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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1329593
審判番号 不服2016-11090  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-22 
確定日 2017-06-22 
事件の表示 特願2014-131514「半導体装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日出願公開、特開2014-220509〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2008年12月2日(優先権主張 2007年12月4日 日本国)を国際出願日とする特願2009-544676号の一部を平成24年9月6日に新たな出願とした特願2012-196277号の一部を平成26年6月26日にさらに新たな出願としたものであって、平成27年3月20日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月8日付けで意見書のみが提出され、同年5月21日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年7月21日付けで意見書のみが提出され、同年8月18日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月13日付けで手続補正がなされたが、平成28年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成27年10月13日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項10】
回路面を有する第一の半導体チップと、
前記第一の半導体チップの前記回路面上に設けられたパターンと、
前記パターン上に設けられた第二の半導体チップと、を備え、
前記第一の半導体チップと前記第二の半導体チップとが、前記パターンによって接着されており、
前記パターンが、アルカリ可溶性ポリマーと、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性接着剤の硬化物を含む、半導体装置。」

3.引用例
3-1.引用例1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-22996号公報(以下、「引用例1」という。)には、「半導体装置」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【請求項5】
電気回路が形成された回路面と、その回路面の厚み方向反対側の裏面とを有し、回路面には、電気信号接続部が形成される第1の半導体チップと、
ガラス転移温度が150℃以下であり、回路面に形成され、回路面の電気信号接続部を露出する接続孔が形成される保護膜と、
保護膜の接続孔が形成されていない領域に接着される裏面を有する第2の半導体チップとを含むことを特徴とする半導体装置。」

(2)「【0009】
本発明に従えば、図1?図10に関連して後述されるように、第1半導体チップ2の回路面4と第2の半導体チップ12の裏面31との間に、ガラス転移温度Tgが150℃以下である保護膜3が介在され、この保護膜によって、第1および第2半導体チップが接着されて固定される。この保護膜は、第1半導体チップの回路面にα線が照射することを防いでα線を遮蔽する働きをするとともに、封止のための合成樹脂21と第1半導体チップとの温度変化に起因した応力を緩和する働きを果たす。
【0010】
保護膜は、150℃以下、好ましくは100℃以下のできるだけ常温に近いガラス転移温度Tgを有する。ガラス転移温度Tgが前述のように低いことによって、より低温で、より低い圧力で短時間に、第1および第2半導体チップの接着を行うことができる。低温で接着が可能であることによって、接着時において、第1および第2半導体チップおよびそのほかの材料は、耐熱性が低くても、損傷を生じることはなく、また低い圧力で接着が可能となるので、第1および第2半導体チップなどが破損することが防がれる。このようにして優れたチップ接合のための特性を得ることができる。比較的低いガラス転移温度Tgを有する保護膜は、たとえば(A)熱可塑性樹脂と、(B)熱硬化性樹脂とから成る樹脂組成物を含む。このような樹脂組成物は、短時間低温接着性、応力緩和性および耐熱性の面で優れている。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0012】
本発明では、保護膜が、第1半導体チップの回路面を保護するための働きをするとともに、第2半導体チップとの接着の働きを兼ねており、したがって前述の先行技術における接着剤を別途必要とすることはない。このことによっても、生産性が向上され、また全体の厚みを小さくすることができる。」
(3)「【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の保護膜付き半導体チップ1の斜視図である。この保護膜付き半導体チップ1は、第1半導体チップ2と保護膜3とを含む。第1半導体チップ2は、半導体サブストレートの回路面4に、電気回路が形成され、その厚み方向の回路面4と反対側は裏面5となっている。回路面4には、前記保護膜3が形成される。保護膜3には、第1半導体チップ2の回路面4に形成された電気信号接続部を露出する1または複数の接続孔6が形成される。接続孔6には、領域7の外方に形成され、したがって領域7には、接続孔6が形成されていない。
【0026】
図2は、図1に示される保護膜付き半導体チップ1を含む半導体装置8の断面図である。保護膜3の前記領域7には、もう1つの保護膜付き半導体チップ11が接着されて固定され、積層される。この保護膜付き半導体チップ11は、第2半導体チップ12と、その第2半導体チップ2の回路面に形成された保護膜13とを含む。第1半導体チップ2の平面形状の寸法は、第2半導体チップ12の平面形状よりも大きい。第2半導体チップ12に形成される保護膜13は、前述の第1半導体チップ2の保護膜3と同様な材料から成ってもよいが、接着機能を有さないそのほかの材料から成ってもよい。」

