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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1331697
審判番号 不服2016-2968  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-29 
確定日 2017-08-16 
事件の表示 特願2013-509132「画像取り込み」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月10日国際公開、WO2011/139928、平成25年 7月 4日国内公表、特表2013-528037〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、2011年(平成23年) 5月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年 5月 3日,米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成26年 4月30日
拒絶理由 :平成27年 1月16日(起案日)
手続補正 :平成27年 4月13日
拒絶査定 :平成27年10月27日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年 2月29日
手続補正 :平成28年 2月29日
前置報告 :平成28年 5月25日
拒絶理由(当審) :平成28年11月30日(起案日)
意見 :平成29年 3月 1日

第2.本件発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件発明」という。)は、平成28年 2月29日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。
なお、下記のとおり説明のために(A)ないし(D)の記号を当審において付与した。以下、構成A等と称することにする。

「【請求項1】
(A)計算デバイスの第2ディスプレイ・デバイスにおいて、前記計算デバイスの画像取り込みデバイスからの、取り込むことができる画像のリアル・タイム・プレビューを提供するステップと、
(B-1)前記画像取り込みデバイスによって、前記計算デバイスの第1ディスプレイ・デバイスの表面上の位置に置かれた物体の画像を取り込むステップであって、
(B-2)前記計算デバイスが、前記第1ディスプレイ・デバイスを含む第1筐体と、前記第1筐体に回転可能に取り付けられ、前記画像取り込みデバイスおよび前記第2ディスプレイ・デバイスを含む第2筐体とを含む、ステップと、
(C)前記物体の画像が取り込まれた前記第1ディスプレイ・デバイス上の前記位置において、前記物体のサイズと一致するサイズを有するものとして、取り込まれた前記物体の画像を表示するステップと
(D)を含む方法。」


第3.引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載及び引用発明1
(1)引用文献1の記載
当審の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開2007-67966号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「画像処理システム」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、説明のために下線を当審において付与した。

(1-1)
「【0007】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の一実施形態に係る画像処理システムの外観斜視図である。この画像処理システム100は、原稿画像を撮影する撮像装置1と、図示しない原稿を載置すると共に撮影のための操作内容を表示するディスプレイパネル18を備えた原稿載置台3と、操作情報を入力する操作部4と、本体筐体部17と、を備えて構成される。尚、図示は省略するが、本体筐体部17内には撮像装置1、原稿載置台3及び操作部4を制御する制御部16が備えられている。また撮像装置1は本実施形態ではデジタルカメラであり(以下、単にカメラと呼ぶ)、直下の画像を撮影できるようになっている。また図1に示すように、カメラ1は本体筐体部17に対してステイ2により固定されていて、一般の照明器具のように自在に位置を動かすことはできない。またカメラ1の直下には、ディスプレイパネル18が配置されていて、ディスプレイパネル18が原稿載置台3を兼ねる構成となっている。操作部4は、通常の画像形成装置と同様に、テンキー、コピーボタン、キャプチャボタン、ストップボタン等の入力ボタン群4bと、タッチパネル4aで構成されている。」

(1-2)
「【0010】
(略)
図4はディスプレイパネルの様子を示す図である。一例として、A4タテ、100%を指定した場合のディスプレイパネル18の様子を図4(a)に示す(以下の図面上で、二重線の枠は、ディスプレイパネル18内の表示の様子を示すものである)。図4(a)に示すように、“A4タテ、100%”のキャプション3cと、有効撮影エリア内を示す用紙マーカー3aと、ガイダンス文3bがシステムからユーザーに表示される。ユーザーは、表示されている用紙マーカー3a内に原稿5をセットして撮影する(図4(b)参照)。図4(c)はディスプレイパネル18上の同じ位置に原稿画像5aが表示される。」

(1-3)
図4


(2)引用発明1
上記(1-1)ないし(1-2)の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して、引用文献1に開示された発明(以下、「引用発明1」という。)を方法の発明として検討する。

(2-1)
上記(1-1)の段落【0007】には、「この画像処理システム100は、原稿画像を撮影する撮像装置1と、図示しない原稿を載置すると共に撮影のための操作内容を表示するディスプレイパネル18を備えた原稿載置台3と、操作情報を入力する操作部4と、本体筐体部17と、を備えて構成される。」と記載されている。

