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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1330716
審判番号 不服2015-22616  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-24 
確定日 2017-08-15 
事件の表示 特願2013-512977「流れる条片の塗膜層の厚さを測定する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日国際公開、WO2011/151585、平成25年 6月27日国内公表、特表2013-527466、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年5月30日(パリ条約による優先権主張 2010年5月31日(以下、「優先日」という。) 仏国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月2日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月9日付けで誤訳訂正がなされたが、平成27年8月17日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成27年12月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成28年9月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知されるとともに特許庁長官名による同一出願人による同日出願に係る指令書が通知され、平成29年3月21日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明19」という。)は、平成29年3月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-19に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
渦電流を用いるセンサにより、流れる条片の少なくとも1つのエリアで、塗膜層の厚さを表す数量が測定され、このエリアの前記塗膜層の厚さは、測定された前記数量と少なくとも1つの較正値から決定される、流れる条片の塗膜材料層の厚さを測定する方法において、
渦電流センサを用いて行われる前記測定は、低励起周波数及び高励起周波数で前記流れる条片に面するコイルの複素インピーダンスの測定と、前記複素インピーダンス測定からの前記塗膜層の厚さを表す数量の生成とを含み、
少なくとも1つの前記較正値は、渦電流センサを用いる前記測定が実行されるエリアの条片の少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて前記条片の前記塗膜層の厚さ測定を実行することにより決定されることを特徴とする、方法。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭61-102504号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「それ故に本発明が本質的に特徴としていることは、導電性の素地の上に析出された金属薄層の厚さが、交番電圧によって励磁された磁気回路を、金属表面に近づけた時に現われるうず電流によって生ずる、ジュール効果に対応する損失の測定から決められることである。」(第3頁左上欄第1?6行)

b 「ここに、
P: ジュール効果による損失
H_(T)^(2): 導電性の金属表面上の平均の磁界
ω: 励磁の脈動
μ: 透磁率
ρ: 抵抗率
K: 定数
とする。
特性μとρとを有する素地上に析出した、厚さeで特性μdとρdとを示す金属層dについて、損失は次式によって表される。(略)p=KH_(T)^(2) √(ωμdρd) (1)」(第3頁左上欄第10行?第3頁右上欄第6行)

c 「ジュール効果による損失を表す式(1)中の定数Kは、ある与えられた磁気回路に対して、厚さ既知の一連の試料から実験によって規定される。」(第3頁右上欄第7?9行)

d 「センサ10は、帯Bからある距離をおいて置かれており、共通巻線12を含んでいて交番電圧で励磁される磁気回路を包含し、測定用磁束φと対照磁束φ0とを発生する。信号はφ-φ0を感知する差動巻線14の端子で集められる。該センサについて、励磁と直角位相にある信号成分はジュール効果による損失Pに対応し、その測定によって帯Bの上に析出した薄い被覆の厚さを測定することができ、また同位相にある信号成分は磁気抵抗に対応し、それを測定することによって、公知のように、センサと帯Bの金属表面との間の距離を決定するのに使うことができる。」(第4頁左上欄第2?14行)

e 「第6図の略図では、本発明によるセンサC1とC2とを、溶融亜鉛メッキ浴から出てくる帯Bの両側に置く方法を示している。」(第4頁右上欄第6?8行)

上記a?eより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「センサC1とC2とを、溶融亜鉛メッキ浴から出てくる帯Bの両側に置き(上記e)、
センサ10は、帯Bからある距離をおいて置かれており、共通巻線12を含んでいて交番電圧で励磁される磁気回路を包含し、測定用磁束φと対照磁束φ0とを発生し、信号はφ-φ0を感知する差動巻線14の端子で集められ、該センサについて、励磁と直角位相にある信号成分は、うず電流によって生ずるジュール効果による損失Pに対応し、その測定によって帯Bの上に析出した薄い被覆の厚さを測定することができ(上記a、d)、
ここに、
P: ジュール効果による損失
H_(T)^(2): 導電性の金属表面上の平均の磁界
ω: 励磁の脈動
μ: 透磁率
ρ: 抵抗率
K: 定数
とすると、
特性μとρとを有する素地上に析出した、厚さeで特性μdとρdとを示す金属層dについて、損失は式(1)によって表され、
式(1) p=KH_(T)^(2) √(ωμdρd)(上記b)、
ジュール効果による損失を表す式(1)中の定数Kは、ある与えられた磁気回路に対して、厚さ既知の一連の試料から実験によって規定される(上記c)、方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開昭59-9552号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「第2図は多周波法を使用する従来公知の多周波渦流探傷装置の回路を示すブロック図である。図において1は周波数f1(例えば100kHz)の発振器、2は周波数f2(例えば500kHz)の発振器であり、両発振器1,2の出力は混合器3にて混合され、平衡器4を介して自己比較方式の配置とした検出コイル12,12′に印加され、そのインピーダンス変化を表す信号が平衡器4から同調増幅器7,8へ入力される。・・・そして欠陥信号が存在する場合はB1,B2(ベクトルを表わす)の差のbが得られることになる。」(第2頁左下欄第9行?第3頁左上欄第16行)

