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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1331117
審判番号 不服2016-5726  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 特願2011-257762「無人走行体を用いた環境情報の取得システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年6月10日出願公開、特開2013-114329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成23年11月25日の出願であって、
平成26年11月6日に審査請求がなされ、
平成27年8月31日付けで拒絶理由通知(同年9月8日発送)がなされ、
これに対して同年10月28日に意見書が提出されると同時に手続補正がなされ、
平成28年3月14日付けで拒絶査定がなされた(謄本送達同年同月22日)。

これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」ことを請求の趣旨として平成28年4月18日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


2.平成28年4月18日にされた手続補正の適否
(1)本件補正
平成28年4月18日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成27年10月28日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3の記載

「 【請求項1】
遠隔操縦装置を用いてオペレータにより遠隔操縦される無人走行体と、該無人走行体に搭載された走査式二次元測距装置、環境情報検出センサ及びメインカメラと、前記走査式二次元測距装置の検出データ、前記環境情報検出センサの検出データ及び前記メインカメラの撮影映像を記憶する情報記憶装置と、前記遠隔操縦装置、前記無人走行体及び前記情報記憶装置の駆動を制御する制御装置と、該制御装置に接続された表示装置とを備え、
前記制御装置は、前記遠隔操縦装置の操作内容に応じた制御信号を出力して前記無人走行体の走行制御を行いながら、前記走査式二次元測距装置の検出データ及び前記環境情報検出センサの検出データを前記情報記憶装置に記憶し、該情報記憶装置に記憶された前記走査式二次元測距装置の検出データと前記環境情報検出センサの検出データとを合成して前記表示装置に表示すると共に、前記制御装置からの情報取得指令に応じて前記メインカメラの撮影映像を前記情報記憶装置に記憶すること特徴とする無人走行体を用いた環境情報の取得システム。
【請求項2】
前記走査式二次元測距装置は、光源から出射されたレーザ光を回転ミラーで反射して透明窓から放射状に照射し、前記無人走行体の周囲に存在する床面、壁面及び天井面等で反射されて前記透明窓に戻った反射光を、集光レンズを用いて受光素子に集光すると共に、内蔵された信号処理部が、前記光源からのレーザ光の出射タイミングと前記受光素子への反射光の入射タイミングの差から、レーザ光の走査方向に沿った二次元距離データを算出するものであることを特徴とする請求項1に記載の無人走行体を用いた環境情報の取得システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記情報記憶装置に記憶された1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データをその値に応じた複数のゾーンに分類し、各ゾーン毎に輝点の濃淡やカラーを割り当てると共に、これら輝点の濃淡やカラーが割り当てられた1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データを時間軸に沿って合成して、距離の変化が輝点の濃淡やカラーで表現された三次元画像を生成し、当該合成された三次元画像に前記環境情報検出センサの検出データを合成して前記表示装置に表示することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の無人走行体を用いた環境情報の取得システム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
遠隔操縦装置を用いてオペレータにより遠隔操縦される無人走行体と、該無人走行体に搭載された走査式二次元測距装置、環境情報検出センサ及びメインカメラと、前記走査式二次元測距装置の検出データ、前記環境情報検出センサの検出データ及び前記メインカメラの撮影映像を記憶する情報記憶装置と、前記遠隔操縦装置、前記無人走行体及び前記情報記憶装置の駆動を制御する制御装置と、該制御装置に接続された表示装置とを備え、
前記制御装置は、前記遠隔操縦装置の操作内容に応じた制御信号を出力して前記無人走行体の走行制御を行いながら、前記走査式二次元測距装置の検出データ及び前記環境情報検出センサの検出データを前記情報記憶装置に記憶すると共に、該情報記憶装置に記憶された前記走査式二次元測距装置の検出データから生成された三次元画像と前記環境情報検出センサの検出データとを合成して前記表示装置に表示し、
前記情報記憶装置は、前記制御装置からの情報取得指令に応じて前記メインカメラの撮影映像を記憶すること特徴とする無人走行体を用いた環境情報の取得システム。
【請求項2】
前記走査式二次元測距装置は、光源から出射されたレーザ光を回転ミラーで反射して透明窓から放射状に照射し、前記無人走行体の周囲に存在する床面、壁面及び天井面等で反射されて前記透明窓に戻った反射光を、集光レンズを用いて受光素子に集光すると共に、内蔵された信号処理部が、前記光源からのレーザ光の出射タイミングと前記受光素子への反射光の入射タイミングの差から、レーザ光の走査方向に沿った二次元距離データを算出するものであることを特徴とする請求項1に記載の無人走行体を用いた環境情報の取得システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記情報記憶装置に記憶された1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データをその値に応じた複数のゾーンに分類し、各ゾーン毎に輝点の濃淡やカラーを割り当てると共に、これら輝点の濃淡やカラーが割り当てられた1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データを時間軸に沿って合成して、距離の変化が輝点の濃淡やカラーで表現された前記三次元画像を生成し、当該生成された三次元画像に前記環境情報検出センサの検出データを合成して前記表示装置に表示することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の無人走行体を用いた環境情報の取得システム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正すること(【手続補正3】)、及び、当該特許請求の範囲の補正に伴い、明細書の【0006】、【0010】を補正すること(各々【手続補正1】、【手続補正2】)からなる。(下線は、請求人が付加したもの。)

