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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
管理番号 1330078
異議申立番号 異議2016-700424  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-13 
確定日 2017-05-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5818125号発明「測定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5818125号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第5818125号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5818125号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成22年1月15日に特許出願され、平成27年10月9日に特許の設定登録がされ、その後、その本件特許の請求項1?5に係る特許に対し、特許異議申立人 大塚電子株式会社により特許異議の申立てがされ、平成28年7月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月27日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年11月11日付けで特許異議申立人 大塚電子株式会社から意見書が提出され、同年12月6日付けで取消理由(決定の予告)がされ、その指定期間内である平成29年2月7日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年3月24日付けで特許異議申立人 大塚電子株式会社から意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求について(下線部は訂正箇所を示す。)
1 本件訂正請求の内容
特許権者は、以下の訂正事項1?3により特定されるとおり請求項1?5からなる一群の請求項に係る訂正を請求する。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「表面改質処理された後の対象物に紫外線を照射するステップと、
前記対象物の前記表面改質処理により生じた物質に起因する蛍光を検出するステップと、
検出された蛍光の強度から前記対象物の表面におけるぬれ性を示す値を出力するステップとを備える、測定方法。」とあるのを、「対象物を順次搬送するステップと、
上記対象物に対してプラズマ処理又はコロナ処理を用いて表面改質処理を行うステップと、
表面改質処理された後の対象物に紫外線を照射するステップと、
前記対象物の前記表面改質処理により生じた物質に起因する蛍光を検出するステップと、
検出された蛍光の強度から前記対象物の表面におけるぬれ性を示す値を出力するステップと、
予め定められた規定数の対象物のぬれ性を示す値の平均値と所定のしきい値とを比較し、対象物に対する表面改質の度合いが過剰であるか又は表面改質の度合いが不足しているかという対象物の表面改質プロセスでの変動の傾向を取得するステップと、
上記取得した表面改質プロセスの変動の傾向に基づいて、上記表面改質処理が上記プラズマ処理である場合には、上記対象物の処理時間、気体混合比、気体流量、高周波電源の電源電圧及び高周波電源の周波数からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記表面改質処理が上記コロナ処理である場合には、コロナ処理の時間、コロナ発生の電圧値及び上記対象物の搬送速度からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記決定したパラメータを決定した変更量だけ変更して上記表面改質プロセスで生じる変動を抑制するように調整するステップとを備え、
前記紫外線を発生させるためのUV発生素子又は紫外線ランプと、前記対象物との間にダイクロイックミラーが配設されており、前記紫外線をその伝搬方向を維持したまま前記ダイクロイックミラーを透過させた後に前記対象物に照射させている一方、前記対象物で生じ且つダイクロイックミラーに入射した前記蛍光の伝搬方向を前記ダイクロイックミラーによって変更し、前記紫外線と前記蛍光とを分離する、測定方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3において、「前記対象物に対して前記表面改質処理を行うステップをさらに備え、」という構成要件を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5において、「前記対象物を順次搬送するステップをさらに備え、」という構成要件を削除する。

2 新規事項の有無、訂正の目的の適否、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)請求項1について
上記訂正事項1を便宜上以下のように、訂正事項1-1?訂正事項1-5と分割して検討する。

ア 訂正事項1-1:「対象物を順次搬送するステップと、」を付加する。
イ 訂正事項1-2:「上記対象物に対してプラズマ処理又はコロナ処理を用いて表面改質処理を行うステップと、」を付加する。
ウ 訂正事項1-3:「、予め定められた規定数の対象物のぬれ性を示す値の平均値と所定のしきい値とを比較し、対象物に対する表面改質の度合いが過剰であるか又は表面改質の度合いが不足しているかという対象物の表面改質プロセスでの変動の傾向を取得するステップと、」を付加する。
エ 訂正事項1-4:「上記取得した表面改質プロセスの変動の傾向に基づいて、上記表面改質処理が上記プラズマ処理である場合には、上記対象物の処理時間、気体混合比、気体流量、高周波電源の電源電圧及び高周波電源の周波数からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記表面改質処理が上記コロナ処理である場合には、コロナ処理の時間、コロナ発生の電圧値及び上記対象物の搬送速度からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記決定したパラメータを決定した変更量だけ変更して上記表面改質プロセスで生じる変動を抑制するように調整するステップと」を付加する。
オ 訂正事項1-5:「、前記紫外線を発生させるためのUV発生素子又は紫外線ランプと、前記対象物との間にダイクロイックミラーが配設されており、前記紫外線をその伝搬方向を維持したまま前記ダイクロイックミラーを透過させた後に前記対象物に照射させている一方、前記対象物で生じ且つダイクロイックミラーに入射した前記蛍光の伝搬方向を前記ダイクロイックミラーによって変更し、前記紫外線と前記蛍光とを分離す」を付加する。

