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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1329110
異議申立番号 異議2017-700234  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-06 
確定日 2017-06-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5988757号発明「電力管理システム、電力管理方法、電力制御装置及び燃料電池装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5988757号の請求項1ないし4、10ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5988757号(請求項の数[13]、以下、「本件特許」という。)は、平成24年8月6日に出願した特願2012-174454号に係るものであって、その請求項1-13に係る発明について、平成28年8月19日に特許の設定登録がされ、その後、請求項1-4、10-13に係る発明の特許について、特許異議申立人により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5988757号の請求項1-13に係る発明は、下記の特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定されるとおりのものである。(以下、本件請求項1-13に係る発明を、それぞれ「本件発明1」-「本件発明13」という。)

「【請求項1】
需要家に設けられる複数の機器と、
前記需要家に設けられる電力制御装置とを備え、
前記複数の機器と前記電力制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、
前記電力制御装置は、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信し、
前記複数の機器は、少なくとも、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置を含み、
前記電力制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池装置から受信し、前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含むことを特徴とすることを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
前記所定フォーマットは、前記ステータスが格納されるステータスフィールドを含むことを特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記電力制御装置は、前記ステータスフィールドに前記ステータスが格納されたメッセ
ージを前記燃料電池装置から受信することを特徴とする請求項2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記電力制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記ステータスを示すメッセージを送信する機能の有無を示すメッセージを受信することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記燃料電池装置は、ラジエータを有しており、
前記ステータスは、ラジエータを使用しているか否かを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項6】
前記燃料電池装置は、セルスタックを有しており、
前記ステータスは、前記セルスタックの温度を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項7】
前記所定フォーマットを有するメッセージは、前記燃料電池装置の種別を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項8】
前記種別は、SOFC、PEFC、PAFC及びMCFCのいずれかを含むことを特徴とする請求項7に記載の電力管理システム。
【請求項9】
前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止する予定日を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の電力管理システム。
【請求項10】
需要家に設けられる複数の機器と、
前記需要家に設けられる電力制御装置とを備え、
前記複数の機器と前記電力制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、
前記電力制御装置は、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信し、
前記複数の機器は、少なくとも、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置及び貯湯装置を有する給湯ユニットとを含み、
前記電力制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置と前記貯湯装置との少なくとも一方が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記給湯ユニットから受信し、
前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含むことを特徴とする電力管理システム。
【請求項11】
需要家に設けられる複数の機器と前記需要家に設けられる電力制御装置とを備える電力管理システムで用いる電力管理方法であって、
前記複数の機器と前記電力制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、
前記電力制御装置が前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信するステップAを備え、
前記複数の機器は、少なくとも、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置を含み、
前記ステップAは、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記電力制御装置が前記燃料電池装置から受信するステップを含み、
前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含むことを特徴とする電力管理方法。
【請求項12】
複数の機器が設けられる需要家に設けられており、予め定められた所定プロトコルに従った方式で前記複数の機器と通信を行う電力制御装置であって、
前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信する受信部を備え、
前記複数の機器は、少なくとも、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置を含み、
前記受信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池装置から受信し、
前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含むことを特徴とする電力制御装置。
【請求項13】
電力制御装置が設けられる需要家に設けられており、予め定められた所定プロトコルに従った方式で前記電力制御装置と通信を行う複数の機器の一つであり、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置であって、
前記複数の機器と前記電力制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、
前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを送信する送信部を備え、
前記送信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記電力制御装置に送信し、
前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含むことを特徴とする燃料電池装置。」

3.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証として特開2005-236348号公報、甲第2号証として特開2010-267561号公報、甲第3号証として特開2007-109463号公報、甲第4号証として「APPENDIX ECHONET 機器オブジェクト詳細規定」(Dec.21.2011 ReleaseA ECHONET CONSORTIUM) を提出し、以下のように主張している。

理由:特許法第29条第2項
・請求項1、11-13について
本件発明1、11-13は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明の組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明1、11-13は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明の組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項2-4について
本件発明2-4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項の組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2-4は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項の組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項10について
本件発明10は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明の組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された2つの発明の組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.各甲号証の記載(下線部は当審付加)
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許出願前に公知である甲第1号証には、「無線システム、無線装置、無線通信方法、及びプログラム」として、図面と共に以下の記載がある。
(ア)「【0002】
近年、エアコンや冷蔵庫などの白物家電機器や侵入センサなどセキュリティ機器と家庭内に設置されたホームコントローラとを無線で接続し、前記ホームコントローラを介して携帯電話に接続し、家の外からエアコン等の機器をコントロールしたり、家の中のセキュリティ情報を携帯電話に報知させる家庭内ネットワークシステムが開発され、商品化されてきている。
【0003】
日本においては、前記家庭内ネットワークシステムの業界標準としてECHONET(R)規格が制定されている。前記ECHONET(R)規格を用いた家電ネットワークシステムでは、特定小電力無線400MHz帯の電波などを利用して無線通信する為、制御信号等が電波で放射されるので、制御信号の秘匿性を考慮する必要がある。また、同規格では、無線通信の性質上同一ビット列が連続しないようにスクランブル符号(疑似ランダム符合)を用いた符号変換を行い、同一ビットが連続しないようにすると共に、符号変換されるので簡易的な暗号化がなされている(非特許文献1参照)。」