(2)補正の適否

ア 特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第5項(目的要件)に関する検討
本件補正に際して、請求人は審判請求書の「(2)補正の適法性」の欄にて、請求項1の「合成」に関する補正の目的は明らかな誤記の訂正を目的とするものであり、「メインカメラの撮影映像を記憶する」に関する補正は文章の主語を明確にしたものであって発明の実体の変更を意図するものではないから、いずれも適法である旨述べている。
そこで、これら補正につき、新規事項及び目的要件に適合するか否かについて検討する。

当該補正に関係する、表示装置に表示される表示画像について、当初明細書の【0097】には走査式二次元測距装置105からの二次元距離データを連続的に再生することにより図13に示すような三次元画像が得られることが記載され、また、【0098】には、放射線検出器116の検出データにタイムスタンプを付与し、かつ、走査式二次元測距装置105の検出データにも入射時刻をリンクさせるとし、連続再生時にこれら両者の時間をリンクさせることにより、図21に示すような放射線検出器116の検出データが合成された三次元画像が得られることが記載されている。加えて、図13、図21には、【0097】及び【0098】で説明された内容どおりの画像が表示されていることが確認できる。
また、メインカメラの撮影映像を記憶する事項に関する補正は、「映像を記憶する」主体が何であるかを「情報記憶装置」としたにすぎず、記憶装置以外のものが記憶することも考えられないので、補正前の記載事項から自明な内容を明示したものである。
そうすると、前記いずれの変更も、補正前の当初明細書ないし特許請求の範囲に実質的に記載済の事項であって、補正後の発明が実質拡張ないし変更されるものでもない。
また、これらの補正により、補正前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更がないのは明らかである。

よって、本件補正は、誤記の訂正を目的とする補正であり、特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に適合する。
なお、本件補正の目的は、誤記の訂正を目的とするものであるため、同法同条第6項で定める、いわゆる独立特許要件を課されない。

イ 小結
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に適合する適法な補正である。

3.本願発明について

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年4月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおり特定されるものである。


4.引用文献及び引用発明
(1)引用文献1及び引用発明
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成27年8月31日付け拒絶理由において引用された、特開2001-179668号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術的事項が記載されている(摘記中の下線は理解を助けるため、当審にて付与した。)。

A「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種プラント設備の火災や地震などの災害時において、発生事象の状況把握、被害拡大防止の観点からの事象の抑制、人命救助、発生現場の復旧作業に関連し、効率よく一連の作業を実施するためのロボットシステムに関する。」

