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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E21D |
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管理番号 | 1331171 |
異議申立番号 | 異議2016-700813 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-02 |
確定日 | 2017-06-23 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5906277号発明「セグメント」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5906277号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、2]について訂正することを認める。 特許第5906277号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5906277号の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成22年9月1日に出願した特願2010-196000号の一部を平成26年5月2日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月25日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人新日鐵住金株式会社(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1ないし2に対して特許異議の申立てがされ、平成29年1月31日付けで取消理由が通知され、平成29年3月31日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年5月11日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (訂正事項) 請求項1、2に係る「前記配力筋の両端部が前記補強部材に固定されている」を「前記配力筋の両端部が前記補強部材に溶接により固着されている」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正の目的の適否について 訂正事項は、配力筋の補強部材への固定手段を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記(1)で説示したように、訂正事項は配力筋の補強部材への固定手段を限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 明細書の「【0027】・・・配力筋20の固着部20b,20bを斜めリブ7に固着する方法としては、固着部20b,20bを斜めリブ7に対して溶接することが好ましいが、その他、例えば、ナットなどの止め具等を用いて固着部20b,20bを斜めリブ7に固定してもよく、配力筋20を斜めリブ7に巻きつけたり引っ掛けたりしてもよい。」の記載から、訂正事項は明細書に記載されているものである。 また、訂正前の請求項1、2は、請求項2が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 3 小括 したがって、上記訂正請求による訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 訂正後の請求項1、2に係る発明 上記訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。) 本件発明1 「【請求項1】 周方向へ連結され、さらに軸方向へ連結されることにより、掘削穴内に筒状壁体を構成するセグメントであって、 前記セグメントは、内周側が開口された箱型に形成された枠体と、該枠体内に打設されたコンクリートとから構成されてなり、 前記枠体は、外周側に設けられた湾曲板状のスキンプレートと、該スキンプレートの前記軸方向両端にそれぞれ設けられた一対の主桁板と、前記スキンプレートの前記周方向両端にそれぞれ設けられた一対の継手板とを備え、 前記セグメントの前記内周側、又は前記セグメントの前記内周側および前記外周側には、前記周方向に延びる複数の主鋼材が前記軸方向に配列され、 該複数の主鋼材の少なくとも一部の配列を固定する配力筋が設けられていて、 前記一対の主桁板には、複数の補強部材がそれぞれ連結されて、前記補強部材は前記一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成され前記一対の主桁板のいずれか一方に連結されていて、 前記補強部材は略台形状に形成されていて一方の斜辺が前記主桁板に固定され、他方の斜辺が前記スキンプレートに固定され、前記配力筋の両端部が前記補強部材に溶接により固着されていることを特徴とするセグメント。」 本件発明2 「【請求項2】 前記複数の補強部材のうちの一部に代わって、前記一対の主桁板の両方のウェブにそれぞれ連結され且つスキンプレートに連結されないリブが設けられている請求項1に記載されたセグメント。