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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1332263
異議申立番号 異議2017-700181  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-24 
確定日 2017-09-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第5976947号発明「多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ、および多孔質層またはセパレータを含む非水電解液二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5976947号の請求項1?8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5976947号(以下「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成28年7月29日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人森本晋より特許異議の申立てがされ、平成29年4月19日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成29年6月19日に意見書が提出されたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?8に係る発明(以下「本件発明1?8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下であり、
ポリオレフィン、含フッ素樹脂、含フッ素ゴム、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、ゴム類、融点やガラス転移温度が180℃以上の樹脂および水溶性ポリマーからなる群から1種以上選択される樹脂、およびフィラーを含有し、
上記樹脂およびフィラーを含む多孔質層におけるフィラーの含有量が60質量%以上、99質量%以下であり、
前記フィラーの体積基準の平均粒子径は、D10が0.005?0.4μm、D50が0.01?1.0μm、D90が0.5?5.0μmであり、かつ、D10とD90との差が2μm以下である、非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項2】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下であり、
ポリオレフィンおよび含フッ素樹脂からなる群から1種以上選択される樹脂を含み、
フィラーを含まない非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項3】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが上記多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が7.0%以下である、請求項1に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項4】
1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが上記多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときに、32区画間の空隙率の変動率が7.0%以下である、請求項2に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項5】
フィブリル状または粒状の樹脂を含む樹脂層である、請求項2または4に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層。
【請求項6】
ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムの片面または両面に、請求項1?5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層を積層してなる、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項7】
正極、請求項6に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ、および負極がこの順で配置されてなる、非水電解液二次電池用部材。
【請求項8】
請求項1?5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池のセパレータ用の多孔質層、または請求項6に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。

第3 取消理由の概要
平成29年4月19日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。

本件発明1?8は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物]
甲第1号証:特開2012-199253号公報
甲第2号証:特開2011-181459号公報
甲第3号証:特開2001-316006号公報
甲第4号証:特表2008-524824号公報
甲第6号証:特許第4988973号公報

1 本件発明1に対して
(1) 甲第1号証記載の発明に基いて、又は、甲第1号証記載の発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 甲第4号証記載の発明及び甲第1号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本件発明2、4及び5に対して
甲第6号証記載の発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件発明3、6、7及び8に対して
甲第1号証記載の発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、上記取消理由は、特許異議申立てされたすべての申立理由を含むものである。

第4 取消理由についての判断
1 甲各号証記載の発明ないし事項
(1) 甲第1号証
甲第1号証の【請求項1】、【0001】、【0009】、【0013】、【0018】?【0025】、【0030】、【0033】?【0034】、【0048】、【0060】?【0068】、【0076】?【0085】(実施例1)の記載を総合すると、甲第1号証には、
「樹脂バインダが、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20?35モル%のもの)、アクリレート共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの樹脂、及び耐熱性微粒子を含み、
上記樹脂及び耐熱性微粒子を含む耐熱多孔質層における上記耐熱性微粒子の量は、70体積%以上、99体積%以下であり、
上記耐熱性微粒子は、体積基準の平均粒子径が、D10が0.31μm、D50が0.63μm及びD90が0.9μm以下で、粒子径が2μmよりも大きな粒子の割合が0.5体積%である、
非水電解液二次電池用セパレータに用いられる耐熱多孔質層。」(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
また、甲第1号証には、「甲1発明の耐熱多孔質層と、熱可塑性樹脂を主体とする樹脂多孔質層とを少なくとも有する多層多孔質膜からなる非水電解液二次電池用セパレータ」(以下「甲1記載事項1」という。)及び「当該甲1記載事項1の非水電解液二次電池用セパレータを用いて、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を有する正極、上記セパレータ、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を有する負極の順に配置してなる非水電解液二次電池」(以下「甲1記載事項2」という。)が記載されている。

(2) 甲第2号証
甲第2号証の【請求項1】、【0001】?【0004】、【0014】、【0029】?【0034】、【0042】?【0043】の記載を総合すると、甲第2号証には、
有機バインダ及び耐熱性微粒子を含む耐熱多孔質層を樹脂多孔質膜に塗布形成した塗布型セパレータについて、「当該塗布型セパレータの製造において、塗工機上を走行する樹脂多孔質膜にシワが発生するという問題があること」(甲2記載事項1)、「塗工機上を走行する膜状物(フィルム)に発生したシワを伸ばす一般的な方法として、エキスパンダロール、らせん溝付きロール、クロスガイダ等のシワ伸ばし装置を用いる方法が知られていること」(甲2記載事項2)、「帯状の多孔質膜を複数の搬送ロールを含む搬送系で搬送し、搬送の過程で前記多孔質膜に塗液を塗布する塗布型セパレータの製造方法であって、多孔質膜に、その長手方向に特定の張力を印加して前記多孔質膜を搬送系で搬送することで、公知の特殊なシワ伸ばし装置を使用することなく、シワの発生を抑えながら塗布型セパレータを製造することができること」(甲2記載事項3)が記載されている。

