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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1328885
審判番号 不服2016-3990  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-15 
確定日 2017-06-07 
事件の表示 特願2013-539824「電気解剖学的システム画像形成素子を搭載した医療機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月31日国際公開、WO2012/071087、平成26年 1月23日国内公表、特表2014-501557〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月2日(パリ条約による優先権主張 平成22年11月23日 米国、平成22年12月30日 米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、平成27年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月17日付けで拒絶査定されたところ、平成28年3月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年5月13日に前置報告書が作成されたものである。



第2 平成28年3月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年3月15日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正後の請求項1に記載された発明
(1)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を次のとおりに補正する補正事項をその一部に含むものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
医療機器であって、
カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサと、
ここで、前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含み、
ここで、前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲し、
ここで、前記中央の主ルーメンは、第二の医療機器をその中に受けるようになされており、
前記内側ライナーと前記外層の中間において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、
ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に連結された中空の副管を含んでおり、
前記外層を通って伸びているとともに前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材と、
ここで、前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びており、
前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されている電気解剖学的システム画像形成素子と、
前記電気解剖学的システム画像形成素子に連結され、前記少なくとも1つの外側ルーメンの中を伸びている電線と、
前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子と、
前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータと、を備える医療機器。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
医療機器であって、
カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサと、
ここで、前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含み、
ここで、前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲し、
ここで、前記中央の主ルーメンは、カテーテルをその中に受けるようになされており、
前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、
ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に連結された中空の副管を含んでおり、
前記外層を通って伸びているとともに前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材と、
ここで、前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びており、
前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されており、前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための信号を提供するように構成されている電気解剖学的システム画像形成素子と、
前記電気解剖学的システム画像形成素子に連結され、前記少なくとも1つの外側ルーメンの中を伸びている電線と、
前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子と、
前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータと、を備える医療機器。」(以下、「本件補正発明」という。下線は、本件補正による補正箇所を示す。)

(2)本件補正の目的について
ア 上記請求項1についての補正事項のうち、補正前の請求項1の「前記内側ライナーと前記外層の中間において」「前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメン」を、「前記外層の中において」「前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメン」に変更する補正事項は、「外層」と「内側ライナー」とは互いに隣接し、密着するものであるため両者の間に「中間」の層は存在し得ないし、本願の発明の詳細な説明及び図面には、「外層の中」において「外側ルーメン」が伸びていることが開示されているところ、当該「前記内側ライナーと前記外層の中間において」との記載は、「前記外層の中において」の誤記であることは明らかであるから、当該補正事項による補正の目的は、特許法第17条の2第5項第3号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当するものである。

イ 上記請求項1についての補正事項のうち、本件補正前の請求項1の「第二の医療機器」を「カテーテル」に変更するとともに、本件補正前の請求項1の「電気解剖学的システム画像形成素子」について、「前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための信号を提供するように構成されて」いるものである点を追加する補正事項は、特許請求の範囲を減縮するとともに、発明特定事項を限定するものであって、それらにより、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が変更されるものでもないから、当該補正事項による補正の目的は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。


2 独立特許要件についての検討
(1)特許法第29条第2項違反について
ア 引用例及びその記載事項
(ア)引用例1の記載事項
本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特表2010-533564号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加した。)。

a 「【請求項1】
心臓手術用のカテーテルであって、
ルーメン径が少なくとも約6フレンチの管状内側ライナと、
前記内側ライナの少なくとも一部を包囲するトルク伝達層であって、ワイヤメッシュに編組された少なくとも2つのフラットワイヤを備え、前記フラットワイヤが実質的に断面が矩形であり、かつ幅が少なくとも約0.007インチであり深さが少なくとも約0.003インチである、トルク伝達層と、
前記トルク伝達層の上に形成される外側シースと、
を具備するカテーテル。」

b 「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、カテーテル、および、カテーテルまたは他の医療器具を人体内の位置に送達するのを促進するために用いられるイントロデューサカテーテルに関する。特に、本発明は、強度、可撓性および耐キンク(kink)性を向上させるように構成されたトルク伝達層を有するカテーテルおよびイントロデューサカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルが用いられる医療処置は、ますます増加し続けている。ごくわずかな例を挙げると、カテーテルは、診断処置、治療処置およびアブレーション処置に用いられている。通常、医師は、カテーテルを患者の脈管構造を通して、患者の心臓内の部位等の意図された部位まで操作する。カテーテルは、通常、アブレーション、診断、心臓マッピング等に使用され得る1つまたは複数の電極もしくは他の診断または治療装置を搭載している。
【0003】
診断用または治療用カテーテルは、患者内の目的とする位置での配置を容易にするために、一般に「ガイディングカテーテル」または「イントロデューサカテーテル」として知られる別のカテーテルを通して導入される場合があることが知られており、本明細書ではそれら用語を同義で用いることにする。一般に、イントロデューサカテーテルは、高度な方向制御が可能な管であり、方向制御がほとんどまたはまったく可能でない他のカテーテルを、患者の身体の所定領域内に配置するために用いられる。
【0004】
たとえば、心臓アブレーションの分野では、イントロデューサカテーテルは、患者の脈管構造を通り抜けるために用いられる場合があり、それにより、アブレーション装置が脈管構造を通過し、不整脈をもたらす心臓組織を焼灼するように配置され得る。イントロデューサカテーテル自体は、ガイドワイヤ上を前進することができる。
【0005】
一般に、イントロデューサカテーテルは、内部を通るアブレーション装置に適応するように十分大きい内径(すなわち「口径」)を維持しながら、外径が血管を通り抜けるために十分小さくなければならないことが知られている。さらに、患者内の通路は長くかつ曲がりくねっていることが多いため、操縦力を比較的長い距離にわたって伝達しなければならない。したがって、イントロデューサカテーテルは、その近位端に加えられる力を介して患者の脈管構造内に押し込まれるために十分な軸方向強度(「プッシャビリティ(pushability)」)を有していることが望ましい。また、イントロデューサカテーテルは、近位端において加えられるトルクを遠位端まで伝達することも望ましい(「トルク性(torqueability)」)。イントロデューサカテーテルはまた、患者の脈管構造に実質的に適合するがその際によじれ(kinking)が生じないように十分可撓性がなければならない。当業者は、これらさまざまな特性が、互いに拮抗する関係にあることが多く、1つを改善するために他を妥協する必要があることを理解するであろう。たとえば、所与の外径を有するイントロデューサカテーテルの口径を増大させるには、より薄い壁を利用する必要がある。しかしながら、壁の薄いイントロデューサは、その近位端にトルクが加えられた時に潰れる可能性が高い。」

c 「【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるイントロデューサアセンブリの斜視図である。
【図2】本発明の別の実施形態による操縦可能な大口径イントロデューサの断面図である。
【図3】本発明によるイントロデューサを製造する方法で用いられるリフローマンドレルアセンブリを示す。
【図4】好ましい製造方法によりリフローマンドレルアセンブリの上に配置される内側層を示す。
【図5】好ましい製造方法により内側層の上に配置されるトルク伝達層を示す。
【図6】好ましい製造方法によりトルク伝達層の上に配置されるさまざまな構成部品の外側シースを示す。
【図7】先端アセンブリのための遠位構造を有する、リフローマンドレルアセンブリの上に組み立てられたイントロデューサの構成部品を示す。
【図8】図7に示すイントロデューサの遠位端に取り付けられる、放射線不透過性マーカを有する先端構成部品を示す。
【図9】図7に示すイントロデューサの遠位端に取り付けられる、放射線不透過性マーカを有する別の先端構成部品を示す。
【図10】操縦リングの詳細を示すために切り取られた、本発明の一実施形態による操縦可能イントロデューサの斜視図である。」

d 「【0015】
図1は、遠位端190および近位端104を有するイントロデューサカテーテル100を備えた、本発明の一実施形態によるイントロデューサアセンブリ110の斜視図である。イントロデューサカテーテル100は、ハンドルアセンブリ106に動作可能に連結されることができ、ハンドルアセンブリ106は、処置中にイントロデューサを案内するかまたは操縦するのに役立つ。イントロデューサアセンブリ110は、カテーテルアセンブリ、流体、または当業者には既知である他の任意の装置の挿入または送達のために、ハンドルアセンブリ106内の内側ルーメン(図示せず)に動作可能に連結されるハブ108をさらに有している。任意に、イントロデューサアセンブリ110は、ハブ108に動作可能に連結される弁112をさらに有している。」

