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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1330591
審判番号 不服2016-8585  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-09 
確定日 2017-07-20 
事件の表示 特願2011-208181号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年4月18日出願公開、特開2013-66623号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概要
本願は、平成23年9月22日の出願であって、平成27年7月3日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月3日に意見書及び手続補正書が提出されところ、平成28年2月29日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年3月15日)、それに対し、同年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
そして、当審にて平成29年1月17日付けで拒絶理由を通知したところ、同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年3月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「A 変動表示を行ない表示結果を導出表示し、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と、
C 前記変動表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまでに、所定の演出表示を所定回数繰り返し実行する演出表示実行手段と、
D 前記決定手段による決定に基づいて、前記演出表示実行手段によって実行される演出表示において特定演出を実行するか否かを決定するとともに、該特定演出を実行する場合、いずれの回数目の演出表示において該特定演出を実行するかを決定する特定演出決定手段と、
を備え、
E 前記演出表示実行手段は、前記特定演出決定手段によって決定された回数目の演出表示において前記特定演出を実行し、
F 前記特定演出決定手段は、前記決定手段により前記有利状態とすることが決定されたか否かに応じて、いずれの回数目の演出表示において該特定演出を実行するかを異なる割合で決定し、
G 前記演出表示実行手段によって実行される演出表示において、前記特定演出が実行されないときには通常演出を実行可能であり、
H 前記特定演出は、前記通常演出の色彩を変更した演出であり、
I 遊技媒体が入賞可能な第1状態と該第1状態よりも遊技媒体が入賞しにくいまたは入賞しない第2状態とに変化する可変入賞装置をさらに備え、
J 前記有利状態は、所定の態様で前記可変入賞装置を前記第2状態から前記第1状態に変化させる第1有利状態と、前記第1有利状態よりも不利な態様で前記可変入賞装置を前記第2状態から前記第1状態に変化させる第2有利状態と、を含み、
K 前記決定手段は、前記有利状態として、前記第1有利状態、または、前記第2有利状態とするかをさらに決定し、
L 前記決定手段による決定に基づいて、前記演出表示の繰返し回数を複数種類のいずれかに決定する繰返し回数決定手段をさらに備え、
M 前記繰返し回数決定手段は、前記決定手段により前記第1有利状態とすることが決定されたときに、前記有利状態としないことが決定されたときよりも、高い割合で多い繰返し回数を決定し、
N 繰返し回数が少ないときには、前記第2有利状態となりやすい、
ことを特徴とする遊技機。」(A?Nは、当審にて分説して付与した。)

3 刊行物に記載された発明
当審による拒絶理由において刊行物1として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-136053号公報には、図面と共に次の事項が記載されていると認められる(a?nは、本件補正発明のA?Nに対応させて付与した。)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の識別情報の可変表示を開始させた後に表示結果を導出表示する可変表示手段を備え、該可変表示手段に導出表示された識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機であって、
前記特定表示結果とするか否かを、識別情報の表示結果が導出表示される以前に決定する事前決定手段と、
前記事前決定手段の決定結果にもとづいて、1段階から複数段階まで演出の態様が段階的に変化可能なステップアップ予告演出を複数種別の中から選択するとともに、該選択した種別の前記ステップアップ予告演出において演出の態様を変化させる段階数を選択する予告演出選択手段と、
該予告演出選択手段が選択した段階数の前記ステップアップ予告演出を実行する予告演出実行手段と、を備え、
前記複数種別のステップアップ予告演出は、リーチ成立前から予告演出の実行が開始され、リーチ成立後も演出の態様が所定段階数変化可能であり、
前記リーチ成立後に演出の態様が変化可能な前記所定段階数は、前記ステップアップ予告演出の種別に応じて異なる段階数である
ことを特徴とする遊技機。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の識別情報の可変表示を開始させた後に表示結果を導出表示する可変表示手段を備え、該可変表示手段に導出表示された識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御するパチンコ機やスロット機、パロット機などの遊技機に関する。」

ウ 「【0010】
本発明による遊技機は、複数種類の識別情報(例えば、第1特別図柄、第2特別図柄、飾り図柄)の可変表示を開始させた後に表示結果(例えば、停止図柄)を導出表示する可変表示手段(例えば、第1特別図柄表示装置4A、第2特別図柄表示装置4B、画像表示装置5)を備え、該可変表示手段に導出表示された識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定表示結果(例えば、大当り図柄)となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(例えば、大当り遊技状態)に制御する遊技機であって、特定表示結果とするか否かを、識別情報の表示結果が導出表示される以前に決定する事前決定手段(例えば、CPU103によるステップS241を実行する部分)と、事前決定手段の決定結果にもとづいて、1段階から複数段階(例えば、第5段階)まで演出の態様が段階的に変化可能なステップアップ予告演出(図57、図58等参照)を複数種別の中から選択するとともに、該選択した種別のステップアップ予告演出において演出の態様を変化させる段階数を選択する予告演出選択手段(例えば、演出制御用CPU120によるステップS701?S707を実行する部分)と、該予告演出選択手段が選択した段階数のステップアップ予告演出を実行する予告演出実行手段(例えば、演出制御用CPU120によるステップS172を実行する部分)と、を備え、複数種別のステップアップ予告演出は、リーチ成立前から予告演出の実行が開始され、リーチ成立後も演出の態様が所定段階数変化可能であり(図50、図51、図57、図58参照)、リーチ成立後に演出の態様が変化可能な所定段階数は、ステップアップ予告演出の種別に応じて異なる段階数である(例えば、第1ステップアップ予告はリーチ成立後に第5ステップの演出のみ実行可能であり、第2ステップアップ予告はリーチ成立後に第4および第5ステップの演出を実行可能である)ことを特徴とする。そのような構成によれば、期待感を長期間持続させることができるとともに、ステップアップ予告演出の種別に注目させて遊技興趣のさらなる向上を図ることができる。
【0011】
リーチ成立前とリーチ成立後に実行可能な演出の態様を、通常演出態様(例えば、図52に示すようなキャラクタの服が無地の柄の演出態様)とするか、該通常演出態様とは異なる特定のデザイン(例えば、桜柄)を使用した特殊演出態様(例えば、図52に示すようなキャラクタの服が桜柄の演出態様)とするかを決定する演出態様決定手段(例えば、演出制御用CPU120によるステップS511を実行する部分)を備え、該演出態様決定手段は、事前決定手段により特定表示結果とすると決定されたか否かに応じて、リーチ成立前に実行される演出の態様を特殊演出態様とするか、リーチ成立後に実行される演出の態様を特殊演出態様とするかを決定する(例えば、ステップアップ予告におけるリーチ成立前に実行されるステップの演出において桜柄演出を実行するか、リーチ成立後に実行されるステップの演出において桜柄演出を実行するかを決定する;図23の桜柄演出決定テーブル、図45のステップS753?S755参照)ように構成されていてもよい。そのような構成によれば、特定のデザインを用いた演出が実行されたときの遊技の進行状況に応じて特定表示結果となる割合を異ならせることができ、遊技者の期待感に抑揚をつけることができる。」