(3) 甲第3号証
甲第3号証の【0003】?【0005】、【0016】?【0017】、【0028】?【0029】、【0047】?【0049】の記載を総合すると、甲第3号証には、
「セラミック粉末及び耐熱性樹脂を含み、当該セラミック粉末は、一次粒子の平均粒径が1.0μm以下である、二次電池用セパレータとして使用できる基材塗工体の製造方法について、
基材へのシワの発生を防止すると共に、基材が受けるダメージの低減を図ることができる基材搬送装置および基材塗工体の製造方法であって、
基材を搬送するための少なくとも2つの搬送部材と、2つの搬送部材間に配置され、基材の両縁部をそれぞれ挟持する少なくとも1対の基材挟持部材とを備え、1対の基材挟持部材は、基材を押し付ける押付口-ラをそれぞれ有し、各押付ローラが、それらの軸心を基材の搬送方向側で交差させるように基材の搬送方向に対して傾斜して配置されていると共に、1対の基材挟持部材は、基材の両縁部をそれぞれ挟持したときに、基材の幅方向における基材と各基材挟持部材との接触長さの合計が、基材の幅寸法の25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下となるように構成されていること」(甲3記載事項)が記載されている。

(4) 甲第4号証
甲第4号証の【請求項1】、【請求項10】、【0001】、【0018】、【0030】?【0032】、【0036】?【0037】、【0054】、【0061】の記載を総合すると、甲第4号証には、
「ポリオレフィン系のセパレータ膜基材の表面及び前記基材に存在する気孔部の一部よりなる群から選ばれた1種以上の領域に塗布される無機物粒子及びバインダー高分子の混合物の活性層であって、
上記バインダー高分子が、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体、ポリイミドから選択される1種以上の高分子であり、
上記無機物粒子の含量は、有無機複合多孔性セパレータ膜を構成する無機物粒子とバインダー高分子の混合物100重量%当たり、60ないし95重量%であり、
無機物粒子の粒径は、0.001ないし10μmの範囲である、
リチウム二次電池用セパレータ膜に用いることができる活性層。」(以下「甲4発明」という。)が記載されている。

(5) 甲第6号証
甲第6号証の【請求項1】、【0003】、【0011】、【0013】、【0024】?【0031】、【0058】、【0078】?【0079】、【0086】【表2】の記載を総合すると、甲第6号証には、
「多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の面に形成されたポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層とを備え、前記接着性多孔質層の結晶化度が20 ?35%であり、前記接着性多孔質層はフィラーを含まない、非水系二次電池用セパレータ」(以下「甲6発明」という。)が記載されている。

2 判断
(1) 本件発明1について
ア 甲1発明を主引用例とする進歩性について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の相違点において相違する。

[相違点]
本件発明1においては、「1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときの、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下」であるという構成を有するのに対し、甲1発明はそのような構成を有しない点。