よって、引用文献1には、『撮像装置によって、画像処理システムのディスプレイパネルに載置された原稿を撮影する』ことが開示されていると言える。

(2-2)
上記(1-1)の段落【0007】に記載されているように、引用文献1には、「画像処理システム」は、「ディスプレイパネルを備える原稿載置台」を含んでいる。
さらに、上記(1-1)の段落【0007】には、「また図1に示すように、カメラ1は本体筐体部17に対してステイ2により固定され」と記載されている。
よって、引用文献1には、「画像処理システム」は、「本体筐体部」と接続されたステイに固定された「撮像装置」を含むことが開示されていると言える。

以上より、引用文献1には、『画像処理システムが、ディスプレイパネルを備える原稿載置台と、本体筐体部に接続されたステイに固定された撮像装置とを含む』ことが開示されていると言える。

(2-3)
上記の(1-2)の段落【0010】には、「ユーザーは、表示されている用紙マーカー3a内に原稿5をセットして撮影する(図4(b)参照)。図4(c)はディスプレイパネル18上の同じ位置に原稿画像5aが表示される。」と記載されている。
よって、引用文献1には、原稿が撮影されたディスプレイパネル上の、撮影された原稿と同じ位置において、撮影された原稿の画像を表示することが開示されていると言える。
さらに、図4(c)の記載を見ると、上記(1-2)の段落【0010】における「同じ位置」とは、撮影された原稿と同じ位置だけでなく、撮影された原稿と一致するサイズであることも表している。

以上より、引用文献1には、『原稿が撮影されたディスプレイパネル上の撮影された原稿と同じ位置において、撮影された原稿と一致するサイズで、撮影された原稿の画像を表示する』ことが開示されていると言える。


以上の記載を踏まえ、引用文献1に開示された発明を方法の発明として認定すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。
なお、下記のとおり説明のために(b-1)ないし(d)の記号を当審において付与した。以下、構成b-1等と称することにする。

(引用発明1)
「(b-1)撮像装置によって、画像処理システムのディスプレイパネルに載置された原稿を撮影するステップであって、
(b-2)画像処理システムが、ディスプレイパネルを備える原稿載置台と、本体筐体部に接続されたステイに固定された撮像装置とを含む、ステップと、
(c)原稿が撮影されたディスプレイパネル上の撮影された原稿と同じ位置において、撮影された原稿と一致するサイズで、撮影された原稿の画像を表示するステップと
(d)を含む方法。」


2.引用文献2の記載及び引用発明2
(1)引用文献2の記載
当審の拒絶の理由に引用文献2として引用された、特開2004-135071号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「資料提示装置」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、説明のために下線を当審において付与した。

(1-1)
「【0017】
図1で符号5は資料提示装置である。この資料提示装置5は、図2に概略的に示すように、装置の基台となる矩形箱状の資料載置台(資料載置手段)51を備えている。資料載置台51の一側部には、軸受52が取り付けられ、軸受52には、ディスプレイ(表示手段)70が回動可能に支持されている。ディスプレイ70の上縁部には、カメラ(撮影手段)57が支持されている。ディスプレイ70には、カメラ57によって撮影された撮影画像、後述する歪み補正回路60によって補正された画像等が表示される。また、ディスプレイ70には、プレゼンターにとって資料Tの解説となるような支援情報ないし画像を資料Tの画像に並べて表示することもできる。
【0018】
図3は、ディスプレイ70の外枠71の内部の構成を示す図である。この図に示すように、資料載置台51の端部には、外枠71を支持するアーム(支持手段)53の下端部が軸52によって回動自在に支持されている。また、軸52には、中心をアーム53の回動中心と一致させたギヤ(第1回転伝達手段)54aが固定されている。」

(1-2)
図2


(2)引用発明2
上記(1-1)の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して、引用文献2に開示された発明(以下、「引用発明2」という。)を検討する。