上記記載より、引用文献2には、次の周知の技術が記載されている。
「低周波数及び高周波数の発振器の出力を検出コイルに印加し、そのインピーダンス変化から、欠陥信号の存在を検出する、多周波法を使用する多周波渦流探傷装置。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2000-227422号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属被検体に交流磁界を印加し、それによって発生する渦電流に起因する磁場の、金属被検体の内部に存在する欠陥による変動を金属被検体の表面近傍に配置された磁気センサで検出することによって、欠陥を探傷する渦流探傷方法に関するものであり、さらに詳しくは、欠陥の検出性能(S/N比)を向上させた渦流探傷法に関するものである。」

b 「【0025】たとえば、渦流プローブ5aを励磁する交流電源6aの周波数f1は低く、渦流プローブ5bを励磁する交流電源6bの周波数f2は高くしておく。これにより、渦流プローブ5aからは、薄鋼板1の表面近傍から発生するノイズと共に、内部欠陥8によって発生する信号が検出される。それに対し、渦流プローブ5bからは、内部欠陥8によって発生する信号は検出されないか検出されても小さく、主として薄鋼板1の表面近傍から発生するノイズが検出される。」

上記記載より、引用文献3には、次の周知の技術が記載されている。
「周波数の低い渦流プローブからは、薄鋼板の内部欠陥によって発生する信号が検出され、周波数の高い渦流プローブからは、薄鋼板の表面近傍から発生するノイズが検出される、欠陥を探傷する渦流探傷方法。」

4 引用文献5について
原査定の備考欄で引用されためっきの厚さ試験方法,日本工業規格 JIS H8501:1999,日本,(財)日本規格協会 ,1999年には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「13.蛍光X線式試験方法
13.1 要旨 蛍光X線厚さ測定装置を用いて,試料にX線を照射し,めっきから放射される蛍光X線量を測定して,めっきの厚さを求める試験方法である。蛍光X線式試験方法の測定上の注意事項を附属書3(参考)に示す。
備考 金属素地上又は非金属素地上のめっきの厚さを,非破壊的に測定することができる。
13.2 装置 蛍光X線厚さ測定装置は,波長分散形とエネルギー分散形の両形式の装置がある。この装置の構成の一例を図6a)及びb)に示す。エネルギー分散形の場合には,備付けの検出器が比例計数管検出器か,半導体検出器かのいずれであるかによって,それぞれ測定可能な素地とめっきとの組合せが一部異なる。形式の差によって測定することができる素地とめっきとの組合せの代表例を表5に示す。」(「めっきの厚さ試験方法」の「13.蛍光X線式試験方法」欄)

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「センサC1とC2」は、「励磁と直角位相にある信号成分は、うず電流によって生ずるジュール効果による損失Pに対応し、その測定によって帯Bの上に析出した薄い被覆の厚さを測定する」ので、本願発明1の「渦電流を用いるセンサ」に相当する。

イ 引用発明は「励磁と直角位相にある信号成分は、うず電流によって生ずるジュール効果による損失Pに対応し、その測定によって帯Bの上に析出した薄い被覆の厚さを測定することができ」るので、引用発明の「励磁と直角位相にある信号成分」に対応する「損失P」は、本願発明1の「塗膜層の厚さを表す数量」に相当するといえるので、
引用発明の「センサC1とC2とを、溶融亜鉛メッキ浴から出てくる帯Bの両側に置き、」「励磁と直角位相にある信号成分は、うず電流によって生ずるジュール効果による損失Pに対応し、その測定によって帯Bの上に析出した薄い被覆の厚さを測定する」ことは、本願発明1の「渦電流を用いるセンサにより、流れる条片の少なくとも1つのエリアで、塗膜層の厚さを表す数量が測定され」に相当する。