(イ)「【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における無線システムのシステム構成図である。
【0031】
図1で、エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4はネットワーク接続機能を備えたネット家電であり、各々無線装置1d、2d、3d、4dが接続され無線でゲートウェイ5と通信する機能を備える。無線装置(1d、2d、3d、4d)は、無線LAN、Bluetooth(R)または特定小電力無線などの無線通信媒体で構成される。本実施例では、特定小電力無線(400MHz帯)を用い、家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコルを実装している。
【0032】
なおネット家電とは、インターネットを含む様々なネットワークに接続する機能を有する家電機器、設備機器を示す概念であり、エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4の他に、図示していないが、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、給湯器、乾燥機、食器洗い乾燥機、掃除機、ガステーブル、IH機器、炊飯器、温水洗浄便座、電子錠、各種セキュリティセンサ(人感センサ、開閉センサ)、燃料電池システム、コージェネレーションシステム、メーター機器(電力メーター、水道メーター)、IPカメラ、ホームサーバ、テレビ、ビデオ、DVD機器、パソコン、PDAなどの情報端末、携帯電話、FAX、電話機、オーディオ機器、およびそのリモコンなどである。
【0033】
これらのネット家電が、ネットワーク通信機能を備えることにより、通信手段によってネット家電の制御状態やメンテナンス情報を集中表示コントローラに表示したり、または制御を行ったりする。またネット家電を管理するサーバ6からネット家電に対する新しいソフトウェアや、電子レンジでのレシピ情報や、洗濯機での洗濯コースプログラムをダウンロードするものである。
【0034】
また宅外より携帯電話、PDA、パソコンを用いて、インターネット7やゲートウェイ5を介してネット家電を制御できる。
【0035】
また図2に示すように、給湯器リモコン3は、CPU3a、メモリ3b、LCDやELディスプレイなどの表示手段であるディスプレイ3cや無線装置3dなどの必要なハードリソースを備え、これらを協働させて図3に示すような、情報処理部306、情報記憶部307、表示部308、無線通信部309を機能させている。
【0036】
情報処理部306は、給湯器リモコン3に接続された給湯器の制御を行う。また、給湯器の制御ステータス情報やメンテナンス情報を、ゲートウェイ5や、第3の機器へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成する。またゲートウェイ5から送信された制御電文(命令)の内容を判断処理し、前記内容に応じた給湯器への制御を行う機能を提供する。
【0037】
情報記憶部307(メモリ3b)は、給湯機リモコン3で表示すべき制御情報を記憶している。また、無線通信に必要なID情報などを記憶している。電源OFFでもなくなっ
てはいけないものは、不揮発性のFlashメモリ、EEPROMに、適時記憶している制御状態などのステータス情報はRAMで記憶される。
【0038】
表示部308は、情報表示できる機能を備え、サーバ6よりインターネット7を介して取得されたメンテナンス情報や、給湯器の制御情報、エネルギー使用量、使用料金などを表示する。燃料電池システムで提供される給湯器リモコンでは、発電量なども表示する。
【0039】
無線通信部309(無線装置3d)は、次に述べるゲートウェイ5の無線装置5dとの間で無線通信可能な有効伝送距離内に設置されているものである。なお無線通信部309(無線装置3d)は、図示はしないが、給湯器リモコン3と別々に設けてもよいし、給湯器に接続してもよい。また、情報処理部306より送信すべき制御命令や、制御情報を取得した場合、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、無線信号に変換して電波として空間に放射する。図3では図示していないが、無線通信部309にはアンテナが接続される。また無線通信部309は、スクランブル符号テーブルと呼ばれる通信相手ごとに利用するスクランブル符号を管理するテーブル情報を利用して、送信データのスクランブル符号化を行う。スクランブル符号変換に関する詳細な説明は後述する。」

(ウ)「【0040】
図4は、無線通信部309、及び後述する無線通信部305の詳細構成を示すブロック図である。ゲートウェイ5の無線通信部305のスクランブル符号変更命令送信部407からスクランブル符号変更命令を送信し、図4のスクランブル符号更新部401で受信処理されると、内部に保持するスクランブル符号テーブル408の次回スクランブル符号の場所に受信したデータをセットする。このデータは通信相手ごとに保持している。また無線通信部305から応答受信通知を受信する応答電文送受信部402と、前記応答受信通知により、次回スクランブル符号の内容を、利用許可するスクランブル符号変更部403を備えている。
・・・・ 省略 ・・・・
【0049】
無線通信部305は無線装置5dで構成され、サーバ6より受信した制御電文や、定期的にネット家電へ送信する制御電文を、ネット家電に対して無線通信するものである。無線媒体は特定小電力無線(400MHz帯)を使用している。また通信プロトコルは家庭内ネットワークの標準規格であるECHONET(R)を用いており、同一ビットが連続しないようにする為、送信するデータに対してスクランブル符号変換を行っている。」