(2-1)
上記(1-1)の段落【0017】には、「この資料提示装置5は、図2に概略的に示すように、装置の基台となる矩形箱状の資料載置台(資料載置手段)51を備えている。資料載置台51の一側部には、軸受52が取り付けられ、軸受52には、ディスプレイ(表示手段)70が回動可能に支持されている。ディスプレイ70の上縁部には、カメラ(撮影手段)57が支持されている。」と記載されている。
また、上記(1-1)の段落【0018】及び図2の記載を見ると、ディスプレイは、箱状の筐体である外枠に収容されている。
さらに、図2の記載を見ると、資料を撮影するカメラは、ディスプレイの外枠の上部に支持されている。
よって、引用文献2には、資料提示装置であって、資料載置台と、資料載置台に回動可能に支持されたディスプレイの外枠と、ディスプレイの外枠の上部に支持されたカメラと、ディスプレイとを含む、資料提示装置が開示されている。

また、上記(1-1)の段落【0017】には、「ディスプレイ70には、カメラ57によって撮影された撮影画像、後述する歪み補正回路60によって補正された画像等が表示される。」と記載されている。
ここで、「撮影画像」は、歪み補正回路によって補正されることにより「補正された画像」となるものであるが、歪みが補正される前の画像であるから、歪みのある画像であると言える。そして、このような歪みのある画像である「撮影画像」は、歪みが補正された画像である「補正された画像」との比較で言えば、確認する画像、すなわち、プレビュー用の画像であると言える。
よって、引用文献2に記載された技術は、ディスプレイにおいて、プレビュー用の画像である撮影画像を表示する技術であると言える。

以上の記載を踏まえ、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「資料提示装置であって、資料載置台と、資料載置台に回動可能に支持されたディスプレイの外枠と、ディスプレイの外枠の上部に支持されたカメラと、ディスプレイとを含み、
ディスプレイにおいて、プレビュー用の画像である撮影画像を表示する、
資料提示装置。」


3.引用文献3の記載及び引用文献3に開示された技術
(1)引用文献3の記載
当審の拒絶の理由に引用文献3として引用された、特開平8-336129号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「資料提示装置」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、説明のために下線を当審において付与した。

(1-1)
「【0019】図1は実施例である資料提示装置20の全体斜視図、図2はその資料提示装置20の電気回路ブロック図である。図示するように、この資料提示装置20は、資料載置台22に対して回動自在に第一支持軸24,第二支持軸26,第三支持軸28が取り付けられている。第一支持軸24及び第三支持軸28は、資料載置台22の左右後端部に回動自在に取り付けられるものであり、これらの先端部にはそれぞれ演色性に優れたライト24A,28Aが取り付けられている。これらのライト24A,28Aの調節は、ライトコントローラ24Bにより実行される。資料載置台22の後端部中央に取り付けられた第二支持軸26の先端部には、ライト24A,28Aによりライトアップされる資料載置台22上の資料を撮像する自動焦点式のCCDカメラ26Aが配設されている。このCCDカメラ26Aは、ズーム機構部やホワイトバランス調整機構部などを備えており、カメラコントローラ26Bを介してこれらの各種機構部が制御される。また、CCDカメラ26Aの出力信号は、カメラコントローラ26Bによりデジタルの画像信号に変換され、後述するコンピュータ処理に供される。
(略)
【0021】資料載置台22の右側方であって、図1中に点線で示す資料載置台22の内部空間に用意された収納位置には、内蔵モニタ40が収納されている。内蔵モニタ40は、資料提示装置20の使用時に実線矢印で示すように右方向へ引き出され、そして操作者に見やすい角度に引き起こされるものである。この内蔵モニタ40は、解像度の高い液晶ディスプレイから構成され、後述するコンピュータのビットマップディスプレイとして利用される。」

(1-2)
「【0040】さらに、このように構成される資料提示装置20は、操作部30を適宜操作することで、映像を視聴者に向けたテレビジョンに映し出すことなく、予め内蔵モニタ40だけに表示させて確認することにより、誤った映像の表示を上記テレビジョン側へ表示することがなく、また、映像の修正も容易である。」

(2)引用文献3に開示された技術
上記(1-1)ないし(1-2)の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して、引用文献3に開示された技術を検討する。

