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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05B
管理番号 1331209
異議申立番号 異議2016-700496  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-01 
確定日 2017-07-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5828102号発明「LED点灯装置及びそれを用いた照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5828102号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第5828102号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5828102号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成22年12月20日に特許出願され、平成27年10月30日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年6月1日付けで特許異議申立人 井上 満(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年8月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月21日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ、平成29年1月18日付けて取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年3月27日付けで意見書の提出及び訂正請求があり、その訂正の請求に対して同年4月28日付けで申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成28年10月21日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされるので、平成29年3月27日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)について、以下適否の判断を行う。
本件訂正請求は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。以下の訂正事項2?6も同様。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力を制御する出力制御部とを備え、
前記電力変換部は、インダクタンス素子及びコンデンサの直列回路と、前記インダクタンス素子と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオフ時に前記インダクタンス素子の放電経路を構成するダイオードとを備えたチョッパ回路からなり、
前記出力制御部は、前記インダクタンス素子の二次巻線に発生する電圧を動作電源とし、点灯開始からの所定期間における前記LED光源への供給電流が、定常時における前記LED光源への供給電流よりも小さくなるように、前記所定期間における前記スイッチング素子のオン時間を、定常時における前記スイッチング素子のオン時間よりも短くしたことを特徴とするLED点灯装置。」
を、
「電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力を制御する出力制御部と、
前記出力制御部に動作電源を供給する制御電源部とを備え、
前記電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線及び第1コンデンサの第1直列回路と、前記一次巻線と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオフ時に前記一次巻線の放電経路を構成するダイオードとを備えた降圧チョッパ回路からなり、
前記制御電源部は、抵抗及び第2コンデンサの第2直列回路を有し、前記第2直列回路における前記抵抗側の端部が前記インダクタンス素子の二次巻線に電気的に接続され、かつ前記抵抗と前記第2コンデンサとの接続点が前記出力制御部に電気的に接続され、
前記出力制御部は、前記二次巻線に発生する電圧を動作電源とし、前記出力制御部は、前記電源電圧が供給された後、前記出力制御部の動作電源電圧が所定電圧に達したときに動作を開始して点灯動作が開始されるものであって、点灯開始からの所定期間における前記LED光源への供給電流が、定常時における前記LED光源への供給電流よりも小さくなるように、前記所定期間における前記スイッチング素子のオン時間を、定常時における前記スイッチング素子のオン時間よりも短くしたことを特徴とするLED点灯装置。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に記載された、
「前記出力制御部は、前記インダクタンス素子に蓄積された電荷を放電する際に前記二次巻線に発生する正極性の電圧を動作電源としていることを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。」
を、
「前記出力制御部は、前記一次巻線に蓄積された電荷を放電する際に前記二次巻線に発生する正極性の電圧を動作電源としていることを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に記載された、
「前記出力制御部は、前記インダクタンス素子に流れる電流がゼロになるタイミングで前記スイッチング素子をオンにする臨界モードで制御しており、
前記インダクタンス素子に流れる電流を検出するための巻線を前記二次巻線で兼用していることを特徴とする請求項1又は2記載のLED点灯装置。」
を、
「前記出力制御部は、前記一次巻線に流れる電流がゼロになるタイミングで前記スイッチング素子をオンにする臨界モードで制御しており、
前記一次巻線に流れる電流を検出するための巻線を前記二次巻線で兼用していることを特徴とする請求項1又は2記載のLED点灯装置。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0007】に記載された、
「本発明のLED点灯装置は、電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部と、電力変換部の出力を制御する出力制御部とを備え、電力変換部は、インダクタンス素子及びコンデンサの直列回路と、インダクタンス素子と直列に接続されて出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、スイッチング素子のオフ時にインダクタンス素子の放電経路を構成するダイオードとを備えたチョッパ回路からなり、出力制御部は、インダクタンス素子の二次巻線に発生する電圧を動作電源とし、点灯開始からの所定期間におけるLED光源への供給電流が、定常時におけるLED光源への供給電流よりも小さくなるように、所定期間におけるスイッチング素子のオン時間を、定常時におけるスイッチング素子のオン時間よりも短くしたことを特徴とする。」
を、
「本発明のLED点灯装置は、電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部と、電力変換部の出力を制御する出力制御部と、出力制御部に動作電源を供給する制御電源部とを備え、電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線及び第1コンデンサの第1直列回路と、一次巻線と直列に接続されて出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、スイッチング素子のオフ時に一次巻線の放電経路を構成するダイオードとを備えた降圧チョッパ回路からなり、制御電源部は、抵抗及び第2コンデンサの第2直列回路を有し、第2直列回路における抵抗側の端部がインダクタンス素子の二次巻線に電気的に接続され、かつ抵抗と第2コンデンサとの接続点が出力制御部に電気的に接続され、出力制御部は、二次巻線に発生する電圧を動作電源とし、出力制御部は、電源電圧が供給された後、出力制御部の動作電源電圧が所定電圧に達したときに動作を開始して点灯動作が開始されるものであって、点灯開始からの所定期間におけるLED光源への供給電流が、定常時におけるLED光源への供給電流よりも小さくなるように、所定期間におけるスイッチング素子のオン時間を、定常時におけるスイッチング素子のオン時間よりも短くしたことを特徴とする。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0008】に記載された、
「このLED点灯装置において、出力制御部は、インダクタンス素子に蓄積された電荷を放電する際に二次巻線に発生する正極性の電圧を動作電源としているのが好ましい。」
を、
「このLED点灯装置において、出力制御部は、一次巻線に蓄積された電荷を放電する際に二次巻線に発生する正極性の電圧を動作電源としているのが好ましい。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0009】に記載された、
「また、このLED点灯装置において、出力制御部は、インダクタンス素子に流れる電流がゼロになるタイミングでスイッチング素子をオンにする臨界モードで制御しており、インダクタンス素子に流れる電流を検出するための巻線を二次巻線で兼用しているのも好ましい。」
を、
「また、このLED点灯装置において、出力制御部は、一次巻線に流れる電流がゼロになるタイミングでスイッチング素子をオンにする臨界モードで制御しており、一次巻線に流れる電流を検出するための巻線を二次巻線で兼用しているのも好ましい。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0014】、【0015】、【0017】、【0024】、及び、【図1】に基づいて特許請求の範囲を減縮するものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2及び3は、訂正事項1に伴う訂正であり、訂正事項1と同様に特許請求の範囲を減縮するものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項4?6は、訂正事項1?3の訂正に伴って、明細書と特許請求の範囲との記載とを整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) また、訂正前の請求項1?4は、請求項2?4が、訂正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
(5) 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1?4」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力を制御する出力制御部と、
前記出力制御部に動作電源を供給する制御電源部とを備え、
前記電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線及び第1コンデンサの第1直列回路と、前記一次巻線と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオフ時に前記一次巻線の放電経路を構成するダイオードとを備えた降圧チョッパ回路からなり、
前記制御電源部は、抵抗及び第2コンデンサの第2直列回路を有し、前記第2直列回路における前記抵抗側の端部が前記インダクタンス素子の二次巻線に電気的に接続され、かつ前記抵抗と前記第2コンデンサとの接続点が前記出力制御部に電気的に接続され、
前記出力制御部は、前記二次巻線に発生する電圧を動作電源とし、前記出力制御部は、前記電源電圧が供給された後、前記出力制御部の動作電源電圧が所定電圧に達したときに動作を開始して点灯動作が開始されるものであって、点灯開始からの所定期間における前記LED光源への供給電流が、定常時における前記LED光源への供給電流よりも小さくなるように、前記所定期間における前記スイッチング素子のオン時間を、定常時における前記スイッチング素子のオン時間よりも短くしたことを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、前記一次巻線に蓄積された電荷を放電する際に前記二次巻線に発生する正極性の電圧を動作電源としていることを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記一次巻線に流れる電流がゼロになるタイミングで前記スイッチング素子をオンにする臨界モードで制御しており、
前記一次巻線に流れる電流を検出するための巻線を前記二次巻線で兼用していることを特徴とする請求項1又は2記載のLED点灯装置。
【請求項4】
請求項1?3の何れか1項に記載のLED点灯装置と、前記LED光源が機械的且つ電気的に接続されるランプソケットと、前記LED点灯装置及び前記ランプソケットを保持する器具本体とを備えていることを特徴とする照明器具。」