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1、2に係る特許に対して平成29年1月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。したがって、本件特許の請求項1ないし2に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 甲号証等の記載 (1)甲第1号証(特開2002-121999号公報)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与。以下同様。)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は鋼製セグメント、鋳鉄製セグメント、さらには球状黒鉛鋳鉄製セグメント(ダクタイルセグメント)も含む鋳鋼製セグメントなどのメタル系セグメント(以下、「鋼殻」という)とその中に充填されたコンクリートとからなる一体構造の合成セグメントに関し、特に常時、大きな内水圧が作用する下水道幹線や地下河川などとして利用される水路用トンネルの覆工材として開発されたものである。」 イ 「【0015】 【発明の実施の形態】図1?図6は、この発明に係る合成セグメントの一例を示し、図において、トンネルの軸方向の両側部に主桁板1が、トンネルの周方向の両端部に継手板2が、さらにトンネルの地山側に背面板3がそれぞれ配置されている。」 ウ 「【0020】また、背面板3のトンネル軸方向の両端部には、後述するせん断補強筋14の定着部として、複数のリブ11がトンネルの周方向に所定間隔おきに突設され、リブ11には定着用の孔11aが形成されている。なお、定着用の孔11aと同様の孔5aが横リブ5の両端にも形成されている。」 エ 「【0023】こうしてトンネルの地山に沿って所定の曲率で弧状に湾曲する鋼殻12が形成され、この鋼殻12内に補強筋として複数の主鉄筋13とせん断補強筋14がそれぞれ配筋され、かつコンクリート15が充填されている。 【0024】なお、鋼殻12は原則として、鋳鉄製または球状黒鉛鋳鉄製をも含む鋳鋼製で、主桁板1と継手板2と背面板3は鋳造により一体的に形成されているが、鋼製の場合は主桁板1と継手板2と背面板3をそれぞれ別々に形成し、後から接合する組み立て式も考えられる。また、鋼殻12の表面には腐食しろや防食塗装などの防食対策が施されている。 【0025】複数の主鉄筋13は、両端の継手板2,2間にトンネルの周方向に沿って弧状に配筋され、その両端部13aは定着板16を介して両端の継手板2にそれぞれ定着されている。」 オ 「【0030】せん断補強筋14は、例えば図5(a),(b)に図示するように背面板3側(地山側)にコの字状をなす門形に曲げ加工などによって形成され、かつ垂直部分14a,14aの下端部にトンネルの周方向に突出するフック14b,14bがそれぞれ形成されている。なお、両側の垂直部分14a,14aは必要に応じて、例えば図5(b)に図示するように内側に少し折り曲げられている。こうすることで、主鉄筋13およびコンクリート15の拘束力はより高められる。 【0031】また、こうして形成された複数のせん断補強筋14は、例えば図5(c)に図示するように、両側の主桁板1,1間に複数の主鉄筋13を抱き込むようにしてトンネルの周方向に所定間隔おきに配筋され、かつ両端のフック14bをリブ11の定着孔11aまたは横リブ5の定着孔5aに挿入して固定されている。」 カ 「【0035】 【発明の効果】この発明は以上説明したとおりであり、特に鋼殻の継手板に主鉄筋定着用の連結部を設け、この連結部に主鉄筋の端部を定着し、また前記鋼殻の内側部に定着用の孔を有するリブを、せん断補強筋の端部に定着用のフックをそれぞれ突設するとともに、前記孔とフックとを係合して前記せん断補強筋の端部が前記鋼殻の内側部に定着してあるので、鋼殻と複数の主筋およびせん断補強筋との完全な一体化が可能になり、これにより主鉄筋とせん断補強筋はともに、コンクリートの単なるひび割れ防止材としてではなく、鋼殻と同等に合成セグメントの構造材として評価される。」 キ 図1、図6において、合成セグメントは連結されて筒状壁体を構成することが看て取れる。 ク 上記ア、イの記載及び図1から、合成セグメントの鋼殻は一対の主桁板1、一対の継手板2、背面板3により内周側が開口された箱型に形成されていることが看て取れる。 ケ 図2(a)(c)、図3(c)、図5(c)から、リブ11は一対の主桁板1間の寸法よりも短い寸法に形成され、一対の主桁板のいずれか一方に連結されていること、リブ11は一方の辺が主桁板1に、他方の辺が背面板3に固定されていること、せん断補強筋14の両端部がリブ11に固定されていることが看て取れる。 コ 図2(b)から、背面板3は湾曲板状であることが看て取れる。 サ 図1から、主鉄筋13は合成セグメントの内周側に配筋されていることが看て取れる。 