B「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、環境情報を収集するモニタ手段を搭載し、事故地点若しくはその周辺または事故地点までの移動経路若しくはその周辺の状態を調査する少なくとも一体のモニタ用ロボットと、マニピュレータを搭載し、所定の作業を行う少なくとも一体の作業用ロボットと、を含む複数の移動ロボットと、前記移動ロボットとの間で通信を行う第1の通信手段と、所定の指令拠点との間で双方向通信可能な第2の通信手段と、前記第1の通信手段を介して前記移動ロボットを遠隔操作する制御装置と、前記移動ロボットを収納する収納部と、を有する移動可能な指令基地と、前記指令基地を移動させる手段と、を備え、前記モニタ用ロボットの調査結果に基づいて、若しくは前記作業用ロボットにより事故地点若しくはその周辺に設置されたセンサによる調査結果に基づいて、適当な機能を有する作業用ロボットが選定されることを特徴とする事故対応ロボットシステムを提供する。」

C「【0015】また、前記モニタ用ロボットのうち少なくとも一体に、映像取得手段および距離測定手段と、を搭載させて、前記制御装置は、前記映像取得手段および前記距離測定手段からの情報に基づいて事故地点若しくはその周辺の2次元情報または3次元情報を作成して表示する機能を持たせることもできる。
【0016】また、本システムは、映像取得手段および距離測定手段を有し、事故地点若しくはその周辺または事故地点までの移動経路若しくはその周辺に固定されて前記指令基地に環境状況を送信するローカルセンサモジュールを更に備えて構成することができ、更に前記モニタ用ロボットのうち少なくとも一体は、映像取得手段および距離測定手段と、を搭載して構成することができ、前記制御装置が、前記ローカルセンサモジュールおよび前記モニタ用ロボットの前記映像取得手段および前記距離測定手段から送信される情報に基づいて事故地点若しくはその周辺の2次元情報または3次元情報を作成して表示する機能を有するようにすることもできる。
【0017】ここで前記制御装置は、前記ローカルセンサモジュールに搭載されたセンサおよび前記モニタ用ロボットに搭載されたセンサにより取得された、温度、放射線量、有害物質濃度等のデータを前記2次元情報または3次元情報に重ねて表示する機能を有すると好適である。また、前記制御装置は、事故状況の経時変化を表示する機能を有することも好ましい。」

D「【0049】事故発生時には、まず、外部通信器110により、例えば防災センターから事故情報を受信して事故状況を把握し、これに基づいて必要とされる移動ロボット10の種類およびその台数を選定して、指令車1の収納部140に収納する。また事故に関する情報を、統括制御部170に設けられた記憶装置(図示せず)に格納する。
・・・(中略)・・・
【0056】この間にもモニタリングロボット10aや計測ロボット10bからの情報は、逐次通信器100を介して制御装置120に送られ、制御装置120はこれを所定のデータ形式で統括制御部170に送る。統括制御部170に収集されたデータに基づいて、各移動ロボット10の次の行動を修正する。このような判断機能を有する統括制御部170により、復旧のシーケンスを最適化することができ、短時間に事故を終息させて人的、物質的な被害を最小限にとどめることが出来る。また逐次選られたデータにより、シーケンスに修正を加えることのより、時間的に変化する状況にも柔軟に対応する事が可能となる。」