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1?4に係る特許に対して平成29年1月18日付けで特許権者に通知した取消理由は、概略次のとおりである。

[取消理由1]この特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[取消理由2]この特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

引用文献1 :特開2007-215316号公報
引用文献2 :特開2010-279248号公報
引用文献3 :特開2009-32511号公報
引用文献4 :特開平4-121055号公報
引用文献1?3は、それぞれ、平成28年6月1日付けの申立人による特許異議申立書(以下「申立書」という。)の甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証、及び、甲第4号証である。

第5 当審の判断
1 取消理由1について
引用文献1には以下の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。以下、(1a)等の記載事項を「摘示(1a)」などという場合がある。
(1a)
「【0001】
本発明は、スイッチ素子がトランスの一次巻線に接続され、トランスの二次巻線から負荷に所定の出力電力を供給するようにしたスイッチング電源制御回路に関し、とくにスイッチ素子の両端に印加される電圧の最低点が検出されるタイミングで、負荷からのフィードバック信号に応じてスイッチ素子をターンオンする擬似共振型のスイッチング電源制御回路に関する。

【0003】
図4は、従来の擬似共振型のスイッチング電源の制御回路を示すブロック図である。…」

(1b)
「【0010】
つぎに、上述した制御回路10を用いたAC/DCスイッチング電源回路の構成例、およびそのPWM制御動作について説明する。
図5は、AC/DCスイッチング電源回路の一例を示すブロック図である。
【0011】
なお、図4の制御回路10は、図5ではAC/DCスイッチング電源回路における集積回路ICに相当するものであって、…その他に集積回路各部に対する基準電圧を与える接地端子GND、集積回路の電源を供給する電源端子VCC、起動電流を供給するVH端子、および未接続のNC端子などの端子機能を有するピンを備えている。
【0012】
図5において、交流電源ACの交流入力は、ダイオードブリッジD1により整流され直流の入力電圧VINとなる。トランスT1は、その一次巻線Lpのインダクタンス(Lp)とスイッチ素子Q1に並列接続された共振用のコンデンサCrのキャパシタンス(これはスイッチ素子Q1の寄生容量だけで構成することもできる。)からなるLC共振回路を備えている。入力電圧VINは平滑コンデンサC1の一端とトランスT1の一次巻線Lpにそれぞれ供給され、一次巻線Lpの他端がスイッチ素子Q1のドレインと接続されている。スイッチ素子Q1のソースは抵抗R1を介して平滑コンデンサC1の他端に接続され、ゲートは抵抗R2を介して集積回路ICの出力端子OUTに接続されている。
【0013】
トランスT1の一次巻線Lp、二次巻線Lsおよび補助巻線Lbは、いずれもトランスT1の同一コアに巻かれている。なお、二次巻線LsのインダクタンスをLsとし、補助巻線LbのインダクタンスをLbとする。共振用のコンデンサCrは、スイッチ素子Q1と抵抗R1の直列回路に並列接続されているが、一次巻線Lpと並列に取り付けても同じ効果がある。補助巻線Lbには、集積回路ICの電源を作るための整流用ダイオードD2と平滑コンデンサC2が接続されている。R3はスイッチ素子Q1と抵抗R1との接続点電圧を電流センス信号入力端子ISに供給する抵抗であり、R4は補助巻線Lbの電圧を整流せずにそのまま集積回路ICの入力端子ZCDに入力するための抵抗である。
【0014】
トランスT1の二次巻線Lsには、二次巻線Lsに発生した電圧を整流するためのダイオードD3、平滑コンデンサC3が設けられている。ダイオードD3のアノードは二次巻線Lsの一端に接続され、カソードは電源出力端子Voutに接続されるとともに平滑コンデンサC3の一端に接続されている。平滑コンデンサC3の他端は二次巻線Lsの他端に接続されるとともに接地端子Gndに接続されている。
【0015】
集積回路ICは、その出力端子OUTの電位がハイ/ロウ(High/Low)レベルに変化してスイッチ素子Q1のゲートを駆動し、スイッチ素子Q1をオン/オフさせることにより、トランスT1の二次巻線Ls側で平滑された直流電圧を電源出力端子Voutと接地端子Gnd間に生成する。このときスイッチ素子Q1には、そのオン期間にドレイン電流が流れるから、そこに接続されたトランスT1での逆起電力により、その二次巻線Ls側に電流が流れてエネルギーが貯えられる。スイッチ素子Q1はその後にオフするが、このトランスT1に蓄えられたエネルギーにより、スイッチ素子Q1のオフ期間にトランスT1の二次巻線Ls側でダイオードD3を通して平滑コンデンサC3に電流を流す。こうして、電源出力端子Voutと接地端子Gnd間には、トランスT1の二次巻線Ls側で平滑された直流電圧が生成される。