上記(ア)には、背景技術として「エアコンや冷蔵庫などの白物家電機器や侵入センサなどセキュリティ機器と家庭内に設置されたホームコントローラとを無線で接続し、前記ホームコントローラを介して携帯電話に接続し、家の外からエアコン等の機器をコントロールしたり」と記載されるように、家の外からコントロールされるエアコン等の家電機器は、ホームコントローラと同じ家庭内に設けられるものといえる。
そして、上記(イ)には、「ネット家電」について、「宅外より携帯電話、PDA、パソコンを用いて、インターネット7やゲートウェイ5を介してネット家電を制御できる。」と記載されているように、家庭内に「ネット家電」が設けられ、また、「ゲートウェイ5」も同じ家庭内に設けられているといえる。

また、上記(イ)には、「給湯器リモコン3」について、「給湯器リモコン3は、CPU3a、メモリ3b、LCDやELディスプレイなどの表示手段であるディスプレイ3cや無線装置3dなどの必要なハードリソースを備え、これらを協働させて図3に示すような、情報処理部306、情報記憶部307、表示部308、無線通信部309を機能させている。」と記載されているように、給湯器リモコン3には、情報処理部306、無線通信部309を有している。
そして、「情報処理部306は、給湯器リモコン3に接続された給湯器の制御を行う。また、給湯器の制御ステータス情報やメンテナンス情報を、ゲートウェイ5や、第3の機器へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成する。」、また、「無線通信部309(無線装置3d)は、次に述べるゲートウェイ5の無線装置5dとの間で無線通信可能な有効伝送距離内に設置されているものである。なお無線通信部309(無線装置3d)は、図示はしないが、給湯器リモコン3と別々に設けてもよいし、給湯器に接続してもよい。また、情報処理部306より送信すべき制御命令や、制御情報を取得した場合、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、無線信号に変換して電波として空間に放射する。」とあるから、給湯機リモコン3は、給湯器の制御ステータス情報をゲートウェイ5へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成し、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、ゲートウェイ5の無線通信部305と、無線通信を行うものである。
上記(ア)?(ウ)の記載、及び図面を参照すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されているものと認める。
「家庭内に設けられた、エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4のネット家電と、
前記家庭内に設けられたゲートウェイ5とを備え、宅外よりゲートウェイ5を介してネット家電を制御でき、
前記ネット家電には、家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコルを実装した無線装置1d、2d、3d、4dが各々接続されて無線でゲートウェイ5と通信する機能を備え、
ネット家電である給湯器リモコン3は、給湯器の制御ステータス情報をゲートウェイ5へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成し、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、ゲートウェイ5の無線通信部305と、ECHONET(R)を用いた無線通信プロトコルで通信を行う、
無線システム。」

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、「熱電併給装置とその制御方法」として、図面と共に以下の記載がある。
(ア)「【0023】
(実施の形態1)
(通常の動き)
図1は、本発明の実施の形態1における熱電併給装置のブロック図である。図1において、燃料電池装置101は、燃料(都市ガス、LPG、灯油など)を入力として、電力と熱を出力とする熱電併給装置であり、同時にその運転状態に応じた運転状態データを出力する。運転状態は待機、起動、発電、停止のいずれかである。
【0024】
運転状態データは運転状態記録部102に入力され、その中で運転状態履歴データとして時系列に記録管理される。第1判断部104は、前記運転状態履歴データを読み出して、時系列に並んだ運転状態とその遷移から、起動回数としてカウントして良いか否かを判断し、カウントの許可/不許可信号を出力する。起動回数カウンタ105は前記のカウンタの許可/不許可信号を入力として、「許可」の場合には内部に保持するカウンタ(図示せず)をカウントアップ(+1)するが、「不許可」の場合には、カウントアップしない。」

(イ)「【0026】
以下、図1から図3を用いて、起動回数によるライフエンド制御を行う手順を説明する。
図2は、ライフエンド制御を行うアルゴリズムを示すフローチャートである。燃料電池装置101からの運転状態情報の入力があると(ステップ201)、運転状態記録部102はそれを時系列で記録して、運転状態履歴を生成する(ステップ202)。図3は運転状態履歴データの一例を示す模式図である。運転状態は先述したように待機、起動、発電、停止のいずれかの状態を取り、待機は発電指示を待つWAIT状態である。起動は、発電指示があって、電力の出力に至るまでの前処理の状態で、改質器(図示せず)の温度を上げ、燃料から安定的に水素を取り出す準備を行う。発電はスタック(図示せず)に燃料を改質した水素リッチガスを入力して、電力(同時に熱も)を取り出す状態である。最後に停止は停止要求に応じて、燃料の改質を止め、電力(熱)の出力を停止するため、燃料電池装置101のデバイス類(改質器、スタック含む)を安定的に停止させる。」