ア 訂正事項1-1については、特許明細書に「【0145】 ・・・対象物OBJは、・・・紙面右方向から左方向へ順次搬送される。」と記載されており、新規事項ではなく、発明特定事項を直列的に加える訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。

イ 訂正事項1-2については、特許明細書に「【0143】 [F.適用例] ・・・表面改質処理(プラズマ処理やコロナ処理)での各種条件を動的に調整するようにしてもよい。」と記載されており、新規事項ではなく、発明特定事項を直列的に加える訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。

ウ 訂正事項1-3については、特許明細書に「【0157】 たとえば、過去の5回分のぬれ性を示す値の平均値が所定のしきい値より小さければ、すなわち、算出された接触角の値が所定値より大きければ、ぬれ性が悪化していると判断し、・・・」と記載されており、新規事項ではなく、発明特定事項を直列的に加える訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。

エ 訂正事項1-4については、特許明細書に「【0156】 そして、ステップS308において、取得した表面改質プロセスの傾向に基づいて、調整すべきパラメータの種類および/またはパラメータの変更量を決定する。たとえば、図20に示すような表面改質処理としてプラズマ処理を採用する場合には、(a)対象物OBJの搬送速度(すなわち、処理時間)、(b)気体混合比、(c)気体流量、(d)高周波電源の電源電圧、(e)高周波電源の周波数などが調整対象のパラメータとなる。また、表面改質処理としてコロナ処理を採用する場合には、(f)コロナ処理の時間、(g)コロナ発生の電圧値、(h)対象物の搬送速度などが調整対象のパラメータとなる。」と記載され、「【0158】 そして、ステップS310において、決定したパラメータを決定した変更量だけ変更する。その後、ステップS300における処理が繰返される。」と記載されており、新規事項ではなく、発明特定事項を直列的に加える訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。

オ 訂正事項1-5については、特許明細書に「【0054】・・・照射測定ヘッド部104は、紫外線を発生するためのUV発光素子22と、ダイクロイックミラー24と、集光レンズ38と、対象物OBJからの蛍光を検出するためのフォトダイオード28とを含む。」と記載され、「【0055】・・・UV発光素子22に代えて、紫外線ランプなどを用いてもよい。」と記載され、「【0060】・・・照射測定ヘッド部104においては、ダイクロイックミラー24が対象物OBJから受けた蛍光の伝搬方向を変更することで、同一の光軸Ax1上を伝搬する励起用の紫外線と検出対象の蛍光とを分離することができる。そのため、対象物OBJから発生する微弱な蛍光であっても、確実に検出できる。」と記載されており、新規事項ではなく、発明特定事項を直列的に加える訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。

カ 請求項1の小括
訂正事項1は、上記ア?オで検討したとおり、新規事項ではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするからし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項3について
訂正事項2は、訂正事項1-2において、請求項1に「上記対象物に対してプラズマ処理又はコロナ処理を用いて表面改質処理を行うステップと、」を付加したことに伴い、構成要件が重複することを回避するための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、新規事項ではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項5について
訂正事項3は、訂正事項1-1において、請求項1に「対象物を順次搬送するステップと、」を付加したことに伴い、構成要件が重複することを回避するための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、新規事項ではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項について
訂正事項1は,訂正前の請求項1を訂正するものであるが、訂正前の請求項1を訂正前の請求項2?5が引用しているから、訂正前の請求項1?5は一群の請求項である。
したがって、訂正事項1?3は一群の請求項に対する訂正である。