(4)「【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、第1半導体チップのバッファコート膜である保護膜が、第2半導体チップまたはスペーサとの接着のためのダイボンド接着剤機能を達成するようにしたので、別途、接着剤を用いる必要がなく、これによって第1および第2半導体チップの積層のための工程が簡略化され、生産性が向上される。さらにこの保護膜は、150℃以下の低いガラス転移温度Tgを有し、接着強度を向上することができるとともに、前述のように接着剤を別途、準備する必要はないので、薄く構成することができ、小形化が可能である。さらにガラス転移温度Tgが前述のように低い保護膜を用いることによって、半導体ウエハの反りが生じることを抑制し、半導体ウエハの真空吸着などによる搬送が容易となり、半導体ウエハが障害物などに衝突して破損するおそれをなくすことができる。こうして本発明では、第1および第2半導体チップを薄くすることができ、半導体装置の小形化が可能になる。」

・上記引用例1に記載の「半導体装置」は、上記(1)?(3)の記載事項、及び図1、図2によれば、電気回路が形成された回路面4を有し、回路面4には、電気信号接続部が形成される第1の半導体チップ2と、ガラス転移温度が150℃以下であり、回路面4に形成され、回路面4の電気信号接続部を露出する接続孔6が形成される保護膜3と、保護膜3の接続孔6が形成されていない領域に接着される第2の半導体チップ12とを含む半導体装置8に関するものである。
・上記(2)、(4)の記載事項によれば、保護膜3は、第2の半導体チップ12との接着のための接着剤機能も有するものである。なお、これにより、別途、接着剤を用いる必要がなく、第1および第2半導体チップの積層のための工程が簡略化され、生産性が向上する。
・上記(2)の段落【0010】の記載事項によれば、保護膜3は、ガラス転移温度が150℃以下であることによって、より低温で接着を行うことができ、このような保護膜3は、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる樹脂組成物(正確にはその硬化物)を含むものである。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「電気回路が形成された回路面を有し、当該回路面には、電気信号接続部が形成された第1の半導体チップと、
前記回路面に形成され、前記回路面の前記電気信号接続部を露出する接続孔が形成された保護膜であって、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる樹脂組成物の硬化物を含み、ガラス転移温度が150℃以下であり、接着剤機能も有する保護膜と、
前記保護膜の前記接続孔が形成されていない領域に接着される第2の半導体チップとを含む、半導体装置。」

3-2.引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2007/004569号(国際公開日:2007年1月11日。以下、「引用例2」という。)には、「感光性接着剤組成物」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「[1] (A)カルボキシル基を側鎖として有し、酸価が80?180mg/KOHであるポリイミドと、
(B)放射線重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含有する感光性接着剤組成物。」

(2)「[7] 前記ポリイミドのガラス転移温度が150℃以下である、請求項1?6のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。」

(3)「[20] 請求項1?15のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物を用いて被着体に接着された半導体チップを有する半導体装置。」

(4)「[0002] 近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持基材とを接着するための接着剤や、半導体チップを各種の被着体に接着するための接着剤には、低応力性、低温での貼り付け性、耐湿信頼性、耐はんだリフロ一性が求められる。さらに、半導体パッケージや電子部品の機能、形態及び組立てプロセスの簡略化の手法によっては、パターン形成可能な感光性の機能を兼ね備えることが求められる場合がある。感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光し、現像液によってパターン形成させることにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となる。・・・・・(以下、略)」

(5)「[0005] 本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有する感光性接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、被着体に低温で貼り付けることが可能な接着フィルムを提供することを目的とする。更に、本発明は、半導体チップが優れた接着力で接着された、信頼性の高い半導体装置及び電子部品を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明の感光性接着剤組成物は、(A)カルボキシル基を側鎖として有し酸価が80?180mg/KOHであるポリイミドと、(B)放射線重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有する。上記酸価は、好ましくは80?150mg/KOHである。
[0007] この感光性接着剤組成物は、カルボキシル基を有するとともに、上記特定範囲の酸価を有するポリイミドを用いたこと等により、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後に十分な再接着性を発現するものとなった。」

(6)「[0012] ポリイミドのガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましい。これにより、感光性接着剤組成物からなる接着フィルムを半導体ウェハ等の被着体に、より低い温度で貼付けることが可能になる。同様の観点から、上記ジアミンは、更に、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン全体の10?90モル%含むことが好ましい。」

(7)「[0023] 本発明の接着剤パターンは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものである。この接着剤層は、上記本発明の感光性接着剤組成物がパターン形成性に優れているため、高精細なパターンを有することが可能であり、また、露光後の再接着性に優れる。」