上記の記載、及び図面を参照すると、甲第2号証には、以下の事項が開示されているものと認める。
「電力と熱を出力とする熱電併給装置である燃料電池装置101は、運転状態に応じた運転状態データを出力する、運転状態は待機、起動、発電、停止のいずれかの状態を取り、待機は発電指示を待つWAIT状態であり、起動は、発電指示があって、電力の出力に至るまでの前処理の状態で、発電は電力(同時に熱も)を取り出す状態であり、停止は停止要求に応じて、燃料電池装置101のデバイス類(改質器、スタック含む)を安定的に停止させる状態である。」

(3)甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、「燃料電池発電装置システム」として、図面と共に以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、燃料電池発電装置システムの運転状態をリモコンの画面上に表示する方法に関するものである。」

(イ)「【0008】
第1の発明は、炭化水素系原料燃料と水から水素を主成分とする燃料ガスを生成する水素生成器と、前記水素生成器で得られた水素ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電を行う燃料電池スタックと、燃料電池スタックで発電した電気を交流に変換するインバータと、起動、発電、停止の一連の動作を制御する制御手段と、各種情報を表示する表示手段と、操作手段を有し、前記表示手段は、前記操作手段により所定の操作を行うと、発電が開始するまでの時間の目安を表示することを特徴とする、燃料電池発電装置システムである。
【0009】
上記構成、動作によると、操作手段により所定の操作を行うことで、発電が開始するまでの時間の目安をメンテナンス作業員や開発者は知ることができるので、燃料電池発電装置システムの運転状態などを確認しながら、メンテナンス作業や燃料電池発電装置システムの動作確認などを行うことができ、メンテナンス作業や開発の効率を上げることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に加えて、表示手段は、操作手段により所定の操作を行うと、発電が開始するまでの時間の目安をグラフ化して表示することを特徴とする、燃料電池発電装置システムである。
【0011】
上記構成、動作によると、発電が開始するまでの時間の目安をグラフ化して表示するので、現在の燃料電池発電装置システムの運転状態や発電までに要する時間の目安を分かりやすく表示することで、更にメンテナンス作業や開発の効率を上げることができる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明、または第2の発明に加えて、表示手段は、操作手段により所定の操作を行うと、起動中、発電中、停止処理中の一連の進行状況を文字表示することを特徴とする、燃料電池発電装置システムである。」

図1を参照すると、燃料電池発電装置1、貯湯ユニット10、表示手段(制御リモコン)17が通信ケーブル14、18で接続されていることが看取できる。

上記の記載、及び図面を参照すると、甲第3号証には、以下の事項が開示されているものと認める。
「起動、発電、停止の一連の動作を制御する制御手段と、各種情報を表示する表示手段とを有し、運転状態を通信ケーブルで接続されているリモコンの画面上に表示する燃料電池発電システムにおいて、リモコンの画面上の表示手段には、起動中、発電中、停止処理中の一連の進行状況を文字表示する燃料電池発電装置システム。」

(4)引用文献4の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献4は、「APPENDIX ECHONET機器オブジェクト詳細規定ReleaseA」であって、以下の記載がある。(行数は本文のみで空白行を含まない。)

(ア)「第2章 機器オブジェクトスーパークラス規定
機器オブジェクトスーパークラスのプロパティは、機器オブジェクトの各クラスに継承され搭載されるプロパティである。機器オブジェクトスーパークラスの規定を以下に示す。
・・・ 途中省略 ・・・
「Getプロパティマップ」(EPC=0x9F)についてもアクセスルール「Get」、すなわち参照可能であるプロパティとして搭載必須とする。」(2-1ページ1?10行)。

(イ)「2.11 プロパティマッププロパティ
機器オブジェクトスーパークラスは、3つのプロパティマップと呼ばれる、オブジェクトが公開する各プロパティが提供可能なサービスについて表現する情報を定義している。 このうち、次のプロパティ、「Setプロパティマップ」、「Getプロパティマップ」は、搭載しているオブジェクトが公開する各プロパティが、各製品仕様としてどのようなアクセスルールに対応しているかを示す情報である。」(2-10ページ11?17行)。

(ウ)「3.3.13 燃料電池クラス規定」(3-171ページ1行)

(エ)「プロパティ名称」:「発電動作設定」、「プロパティ内容」:「発電の動作/停止の状態を示す」、「アクセスルール」:「Set/Get」(3-171ページの表、「:」の前後は表の欄のタイトルに対する表中の下から1行目の記載。)

(オ)「プロパティ内容」:「発電動作=0x41,発電停止=0x42」(3-172ページの表、「:」の前後は表の欄のタイトルに対する表中一行目の記載。)

(カ)「(12)発電動作設定
住宅用燃料電池の発電動作状態を示す。プロパティ値は、発電動作:0x41、発電停止:0x42とする。」(3-174ページ3?5行)