シ 以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 甲1発明 「トンネルの覆工材として連結されて筒状壁体を構成する合成セグメントに関し、合成セグメントはメタル系セグメント(以下、「鋼殻」という)とその中に充填されたコンクリートとからなる一体構造であり、 合成セグメントの鋼殻は、トンネルの軸方向の両側部に配置された主桁板、トンネルの周方向の両端部に配置された継手板、さらにトンネルの地山側に配置された湾曲板状の背面板によって、内周側が開口された箱型に形成されており、 背面板のトンネル軸方向の両端部には、後述するせん断補強筋の定着部として、複数のリブがトンネルの周方向に所定間隔おきに突設され、リブには定着用の孔が形成され、リブは一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成され、一方の辺が主桁板に他方の辺が背面板に固定され、一対の主桁板のいずれか一方に連結されており、 鋼殻内に補強筋として複数の主鉄筋とせん断補強筋がそれぞれ配筋され、主鉄筋はトンネルの周方向に沿って合成セグメントの内周側に弧状に配筋され、せん断補強筋は、両側の主桁板間に複数の主鉄筋を抱き込むようにしてトンネルの周方向に所定間隔おきに配筋され、かつ両端のフックをリブの定着孔に挿入して固定している、 セグメント」 (2)甲第2号証(特開平6-280490号公報)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、多数連結させてトンネル壁として構成されるトンネル覆工用セグメントに関する。」 イ 「【0016】次に、図6ないし図7を参照して本発明の第2実施例を説明する。第2実施例のセグメント20は、円弧状に延びるスチール製の一対の主桁21が互いに平行に対向する状態で配され、これら主桁21の両端が、互いに平行に対向させた一対のスチール製の端版22でそれぞれ連結されて円弧版状の枠体23が組まれ、この枠体23の外周面側に、円弧版状のスキンプレート24が張られ、枠体23の内部に、コンクリート25が打設されて構成されている。なお、図6は完成状態のセグメント20、図7はコンクリート25を打設する前の状態をそれぞれ示している。 【0017】このセグメント20においては、一対の主桁21間に、スチール板からなる一対のリブ26が、セグメント20の径方向に沿う状態で、かつ等間隔をおいて複数組(この場合3組)架け渡されている。これらリブ26は主桁21とスキンプレート24とに接続されている。また、端版22とスキンプレート24にわたって一対の補強板27が複数組(この場合2組)接続されている。各リブ26のセグメント20における内周面側には、スチール製の円弧版状のメッシュ28が張られている。また、主桁21の一対のリブ26の間および端版22の一対の補強板27の間には、継手ボルトの挿通孔21a、22aがそれぞれ設けられ、コンクリート25の挿通孔21a、22a周辺には、継手凹所25aが形成されている。なお、スチール製の各構成要素の接続は、溶接によってなされている。 【0018】次に、図8を参照して本発明の第3実施例を説明する。第3実施例のセグメント30は、上記第2実施例のセグメント20におけるリブ26に代えて、主桁21と24スキンプレートとにわたり、一対のガセット31が複数組固着されている。」 ウ 図8から、ガセット31は三角形状であることが看て取れる。 (3)甲第3号証(土木学会トンネル工学委員会、セグメントの設計、社団法人土木学会、1994年6月15日、95?96頁)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「二次覆工のコンクリートを打設する際に縦リブの下側部分には空気が残留し、コンクリートを完全に充填することが困難となる。この残留空気を抜くため空気抜きとして図6.45に示すように鋼製セグメントでは縦リブの片側に、また箱形鋳鉄製セグメントでは縦リブの中央にそれぞれ切欠きを設けている。」(95頁、6.12その他6.12.1空気抜き3行?9行) イ 図6.45から、縦リブの隅部に空気抜きとしての切欠きが設けられていることが看て取れる。 (4)甲第4号証(特開2007-277893号公報)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、トンネル等の地下構造物に使用される合成セグメントに関し、特に高耐力広幅合成セグメントに関する。」 イ 「【0048】 図11では、矩形状の鋼板7からなるずれ止め12がI形断面の主桁1のフランジ5aの内側に、直角に立設するように設置され、トンネル周方向に間隔をおいて複数設置されている。鋼板7の形状としては、台形、半円形、菱形等の形状でもよい。」 (5)甲第5号証(特開2003-307100号公報)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、トンネル周方向及びトンネル軸方向に多数並べて互いに連結することでトンネル壁を形成するためのトンネル用セグメントに関するものである。」 イ 「【0022】配筋材9は、棒状の鉄筋をコ字状に折り曲げて成る本体材9Aに、同じく棒状の鉄筋による一対の脚部9b、9bが固着されたフォーク状を呈するものに形成されており、本体材9Aにおける一対の脚部部分9a,9a、及び一対の脚部9b、9b夫々の先端折り曲げ部を、各軸端面壁3,4及び各縦リブ6,6と外周壁5とに亘って形成された部分横リブ10の貫通孔10aに挿入した係合状態として、コンクリート部cとセグメント本体shとの接合強度を向上させてある。」 (6)平成29年5月11日に特許異議申立人から提出された意見書に添付された参考資料1(特開2009-154400号公報)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【0014】 そこで本発明の主たる課題は、鋼材とコンクリートとの複合構造とされる合成セグメントにおいて、特に製作コストが廉価で経済性に優れるとともに、鋼材とコンクリートとの一体化を図ることにより、鋼材とコンクリートとの強度特性を十分に発揮できるとともに、十分な薄肉化が可能な合成セグメントを提供することにある。」 