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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1330904
審判番号 不服2016-12655  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-23 
確定日 2017-08-22 
事件の表示 特願2012- 56726号「熱交換器保護構造」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-224327、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月14日(優先権主張平成23年4月4日)の出願であって、平成27年8月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成29年4月13日付けで当審において拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであり、特に後記「第4」に示した本願発明1に対応する請求項1に係る発明については、引用文献1及び引用文献2に記載されている事項から当業者が容易に発明をすることができたというものである。

<引用文献一覧>
引用文献1 特開2002-286392号公報
引用文献2 米国特許出願公開第2008/0308333号明細書
引用文献3 特開2002-168584号公報
引用文献4 特開2006-205987号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、以下の理由である。
[理由]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。



1.請求項2は請求項1を引用しているところ、請求項1に係る発明の「取付部」と請求項2に係る発明の「取付ピン」及び「嵌合部」の関係が明らかでないので不明確である。
2.請求項3に係る発明の「車両前後方向からそれぞれ係合する」の技術的意味が不明確である。
3.請求項4は請求項2を引用しているところ、請求項2に係る発明は「ピン取付部」を特定事項としているので、請求項4に係る発明は、上記「ピン取付部」及び「取り外し用取手部」を特定事項として含むことになるが、そのような実施態様は、本願明細書及び各図面全体をとおしてみても記載されていないから、請求項4に係る発明は、特定することができず、不明確となっている。
4.請求項4に係る発明の「前記取付ピンに、前記嵌合部と前記熱交換器との間に抜き用の隙間を設けるか」との特定事項は不明確である。

第4 本願発明
この出願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成29年6月15日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりの発明であるところ、本願発明1は以下のとおりの発明であると認められる。

「【請求項1】
それぞれ係合孔が形成された支持部を設けたアッパ・メンバおよびロア・メンバを有する熱交換器支持メンバと、
前記アッパ・メンバおよび前記ロア・メンバに、前記係合孔に挿入した取付ピンを介して、支持される熱交換器と、
を備えた熱交換器保護構造において、
前記取付ピンを前記熱交換器とは別体にて構成して前記熱交換器に取り付け、
前記取付ピンには、これに所定以上の外力が作用した場合に前記取付ピンが前記支持部にて破断し前記熱交換器を前記支持部に対して相対移動可能にする脆弱部を設け、
前記取付ピンは、前記熱交換器への取付部から前記熱交換器から離れる方向に伸びるピン部を有し、
前記取付部への前記ピン部の付け根部近傍に前記脆弱部が形成され、
前記ピン部は、中空部を有し、
前記中空部の少なくとも一部が、前記脆弱部に対して前記ピン部の軸方向で重なる、
ことを特徴とする熱交換器保護構造。」

なお、本願発明2ないし5は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下同様。)

1-1.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラジエータや空調用コンデンサ等の車両用熱交換器の支持構造に関する。」

1-2.「【0008】
【発明の実施の形態】図1?図7により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる車両用熱交換器の支持構造を示す車両フロント部の斜視図(斜め前方から見た図)である。エンジンルームの最前部にはコンデンサ1が配置され、その後方にラジエータ(不図示)が配置される。コンデンサ1の左右端部には、一対のエアガイド2が取り付けられ、エアガイド2とコンデンサ1の上部および下部はアッパパネル4およびロアパネル5を介して車体フレーム6(一部のみ図示)から支持されている。この支持部の構造は後述する。エアガイド2の前方には、フロントバンパーの内部に設けられるレインフォース部材3(以下、バンパーレインフォース)が配置されている。なお、エアガイド2にはバンパーレインフォース3との干渉をさけるための切り欠き部2aが形成されている。
【0009】図2は、コンデンサ1とエアガイド2の要部斜視図であり、図3(a)は図2の矢視a図(前方から見た図)、図3(b)は図2のb-b線断面図、図3(c)は図2の矢視c図(上方から見た図)である。図2,3に示すように、エアガイド2は、コンデンサ1のヘッダパイプ1aを支持する支持部20と支持部20の側端部から前方に連なる平板部21とからなる。支持部20の上面には円形断面を有する円形ピン22が上方に向かって突設され、支持部20の下面には矩形断面を有する矩形ピン23が下方に向かって突設されている。」