E「【0139】[第7の実施形態]次に、図11乃至図13を参照して第7の実施形態について説明する。本実施形態は、移動ロボットに搭載されるセンサモジュールの構成およびセンサモジュールにより得られたデータの処理手順に関するものである。
【0140】まず、図11を参照してセンサモジュール404の構成について説明する。センサモジュール404は、環境状況をセンシングする手段として、映像センサ420、赤外線センサ423、音響センサ421および放射線センサ424を備えており、更に周囲の位置情報をセンシングする手段として、水平旋回および上下首振りを行ないながら移動ロボット周囲の距離を計測するレーザー距離計422、距離計の計測時の傾き角度を検出する傾斜センサ425を備えている。これらのセンサは要求性能や使用環境に適応するセンサに置き換えが可能なようにそれぞれユニット化した構成としてある。なお、この構成は携帯用のローカルセンサモジュール450にも適用可能である。
【0141】なお、移動ロボット401(作業ロボットでもモニタロボットでもよい)の内の最低1台が搭載するセンサモジュール404の最低1台は、上述した環境状況をセンシングする手段と周囲の位置情報をセンシングする手段とを備えている。
【0142】次に、図12の模式図および図13のフローチャートを参照して、指令車1の制御装置120において、センサモジュール404で収集し送信したデータからデータ処理することで2次元または3次元の情報例えば地図を作成し、自己位置同定、障害物検出、経路生成、環境状況マップを生成する手順の一例を示す。
【0143】スキャン式レーザ距離計422で水平旋回および上下首振りを行ないながらデータを収集し(図13のステップS1)、収集されたデータは指令車1の制御装置120に送信され、制御装置120は、このデータに対して座標変換およびデータ補間処理を行うことで、2次元および3次元マップを生成する。なお、ロボットの移動位置は、ローカルセンサモジュールなどの距離データにより正確に求めることができることから、移動しながら収集したスキャン式レーザ距離計422の距離データ分布から移動経路周辺および事故発生箇所周辺の2次元および3次元マップが生成できる(図13のステップS2)。
【0144】また、データ収集時のスキャン式レーザ距離計422の取付け高さに基づいて、前記マップにおける床面が制御装置120により自動的に検出される(図13のステップS3)。更に、このマップ中から障害物が検出され(図13のステップS4)、また、現場に堰がある場合にはロボットが堰を乗り越えることができるか否かの判定なされる(図13のステップS5)。制御装置120は、床面情報、障害物情報、乗り越え可否情報に基づいてロボットの移動経路を求める(図13のステップS6)。
【0145】更に、制御装置120は、3次元マップを画像表示する(図13のステップS7)。
【0146】また、映像センサ420により収集したTV映像の視点および画角に、生成した3次元マップの表示条件を一致させることで、TV映像を3次元マップにテキスチャマッピングする(図13のステップS8)。更に、赤外線センサ423により収集した分布データをTV映像のテキスチャマッピングと同様に重ね合せ表示する(図13のステップS9)。
【0147】なお、計測ロボット10bや携帯用ローカルセンサモジュール450などから収集した環境状況データを更に重ね合せることも有益である。このようにすれば、事故状況の把握がさらに容易となり、また、作業ロボットよる事故の拡大防止作業の計画を高速かつ正確に立案可能となる。」

以上のことから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「制御装置120により遠隔操作される移動ロボットと、該移動ロボットに搭載されたスキャン式レーザ距離計422、環境状況をセンシングする放射線センサ424、及び映像センサ420と、該制御装置120から所定のデータ形式にて送られる前記移動ロボットからのデータを収集する、記憶装置を有する統括制御部170とを備え、
前記制御装置120は、表示機能を有し、
前記制御装置120は、前記スキャン式レーザ距離計422の収集データから3次元マップを生成し、該3次元マップに環境状況をセンシングする放射線センサ424などの環境状況データを重ね合わせた画像を制御装置の表示機能により画像表示する
移動ロボットを用いた環境情報の取得システム。」

(2)引用文献2の摘記事項及び記載された技術的事項
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成28年3月14日付け拒絶査定において周知例として引用された、特開2000-330636号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の技術的事項が記載されている(摘記中の下線は理解を助けるため、当審にて付与した。)。