【0017】
図5の回路において、スイッチ素子Q1がオフになるとトランスT1に蓄えられたエネルギーが二次巻線Ls側の平滑回路に放出され、放出し終わったとき、スイッチ素子Q1のソースドレイン間電圧(以下、単にドレイン電圧という。)Vdsはハイレベルから下がって、トランスT1のLC共振回路で振動が始まる。なお、後述する図7のタイミングチャートには、それぞれ重負荷、中負荷、および軽負荷のタイミングで生じるスイッチ素子Q1のドレイン電圧Vdsの振動波形を示している。
【0018】
このとき、トランスT1の補助巻線Lbには、その巻線数に比例した振幅のドレイン電圧Vdsに対応する電圧波形が現れる。スイッチ素子Q1のドレイン電圧Vdsは、交流電源ACの交流入力を整流したときに平滑コンデンサC1の端子間に生じる直流電圧を中心に振動する。これに対して、ゼロ電流検出用の入力端子ZCDは、トランスT1の一次巻線Lpとは逆極性の補助巻線Lbに接続されていることから、ここには0Vを中心とする振動波形のゼロ電流検出信号が現れる。
【0019】
集積回路ICでは、ボトム検出回路11において入力端子ZCDに印加されるゼロ電流検出信号のゼロクロス検出が行われる。ボトム検出回路11の出力信号は、ゼロクロスのタイミングから共振振動の1/4周期の遅れが調整され、アンド回路12を介してワンショット回路13に供給される(すなわち、ボトム検出回路11はボトムを直接検出するのではなく、ゼロクロスから間接的にボトムを検出する)。そして、スイッチ素子Q1のドレイン電圧Vdsが最低電圧(ボトム)となるタイミングで、フリップフロップ回路19からアンド回路20を介して出力端子OUTにスイッチング信号が出力される。これによりトランスT1を流れる電流がゼロの状態(共振回路では電圧と電流が1/4周期ずれている)でのスイッチング動作、すなわちソフトスイッチングが実現できる。
【0020】
図6は、スイッチング周波数(fsw)と出力電力(Po)との関係を示す特性図である。
電子機器などが待機状態であれば、電源の出力端子に接続された出力負荷が軽負荷になるが、その場合はマイコンなどの負荷へ供給する電力は通常動作状態と比べて少なくてすむ。ここで問題になるのは、軽負荷時にはスイッチング周波数が著しく上昇し、スイッチ素子Q1でのスイッチングロスが増大して、その発熱でスイッチ素子Q1にダメージが与えられ、あるいはノイズ規制の厳しい150kHz以上の周減数帯に入って、製品規格をクリアできなくなることである。」

(1c) 「【0041】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係るスイッチング電源制御回路を示す回路図である。…なお、擬似共振型のスイッチング電源制御回路としての基本的な構成は、図4に示す従来回路と同一であるため、従来回路の構成と同一部分には同じ符号を付けて、それらの説明は省略する。

【0049】
さらに、電圧制御発振器25はソフトスタート回路18と共用することで、回路規模の増加を押える同様の効果をもつ。すなわち、ソフトスタート回路18は、スイッチ素子のターンオン期間を制限して、電源起動時に急にパルス幅が最大状態となることを防止し、徐々にターンオン期間を広げていく機能であって、ソフトスタート時間としては1ms以上の立ち上がり波形のパルスを生成する必要がある。そこで、電圧制御発振器25から遅い周期での立ち上がり波形を有する発振パルスを出力して、PWMコンパレータに入力するように構成すれば、2つの回路の共用ができる。」

(1d) 引用文献1の【図3】、【図5】にはそれぞれ、以下の図が記載されている。


(2) 引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1には、
(ア) 制御回路10を用いたAC/DCスイッチング電源回路(摘示(1b)【0010】)の具体例として、
(イ)
a 交流電源ACの交流入力は、ダイオードブリッジD1により整流され直流の入力電圧VINとなること(摘示(1b)【0012】)、
b 直流電圧を電源出力端子Voutと接地端子Gnd間に生成すること(摘示(1b)【0015】)、
c 電源の出力端子Voutに出力負荷が接続され、電力が供給されること(摘示(1b)【0020】、摘示(1d)【図5】)、
(ウ) 集積回路ICは、スイッチ素子Q1をオン/オフさせることにより、トランスT1の二次巻線Ls側で平滑された直流電圧を電源出力端子Voutと接地端子Gnd間に生成すること(摘示(1b)【0015】)、
(エ)
a トランスT1の補助巻線Lbには、集積回路ICの電源を作るための整流用ダイオードD2と平滑コンデンサC2が接続されていること(摘示(1b)【0013】)、
b トランスT1の補助巻線Lbは集積回路の電源を供給する電源端子VCCに接続されていること(摘示(1b)【0011】、摘示(1d)【図5】)、
c トランスT1の補助巻線Lbには、その巻線数に比例した振幅のドレイン電圧Vdsに対応する電圧波形が現れること(摘示(1b)【0018】)、
(オ) トランスT1の二次巻線Lsには平滑コンデンサC3が接続されるものであって(摘示(1b)【0014】)、その接続が直列回路を構成していること(摘示(1d)【図5】)、
(カ) トランスT1の一次巻線Lpの他端がスイッチ素子Q1と接続されるものであって(摘示(1b)【0012】)、その接続が直列であること(摘示(1d)【図5】)、
(キ) スイッチ素子Q1のオフ期間にトランスT1の二次巻線Ls側でダイオードD3を通して平滑コンデンサC3に電流を流すものであって(摘示(1b)【0015】)、ダイオードD3はトランスT1の二次巻線Lsの放電経路を構成すること(摘示(1d)【図5】)、
(ク) ソフトスタート回路18は、集積回路ICの一部をなすものであって(摘示(1d)の【図3】及び【図5】、摘示(1b)【0011】、摘示(1c)【0041】。なお、【図5】は従来例、【図3】は実施例に係るものであるが、摘示(1a)の【0001】及び摘示(1c)の【0041】によれば、実施例においても【図5】の回路への適用を当然に想定しているといえる。)、ソフトスタート回路18は、スイッチ素子のターンオン期間を制限して、電源起動時に急にパルス幅が最大状態となることを防止し、徐々にターンオン期間を広げていくこと(摘示(1c)【0049】)、
が記載されており、また、
(ケ) 上記「(イ)b」の直流電圧は、摘示(1d)の【図5】及び技術常識から、上記「(イ)a」の直流の入力電圧VINを変換したものといえること、
(コ) 上記「(エ)」?「(キ)」及び技術常識から、「トランスT1の一次巻線Lp」、「トランスT1の二次巻線Ls」、「平滑コンデンサC3」、「スイッチ素子Q1」及び「ダイオードD3」(摘示(1d)【図5】)は、技術常識からみて、「直流の入力電圧VIN」を「直流電圧」に変換する(上記「(ケ)」参照)電力変換回路を構成しているといえること、
(サ) 上記「(エ)」及び技術常識から、
a トランスT1の補助巻線Lb、整流用ダイオードD2及び平滑コンデンサC2は、集積回路ICに動作電源を供給するものであるといえること、
b 集積回路ICは、トランスT1の補助巻線Lbに発生する電圧を動作電源としているといえること、
(シ) 集積回路ICは、起動電流が供給されるVH端子を備え(摘示(1b)【0012】)、VH端子は、交流電源ACを交流入力としたダイオードブリッジD1の出力の一端に接続されること(摘示(1d)【図5】)、
が明らかである。