(5)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明について
上記「第2 訂正請求について」で述べたとおり、本件訂正は認められることとなったから、請求項1?5に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件特許発明1」などという。)は、次の事項により特定される発明であると認める。

【請求項1】
対象物を順次搬送するステップと、
上記対象物に対してプラズマ処理又はコロナ処理を用いて表面改質処理を行うステップと、
表面改質処理された後の対象物に紫外線を照射するステップと、
前記対象物の前記表面改質処理により生じた物質に起因する蛍光を検出するステップと、
検出された蛍光の強度から前記対象物の表面におけるぬれ性を示す値を出力するステップと、
予め定められた規定数の対象物のぬれ性を示す値の平均値と所定のしきい値とを比較し、対象物に対する表面改質の度合いが過剰であるか又は表面改質の度合いが不足しているかという対象物の表面改質プロセスでの変動の傾向を取得するステップと、
上記取得した表面改質プロセスの変動の傾向に基づいて、上記表面改質処理が上記プラズマ処理である場合には、上記対象物の処理時間、気体混合比、気体流量、高周波電源の電源電圧及び高周波電源の周波数からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記表面改質処理が上記コロナ処理である場合には、コロナ処理の時間、コロナ発生の電圧値及び上記対象物の搬送速度からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記決定したパラメータを決定した変更量だけ変更して上記表面改質プロセスで生じる変動を抑制するように調整するステップとを備え、
前記紫外線を発生させるためのUV発生素子又は紫外線ランプと、前記対象物との間にダイクロイックミラーが配設されており、前記紫外線をその伝搬方向を維持したまま前記ダイクロイックミラーを透過させた後に前記対象物に照射させている一方、前記対象物で生じ且つダイクロイックミラーに入射した前記蛍光の伝搬方向を前記ダイクロイックミラーによって変更し、前記紫外線と前記蛍光とを分離する、測定方法。
【請求項2】
前記出力するステップは、
予め前記対象物の種類の別に取得された対応関係に従って、検出された蛍光の強度に対応する接触角を算出するステップと、
算出された接触角を出力するステップとを含む、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記出力するステップは、
前記表面改質処理を行う前において前記対象物で生じる蛍光を検出した結果と、前記表面改質処理を行った後において前記対象物で生じる蛍光を検出した結果との差に基づいて、前記対象物の表面におけるぬれ性を示す値を算出するステップを含む、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記表面改質処理は、前記対象物の表面に、カルボキシル基およびカルボニル基の少なくとも一方を生じる処理を含む、請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記対象物の搬送経路の上流側で前記表面改質処理がなされた後に、前記対象物の搬送経路の下流側で前記紫外線を照射するステップおよび前記蛍光を検出するステップが実行される、請求項1?4のいずれか1項に記載の測定方法。

第4 特許異議申立、取消理由(決定の予告)及び証拠方法について

1 特許異議申立人の提出した証拠方法
特許異議申立人は、以下の証拠方法を提出した(以下、甲第N号証を「甲N」と呼び、平成28年11月11日付けで特許異議申立人 大塚電子株式会社から提出された1回目の意見書の参考資料Nを「参1-N」と呼び、平成29年3月24日付けで特許異議申立人 大塚電子株式会社から提出された2回目の意見書の参考資料Nを「参2-N」と呼ぶ)。その証拠の中で「取消理由」で用いた証拠には、引用文献Nを「取引N」と呼び、「取消理由(決定の予告)」(以下、「予告」と呼ぶ。)で用いた証拠には、引用文献Nを「引N」と呼び、併記した。
甲1(取引1)(引1):八木誠人 他,高分子材料の放電プラズマ表面改質におけるフォトルミネセンスによるその場検出への応用,電気学会論文集A,2000年,Vol.120 No.11,pp.994-999 、写し
甲2(取引2)(引2):Jun Li et al.,Chemical Modification of a Poly(ethylene terephthalate) Surface by the Selective Alkylation of Acid Salts,Macromol.Chem.Phys.,2002年,Vol.203 No.17,pp.2470-2474 、写し及び訳文
甲3:新高分子実験学 第10巻 高分子の物性(3)-表面・界面と膜・輸送-,1995年3月発行,pp.3-34、写し
甲4:Journal of Polymer Science,1979年,Vol.17 ,pp.957-976 、写し及び抄訳
甲5:Journal of Applied Polymer Science,1999年,Vol.72,pp.1327-1333 、写し及び抄訳
甲6:Surface and Coatings Technology,2008年,Vol.202,pp.4218-4226 、写し及び抄訳