ウ 引用発明のジュール効果による損失を表す式(1)中の「定数K」は、「ある与えられた磁気回路に対して、厚さ既知の一連の試料から実験によって規定される」のであるから、本願発明1の「較正値」に相当するといえる。
そして、引用発明は「損失P」と「定数K」から、「式(1) p=KH_(T)^(2) √(ωμdρd)」により厚さが決定されるので、
引用発明の「励磁と直角位相にある信号成分は、うず電流によって生ずるジュール効果による損失Pに対応し、その測定によって帯Bの上に析出した薄い被覆の厚さを測定することができ、」「ジュール効果による損失を表す式(1)中の定数Kは、ある与えられた磁気回路に対して、厚さ既知の一連の試料から実験によって規定される、方法」は、本願発明1の「このエリアの前記塗膜層の厚さは、測定された前記数量と少なくとも1つの較正値から決定される、流れる条片の塗膜材料層の厚さを測定する方法」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「渦電流を用いるセンサにより、流れる条片の少なくとも1つのエリアで、塗膜層の厚さを表す数量が測定され、このエリアの前記塗膜層の厚さは、測定された前記数量と少なくとも1つの較正値から決定される、流れる条片の塗膜材料層の厚さを測定する方法。」

(相違点1)
本願発明1は、「渦電流センサを用いて行われる前記測定は、低励起周波数及び高励起周波数で前記流れる条片に面するコイルの複素インピーダンスの測定と、前記複素インピーダンス測定からの前記塗膜層の厚さを表す数量の生成とを含」むのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(相違点2)
本願発明1は、「少なくとも1つの前記較正値は、渦電流センサを用いる前記測定が実行されるエリアの条片の少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて前記条片の前記塗膜層の厚さ測定を実行することにより決定される」のに対して、引用発明の「定数K」は、磁気回路に対して、厚さ既知の一連の試料から実験によって規定されるが、「定数K」を、渦電流センサを用いる測定が実行される少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて塗膜層の厚さ測定を実行することにより決定することは、特定されていない点。

(2)判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用発明のセンサ10は、共通巻線12を含んでいて交番電圧で励磁される磁気回路を包含し、測定用磁束φと対照磁束φ0とを発生し、信号はφ-φ0を差動巻線14の端子で集め、励磁と直角位相にある信号成分を測定するものであるが、磁気回路を励磁する「交番電圧」が、「低励起周波数及び高励起周波数」であることは記載されていない。

一方、引用文献2には、低周波数及び高周波数の発振器の出力を検出コイルに印加し、そのインピーダンス変化から、欠陥信号の存在を検出する、周知の多周波法を使用する多周波渦流探傷装置が記載されており(上記「第3 2」)、引用文献3には、周波数の低い渦流プローブからは、薄鋼板の内部欠陥によって発生する信号が検出され、周波数の高い渦流プローブからは、薄鋼板の表面近傍から発生するノイズが検出される、欠陥を探傷する周知の渦流探傷方法が記載されている(上記「第3 3」)。
しかしながら、引用文献2及び3には、渦電流センサを用いて行われる測定が、低励起周波数及び高励起周波数で流れる条片に面するコイルの複素インピーダンスの測定と、前記複素インピーダンス測定からの塗膜層の厚さを表す数量の生成をすることは記載されていない。
また、引用文献5においても、渦電流センサを用いて行われる測定が、低励起周波数及び高励起周波数で流れる条片に面するコイルの複素インピーダンスの測定と、前記複素インピーダンス測定からの塗膜層の厚さを表す数量の生成をすることは記載されていない。
したがって、引用発明において、「交番電圧」を、「低励起周波数及び高励起周波数」として、低周波数及び高周波数の測定用磁束φと対照磁束φ0とを発生し、低周波数及び高周波数の信号成分の複素インピーダンス測定によって、励磁と直角位相にある信号成分を測定することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2、3、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

イ 上記相違点2について検討する。
引用発明のジュール効果による損失を表す式(1)中の定数Kは、磁気回路に対して、厚さ既知の一連の試料から実験によって規定されるが、「定数K」を、センサを用いる測定が実行される少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて被膜の厚さ測定を実行することにより決定することは記載されていない。

一方、引用文献5には、蛍光X線厚さ測定装置を用いて、めっきの厚さを求める周知の試験方法が記載されているが(上記「第3 4」)、渦電流センサを用いる測定が実行されるエリアの条片の少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて前記条片の記塗膜層の厚さ測定を実行することにより、較正値を決定することは記載されていない。
また、引用文献2及び3においても、X蛍光厚さゲージについて記載されていないので、引用発明において、「定数K」を、センサを用いる測定が実行される少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて被膜の厚さ測定を実行することにより決定することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2、3、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