上記相違点について検討する。
上記「空隙率の変動率」については、本件特許明細書の【0066】に「上記皺伸ばし機構によって基材の皺を伸ばしながら塗工液を塗布すれば、多孔質層に偏りおよび皺が発生することを、効果的に抑制することができる。つまり、塗工液の塗工ムラが無くなるので、均一に塗工することができ、多孔質層の空隙率の変動率が小さくなる傾向がある。」と記載されるように、基材の皺を伸ばしながら塗工液を塗布すれば、多孔質層の偏りや皺の発生を抑制でき、均一に塗工することができるため、多孔質層の空隙率の変動率が小さくなるという傾向があることが理解される。
この点、甲1発明の耐熱多孔質層も「ダイコーターを用いて前記のスラリーを均一塗布」(【0077】)されたものではあるが、上記「均一塗布」という記載のみから、具体的に「1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときの、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下」であることまでが記載されているに等しいということはできない。
また、甲第2及び第3号証(甲2記載事項1?3、甲3記載事項)には、シワの発生を抑えながら耐熱性多孔質層を塗布することが示されるのみであり、非水電解質二次電池のサイクル特性を優れたものとするという課題についての記載や示唆はなく、当該課題に対して、当該二次電池のセパレータ用の多孔質層の「空隙率の変動率」というパラメータに着目して、上記耐熱多孔質層を「1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときの、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下」という範囲に調整することは示されていない。
そして、甲1発明の課題は「負荷特性および安全性に優れた非水電解液電池を構成し得るセパレータ・・・を提供すること」(【0009】)であるところ、甲第1号証に接した当業者にとって、甲第2及び第3号証(甲2記載事項1?3、甲3記載事項)を参照しても、当該課題とは異なる、非水電解質二次電池のサイクル特性を優れたものとするという課題について、当該二次電池のセパレータ用の多孔質層の「空隙率の変動率」というパラメータに着目して、上記均一塗布された耐熱多孔質層の均一さの程度を、具体的に「1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときの、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下」という範囲に調整しようとする動機づけはなく、また、甲1発明に甲第2及び第3号証記載の事項を組み合わせたとしても、耐熱多孔質層の均一さの程度が必ず上記範囲となるとはいえないから、上記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を有することにより、「サイクル特性に優れた非水電解液二次電池用部材として好適に使用することができる」(【0161】)という効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 甲4発明を主引用例とする進歩性について
本件発明1と甲4発明とを対比した場合においても、両者は、少なくとも上記相違点に示した本件発明1の構成を甲4発明は有しない点において相違する。また、上記相違点に係る本件発明1の構成(以下「上記相違点に係る構成」という。)は、甲第1号証(甲1記載事項1及び2)にも示されていない。
そして、甲4発明の課題は、「安全性の確保と性能アップ(放電容量)を同時に図る」こと(【0009】、【0102】?【0104】)であるところ、甲第4号証に接した当業者にとって、甲第1号証(甲1記載事項1及び2)を参照しても、当該課題とは異なる、非水電解質二次電池のサイクル特性を優れたものとするという課題について、当該二次電池のセパレータ用の多孔質層の「空隙率の変動率」というパラメータに着目して、上記均一塗布された耐熱多孔質層の均一さの程度を、具体的に「1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときの、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下」という範囲に調整しようとする動機づけはないから、上記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
よって、本件発明1は、甲4発明及び甲第1号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本件発明2、4及び5について
本件発明2と甲6発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記(1)アに示した上記相違点に示した本件発明1の構成を甲6発明は有しない点において相違する。また、上記相違点に係る構成は、甲第2及び第3号証(甲2記載事項1?3、甲3記載事項)にも示されていない。
ここで、甲6発明は、接着性多孔質層の結晶化度を20?35%に制御することにより接着性多孔質層の電極との接着性を向上させつつ、十分なイオン透過性を確保できる、との効果を奏し(【0013】)、甲6発明に係るセパレータを用いた電池のサイクル特性が優れたものとなることが示されているところ(【0078】?【0079】、【0086】【表2】)、甲6発明は、本件発明2とは、非水電解質二次電池のサイクル特性を優れたものとするという課題に基づく発明であるという点で軌を一にするものであるが、本件発明2とは異なる解決手段により、当該課題を解決したものである。
一方、甲第2及び第3号証(甲2記載事項1?3、甲3記載事項)には、シワの発生を抑えながら耐熱性多孔質層を塗布することが示されるのみであり、非水電解質二次電池のサイクル特性を優れたものとするという課題についての記載や示唆はなく、当該課題に対して、当該二次電池のセパレータ用の多孔質層の「空隙率の変動率」というパラメータに着目して、耐熱多孔質層を「1区画が縦2.3μm、横2.3μm、厚さが多孔質層そのものの厚さの直方体に32分割し、各区画の空隙率をそれぞれ測定したときの、32区画間の空隙率の変動率が16.0%以下」という範囲に調整することは示されていない。
そうすると、甲6発明において、当業者が非水系二次電池のサイクル特性の更なる向上を期待したとしても、甲6発明に甲第2及び第3号証記載の事項を組み合わせようとする動機づけはなく、また、組み合わせたとしても上記相違点に係る構成には想到しない。よって、上記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
そして、本件発明2は、上記相違点に係る構成を有することにより、「サイクル特性に優れた非水電解液二次電池用部材として好適に使用することができる」(【0161】)という効果を奏するものである。
よって、本件発明2は、甲6発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明4及び5は、本件発明2の発明特定事項をすべて含むものであるところ、本件発明2についてと同様に、甲6発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3) 本件発明3、6、7及び8について
本件発明3、6、7及び8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、本件発明1についてと同様に、甲1発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 小括
以上のとおり、
ア 本件発明1は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、あるいは、甲4発明及び甲第1号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2、4及び5は、甲6発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明3、6、7及び8は、甲1発明並びに甲第2及び第3号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1?8に係る特許は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできないから、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおり、上記取消理由によっては、本件発明1?8に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-08-24 
出願番号 特願2015-539903(P2015-539903)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横島 隆裕  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 千壽 哲郎
蓮井 雅之
登録日 2016-07-29 
登録番号 特許第5976947号(P5976947)
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 多孔質層、多孔質層を積層してなるセパレータ、および多孔質層またはセパレータを含む非水電解液二次電池  
代理人 鶴田 健太郎  
代理人 長谷川 和哉  

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