とのクリアランス(離間距離)を算出していることから、X線撮像手段が、検診台と独立して配置されたものとはいえず、登録されたX線撮像手段に対する可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御するとはいえない点。 上記相違点Bについて以下に検討する。 上記相違点Bは、本願発明1と引用発明との対比における相違点Aと同一であり、本願発明2の上記相違点Bに係る構成は、引用例1には記載されておらず、また、本願出願前において周知技術であるともいえない。 そして、本願発明2の上記相違点Bに基づく構成は、ハイブリッド手術室システムのように、外科用手術台とX線撮像部間でお互いの情報を一切交換せず、検診台(例えば外科用手術台)の形状や位置をX線撮像部では知り得ないということに対する技術課題(本願明細書の段落【0009】?【0011】)を解決したものであり、引用例1には、そもそもそのような技術課題がないのであるから、上記相違点Bの構成を採用する動機付けはない。 してみると、引用例1に接した当業者といえども、上記相違点Bに係る本願発明2の発明特定事項を想起することができない。 よって、本願発明2は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本願発明3について 本願発明3と引用発明を対比する。 (ア) 本願発明3のA)の特定事項について a 引用発明の「被検体T」は、本願発明2の「被検体」相当し、引用発明の「被検体Tの医用画像を撮影する」ことは、本願発明1の「被検体の透視あるいは撮影を行う」ことに相当する。 b よって、引用発明の「被検体Tの医用画像を撮影する」「X線透視撮影装置」は、本願発明3の「被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置」に相当する。 (イ) 本願発明3のC'')の特定事項について a 引用発明の「X線照射部3a」、「X線検出部3b」は、それぞれ、本願発明3の「X線源」、「X線検出器」に相当する。 b 引用発明の「保持アーム4a」は、「X線照射部3a及びX線検出部3b」を保持するものであり、一方、本願発明3の「X線撮像手段」は、「X線源とX線検出器とを保持」するものである。 c 引用発明の「撮像部3」は、「被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する」ものであり、一方、本願発明3の「X線撮像手段」は、「被検体の透視あるいは撮影を行う」ものである。 d 上記b及びcより、「X線照射部3a及びX線検出部3b」を「保持する」「保持アーム4a」と、「被検体Tに対する撮影位置から被検体Tの医用画像を撮影する」「撮像部3」を合わせたものが、本願発明3の「X線源とX線検出器とを保持し、」「被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段」に相当するといえる。 e 引用発明における「保持アーム4a」及び「撮像部3」が、室外ではなく、室内に配置されるべきものであることは、当業者にとって明らかである。 f よって、本願発明3と引用発明は、「室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、」「被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台」「に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段」を備える点で共通する。 (ウ) 本願発明3のD)の特定事項について a 引用発明の「制御装置7」は「制御部7a」を備えるものであり、「制御部7a」は、「撮像部3及び保持アーム4aの移動の制御を行う」ものである。 b 一方、本願発明3の「位置制御手段」は、「X線撮像手段の位置を制御する」ものである。 c そして、本願発明3において、「X線撮像手段の位置」は、X線撮像手段の移動によって変化するものであるから、本願発明3の「位置制御手段」は、X線撮像手段の移動の制御を行うことは明らかである。 d また、上記(イ)で検討したように、引用発明の「保持アーム4a」と「撮像部3」を合わせたものが、本願発明3の「X線撮像手段」に相当するものである。 e よって、本願発明3と引用発明は、「X線撮像手段」の移動を「制御する」「制御手段」を備える点で共通する。 (エ) 本願発明3のE')の特定事項について 引用発明の「保持アーム4aの現在位置(すなわち、撮影部3の現在位置)等を検出」することは、本願発明3の「X線撮像手段の現在の位置を検出する」ことに相当し、引用発明の「位置検出部6」は、「保持アーム4aの現在位置(すなわち、撮影部3の現在位置)等を検出」も行うことから、本願発明3の「X線撮像手段位置検出手段」に相当する。 よって、本願発明3と引用発明は、「X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段」を有する点で共通する。 (オ) 本願発明3のF')の特定事項について 引用発明は、周辺機器の位置に関する特定は何らなされていないことから、 引用発明は、本願発明3のF')の特定事項を具備していない。 そうすると、本願発明3と引用発明は、以下の点で一致する。 <一致点> 「A) 被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、 C''''') 室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、 D') 前記X線撮像手段の移動を制御する制御手段と、 を備え、 E'') 前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段を有する X線透視撮影装置。」 また、両者は、以下の点で相違している。 <相違点C> X線撮像手段に関して、 本願発明3は、前記X線撮像手段が、C'')にあるように、室内に配置された可動式あるいは可搬式の周辺機器とは独立して配置されるとともに、D)にあるように、前記X線撮像手段の移動の制御が位置制御手段によって行われ、E')にあるように、前記位置制御手段が有する周辺機器登録手段により、ある時点におけるX線撮像手段に対する前記周辺機器の位置を登録し、F')にあるように、前記周辺機器の位置が前記登録した時から変化していないとしたときに、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記周辺機器の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の周辺機器の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御するのに対して、 引用発明は、可動式あるいは可搬式の周辺機器の存在は不明であり、また、周辺機器登録手段を有しておらず、周辺機器の位置に対するX線撮像手段の制御がどのように行われるのか不明である点。 上記相違点Cについて以下に検討する。 本願発明3の上記相違点Cに係る構成は、引用例1には記載されておらず、また、本願出願前において周知技術であるともいえない。 そして、本願発明3の上記相違点Cに基づく構成は、ハイブリッド手術室システムのように、可搬式の周辺機器とX線撮像部間でお互いの情報を一切交換せず、前記周辺機器の形状や位置をX線撮像部では知り得ないということに対する技術課題を解決したものであり、引用例1には、そもそもそのような技術課題がないのであるから、上記相違点Cの構成を採用する動機付けはない。 してみると、引用例1に接した当業者といえども、上記相違点Cに係る本願発明3の発明特定事項を想起することができない。 よって、本願発明3は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第4 結語 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-06-05 |
出願番号 | 特願2012-254155(P2012-254155) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小田倉 直人 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
▲高▼橋 祐介 郡山 順 |
発明の名称 | X線透視撮影装置 |
代理人 | 喜多 俊文 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 阿久津 好二 |