エ 「【0033】
普通入賞球装置6Aと普通可変入賞球装置6Bの下方には、特別可変入賞球装置7が設けられている。特別可変入賞球装置7は、図3に示す大入賞口扉用となるソレノイド82によって開閉駆動される大入賞口扉を備え、その大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する大入賞口を形成する。一例として、特別可変入賞球装置7では、大入賞口扉用のソレノイド82がオフ状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を閉鎖状態にする。その一方で、特別可変入賞球装置7では、大入賞口扉用のソレノイド82がオン状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を開放状態にする。特別可変入賞球装置7に形成された大入賞口を通過(進入)した遊技球は、例えば図3に示すカウントスイッチ23によって検出される。
【0034】
カウントスイッチ23によって遊技球が検出されたことに基づき、所定個数(例えば15個)の遊技球が賞球として払い出される。こうして、特別可変入賞球装置7において開放状態となった大入賞口を遊技球が通過(進入)したときには、例えば第1始動入賞口や第2始動入賞口といった、他の入賞口を遊技球が通過(進入)したときよりも多くの賞球が払い出される。したがって、特別可変入賞球装置7において大入賞口が開放状態となれば、遊技者にとって有利な第1状態となる。その一方で、特別可変入賞球装置7において大入賞口が閉鎖状態となれば、大入賞口に遊技球を通過(進入)させて賞球を得ることができないため、遊技者にとって不利な第2状態となる。」

オ 「【0045】
大当り図柄となる「1」、「3」、「7」の数字を示す特別図柄のうち、「3」、「7」の数字を示す特別図柄は15ラウンド大当り図柄となり、「1」の数字を示す特別図柄は2ラウンド大当り図柄となる。特図ゲームにおける確定特別図柄として15ラウンド大当り図柄が停止表示された後に制御される多ラウンド特定遊技状態としての大当り遊技状態(15ラウンド大当り状態)では、特別可変入賞球装置7の大入賞口扉が、第1期間となる所定期間(例えば29秒間)あるいは所定個数(例えば9個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とすることにより、特別可変入賞球装置7を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させるラウンドが実行される。こうしてラウンドの実行中に大入賞口を開放状態とした大入賞口扉は、遊技盤2の表面を落下する遊技球を受け止め、その後に大入賞口を閉鎖状態とすることにより、特別可変入賞球装置7を遊技者にとって不利な第2状態(閉鎖状態)に変化させて、1回のラウンドを終了させる。15ラウンド大当り状態では、大入賞口の開放サイクルであるラウンドの実行回数が、第1ラウンド数(例えば「15」)となる。ラウンドの実行回数が「15」となる15ラウンド大当り状態における遊技は、15回開放遊技とも称される。このような15ラウンド大当り状態では、大入賞口60に遊技球が入賞するたびに15個の出玉(賞球)が得られる。なお、15ラウンド大当り状態は、第1特定遊技状態ともいう。
【0046】
特図ゲームにおける確定特別図柄として2ラウンド大当り図柄が停止表示された後に制御される少ラウンド特定遊技状態としての大当り遊技状態(2ラウンド大当り状態)では、各ラウンドで特別可変入賞球装置7を遊技者にとって有利な第1状態に変化させる期間(大入賞口扉により大入賞口を開放状態とする期間)が、15ラウンド大当り状態における第1期間よりも短い第2期間(例えば0.5秒間)となる。また、2ラウンド大当り状態では、ラウンドの実行回数が、15ラウンド大当り状態における第1ラウンド数よりも少ない第2ラウンド数(例えば「2」)となる。なお、2ラウンド大当り状態では、ラウンドの実行回数が第2ラウンド数となるように制御されればよく、それ以外の制御は15ラウンド大当り状態と同様に行われるようにしてもよい。ラウンドの実行回数が「2」となる2ラウンド大当り状態における遊技は、2回開放遊技とも称される。2ラウンド大当り状態では、各ラウンドで特別可変入賞球装置7とは別個に設けられた所定の入賞球装置において、大入賞口となる所定の入賞口を閉鎖状態から開放状態とすることなどにより、遊技者にとって不利な第2状態から遊技者にとって有利な第1状態に変化させ、所定期間(第1期間又は第2期間)が経過した後に第2状態へと戻すようにしてもよい。」

カ 「【0057】
「擬似連」の可変表示演出では、特図ゲームの第1開始条件と第2開始条件のいずれか一方が1回成立したことに対応して、飾り図柄の可変表示が開始されてから可変表示結果となる確定飾り図柄が導出表示されるまでに、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示エリア5L、5C、5Rにおける全部にて飾り図柄を一旦仮停止表示させた後、全部の飾り図柄表示エリア5L、5C、5Rにて飾り図柄を再び変動(擬似連変動)させる演出表示を、所定回(例えば最大3回まで)行うことができる。擬似連変動の回数は、飾り図柄の可変表示が開始されてから全部の飾り図柄が最初に一旦仮停止するまでの初回変動を除く、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示エリア5L、5C、5Rにおける全部にて飾り図柄が再変動する回数である。」