イ これらのことから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「交流電源ACの交流入力を直流の入力電圧VINとし、
直流の入力電圧VINを電力変換回路により変換した直流電圧を電源出力端子Voutと接地端子Gnd間に生成し、電源出力端子Voutに接続された出力負荷に電力を供給し、
スイッチ素子Q1をオン/オフさせることにより、電源出力端子Voutと接地端子Gnd間に直流電圧を生成する集積回路ICと、
集積回路ICに動作電源を供給するトランスT1の補助巻線Lb、整流用ダイオードD2及び平滑コンデンサC2と、
トランスT1の一次巻線Lpと直列に接続されて集積回路ICによってオン/オフされるスイッチ素子Q1と、
トランスT1の二次巻線Lsと平滑コンデンサC3の直列回路と、
スイッチ素子Q1のオフ期間にトランスT1の二次巻線Lsの放電経路を構成するダイオードD3とを備え、
集積回路ICは、トランスT1の補助巻線Lbに発生する電圧を動作電源とし、
集積回路ICは、起動電流が供給されるVH端子を備え、VH端子は、交流電源ACを交流入力としたダイオードブリッジD1の出力の一端に接続され、
電源起動時に急にパルス幅が最大状態となることを防止し、徐々にターンオン期間を広げるAC/DCスイッチング電源回路。」

(3) 対比・判断
(3-1) 本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)
a 引用発明の「交流電源ACの交流入力を直流の入力電圧VIN」としたもの及び「直流の入力電圧VINを変換した直流電圧」はそれぞれ本件発明1の「電源電圧」及び「所定の直流電圧」に相当する。
b 引用発明の「出力負荷」は、本件発明1の「LED光源」と「出力負荷」である限度で一致する。
c 引用発明の「トランスT1」、「一次巻線Lp」、「スイッチ素子Q1」、「平滑コンデンサC3」、「ダイオードD3」はそれぞれ、本件発明1の「インダクタンス素子」、「一次巻線」、「スイッチング素子」、「第1コンデンサ」、「ダイオード」に相当し、また、引用発明の「電力変換回路」は本件発明1の「電力変換部」に相当する。
d 上記「a」?「c」より、引用発明の「交流電源ACの交流入力を直流の入力電圧VINとし、直流の入力電圧VINを電力変換回路により変換した直流電圧を電源出力端子Voutと接地端子Gnd間に生成し、電源出力端子Voutに接続された出力負荷に電力を供給」する構成は、本件発明1の「電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部」と、「電源電圧を所定の直流電圧に変換して出力負荷に出力する電力変換部」である限度で一致する。
(イ) 引用発明の「集積回路IC」は本件発明1の「出力制御部」に相当し、上記「(ア)」の相当関係及び集積回路ICの機能を鑑みれば、引用発明の「スイッチ素子Q1をオン/オフさせることにより、電源出力端子Voutと接地端子Gnd間に直流電圧を生成する集積回路IC」は、本件発明1の「前記電力変換部の出力を制御する出力制御部」に相当する。
(ウ) 引用発明の「集積回路ICに動作電源を供給するトランスT1の補助巻線Lb、整流用ダイオードD2及び平滑コンデンサC2」は、本件発明1の「出力制御部に動作電源を供給する制御電源部」に相当する。
(エ)
a 上記「(ア)」の相当関係より、引用発明の「トランスT1の一次巻線Lpと直列に接続されて集積回路ICによってオン/オフされるスイッチ素子Q1」は本件発明1の「インダクタンス素子の」「一次巻線と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子」に相当する。
b 上記「a」より、引用発明の「トランスT1の一次巻線Lpと直列に接続されて集積回路ICによってオン/オフされるスイッチ素子Q1と、トランスT1の二次巻線Lsと平滑コンデンサC3の直列回路と、スイッチ素子Q1のオフ期間にトランスT1の二次巻線Lsの放電経路を構成するダイオードD3とを備え」る構成は、いわゆるフライバック型のコンバータであり、本件発明1の「前記電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線及び第1コンデンサの第1直列回路と、前記一次巻線と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオフ時に前記一次巻線の放電経路を構成するダイオードとを備えた降圧チョッパ回路」と、「前記電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子を備えた回路」である限度で一致する。
(オ) 上記「(ア)」、「(イ)」の相当関係より、引用発明の「集積回路ICは、トランスT1の補助巻線Lbに発生する電圧を動作電源と」する構成は、本件発明1の「前記出力制御部は、前記インダクタンス素子の二次巻線に発生する電圧を動作電源と」する構成と、「前記出力制御部は、前記インダクタンス素子の巻線に発生する電圧を動作電源と」する構成である限度で一致する。
(カ) 引用発明の「集積回路ICは、起動電流が供給されるVH端子を備え」ることは、制御回路ICがVH端子に起動電流が供給されることで動作を開始することを意味し、また、「VH端子は、交流電源ACを交流入力としたダイオードブリッジD1の出力の一端に接続され」ることは、交流電源ACが供給された後にVH端子から電流供給されることを意味しているのは明らかである。そして、集積回路ICは、出力負荷に出力を供給する電力変換部の制御を行うものである(上記(ア)、(イ)参照)。
引用発明の「集積回路ICは、起動電流が供給されるVH端子を備え、VH端子は、交流電源ACを交流入力としたダイオードブリッジD1の出力の一端に接続され」ることは、集積回路ICは、交流電源ACが供給された後に起動電流がVH端子に供給され、出力負荷に出力を供給する電力変換部の制御を行うことを含むので、本件発明1の「前記出力制御部は、前記電源電圧が供給された後、前記出力制御部の動作電源電圧が所定電圧に達したときに動作を開始して点灯動作が開始される」ことと、「前記出力制御部は、前記電源電圧が供給された後、動作を開始して出力負荷に出力が開始される」限度で一致する。
(キ) 引用発明の「電源起動時に急にパルス幅が最大状態となることを防止し、徐々にターンオン期間を広げる」ことは、ソフトスタートに係るものであること(摘示(1c)【0049】)及び上記「(ア)」の相当関係を鑑みれば、本件発明1の「点灯開始からの所定期間における前記LED光源への供給電流が、定常時における前記LED光源への供給電流よりも小さくなるように、前記所定期間における前記スイッチング素子のオン時間を、定常時における前記スイッチング素子のオン時間よりも短くしたこと」と、「電源起動からの所定期間における前記出力負荷への供給電流が、定常時における前記出力負荷への供給電流よりも小さくなるように、前記所定期間における前記スイッチング素子のオン時間を、定常時における前記スイッチング素子のオン時間よりも短くしたこと」の限度で一致する。
(ク) 引用発明の「AC/DCスイッチング電源回路」は、本件発明1の「LED点灯装置」と「スイッチング電源回路」である限度で一致する。