e 「【0016】
図2は、本発明の一実施形態によるイントロデューサカテーテル200の断面図を示す。イントロデューサカテーテル200は、管状ポリマー内側ライナ202と、トルク伝達層204と、溶融加工ポリマーからなる外側シース206と、熱収縮層208とからなる。イントロデューサが操縦可能イントロデューサである場合、イントロデューサカテーテル200は、イントロデューサカテーテル200の長さに沿って長手方向に配置される少なくとも1つのフラットワイヤ210をさらに有している。この発明の目的で、「フラットワイヤ」とは、断面が2つの直行する軸に沿って測定した場合に実質的に平坦であることを特徴とするワイヤを指す。フラットワイヤは、通常、矩形断面を有しているが、断面は完全に矩形である必要はない。たとえば、本発明は、フラットワイヤの断面が、断面全体が略平坦であれば、楕円形であってもよいということを企図している。ワイヤは、本明細書でこの用語を用いるにおいては、一方向においてx、その第1方向に略直交する第2方向において少なくとも2xと測定される断面を有する場合に、フラットワイヤとして適切に特徴づけられるものとする。断面が実質的にI字型であるワイヤもまた、概して、そのI字型の高さがそのI字型の幅の最も広い測定値より実質的に大きい場合、フラットワイヤであり得る。当業者は、フラットワイヤを、本明細書の教示全体の文脈で定義し得るということを理解するであろう。
【0017】
少なくとも1つのフラットワイヤ210を、さらに、フラットワイヤ210を収容するルーメン214を形成する別のポリマー管状部材212内に収納してもよい。本実施形態によるイントロデューサカテーテルは、後により詳細に説明するように、構成部品がマンドレルの上に個々に供給されるリフロー接合プロセスによって製造される。
【0018】
内側ライナ202は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはエッチングされたPTFE等のポリマー材料であることが好ましい。内側ライナ202を、限定はしないがポリエーテルブロックアミド、ナイロンおよび他の熱可塑性エラストマを含む他の溶融加工ポリマーから作製してもよい。こうしたエラストマが、Arkema,Inc.製のPebax(登録商標)である。限定はしないがPebax 30D?Pebax 70Dを含む、さまざまなデュロメータのPebaxもまた使用することができる。好ましい実施形態では、内側ライナ202は、外側シース206の溶融加工に耐性があるように、外側シース206より融解温度が高い材料からなる。
【0019】
内側ライナ202は、内部にルーメン216を画定しており、それは好ましくは直径218が少なくとも約6フレンチ、より好ましくは少なくとも約7フレンチ、最も好ましくは約10フレンチ?約24フレンチの間である。しかしながら、本発明の実施形態によっては、ルーメン216の直径218は、約7フレンチ?約32フレンチの間というように、最大約32フレンチまたはそれを超えてもよい、ということが企図されている。
【0020】
トルク伝達層204は、好ましくは内側ライナ202と熱収縮層208との間、より好ましくは外側シース206と内側ライナ202との間に配置される。イントロデューサが、たとえば少なくとも1本の長手方向ワイヤ210を利用する操縦可能イントロデューサである場合、トルク伝達層204を、内側層202と外側シース206との間、または外側シース206と熱収縮層208との間のいずれかに配置してもよい。トルク伝達層204を、ステンレス鋼(304または316)ワイヤまたは当業者に既知である他の許容可能な材料から作製してもよい。
【0022】
一般にピクセル/インチ(「PPI」)で測定される編組密度は、通常、約5?100の間であり、フラットワイヤのサイズとともにカテーテルのサイズによって決まる。少なくとも約0.003インチ厚さ×約0.007インチ幅のフラットワイヤ、および内部ルーメンが少なくとも約6フレンチであるカテーテルの場合、PPIは、好ましくは約10?約90の間、より好ましくは約10?約55の間である。たとえば、約0.003インチ厚さ×約0.007インチ幅のフラットワイヤの場合のPPIは、好ましくは約20?約90の間、より好ましくは内部ルーメンが少なくとも6フレンチである場合に約35?約55の間、最も好ましくは内部ルーメンが少なくとも約10フレンチである場合に約35?約45の間である。約0.004インチ厚さ×約0.012インチ幅のフラットワイヤの場合のPPIは、好ましくは約15?約70の間であり、より好ましくは内部ルーメンが少なくとも約6フレンチである場合に約15?約22の間である。約0.004インチ厚さ×約0.020インチ幅のフラットワイヤの場合のPPIは、好ましくは約5?約50の間であり、より好ましくは内部ルーメンが少なくとも約6フレンチである場合に約10?約20の間であり、最も好ましくは内部ルーメンが少なくとも約16フレンチである場合に約10?約20の間である。
【0023】
別法として、トルク伝達層204は、イントロデューサカテーテル200の長さに沿って可変の編組密度構造を利用してもよい。たとえば、トルク伝達層は、イントロデューサカテーテル200の近位端において第1編組密度であり、トルク伝達層204がイントロデューサカテーテル200の遠位端に近づくに従い1つまたは複数の編組密度に遷移することを特徴としてもよく、すなわち、遠位端の編組密度は、近位端の編組密度より高くても低くてもよい。所定の例では、近位端の編組密度は約50PPIであり、遠位端の編組密度は約10PPIである。別の実施形態では、遠位端の編組密度は、近位端の編組密度の約20?35%である。」

f 「【0026】
外側シース206は、押出成形されたPebaxまたはPTFE管材であることが好ましい。外側シース206の溶融加工ポリマーは、トルク伝達層のワイヤメッシュの複数の空隙(void)をふさぐ。外側シース206を、限定はしないが、さまざまなデュロメータで、エッチングされたPTFE、ポリエーテルブロックアミド、ナイロンおよび他の熱可塑性エラストマを含む、他の溶融加工ポリマーから作製してもよい。外側シース206は、たとえば溶融加工ポリマーの2つ以上の管を含む2つ以上の層を有していてもよい。別法として、図6に示すように、外側シース306を、イントロデューサ300の長さに沿って硬度および/または材料が異なりかつ互いにリフロー接合されているさまざまなセグメント322、324、326、328、330から構成してもよい。これを、イントロデューサ300の長さに沿って材料の異なる環状リングを層状にするかまたは配置することによって達成してもよい。このようにシースの構成が異なることにより、イントロデューサ300に沿ったさまざまな箇所において可撓性、トルク性およびプッシャビリティを調整するというさらなる利益が提供される。」

g 「【0027】
イントロデューサが(図2に示すように)操縦可能イントロデューサである実施形態では、少なくとも1本のフラットワイヤ210が提供され、このフラットワイヤ210がイントロデューサの実質的に全長に沿って延在することが好ましい。フラットワイヤ210は、ステンレス鋼から構成されることが好ましく、好ましくは約0.002インチ×約0.016インチ、より好ましくは約0.004インチ×約0.012インチまたは0.016インチである。フラットワイヤを、幅と厚さの比が、(少なくとも約2):1であるように選択してもよい。一実施形態では、フラットワイヤの少なくとも一部は、内側ライナ202に沿って配置される前に予備成形管(preformed tube)212内部に収納されることにより、フラットルーメン214を形成する。予備成形管212は、フラットワイヤの断面と同じ形状である必要はなく、円形、楕円形、矩形または別の同様の形状であってもよい。予備成形管内でのフラットワイヤの移動を容易にするために、予備成形管212の断面は、フラットワイヤ210の断面と同じ形状ではないことが好ましい。予備成形管を、PTFE、エッチングされたPTFE、ポリエーテルブロックアミド(Pebax等)、ナイロン、他の熱可塑性エラストマまたは当業者に既知である他の任意の材料から形成してもよい。予備成形管212は、イントロデューサカテーテル200に溶融加工が施される時に融解しないように、外側シース206より融点が高いことが好ましい。別の実施形態では、フラットワイヤ210を、配置する前に、シリコーンおよび他の潤滑性材料を含む潤滑性材料(図示せず)で覆ってもよい。別法として、フラットワイヤ210を、摺動性を向上させるために潤滑性層でコーティングしてもよく、フラットワイヤ210を、摺動性を向上させるために平滑面を有するように製造してもよいということも企図される。フラットワイヤ210を構成するためにはステンレス鋼が好ましい材料であるが、限定はしないが従来のラウンドプルワイヤに用いられる材料を含む他の材料を用いてもよい。2つ以上のフラットワイヤ210を用いてもよく、そうした場合、そうしたフラットワイヤ210の各々を、それ自体の可撓性管212内部に収納してもよい。図2に示すように、180度の間隔を空けられている一対のフラットワイヤ210が用いられることが好ましい。フラットワイヤ210は、通常イントロデューサの遠位端近くに配置される少なくとも1つの操縦リング90に接続されることが好ましい(たとえば図10参照)。そして、フラットワイヤ210の近位端は、操縦機構(図示せず)に動作可能に接続され、それにより、使用中にイントロデューサカテーテル200の操作がまたは操縦が可能になる。図10は、操縦リング90とそのプルワイヤ210への接続を強調している、本発明によるイントロデューサカテーテル200の切取図を示す。」

