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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1331611
審判番号 不服2016-12749  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-24 
確定日 2017-09-05 
事件の表示 特願2015- 83350「基板処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-173272、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年6月29日に出願した特願2007-172496号(以下「原出願」という。)の一部を平成24年5月24日に新たな特許出願とした特願2012-118583号の一部をさらに平成27年4月15日に新たな特許出願とした特願2015-83350号であって、平成27年12月2日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由が通知され、平成28年1月28日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、同年5月10日付けで前記平成28年1月28日付け手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定(送達同年同月24日)がされ(以下「原査定」という。)、これに対し、同年8月24日に拒絶査定不服審判請求がされるとともに同時に手続補正がされ、その後、当審にて平成29年6月12日に面接が行われ、同年7月3日付けで当審より拒絶理由通知がされ(以下「当審拒絶理由」という。)、同年7月12日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年7月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、本願発明は以下のとおりである。
「基板に処理を行う基板処理方法であって、
基板を処理する処理ユニットと前記処理ユニットに基板を搬送する主搬送機構を備え、前記主搬送機構が前記処理ユニットに基板を搬送することによって基板に処理を行う階層が上下方向に複数並んでおり、
前記主搬送機構はそれぞれ、前記主搬送機構が設けられている階層以外の階層の処理ユニットに基板を搬送せず、
複数の前記階層のうちの少なくとも2つ以上の階層には、前記処理ユニットとして、反射防止膜用の処理液を基板に塗布する複数の反射防止膜用塗布処理ユニットおよびレジスト膜材料を基板に塗布する複数のレジスト膜用塗布処理ユニットが設けられており、
同一階層に設けられる複数の前記反射防止膜用塗布処理ユニットは、同じ高さに、間仕切りされることなく併設されており、
同一階層に設けられる複数の前記レジスト膜用塗布処理ユニットは、同じ高さに、間仕切りされることなく併設されており、
同一階層に設けられる複数の前記反射防止膜用塗布処理ユニットの上方にはそれぞれ、気体を下方に吹き出す吹出ユニットが設けられており、
同一階層に設けられる複数の前記レジスト膜用塗布処理ユニットの上方にはそれぞれ、気体を下方に吹き出す吹出ユニットが設けられており、
反射防止膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットおよびレジスト膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットはともに、1つの気体供給管に連通接続されており、
前記反射防止膜用塗布処理ユニットおよび前記レジスト膜用塗布処理ユニットが設けられる各階層はそれぞれ、反射防止膜およびレジスト膜を基板に形成する処理を行い、
前記反射防止膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットおよびレジスト膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットはそれぞれ、前記気体供給管によって供給された気体を吹き出す基板処理方法。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2001-176792号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体製造のためのフォトリソグラフィ装置に関するものであり、より具体的には半導体製造工程のうちで塗布工程と現像工程を有するフォトリソグラフィ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体製造工程は多様な方法が適用される工程を使用して半導体基板、ガラス基板或いは液晶パネル等のような基板上に必要な電子回路を形成する。半導体製造におけるフォトリソグラフィ工程は大別して、感光液塗布工程、露光工程、現像工程から成る。感光液塗布工程は光に敏感な物質である感光液(フォトレジスト)を基板表面に均一に塗布させる工程である。露光工程はステッパを使用してマスクに描かれた回路パターンに光を通過させフォトレジスト膜が形成された基板上に回路パターンを露光する工程である。現像工程は露光工程を通じて基板の表面で光を受けた部分のフォトレジスト膜を現像させる工程である。」