イ 以上によれば、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「電源電圧を所定の直流電圧に変換して出力負荷に出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力を制御する出力制御部と、
前記出力制御部に動作電源を供給する制御電源部とを備え、
前記電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子を備えた回路からなり、
前記出力制御部は、前記インダクタンス素子の巻線に発生する電圧を動作電源とし、前記出力制御部は、前記電源電圧が供給された後、動作を開始して出力負荷に出力が開始されるものであって、電源起動からの所定期間における前記出力負荷への供給電流が、定常時における前記出力負荷への供給電流よりも小さくなるように、前記所定期間における前記スイッチング素子のオン時間を、定常時における前記スイッチング素子のオン時間よりも短くしたスイッチング電源回路。」

[相違点1]
本件発明1は、「インダクタンス素子の一次巻線及び第1コンデンサの第1直列回路と、一次巻線と直列に接続されて出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、スイッチング素子のオフ時に一次巻線の放電経路を構成するダイオードとを備えた降圧チョッパ回路から」なる「電力変換部」の負荷が「LED光源」である「LED点灯装置」であり、「電力変換部の出力を制御する出力制御部」が「点灯開始からの所定期間におけるLED光源への供給電流が、定常時におけるLED光源への供給電流よりも小さくなるように、所定期間におけるスイッチング素子のオン時間を、定常時におけるスイッチング素子のオン時間よりも短くした」ものであるのに対して、引用発明は、「トランスT1の一次巻線Lpと直列に接続されて集積回路ICによってオン/オフされるスイッチ素子Q1と、トランスT1の二次巻線Lsと平滑コンデンサC3の直列回路と、スイッチ素子Q1のオフ期間にトランスT1の二次巻線Lsの放電経路を構成するダイオードD3とを備え」た、いわゆるフライバック型のコンバータであり、出力負荷が特定されておらず、出力負荷とは関係なく「電源起動時に急にパルス幅が最大状態となることを防止し、徐々にターンオン期間を広げる」ものである点。
[相違点2]
本件発明1は、「制御電源部は、抵抗及び第2コンデンサの第2直列回路を有し、第2直列回路における抵抗側の端部がインダクタンス素子の二次巻線に電気的に接続され、かつ抵抗と第2コンデンサとの接続点が出力制御部に電気的に接続され」たものであるのに対し、引用発明は、「集積回路ICに動作電源を供給する」のが「トランスT1の補助巻線Lb、整流用ダイオードD2及び平滑コンデンサC2」によるものであり、補助巻線Lbから電圧を得るものであり、抵抗を有していない点。
[相違点3]
本件発明1は、「出力制御部」は、電源電圧が供給された後、「出力制御部の動作電源電圧が所定電圧に達したときに動作を開始して点灯動作が開始される」ものであるのに対して、引用発明は、交流電源ACが供給された後に起動電流がVH端子に供給されるものの、所定電圧に達したときとは特定されていない点。

ウ 判断
まず、相違点1について判断する。
本件特許の明細書には次の記載がある。
「【0005】
上述の特許文献1に示したLED点灯装置では、起動時においてインダクタンス素子を流れる電流はキャパシタンス素子に充電されていくが、このときLED光源への供給電流が大きいとキャパシタンス素子は緩やかに立ち上がることになる。そして、上記駆動制御部の動作電源が点灯回路部の出力側から供給されている場合には、キャパシタンス素子の緩やかな立ち上がりに比例して動作電源からの制御電流も緩やかに立ち上がることになり、その結果、上記駆動制御部への動作電源が安定するまでに時間を要するものであった。また、動作電源からの制御電流が急峻に立ち上がるように構成した場合には、上記駆動制御部への供給電流が増加することになり、上記駆動制御部又は動作電源での電力ロスが増大する虞があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、出力制御部への動作電源が安定するまでの時間を短縮させたLED点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することにある。」
「【0024】
ここで、図3はLED点灯装置の動作を説明するための別のグラフである。直流電源1から電源電圧が供給され、起動回路(図示せず)から出力制御部3へ制御用起動電流が供給された後、動作電源電圧が所定電圧に達する時刻t3のときに、出力制御部3が動作を開始して点灯動作が開始される。出力制御部3の制御回路31は、LEDランプ5の負荷電流I3がI31となるように制御信号を作成し、駆動回路32に出力する。駆動回路32は、制御回路31から出力された制御信号に従ってスイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が小さくなるようにオン・オフ時間を制御し、LEDランプ5の負荷電流I3をI31に設定する。
【0025】
次に、制御回路31は、時刻t4のときに、LEDランプ5の負荷電流I3がI32(I32>I31)となるように制御信号を作成し、駆動回路32に出力する。駆動回路32は、制御回路31から出力された制御信号に従ってスイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が大きくなるようにオン・オフ時間を制御し、LEDランプ5の負荷電流I3をI32に設定する。
【0026】
すなわち、本実施形態では、点灯開始からの所定期間(本例では図3(a)中の時刻t3から時刻t4の間)におけるLEDランプ5の負荷電流I3(=I31)が、定常時(図3(a)中の時刻t4以降)におけるLEDランプ5の負荷電流I3(=I32)よりも小さくなるように、スイッチング素子Q1のオン・オフ時間を制御している。その結果、点灯開始時におけるコンデンサC1の立ち上がりが急峻になり、それに伴ってインダクタンス素子L1の二次巻線n2に発生する電圧も急峻に立ち上がるため、制御電源部4から出力制御部3への動作電源が安定するまでの時間を短縮することができる。
【0027】
さらに、時刻t3から時刻t4の間の所定期間においては、インダクタンス素子L1の二次巻線n2に発生する電圧は、スイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が小さくなることによって正電圧が発生する期間の比率が増加することになり、制御電源部4から出力制御部3への供給電流は増加し、動作電源が安定するまでの時間を大幅に短縮することができる。また、時刻t4以降は、スイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が大きくなることによって正電圧が発生する期間の比率が低下し、制御電源部4から出力制御部3への供給電流は低下するため、出力制御部3又は制御電源部4での電力ロスを低減することができる。」

上記記載によれば、本件発明1は、「出力制御部への動作電源が安定するまでの時間を短縮させたLED点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供する」(段落【0006】)ことを目的として、「出力制御部は」、「点灯開始からの所定期間におけるLED光源への供給電流が、定常時におけるLED光源への供給電流よりも小さくなるように、所定期間におけるスイッチング素子のオン時間を、定常時におけるスイッチング素子のオン時間よりも短くした」との構成を有するものであり、前記の目的の達成とともに「点灯開始時におけるコンデンサC1の立ち上がりが急峻になり」(段落【0026】)との効果も得るものである。
本件発明1は、相違点1に係る構成、すなわち、電力変換部である降圧チョッパ回路の負荷が「LED光源」であることを前提とした、「点灯開始からの所定期間におけるLED光源への供給電流が、定常時におけるLED光源への供給電流よりも小さくなるように、所定期間におけるスイッチング素子のオン時間を、定常時におけるスイッチング素子のオン時間よりも短くした」との構成により、降圧チョッパ回路内の二次巻線から得られる動作電源を早期に安定化させるとともに、降圧チョッパ回路の出力端のコンデンサC1の立ち上がりを並列に接続されるLED光源の特性を考慮して急峻になるようにするものであるといえる。

