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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) G01B
管理番号 1330149
判定請求番号 判定2017-600006  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 判定 
判定請求日 2017-01-19 
確定日 2017-07-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第3936220号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「エッジ・裏面欠陥検査複合機」は、特許第3936220号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1 請求の趣旨及び手続の経緯
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面およびその説明書に示すエッジ・裏面欠陥検査複合機は、特許第3936220号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

また、本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成14年 3月28日 本件特許に係る特許出願
平成18年10月 2日 拒絶理由通知書
平成18年11月13日 手続補正書・意見書
平成19年 3月 1日 特許査定
平成19年 3月30日 本件特許登録
平成29年 1月19日 本件判定請求
平成29年 2月28日 請求書副本

2 本件特許発明
本件特許発明は、平成18年11月13日付け手続補正書にて補正された後、特許査定されたものであって、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであり(以下、この発明を「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。)、その構成要件を符号を付けて分説して記載すると次のとおりである(以下、各構成要件を「構成要件1A」などという。)。

(請求項1)
「1A:楕円鏡と、
1B:該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置した被検査端部に向けてコヒーレント光を照射する光源と、
1C:該光源から照射され、前記被検査端部において反射された光のうち、低次元の回折光を遮光する遮光手段と、
1D:前記楕円鏡の第2焦点位置に配置した光検出器とを備え、
1E:前記遮光手段が、前記低次元の回折光が到達する前記楕円鏡の鏡面に配置された光吸収部材により構成され、
1F:前記光吸収部材が、前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する
1G:端部傷検査装置。」

(請求項2)
「2A:前記光吸収部材が、光吸収材からなるマスキングテープである
2B:請求項1に記載の端部傷検査装置。」

(請求項3)
「3A:前記被検査端部が、円板状の検査対象物の周面であり、
3B:前記被検査端部に形成されるコヒーレント光のスポットを、前記検査対象物の厚み方向よりも周方向に短い形状にする焦光手段を備える
3C:請求項1又は2に記載の端部傷検査装置。」


3 イ号装置
(1)判定請求書6(5)においては、イ号装置(エッジ・裏面欠陥検査複合機)は、本件特許発明1の分説に合わせ、次のように記載している。
「(5-1)エッジ検査ユニット23に設けた外周部端面検査部71において、楕円鏡2を備えており、
(5-2)楕円鏡2の第1焦点位置F1近傍に配置した被検査物としてのウェーハ3の端部3aに向けてレーザー光LBを照射する発光部4を備え、発光部4は、レーザー光LBを発光する光源8を有し、
(5-3)光源8から照射され、被検査物又はウエハとしてのウェーハ3の端部において反射された光のうち、低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7を備え、
(5-4)楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置した光検出器5を備え、
(5-5)遮光手段としての遮光シート7は、低次の回折光D1が到達する楕円鏡2の鏡面2bに配置された光吸収部材であり、
(5-6)遮光シート7はX方向に一様な幅を有し、
(5-7)端部傷検査装置としての外周部端面検査部71を有する。」

ここで、「(5-6)遮光シート7はX方向に一様な幅を有」するとの記載は、イ号図面及び説明書によれば、「遮光シート7は、楕円鏡2の第1焦点位置F1から近い距離に配されている楕円鏡2の頂部近傍から、第1焦点位置F1から離れる方向に、一様な幅寸法を有する」ということができる。
また、イ号装置(エッジ・裏面欠陥検査複合機)は、イ号図面及び説明書によれば、上記(5-1)ないし(5-7)の構成を有するから、上記(5-1)ないし(5-7)の構成を有する「エッジ・裏面欠陥検査複合機」ということができる。

以上を踏まえ、イ号装置の構成は、次のとおりであると認める(項番号の表記は、aないしgに振り替えた。)。

「a エッジ検査ユニット23に設けた外周部端面検査部71において、楕円鏡2を備えており、
b 楕円鏡2の第1焦点位置F1近傍に配置した被検査物としてのウェーハ3の端部3aに向けてレーザー光LBを照射する発光部4を備え、発光部4は、レーザー光LBを発光する光源8を有し、
c 光源8から照射され、被検査物としてのウェーハ3の端部において反射された光のうち、低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7を備え、
d 楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置した光検出器5を備え、
e 遮光手段としての遮光シート7は、低次の回折光D1が到達する楕円鏡2の鏡面2bに配置された光吸収部材であり、
f 遮光シート7は、楕円鏡2の第1焦点位置F1から近い距離に配されている楕円鏡2の頂部近傍から、第1焦点位置F1から離れる方向に、一様な幅寸法を有し、
g 端部傷検査装置としての外周部端面検査部71を有する、エッジ・裏面欠陥検査複合機。」