h 「【0033】
さらに、図7?図9に示すように、本発明は、非侵襲性先端等、たとえば使用中に先端の位置特定のために内部に放射線不透過性材料を含む、医療処置に用いられる先端アセンブリを含むことを企図している。たとえば、図7?図9は、先端アセンブリ732または734を受け入れるように構成された遠位部730を有するイントロデューサカテーテル700の断面を示す。両方の例において、先端732または734は、使用中に先端732または734の位置特定のためのリング736、たとえば放射線不透過性マーカを有している。さらに、図9は、たとえば灌注流体の送達のための複数のポート孔738を有するように構成された先端アセンブリ734を有している。先端アセンブリを、さらに、心臓アブレーション処置で用いられるように、電源(図示せず)に動作可能に接続されたアブレーション電極(図示せず)を有するように構成してもよい。」

i 図1


j 図2


k 図9


l 図10



(イ)引用発明1
a 上記(ア)iの図1から、イントロデューサアセンブリ110は、イントロデューサカテーテル100と、ハンドルアセンブリ106との両方を備えることが見て取れる。
イントロデューサカテーテル100は、引用例1の随所(例えば、上記(ア)e【0016】、上記(ア)h【0033】等)において、「イントロデューサカテーテル200」、「イントロデューサカテーテル700」という記載もあることから、イントロデューサカテーテル100と200と700は、同じものと解される。
また、上記ア(ア)bの段落【0001】の記載のとおり、イントロデューサカテーテルは、「カテーテルまたは他の医療器具を人体内の位置に送達するのを促進するために用いられる」ものである。
上記点と、上記(ア)dの段落【0015】の下線部を併せて踏まえると、引用例1には、「カテーテルまたは他の医療器具を人体内の位置に送達するのを促進するために用いられるイントロデューサカテーテル(100・200・700)と、処置中にイントロデューサカテーテル(100・200・700)を操縦するハンドルアセンブリ(106)とを備えたイントロデューサアセンブリ(110)」が記載されているといえる。

b 上記(ア)jの図2から、管状ポリマー内側ライナ202、外側シース206、熱収縮層208の順で積層されていることが見て取れる。
上記(ア)eの段落【0016】の下線部を併せて踏まえると、引用例1には、「イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、管状ポリマー内側ライナ(202)と、トルク伝達層(204)と、溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)と、熱収縮層(208)とからなり、かつ、管状ポリマー内側ライナ(202)、外側シース(206)、熱収縮層(208)の順で積層されて」いることが記載されているといえる。

c 上記(ア)eの段落【0019】の「内部に」「画定」される「ルーメン216」と、上記(ア)eの段落【0022】の「内部ルーメン」は、共に「内部」の「ルーメン」であることから同じものを指すと解される。
上記(ア)eの段落【0019】の「内側ライナ202」と、上記(ア)eの段落【0016】の「管状ポリマー内側ライナ202」は、同じ符号「202」が使用されていることから同じものを指すことは明らかである。
上記(ア)jの図2の断面図から、内部ルーメン216は、イントロデューサカテーテル200断面中央に、その長さに沿って長手方向に配置されていることが見て取れる。
上記点と、上記(ア)bの段落【0003】の下線部と、上記(ア)eの段落【0019】の下線部とを併せて踏まえると、引用例1には、「管状ポリマー内側ライナ(202)は、内部ルーメン(216)を画定し、内部ルーメン(216)はイントロデューサカテーテル(100・200・700)断面中央に、その長さに沿って長手方向に配置され、治療用カテーテルは、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の内部ルーメン(216)を通して導入されるものであ」ることが認識できる。

d 上記(ア)eの段落【0017】の「別のポリマー管状部材212」と、上記(ア)gの段落【0027】の「予備成形管212」は、同じ符号「212」が使用されていることから同じものを指すことは明らかである。
上記(ア)jの図2の断面図から、予備成形管212は、外側シース206中において、イントロデューサカテーテル200の長さに沿って長手方向に配置されていることが見て取れる。
上記点と、上記(ア)eの段落【0017】の下線部と、上記(ア)gの段落【0027】の下線部とを併せて踏まえると、引用例1には、「イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、リフロー接合プロセスによって製造され、予備成形管(212)は、外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の長さに沿って長手方向に配置され、かつ、フラットルーメン(214)を形成して」いることが記載されているといえる。

e 上記cの説示と同様の理由で、上記(ア)aの【請求項1】の「内側ライナ」と、上記(ア)eの段落【0016】の「管状ポリマー内側ライナ202」は、同じものを指すと解される。
上記(ア)jの図2の断面図から、トルク伝達層204は、外側シース206中において、イントロデューサカテーテル200の長さに沿って長手方向に配置されていることが見て取れる。
上記(ア)eの段落【0023】の下線部の記載から、トルク伝達層204は、イントロデューサカテーテル200の近位端から遠位端まで配置されるものと理解できる。
上記点と、上記(ア)dの【請求項1】の下線部とを併せて踏まえると、引用例1には、「トルク伝達層(204)は、外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の近位端から遠位端まで、その長さに沿って長手方向に配置されており、かつ、管状ポリマー内側ライナ(202)の少なくとも一部を包囲して」いることが記載されているといえる。

f 上記(ア)kの図9と上記(ア)hの段落【0033】の下線部とを併せて踏まえると、引用例1には、「イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、遠位端に先端アセンブリ(732)を有し、先端アセンブリ(732)は、先端アセンブリ(732)の位置特定のためのリング(736)と、心臓アブレーション処置で用いられる、電源に動作可能に接続されたアブレーション電極とを有して」いることが記載されているといえる。

g 上記(ア)gの段落【0027】の「操縦機構」と、上記(ア)dの段落【0015】の「ハンドルアセンブリ106」は、同段落の「ハンドルアセンブリ106は、処置中にイントロデューサを案内するかまたは操縦するのに役立つ。」との機能に照らし、ハンドルアセンブリ106は、「操縦機構」の一部として含まれるものと解される。
上記点と、上記(ア)eの段落【0016】の下線部と、上記(ア)gの段落【0027】の下線部とを併せて踏まえると、引用例1には、「イントロデューサカテーテル(100・700)は、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の長さに沿って長手方向に配置される少なくとも1つのフラットワイヤ(210)を有し、フラットワイヤ(210)は、予備成形管(212)内に収納され、フラットワイヤ(210)の近位端は、操縦機構に動作可能に接続され、ハンドルアセンブリ(106)をその一部として含む操縦機構によって使用中にイントロデューサカテーテル(100・200・700)の操縦が可能になっている」いることが記載されているといえる。


h 上記aないしgを踏まえつつ、上記(ア)aないしlの記載内容を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている((a)ないし(g)のように分節した。)。

「(a) カテーテルまたは他の医療器具を人体内の位置に送達するのを促進するために用いられるイントロデューサカテーテル(100・200・700)と、処置中にイントロデューサカテーテル(100・200・700)を操縦するハンドルアセンブリ(106)とを備えたイントロデューサアセンブリ(110)であって、

(b)
(b1) イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、管状ポリマー内側ライナ(202)と、トルク伝達層(204)と、溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)と、熱収縮層(208)とからなり、かつ、管状ポリマー内側ライナ(202)、外側シース(206)、熱収縮層(208)の順で積層されており、
(b2) 管状ポリマー内側ライナ(202)は、内部ルーメン(216)を画定し、内部ルーメン(216)はイントロデューサカテーテル(100・200・700)断面中央に、その長さに沿って長手方向に配置され、治療用カテーテルは、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の内部ルーメン(216)を通して導入されるものであり、

(c) イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、リフロー接合プロセスによって製造され、予備成形管(212)は、外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の長さに沿って長手方向に配置され、かつ、フラットルーメン(214)を形成しており、

(d) トルク伝達層(204)は、外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)近位端から遠位端まで、その長さに沿って長手方向に配置されており、かつ、管状ポリマー内側ライナ(202)の少なくとも一部を包囲しており、