1-3.「【0011】一体化したコンデンサ1とエアガイド2は図4に示すようにアッパパネル4およびロアパネル5に取り付ける。すなわち、まず、略ボックス状のマウントゴム27を介して、ロアブラケット5に設けられた矩形穴5aに矩形ピン23を挿入する。次いで、略円筒状のマウントゴム26を介し、アッパブラケット4に設けられた円形穴4aを円形ピン22に挿入する。最後に、図1に示すようにアッパパネル4をボルト7によって車体フレーム6に締結し、これによりコンデンサ1とエアガイド2がマウントゴム26,27を介してアッパパネル4およびロアパネル5に挟持される。
【0012】次に、図5?7を用いて本実施の形態の動作を説明する。なお、図5は衝突前および衝突後のコンデンサ1およびエアガイド2の変形状態を示す図であり、図6はエアガイド2の下部の変形状態を示す図(図4の矢視VI図)、図7はエアガイド2の上部の変形状態を示す図(図4の矢視VII図)である。車両軽衝突前において、車室外からの空気はフロントマフラーの開口部(不図示)を介して車両前方からエンジン室に取り込まれ、エアガイド2によってコンデンサ1に導かれて、さらにその後方のラジエータを通過する。これにより、コンデンサ1で空気と冷媒が熱交換され、ラジエータで空気と冷却水が熱交換される。この場合、前述したように、コンデンサ1とエアガイド2の前後方向の隙間Lが小さいので、エアガイド2による導風効果が高く、エンジン室内に導入された外気は効率よくコンデンサ1、ラジエータに導かれるとともに、コンデンサ1の後流側からの熱気の吹き返しが抑えられ、熱交換効率が向上する。」

1-4.「【0013】フロントバンパーが車両前方部の障害物と軽衝突すると、バンパーレインフォース3が後退し、エアガイド2の切り欠き部2aには後方への衝撃荷重Fが作用する。ここで、切り欠き部2aは、エアガイド支持用の円形ピン22および矩形ピン23よりも車幅方向左右外側に設けられているため、衝撃荷重Fはピン22,23を支点にした水平方向曲げ荷重となる。この場合、円形ピン22はアッパパネル4に対して水平方向に回転可能であるため、図5に示すように、エアガイド2はピン22を支点にして相対回転する。一方、矩形ピン23はロアパネル5に対して水平方向に回転不能であるため、曲げ荷重によってピン23には水平方向のねじり力が作用し、ねじり力が矩形ピン23の破断強度を上回ると、図6に示すように矩形ピン23が破断する。この場合、矩形ピン23の取り付け部周辺にはスリット2sが設けられ、ピン23の強度が下げられている。その結果、衝撃荷重Fによってコンデンサ1が破損する前に矩形ピン23が破断する。」

1-5.「【0015】このように本実施の形態によると、コンデンサ1とエアガイド2を一体化するとともに、エアガイド2の上下面にそれぞれ円形ピン22および矩形ピン23を突設し、エアガイド2の前側の切り欠き部2aでフロントバンパーからの衝撃荷重を受けるようにした。これにより、軽衝突時に、ピン22,23を支点にしてエアガイド2に水平方向の曲げ荷重が作用し、矩形ピン23が破断してコンデンサ1が後方に退避される。その結果、コンデンサ1の破損が防止されるので、フロントバンパーとコンデンサ1との距離を狭めることができ、フロントオーバーハングを小さくすることができる。この場合、ピン23を矩形断面としたので、ねじり力によってピン23を容易に破断することができる。」

以上の記載事項から次の事項が認定できる。
1-6.記載事項1-2.の【0009】の記載内容及び【図4】の図示内容から、一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23を、前記一対のエアガイド2がコンデンサ1の左右端部に取り付けられることで、 前記コンデンサ1に取り付けていること、及び前記一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23は、前記コンデンサ1へ取り付けられる前記支持部20から前記コンデンサ1から離れる方向に伸びていることが理解できる。

これら記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「それぞれ円形穴4aおよび矩形穴5a設けたアッパブラケット4およびロアブラケット5と、
前記アッパブラケット4および前記ロアブラケット5に、前記円形穴4aおよび矩形穴5aに挿入した、一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23を介して、支持されるコンデンサ1と、
を備えた車両用熱交換器の支持構造において、
前記一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23を、前記一対のエアガイド2が前記コンデンサ1の左右端部に取り付けられることで、前記コンデンサ1に取り付け、
前記矩形ピン23の取り付け部周辺の前記支持部20には、これに破断強度を上回る水平方向のねじり力が作用すると破断して前記コンデンサ1が後方に退避する矩形ピン23の強度を下げるためのスリット2sを設け、
前記一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23は、前記コンデンサ1へ取り付けられる前記支持部20から前記コンデンサ1から離れる方向に伸びるものである車両用熱交換器の支持構造。」