(2-1)
上記(1-1)の段落【0019】には、「この資料提示装置20は、資料載置台22に対して回動自在に第一支持軸24,第二支持軸26,第三支持軸28が取り付けられている。」と記載されている。
上記(1-1)の段落【0019】には、「資料載置台22の後端部中央に取り付けられた第二支持軸26の先端部には、ライト24A,28Aによりライトアップされる資料載置台22上の資料を撮像する自動焦点式のCCDカメラ26Aが配設されている。」と記載されている。
上記(1-1)の段落【0021】には、「資料載置台22の右側方であって、図1中に点線で示す資料載置台22の内部空間に用意された収納位置には、内蔵モニタ40が収納されている。」と記載されている。
よって、引用文献3には、資料提示装置であって、資料載置台と、資料載置台に取り付けられた第二支持軸に配設されたカメラと、内蔵モニタとを含む、資料提示装置が開示されている。

また、上記(1-2)の段落【0040】には、「映像を視聴者に向けたテレビジョンに映し出すことなく、予め内蔵モニタ40だけに表示させて確認することにより、誤った映像の表示を上記テレビジョン側へ表示することがなく、また、映像の修正も容易である。」と記載されている。
ここで、内蔵モニタに表示される映像は、確認する映像であるから、プレビュー用の映像であると言える。

以上の記載を踏まえ、引用文献3には、
「資料提示装置であって、資料載置台と、資料載置台に取り付けられた第二支持軸に配設されたカメラと、内蔵モニタとを含み、
内蔵モニタにおいて、プレビュー用の映像を表示する、
資料提示装置」
という技術が開示されている。


4.引用文献4の記載及び引用文献4に開示された技術
(1)引用文献4の記載
当審の拒絶の理由に引用文献4として引用された、特開2003-8949号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「資料提示装置」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、説明のために下線を当審において付与した。

(1-1)
「【0024】図1に示した本発明に係る資料提示装置10は、資料載置台11上に載置した資料をビデオカメラ30で撮影した際に、撮影した資料12の画像信号を視聴者用への第1の表示手段となるプロジェクタ70と、操作者へのプレビュー用としての第2の表示手段となる液晶表示パネル80とにそれぞれ出力可能に構成されている。
【0025】まず、資料提示装置10では、この装置10の基台となる資料載置台11が厚みが薄い箱状に形成されており、この資料載置台11の上面となる資料載置面11aが平坦に形成されている。そして、資料載置台11の資料載置面11a上に書画原稿や実体物などの資料12を載置できるようになっている。また、資料載置面11aの後方の端部には、カメラ支持アーム13が上下方向(矢印方向)に回動自在に取り付けられ、且つ、カメラ支持アーム13の上端部にビデオカメラ30が矢印方向に回動自在に支持されている。」

(2)引用文献4に開示された技術
上記(1-1)の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して、引用文献4に開示された技術を検討する。

(2-1)
上記(1-1)の段落【0024】には、「図1に示した本発明に係る資料提示装置10は、資料載置台11上に載置した資料をビデオカメラ30で撮影した際に、撮影した資料12の画像信号を視聴者用への第1の表示手段となるプロジェクタ70と、操作者へのプレビュー用としての第2の表示手段となる液晶表示パネル80とにそれぞれ出力可能に構成されている。」と記載されている。
上記(1-1)の段落【0025】には、「また、資料載置面11aの後方の端部には、カメラ支持アーム13が上下方向(矢印方向)に回動自在に取り付けられ、且つ、カメラ支持アーム13の上端部にビデオカメラ30が矢印方向に回動自在に支持されている。」と記載されている。
よって、引用文献4には、資料提示装置であって、資料載置台と、資料載置台に取り付けられたカメラ支持アームに支持されたビデオカメラと、第2の表示手段とを含む、資料提示装置が開示されている。

また、上記(1-1)の段落【0024】には、第2の表示手段は、プレビュー用であることも記載されている。

以上の記載を踏まえ、引用文献4には、
「資料提示装置であって、資料載置台と、資料載置台に取り付けられたカメラ支持アームに支持されたビデオカメラと、第2の表示手段とを含み、
第2の表示手段において、プレビュー用の表示を行う、
資料提示装置」
という技術が開示されている。