(e) イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、遠位端に先端アセンブリ(732)を有し、先端アセンブリ(732)は、先端アセンブリ(732)の位置特定のためのリング(736)と、心臓アブレーション処置で用いられる、電源に動作可能に接続されたアブレーション電極とを有しており、

(f) イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の長さに沿って長手方向に配置される少なくとも1つのフラットワイヤ(210)を有し、フラットワイヤ(210)は、予備成形管(212)内に収納され、フラットワイヤ(210)の近位端は、操縦機構に動作可能に接続され、ハンドルアセンブリ(106)をその一部として含む操縦機構によって使用中にイントロデューサカテーテル(100・200・700)の操縦が可能になっている、

(g)イントロデューサアセンブリ(110)。」


(ウ)引用例2の記載事項
本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において「引用文献3」として引用された特開2008-136875号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。

a 「【0015】
特に好ましい実施形態においては、上記カテーテルは、先端部位の先端部内に配置されて心臓内におけるセンサー位置を示す電気的信号を発生する電磁マッピングセンサーを含む。この電磁マッピングセンサーにはセンサーケーブルが電気的に接続されており、さらに、同ケーブルは先端部位の内孔から、カテーテル本体部の内孔を介して制御ハンドル内に延在している。このセンサーケーブルの基端部は、ハンドル内において、回路基板に接続しており、当該回路基板は適当なコンピュータ画像処理システムに電気的に接続してい
る。好ましい実施形態においては、管状ハウジングが先端電極の基端部に固定して取り付けられて上記電磁センサーの一部分を収容している。また、この管状ハウジングの基端部は先端部位の柔軟性チューブの先端部に固定して取り付けられている。」

b 「【0043】
本発明の別の好ましい実施形態においては、電磁センサー72が先端部位14の先端部内に配置されている。図8に示すように、この実施形態においては、先端電極36が、好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)により形成されるプラスチックハウジング21を介して先端部位14のチューブ19に接続している。この先端電極36の基端部は外周に切り欠き部が形成されてステム70が設けられている。このステム70はプラスチックハウジング21の先端部の内側に嵌合して、ポリウレタン接着剤等によりハウジング21に結合されている。一方、プラスチックハウジング21の基端部はポリウレタン接着剤等により先端部位14のチューブ19の先端部に結合されている。好ましくは、このプラスチックハウジングは約1cm程度の長さである。」

c 「【0049】
電磁センサー72は電磁センサーケーブル74に接続しており、このケーブル74は先端部位14の第3内孔34を通り、カテーテル本体部12の中心内孔18を経て、制御ハンドル16内に延出している。さらに、この電磁センサーケーブル74は制御ハンドル16の基端部から延出してへその緒形コード78を介して回路基板を収容する(図示せず)センサー制御モジュール75に接続している。あるいは、この回路基板は、例えば、本明細書に参考文献として含まれる「操作可能な直接心筋脈管再生用カテーテル」と題する米国特許出願第08/924,616号に記載されるような制御ハンドル16内に収容できる。電磁センサーケーブル74はプラスチック被覆したシース内に収容した多数ワイヤから構成されている。上記センサー制御モジュール75において、電磁センサーケーブル74の各ワイヤは回路基板に接続している。この回路基板は電磁センサー72から受け取った信号を増幅して、当該信号を、図9に示すようなセンサー制御モジュール75の基端部におけるセンサーコネクタ77を介して、コンピュータにより理解可能な形態でコンピュータに送る。なお、このカテーテルは1回だけの使用のために設計されているので、上記回路基板には、カテーテルの使用後24時間程度、この回路基板をシャットダウンするEPROMチップが含まれているのが好ましい。このことによって、カテーテルまたは少なくとも電磁センサーが二度使用されるのを防ぐ。本発明における使用に適する電磁センサーは、例えば、本明細書に参考文献として含まれる米国特許第5,558,091号、同第5,443,489号、同第5,480,422号、同第5,546,951号、同第5,568,809号および同第5,391,199号および国際公開第WO95/02995号に記載されている。好ましい電磁マッピングセンサー72は約6mm乃至約7mmの長さで、約1.3mmの直径を有している。
【0050】
このような電磁センサー72を使用するために、患者は、例えば、磁場を発生するためのコイルを収容するパッドを当該患者の下に配置することにより、発生される磁場の中に配置される。さらに、基準電磁センサーが、例えば、患者の背中にテープ留めされて、患者に対して固定され、第2の電磁センサーを収容するカテーテルが患者の心臓内に進入する。各センサーは3個の小形コイルから構成されており、これらのコイルは磁場内においてその磁場におけるそれらの位置を示す微弱な電気的信号を発生する。次に、固定した基準センサーと心臓内の第2のセンサーの両方から発せられた信号が増幅され、コンピュータに送信されて、当該コンピュータがそれらの信号を解析してモニター上に表示する。この方法によれば、基準センサーに対するカテーテル内のセンサーの正確な位置を確認して視覚的に表示できる。さらに、このセンサーは心臓の筋肉収縮により生じるカテーテルの位置ずれも検出できる。
【0051】
この技法を用いて、医者は心室を視覚的にマッピングすることが可能になる。このマッピングは心臓壁に接触するまでカテーテル先端部を心室内に進入させることによって行なわれる。この位置が記録されて保存される。その後、カテーテル先端部を心臓壁に接触する別の位置に移動して、その位置を再び記録して保存する。さらに、心室の三次元画像が完成するまでこの方法を繰り返す。好ましいマッピングシステムには多数個の電極と電磁センサーとから構成されるカテーテルが含まれる。」

d 「【0054】
さらに、本発明に従うカテーテルの別の実施形態は、先端部位の操作能力を高めるために、2個の引張りワイヤを収容する二方向カテーテルから構成されている。すなわち、図10に示すように、この実施形態の先端部位14は4個の内孔を有している。約7フレンチの直径を有する先端部位に対して、第1内孔30および第2内孔32の直径は同じサイズであって、各々が0.018インチであるのが好ましい。また、第3内孔34および第4内孔35の直径も同じサイズであって、各々が0.029インチであるのが好ましい。この先端部位14は先端電極36と環状電極38を担持している。さらに、熱電対のような温度感知手段が上述のように先端電極36に備えられている。環状電極38用のリード線40、並びに、一方が先端電極用のリード線として作用する熱電対線40および熱電対線45が第3内孔34内に延在している。先端部位14は電磁センサー72を収容しており、電磁センサーケーブル74は第3内孔34の中を貫走している。さらに、第1注入チューブセグメント88が制御ハンドル16およびカテーテル本体部12を経て第4内孔35内に延在している。また、第2注入チューブセグメント89が、上述の実施形態と同様の態様で、先端部位14における第4内孔の先端部から先端電極36の中に延出している。」

e 図8


f 図9


g 図10



(エ)引用発明2
a 上記(ウ)の記載内容を総合すると、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「第4内孔35に第1注入チューブセグメント88が延在するカテーテル10であって、カテーテル10の先端部位14の先端部内に配置されて心臓内におけるセンサー位置を示す電気的信号を発生する電磁マッピングセンサー72を含み、電磁マッピングセンサー72にはセンサーケーブル74が電気的に接続されており、さらに、同ケーブルは先端部位14の第3内孔34に延在しており、上記電気的信号はコンピュータにより解析されてモニター上に表示されるカテーテル。」


イ 対比及び判断
(ア)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。対比に当たり、本件補正発明を以下のように分節する。

「【請求項1】
(A)医療機器であって、

(B)
(B1) カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサと、
(B2) ここで、前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含み、
(B3) ここで、前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲し、
(B4) ここで、前記中央の主ルーメンは、カテーテルをその中に受けるようになされており、

(C)
(C1) 前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、
(C2) ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に連結された中空の副管を含んでおり、

(D)
(D1) 前記外層を通って伸びているとともに前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材と、
(D2) ここで、前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びており、

(E)
(E1) 前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されており、前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための信号を提供するように構成されている電気解剖学的システム画像形成素子と、
(E2) 前記電気解剖学的システム画像形成素子に連結され、前記少なくとも1つの外側ルーメンの中を伸びている電線と、

(F)
(F1) 前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子と、
(F2) 前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータと、