参1-1(引3):特開2000-206412号公報
参1-2(引4):特開2009-074927号公報
参1-3(引5):特開2009-288087号公報

参2-1:特開2008-071684号公報
参2-2:特開2002-356780号公報
参2-3:特開2003-183836号公報
参2-4:特開2004-107690号公報
参2-5:特開2007-256002号公報
参2-6:特開2004-134154号公報
参2-7:特開2009-069242号公報
参2-8:特開2009-214332号公報

2 特許異議申立理由、取消理由、及び、取消理由(決定の予告)
特許異議申立理由には(異議)と、「取消理由」で用いた理由には(取消)と、「取消理由」(決定の予告)で用いた理由には(予告)とそれぞれ併記した。

(1)特許異議申立理由1(特許法第36条第6項第2号違反:申立書4?8頁「・特許法第36条第2号」の各項、申立書44頁「(5)むすび ア」の項)
ア 請求項1、3について
請求項1の「ぬれ性を示す値」の外縁が不明確である。
したがって、本件特許発明1、3は不明確である。(異議)
イ 請求項2について
請求項2の「予め前記対象物の種類の別に取得された対応関係」とは、対象物の種類が複数の場合のみを含むのか、1つの場合まで含むのかが不明確である。
したがって、本件特許発明2は不明確である。(異議)
ウ 請求項4、5について
請求項4は請求項3を引用している。
請求項5は請求項1ないし3の何れかを引用している。
したがって、本件特許発明4、5は不明確である。(異議)

(2)特許異議申立理由2、及び、取消理由(特許法第29条第1項第3号:申立書44?45頁「(5)むすび イ」の項)
ア 請求項1について
本件特許発明1は、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(異議)(取消)
本件特許発明1は、甲2発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(異議)(取消)

イ 請求項2について
本件特許発明2は、甲2発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(異議)

ウ 請求項3について
本件特許発明3は、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(異議)(取消)
本件特許発明3は、甲2発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(異議)

エ 請求項4について
本件特許発明4は、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(異議)(取消)
本件特許発明4は、甲2発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(取消)

オ 請求項5について
本件特許発明5は、甲2発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。(異議)

(3)特許異議申立理由3、取消理由、及び、取消理由(決定の予告)(特許法第29条第2項違反:申立書45頁「(5)むすび ウ」の項)
ア 請求項1について
本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)
本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)

イ 請求項2について
本件特許発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)
本件特許発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)

ウ 請求項3について
本件特許発明3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)
本件特許発明3は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)

エ 請求項4について
本件特許発明4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)
本件特許発明4は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(取消)(予告)

オ 請求項5について
本件特許発明5は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)
本件特許発明5は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(異議)(取消)(予告)


第5 特許法第36条第6項第2号に関する特許異議申立理由1についての判断
1 本件特許発明1、3について
「ぬれ性」の概念は明らかであり、一般的な技術用語として理解できる。そして、「ぬれ性を示す値」は測定方法で異なるが、用いる測定方法に応じて理解できるので、「ぬれ性を示す値」は概念として明確である。
したがって、本件特許発明1、3は明確である。

2 本件特許発明2について
「予め前記対象物の種類の別に取得された対応関係」はそのまま技術的概念が理解できるから概念として明確である。
したがって、本件特許発明2は明確である。

3 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5は、引用している本件特許発明1?3が明確であるから明確である。

4 小括
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由1によっては、本件請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

第6 特許法第29条に関する取消理由(決定の予告)、取消理由、及び特許異議申立理由2、3についての判断
1 甲号証の記載
(1)甲1記載の事項

本願の優先権主張日前に頒布された甲1には、次の事項が記載されている。

ア 「高分子材料の放電プラズマ表面改質におけるフォトルミネセンスによるその場検出への応用」(論文タイトル)