キ 「【0070】
また、この実施の形態では、上記の予告演出とは別に、可変表示結果が「大当り」となる可能性があることや、さらに「15R確変大当り」となる可能性を遊技者に報知するための演出(桜柄演出)が実行されることがある。桜柄演出となる演出動作は、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示エリア5L、5C、5Rの全部にて飾り図柄の可変表示が開始されてから、飾り図柄の可変表示状態がリーチ状態となるより前(「左」及び「右」の飾り図柄表示エリア5L、5Rにて飾り図柄が仮停止表示されるより前)、または/及び、リーチ状態となった以後に実行される。この実施の形態では、桜柄演出として、予告演出やリーチ演出における演出態様を、通常演出態様(桜柄演出が実行されないときの演出態様)とは異なる特定のデザイン(この実施の形態では桜柄)を使用した特殊演出態様とする演出が実行される。なお、特殊演出態様は、桜柄に限定されず、通常使用されるデザインとは色彩、模様、柄などが異なる特定のデザインとするものであればよい。なお、この実施の形態では、桜柄演出は、リーチ状態となる前、リーチ状態となった以後に実行可能であるものとする。なお、桜柄演出は、リーチ状態となる前、リーチ状態となった以後に、それぞれ1回ずつ以上実行するようにしてもよい。また、リーチ状態となる前における特殊演出態様と、リーチ状態となった以後における特殊演出態様と、を異なるデザインとするようにしてもよい。また、リーチ状態となる前とリーチ状態となった以後に通常演出態様から特殊演出態様に変化させる対象(例えばキャラクタなど)を同一にして、その対象のデザインが変化するようにしてもよい。」

ク 「【0125】
大当り種別決定テーブル131において、複数種類の大当り種別に割り当てられた決定値を示すテーブルデータは、15ラウンド大当り状態に制御するか2ラウンド大当り状態に制御するかの決定結果や、大当り遊技状態の終了後には確変状態に制御するか否かの決定結果に対応した決定用データとなっている。例えば、「非確変」又は「確変」の大当り種別に割り当てられている決定値を示すテーブルデータは、15ラウンド大当り状態に制御するとの決定結果に対応する一方で、「突確」の大当り種別に割り当てられている決定値を示すテーブルデータは、2ラウンド大当り状態に制御するとの決定結果に対応している。また、「非確変」の大当り種別に割り当てられている決定値を示すテーブルデータは、確変状態に制御しないとの決定結果に対応する一方で、「確変」又は「突確」の大当り種別に割り当てられている決定値を示すテーブルデータは、確変状態に制御するとの決定結果を示している。大当り種別決定テーブル131は、遊技制御バッファ155に設けられた大当り種別バッファの値(大当り種別バッファ値)を、決定された大当り種別に対応する値(例えば「0」?「2」のいずれか)に設定するためのテーブルデータ(設定用データ)を含んでいてもよい。」

ケ 「【0140】
ハズレ変動パターン決定テーブル134Aは、特図表示結果を「ハズレ」にすると決定(事前決定)されたときに、変動パターン種別の決定結果などに応じて、変動パターン決定用の乱数値MR4に基づき、変動パターンを複数種類のうちのいずれかに決定するために参照されるテーブルである。ハズレ変動パターン決定テーブル134Aでは、変動パターン種別に応じて、変動パターン決定用の乱数値MR4と比較される数値(決定値)が、特図表示結果を「ハズレ」とする場合に対応した1つ又は複数の変動パターン(ハズレ変動パターン)に割り当てられている。
【0141】
当り変動パターン決定テーブル134Bは、特図表示結果を「大当り」や「小当り」にすると決定(事前決定)されたときに、変動パターン種別の決定結果などに応じて、変動パターン決定用の乱数値MR4に基づき、変動パターンを複数種類のうちのいずれかに決定するために参照されるテーブルである。当り変動パターン決定テーブル134Bでは、変動パターン種別に応じて、変動パターン決定用の乱数値MR4と比較される数値(決定値)が、特図表示結果を「大当り」や「小当り」とする場合に対応した1つ又は複数の変動パターン(当り変動パターン)に割り当てられている。」

コ 「【0265】
図3に示す演出制御基板12に搭載された表示制御部123は、演出制御用CPU120からの表示制御指令などに基づき、画像表示装置5における表示動作の制御内容を決定する。例えば、表示制御部123は、画像表示装置5の画面上に表示させる演出画像の切換タイミングを決定することなどにより、飾り図柄の可変表示やリーチ演出における演出表示といった各種の演出表示を実行させるための制御を行う。表示制御部123は、VDP(VideoDisplayProcessor)、CGROM(CharacterGeneratorROM)、VRAM(VideoRAM)、LCD駆動回路などを備えて構成されていればよい。」

サ 「【0309】
図37は、図33のステップS111にて実行される変動パターン設定処理の一例を示すフローチャートである。図37に示す変動パターン設定処理において、CPU103は、まず、大当りフラグがオンであるか否かを判定する(ステップS261)。そして、大当りフラグがオンであれば(ステップS261;Yes)、変動パターン種別を複数種別のいずれかに決定するための使用テーブルとして、大当り変動パターン種別決定テーブル132Aを選択してセットする(ステップS262)。また、例えば遊技制御バッファ設定部155に記憶されている大当り種別バッファ値を読み取ることなどにより、大当り種別が「非確変」や「確変」、「突確」のいずれであるかを特定する(ステップS263)。」

シ 「【0314】
ステップS271にて変動パターン種別を決定した後には、特図表示結果が「ハズレ」であるか「大当り」又は「小当り」であるかに応じて、ハズレ変動パターン決定テーブル134Aと当り変動パターン決定テーブル134Bのいずれかを選択し、変動パターンを複数種類のいずれかに決定するための使用テーブルとしてセットする(ステップS272)。続いて、変動パターン決定用の乱数値MR4を示す数値データに基づき、ステップS272にてセットした変動パターン決定テーブルを参照することにより、変動パターンを複数種類のいずれかに決定する(ステップS273)。変動パターン決定用の乱数値MR4を示す数値データは、ステップS273の処理が実行されるときに乱数回路104や遊技制御カウンタ設定部154のランダムカウンタなどから抽出されてもよいし、第1始動入賞口や第2始動入賞口を通過(進入)した遊技球が検出された始動入賞時に抽出されたものを、乱数値MR1、MR2とともに、第1特図保留記憶部151Aや第2特図保留記憶部151Bにおける保留データとして記憶しておいてもよい。」