これに対して、引用発明の「AC/DCスイッチング電源回路」は、出力負荷が特定されておらず、出力負荷の特性とは関係なく「電源起動時に急にパルス幅が最大状態となることを防止し、徐々にターンオン期間を広げる」との制御を行うものである。
引用発明は、動作初期の段階で負荷に供給される電流を小さくする点で本件発明1と類似するものの、負荷がLED光源と特定されていないことから、本件発明1のようなLED光源を負荷としたときの、その特性に基づいた特有の効果(コンデンサC1の立ち上がりを急峻とする)を予測しうるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、相違点1に係る構成により顕著な効果を有するといえるので、スイッチング電源回路が種々の装置に用いることができるものであり、LED光源の点灯装置として用いることも従来周知の技術(引用文献2、3参照)であり、更に、降圧チョッパ回路の回路構成が引用文献4に示されているとしても、引用発明を相違点1に係る本件発明1の構成を備えるものとすることは、当業者にとって容易想到とはいえない。
よって、引用発明を、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうるとはいえない。

したがって、相違点2、3について判断するまでもなく、本件発明1は、引用発明、引用文献4に記載の事項及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-2) 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1のすべての事項を含み更に減縮したものであるから、「(3-1)ウ」で述べたと同様の理由により、引用発明、引用文献4に記載の事項及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 取消理由2について
(1) 概要
取消理由2の概要は以下のとおりである。
ア 段落【0026】の記載に関して、LEDランプ5の負荷電流I3を定常時よりも小さくすることと、「コンデンサC1の立ち上がりが急峻になり、それに伴ってインダクタンス素子L1の二次巻線n2に発生する電圧も急峻に立ち上がる」こととの因果関係が不明であり、そのことによって、なぜ「動作電源が安定するまでの時間を大幅に短縮することができる」のかが不明。
イ 段落【0027】の記載に関して、「スイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が小さくなる」とする根拠が不明。
ウ よって、本件特許の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでなく、また、当業者が本件発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

(2) 判断
ア 本件特許の発明の詳細な説明の段落【0014】?【0018】には、点灯装置の具体的な回路構成が記載されており、【図1】を併せみれば、電力変換部2のコンデンサC1には、LEDランプ5が並列に接続された回路構成であることが理解できる。
LEDに印加される電圧が順電圧に向かって下げられるときに、電流値が徐々に制限されていくことは技術常識といえる。
前記のようなLEDランプ5とコンデンサC1とが並列に接続された回路構成において、LEDランプ5の負荷電流I3を小さくし制限していったときに、負荷電流I3が制限された分、並列に接続されていたコンデンサC1に流れ込む電流が、LEDランプ5の負荷電流I3を大きくしていたときよりも増えることは、前記のLEDにおける電圧電流特性に関する技術常識を鑑みれば十分に理解できることといえる。
したがって、段落【0026】のLEDランプ5の負荷電流I3を定常時よりも小さくすることと、「コンデンサC1の立ち上がりが急峻」になることとの因果関係は、発明の詳細な説明及び図面に記載されている回路構成から理解できる。
イ 上記「ア」で述べたとおり、LEDランプ5の負荷電流I3を定常時よりも小さくすることは、LEDに印加される電圧を順電圧に向かって下げていくことであり、電力変換部である降圧チョッパ回路の出力電圧を下げていくことである。
降圧チョッパ回路の出力電圧を下げることは、すなわち、降圧チョッパ回路を構成しているスイッチング素子のオン時間/オンオフ周期(いわゆるデューティ比)を小さくしていくことであるので、その分オフ時間/オンオフ周期が大きくなることは明らかである。
オフ時間/オンオフ周期が大きくなれば、段落【0027】の記載から、インダクタンス素子L1の二次巻線n2に正電圧が発生する期間の比率が増加し、制御電源部4から出力制御部3への供給電流は増加し、動作電源が安定するまでの時間を大幅に短縮できると理解しうる。
したがって、段落【0026】のLEDランプ5の負荷電流I3を定常時よりも小さくすることと、「インダクタンス素子L1の二次巻線n2に発生する電圧も急峻に立ち上がる」こととの因果関係、及び、「動作電源が安定するまでの時間を大幅に短縮することができる」ことの原理、並びに、段落【0027】の「スイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が小さくなる」とする根拠は、発明の詳細な説明及び図面に記載されている回路構成から理解できる。