イ 「プラズマ反応を応用した技術が、工業上あるいは環境対策上様々な分野で利用されている。プラズマ中に置かれた高分子材料表面では、材料表面でスパッタエッチングなどの物理反応あるいは極性基の形成や架橋反応による不飽和結合の形成などの化学反応が生じる。このような反応を利用して、高分子材料の表面に親水性を付与したり、濡れ性や接着性を向上させることができる。しかし気体プラズマを用いた表面改質には未だ科学的に解明されていない部分が多い。」(第994頁左欄第3行?第10行)

ウ 「一方、表面改質の研究において、表面に存在する組成や化学結合状態の変化と種類を把握する必要がある。とりわけ極性基の種類と量を検出することは、表面の状態を制御するのに有効である。つまり材料の表面数原子層に導入された極性基をその場で検出することが簡便にできれば有益である。改質された表面の組成や化学結合を調べる手法としては分光学的手法による解析が一般的で、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、FT-IR (FourierTransform Infrared Spectroscopy)、SIMS (Secondary Ion-Mass Spectroscopy) などが利用されている。しかしこれら分析方法では、その場での検出方法として以下の点から困難あるいは大掛かりな装置となることが多い。XPSやSIMSは数nm程度の極表面を分析する方法として適しているが、荷電粒子を信号として捉えること、動作気圧条件が低いことから、放電処理中に分析することは困難である。」(第994頁右欄第4行?第995頁左欄第2行)

エ 「そこで、高分子材料のフォトルミネセンスに着目した。フォトルミネセンスは種々の光刺激によっておきる物質の蛍光現象であり、光エネルギーによって励起された電子が脱励起する際に光エネルギーを放つものである。一般的には蛍光体と呼ばれる物質にフォトルミネセンスが認められる。高分子材料においてもフォトルミネセンスが観測され、表面改質によって極性基が導入されることにより蛍光スペクトルが変化することが考えられる。そこで著者らは、フォトルミネセンスが高分子材料を放電で処理する際のその場検出に適用できるかを検討する。中でも高分子材料のフォトルミネセンスが、放電プラズマで処理される時に導入される極性基の種類を反映するか否かを確認し、フォトルミネセンスをその場検出法に用いる可能性を検討する。」(第995頁左欄第6行?第19行)

オ 「上述した表面改質において高分子材料表面を活性化する際、水酸基やカルボニル基など酸素を含む極性基が表面に導入されている。そこでフォトルミネセンスが観測される材料において、処理で表面の組成や結合が変化することにより、それに伴う電子状態の変化から蛍光スペクトルにも変化が現れることが期待できる。フォトルミネセンスはその場で検出することも可能であり、FT-IR法に比べれば極表面の状態に敏感であると考えられる。しかし紫外光もバルク内まで侵入してしまう。そこでフォトルミネセンスをその場検出に適用することを検討する為には、蛍光スペクトルの変化を捉え、その変化が表面に導入された極性基に対応していることを確認する必要がある。具体的には、蛍光スペクトルの変化とXPSによる分析結果とを比較し、検出対象とする極性基の処理時間に対する表面状態の変化を対応させる。」(第995頁左欄第31行?右欄第13行)

カ 「実験では高分子フィルムの表面処理を行い、処理後に紫外光を照射したときの蛍光を観測し、さらにXPSを用いて表面分析を行う。試料にはポリスチレンPS(図1)を用いた。ポリスチレンはフォトルミネセンスが強く観測され、中でもその構造が炭素と水素だけで構成されるため、XPSによる分析において導入された新しい結合の検出が容易であると考えた。特に過去の経験で、処理により多くの酸素を含む結合が導入されることから、酸素含有の結合を検出する上で有効と判断した。」(第995頁右欄第14行?第23行)

キ 「フォトルミネセンスの観測は、処理された試料に励起光を照射し、その時の試料の蛍光スペクトルを観測する。光学系の配置を図3に示す。光源から試料、試料から分光器の入射スリットまでの距離は、それぞれ5.0cmと7.0cmである。光源の反射光が直接測定されないように、光源からの光は試料に対して垂直になるように照射した。」(第996頁左欄第6行?第12行)