ウ よって、本願発明1は、引用発明、引用文献2、3、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明1を引用する本願発明2は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、引用発明、引用文献2、3、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明3-14について
本願発明1を引用する本願発明3-14は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明15-19について
本願発明1を引用する本願発明15-19は、本願発明1の方法を実行するための装置又は当該装置を備える設備の発明であるから、引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1について上記引用文献1-3、5に基づいて、請求項2-19について上記引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

しかしながら、平成29年3月21日付け手続補正により補正された請求項1-19は、「渦電流センサを用いて行われる前記測定は、低励起周波数及び高励起周波数で前記流れる条片に面するコイルの複素インピーダンスの測定と、前記複素インピーダンス測定からの前記塗膜層の厚さを表す数量の生成とを含み、少なくとも1つの前記較正値は、渦電流センサを用いる前記測定が実行されるエリアの条片の少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて前記条片の前記塗膜層の厚さ測定を実行することにより決定されること」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1は、引用発明、引用文献2、3、5に記載された事項に基づいて、本願発明2-19は、引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第39条第2項について
当審では、本願の請求項1-19に係る発明は、それぞれ、特願2015-251590号(以下、「同日出願」という。)の請求項1、4-21に係る発明と同一であるとの拒絶の理由を通知しているが、同日出願の請求項1が、平成29年6月16日付けの補正において、
「【請求項1】
渦電流を用いるセンサにより、流れる条片の少なくとも1つのエリアで、塗膜層の厚さを表す数量が測定され、このエリアの前記塗膜層の厚さは、測定された前記数量と少なくとも1つの較正値から決定される、流れる条片の塗膜材料層の厚さを測定する方法において、
渦電流センサを用いて行われる前記測定は、低励起周波数及び高励起周波数で前記流れる条片に面するコイルの複素インピーダンスの測定と、前記複素インピーダンス測定からの前記塗膜層の厚さを表す数量の生成とを含み、
少なくとも1つの前記較正値は、渦電流センサを用いる前記測定が実行される前記条片のエリアの少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて前記塗膜層の厚さ測定を実行することにより決定され、
ここで、前記複素インピーダンス測定からの前記塗膜層の厚さを表す数量を生成する段階が、高周波数及び低周波数で測定された複素インピーダンスからの補償された複素インピーダンスのmodulus Mの計算を含むか、または、渦電流センサが、測定ヘッド(50)を含み、該測定ヘッド(50)は、流れる条片に面して配置される第1のコイル(51)と、第1のコイルと同一であり、第1のコイル(51)に対向して位置決めされる第2のコイル(52)とを含み、これらの両コイルは、伝熱樹脂からなるブロック(54)内に含まれることを特徴とする、方法。」と補正された結果(下線は、補正箇所を示す。)、この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1の「少なくとも1つの前記較正値は、渦電流センサを用いる前記測定が実行されるエリアの少なくとも1つの点で、X蛍光厚さゲージを用いて前記塗膜層の厚さ測定を実行することにより決定されること」という点は、流れている条片の塗膜層の厚さの測定を、十分に高速で正確に行うという課題が解決していないこととなるので、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、
平成29年3月21日付けで提出された意見書の「少なくとも1つの較正値の決定のために、X蛍光厚さゲージを用いて測定される(測定の対象である)「条片」については、流れる条片の測定であるいわゆるオンライン測定だけでなく、予め条片を測定するいわゆるオフライン測定も可能であるため([0088]、[0089]及び[0071]の記載等をご参照ください)」「本願発明の方法は、(測定を非常に短い時間に行うことができるが、相対的な測定、すなわち較正の必要がある塗膜層の厚さが得られる)渦流センサでの測定と、(測定時間はやや遅いがより正確に測定できる)X蛍光厚さゲージでの(オンライン又はオフラインでの)測定とを組み合わせることにより(段落[0056]をご参照)、流れている条片の塗膜層の厚さを十分に高速で正確に測定できるものです(段落[0070]をご参照)。」との記載を参酌した結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、引用発明、引用文献2、3、5に記載された事項に基づいて、本願発明3-19は、引用発明、引用文献2-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-31 
出願番号 特願2013-512977(P2013-512977)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01B)
P 1 8・ 537- WY (G01B)
P 1 8・ 4- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 堀 圭史神谷 健一  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
須原 宏光
発明の名称 流れる条片の塗膜層の厚さを測定する方法及び装置  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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