5.判断
(1)本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
・甲1発明の「家庭内に設けられ」ることは、本件発明1の「需要家に設けられる」ことに相当する。
・甲1発明の「エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4のネット家電」は、本件発明1の「複数の機器」に相当する。
・甲1発明の「ゲートウェイ5」は、宅外より当該「ゲートウェイ5」を介してネット家電を制御するものであるから、ネット家電の制御に関する装置であるといえ、本件発明1の「電力制御装置」とは、制御装置である点において共通する。
・甲1発明の「家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコル」は、本件発明1の「予め定められた所定プロトコル」に相当する。
・甲1発明の「前記ネット家電には、家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコルを実装した無線装置1d、2d、3d、4dが各々接続されて無線でゲートウェイ5と通信する機能を備え」ることは、ネット家電とゲートウェイ5との間でECHONET(R)プロトコルに従ったデータフォーマット(共通化された所定フォーマット)を有する送信電文(メッセージ)を通信する機能を備えることであるから、本件発明1の「前記複数の機器と前記電力制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、前記電力制御装置は、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信」することとは、「複数の機器と制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、制御装置は、所定プロトコルに従って複数の機器と制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信」する点において共通する。
・甲1発明の「ネット家電である給湯器リモコン3」と、本件発明1の「前記複数の機器は、少なくとも、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置を含み」とは、「複数の機器は、特定の装置を含む」点において共通する。
・甲1発明の「ステータス情報をデータとして送信電文を生成」する態様は、本件発明1の「ステータスを示すメッセージ」を用いる態様に相当する。
・甲1発明の「前記給湯機リモコン3は、給湯器の制御ステータス情報をゲートウェイ5へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成し、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、ゲートウェイ5の無線通信部305と、ECHONET(R)を用いた無線通信プロトコルで通信を行う、」ことと、本件発明1の「前記電力制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池装置から受信し、前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む、」こととは、「制御装置は、所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを特定の装置から受信する」点において共通する。
・甲1発明の「無線システム」と、本件発明1の「電力管理システム」とは、「システム」の点において共通する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「需要家に設けられる複数の機器と、
前記需要家に設けられる制御装置とを備え、
前記複数の機器と前記制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、
前記制御装置は、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信し、
前記複数の機器は、特定の装置を含み、
前記制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを前記特定の装置から受信する、
システム。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1
制御装置に関し、本件発明1は「電力制御装置」であるのに対し、甲1発明のゲートウェイ5は、電力の制御に関する特定はない点。

相違点2
複数の機器は特定の装置を含み、制御装置はステータスを示すメッセージを特定の装置から受信することに関し、本件発明1は、特定の装置が「燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置」であり、制御装置が「前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池から受信」するものであって「前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む」ものであるのに対し、甲1発明は、特定の装置が「ネット家電である給湯器リモコン3」であり、給湯器の制御ステータスを給湯器リモコン3から受信するものである点。

相違点3
システムに関し、本件発明1は「電力管理システム」であるのに対し、甲1発明の無線システムは、電力の管理を行うことを特定するものではない点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。
相違点1、3について
甲1号証には、上記(イ)の段落【0032】に、ネット家電の例として「燃料電池システム」が例示され、段落【0038】には、「燃料電池システムで提供される給湯器リモコンでは、発電量なども表示する。」ことが例示されている。
甲1発明の無線システムを、宅外よりゲートウェイ5を介して燃料電池等の電力を制御するシステムとしたり、宅外よりゲートウェイ5を介して給湯器のリモコンに電力を制御する指令を与えるものとし、その際に、発電に関する情報を管理する電力管理システムとして構成することは当業者が容易に想到し得たものである。

相違点2について
本件発明1は、電力制御装置は、所定フォーマットを有するメッセージとして、燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池装置から受信し、前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含むことにより、電力制御装置が、燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージの受信を可能にすると共に、当該メッセージのフォーマットの共通化を計ることができるという効果を奏する発明である。
これに対し、甲2号証には、待機、起動、発電、停止のいずれかの状態を取る燃料電池装置101が、運転状態に応じた運転状態データを出力することが開示されているものの、これらの状態は、待機は発電指示を待つWAIT状態であり、起動は発電指示があって電力の出力に至るまでの前処理の状態であり、発電は電力(同時に熱も)を取り出す状態であり、停止は停止要求に応じて燃料電池装置101のデバイス類(改質器、スタック含む)を安定的に停止させる状態であるとされるように、あくまでも、燃料電池装置の各運転状態に関する運転状態データを出力することが開示されるに留まるものである。
そして、そもそも、燃料電池装置が正常に運転しているときにしか、これらの運転状態データは出力されないから、正常に運転していること自体を示すデータは存在しないものといえ、甲2号証の記載は、燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージとしてのフォーマット等を開示するものでも、示唆するものでもない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明と、甲第2号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