(G)を備える医療機器。」


a 本件補正発明(A)及び(G)の特定事項について
引用発明1(a)及び(g)の「イントロデューサアセンブリ(110)」は、「カテーテルまたは他の医療器具を人体内の位置に送達するのを促進するために用いられるイントロデューサカテーテル(100・200・700)」を備えるものであるから、
引用発明1(a)及び(g)の「イントロデューサアセンブリ(110)」は、本件補正発明(A)及び(G)の「医療機器」に相当するといえる。

b 本件補正発明(B)の特定事項について
(a)引用発明1(b1)の「イントロデューサカテーテル(100・200・700)」、「管状ポリマー内側ライナ(202)」、「外側シース(206)」は、それぞれ本件補正発明(B)の「カテーテルイントロデューサ」、「内側ライナー」、「外層」に相当する。
また、引用発明1(b2)の「内部ルーメン」及び「治療用カテーテル」は、それぞれ、本件補正発明(B)の「主ルーメン」、「カテーテル」に相当する。

(b)引用発明1の(b2)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)断面中央に、その長さに沿って長手方向に配置され」ている「内部ルーメン(216)」は、
本件補正発明の(B1)「前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメン」に相当する。
そして、引用発明1の(b2)「内部ルーメン(216)」は、「イントロデューサカテーテル(100・200・700)」が有する「管状ポリマー内側ライナ(202)」が画定するものであるから、引用発明1の(b2)「イントロデューサカテーテル」は、「内部ルーメン」を有するものであるといえる。
したがって、引用発明1の(b2)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)断面中央に、その長さに沿って長手方向に配置され」ている「内部ルーメン(216)」を画定する(b1)「管状ポリマー内側ライナ(202)」を有する「イントロデューサカテーテル(100・200・700)」は、
本件補正発明の(B1)「カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサ」に相当する。

(c)引用発明1の(b1)「外側シース(206)」と(b1)「管状ポリマー内側ライナ(202)」は、「管状ポリマー内側ライナ(202)、外側シース(206)、熱収縮層(208)の順で積層されて」いるものであるところ、両者は「隣接」するものであるといえるから、
引用発明1の(b1)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、管状ポリマー内側ライナ(202)と、トルク伝達層(204)と、溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)と、熱収縮層(208)とからなり、かつ、管状ポリマー内側ライナ(202)、外側シース(206)、熱収縮層(208)の順で積層されて」いることは、
本件補正発明の(B2)「前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含」むことに相当する。

(d)引用発明1の(b2)「管状ポリマー内側ライナ(202)」が、内面と外面を有するとともに、「管状ポリマー内側ライナ(202)」が画定する「内部ルーメン(216)」は、内面に形成され、当該内面によって包囲されていることは明らかであるから、
引用発明1の(b2)「管状ポリマー内側ライナ(202)は、内部ルーメン(216)を画定し」ていることは、
本件補正発明の(B3)「前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲」していることに相当する。

(e)引用発明1の(b2)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)の内部ルーメン(216)」が、「治療用カテーテル」を、「内部ルーメン(216)」そのものに「通して導入」させていることは、
本件補正発明の(B4)「前記中央の主ルーメンは、カテーテルをその中に受けるようになされて」いることに相当する。

(f)上記(a)ないし(e)のとおりであるから、
引用発明1の(b)「(b1) イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、管状ポリマー内側ライナ(202)と、トルク伝達層(204)と、溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)と、熱収縮層(208)とからなり、かつ、管状ポリマー内側ライナ(202)、外側シース(206)、熱収縮層(208)の順で積層されており、(b2) 管状ポリマー内側ライナ(202)は、内部ルーメン(216)を画定し、内部ルーメン(216)はイントロデューサカテーテル(100・200・700)断面中央に、その長さに沿って長手方向に配置され、治療用カテーテルは、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の内部ルーメン(216)を通して導入されるものであ」ることは、
本件補正発明の(B)「(B1) カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサと、(B2) ここで、前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含み、(B3) ここで、前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲し、(B4) ここで、前記中央の主ルーメンは、カテーテルをその中に受けるようになされて」いることに相当するといえる。

c 本件補正発明(C)の特定事項について
(a)引用発明1の(c)「フラットルーメン(214)」、「予備成形管(212)」は、それぞれ、
本件補正発明の(C)「外側ルーメン」、「中空の副管」に相当する。

(b)引用発明1の(c)「外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の長さに沿って長手方向に配置され、」ている「予備成形管(212)」は、
本件補正発明の(C1)「前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメン」に相当する。

(c)引用発明1の(c)「予備成形管(212)は、」「フラットルーメン(214)を形成して」いることは、
本件補正発明の(C2)「前記外側ルーメンは、」「中空の副管を含」むことに相当する。

(d)引用発明1の(c)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)」は、リフロー接合されているから、「予備成形管(212)」と「管状ポリマー内側ライナ(202)」の外面とは、リフロー接合時に溶融する溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)によって固定されているものである(必要に応じ、上記ア(ア)jの図2を参照。)。

(e)上記(a)ないし(d)のとおりであるから、
引用発明1の(c)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、リフロー接合プロセスによって製造され、予備成形管(212)は、外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200)の長さに沿って長手方向に配置され、かつ、フラットルーメン(214)を形成して」いることと、
本件補正発明の(C)「(C1) 前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、(C2) ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に連結された中空の副管を含んで」いることとは、
「前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に固定された中空の副管を含んで」いることという点で共通する。

d 本件補正発明(D)の特定事項について
(a)引用発明1の(d)「トルク伝達層(204)」は、本件補正発明の(D)「トルク伝達部材」に相当する。

(b)引用発明1の(d)「外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)近位端から遠位端まで、その長さに沿って長手方向に配置されて」いる「トルク伝達層」は、
本件補正発明の(D1)「前記外層を通って伸びている」「トルク伝達部材」に相当するといえる。

(c)引用発明1の(d)「トルク伝達層(204)」は、「管状ポリマー内側ライナ(202)」の少なくとも一部を「包囲」していることから、(b2)「管状ポリマー内側ライナ(202)」がその内面に画定する「内部ルーメン(216)」も「包囲している」ことになるといえる。
よって、引用発明1の(d)「、管状ポリマー内側ライナ(202)の少なくとも一部を包囲して」いる「トルク伝達層(204)」は、
本件補正発明の(D1)「前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材」に相当するといえる。

(d)引用発明1の(d)「トルク伝達層(204)」は、「外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)近位端から遠位端まで、その長さに沿って長手方向に配置されて」いるところ、外側シース(206)の長手方向の「全領域」に配置されている、すなわち、「外側シース(206)の大部分」に配置されているといえる。
よって、引用発明1の(d)「トルク伝達層(204)」は、「外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)近位端から遠位端まで、その長さに沿って長手方向に配置されて」いることは、
本件補正発明(D2)の「前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びて」いることに相当するといえる。

(e)上記(a)ないし(d)のとおりであるから、
引用発明1の(d)「トルク伝達層(204)は、外側シース(206)中において、イントロデューサカテーテル(100・200・700)近位端から遠位端まで、その長さに沿って長手方向に配置されており、かつ、管状ポリマー内側ライナ(202)の少なくとも一部を包囲して」いることは、
本件補正発明の(D)「(D1) 前記外層を通って伸びているとともに前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材と、(D2) ここで、前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びて」いることに相当するといえる。

e 本件補正発明(E)の特定事項について
(a)引用発明1の(e)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)」の「遠位端に」ある「先端アセンブリ(732)」が有するもので、「先端アセンブリ(732)の位置特定のためのリング(736)」と、
本件補正発明の(E1)「前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されており、前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための信号を提供するように構成されている電気解剖学的システム画像形成素子」とは、
「カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されており、カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための手段」という点で共通する。

f 本件補正発明(F)の特定事項について
(a)引用発明1の(f)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)の操縦」には、血管中などの人体内において、所定方向に移動するために、遠位端を曲げたり、回転させる動作が含まれることは、カテーテル一般の技術常識から明らかである。

(b)上記(a)のとおりであるから、
引用発明1の(f)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)の長さに沿って長手方向に配置される少なくとも1つのフラットワイヤ(210)」は、
本件補正発明の(F1)「前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子」に相当するといえる。

(c)上記(a)のとおりであるから、
引用発明1の(f)「『フラットワイヤ(210)の近位端』が、『動作可能に接続され、』『使用中にイントロデューサカテーテル(100・200・700)の操縦が可能になっている』『操縦機構』」は、
本件補正発明の(F2)「「前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータ」に相当するといえる。