2.引用文献2について
原査定で引用された引用文献2の段落[0019]ないし段落[0021]の記載内容並びにFIG.7及びFIG.8の図示内容によれば、引用文献2には、次の事項が記載されている。
「衝撃による損傷を防止するエンジン冷却用ラジエタ32の支持構造において、クリップ38をエンジン冷却用ラジエタ32とは別体にて構成してエンジン冷却用ラジエタ32のポスト36に取り付け、前記クリップ38を棚部46に形成されたアイレット44に挿入し、軽衝突時には前記クリップ38がアイレット44から逃げ用の開口部66に押し出されてエンジン冷却用ラジエタ32を後方に移動させること。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「円形穴4aおよび矩形穴5a」は前者の「係合孔」に相当する。後者の「アッパブラケット4およびロアブラケット5」は前者の「アッパ・メンバおよびロア・メンバ」に相当する。そして、後者の「コンデンサ1」は、記載事項(1-3)の段落【0012】の「コンデンサ1で空気と冷媒が熱交換され」との記載からみて熱交換器といえるところ、後者の「アッパブラケット4およびロアブラケット5」は、「円形穴4aおよび矩形穴5a」に「円形ピン22および矩形ピン23」を介して、「コンデンサ1」を支持するものであるから「コンデンサ1」の支持メンバといえる。
そうすると、後者の「それぞれ円形穴4aおよび矩形穴5a設けたアッパブラケット4およびロアブラケット5」は、前者の「それぞれ係合孔が形成された支持部を設けたアッパ・メンバおよびロア・メンバを有する熱交換器支持メンバ」に相当する。

前者の「取付ピン」は、前者の「前記取付ピンは、前記熱交換器への取付部から前記熱交換器から離れる方向に伸びるピン部を有し」との特定事項によれば「取付部」と「ピン部」を有しているところ、後者の「前記一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23を、前記一対のエアガイド2が前記コンデンサ1の左右端部に取り付けられることで、 前記コンデンサ1に取り付け」るとの構成によれば、後者の「一対のエアガイド2の支持部20」は、「コンデンサ1」に取り付けられるものであるから前者の「取付部」に相当し、後者の「円形ピン22および矩形ピン23」は前者の「ピン部」に相当し、後者の「一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23」は前者の「取付ピン」に相当する。
そうすると、後者の「前記アッパブラケット4および前記ロアブラケット5に、前記円形穴4aおよび矩形穴5aに挿入した、一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23を介して、支持されるコンデンサ1」は、前者の「前記アッパ・メンバおよび前記ロア・メンバに、前記係合孔に挿入した取付ピンを介して、支持される熱交換器」に相当する。

後者の「車両用熱交換器の支持構造」は、「コンデンサ1の破損が防止される」(記載事項(1-5)を参照。)との機能を有するから、前者の「熱交換器保護構造」に相当する。

後者の「前記一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23を、前記一対のエアガイド2が前記コンデンサ1の左右端部に取り付けられることで、 前記コンデンサ1に取り付け」は、「支持部20」と「コンデンサ1」とが別体であることは明らかであるから、前者の「前記取付ピンを前記熱交換器とは別体にて構成して前記熱交換器に取り付け」に相当する。