また、甲3号証には、運転状態を通信ケーブルで接続されているリモコンの画面上に表示する燃料電池発電システムにおいて、リモコンの画面上の表示手段には、起動中、発電中、停止処理中の一連の進行状況を文字表示する燃料電池発電装置システムが開示されているが、燃料電池装置の各運転状態を通信ケーブルを介し出力することが開示されるに留まるものである。
そして、燃料電池装置が正常に運転しているときにしか、これらの運転状態は出力されないから、通信ケーブルを介して送られる情報の中には、正常に運転していることを示す情報自体は存在しないものといえ、甲3号証の記載は、燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージとしてのフォーマット等を開示するものでも、示唆するものでもない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明と、甲第3号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件発明2-4
本件発明2-4は、本件発明1に、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する。
一方、甲第4号証には「APPENDIX ECHONET機器オブジェクト詳細規定ReleaseA」として、家庭内ネットワークの標準規格であるECHONETの詳細規定が記載されているが、燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージとして、燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を示すものが開示されるものではない。
そうすると、甲1発明に甲第2号証及び甲第4号証に記載された技術を適用したとしても、あるいは、甲1発明に甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術を適用したとしても、上記(1)の本件発明1の判断と同様、本件発明2-4を容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)本件発明10
(ア)本件発明10と甲1発明との対比
・甲1発明の「家庭内に設けられ」ることは、本件発明10の「需要家に設けられる」ことに相当する。
・甲1発明の「エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4のネット家電」は、本件発明1の「複数の機器」に相当する。
・甲1発明の「ゲートウェイ5」は、宅外より当該「ゲートウェイ5」を介してネット家電を制御するものであるから、ネット家電の制御に関する装置であるといえ、本件発明10の「電力制御装置」とは、制御装置である点において共通する。
・甲1発明の「家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコル」は、本件発明10の「予め定められた所定プロトコル」に相当する。
・甲1発明の「前記ネット家電には、家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコルを実装した無線装置1d、2d、3d、4dが各々接続されて無線でゲートウェイ5と通信する機能を備え」ることは、ネット家電とゲートウェイ5との間でECHONET(R)プロトコルに従ったデータフォーマット(共通化された所定フォーマット)を有する送信電文(メッセージ)を通信する機能を備えることであるから、本件発明10の「前記複数の機器と前記電力制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、前記電力制御装置は、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信」することとは、「複数の機器と制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、制御装置は、所定プロトコルに従って複数の機器と制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信」する点において共通する。
・甲1発明の「ネット家電である給湯器リモコン3」と、本件発明10の「前記複数の機器は、少なくとも、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置及び貯湯装置を有する給湯ユニットとを含み」とは、「複数の機器は、特定の装置を含む」点において共通する。
・甲1発明の、「ステータス情報をデータとして送信電文を生成」する態様は、本件発明1の「ステータスを示すメッセージ」を用いる態様に相当する。
・甲1発明の「前記給湯機リモコン3は、給湯器の制御ステータス情報をゲートウェイ5へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成し、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、ゲートウェイ5の無線通信部305と、ECHONET(R)を用いた無線通信プロトコルで通信を行う、」ことと、本件発明10の「前記電力制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置と前記貯湯装置との少なくとも一方が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記給湯ユニットから受信し、前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む、」こととは、「制御装置は、所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを受信する」点において共通する。
・甲1発明の「無線システム」と、本件発明10の「電力管理システム」とは、「システム」の点において共通する。

そうすると、両者は、以下の点で一致する。
「需要家に設けられる複数の機器と、
前記需要家に設けられる制御装置とを備え、
前記複数の機器と前記制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、
前記制御装置は、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信し、
前記複数の機器は、特定の装置を含み、
前記制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを受信する、
システム。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1’
制御装置に関し、本件発明10は「電力制御装置」であるのに対し、甲1発明のゲートウェイ5は、電力の制御に関する特定はない点。

相違点2’
複数の機器は特定の装置を含み、制御装置はステータスを示すメッセージを特定の装置から受信することに関し、本件発明10は、特定の装置が「燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置及び貯湯装置を有する給湯ユニット」であり、制御装置は「前記燃料電池装置と前記貯湯装置との少なくとも一方が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記給湯ユニットから受信」し、「前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む」のに対し、甲1発明は、特定の装置が「ネット家電である給湯器リモコン3」であり、給湯器の制御ステータスを示すメッセージを給湯器リモコン3から受信するものである点。

相違点3’
システムに関し、本件発明10は「電力管理システム」であるのに対し、甲1発明の無線システムは、電力管理を行うことを特定するものではない点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。
相違点1’、3’について
甲1号証には、上記(イ)の段落【0032】に、ネット家電の例として「燃料電池システム」が例示され、段落【0038】には、「燃料電池システムで提供される給湯器リモコンでは、発電量なども表示する。」ことが例示されている。
ここに「燃料電池システムで提供される給湯器」と記載されるように、燃料電池システムで給湯を行うものは一般に知られており、貯湯装置を付加することも適宜なし得るものであるから、「燃料電池装置及び貯湯装置を有する給湯ユニット」は一般的な構成であるといえ、甲1発明において、宅外よりゲートウェイ5を介して「燃料電池装置及び貯湯装置を有する給湯ユニット」を制御すると共に、燃料電池装置の発電に関する情報を管理する電力管理システムとして構成することは当業者が容易に想到し得たものである。