イ 「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図3乃至図6を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。又、図面で同一な機能を実行する構成要素に対しては同一な参照番号を付与する。
【0015】図3は本発明の好ましい実施態様に基づく半導体製造のためのフォトリソグラフィ装置の概略的な透視図であり、図4は図3の装置での上層の平面図であり、図5は図3の装置での下層の平面図である。
【0016】図3乃至図5を参照すると、本発明の半導体製造のためのフォトリソグラフィ装置(10)は塗布工程を実行するユニットを塗布モジュール(40)にて構成し、現像工程を実行するユニットを現像モジュール(70)にて構成して各々異なる層に配置されるようにする。特に、本実施態様では塗布モジュール(40)を上層に配置し、現像モジュール(70)を下層に配置した。勿論、このような配置は塗布モジュール(40)を下層に配置し現像モジュール(70)を上層に配置することもでき、二層だけでなく多層の構造に構成することもできる。そして、各モジュール(40、70)には塗布工程と現像工程を別々に行うことができるように基板の移送のための通路とキャリアを別々に構成する。即ち、塗布モジュール(40)を通じて基板を移送させるための第1通路(60)が塗布モジュール(40)に応じて配置され、現像モジュール(70)を通じて基板を移送させるための第2通路(80)が現像モジュール(70)に応じて配置される、第1通路(60)に対した塗布モジュール(40)の配置と第2通路(80)に対した現像モジュール(70)の配置は多様な方法に構成することができる。本実施態様では、塗布モジュール(40)は第1通路(60)の両側に配置され、現像モジュール(70)は第2通路(80)の両側に配置される。塗布モジュール(40)が設けられる上層と現像モジュール(70)が設けられる下層は中間壁(100)によって相互隔離されるようにした。中間壁(100)は一般的な層間壁であり、上層或いは下層で発生される残留感光物質や残量現像物質のような不純物パーチクルを処理するためのフィルタのような除去手段が設けられる。中間壁(100)に除去手段を設ける技術は当業者に周知のように容易に実施することができるので詳細な説明は省略する。第1通路(60)には第1通路(60)を移動しながら基板を移送させるためのキャリアである第1ロボット(62)が配置され、第2通路(80)には第2通路(80)を移動しながら基板を移送させるためのキャリアである第2ロボット(82)が配置される。このような構成を通じて本発明の好ましい実施態様による装置(10)では、基板がローディング/アンローディングされるポート(20)と、露光システム(150)と基板を出し入れするインタフェース部(30)との間で基板を自由に移送させることができる。
【0017】再び、図3乃至図5を参照すると、本発明の好ましい実施態様に基づく装置(10)では、基板が出入される2個のポートを有する。これら2つのポートの内の一つはフォトリソグラフィ工程を進行するための基板がローディング/アンローディングされるポート(20)である。そして、他の1つのポートは、ポート(20)から一定な距離に配置され基板が出入されるポートであるインタフェース部(30)である。ポート(20)にはポート駆動部(22)が設けられ、インタフェース部(30)にはインタフェース駆動部(32)が各々設けられ基板が円滑に移送されるようにする。この時、ポート駆動部(22)とインタフェース駆動部(32)は上層と下層のロボットと同時に対応されるように構成することができ、上層と下層のロボットが各々対応されるように別に構成することもできる。本実施態様でポート(20)とインタフェース部(30)は各々一つの駆動部(22,32)へ上層と下層の基板を移送することができるように構成した。勿論、このような駆動部の構成は当業者ならば多様な形態に構成することができる。
【0018】このような本発明の装置(10)にあっては、塗布モジュール(40)、第1通路(60)及び第1ロボット(62)がポート(20)とインタフェース部(30)の間を連結されるように配置されて設けられ、ポート(20)とインタフェース部(30)の間で基板を移送させて塗布工程を実行するための塗布手段を構成する。そして、現像モジュール(70)、第2通路(80)及び第2ロボット(82)は塗布手段を積層されるように位置されると共に、ポート(20)とインタフェース部(30)の間を連結するように配置されて設けられ、ポート(20)とインタフェース部(30)の間で基板を移送させて現像工程を実行するための現像手段を構成する。」