ス 「【0368】
図43に示すステップS510にて以上のような予告演出設定処理を実行した後には、桜柄演出設定処理を実行する(ステップS511)。図45は、ステップS511にて実行される桜柄演出設定処理の一例を示すフローチャートである。なお、図45に示す桜柄演出設定処理は、図44に示す予告演出設定処理にて表示系予告が決定された場合(つまり、ステップアップ予告演出が決定された場合)に限り実行されるものとする。図45に示す桜柄演出設定処理において、演出制御用CPU120は、まず、演出制御フラグ設定部191に設けられたリーチ前桜柄演出実行フラグ及びリーチ後桜柄演出実行フラグをリセットする(ステップS751)。リーチ前桜柄演出実行フラグは、リーチ状態となる前に桜柄演出を実行することを示すフラグであって、ステップS757にてセットされる。また、リーチ後桜柄演出実行フラグは、リーチ状態となった以後に桜柄演出を実行することを示すフラグであって、ステップS759にてセットされる。なお、ステップS707にて予告演出を実行すると決定されたかどうかを判定し、予告演出を実行しないと決定されたときは、桜柄演出設定処理を終了するように構成されているのが好ましい。この実施の形態では、予告演出の実行時に桜柄演出を実行するように構成されているので、予告演出を実行しない場合にステップS752以降の処理を実行しないようにすることにより、無駄な処理を省略することが可能となる。」

セ 「【0501】
この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、図23に示した桜柄演出決定テーブル(時短時)145B、桜柄演出決定テーブル(確変時)145Cの設定では、時短状態や確変状態において可変表示結果が「非確変大当り」となる場合にも桜柄演出を実行するようになっていたが、時短状態や確変状態において可変表示結果が「非確変大当り」となる場合にも桜柄演出を実行しないようにしてもよい。このようにすることで、時短状態や確変状態において桜柄演出が実行されたときの確変期待度を100%にすることができ、大当りになれば必ず確変大当りであることが確定するので、遊技者に高い期待感を与えることができる。
【0502】
また、桜柄演出の実行タイミングは、「リーチ前」、「リーチ後」、「リーチ前及びリーチ後」の3種類であったが、「リーチ前及びリーチ後」に実行するものがなくてもよい。また、「リーチ前」や「リーチ後」においても、より細かく実行タイミングを区切ってもよい。例えば、「擬似連」の可変表示演出が実行される場合の、何回目の再変動において桜柄演出を実行するか決定するようにしてもよい。
・・・
【0505】
また、上記実施の形態では、桜柄演出は、可変表示状態がリーチ状態となる前、リーチ状態となった以後において、それぞれ1回ずつ実行するが、1回ずつ以上実行するようにしてもよい。例えば、「擬似連」の可変表示演出による初回変動及び擬似連変動の一部において予告演出を実行する場合や、「ステップアップ表示」の予告演出を実行する場合など、桜柄演出を実行する機会が複数回ある場合には、2回以上実行するようにしてもよい。また、桜柄演出を実行する機会が複数回ある場合には、どのタイミングで桜柄演出が実行されたかによって信頼度や確変期待度を異ならせることに加え、桜柄演出が実行された回数によって信頼度や確変期待度を異ならせるようにしてもよい。
・・・
【0507】
上記実施の形態では、桜柄演出決定テーブル145A?145Cを用いて、1回の処理で桜柄演出の実行の有無、及び、実行タイミングを決定していたが、先ず、桜柄演出の実行の有無を決定してから、実行する場合に実行タイミングを決定するなど、2段階以上の処理で決定するようにしてもよい。」

ソ 認定事項1
実施の形態の様々な変形及び応用に関して、【0502】、【0507】に次の記載がある。
【0502】には、「桜柄演出の実行タイミング」を「より細かく」「区切って」、「「擬似連」の可変表示演出が実行される場合の、何回目の再変動において」「実行するか決定するようにし」たことが記載されている。
また、【0507】には、「桜柄演出の実行の有無、及び、実行タイミング」の「決定」を、「先ず、桜柄演出の実行の有無を決定してから、実行する場合に実行タイミングを決定する」ことが記載されている。
そして、【0011】には、「演出態様決定手段」が、事前決定手段により特定表示結果とすると決定されたか否かに応じて、桜柄演出の実行の有無、及び、実行タイミングを決定することについて記載されている。

これらの記載事項からみて、刊行物1には、演出態様決定手段が、事前決定手段により特定表示結果とすると決定されたか否かに応じて、擬似連の可変表示演出における桜柄演出の実行の有無を決定してから、実行する場合に実行タイミングとして、何回目の再変動において実行するかを決定することが示されていると認められる。

タ 認定事項2
【0070】の「この実施の形態では、桜柄演出として、予告演出やリーチ演出における演出態様を、通常演出態様(桜柄演出が実行されないときの演出態様)とは異なる特定のデザイン(この実施の形態では桜柄)を使用した特殊演出態様とする演出が実行される。なお、特殊演出態様は、桜柄に限定されず、通常使用されるデザインとは色彩、模様、柄などが異なる特定のデザインとするものであればよい。」との記載から、刊行物1には、桜柄演出が実行されないときに通常演出が実行されることが記載されている。
そして、【0265】の記載によれば、「表示制御部123」は、「各種の演出表示を実行させるための制御を行う」ものである。
そうすると、刊行物1には、表示制御部123が、桜柄演出が実行されないときに通常演出を実行させるための制御を実行可能であることが記載されている。

チ 認定事項3
【0309】に、CPU103が、図37に示す変動パターン設定処理 を実行することが記載されている。
【0314】に、(図37に示す変動パターン設定処理における)「ステップS271にて変動パターン種別を決定した後には、特図表示結果が「ハズレ」であるか「大当り」又は「小当り」であるかに応じて、ハズレ変動パターン決定テーブル134Aと当り変動パターン決定テーブル134Bのいずれかを選択し・・・変動パターンを複数種類のいずれかに決定する」との記載がある。
そして、【0140】の記載から、「特図表示結果を「ハズレ」にすると決定(事前決定)」したときに「ハズレ変動パターン決定テーブル134A」を選択し、【0141】の記載から、「特図表示結果を「大当り」や「小当り」にすると決定(事前決定)」したときに「当り変動パターン決定テーブル134B」を選択することが記載されているといえる。
一方、変動パターンを例示する【図7】には、擬似連変動を行う場合、変動パターンに応じて擬似連の実行回(1回?3回)が決定されることが図示されている。
さらに、【請求項1】、【0010】には、事前決定手段が特定表示結果とするか否かを決定することが記載されている。