相違点2’について
本件発明10は、電力制御装置は、所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置と前記貯湯装置との少なくとも一方が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを給湯ユニットから受信し、前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含むことにより、電力制御装置が、燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを給湯ユニットから受信することを可能にすると共に、当該メッセージのフォーマットの共通化を計ることができるという効果を奏する発明である。
これに対し、甲2号証には、待機、起動、発電、停止のいずれかの状態を取る燃料電池装置101が、運転状態に応じた運転状態データを出力することが開示されているものの、燃料電池装置と貯湯装置との少なくとも一方が正常に運転しているときに関する運転状態データを出力することを開示するものではなく、示唆するものでもない。
また、甲3号証にも、燃料電池装置と貯湯装置との少なくとも一方が正常に運転しているときの運転状態データを出力することを開示するものではなく、示唆するものでもない。
そうすると、本件発明10は、甲1発明と、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないし、甲1発明と、甲第3号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

(4)本件発明11
本件発明11は、本件発明1の
「需要家に設けられる複数の機器と、前記需要家に設けられる電力制御装置とを備え、」を、「需要家に設けられる複数の機器と前記需要家に設けられる電力制御装置とを備える電力管理システムで用いる電力管理方法であって、」とし、
「前記電力制御装置は、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信し」を「前記電力制御装置が前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信するステップAを備え、」とし、
「前記電力制御装置は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池装置から受信し、」を、「前記ステップAは、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記電力制御装置が前記燃料電池装置から受信するステップを含み、」とし、
「電力管理システム。」を、「電力管理方法。」とするものである。
したがって、本件発明11は、本件発明1の「受信し」との構成を「受信するステップ」とするものであり、物の発明のカテゴリである「電力管理システム」を、方法の発明である「電力管理方法」という発明として記載したものである。

そうすると、本件発明11と、本件発明1とは、発明のカテゴリのみが実質的に異なるるものであるから、本件発明1の判断と同様に、本件発明11は、甲1発明と、甲第2号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件発明1の判断と同様に、本件発明11は、甲1発明と、甲第3号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(5)本件発明12について
(ア)本件発明12と甲1発明との対比
・甲1発明の「エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4のネット家電」は、本件発明12の「複数の機器」に相当する。
・甲1発明の「家庭内に設けられ」ることは、本件発明1の「需要家に設けられ」ることに相当する。
・甲1発明の「ゲートウェイ5」は、宅外より当該「ゲートウェイ5」を介してネット家電を制御するものであるから、ネット家電の制御に関する装置であるといえ、甲1発明の「ゲートウェイ5」と、本件発明12の「電力制御装置」とは、制御装置である点において共通する。
・甲1発明の「家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコル」は、本件発明12の「予め定められた所定プロトコル」に相当する。
・甲1発明の「前記ネット家電には、家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコルを実装した無線装置1d、2d、3d、4dが各々接続されて無線でゲートウェイ5と通信する機能を備え」ることは、ネット家電とゲートウェイ5との間でECHONET(R)プロトコルに従ったデータフォーマット(共通化された所定フォーマット)を有する送信電文(メッセージ)を通信する機能を備えることであるから、本件発明12の「電力制御装置であって、記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信する受信部を備え」ることとは、「制御装置であって、所定プロトコルに従って複数の機器と制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信する受信部を備え」る点において共通する。
・甲1発明の「ネット家電は、給湯器リモコン3を含み」と、本件発明12の「前記複数の機器は、少なくとも、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置を含み」とは、「複数の機器は、特定の装置を含」む点において共通する。
・甲1発明の、「ステータス情報をデータとして送信電文を生成」する態様は、本件発明1の「ステータスを示すメッセージ」を用いる態様に相当する。
・甲1発明の「前記給湯機リモコン3は、給湯器の制御ステータス情報をゲートウェイ5へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成し、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、ゲートウェイ5の無線通信部305と、ECHONET(R)を用いた無線通信プロトコルで通信を行う、」ことと、本件発明12の「前記受信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池装置から受信し、前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む、」こととは、「受信部は、所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを特定の装置から受信する」点において共通する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「複数の機器が設けられる需要家に設けられており、予め定められた所定プロトコルに従った方式で前記複数の機器と通信を行う制御装置であって、
前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを受信する受信部を備え、
前記複数の機器は、特定の装置を含み、
前記受信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを前記特定の装置から受信する、
制御装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1’’
制御装置に関し、本件発明12は「電力制御装置」であるのに対し、甲1発明のゲートウェイ5は、電力の制御に関する特定はない点。

相違点2’’
複数の機器は特定の装置を含み、制御装置の受信部はステータスを示すメッセージを特定の装置から受信することに関し、本件発明12は、特定の装置が「燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置」であり、制御装置が「前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記燃料電池装置から受信」するものであって、「前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む」ものであるのに対し、甲1発明は、特定の装置が「ネット家電である給湯器リモコン3」であり、給湯器の制御ステータスを示すメッセージを給湯器リモコン3から受信するものである点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。
相違点1’’について
相違点1’’についての検討は、「(1)本件発明1について」の、相違点1,3についての検討のとおりである。