なお、請求人は、判定請求書(6(1)、6(4))において、イ号図面及び説明書で示すものは、エッジ・裏面欠陥検査複合機(型番NSS-300EB)である旨、記載しているが、請求人が提出した、エッジ・裏面欠陥検査複合機NSS-300EBの見積仕様書(甲第2号証)をみても、エッジの欠陥を検査するための具体的な構成、例えば、楕円鏡、遮光シート、発光部、光検出器の配置関係等を見て取れないから、イ号装置は、イ号図面及び説明書に基づいて上記のとおり認定した。

4 イ号装置が本件特許発明1の各構成要件を充足するか否かについて
(1)請求人の主張
請求人は、イ号構成aないしe、gは、それぞれ、独立項である本件特許発明1の構成要件1Aないし1E、1Gを充足するが、イ号構成fは、本件特許発明1の構成要件1Fを充足しないから、イ号装置は本件特許発明1の技術的範囲に属しない旨、主張し、また、従属項である本件特許発明2、3は、本件特許発明1を前提とするものであるから、イ号が本件特許発明1の構成要件1Fを充足しない場合、イ号が本件特許発明2、3の構成要件を全て充足することもあり得ない旨、主張する。

(2)被請求人の主張
当審から被請求人に対し、本件判定請求書副本を送付するとともに、答弁があれば答弁書を提出するように求めたが、答弁書の提出はなされなかった。

(3)本件特許発明1とイ号装置との対比
本件特許発明1の構成要件とイ号装置とを対比する。

ア イ号構成aの「楕円鏡2」は、構成要件1Aの「楕円鏡」に相当するから、構成要件1Aを充足する。

イ イ号構成bの「被検査物としてのウェーハ3の端部3a」は、構成要件1Bの「被検査端部」に相当する。一方、レーザ光はコヒーレント光であるということができるから、イ号構成bの「レーザー光LBを照射する発光部4」は、構成要件1Bの「コヒーレント光を照射する光源」に相当する。
したがって、イ号構成bの「該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置した被検査端部に向けてコヒーレント光を照射する光源」は、構成要件1Bの「該楕円鏡の第1焦点位置近傍に配置した被検査端部に向けてコヒーレント光を照射する光源」を充足する。

ウ イ号構成cの「低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7」は、構成要件1Cの「低次元の回折光を遮光する遮光手段」に相当するから、イ号構成cの「光源8から照射され、被検査物としてのウェーハ3の端部において反射された光のうち、低次の回折光D1を遮光する遮光手段としての遮光シート7」は、構成要件1Cの「該光源から照射され、前記被検査端部において反射された光のうち、低次元の回折光を遮光する遮光手段」を充足する。

エ イ号構成dの「楕円鏡2の第2焦点位置F2に配置した光検出器5」は、構成要件1Dの「前記楕円鏡の第2焦点位置に配置した光検出器」を充足する。

オ イ号構成eの「遮光手段としての遮光シート7は、低次の回折光D1が到達する楕円鏡2の鏡面2bに配置された光吸収部材であ」ることは、構成要件1Eの「前記遮光手段が、前記低次元の回折光が到達する前記楕円鏡の鏡面に配置された光吸収部材により構成され」ることを充足する。

カ イ号構成gの「端部傷検査装置としての外周部端面検査部71を有する、エッジ・裏面欠陥検査複合機」は、「端部傷検査装置としての外周部端面検査部71を有する」から、構成要件1Gの「端部傷検査装置」を充足する。

したがって、イ号装置のイ号構成aないしe、gは、本件特許発明1の構成要件1Aないし1E、及び1Gを充足している。
よって、イ号装置が、構成要件1Fを充足するか否かについて、以下、検討する。

(4)構成要件1Fについて
ア 構成要件1Fについての検討
構成要件1Fは、「前記光吸収部材が、前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する」ものである。
ここで、「前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する」とは、明細書の段落【0027】の「‥‥‥本実施形態に係る端部傷検査装置では、第1焦点3からの距離に比例してマスキングテープ6の幅を変更しているので、第1焦点3と第2焦点7とを含む鉛直面Pに対して浅い角度範囲-θ1≦θ≦+θ1に反射された光L1を効果的に除去する‥‥‥」との記載、段落【0032】の「‥‥‥また、楕円鏡2の寸法、形状、マスキングテープ6の幅寸法等は、被検査物の種類、性状に応じて任意に選定することができる。特に、上記実施形態においては、第1焦点3からの距離に応じてマスキングテープの幅寸法を変化させることとしたが、これに代えて、図4に示すように、距離に関わらず一定の幅寸法のマスキングテープ6を使用することにしても、楕円鏡2の内部空間に障害物を形成しなくて済むという利点がある。」との記載に照らせば、第1焦点3からの距離に伴ってマスキングテープ6の幅を一定とせずに、変えることを意味するものであって、第1焦点からの距離に関わらず、一定の幅寸法とするものではないということができる。
一方、イ号構成fは、「遮光シート7は、楕円鏡2の第1焦点位置F1から近い距離に配されている楕円鏡2の頂部近傍から、第1焦点位置F1から離れる方向に、一様な幅寸法を有する」ものであって、イ号構成fの「遮光シート7」は構成要件1Fの「光吸収部材」に対応するものであるものの、その幅は一定であって、「楕円鏡2の第1焦点位置F1」からの距離に応じた幅寸法を有するものではない。
したがって、イ号構成fは、構成要件1Fを充足するものではない。