これらのことを踏まえると、刊行物1には、CPU103が変動パターン設定処理において、事前決定手段による特定表示結果とするか否かの決定に基づいて選択された変動パターン決定テーブル(134Aまたは134B)を用いて、変動パターンを複数種類のうちのいずれかに決定することにより擬似連の実行回(1回?3回)を決定することが記載されていると認められる。

ツ 認定事項4
変動パターンを例示した【図7】には、擬似連変動を行う変動パターンとして、
PA1-5:擬似連変動(1回)→非リーチ(ハズレ)
PB2-1:擬似連変動(1回)→ノーマルリーチ(ハズレ)
PB2-2:擬似連変動(2回)→ノーマルリーチ(ハズレ)
PA3-1:擬似連変動(3回)→スーパーリーチα(ハズレ)
PA3-2:擬似連変動(3回)→スーパーリーチβ(ハズレ)
PB4-1:擬似連変動(1回)→ノーマルリーチ(大当り)
PB4-2:擬似連変動(2回)→ノーマルリーチ(大当り)
PA5-1:擬似連変動(3回)→スーパーリーチα(大当り)
PA5-2:擬似連変動(3回)→スーパーリーチβ(大当り)
PC1-3:擬似連変動(1回)→2回開放チャンス目停止(突確・小当り)
の変動パターンがテーブルに設定されている。
さらに、【図7】には、擬似連変動を行う変動パターンとして摘記されていない、擬似連変動を行わない変動パターンについてもテーブルに設定されている。

そして、変動パターン種別を例示する【図8】には、擬似連変動を行う変動パターン種別、あるいは、擬似連変動を行うことが可能な変動パターン種別として、
CA1-6:非リーチ(ハズレ)の滑り、擬似連
CA2-2:リーチ(ハズレ)のノーマルリーチ(ハズレ)擬似連あり
CA3-2:非確変/確変(大当り)のノーマルリーチ(大当り)擬似連あり
CA4-1:突確(大当り)/小当り
の変動パターン種別がテーブルに設定されている。

また、変動パターン決定テーブルの構成例を示す【図13】には、ハズレの場合と、当りの場合について、【図7】に示した変動パターンと【図8】に示した変動パターン種別との対応関係が設定されている。
そのうち、ハズレ変動パターン決定テーブル(A)には、擬似連変動を伴う種別に対応するものとして、CA1-6には、擬似連なしのPA1-4と擬似連1回のPA1-5が対応し、CA2-2には、擬似連1回のPB2-1と擬似連2回のPB2-2が対応関係にあることがテーブルに設定され、当り変動パターン決定テーブル(B)には、擬似連変動を伴う種別に対応するものとして、CA3-2には、擬似連1回のPB4-1と擬似連2回のPB4-2が対応し、CA4-1には、擬似連なしのPC1-1、擬似連なしのPC1-2、擬似連1回のPC1-3が対応関係にあることがテーブルに設定されている。

そして、【図7】、【図8】、【図13】の図示内容を総合すると、
擬似連ありのハズレとして、
擬似連変動1回の変動パターン「PA1-5」を選択確率(【図13】の決定値の割合からみて、「PA1-5」の選択確率/(「PA1-4」の選択確率+「PA1-5」の選択確率)により算出される。以下同様とする。)497/997で選択し得る変動パターン種別「CA1-6」の非リーチハズレと、
擬似連変動1回の変動パターン「PB2-1」を選択確率897/997で、擬似連変動2回の変動パターン「PB2-2」を選択確率100/997で、それぞれ、選択し得る変動パターン種別「CA2-2」のリーチハズレと、
擬似連変動3回の変動パターン「PA3-1」、「PA3-2」を、それぞれ、選択確率60/997、選択確率40/997で選択し得る変動パターン種別「CA2-3」のリーチハズレと
とが設定されている(以下「認定事項4-1」という。)。

同様にして、擬似連ありの非確変/確変大当りとして、
擬似連変動1回の変動パターン「PB4-1」を選択確率100/997で、擬似連変動2回の変動パターン「PB4-2」を選択確率897/997で、それぞれ、選択し得る変動パターン種別「CA3-2」の非確変/確変大当りと、
擬似連変動3回の変動パターン「PA5-1」を選択確率300/997で、「PA5-2」を選択確率630/997で、それぞれ、選択し得る変動パターン種別「CA3-3」の非確変/確変大当りとが設定されている(以下「認定事項4-2」という。)。

さらに、同様にして、擬似連ありの突確大当りとして、
擬似連変動1回の変動パターン「PC1-3」を選択確率361/997で選択し得る変動パターン種別「CA4-1」の突確大当りが設定されている(以下「認定事項4-3」という。)。

上記認定事項4-1と上記認定事項4-2とから、
擬似連変動3回は、「擬似連ありで非確変/確変大当り」となる場合、選択確率300/997、選択確率630/997で、それぞれ、選択可能であるのに対し、「擬似連ありのハズレ」の場合、選択確率60/997、選択確率40/997で、それぞれ、選択可能であり、
擬似連変動2回は、「擬似連ありで非確変/確変大当り」となる場合、選択確率100/997、選択確率897/997で、それぞれ、選択可能であるのに対し、「擬似連ありでハズレ」となる場合、選択確率100/997で選択可能であり、
擬似連変動1回は、「擬似連ありで非確変/確変大当り」となる場合、選択確率100/997で選択可能であり、「擬似連ありでハズレ」となる場合、選択確率497/997、選択確率897/997で選択可能であることが導かれる。
また、【0309】に、CPU103が、図37に示す変動パターン設定処理を実行することが記載されている。
さらに、【図37】に示す変動パターン設定処理において、変動パターン種別を決定する(S271)と共に、変動パターンを決定する(S273)ことが図示されている。
これらのことからみて、刊行物1には、擬似連ありで非確変/確変大当りとなる場合、擬似連ありでハズレとなる場合よりも、高い選択確率で多い繰返し回数を選択することが示されていると認められる。