後者の「破断強度を上回る水平方向のねじり力が作用すると破断して前記コンデンサ1が後方に退避する矩形ピン23の強度を下げるためのスリット2s」は前者の「これに所定以上の外力が作用した場合に前記取付ピンが前記支持部にて破断し前記熱交換器を前記支持部に対して相対移動可能にする脆弱部」に相当するところ、後者の「前記矩形ピン23の取り付け部周辺の前記支持部20には、これに破断強度を上回る水平方向のねじり力が作用すると破断して前記コンデンサ1が後方に退避するピン23の強度を下げるためのスリット2sを設け、 前記一対のエアガイド2の支持部20に突設された円形ピン22および矩形ピン23は、前記コンデンサ1へ取り付けられる前記支持部20から前記コンデンサ1から離れる方向に伸びるものである」と、
前者の「前記取付ピンには、これに所定以上の外力が作用した場合に前記取付ピンが前記支持部にて破断し前記熱交換器を前記支持部に対して相対移動可能にする脆弱部を設け、 前記取付ピンは、前記熱交換器への取付部から前記熱交換器から離れる方向に伸びるピン部を有し、前記取付部への前記ピン部の付け根部近傍に前記脆弱部が形成され、前記ピン部は、中空部を有し、前記中空部の少なくとも一部が、前記脆弱部に対して前記ピン部の軸方向で重なる」とは、
「前記取付ピンには、これに所定以上の外力が作用した場合に前記取付ピンが前記支持部にて破断し前記熱交換器を前記支持部に対して相対移動可能にする脆弱部を設け、前記取付ピンは、前記熱交換器への取付部から前記熱交換器から離れる方向に伸びるピン部を有」するという限度で共通する。

そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「それぞれ係合孔が形成された支持部を設けたアッパ・メンバおよびロア・メンバを有する熱交換器支持メンバと、
前記アッパ・メンバおよび前記ロア・メンバに、前記係合孔に挿入した取付ピンを介して、支持される熱交換器と、
を備えた熱交換器保護構造において、
前記取付ピンを前記熱交換器とは別体にて構成して前記熱交換器に取り付け、
前記取付ピンには、これに所定以上の外力が作用した場合に前記取付ピンが前記支持部にて破断し前記熱交換器を前記支持部に対して相対移動可能にする脆弱部を設け、
前記取付ピンは、前記熱交換器への取付部から前記熱交換器から離れる方向に伸びるピン部を有する熱交換器保護構造。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明1は、「前記取付部への前記ピン部の付け根部近傍に前記脆弱部が形成され、前記ピン部は、中空部を有し、前記中空部の少なくとも一部が、前記脆弱部に対して前記ピン部の軸方向で重なる」のに対し、
引用発明は、「前記矩形ピン23の取り付け部周辺の前記支持部20には、」「スリット2sを設け」るものであり、かかる「脆弱部」の構成を有していない点。

(2)相違点についての判断
引用文献2には、上述したように、「衝撃による損傷を防止するエンジン冷却用ラジエタ32の支持構造において、複数の指部を有する中空部を有するクリップ38をエンジン冷却用ラジエタ32とは別体にて構成してエンジン冷却用ラジエタ32のポスト36に取り付け、前記クリップ38を棚部46に形成されたアイレット44に挿入し、軽衝突時には前記クリップ38がアイレット44から逃げ用の開口部66に押し出されてエンジン冷却用ラジエタ32を後方に移動させること」が記載されている。(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。)
ここで、引用文献2に記載されている事項の「衝撃による損傷を防止するエンジン冷却用ラジエタ32の支持構造」、「クリップ38」、「棚部46」及び「アイレット44」は、本願発明1の「熱交換器保護構造」、「取付ピン」、「熱交換器支持メンバ」及び「係合孔」に相当するところ、引用文献2に記載されている事項には、本願発明1の「脆弱部」に対応する構成として、「複数の指部を有する中空部を有するクリップ38」が「衝突時には前記クリップ38がアイレット44から逃げ用の開口部66に押し出され」る構成が特定されている。そして、本願発明1の「取付ピン」の「ピン部」と引用文献2に記載されている事項の「クリップ38」とは、中空部を有することでは共通しているが、引用文献2には、本願発明1の上記相違点に係る構成である「前記取付部への前記ピン部の付け根部近傍に前記脆弱部が形成され、」「前記中空部の少なくとも一部が、前記脆弱部に対して前記ピン部の軸方向で重なる」ことは記載も示唆もされていないので、引用発明に引用文献2に記載されている事項を適用しても、当該本願発明1の上記相違点に係る構成には至らない。
よって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1をさらに減縮したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし4記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 当審拒絶理由についての判断
平成29年6月15日の手続補正により特許請求の範囲が補正され、当審拒絶理由は解消された。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-31 
出願番号 特願2012-56726(P2012-56726)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B60K)
P 1 8・ 121- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川上 佳佐々木 訓  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
出口 昌哉
発明の名称 熱交換器保護構造  
代理人 綾田 正道  

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