(d)上記(a)ないし(c)のとおりであるから、
引用発明1の(f)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)は、イントロデューサカテーテル(100・200・700)の長さに沿って長手方向に配置される少なくとも1つのフラットワイヤ(210)を有し、フラットワイヤ(210)は、予備成形管(212)内に収納され、フラットワイヤ(210)の近位端は、操縦機構に動作可能に接続され、ハンドルアセンブリ(106)をその一部として含む操縦機構によって使用中にイントロデューサカテーテル(100・200・700)の操縦が可能になっている」ことは、
本件補正発明の(F)「(F1) 前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子と、(F2) 前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータ」に相当するといえる。

g 以上のことから、本件補正発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点1及び2aで相違する。

(一致点)
「 医療機器であって、
カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサと、
ここで、前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含み、
ここで、前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲し、
ここで、前記中央の主ルーメンは、カテーテルをその中に受けるようになされており、
前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、
ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に固定された中空の副管を含んでおり、
前記外層を通って伸びているとともに前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材と、
ここで、前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びており、
前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されており、前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための手段と、
前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子と、
前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータと、を備える医療機器。」

(相違点1)
本件補正発明では、(C2)「中空の副管」が「内側ライナー」の「外面に連結され」るのに対して、
引用発明1の(c)「予備成形管(212)」が「管状ポリマー内側ライナ(202)」の外面に、リフロー接合時に溶融する溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)によって固定されている点。

(相違点2a)
カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための手段に関して、
本件補正発明では、(E1)「前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための信号を提供するように構成されている電気解剖学的システム画像形成素子」であるととも(E2)に、「前記少なくとも1つの外側ルーメンの中を伸びている電線」に「連結され」るのに対して、
引用発明1の(e)「先端アセンブリの位置特定のためのリング(736)」は、信号を提供するものであるのかが明らかでないし、「フラットルーメン(214)」中を伸びている「電線」自体が存在しなく、当該電線に「連結され」てもいない点。


(イ)判断
a 相違点1について
(a)本願の段落【0083】に、「結合に関する参照(例えば、取り付けられる、結合される、接続されるなど)は、広義に解釈されるべきであり、要素の接続部の中間部材や、要素間の相対運動の中間部材を包含している。このように、結合に関する参照は、必ずしも直接的に結合される2つの要素や互いに固定された2つの要素を必ずしも推論するものではない。」と記載されるとおり、本件補正発明における「連結」は、「直接的に」結合される2つの要素、すなわち、「隣接」して結合される態様のみを意味すると限定的に解すべきものではなく、それ以外の結合態様(例えば、隣接せずに互いに結合する態様)も含むと解釈すべきものである。
してみると、引用発明1の(c)「予備成形管(212)」が「管状ポリマー内側ライナ(202)」の外面に、リフロー接合時に溶融する溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)によって固定され、結合されているから、上記解釈に照らせば、「予備成形管(212)」と「管状ポリマー内側ライナ(202)」の外面とは「連結」したものといえるから、相違点1は実質的な相違点ではない。

(b)仮に、本件補正発明における「連結」を、「内側ライナーの外面」と「中空の副管」とが「隣接」して結合される態様のみを意味するとの限定的な解釈が成立し、上記(a)のように相違点1が実質的な相違点ではないと、いえなかった場合について補足すると、拒絶査定時に例示された参考文献の特表2008-541799号公報の図6、登録実用新案第3162588号公報の図2等に開示されるとおり、「内側ライナーの外面」と「中空の副管」とが「隣接」して結合される態様は周知技術に過ぎないから、当該周知技術を引用発明1に採用することに格別の困難は認められない。

b 相違点2aについて
(a)上記ア(エ)に記載したとおり、引用発明2は、「第4内孔35に第1注入チューブセグメント88が延在するカテーテル10であって、カテーテル10の先端部位14の先端部内に配置されて心臓内におけるセンサー位置を示す電気的信号を発生する電磁マッピングセンサー72を含み、電磁マッピングセンサー72にはセンサーケーブル74が電気的に接続されており、さらに、同ケーブルは先端部位14の第3内孔34に延在しており、上記電気的信号はコンピュータにより解析されてモニター上に表示されるカテーテル。」である。

ここで、引用発明2の「第4内孔35」、「センサーケーブル74」、「第3内孔34」は、それぞれ、
本件補正発明の「主ルーメン」、「電線」、「外側ルーメン」に相当する。

また、引用発明2の「電磁マッピングセンサー72」が発生する「心臓内におけるセンサー位置を示す電気的信号」は、「コンピュータにより解析されてモニター上に表示される」ものであり、「電気解剖学的システム画像」を形成するための素子といえるから、
引用発明2の「電磁マッピングセンサー72」は、
本件補正発明における「電気解剖学的システム画像形成素子」に相当する。

さらに、引用発明2の「カテーテル10」は、「第4内孔35に第1注入チューブセグメント88が延在する」もの、すなわち、本件補正発明の「主ルーメン」に相当する「第4内孔35」に、「第1注入チューブセグメント88」という一種の「医療機器」が延在するものであるから、本件補正発明の「カテーテルイントロデューサ」に相当するといえる。
してみると、引用発明2の「カテーテル10の先端部位14の先端部内に配置されて心臓内におけるセンサー位置を示す電気的信号を発生する電磁マッピングセンサー72」は、
本件補正発明の「前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための信号を提供するように構成されている電気解剖学的システム画像形成素子」に相当するといえる。

(b)そもそも体内を移動するカテーテルは、患者の体内組織を傷つけない安全な経路を移動する必要があり、そのために先端位置を特定することは、当然に行わなければならないことである。
そして、引用発明1と引用発明2は、体内に挿入され、その先端位置を特定するイントロデューサカテーテルに関するという点で共通するので、引用発明1の「先端アセンブリの位置特定のためのリング」の代わりに、引用発明2のような「電磁マッピングセンサー」とそれに「電気的に接続」する「センサーケーブル」、並びに、「センサーケーブル」が延在するための「内孔」を採用して、先端アセンブリの位置特定を行うようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

c また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術から予測される範囲内であって、格別なものでない。

d 上記aないしcのとおりであるから、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明2、または、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のまとめ
よって、本件補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。



第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成27年7月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであって、そのうちの請求項1に係る発明は、上記第2の1(1)アで示したが、上記第2の1(2)アで検討したように明らかな誤記があるので、当該誤記を考慮して以下の発明(以下、「本願発明」という。) を認定した(下線部は誤記を考慮した箇所。)。

「【請求項1】
医療機器であって、
カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサと、
ここで、前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含み、
ここで、前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲し、
ここで、前記中央の主ルーメンは、第二の医療機器をその中に受けるようになされており、
前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、
ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に連結された中空の副管を含んでおり、
前記外層を通って伸びているとともに前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材と、
ここで、前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びており、
前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されている電気解剖学的システム画像形成素子と、
前記電気解剖学的システム画像形成素子に連結され、前記少なくとも1つの外側ルーメンの中を伸びている電線と、
前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子と、
前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータと、を備える医療機器。」


2 引用例及びその記載事項
(1)引用例1の記載事項及び引用発明1
原査定の拒絶理由で引用された引用例1の記載事項及び引用発明1は、上記第2の2(1)アに記載したとおりである。

(2)引用例3の記載事項
本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において「引用文献2」として引用された特表2006-509547号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。

a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、多重伝送式医療用キャリヤであって、本体が、導体を取り付け、および、本体内または表面上の複数の位置に分布し個別に識別可能な少なくとも2つのエフェクタと導体とを電気的に接続するよう適合化される、多重伝送式医療用キャリヤ:
表面および少なくとも2つの管腔を有する本体;および
少なくとも2つの導体であって、各導体が本体の少なくとも一部分にわたって個別の管腔内に配置される導体。」