また、上記認定事項4-3によると、刊行物1には、擬似連ありで突確大当りとなる場合、擬似連の繰返し回数として1回を選択可能であること、言い換えると、擬似連の繰返し回数が1回のとき、擬似連ありの突確大当りとなることが可能であることが示されていると認められる。

テ 上記ア?セの記載事項、及び、上記ソ?ツの認定事項から、刊行物1には、1段階から複数段階まで演出の態様が段階的に変化可能なステップアップ予告演出において実行される桜柄演出に関する実施の形態の基本構成とし(?【0500】)、その擬似連演出における桜柄演出に関する変形の形態(【0501】?【0507】)を中心構成として、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「a 複数種類の識別情報の可変表示を開始させた後に表示結果を導出表示し、導出表示された表示結果があらかじめ定められた特定表示結果(例えば、大当り図柄)となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(例えば、大当り遊技状態)に制御する遊技機であって(【0010】)、
b 特定表示結果とするか否かを決定する事前決定手段(例えば、CPU103によるステップS241を実行する部分)(【0010】)と、
c 飾り図柄の可変表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまでに飾り図柄表示エリアにて飾り図柄を一旦仮停止表示させた後、再び変動(擬似連変動)させる演出表示を、所定回(例えば最大3回まで)行う表示制御部123(【0057】、【0265】)と、
d 事前決定手段により特定表示結果とすると決定されたか否かに応じて、擬似連の可変表示演出において、桜柄演出を実行するかを決定し、実行する場合に、何回目の再変動において桜柄演出を実行するかの実行タイミングを決定する演出態様決定手段(例えば、演出制御用CPU120によるステップS511を実行する部分)(認定事項1)と、
を備え、
e 表示制御部123は、演出制御用CPU120からの表示制御指令に基づき、各種の演出表示を実行させるための制御を行い(【0265】)、
f 「擬似連」の可変表示演出による初回変動及び擬似連変動の一部において予告演出を実行する場合、どのタイミングで桜柄演出が実行されたかによって信頼度や確変期待度を異ならせ(【0505】)、
g 表示制御部123は、桜柄演出が実行されないときに通常演出を実行させるための制御を実行可能であり(認定事項2)、
h 桜柄演出は、通常演出とは色彩が異なる特定のデザインを使用した演出であり(【0070】)、
i 遊技者にとって有利な第1状態である開放状態と、遊技者にとって不利な第2状態である閉鎖状態とに変化する大入賞口を形成する大入賞口扉を備えた特別可変入賞球装置7を備え(【0033】、【0034】)、
j 特定遊技状態として、
特別可変入賞球装置7の大入賞口扉が、第1期間となる所定期間(例えば29秒間)あるいは所定個数(例えば9個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とする15ラウンド大当り状態と、
特別可変入賞球装置7を遊技者にとって有利な第1状態に変化させる期間(大入賞口扉により大入賞口を開放状態とする期間)が、15ラウンド大当り状態における第1期間よりも短い第2期間(例えば0.5秒間)となる2ラウンド大当り状態とがあり(【0045】、【0046】)、
k CPU103は、大当り種別が「非確変」や「確変」、「突確」のいずれであるかを特定し(【0309】)、「非確変」又は「確変」の大当り種別に割り当てられている決定値を示すテーブルデータは、15ラウンド大当り状態に制御するとの決定結果に対応する一方で、「突確」の大当り種別に割り当てられている決定値を示すテーブルデータは、2ラウンド大当り状態に制御するとの決定結果に対応し(【0125】)、
l 事前決定手段による特定表示結果とするか否かの決定に基づいて擬似連の実行回(1回?3回)を決定するCPU103(認定事項3)
を備え、
m CPU103は、擬似連ありで非確変/確変大当りとなる場合、擬似連ありでハズレとなる場合よりも、高い選択確率で多い繰返し回数(2回、3回)を選択し(認定事項4)、
n 擬似連の繰返し回数が1回のとき、擬似連ありの突確大当りとなることが可能である(認定事項4)
遊技機。」

4 対比
本願発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。
(a)刊行物発明における「遊技者にとって有利な特定遊技状態(例えば、大当り遊技状態)」は、本願発明における「遊技者にとって有利な有利状態」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成aの「遊技機」は、本願発明における構成Aの「遊技機」に相当する。

(b)刊行物発明は、構成aによると、「特定表示結果」となったときに「特定遊技状態」に制御されるものであるから、刊行物発明における「特定表示結果とするか否かを決定する」ことは、本願発明における「有利状態に制御するか否かを決定する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成bの「事前決定手段」は、本願発明における構成Bの「決定手段」に相当する。

(c)刊行物発明における「飾り図柄の可変表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまで」の時間は、本願発明における「変動表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまで」の時間に相当する。
そして、刊行物発明における「飾り図柄表示エリアにて飾り図柄を一旦仮停止表示させた後、再び変動(擬似連変動)させる演出表示」は、本願発明における「所定の演出表示」に相当する。
また、刊行物発明における「所定回(例えば最大3回まで)行う」ことは、本願発明における「所定回数繰り返し実行する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成cの「表示制御部123」は、本願発明における構成Cの「演出表示実行手段」に相当する。

(d)刊行物発明における「事前決定手段により特定表示結果とすると決定されたか否かに応じ」ることは、本願発明における「決定手段による決定に基づ」くことと技術的に同じである。
そして、刊行物発明における「擬似連の可変表示演出」、「桜柄演出を実行するかを決定」することは、それぞれ、本願発明における「演出表示実行手段によって実行される演出表示」、「特定演出を実行するか否かを決定する」ことに相当し、構成cによると、「擬似連変動」の「演出表示」は、「表示制御部123」により行われるものである。そうすると、刊行物発明における「擬似連の可変表示演出において、桜柄演出を実行するかを決定」することは、本願発明における「演出表示実行手段によって実行される演出表示において特定演出を実行するか否かを決定」することに相当する。
また、刊行物発明における「実行する場合に、何回目の再変動において桜柄演出を実行するかの実行タイミングを決定」することは、本願発明における「特定演出を実行する場合、いずれの回数目の演出表示において該特定演出を実行するかを決定」することに相当する。
したがって、刊行物発明における構成dの「演出態様決定手段」は、本願発明における構成Dの「特定演出決定手段」に相当する。