ウ 図3ないし5は次のものである。
図3

図4

図5


(2)上記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「塗布工程を実行するユニットを塗布モジュール(40)にて構成し、現像工程を実行するユニットを現像モジュール(70)にて構成して各々異なる層に配置され、
前記塗布モジュール(40)を上層に配置し、現像モジュール(70)を下層に配置し、
各モジュール(40、70)には塗布工程と現像工程を別々に行うことができるように基板の移送のための通路とキャリアを別々に構成し、
前記塗布モジュール(40)を通じて基板を移送させるための第1通路(60)が塗布モジュール(40)に応じて配置され、現像モジュール(70)を通じて基板を移送させるための第2通路(80)が現像モジュール(70)に応じて配置され、
前記塗布モジュール(40)は第1通路(60)の両側に配置され、現像モジュール(70)は第2通路(80)の両側に配置され、
前記塗布モジュール(40)が設けられる上層と現像モジュール(70)が設けられる下層は中間壁(100)によって相互隔離され、
前記第1通路(60)には第1通路(60)を移動しながら基板を移送させるためのキャリアである第1ロボット(62)が配置され、第2通路(80)には第2通路(80)を移動しながら基板を移送させるためのキャリアである第2ロボット(82)が配置され、
基板が出入される2個のポートを有し、ポート(20)にはポート駆動部(22)が設けられ、インタフェース部(30)にはインタフェース駆動部(32)が各々設けられ、
前記塗布モジュール(40)、第1通路(60)及び第1ロボット(62)がポート(20)とインタフェース部(30)の間を連結されるように配置されて設けられ、ポート(20)とインタフェース部(30)の間で基板を移送させて塗布工程を実行するための塗布手段を構成し、
前記現像モジュール(70)、第2通路(80)及び第2ロボット(82)は塗布手段を積層されるように位置されると共に、ポート(20)とインタフェース部(30)の間を連結するように配置されて設けられ、ポート(20)とインタフェース部(30)の間で基板を移送させて現像工程を実行するための現像手段を構成するフォトリソグラフィ装置(10)による半導体製造の方法。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開平10-146744号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プリント基板,半導体基板,液晶用等のガラス基板等(以下、「基板」)の製造において所定の単位(例えば、カセット単位,ロット単位等)の基板を管理するための基板処理装置及び方法に関する。」

イ 「【0005】このように直列的に配置された直列処理ラインのみから成る基板処理装置においては、ロットの最後の基板にロットエンド信号を付与していくことによって簡単にロットの管理が行うことが可能である。
【0006】しかし従来より基板処理の効率化という点から図27に示すような基板処理装置がある。この装置はローダLが基板を送り出すと処理部P1で所定の処理がなされ、分岐装置FWに搬送される。この分岐装置FWは基板に対して処理を施す装置ではなく基板を処理部PAおよび処理部PBに振り分け搬送を行う装置である。そして処理部PAと処理部PBにはそれぞれ複数の処理部があり、基板の並列処理が行われる。そして処理部PAまたは処理部PBを経由した基板は統合装置FMによって処理部P4に搬送される。そして処理部P4の処理を終えた基板はアンローダULに順次に入り、カセットに収納される。」

(2)上記(1)によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「基板処理の効率化という点から、
ローダLが基板を送り出すと処理部P1で所定の処理がなされ、分岐装置FWに搬送され、
前記分岐装置FWは基板に対して処理を施す装置ではなく基板を処理部PAおよび処理部PBに振り分け搬送を行う装置であり、
前記処理部PAと処理部PBにはそれぞれ複数の処理部があり、基板の並列処理が行われ、
前記処理部PAまたは処理部PBを経由した基板は統合装置FMによって処理部P4に搬送され、
前記処理部P4の処理を終えた基板はアンローダULに順次に入り、カセットに収納される、基板処理方法。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開平10-261689号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板に所定の処理を行う複数の処理部を備えた基板処理装置に関する。」

イ 「【0068】図12において、AH、CP、SC等同一の処理を行う処理部が2つ示されているところでは、スループットを向上させるために同一の処理が並行してなされる。そして、搬送ユニット11および21は、その並行して処理がなされている処理部に対し、循環搬送の交互に基板の受け渡しを行うように搬送を行っていく。
【0069】このように、本実施例の基板処理装置では、露光前の基板処理が処理空間Aで行われ、露光後の基板処理が処理空間Bで行われ、処理空間Aの雰囲気と処理空間Bの雰囲気とが互いに遮断されているので、露光後の基板が露光前の処理で発生するアルカリ成分の影響を受けることがない。したがって、一連の基板処理を高い品質を保ちつつ効率的に行うことが可能となる。」