第4.対比
以下、本件発明と引用発明1とを対比する。

(1)本件発明の構成Aと引用発明1との対比
引用発明1には、本件発明の「第2ディスプレイ・デバイス」に相当する構成は、ない。
よって、「第2ディスプレイ・デバイス」に関し、本件発明では、「第2ディスプレイ・デバイス」によって、「画像取り込みデバイス」からの、「取り込むことのできる画像のリアル・タイム・プレビュー」を提供するのに対し、引用発明1には、「第2ディスプレイ・デバイス」に相当する構成がなく、そのため、「取り込むことのできる画像のリアル・タイム・プレビュー」を提供しない点で相違する。

(2)本件発明の構成B-1と引用発明1の構成b-1との対比
構成b-1の「撮像装置」は、画像を取り込む構成であるから、構成B-1の「画像取り込みデバイス」に一致する。
構成b-1の「画像処理システム」は、構成B-1の「計算デバイス」に一致する。
構成b-1の「ディスプレイパネル」は、取り込む対象を置く構成であって、表示を行う構成であるから、構成B-1の「第1ディスプレイ・デバイス」に一致する。
構成b-1の「原稿」は、画像として取り込む対象であるから、構成B-1の「物体」に一致する。

よって、本件発明と引用発明1とは、「画像取り込みデバイスによって、計算デバイスの第1ディスプレイ・デバイスの表面上の位置に置かれた物体の画像を取り込むステップ」である点で、一致する。

(3)本件発明の構成B-2と引用発明1の構成b-2との対比
上記(2)で言及したように、構成b-2の「画像処理システム」、「ディスプレイパネル」、「撮像装置」は、それぞれ、構成B-2の「計算デバイス」、「第1ディスプレイ・デバイス」、「画像取り込みデバイス」に一致する。
構成b-2の「『ディスプレイパネルを備える原稿載置台』及び『本体筐体部』からなる構成」は、「第1ディスプレイ・パネル」に一致する構成を含む構成であるから、構成B-2の「第1筐体」に一致する。

よって、本件発明と引用発明1とは、「計算デバイスが、第1ディスプレイ・デバイスを含む第1筐体と、画像取り込みデバイスを含む、ステップ」である点で、共通する。
しかし、引用発明1には、本件発明の「第2筐体」に相当する構成は、ない。そのため、「第2筐体」に関し、本件発明では、「第1筐体」に「回転可能」に取り付けられる筐体であり、「画像取り込みデバイス」と「第2ディスプレイ・デバイス」を含む「第2筐体」があるのに対し、引用発明1には、「第2筐体」に相当する構成がない点で、相違する。

(4)本件発明の構成Cと引用発明1の構成cとの対比
上記(2)で言及したように、構成cの「原稿」、「ディスプレイパネル」は、構成Cの「物体」、「第1ディスプレイ・デバイス」に一致する。
構成cの「撮影された原稿と同じ位置」は、画像として取り込む対象が置かれた位置であるので、構成Cの「前記位置」に一致する。
構成cの「撮影された原稿と一致するサイズ」は、画像として取り込む対象と一致するサイズであるので、構成Cの「物体のサイズと一致するサイズ」に一致する。
構成cの「撮影された原稿の画像」は、明らかに、構成Cの「取り込まれた物体の画像」に一致する。

よって、本件発明と引用発明1とは、「物体の画像が取り込まれた第1ディスプレイ・デバイス上の位置において、物体のサイズと一致するサイズを有するものとして、取り込まれた物体の画像を表示するステップ」である点で、一致する。

(5)本件発明の構成Dと引用発明1の構成dとの対比
構成dの「方法」は、明らかに、構成Dの「方法」に一致する。

(6)小括
したがって、本件発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「画像取り込みデバイスによって、計算デバイスの第1ディスプレイ・デバイスの表面上の位置に置かれた物体の画像を取り込むステップであって、
前記計算デバイスが、前記第1ディスプレイ・デバイスを含む第1筐体と、画像取り込みデバイスとを含む、ステップと、
前記物体の画像が取り込まれた前記第1ディスプレイ・デバイス上の前記位置において、前記物体のサイズと一致するサイズを有するものとして、取
り込まれた前記物体の画像を表示するステップと
を含む方法。」