F「【0024】また、車両1の所定位置には、車両1の進行方向のコース3上を撮影可能な撮影装置24が搭載され、車両管制装置20に接続されている。この撮影装置24は、撮影を制御する撮影コントローラ25と、車両1の前方に取り付けられ、撮影コントローラ25からの指令に基づいてコース3上を撮影するCCDカメラ26とを備えている。また、撮影コントローラ25は、CCDカメラ26の映像を取り込む映像メモリ27を備えている。そして、撮影指令を受信すると、撮影コントローラ25はCCDカメラ26で車両1の前方を撮影し、その映像を映像メモリ27に記憶する。或いは、CCDカメラ26は常に、コース3上の映像を撮影するようにしてもよい。車両管制装置20から撮影コントローラ25に撮影指令が入力されると、撮影コントローラ25はCCDカメラ26が撮影している映像を、映像メモリ27に記憶し、これを車両管制装置20に送信する。車両管制装置20は、この映像を無線通信を介して中央管制装置7に送信する。或いは、映像メモリ27はCCDカメラ26が撮影している映像を常に所定の時間間隔で記憶更新し、撮影指令に基づいてこの記憶した映像を中央管制装置7に送信するようにしてもよい。
【0025】またこのとき、中央管制装置7は手動撮影スイッチ28を備えており、監視員がこの手動撮影スイッチ28を押すことにより、無線通信を介して撮影コントローラ25に撮影指令が送信される。これにより、撮影装置24はコース3上を撮影し、その映像をモニタ9に表示することが可能となっている。尚、CCDカメラ26は、車両1の前方及び後方にそれぞれ取り付けられている場合もある。このようにすれば、車両1がバックする場合にも、進行方向を写すことが可能となる。この場合、撮影コントローラ25は、車両の進行する方向に備えられたほうのCCDカメラ26の映像を記憶し、送信するようにしている。」

技術的事項
中央管制装置7のスイッチ操作により車両1に搭載されたカメラが撮影制御されるとともに、映像メモリ27は、中央管制装置7からの撮影指令に応じて該カメラの撮影映像を記憶すること。

5.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「制御装置120により遠隔操作される移動ロボット」は、遠隔操作が通常なんらかの操縦用機器を人が操縦することにより行う態様を採るのが一般的であることを踏まえると、本願発明の「遠隔操縦装置を用いてオペレータにより遠隔操縦される無人走行体と」に相当する。
また、引用発明の「該移動ロボットに搭載されたスキャン式レーザ距離計422、環境状況をセンシングする放射線センサ424、及び映像センサ420」は、本願発明の「該無人走行体に搭載された走査式二次元測距装置、環境情報検出センサ及びメインカメラ」に相当する。
また、引用発明の「制御装置120」が「移動ロボット」を「遠隔操作」するとした事項は、本願発明の「前記遠隔操縦装置、前記無人走行体」「を制御する制御装置」でありかつ「前記制御装置は、前記遠隔操縦装置の操作内容に応じた制御信号を出力して前記無人走行体の走行制御を行」うとした事項に相当する。
さらに、引用発明の「前記制御装置120は、表示機能を有し」ていることは、通常モニタ機器等の表示機器が制御装置120に接続されたり、制御装置自体にモニタが組み込まれていたりする態様を採ることを意味するので、本願発明の「該制御装置に接続された表示装置」「を備え」ることに相当する。
加えて、引用発明の「前記制御装置120は、前記スキャン式レーザ距離計422の収集データから3次元マップを生成し、該3次元マップに環境状況をセンシングする放射線センサ424などの環境状況データを重ね合わせた画像を制御装置の表示機能により画像表示する」は、本願発明の「前記制御装置は」「前記走査式二次元測距装置の検出データから生成された三次元画像と前記環境情報検出センサの検出データとを合成して前記表示装置に表示し」に相当する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)
「遠隔操縦装置を用いてオペレータにより遠隔操縦される無人走行体と、該無人走行体に搭載された走査式二次元測距装置、環境情報検出センサ及びメインカメラと、前記遠隔操縦装置、前記無人走行体を制御する制御装置と、該制御装置に接続された表示装置とを備え、
前記制御装置は、前記遠隔操縦装置の操作内容に応じた制御信号を出力して前記無人走行体の走行制御を行いながら、前記走査式二次元測距装置の検出データから生成された三次元画像と前記環境情報検出センサの検出データとを合成して前記表示装置に表示する無人走行体を用いた環境情報の取得システム。」