(e)刊行物発明において、「演出制御用CPU120からの表示制御指令」には、構成dの「演出制御用CPU120によるステップS511を実行する部分」である「演出態様決定手段」により特定される「何回目の再変動において桜柄演出を実行するかの実行タイミング」に関する指令が含まれることは明らかであり、刊行物発明において、「演出制御用CPU120からの表示制御指令に基づき」行われる「各種の演出表示を実行させるための制御」には、「桜柄演出」を「実行させるための制御」が含まれるといえる。
したがって、刊行物発明における構成eの「演出制御用CPU120からの表示制御指令に基づき、各種の演出表示を実行させるための制御を行」う「表示制御部123」は、本願発明における構成Eの「特定演出決定手段によって決定された回数目の演出表示において特定演出を実行」する「演出表示実行手段」に相当する。

(f)刊行物発明において、「どのタイミングで桜柄演出が実行され」るかは、構成dによると、「演出態様決定手段」が「事前決定手段により特定表示結果とすると決定されたか否かに応じて」決定して実行されるものである。
ここで、「信頼度」とは、大当り信頼度のことであり、大当りとなる確率のことであるから、刊行物発明において、「どのタイミングで桜柄演出が実行されたかによって信頼度や確変期待度を異ならせ」ることは、どのタイミングで桜柄演出を実行するかを、大当りとなるか否かに応じて異なる確率で決定することである。
そうすると、刊行物発明における「どのタイミングで桜柄演出が実行されたかによって信頼度や確変期待度を異ならせ」ることは、本願発明における「いずれの回数目の演出表示において該特定演出を実行するかを異なる割合で決定」することに相当する。
したがって、刊行物発明における構成fは、本願発明における構成Fに相当する。

(g)刊行物発明において、「桜柄演出が実行されないときに通常演出を実行させるための制御を実行可能」であることは、本願発明における「特定演出が実行されないときには通常演出を実行可能であ」ることに相当する。
したがって、刊行物発明における構成gは、本願発明における構成Gに相当する。

(h)刊行物発明における「通常演出とは色彩が異なる特定のデザインを使用した演出」は、本願発明における「通常演出の色彩を変更した演出」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成hは、本願発明における構成Hに相当する。

(i)刊行物発明における「遊技者にとって有利な第1状態である開放状態」、「遊技者にとって不利な第2状態である閉鎖状態」は、それぞれ、本願発明における「遊技媒体が入賞可能な第1状態」、「該第1状態よりも遊技媒体が」「入賞しない第2状態」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成iの「大入賞口を形成する大入賞口扉を備えた特別可変入賞球装置7」は、本願発明における構成Iの「可変入賞装置」に相当する。

(j)刊行物発明において、「2ラウンド大当り状態」が「15ラウンド大当り状態」に比べて、大入賞口の開放期間の短い不利な大当り状態といえる。
したがって、刊行物発明における「特別可変入賞球装置7の大入賞口扉が、第1期間となる所定期間(例えば29秒間)あるいは所定個数(例えば9個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とする15ラウンド大当り状態」、「特別可変入賞球装置7を遊技者にとって有利な第1状態に変化させる期間(大入賞口扉により大入賞口を開放状態とする期間)が、15ラウンド大当り状態における第1期間よりも短い第2期間(例えば0.5秒間)となる2ラウンド大当り状態」は、それぞれ、本願発明における「所定の態様で可変入賞装置を第2状態から第1状態に変化させる第1有利状態」、「第1有利状態よりも不利な態様で可変入賞装置を第2状態から第1状態に変化させる第2有利状態」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成jは、本願発明における構成Jに相当する。

(k)刊行物発明において、「事前決定手段」としての機能を有する「CPU103」は、「大当り種別が「非確変」や「確変」、「突確」のいずれであるかを特定」するものであって、大当り種別が「非確変」又は「確変」であることに「15ラウンド大当り状態」が対応し、大当り種別が「突確」であることに「2ラウンド大当り状態」が対応するものである。
そうすると、刊行物発明は、「CPU103」が、「特定表示結果とするか否かを決定する」(構成b)以外にも、「15ラウンド大当り状態」、「2ラウンド大当り状態」とするかをさらに決定するものといえる。
したがって、刊行物発明において、構成kの「事前決定手段」としての機能を有する「CPU103」は、本願発明における構成Kの「決定手段」としての機能を有するものである。

(l)刊行物発明における「擬似連の実行回(1回?3回)を決定する」ことは、本願発明における「演出表示の繰返し回数を複数種類のいずれかに決定する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成lの「CPU103」は、本願発明における構成Lの「繰返し回数決定手段」の機能を有するものである。

(m)刊行物発明における「擬似連ありで非確変/確変大当りとなる場合、擬似連ありでハズレとなる場合よりも、高い選択確率で多い繰返し回数(2回、3回)を選択する」ことは、本願発明における「決定手段により第1有利状態とすることが決定されたときに、有利状態としないことが決定されたときよりも、高い割合で多い繰返し回数を決定」することに相当する。
したがって、刊行物発明における構成mの「CPU103」は、本願発明における構成Mの「繰返し回数決定手段」の機能を有するものである。

(n)刊行物発明における「突確大当り」の遊技状態は、上記kによると、「2ラウンド大当り状態」が対応するものであり、さらに、上記jによると、刊行物発明における「2ラウンド大当り状態」は、本願発明における「第2有利状態」に相当する。そうすると、刊行物発明における「突確大当り」は、本願発明における「第2有利状態」に相当する。
そして、刊行物発明における「擬似連の繰返し回数が1回のとき、擬似連ありの突確大当りとなることが可能である」ことと、本願発明における「繰返し回数が少ないときには、第2有利状態となりやすい」こととは、前者において、擬似連ありの突確大当りとなる場合、擬似連の繰返し回数は1回となり、擬似連の繰返し回数は少ないといえ、一方、後者は、繰返し回数が少ないときには、第2有利状態となることが可能であるといえることからみて、「繰返し回数が少ないときには、第2有利状態となることが可能である」ことで共通するといえる。