b 「【0001】
発明の背景
1. 発明の分野
本発明は、該して、医療用の装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、種々の診断手順および治療手順を実施するための多重伝送式エフェクタを有する医療装置に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、参照としてその全てが本明細書に組み入れられる、2002年12月11日に提出された米国特許仮出願第60/432,929号の優先権を主張するものである。本願は、本願と同時に提出され且つ参照としてその全てが本明細書に組み入れられる米国特許仮出願第60/_______号(代理人整理番号21308-000200US)と関連する。
【背景技術】
【0003】
近年の心臓医学およびその他の医学分野においては、血管内および管腔内の介入手技およびモニタリングが非常に重要となっている。本発明に特に関するものとして、心臓機能およびその他の患者パラメータをモニタリングするおよびこれらに影響を及ぼす目的で、種々の血管内カテーテル、体内埋植可能なセンサ、体内埋植可能な刺激用リード線、およびその他の装置が開発されている。このようなモニタリングおよび治療用のカテーテルは、大きな有用性をもつものの、含まれるセンサおよび/またはアクチュエータ(ともに本明細書において一般的に「エフェクタ」という)の数が一般的に1つまたは限られた個数しかない。したがって、複数のパラメータをモニタリングするもしくはこれに影響を与える能力、または、カテーテルもしくはその他の装置上に分布した複数の位置において単一のパラメータをモニタリングするもしくはこれに影響を与える能力は非常に限られている。カテーテルおよびその他の装置が有するエフェクタの個数が限られている主たる理由の1つは、各エフェクタをカテーテル上の専用の接続部またはその他の端末に結線する必要があることである。
【0004】
したがって、圧力、温度、導電性、電位、血流、血液体積などの患者パラメータを血管内および管腔内でモニタリングするための改良されたカテーテル、体内埋植可能な刺激用リード線、およびその他の装置を提供することは望ましいと考えられる。心臓ペーシングおよびその他の生理学的目的のための組織アブレーションおよび電気刺激などの治療的介入を血管内および管腔内で送達するための改良されたカテーテルおよびその他の装置を提供することもまた望ましいと考えられる。そのような装置であって、複数のエフェクタ(センサおよび/またはアクチュエータ)が製品上に分布した装置を提供することは特に望ましいと考えられる。単一の装置が多数の異なる種類のエフェクタをもてるようにすること、および、装置内で限られた数のワイヤを使用してエフェクタとの通信を可能にすることはさらに望ましいと考えられる。そのような装置の便利な作製方法およびそのような装置を患者体内で使用するための便利な方法を提供することはさらに望ましいと考えられる。これら目的の少なくともいくつかは以下に説明する本発明により達成される。
【0005】
2. 背景技術の説明
心臓のマッピング、アブレーション、および/またはその他を目的とした、複数の電極を有するカテーテルは、米国特許第4,397,314号、同第4,603,705号、同第4,776,334号、同第4,815,472号、同第4,881,410号、同第5,113,868号、同第5,419,767号、同第5,509,411号、同第5,579,764号、同第5,591,142号、同第5,662,587号、同第5,924,997号、同第5,902,248号、同第6,033,398号、同第6,309,385号、ならびに米国公開公報 2002/0156417 A1およびUS 2002/0026183 A1に記載されている。米国特許第4,815,472号には、多重伝送能をもつ2本の共通リード線に永続的に結合された複数の固体センサを有するカテーテルが説明されている。米国特許第5,579,764号には、多重伝送式でない共通バスを有するマッピング・アブレーションカテーテルが説明されている。米国公開公報第2002/0156417号には、カテーテル内でデュアルリードバスに接続されたコンディショニング回路を有するMEMS検出モジュールが説明されている。」

c 「【0027】
エフェクタはキャリヤの表面上に取り付けてもよく、またはキャリヤの本体の内部に配置してもよい。種々の態様において、そのような多重伝送式医療用キャリヤは種々のデータのうち任意のデータを検出するのに用いてもよく、そのようなデータとしては圧力データ、体積データ、寸法データ、温度データ、酸素もしくは二酸化炭素の濃度データ、タ、ヘマトクリットデータ、導電率データ、電位データ、pHデータ、化学データ、血流量データ、熱伝導率データ、光学特性データ、断面積データ、粘稠度データ、放射データなどがある。または、エフェクタは、電流もしくは電圧の印加、電位の設定、物質もしくは領域の加熱、圧力変化の誘導、物質の放出もしくは捕捉、発光、音エネルギーもしくは超音波エネルギーの放出、放射線の照射など、作動もしくは介入を目的としたものであってもよい。キャリヤはまた体内の種々の位置で使用してよく、そのような位置としては例えば、1つまたは複数の心腔内、動脈系内または静脈系内、脳組織内または脳組織上、尿路内、胃腸管内、生殖器系の経路内、腹腔内、関節腔内などがある。本発明はまた、多重伝送式医療用キャリヤを用いて1つまたは複数の患者パラメータをモニタリングする方法およびそのようなキャリヤの作製方法も提供する。
【0028】
図1において、本発明の多重伝送式医療用キャリヤ100は、本体102;本体102内に配置された複数の導体104;ならびに、個別に識別可能な複数のエフェクタであって本体102の内部、本体102の管腔112の内部、および/または本体102の外面上に分布して配置されてもよいエフェクタ106 a?eを好適に含む。任意の態様において、本体102のサイズもしくは構成、導体104の数および種類、ならびに/またはエフェクタ106 a?eの数および種類などに対して多数の変更を行うことが可能である。したがって、図1に示し且つ以下により詳しく説明する態様は1つの代表的な態様にすぎず、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0029】
多重伝送式医療用キャリヤ100の本体102は、任意の好適な形状、サイズ、構成、および寸法などであってよい。図1のように、いくつかの態様において、本体102は、近位端108と遠位端110とを有し且つ中心部管腔112を規定する細長カテーテル部分を含む。いくつかの態様において本体102は、中心部管腔112に加えて、本体内を長さ方向に走行する1つまたは複数の壁内管腔(図には示していない)を有する。壁内管腔は、1つもしくは複数の導体104;ゲル、液体、ペースト、スラリー、エポキシ、もしくは共晶物などの導電性材料;および/または多重伝送式キャリヤ100のその他の構成部品を中に収容してもよい。(「本体102の内部」という句は、概して、本体102の壁面の内部を意味する。本体102により形成される中心部管腔112の中の位置は「中心部管腔112の中」と表現する。)他の態様においては、後に図1Aを参照しながらより詳しく説明するように、本体は平面を有していてもよく、この場合、その平面上にエフェクタが配置され且つ隣接する平面上に導体が配置される。
【0030】
多くの態様において、本体102は、標的とする体内管腔またはその他の体内構造(血管系もしくは心臓など)への管腔内導入に適したカテーテル部分を含んでいてもよい。本体102の寸法、材料、およびその他の物理特性は、アクセスおよびモニタリングの対象とする体内構造に応じて大幅に異なり得る。例えば、本体102の1つまたは複数の部分が可撓性であってもよく、他の1つまたは複数の部分が比較的剛性であってもよい。種々の態様において、本体102は、オーバーザワイヤ式またはラピッドエクスチェンジ式の導入用に構成したガイドワイヤ管腔を含んでいてもよい。血管内への導入を意図したカテーテル部分は、長さが50?200 cm、外径が1?12フレンチ(0.33 mm=1フレンチ)であってもよい。
本体102は、典型的に、従来の押出技術で作られた有機ポリマーを材料とする。好適なポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーンポリマー、天然ゴム、ポリアミド(ナイロン)などがある。カテーテル部分の回転強度、コラム強度、靭性、および押し進めやすさなどを向上させるため、任意で、組紐、ヘリカルワイヤ、コイル、または軸糸などによりカテーテル部分を補強してもよい。好適なカテーテル部分は押出により形成してもよく、所望される場合は1つまたは複数のチャネルを設けてもよい。カテーテルの直径は従来技術を用いて熱膨張および熱収縮により修正できる。このようにして、血管系、心臓、またはその他所望される任意の部位へと従来技術により導入するのに好適なカテーテルが得られる。」

d 「【0045】
図5は、図4に「5」の矢印で示した視点から見た、多重伝送式医療用キャリヤ100の断面図である。1つの態様において、キャリヤ100は、本体102、本体102の中に配置された3つの個別の壁内管腔502 a?c、および本体102により規定される中心部管腔112を有する。壁内管腔502 a?cはそれぞれ導体504 a?cを含んでいてもよい。前述のように、各導体504 a?cは互いに異なる機能を有するように構成してもよい。例えば1つの態様において、この3つの導体は、アース用導体504a、パワー用導体504b、およびデータ用導体504cからなっていてもよい。任意の態様において、これより少ない数または多い数の導体が好適に含まれていてもよい。さらに、壁内管腔502 a?cの中における導体504 a?cの任意の好適な配置はすべて本発明の意図に含まれる。または、他の態様において、導体504 a?cを中心部管腔112の内面506上に配置してもよい。さらに他の態様は、4つ、5つ、8つより多い数またはその他任意の好適な数の壁内管腔502 a?cを含んでいてもよく、且つ、導体504 a?cは互いに隣接する管腔502の中に配置されてもまたは互いに離れた管腔502の中に配置されてもよい。いくつかの態様においては、導体504を含む壁内管腔502において、導電性のゲルまたは液体などの導電性材料を壁内管腔の中に配置してもよい。そのような導電性材料は、アースとして機能してもよく、導体504をエフェクタ106上の電極に接続するよう機能してもよく、または、その他任意の好適な目的に使用してもよい。任意の好適な導電性の物質を使用してよい。」