・上記引用例2に記載の「感光性接着剤組成物」は、上記(1)の記載事項によれば、(A)カルボキシル基を側鎖として有し、酸価が80?180mg/KOHであるポリイミドと、(B)放射線重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有するものである。
・上記(3)?(5)、(7)の記載事項によれば、感光性接着剤組成物は、半導体パッケージや電子部品の組立てプロセス等の簡略化のために、例えば半導体チップを各種の被着体に接着するために用いられ、特定範囲の酸価を有するポリイミドを用いたこと等により、露光後の再接着性に優れる(すなわち、接着剤機能を有する)。また、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れている(すなわち、上記ポリイミドは、アルカリ現像液に対して可溶性である、いわゆるアルカリ可溶性ポリマーといえる)ため、当該感光性接着剤組成物からなる接着剤層は高精細なパターンを有するものである。
・上記(2)、(6)の記載事項によれば、ポリイミドのガラス転移温度が150℃以下である。これにより、より低い温度での接着が可能になる。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の技術事項が記載されている。
「半導体パッケージや電子部品の組立てプロセス等の簡略化のために、半導体チップなどを各種の被着体に接着するための接着剤機能を有するとともに高精細なパターンを有する層の形成に、ガラス転移温度が150℃以下のアルカリ可溶性ポリマーであるポリイミドと、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性接着剤組成物を用いること。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「電気回路が形成された回路面を有し、当該回路面には、電気信号接続部が形成された第1の半導体チップと」によれば、
引用発明における「回路面」、回路面を有する「第1の半導体チップ」は、それぞれ本願発明でいう「回路面」、「第一の半導体チップ」に相当し、
本願発明と引用発明とは、「回路面を有する第一の半導体チップと」を備えるものである点で一致する。

(2)引用発明における「前記回路面に形成され、前記回路面の前記電気信号接続部を露出する接続孔が形成された保護膜であって、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる樹脂組成物の硬化物を含み、ガラス転移温度が150℃以下であり、接着剤機能も有する保護膜と」によれば、
(a)引用発明における「保護膜」は、接続孔が形成されたパターンとみることができることから、本願発明でいう「パターン」に相当するといえ、
本願発明と引用発明とは、「前記第一の半導体チップの前記回路面上に設けられたパターンと」を備えるものである点で一致する。
(b)さらに、引用発明における「保護膜」は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる樹脂組成物の硬化物を含み、接着剤機能も有することから、
本願発明と引用発明とは、「前記パターンが、接着剤の硬化物を含む」ものである点で共通するということができる。
ただし、接着剤について、本願発明では、「アルカリ可溶性ポリマーと、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性」のものである旨特定するのに対し、引用発明では、そのような感光性のものではない点で相違している。

(3)引用発明における「前記保護膜の前記接続孔が形成されていない領域に接着される第2の半導体チップとを含む・・」によれば、
引用発明における「第2の半導体チップ」は、本願発明における「第二の半導体チップ」に相当し、
引用発明にあっても、第1の半導体チップの回路面に形成された保護膜上に第2の半導体チップが接着されて設けられ、その結果、第1の半導体チップと第2の半導体チップとは保護膜の接着剤機能によって接着されているといえることから、
本願発明と引用発明とは、「前記パターン上に設けられた第二の半導体チップと」を備え、「前記第一の半導体チップと前記第二の半導体チップとが、前記パターンによって接着されて」なるものである点で一致するといえる。

(4)そして、引用発明における「半導体装置」は、本願発明における「半導体装置」に相当するものである。

よって、本願発明と引用発明とは、
「回路面を有する第一の半導体チップと、
前記第一の半導体チップの前記回路面上に設けられたパターンと、
前記パターン上に設けられた第二の半導体チップと、を備え、
前記第一の半導体チップと前記第二の半導体チップとが、前記パターンによって接着されており、
前記パターンが、接着剤の硬化物を含む、半導体装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
接着剤について、本願発明では、「アルカリ可溶性ポリマーと、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性」のものである旨特定するのに対し、引用発明では、そのような感光性のものではない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
引用発明における保護膜は、「感光性」のものではないことから、そのパターン形成に際しては、別途、フォトレジスト膜を塗布して露光・現像し、これをマスクとしてエッチングする必要がある(例えば引用例1の段落【0030】?【0033】、図5?8を参照)が、このようなフォトレジスト膜の塗布といった工程を省き、より一層、工程を簡略化して生産性を向上させる等のために、引用発明において、保護膜の形成に際して、引用例2に記載の技術事項(上記「3-2.」を参照)を採用すること、すなわち、接着剤機能を有するとともにパターン形成可能であり、しかも含有する樹脂のガラス転移温度が150℃以下であって低温での接着が可能なものである点でも共通する引用例2に記載の「感光性」接着剤組成物を採用し、相違点に係る構成とすることも当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項10に係る発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-12 
結審通知日 2017-04-18 
審決日 2017-05-08 
出願番号 特願2014-131514(P2014-131514)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木下 直哉  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 関谷 隆一
井上 信一
発明の名称 半導体装置及びその製造方法  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 古下 智也  
代理人 阿部 寛  
代理人 平野 裕之  

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