ウ 図12は次のものである。


(2)上記(1)によれば、引用文献3には、次の発明(以下「引用文献3に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「同一の処理を行う処理部が2つあるところでは、スループットを向上させるために同一の処理が並行してなされ、
搬送ユニット11および21は、その並行して処理がなされている処理部に対し、循環搬送の交互に基板の受け渡しを行うように搬送を行っていき、
露光前の基板処理が処理空間Aで行われ、露光後の基板処理が処理空間Bで行われ、処理空間Aの雰囲気と処理空間Bの雰囲気とが互いに遮断されているので、露光後の基板が露光前の処理で発生するアルカリ成分の影響を受けることがない、
基板に所定の処理を行う複数の処理部を備えた基板処理装置。」

第4 対比・判断
・本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の半導体製造の方法は、基板に塗布及び現像を行うから、本願発明の「基板に処理を行う基板処理方法」に相当する。

イ 引用発明は、「塗布工程を実行するユニット」、「現像工程を実行するユニット」、「第1通路(60)を移動しながら基板を移送させるためのキャリアである第1ロボット(62)」及び「第2通路(80)には第2通路(80)を移動しながら基板を移送させるためのキャリアである第2ロボット(82)」を備え、当該構成は本願発明における「階層に相当するから、本願発明の「基板を処理する処理ユニットと前記処理ユニットに基板を搬送する主搬送機構を備え、前記主搬送機構が前記処理ユニットに基板を搬送することによって基板に処理を行う階層が上下方向に複数並んでおり」と、「基板を処理する処理ユニットと前記処理ユニットに基板を搬送する主搬送機構を備え、前記主搬送機構が前記処理ユニットに基板を搬送することによって基板に処理を行う階層が」ある点で一致する。

ウ 引用発明の「塗布工程」が、何を塗布するかは必要に応じて適宜定められる設計的事項であって、基板に「反射防止膜用の処理液」及び「レジスト膜材料」を塗布することは従来周知の半導体製造の工程にすぎない。
そうすると、引用発明の「塗布工程を実行するユニットを塗布モジュール(40)」が、「第1通路(60)の両側に配置され」るから、基板に「反射防止膜用の処理液」を塗布する複数の「塗布モジュール(40)」、及び、「レジスト膜材料」を塗布する複数の「塗布モジュール(40)」が設けられていてよく、引用発明の「塗布工程を実行するユニットを塗布モジュール(40)」は、本願発明の「前記処理ユニットとして、反射防止膜用の処理液を基板に塗布する複数の反射防止膜用塗布処理ユニットおよびレジスト膜材料を基板に塗布する複数のレジスト膜用塗布処理ユニットが設けられて」いる点、及び、「前記反射防止膜用塗布処理ユニットおよび前記レジスト膜用塗布処理ユニットが設けられる各階層はそれぞれ、反射防止膜およびレジスト膜を基板に形成する処理を行」う点に相当する。