ク 「励起光として低圧水銀ランプ(浜松フォトニクス社製L937-02)にバンドパスフィルタ(中心波長250±2nm、半値幅10±2nm、ピーク波長透過率12%、CORION社製)を通すことにより、水銀光の254nmの線スペクトルを照射することにした。」(第996頁左欄第17行?第21行)

ケ 「試料からの蛍光は、分光器を通して光電子増倍管(浜松フォトニクス社製R585)で受光し、フォトンカウンティング法により計測した。蛍光強度の単位は[cps](count/sec)である。」(第996頁右欄第2行?第4行)

コ 「ポリスチレンに254nmの紫外光を照射したときのフォトルミネセンスの蛍光スペクトルを図5(a)に示す。」(第996頁右欄第27行?第29行)

サ 「図5(a)には、処理後のスペクトルを重ねて示してある。2つのスペクトルを比較すると、320nm付近のピーク位置は一致するが、処理後には400nm付近に肩が現れている。そこで処理後のスペクトルから処理前のスペクトルの形を変えずに、ピーク強度を一致させた曲線との差を求めたものを、同図(b)に示す。これは、XPS分析より、処理による変化は化学結合の導入が主であることから、ベンゼン環に由来する電子準位が化学結合の生成により、わずかに変化し、320nm付近のピークが減少した分400nm付近のスペクトルを生じたものと判断したためである。
新しく現れたスペクトルの面積の変化を、処理時間に対して示したのが図6である。ここの縦軸で示す「蛍光強度」は、新しく現れたスペクトルにおける発光強度を波長に対して積分した面積であるが、波長を走査させて測定しているので、ここでは単位を[count]と表記する。この強度は全体の蛍光スペクトルの面積に対して5%程度である。
処理によって新しく現れたスペクトルの蛍光強度は20分程度までの増加後、長時間までゆっくりと増加しているのが分かる。処理を開始した後急激に増加して飽和の傾向を示すのは、表面処理などの極性基導入における飽和傾向と同様である。」(第996頁右欄第34行?第997頁左欄第7行)

シ 「以上より、フォトルミネセンスが放電プラズマで処理された高分子材料に導入される極性基のその場検出法としての有効性が示されたと考える。」(第999頁左欄第29行?第31行)

(2)甲2?甲6記載の事項
甲2には「プラズマ処理、放射線処理、グラフと重合などの高分子材料表面の改質」に関する技術事項が記載されている。
甲3、4には、「XPS検出強度が表面の極性基の量に相当する」技術事項が記載されている。
甲2、5、6には、「接触角がぬれ性を示す代表的な指標である」技術事項が記載されている。

(3)参1-1?参1-3記載の事項
参1-1には「顕微鏡」に関する技術事項が記載されている。
参1-2には「紫外線照射装置およびそれを備える紫外線照射システム」に関する技術事項が記載されている。
参1-3には「創薬スクリーニング装置」に関する技術事項が記載されている。

(4)参2-1?参2-8記載の事項
参2-1には「ワーク処理装置」に関する技術事項が記載されている。
参2-2には「常圧プラズマ処理法における膜厚制御方法」に関する技術事項が記載されている。
参2-3には「大気圧プラズマ放電薄膜形成方法、光学フィルム、反射防止フィルム及び画像表示素子」に関する技術事項が記載されている。
参2-4には「光学薄膜の形成方法、反射防止フィルムの製造方法及び反射防止フィルム」に関する技術事項が記載されている。
参2-5には「フィルム状基板用の放射温度計と表面温度測定方法、並びに成膜装置及び成膜方法」に関する技術事項が記載されている。
参2-6には「有機EL素子の製造方法及び製造装置」に関する技術事項が記載されている。
参2-7には「グリッド偏光フィルムの製造方法」に関する技術事項が記載されている。
参2-8には「樹脂シートの製造方法および樹脂シートの製造装置」に関する技術事項が記載されている。