イ 「【0033】 前記主鋼材5の内、前記形鋼材6A、6Bは、引張応力に抵抗する補強材として機能するものであり、前記トラス筋7はせん断力に抵抗する補強材として機能するものである。この主鋼材5は、別途の製作工程で製作しておけば、鋼殻K内への組み付けのみで簡単に設置することが可能である。また、形鋼材が高い断面剛性(断面性能)を有するため、大きな曲げ及びせん断に対して十分な抵抗を示すことが可能となる。なお、前記形鋼材6A、6Bとトラス筋7とは溶接付けとするのが望ましい。」 (7)平成29年5月11日に特許異議申立人から提出された意見書に添付された参考資料2(特開平6-346695号公報)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【0008】 【作用】本発明のトンネル覆工用セグメントによれば、内面に補強桁が固着されたスチール製の主桁および端版からなり、さらには鉄筋メッシュが張られた枠体の内部に、コンクリートが打設された構成であるから、コンクリート製とスチール製双方の利点を兼ね備え、すなわち圧縮はコンクリートで、引張りはスチールおよび鉄筋メッシュで受けることによって双方の力に対して充分な強度を有し、その結果、特にトンネルの急カーブの部分に好適である。また、補強桁は継手ボルトの挿通孔に近接しているから、継手ボルトの結合力を補強桁が受けることになり、さらには主桁および端版と継手凹所との間にはコンクリートが存することから、セグメントどうしの継手強度の向上が図られる。」 イ 「【0013】また、枠体13の内部には、鉄筋メッシュ18が張られている。この鉄筋メッシュ18は、セグメント10の長手方向および幅方向に延びる鉄筋が格子状に組まれてなるもので、幅方向に延びる鉄筋がセグメント10の内面側に向いた状態で主桁11側の補強桁15下面に配され、主桁11、端版12および下側の補強桁16に接する部分が溶接で固着されている。(なお、図1は鉄筋メッシュ18を省いている。)」 4 判断 (1)本件発明1について ア 甲1発明の「合成セグメント」、「主桁板」、「継手板」、「コンクリート」は、それぞれ本件発明1の「セグメント」、「主桁板」、「継手板」、「コンクリート」に相当する。 また、甲1発明の「合成セグメント」が「トンネルの覆工材として連結されて筒状壁体を構成する」点は、本件発明1の「セグメント」が「周方向へ連結され、さらに軸方向へ連結されることにより、掘削穴内に筒状壁体を構成する」点に相当する。 イ 甲1発明の「背面板」は、合成セグメントの外周側に設けられた湾曲状の板であるから、本件発明1の「スキンプレート」に相当する。 ウ 甲1発明の「鋼殻」は、「トンネルの軸方向の両側部に配置された主桁板、トンネルの周方向の両端部に配置された継手板、さらにトンネルの地山側に配置された湾曲板状の背面板によって、内周側が開口された箱型に形成されて」いることから、本件発明1の「枠体」に相当する。 エ 甲1発明の「主鉄筋」は「トンネルの周方向に沿って合成セグメントの内周側に弧状に配筋され」、「せん断補強筋」は「複数の主鉄筋を抱き込むようにしてトンネルの周方向に所定間隔おきに配筋され」ることから、それぞれ本件発明1の「主鋼材」、「配力筋」に相当する。 オ 甲1発明の「リブ」は、「トンネルの周方向に所定間隔おきに突設され」、「一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成され、一方の辺が主桁板に他方の辺が背面板に固定され、一対の主桁板のいずれか一方に連結されて」いることから、本件発明1の「補強部材」に相当する。 また、甲1発明の「リブ」は、「せん断補強筋」の「両端のフックをリブの定着孔に挿入して固定している」ことから、本件発明1の「補強部材」と「配力筋の両端部が前記補強部材に固定されている」点で一致している。 カ これらのことから、本件発明1と甲1発明は 「周方向へ連結され、さらに軸方向へ連結されることにより、掘削穴内に筒状壁体を構成するセグメントであって、 前記セグメントは、内周側が開口された箱型に形成された枠体と、該枠体内に打設されたコンクリートとから構成されてなり、 前記枠体は、外周側に設けられた湾曲板状のスキンプレートと、該スキンプレートの前記軸方向両端にそれぞれ設けられた一対の主桁板と、前記スキンプレートの前記周方向両端にそれぞれ設けられた一対の継手板とを備え、 前記セグメントの前記内周側には、前記周方向に延びる複数の主鋼材が前記軸方向に配列され、 該複数の主鋼材の少なくとも一部の配列を固定する配力筋が設けられていて、 前記一対の主桁板には、複数の補強部材がそれぞれ連結されて、前記補強部材は前記一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成され前記一対の主桁板のいずれか一方に連結されていて、 前記補強部材は一方の辺が前記主桁板に固定され、他方の辺が前記スキンプレートに固定され、前記配力筋の両端部が前記補強部材に固定されていることを特徴とするセグメント。」 の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本件発明1は、主鋼材を「前記セグメントの前記内周側又は前記セグメントの前記内周側および前記外周側」に配列するのに対し、甲1発明はセグメントの内周側に配列している点。 (相違点2) 本件発明1は、補強部材を「略台形状」に形成し、台形の斜辺がそれぞれ固定されているのに対し、甲1発明はそのような構成が特定されていない点。 (相違点3) 本件発明1は、配力筋の両端部を補強部材に「溶接により固着」しているのに対し、甲1発明はそのような構成が特定されていない点。 相違点1について検討するに、本件発明1は「内周側」、又は「内周側および外周側」という選択的な特定をしているだけであり、甲1発明のような内周側のみの態様も含んでいるので、実質的な差異とはいえない。 相違点2について検討するに、甲第2号証には三角形状のガセット31を設けることが、甲第3号証には空気抜きとして縦リブの隅部に切欠きを設けることが、甲第4号証には鋼板7の形状を台形とすることが、甲第5号証には貫通孔10aを有する部分横リブ10を設けることが、それぞれ概略記載されている(以下、それぞれ「甲2技術事項」等という。)。 しかしながら、甲1発明は孔を有しているリブが設けられているなど、甲2?5技術事項に相当する構成を既に有していることから、それぞれの技術事項を採用する動機付けはない。また、甲2?5技術事項は本件発明1の「補強部材を略台形状に形成し、台形の斜辺がそれぞれ固定されている」との構成は有していないので、仮に、甲1発明にそれぞれの技術事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の構成とはならない。 具体的に説示すると、甲1発明のリブは定着用の孔を有するのに対し、甲2技術事項は切欠き(孔)のない三角形状のリブを設けるものであるので、甲1発明に甲2技術事項を採用するとどのようなリブが構成できるようになるのか特定できない。また、甲1発明のリブは既に孔を有していることから、空気抜きとしての切欠きを設ける甲3技術事項を採用することにより、どのような構成を有するようになるのか特定できない。甲4技術事項については、甲1発明において鋼板7の形状を採用する動機付けがなく、仮に採用したとしても、台形形状をリブにどのように採用するのか特定できない。甲5技術事項については、部分横リブ10は甲1発明のリブと略同形状であり、定着用の孔を有する点でも共通しているが、甲5技術事項を採用した場合に、甲1発明のリブがどのような構成を有するようになるのか特定できない。 よって、相違点3については検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2?5号証、参考資料1、2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について 本件発明2は本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由(上記(1)カ参照)で、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2?5号証、参考資料1、2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1ないし2は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第5号証、及び参考資料1ないし2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 周方向へ連結され、さらに軸方向へ連結されることにより、掘削穴内に筒状壁体を構成するセグメントであって、 前記セグメントは、内周側が開口された箱型に形成された枠体と、該枠体内に打設されたコンクリートとから構成されてなり、 前記枠体は、外周側に設けられた湾曲板状のスキンプレートと、該スキンプレートの前記軸方向両端にそれぞれ設けられた一対の主桁板と、前記スキンプレートの前記周方向両端にそれぞれ設けられた一対の継手板とを備え、 前記セグメントの前記内周側、又は前記セグメントの前記内周側および前記外周側には、前記周方向に延びる複数の主鋼材が前記軸方向に配列され、 該複数の主鋼材の少なくとも一部の配列を固定する配力筋が設けられていて、 前記一対の主桁板には、複数の補強部材がそれぞれ連結されて、前記補強部材は前記一対の主桁板間の寸法よりも短い寸法に形成され前記一対の主桁板のいずれか一方に連結されていて、 前記補強部材は略台形状に形成されていて一方の斜辺が前記主桁板に固定され、他方の斜辺が前記スキンプレートに固定され、前記配力筋の両端部が前記補強部材に溶接により固着されていることを特徴とするセグメント。 【請求項2】 前記複数の補強部材のうちの一部に代わって、前記一対の主桁板の両方のウェブにそれぞれ連結され且つスキンプレートに連結されないリブが設けられている請求項1に記載されたセグメント。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-06-14 |
出願番号 | 特願2014-95481(P2014-95481) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(E21D)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 須永 聡 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 井上 博之 |
登録日 | 2016-03-25 |
登録番号 | 特許第5906277号(P5906277) |
権利者 | 株式会社IHI建材工業 |
発明の名称 | セグメント |
代理人 | 越前 昌弘 |
代理人 | 越前 昌弘 |
代理人 | 安彦 元 |
代理人 | 渡邉 孝太 |