エ したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「基板に処理を行う基板処理方法であって、
基板を処理する処理ユニットと前記処理ユニットに基板を搬送する主搬送機構を備え、前記主搬送機構が前記処理ユニットに基板を搬送することによって基板に処理を行う階層があり、
前記処理ユニットとして、反射防止膜用の処理液を基板に塗布する複数の反射防止膜用塗布処理ユニットおよびレジスト膜材料を基板に塗布する複数のレジスト膜用塗布処理ユニットが設けられており、
前記反射防止膜用塗布処理ユニットおよび前記レジスト膜用塗布処理ユニットが設けられる各階層はそれぞれ、反射防止膜およびレジスト膜を基板に形成する処理を行う、基板処理方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明は「階層が上下方向に複数並んで」いて、「前記主搬送機構はそれぞれ、前記主搬送機構が設けられている階層以外の階層の処理ユニットに基板を搬送せず、複数の前記階層のうちの少なくとも2つ以上の階層には」、前記処理ユニットとして、反射防止膜用の処理液を基板に塗布する複数の反射防止膜用塗布処理ユニットおよびレジスト膜材料を基板に塗布する複数のレジスト膜用塗布処理ユニットが設けられているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明は「同一階層に設けられる複数の前記反射防止膜用塗布処理ユニットは、同じ高さに、間仕切りされることなく併設されており、同一階層に設けられる複数の前記レジスト膜用塗布処理ユニットは、同じ高さに、間仕切りされることなく併設されて」いるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点3)本願発明は、「同一階層に設けられる複数の前記反射防止膜用塗布処理ユニットの上方にはそれぞれ、気体を下方に吹き出す吹出ユニットが設けられており、同一階層に設けられる複数の前記レジスト膜用塗布処理ユニットの上方にはそれぞれ、気体を下方に吹き出す吹出ユニットが設けられており、反射防止膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットおよびレジスト膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットはともに、1つの気体供給管に連通接続されており」、「前記反射防止膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットおよびレジスト膜用塗布処理ユニットの上方に設けられる複数の前記吹出ユニットはそれぞれ、前記気体供給管によって供給された気体を吹き出す」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明の「階層が上下方向に複数並んで」いて、「前記主搬送機構はそれぞれ、前記主搬送機構が設けられている階層以外の階層の処理ユニットに基板を搬送」しないとの構成は、本願の発明の詳細な説明における「従来例の場合には、次のような問題がある。すなわち、従来の装置では、ブロック内で一枚の基板を処理するために主搬送機構は5?10の搬送工程を要し、各搬送工程はそれぞれ数秒程度かかる。仮に搬送工程数を6工程とし、それぞれ5秒かかるとすると、ブロック内のスループットは基板1枚当り30秒(1時間で120枚)まで可能である。しかし、すでに単一の主搬送機構の搬送工程数を低減したり各搬送工程の所要時間を短縮する余地があまりないので、ブロック内のスループットをさらに高めることは困難になってきている。このため、装置全体のスループットを改善することが困難になっているという不都合がある。これに対して、主搬送機構を増やすことが考えられる。しかしながら、ブロック内の主搬送機構の台数を増やすと、それに応じて薬液処理ユニットや加熱部の増加も伴ってフットプリントが増大するという不都合がある。・・・この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板処理装置の設置面積を増大させることなく、スループットを向上させることができる基板処理方法を提供することを目的とする」(段落【0004】?【0005】)ためものであって、相違点1に係る構成とすることで「複数の階層のうち、2つ以上の階層のそれぞれで基板にレジスト膜を形成する処理を並行して行う。よって、基板処理装置の処理能力を増大させることができる。また、複数の階層が上下方向に並ぶので、基板処理装置の設置面積が増大することを回避することができる」(段落【0078】)とともに、「主搬送機構Tによる処理ユニットに対する搬送および各処理ユニットの処理の制御はセル11?14ごとに独立している」(段落【0147】)ものとなすことができるものであって、当該課題を解決するために上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは上記引用文献1ないし3には記載されておらず、示唆もない。
したがって、上記相違点2、3について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1について上記引用文献1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年7月12日付け手続補正により補正された請求項1は、上記相違点1に係る構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1は、上記引用発明及び上記引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
・特許法第36条第6項第2号について
当審では、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載では、「基板処理方法」の処理を行う処理ユニットが設けられる「階層」の構成が特定されないため、発明の構成が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年7月12日付けの補正において、「前記主搬送機構が前記処理ユニットに基板を搬送することによって基板に処理を行う階層が上下方向に複数並んでおり、前記主搬送機構はそれぞれ、前記主搬送機構が設けられている階層以外の階層の処理ユニットに基板を搬送せず」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-21 
出願番号 特願2015-83350(P2015-83350)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 赤尾 隼人今井 彰  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
伊藤 昌哉
発明の名称 基板処理方法  
代理人 杉谷 勉  

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