2 甲1記載の発明
(1)上記(1)ア?セの記載事項を含む甲1の記載を総合すると、上記甲1には、次の発明が記載されていると認められる。

「高分子材料の放電プラズマ表面改質におけるフォトルミネセンスによるその場検出法であって、
プラズマ中に置かれた高分子材料表面で、スパッタエッチングなどの物理反応あるいは極性基の形成や架橋反応による不飽和結合の形成などの化学反応を生じ、このような反応を利用して、高分子材料の表面に親水性を付与したり、濡れ性や接着性を向上させる、プラズマを用いた表面改質の処理を行い、上述した表面改質において高分子材料表面を活性化する際、水酸基やカルボニル基など酸素を含む極性基が表面に導入され、
処理された試料に励起光を照射し、その時の試料の蛍光スペクトルを観測し、放電プラズマで処理される時に導入される極性基の種類を反映するか否かを確認するものであり、
フォトルミネセンスの観測のための光学系は、バンドパスフィルタを通すことにより254nmの線スペクトルを照射する励起光としての低圧水銀ランプと、試料からの蛍光を分光器を通して計測する光電子増倍管であり、254nmの紫外光を照射したときのフォトルミネセンスの蛍光スペクトルを観測するものであり、
処理後のスペクトルから処理前のスペクトルの形を変えずに、ピーク強度を一致させた曲線との差を求め、処理による変化は化学結合の導入が主であることから、320nm付近のピークが減少した分400nm付近のスペクトルを生じたものと判断し、新しく現れたスペクトルの面積の変化を、処理時間に対して示し、処理によって新しく現れたスペクトルの蛍光強度は20分程度までの増加後、長時間までゆっくりと増加し、処理を開始した後急激に増加して飽和の傾向を示すのは、表面処理などの極性基導入における飽和傾向と同様である、
その場検出法。」
(以下、「甲1発明」という。)

3 本件特許発明1との対比・判断
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明が少なくとも「予め定められた規定数の対象物のぬれ性を示す値の平均値と所定のしきい値とを比較し、対象物に対する表面改質の度合いが過剰であるか又は表面改質の度合いが不足しているかという対象物の表面改質プロセスでの変動の傾向を取得するステップと、
上記取得した表面改質プロセスの変動の傾向に基づいて、上記表面改質処理が上記プラズマ処理である場合には、上記対象物の処理時間、気体混合比、気体流量、高周波電源の電源電圧及び高周波電源の周波数からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記表面改質処理が上記コロナ処理である場合には、コロナ処理の時間、コロナ発生の電圧値及び上記対象物の搬送速度からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記決定したパラメータを決定した変更量だけ変更して上記表面改質プロセスで生じる変動を抑制するように調整するステップと」を備えていない点(以下、「相違点」という。)で相違する。

(2)判断
「予め定められた規定数の対象物のぬれ性を示す値の平均値と所定のしきい値とを比較し、対象物に対する表面改質の度合いが過剰であるか又は表面改質の度合いが不足しているかという対象物の表面改質プロセスでの変動の傾向を取得するステップと、
上記取得した表面改質プロセスの変動の傾向に基づいて、上記表面改質処理が上記プラズマ処理である場合には、上記対象物の処理時間、気体混合比、気体流量、高周波電源の電源電圧及び高周波電源の周波数からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記表面改質処理が上記コロナ処理である場合には、コロナ処理の時間、コロナ発生の電圧値及び上記対象物の搬送速度からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記決定したパラメータを決定した変更量だけ変更して上記表面改質プロセスで生じる変動を抑制するように調整するステップと」は甲2?甲6、参1-1?参1-3、参2-1?参2-8のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない、また、周知の技術であるともいえない。
そうすると、本件特許発明1は、甲1発明から当業者が容易に想到するものとはいえない。

(3)本件特許発明1と甲2発明との対比・判断
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、上記「(1)対比」に記載した「相違点」で少なくとも相違し、その判断は上記「(2)判断」で示したとおりである。
そうすると、本件特許発明1は、甲2発明から当業者が容易に想到するものとはいえない。

(4)本件特許発明1の小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明であるともいえないし、甲2発明であるともいえないことは明らかである。
よって、特許法第29条第1項第3号に関する特許異議申立理由2、及び、取消理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、特許法第29条第2項に関する特許異議申立理由3、取消理由、及び、取消理由(決定の予告)によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