したがって、刊行物発明における構成nの「擬似連の繰返し回数が1回のとき、突確大当りとなることが可能である」ことと、本願発明における構成Nの「繰返し回数が少ないときには、前記第2有利状態となりやすい」こととは、「繰返し回数が少ないときには、第2有利状態となることが可能である」ことで共通する。

上記(a)?(n)の対比から、本願発明と刊行物発明とは、
「A 変動表示を行ない表示結果を導出表示し、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と、
C 前記変動表示が開始されてから表示結果が導出表示されるまでに、所定の演出表示を所定回数繰り返し実行する演出表示実行手段と、
D 前記決定手段による決定に基づいて、前記演出表示実行手段によって実行される演出表示において特定演出を実行するか否かを決定するとともに、該特定演出を実行する場合、いずれの回数目の演出表示において該特定演出を実行するかを決定する特定演出決定手段と、
を備え、
E 前記演出表示実行手段は、前記特定演出決定手段によって決定された回数目の演出表示において前記特定演出を実行し、
F 前記特定演出決定手段は、前記決定手段により前記有利状態とすることが決定されたか否かに応じて、いずれの回数目の演出表示において該特定演出を実行するかを異なる割合で決定し、
G 前記演出表示実行手段によって実行される演出表示において、前記特定演出が実行されないときには通常演出を実行可能であり、
H 前記特定演出は、前記通常演出の色彩を変更した演出であり、
I 遊技媒体が入賞可能な第1状態と該第1状態よりも遊技媒体が入賞しにくいまたは入賞しない第2状態とに変化する可変入賞装置をさらに備え、
J 前記有利状態は、所定の態様で前記可変入賞装置を前記第2状態から前記第1状態に変化させる第1有利状態と、前記第1有利状態よりも不利な態様で前記可変入賞装置を前記第2状態から前記第1状態に変化させる第2有利状態と、を含み、
K 前記決定手段は、前記有利状態として、前記第1有利状態、または、前記第2有利状態とするかをさらに決定し、
L 前記決定手段による決定に基づいて、前記演出表示の繰返し回数を複数種類のいずれかに決定する繰返し回数決定手段をさらに備え、
M 前記繰返し回数決定手段は、前記決定手段により前記第1有利状態とすることが決定されたときに、前記有利状態としないことが決定されたときよりも、高い割合で多い繰返し回数を決定し、
N’繰返し回数が少ないときには、第2有利状態となることが可能である
遊技機。」
の点で一致し、構成Nに関し、次の点で相違する。

[相違点]
演出表示の繰返し回数と第2有利状態に関して、
本願発明は、繰返し回数が少ないときには、第2有利状態となりやすいのに対して、
刊行物発明は、擬似連の繰返し回数が1回(繰返し回数が少ない)のとき、突確大当り(本願発明の「第2有利状態」)となることが可能であるが、繰返し回数が少ないときには、第2有利状態となりやすいか明らかでない点。

5 当審の判断
上記相違点について検討する。
上記認定事項4の内容を踏まえると、前記認定事項4-3から、刊行物1には、「擬似連ありで突確大当りとなる場合、擬似連回数として1回を選択可能であり、擬似連変動1回が選択されるのは、変動パターン「PC1-3」が選択されたときであり、その選択確率は361/997であること」が示されている。
一方、上記認定事項4-2から、刊行物1には、擬似連ありで非確変/確変大当りとなる場合、擬似連回数として1回?3回を選択可能であり、擬似連変動1回が選択されるのは、変動パターン「PB4-1」が選択されたときであり、その選択確率は100/997であることが示されている。
したがって、刊行物1には、「擬似連ありで突確大当りとなる場合、擬似連ありで非確変/確変大当りとなる場合に比して、擬似連変動1回を高い確率で選択し、擬似連変動2回、3回を選択するのは、擬似連ありで非確変/確変大当りとなる場合のみである。」という技術事項が示されていると認められる。
そして、当該刊行物1に示された技術事項は、擬似連変動の回数が少ないとき、「非確変/確変大当り」となるよりも「突確大当り(本願発明の「第2有利状態」)」となりやすいことを示し、上記相違点に係る本願発明の構成に対応するものである。
また、刊行物1には、構成nに特定されるような、擬似連の繰返し回数が1回のとき、突確大当りとなることが可能であるものが記載されているといえる。

したがって、刊行物発明における擬似連の繰返し回数の決定に上記刊行物1に示された技術事項を適用して、擬似連の繰返し回数が少ないときには、非確変/確変大当りよりも突確大当りとなりやすくし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

ところで、請求人は、平成29年3月27日付け意見書において、「刊行物1には、ステップアップ予告演出におけるステップ数に応じて、「15R確変大当り」や「2R確変大当り」となることを予告することが開示されていますが、ステップアップ予告演出におけるステップ数が少ないときに、「2R確変大当り」となりやすいことは開示されていません。
即ち、刊行物1は、「繰返し回数が少ないときには、前記第2有利状態となりやすい」という請求項1に係る発明の特徴が開示されていません。
請求項1に係る発明は、このような特徴を有することで、演出表示の繰り返し回数が少ない場合でも、遊技者に期待感を持たせることができます。」(第2頁第17?24行)と主張する。
しかしながら、刊行物1には、上記したように、変動パターンを例示する【図7】、変動パターン種別を例示する【図8】、変動パターン決定テーブルの構成例を示す【図13】の図示内容からみて、ステップアップ予告演出以外にも、「擬似連」の可変表示演出について、「擬似連ありで突確大当りとなる場合、擬似連ありで非確変/確変大当りとなる場合に比して、擬似連変動1回を高い確率で選択」するという技術事項が開示されている。
そして、当該技術事項は、上記において検討したように、本願発明の構成Nに相当するものであることに加え、演出表示の繰り返し回数が少ない場合でも、遊技者に確変になることの期待感を持たせることができるという効果を奏することは明らかである。
したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。

また、本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明及び刊行物1に記載された技術事項から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別のものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-22 
結審通知日 2017-05-23 
審決日 2017-06-05 
出願番号 特願2011-208181(P2011-208181)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 長崎 洋一
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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