イ 構成要件1Fについての均等論の適用について

(ア)均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するための条件は、最高裁判所により以下のとおり判示されている(最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡、民集52巻1号113頁)。
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)上記のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、上記対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属する。」

(イ)均等の(5)について

構成要件1Fは、「前記光吸収部材が、前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する」ものである。ここで、本件特許に係る特許出願の経緯によれば、平成18年10月2日付け拒絶理由通知において、請求項1、3については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとし、請求項2に対して、拒絶理由は通知されなかったところ、平成18年11月13日付け手続補正書により、補正前の請求項1において「前記遮光手段が、前記低次元の回折光が到達する前記楕円鏡の鏡面に配置された光吸収部材により構成されている端部傷検査装置。」とあったものを、「前記遮光手段が、前記低次元の回折光が到達する前記楕円鏡の鏡面に配置された光吸収部材により構成され、前記光吸収部材が、前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する端部傷検査装置。」として、「前記光吸収部材が、前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する」との事項(構成要件1F)を追加する補正を行うものである。
そして、平成18年11月13日付け意見書において、「[1] 補正について(1)補正後の新請求項1における「前記光吸収部材が、前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する端部傷検査装置」との補正は、出願当初明細書の特許請求の範囲における請求項2に記載の事項について当該請求項1における光吸収部材を限定したものです。」と記載され、さらに、「[2] 本願発明の引用文献に記載の発明に対する進歩性について 2.1 補正後の新請求項1に記載の発明(以下、本願発明1と称する。)について (1)本願発明1の特徴」の項目において、「すなわち、第1焦点において所定の角度範囲に亘って反射された光は、第1焦点の近傍ではその幅が狭いが、第1焦点から離れるに従って、その幅が広くなります。したがって、例えば、第1焦点からの距離が近いところでは、光吸収部材の幅を狭くしておき、遠くなるに従って広くしておくことにより、端部傷の探傷に不要な低次元の回折光を効果的に吸収し、かつ、傷の探傷に必要な高次元の回折光を効果的に第2焦点に向かわせることが可能となります。」と記載されている。
したがって、構成要件1Fは、補正前の請求項1において「前記遮光手段が、前記低次元の回折光が到達する前記楕円鏡の鏡面に配置された光吸収部材により構成されている端部傷検査装置。」とあったものを、(構成要件1F)「前記遮光手段が、前記低次元の回折光が到達する前記楕円鏡の鏡面に配置された光吸収部材により構成され、前記光吸収部材が、前記第1焦点からの距離に応じた幅寸法を有する端部傷検査装置。」とすることにより、少なくとも、光吸収部材が、第1焦点からの距離に関わらず一定の幅寸法を有する光吸収部材を排除しているということができ、構成要件1Fを備えていない装置が、特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるということができるから、上記(5)の要件を満たしていない。

したがって、本件特許発明1の構成要件1Fとイ号構成fは、均等の要件のうち、少なくとも「要件(5)」を満たさないから、イ号装置と本件特許発明1は均等なものとはいえない。

5 まとめ
以上のとおり、イ号構成fは、本件特許発明1の構成要件1Fを充足しておらず、また、イ号装置と本件特許発明1は均等なものともいえないから、本件特許発明1の技術的範囲に属するものとはいえない。

6 イ号装置が本件特許発明2、3の各構成要件を充足するか否かについて
本件請求項2は、本件請求項1を引用するものであり、本件請求項3は、本件請求項1又は本件請求項2を引用するものであるから、イ号装置が、本件特許発明1、本件特許発明2の技術的範囲に属するものとはいえない以上、イ号装置は、本件特許発明2、3に係る発明の技術的範囲に属するものとはいえない。

7 むすび
したがって、イ号装置は、本件特許発明1ないし3の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2017-07-13 
出願番号 特願2002-91866(P2002-91866)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡田 卓弥  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
関根 洋之
登録日 2007-03-30 
登録番号 特許第3936220号(P3936220)
発明の名称 端部傷検査装置  
代理人 吉田 裕美  
代理人 猪狩 充  
代理人 山川 啓  
代理人 福田 充広  

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