(相違点)
本願発明では「前記走査式二次元測距装置の検出データ、前記環境情報検出センサの検出データ及び前記メインカメラの撮影映像を記憶する情報記憶装置」をシステムが備えるとし、かつ、当該「情報記憶装置」は、「制御装置」により「駆動」が制御されかつ「前記制御装置からの情報取得指令に応じて前記メインカメラの撮影映像を記憶する」としているのに対して、引用発明のシステムでは、「該制御装置120から所定のデータ形式にて送られる前記移動ロボットからのデータを収集する、記憶装置を有する統括制御部170」を備えるとしているものの、当該統括制御部170の記憶装置に移動ロボットからのデータが記憶されるかどうかが明らかでなく、カメラの撮影映像の記憶について対応する事項を有していない点。

6.当審の判断

上記相違点について検討する。

本願発明の上記相違点に係る構成とは、第1に「前記走査式二次元測距装置の検出データ、前記環境情報検出センサの検出データ及び前記メインカメラの撮影映像」を記憶する手段を有していること、第2に無人走行体に搭載されるカメラに関して、制御装置の指令によりカメラの撮影映像を記憶装置に記憶すると特定が伴うこと、の2点である。
ところが、前者については、引用発明の「統括制御部170」は上記4.(1)Dに記載されているように、ロボット10a、10bからの情報を袖手することとされており、これらロボットからの情報には上記4.(1)Cに記載されているとおり、映像取得手段からの情報も、距離測定手段からの情報も、放射線量のデータも含まれていることが明らかであるから、統括制御部170は、収集の典型態様として、記憶手段による記憶を実体的に行っていると見られる。よって、相違点に係る第1の構成を、引用発明も実質備えていると認められる。
また、後者の一連の操作に係る事項は、拒絶査定時に提示した上記引用文献2に同様の技術的事項が示すとおり公知である。
また、引用発明のシステムにも元々無人走行体に相当する移動ロボットが本願のメインカメラに相当する映像センサを搭載するとされており、しかも当該映像センサにより撮影された映像は、遠隔操作を司る制御装置120へ送信された後に、制御装置120は統括制御部170へ所定のデータ形式にして送るとされ、該統括制御部170は送られたデータを収集すること、及び記憶装置を備えることともされている。
とすれば、引用発明と引用文献2に記載された公知の技術的事項に接した当業者ならば、引用発明の映像センサで取得する撮影映像の扱いに際して、引用文献2に記載の公知の技術的事項の扱いに倣って、統括制御部のデータ収集として、指令に応じたデータ記憶処理となすことは容易に想到し得たというべきである。

また、そのように映像センサからの撮影映像を扱うとした当業者想到の発明の作用効果は、本願発明の効果となんら違いはない。

以上のことから、上記相違点は格別のものではなく、そして、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び公知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

なお、請求人は審判請求書にて、
「引用文献1-4には、本願の請求項1に記載の「走査式二次元測距装置の検出データから生成された三次元画像と環境情報検出センサの検出データとを合成」に相当する発明特定事項が何も記載されていないばかりが示唆もされておらず、本願の請求項1に係る発明と引用文献1-4に記載の発明とは、発明の構成及び作用効果が著しく相違しています」(審判請求書(4)〈イ〉)
と主張し、その根拠として引用文献1の「スキャン式レーザ測距計」の画像品質を挙げている。
しかしながら、請求項1に記載された「走査式二次元測距装置」は、「走査」すなわちスキャンにより二次元の距離を測定する装置を意味するにすぎず、引用文献1の「スキャン式レーザ測距計」と差異はなく、またスキャンの具体的態様について、引用文献1のような、旋回・首振り動作を排除しているとまでは解することができないから、請求人の主張は特許請求の範囲の記載の裏付けを欠いたものであって、採用することができない。

7.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-12 
結審通知日 2017-06-13 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2011-257762(P2011-257762)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 影山 直洋青山 純  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 西村 泰英
平岩 正一
発明の名称 無人走行体を用いた環境情報の取得システム  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  

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