(相違点)
相違点1
「第2ディスプレイ・デバイス」に関し、本件発明では、「第2ディスプレイ・デバイス」によって、「画像取り込みデバイスからの取り込むことのできる画像のリアル・タイム・プレビュー」を提供するのに対し、引用発明1には、「第2ディスプレイ・デバイス」に相当する構成がなく、そのため、「取り込むことのできる画像のリアル・タイム・プレビュー」を提供しない点。

相違点2
「第2筐体」に関し、本件発明では、「第1筐体」に「回転可能」に取り付けられ、「画像取り込みデバイス」と「第2ディスプレイ・デバイス」とを含む「第2筐体」があるのに対し、引用発明1には、「第2筐体」に相当する構成がない点で、相違する。


第5.当審の判断
(1)相違点1
ここで、本件発明の「第2ディスプレイ・デバイス」の技術的な意味について確認すると、本件発明の「第2ディスプレイ・デバイス」は、「取り込むことができる画像のリアル・タイム・プレビューを提供する」ものであるから、「第2ディスプレイ・デバイス」は、「プレビュー用の画像を表示する構成」である。

引用発明1は、撮像装置を用いて、載置された資料を資料の上部から撮影する資料撮影装置に関するものである。
そして、このような構成を備えた資料撮影装置においては、例えば、引用文献3又は引用文献4に開示された周知技術のように、プレビュー用の画像を表示する構成を設け、プレビュー用の画像を確認した後に撮影を行うことは、普通に行われていることである。

よって、引用発明1において、引用文献3又は4に開示された周知技術のように、プレビュー用の画像を表示する構成を設け、この構成にプレビュー用の画像を表示するようにすることで、相違点1に係る構成のようにすることは、格別のことではない。

よって、相違点1は、格別のものではない。

(2)相違点2
ここで、上記「第3.引用文献の記載及び引用発明 1.引用文献2の記載及び引用発明2 (2)引用発明2」に示した引用発明2を再掲すると、引用発明2は、以下の通りである。
「資料提示装置であって、資料載置台と、資料載置台に回動可能に支持されたディスプレイの外枠と、ディスプレイの外枠の上部に支持されたカメラと、ディスプレイとを含み、
ディスプレイにおいて、プレビュー用の画像である撮影画像を表示する、
資料提示装置。」

引用発明2の「ディスプレイ」は、プレビュー用の画像を表示する構成である点で、本件発明の「第2ディスプレイ・デバイス」に一致する。
また、引用発明2の「ディスプレイの外枠」は、取り込む対象を置く構成に回転可能に接続され、上部に「カメラ」を支持するものであって、「ディスプレイ」含む構成である点で、本件発明の「第2筐体」に一致する。

上記(1)で検討したように、引用発明1において、プレビュー用の画像を表示する構成を設けることは、格別のことではない。
そして、プレビュー用の画像を表示する構成を設けるに際し、その具体的構成として引用発明2の構成を採用すること、すなわち、引用発明2における「第2筐体」に相当する構成である、「ディスプレイの外枠」を、引用発明1における「取り込む対象を置く構成」である、「『ディスプレイパネルを備える原稿載置台』及び『本体筐体部』からなる構成」に回転可能に設けることにより、引用発明1の「画像処理システム」に「ディスプレイ」を設け、「ディスプレイ」にプレビュー用の画像を表示するようにし、併せて、引用発明1の「撮像装置」を「ディスプレイの外枠」の上部に支持するようにして、相違点2に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、相違点2は、格別なものではない。

(3)まとめ
このように各相違点は格別なものでなく、そして、本件発明の作用効果は、引用発明から当業者が予測し得る範囲のものである。


第6.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3又は4に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-21 
結審通知日 2017-03-23 
審決日 2017-04-06 
出願番号 特願2013-509132(P2013-509132)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 康男  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 冨田 高史
渡邊 聡
発明の名称 画像取り込み  
代理人 上田 忠  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小林 泰  

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