以上のとおりであるので、本件特許の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものであり、当業者が本件発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は申立書において、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0026】の記載が当業者にとって理解できないものであることを前提として、特許請求の範囲の請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に記載したものとが実質的に対応していないとして、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさない旨主張しているが(申立書33頁下から5行?34頁4行参照)、上記「2」で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載は当業者が本件発明1?4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえ、申立人の主張は前提において誤りであり、また、本件発明1?4と発明の詳細な説明の記載とが対応していないとする理由もない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
LED点灯装置及びそれを用いた照明器具
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED点灯装置及びそれを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、LED光源に点灯電力を供給するLED点灯装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。このLED点灯装置は、直流電源から入力される電圧を所定の直流電圧に変換して出力する点灯回路部と、点灯回路部の出力電圧の急激な変化を抑制する保護回路部と、点灯回路部の出力電圧を検出する電圧検出回路部と、LED光源に流れる電流を検出するための電流検出用抵抗とを備える。また、点灯回路部は、直流電源の高電圧側に一端が接続されるインダクタンス素子と、インダクタンス素子の他端にアノードが接続される逆流防止用のダイオードと、インダクタンス素子の他端と直流電源の低電圧側との間に接続されるスイッチング素子と、ダイオードのカソードと直流電源の低電圧側との間に接続されるキャパシタンス素子と、点灯回路部の出力電圧を制御する駆動制御部とで構成される。
【0003】
このLED点灯装置では、駆動制御部が、電流検出用抵抗によりLED光源に流れる電流を検出し、その検出結果をスイッチング素子のオン・オフ制御にフィードバックすることで、LED光源に流れる電流が予め設定した目標値となるように点灯回路部の出力電圧を調整する。その結果、直流電源の電圧値が変動してもLED光源を均一な明るさで点灯させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-210271号公報(段落[0031]-段落[0036]、及び、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に示したLED点灯装置では、起動時においてインダクタンス素子を流れる電流はキャパシタンス素子に充電されていくが、このときLED光源への供給電流が大きいとキャパシタンス素子は緩やかに立ち上がることになる。そして、上記駆動制御部の動作電源が点灯回路部の出力側から供給されている場合には、キャパシタンス素子の緩やかな立ち上がりに比例して動作電源からの制御電流も緩やかに立ち上がることになり、その結果、上記駆動制御部への動作電源が安定するまでに時間を要するものであった。また、動作電源からの制御電流が急峻に立ち上がるように構成した場合には、上記駆動制御部への供給電流が増加することになり、上記駆動制御部又は動作電源での電力ロスが増大する虞があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、出力制御部への動作電源が安定するまでの時間を短縮させたLED点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のLED点灯装置は、電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部と、電力変換部の出力を制御する出力制御部と、出力制御部に動作電源を供給する制御電源部とを備え、電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線及び第1コンデンサの第1直列回路と、一次巻線と直列に接続されて出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、スイッチング素子のオフ時に一次巻線の放電経路を構成するダイオードとを備えた降圧チョッパ回路からなり、制御電源部は、抵抗及び第2コンデンサの第2直列回路を有し、第2直列回路における抵抗側の端部がインダクタンス素子の二次巻線に電気的に接続され、かつ抵抗と第2コンデンサとの接続点が出力制御部に電気的に接続され、出力制御部は、二次巻線に発生する電圧を動作電源とし、出力制御部は、電源電圧が供給された後、出力制御部の動作電源電圧が所定電圧に達したときに動作を開始して点灯動作が開始されるものであって、点灯開始からの所定期間におけるLED光源への供給電流が、定常時におけるLED光源への供給電流よりも小さくなるように、所定期間におけるスイッチング素子のオン時間を、定常時におけるスイッチング素子のオン時間よりも短くしたことを特徴とする。
【0008】
このLED点灯装置において、出力制御部は、一次巻線に蓄積された電荷を放電する際に二次巻線に発生する正極性の電圧を動作電源としているのが好ましい。
【0009】
また、このLED点灯装置において、出力制御部は、一次巻線に流れる電流がゼロになるタイミングでスイッチング素子をオンにする臨界モードで制御しており、一次巻線に流れる電流を検出するための巻線を二次巻線で兼用しているのも好ましい。
【0010】
本発明の照明器具は、上記のLED点灯装置と、LED光源が機械的且つ電気的に接続されるランプソケットと、LED点灯装置及びランプソケットを保持する器具本体とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
出力制御部への動作電源が安定するまでの時間を短縮させたLED点灯装置及び照明器具を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のLED点灯装置の概略回路図である。
【図2】(a)?(c)は同上の動作を説明するためのグラフである。
【図3】(a)?(c)は同上の動作を説明するための別のグラフである。
【図4】同上を用いた照明器具の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、LED点灯装置及び照明器具の実施形態を図1?図4に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態のLED点灯装置は、図1に示すように、直流電源1の出力電圧(電源電圧)を所定の直流電圧に変換してLEDランプ(LED光源)5に出力する電力変換部2と、電力変換部2の出力を制御する出力制御部3と、出力制御部3に動作電源を供給する制御電源部4とを備える。
【0015】
電力変換部2は、インダクタンス素子L1及びコンデンサC1の直列回路と、インダクタンス素子L1と直列に接続されて出力制御部3によってオン・オフされるスイッチング素子Q1(例えばバイポーラトランジスタや電界効果トランジスタなど)と、スイッチング素子Q1のオフ時にインダクタンス素子L1の放電経路を構成するダイオードD1とを備えたチョッパ回路からなる。
【0016】
出力制御部3は、LEDランプ5を流れる電流(負荷電流)がフィードバックされ、当該電流値が予め設定された目標値となるように制御信号を作成して出力する制御回路31と、制御回路31から出力される制御信号に従って電力変換部2のスイッチング素子Q1を駆動する駆動回路32とを備える。駆動回路32には、インダクタンス素子L1の二次巻線n2が接続されており、この二次巻線n2に発生する電圧を検出することで、インダクタンス素子L1の一次巻線n1に流れる電流を検出できるようになっている。また、制御回路31には、抵抗R1の一端側(抵抗R1の高電圧側)が接続されており、LEDランプ5に流れる電流に応じた電圧が入力されるようになっている。なお、動作については後述する。
【0017】
制御電源部4は、抵抗R2及びコンデンサC2の直列回路と、インダクタンス素子L1の二次巻線n2にアノードが接続されるとともに抵抗R2にカソードが接続されたダイオードD2とを備え、インダクタンス素子L1の二次巻線n2に発生する電圧を動作電源として出力制御部3に供給する。ここに本実施形態では、図1に示すように、インダクタンス素子L1の一次巻線n1に流れる電流を検出するための巻線を、電源供給用の二次巻線n2で兼用しており、上記電流を検出するための巻線を別に設けなくてもいいことから、コストアップを抑えたLED点灯装置を提供することができる。
【0018】
LEDランプ5は、複数のLED5a…が直列接続された状態で実装されたプリント基板(図示せず)と、透光性材料(例えばガラスなど)により長尺の直管状に形成された発光管5b(図4参照)と、発光管5bの両端部に設けられた口金(図示せず)とを備える。上記のプリント基板は、発光管5bの内部に収納されるとともに少なくとも一方の口金と電気的に接続され、この口金を介して電力変換部2から供給される直流電源により複数のLED5a…が点灯するのである。
【0019】
次に、LED点灯装置の動作について図2を参照しながら説明する。時刻t0のときに出力制御部3の駆動回路32から出力された駆動信号(オン信号)により電力変換部2のスイッチング素子Q1がオンにされると、スイッチング素子Q1に電流I1が流れ始めるとともにインダクタンス素子L1にも同じ大きさの電流I2(I2=I1)が流れ始める。このとき、インダクタンス素子L1の二次巻線n2には負極性の電圧V1が発生する。