e 「【0051】
一般的には、前述のように、チップ702から可撓性アーム704aおよび704cの一部としてリード線が伸びる。アーム704は一般的に、可撓性ワイヤまたはそれと類似の電気的接続を介してチップと接続した電極を収容する。各電極(図には示していない)は、アーム704a、704cにより導体804 a?cの近傍に配置される。前述のように、本体102は典型的に、電極と導体804 a?cとの間に導電性をもたせるため、側方開口部806 a?cを有する。壁内管腔802 a?cの中の導電性の液体、ゲル、または類似の物質が、隣接する電極と接触し、電極と導体804 a?cとの間に導電媒体を提供する。
【0052】
図8Bに、図8Aのようにエフェクタ700を有する多重伝送式医療用キャリヤ100の斜視図を示す。同図は、側方開口部806aを示すため、可撓性アーム704aを引き戻した状態で描かれている。点線は外層808を示す。この図においても外層808は透明または不透明の薄い層またはコーティングであり、エフェクタ700の1つまたは複数の部分がこの外層808から突出している。1つの電極を収容している可撓性アーム704aは、本体102の側方開口部806aを露出させるため、引き戻した状態で示されている。白抜き矢印で示されているように、通常、可撓性アーム704aは開口部806aに重なり、これを完全に覆っている。すなわち、開口部806aの直径は可撓性アーム704aの幅より小さい。導体804aは、ゲル、液体、またはその他の導電性物質を含む壁内管腔802aの中で露出している。第二の可撓性アーム704bは、外層808から突出したアンカー706と接続していてもよい。1つの態様において、可撓性アームは、シリコンウェーハ上のダイ収率を向上させるため、平らにしたときの形状が長方形になるように並べられる。」


f 図1


g 図5


h 図8


(3)引用発明3
a 上記(2)の記載内容を総合すると、引用例3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「多重伝送式医療用キャリヤであって、本体が、導体を取り付け、および、本体内または表面上の複数の位置に分布し個別に識別可能な少なくとも2つのエフェクタと導体とを電気的に接続するよう適合化される、多重伝送式医療用キャリヤ:
表面および少なくとも2つの管腔を有する本体;および
少なくとも2つの導体であって、各導体が本体の少なくとも一部分にわたって個別の管腔内に配置される導体、を含み、
エフェクタは、心臓のマッピング、アブレーション、およびその他を目的とした、複数の電極である、多重伝送式医療用キャリヤ。」


3 対比及び判断
(1)対比
a 本願発明は、(a)「第二の医療機器」が「カテーテル」であるとの限定、及び、(b)「電気解剖学的システム画像形成素子」について、「前記カテーテルイントロデューサの遠位部の位置を決定するための信号を提供するように構成されて」いるものであるとの限定を、上記第2で検討した本件補正発明から省いたものである。

b 上記(a)、(b)の限定が省略された部分以外の部分については、上記第2の2(1)イ(ア)で検討したとおりである。

c 上記(a)の限定の省略に関しては、引用発明1は、「第二の医療機器」の下位概念に当たる「カテーテル」について記載されているところ、一致点となる。

d 上記(b)の限定の省略に関して、検討を行う。
まず、引用発明1の(e)「イントロデューサカテーテル(100・200・700)」の「遠位端に」ある「先端アセンブリ(732)」が有するもので、「心臓アブレーション処置で用いられる、」「アブレーション電極」と、
本件補正発明の(E2)「前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されて」いる「電気解剖学的システム画像形成素子」とは、
「カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されている素子」という点で共通するといえる。

また、引用発明1の「アブレーション電極」と「電源」を「動作可能に接続」するための手段は、何らかの導電手段である必要があるから、
引用発明1の「アブレーション電極」と「電源」を「動作可能に接続」するための手段と、本件補正発明の「前記電気解剖学的システム画像形成素子に連結され、前記少なくとも1つの外側ルーメンの中を伸びている電線」とは、
「前記素子に連結されている電線」という点で共通するといえる。

e 上記aないしdのとおりであるから、本願発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点1及び相違点2bで相違することになる。

(一致点)
「 医療機器であって、
カテーテルイントロデューサであり、前記カテーテルイントロデューサの中に長手方向軸に沿って伸びる中央の主ルーメンを有するカテーテルイントロデューサと、
ここで、前記カテーテルイントロデューサは、内側ライナーと前記内側ライナーに隣接する外層を含み、
ここで、前記内側ライナーは、内面と外面を含み、前記内面が前記中央の主ルーメンを包囲し、
ここで、前記中央の主ルーメンは、第二の医療機器をその中に受けるようになされており、
前記外層の中において前記カテーテルイントロデューサを通って伸びている少なくとも1つの外側ルーメンと、
ここで、前記外側ルーメンは、前記外面に固定された中空の副管を含んでおり、
前記外層を通って伸びているとともに前記中央の主ルーメンを包囲するトルク伝達部材と、
ここで、前記トルク伝達部材は前記外層の大部分を通って伸びており、
前記カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されている素子と、
前記電気素子に連結されている電線と、
前記カテーテルイントロデューサの中を伸びている少なくとも1つの屈曲素子と、
前記少なくとも1つの屈曲素子に連結され、前記カテーテルイントロデューサの遠位端を曲げることのできるアクチュエータと、を備える医療機器。」

(相違点1)
本件補正発明では、(C2)「中空の副管」が「内側ライナー」の「外面に連結され」るのに対して、
引用発明1の(c)「予備成形管(212)」が「管状ポリマー内側ライナ(202)」の外面に、リフロー接合時に溶融する溶融加工ポリマーからなる外側シース(206)によって固定されている点。

(相違点2b)
カテーテルイントロデューサの遠位部に連結されているものが、
本願発明では、「電気解剖学的システム画像形成素子」であるとともに、「前記少なくとも1つの外側ルーメンの中を伸びている電線」に「連結され」るのに対して、
引用発明1の「心臓アブレーション処置で用いられる、」「アブレーション電極」は、電気解剖学的システム画像を形成するものではない上に、「電源に動作可能に接続」するための手段がどの部分に引き回されているかが明らかでない点。

(2)判断
a 相違点1について
上記第2の2(1)イ(イ)aで説示したとおりである。

b 相違点2bについて
(a)上記2(3)に記載したとおり、引用発明3は、「多重伝送式医療用キャリヤであって、本体が、導体を取り付け、および、本体内または表面上の複数の位置に分布し個別に識別可能な少なくとも2つのエフェクタと導体とを電気的に接続するよう適合化される、多重伝送式医療用キャリヤ:
表面および少なくとも2つの管腔を有する本体;および
少なくとも2つの導体であって、各導体が本体の少なくとも一部分にわたって個別の管腔内に配置される導体、を含み、
エフェクタは、心臓のマッピング、アブレーション、およびその他を目的とした、複数の電極である、多重伝送式医療用キャリヤ。」である。

ここで、引用発明3の「心臓のマッピング」とは、心臓の立体構造を画像化することであると解されるから、引用発明3の「心臓のマッピング」を目的とした電極から得られる、心臓の立体画像は、本願発明における「電気解剖学的システム画像」に相当するものである。

(b)心臓のアブレーションを行う引用発明1においても、アブレーションを行う心臓の目標位置を正確に把握するために心臓の立体画像を得るとの自明の課題があり、引用発明1と引用発明3は、心臓のアブレーションを行う電極を有するカテーテルという点で共通するから、引用発明1の「アブレーション電極」に加え、引用発明3のような「心臓のマッピングを目的とした電極」とそれに「電気的に接続」する「導体」、並びに、「導体」が配置される「管腔」をさらに採用して、「心臓のマッピング」を行い、心臓の立体画像を得るようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

c また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明1、引用発明3及び上記周知技術から予測される範囲内であって、格別なものでない。

d 上記aないしcのとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明3、または、引用発明1、引用発明3及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。


4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-05 
結審通知日 2017-01-10 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2013-539824(P2013-539824)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一門田 宏永田 浩司  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 小川 亮
▲高▼見 重雄
発明の名称 電気解剖学的システム画像形成素子を搭載した医療機器  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  

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