4 本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、本件特許発明1を限定した発明である。
そうすると、本件特許発明1が、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないのであるから、本件特許発明2?5も甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明2?5は、甲1発明であるともいえないし、甲2発明であるともいえないことは明らかである。

(1)本件特許発明2について
よって、特許法第29条第1項第3号に関する特許異議申立理由2によっては、本件請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、特許法第29条第2項に関する特許異議申立理由3、取消理由、及び、取消理由(決定の予告)によっては、本件請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

(2)本件特許発明3について
よって、特許法第29条第1項第3号に関する特許異議申立理由2、及び、取消理由によっては、本件請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、特許法第29条第2項に関する特許異議申立理由3、取消理由、及び、取消理由(決定の予告)によっては、本件請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

(3)本件特許発明4について
よって、特許法第29条第1項第3号に関する特許異議申立理由2、及び、取消理由によっては、本件請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、特許法第29条第2項に関する特許異議申立理由3、取消理由、及び、取消理由(決定の予告)によっては、本件請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

(4)本件特許発明5について
よって、特許法第29条第1項第3号に関する特許異議申立理由2によっては、本件請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、特許法第29条第2項に関する特許異議申立理由3、取消理由、及び、取消理由(決定の予告)によっては、本件請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、他に本件請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を順次搬送するステップと、
上記対象物に対してプラズマ処理又はコロナ処理を用いて表面改質処理を行うステップと、
表面改質処理された後の対象物に紫外線を照射するステップと、
前記対象物の前記表面改質処理により生じた物質に起因する蛍光を検出するステップと、
検出された蛍光の強度から前記対象物の表面におけるぬれ性を示す値を出力するステップと、
予め定められた規定数の対象物のぬれ性を示す値の平均値と所定のしきい値とを比較し、対象物に対する表面改質の度合いが過剰であるか又は表面改質の度合いが不足しているかという対象物の表面改質プロセスでの変動の傾向を取得するステップと、
上記取得した表面改質プロセスの変動の傾向に基づいて、上記表面改質処理が上記プラズマ処理である場合には、上記対象物の処理時間、気体混合比、気体流量、高周波電源の電源電圧及び高周波電源の周波数からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記表面改質処理が上記コロナ処理である場合には、コロナ処理の時間、コロナ発生の電圧値及び上記対象物の搬送速度からなる調整対象のパラメータの中から調整対象となるパラメータを決定し、上記決定したパラメータを決定した変更量だけ変更して上記表面改質プロセスで生じる変動を抑制するように調整するステップとを備え、
前記紫外線を発生させるためのUV発生素子又は紫外線ランプと、前記対象物との間にダイクロイックミラーが配設されており、前記紫外線をその伝搬方向を維持したまま前記ダイクロイックミラーを透過させた後に前記対象物に照射させている一方、前記対象物で生じ且つダイクロイックミラーに入射した前記蛍光の伝搬方向を前記ダイクロイックミラーによって変更し、前記紫外線と前記蛍光とを分離する、測定方法。
【請求項2】
前記出力するステップは、
予め前記対象物の種類の別に取得された対応関係に従って、検出された蛍光の強度に対応する接触角を算出するステップと、
算出された接触角を出力するステップとを含む、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記出力するステップは、
前記表面改質処理を行う前において前記対象物で生じる蛍光を検出した結果と、前記表面改質処理を行った後において前記対象物で生じる蛍光を検出した結果との差に基づいて、前記対象物の表面におけるぬれ性を示す値を算出するステップを含む、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記表面改質処理は、前記対象物の表面に、カルボキシル基およびカルボニル基の少なくとも一方を生じる処理を含む、請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記対象物の搬送経路の上流側で前記表面改質処理がなされた後に、前記対象物の搬送経路の下流側で前記紫外線を照射するステップおよび前記蛍光を検出するステップが実行される、請求項1?4のいずれか1項に記載の測定方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-19 
出願番号 特願2010-6627(P2010-6627)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷垣 圭二阿部 知  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 信田 昌男
郡山 順
登録日 2015-10-09 
登録番号 特許第5818125号(P5818125)
権利者 株式会社アクロエッジ
発明の名称 測定方法  
代理人 山本 拓也  
代理人 山本 拓也  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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