【0020】
続けて、時刻t1のときにスイッチング素子Q1がオフにされると、スイッチング素子Q1に流れる電流I1はゼロになるが、インダクタンス素子L1には、スイッチング素子Q1のオン時に蓄積したエネルギーが放出され、時間の経過とともに比例的に減少する電流I2が流れる(図2(b)参照)。このとき、インダクタンス素子L1の二次巻線n2には正極性の電圧V1が発生する。
【0021】
そして、時刻t2のときにインダクタンス素子L1に流れる電流I2がゼロになると、再びスイッチング素子Q1がオンにされ、スイッチング素子Q1に電流I1が流れ始めるとともにインダクタンス素子L1にも同じ大きさの電流I2が流れ始める。このとき、インダクタンス素子L1の二次巻線n2には負極性の電圧V1が発生する。
【0022】
以下同様にして、スイッチング素子Q1がオン・オフを繰り返すことでコンデンサC1には所定の点灯電力が蓄積され、この点灯電力によりLEDランプ5が点灯するのである。
【0023】
ここに本実施形態では、出力制御部3が、インダクタンス素子L1の二次巻線n2によりインダクタンス素子L1の一次巻線n1に流れる電流を検出し、この検出値がゼロになるタイミングでスイッチング素子Q1をオンにする臨界モードでスイッチング素子Q1の動作を制御している。また本実施形態では、インダクタンス素子L1の一次巻線n1に蓄積させた電荷を放電する期間(図2(a)中の時刻t1から時刻t2の間)に二次巻線n2に発生する正極性の電圧を出力制御部3の動作電源としている。
【0024】
ここで、図3はLED点灯装置の動作を説明するための別のグラフである。直流電源1から電源電圧が供給され、起動回路(図示せず)から出力制御部3へ制御用起動電流が供給された後、動作電源電圧が所定電圧に達する時刻t3のときに、出力制御部3が動作を開始して点灯動作が開始される。出力制御部3の制御回路31は、LEDランプ5の負荷電流I3がI31となるように制御信号を作成し、駆動回路32に出力する。駆動回路32は、制御回路31から出力された制御信号に従ってスイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が小さくなるようにオン・オフ時間を制御し、LEDランプ5の負荷電流I3をI31に設定する。
【0025】
次に、制御回路31は、時刻t4のときに、LEDランプ5の負荷電流I3がI32(I32>I31)となるように制御信号を作成し、駆動回路32に出力する。駆動回路32は、制御回路31から出力された制御信号に従ってスイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が大きくなるようにオン・オフ時間を制御し、LEDランプ5の負荷電流I3をI32に設定する。
【0026】
すなわち、本実施形態では、点灯開始からの所定期間(本例では図3(a)中の時刻t3から時刻t4の間)におけるLEDランプ5の負荷電流I3(=I31)が、定常時(図3(a)中の時刻t4以降)におけるLEDランプ5の負荷電流I3(=I32)よりも小さくなるように、スイッチング素子Q1のオン・オフ時間を制御している。その結果、点灯開始時におけるコンデンサC1の立ち上がりが急峻になり、それに伴ってインダクタンス素子L1の二次巻線n2に発生する電圧も急峻に立ち上がるため、制御電源部4から出力制御部3への動作電源が安定するまでの時間を短縮することができる。
【0027】
さらに、時刻t3から時刻t4の間の所定期間においては、インダクタンス素子L1の二次巻線n2に発生する電圧は、スイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が小さくなることによって正電圧が発生する期間の比率が増加することになり、制御電源部4から出力制御部3への供給電流は増加し、動作電源が安定するまでの時間を大幅に短縮することができる。また、時刻t4以降は、スイッチング素子Q1のオン時間/オンオフ周期が大きくなることによって正電圧が発生する期間の比率が低下し、制御電源部4から出力制御部3への供給電流は低下するため、出力制御部3又は制御電源部4での電力ロスを低減することができる。
【0028】
なお、上記の点灯動作中は、LEDランプ5の負荷電流に応じた電圧が制御回路31にフィードバックされ、制御回路31はこの電圧値が予め設定した目標値となるように制御信号を作成し、駆動回路32に出力する。そして、駆動回路32は、制御回路31から出力された制御信号に従ってスイッチング素子Q1のオン・オフ時間を制御し、LEDランプ5の負荷電流I3を所定値(本例ではI31又はI32)に設定するのである。
【0029】
ここで、上記起動回路は、直流電源1から電源電圧が供給されてから点灯動作が開始されるまでの間に、出力制御部3へ動作電源電圧を供給できる構成であるならどのような構成でもよい。
【0030】
次に、図4は本実施形態の照明器具を示す外観斜視図であり、本照明器具は、上述したLED点灯装置と、LEDランプ5が機械的且つ電気的に接続される一対のランプソケット6,6と、天井に直付けされる器具本体7とを備える。
【0031】
器具本体7は、長手方向から見た側面形状が台形である長尺の角筒状に形成され、その内部にはLED点灯装置が収納されている。そして、器具本体7の下面における長手方向両端部には、それぞれランプソケット6,6が配設されている。これらのランプソケット6,6は、従来周知である直管形の蛍光ランプ用のランプソケットと同一構造を有しており、LEDランプ5の両端部に設けられた各口金(図示せず)をそれぞれランプソケット6,6に装着させることで、LEDランプ5がランプソケット6,6に機械的且つ電気的に接続される。
【0032】
而して、上述のLED点灯装置を用いることによって、出力制御部3への動作電源が安定するまでの時間を短縮させた照明器具を提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 直流電源
2 電力変換部
3 出力制御部
5 LEDランプ(LED光源)
C1 コンデンサ
D1 ダイオード
L1 インダクタンス素子
Q1 スイッチング素子
n2 二次巻線
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を所定の直流電圧に変換してLED光源に出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力を制御する出力制御部と、
前記出力制御部に動作電源を供給する制御電源部とを備え、
前記電力変換部は、インダクタンス素子の一次巻線及び第1コンデンサの第1直列回路と、前記一次巻線と直列に接続されて前記出力制御部によってオン・オフされるスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオフ時に前記一次巻線の放電経路を構成するダイオードとを備えた降圧チョッパ回路からなり、
前記制御電源部は、抵抗及び第2コンデンサの第2直列回路を有し、前記第2直列回路における前記抵抗側の端部が前記インダクタンス素子の二次巻線に電気的に接続され、かつ前記抵抗と前記第2コンデンサとの接続点が前記出力制御部に電気的に接続され、
前記出力制御部は、前記二次巻線に発生する電圧を動作電源とし、
前記出力制御部は、前記電源電圧が供給された後、前記出力制御部の動作電源電圧が所定電圧に達したときに動作を開始して点灯動作が開始されるものであって、点灯開始からの所定期間における前記LED光源への供給電流が、定常時における前記LED光源への供給電流よりも小さくなるように、前記所定期間における前記スイッチング素子のオン時間を、定常時における前記スイッチング素子のオン時間よりも短くした
ことを特徴とするLED点灯装置、
【請求項2】
前記出力制御部は、前記一次巻線に蓄積された電荷を放電する際に前記二次巻線に発生する正極性の電圧を動作電源としている
ことを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記一次巻線に流れる電流がゼロになるタイミングで前記スイッチング素子をオンにする臨界モードで制御しており、
前記一次巻線に流れる電流を検出するための巻線を前記二次巻線で兼用している
ことを特徴とする請求項1又は2記載のLED点灯装置。
【請求項4】
請求項1?3の何れか1項に記載のLED点灯装置と、
前記LED光源が機械的且つ電気的に接続されるランプソケットと、
前記LED点灯装置及び前記ランプソケットを保持する器具本体とを備えている
ことを特徴とする照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-30 
出願番号 特願2010-283642(P2010-283642)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H05B)
P 1 651・ 536- YAA (H05B)
P 1 651・ 537- YAA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三島木 英宏  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 平田 信勝
出口 昌哉
登録日 2015-10-30 
登録番号 特許第5828102号(P5828102)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 LED点灯装置及びそれを用いた照明器具  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 北出 英敏  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 西川 惠清  
代理人 坂口 武  
代理人 仲石 晴樹  

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