相違点2’’について
相違点2’’についての検討は、「(1)本件発明1について」の、相違点2についての検討のとおりである。
そうすると、本件発明12は、甲1発明と、甲第2号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件発明12は、甲1発明と、甲第3号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(6)本件発明13について
(ア)本件発明13と甲1発明との対比
・甲1発明の「ゲートウェイ5」は、宅外より当該「ゲートウェイ5」を介してネット家電を制御するものであるから、ネット家電の制御に関する装置であるといえ、本件発明13の「電力制御装置」とは、制御装置である点において共通する。
・甲1発明の「家庭内に設けられ」ることは、本件発明13の「需要家に設けられ」ることに相当する。
・甲1発明の「家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコル」は、本件発明1の「予め定められた所定プロトコル」に相当する。
・甲1発明の「エアコン1、防犯センサ2、給湯機リモコン3、ガスメーター4のネット家電」は、本件発明13の「複数の機器」に相当する。
・甲1発明の「ネット家電である給湯器リモコン3」と、本件発明13の「前記複数の機器の一つであり、燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置」とは、複数の機器の一つであり、特定の装置である点において共通する。
・甲1発明の「前記ネット家電には、家庭内ネットワークシステムの標準規格であるECHONET(R)プロトコルを実装した無線装置1d、2d、3d、4dが各々接続されて無線でゲートウェイ5と通信する機能を備え」ることは、ネット家電とゲートウェイ5との間でECHONET(R)プロトコルに従ったデータフォーマット(共通化された所定フォーマット)を有する送信電文(メッセージ)を通信する機能を備えることであるから、本件発明13の「前記複数の機器と前記電力制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記電力制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを送信する送信部を備える」こととは、「複数の機器と制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、所定プロトコルに従って複数の機器と制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを送信する送信部を備える」点において共通する。
・甲1発明の、「ステータス情報をデータとして送信電文を生成」する態様は、本件発明1の「ステータスを示すメッセージ」を用いる態様に相当する。
・甲1発明の「前記給湯機リモコン3は、給湯器の制御ステータス情報をゲートウェイ5へ通信する場合、前記ステータス情報をデータとして送信電文を生成し、無線通信する為のデータフォーマットに加工し、ゲートウェイ5の無線通信部305と、ECHONET(R)を用いた無線通信プロトコルで通信を行う、」ことと、本件発明13の「前記送信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、前記燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージを前記電力制御装置に送信し、前記ステータスは、前記燃料電池装置が停止している状態から前記燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、前記燃料電池装置が発電している状態から前記燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む、」こととは、「送信部は、所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを制御装置に送信する」点において共通する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「制御装置が設けられる需要家に設けられており、予め定められた所定プロトコルに従った方式で、前記制御装置と通信を行う複数の機器の一つであり、特定の装置であって、
前記複数の機器と前記制御装置との間の通信は、予め定められた所定プロトコルに従った方式で行われ、
前記所定プロトコルに従って前記複数の機器と前記制御装置との間で共通化された所定フォーマットを有するメッセージを送信する送信部を備え
前記送信部は、前記所定フォーマットを有するメッセージとして、ステータスを示すメッセージを前記制御装置に送信する、
特定の装置。」

そして、以下の点で相違する。

相違点1’’’
複数の機器の一つであり、特定の装置であって送信部を備え、前記送信部はステータスを示すメッセージを制御装置に送信する特定の装置に関し、本件発明13は、特定の装置が「燃料を用いて電力を発電する燃料電池装置」であり、燃料電池装置は「燃料電池装置が正常に運転しているときのステータスを示すメッセージ」を制御装置に送信し、「前記ステータスは、燃料電池装置が停止している状態から燃料電池装置が発電している状態に至るまでの状態、或いは、燃料電池装置が発電している状態から燃料電池装置が停止している状態に至るまでの状態を含む」ものであるのに対し、甲1発明は、特定の装置が「ネット家電である給湯器リモコン3」であり、給湯器の制御ステータスを示すメッセージを給湯器リモコン3から、制御装置であるゲートウエイ5に送信するものである点。

相違点2’’’
制御装置に関し、本件発明13は「電力制御装置」であるのに対し、甲1発明のゲートウェイ5は、電力の制御に関する特定をするものでない点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。
相違点1’’’について
相違点1’’’についての検討は、「(1)本件発明1について」の相違点2の検討のとおりである。
そうすると、本件発明13は、相違点2’’’について検討するまでもなく、甲1発明と、甲第2号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件発明13は、甲1発明と、甲第3号証に記載された事項との組み合わせに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1-4、10-13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-4、10-13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-05-30 
出願番号 特願2012-174454(P2012-174454)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 相羽 昌孝  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 久保 竜一
矢島 伸一
登録日 2016-08-19 
登録番号 特許第5988757号(P5988757)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 電力管理システム、電力管理方法、電力制御装置及び燃料電池装置  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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