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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1332741 |
審判番号 | 不服2016-5411 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-12 |
確定日 | 2017-09-19 |
事件の表示 | 特願2011- 45430「デュアル・デプレションを示す高電子移動度トランジスタ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日出願公開、特開2011-181934〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,平成23年(2011年)3月2日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理平成2010年3月2日,大韓民国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成26年 2月 5日 審査請求 平成26年11月27日 拒絶理由通知 平成27年 4月 2日 意見書・手続補正 平成27年12日14日 拒絶査定 平成28年 4月12日 審判請求・手続補正 2 審判請求と同時にした手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年4月12日に審判請求と同時にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正の内容 本件補正により,下記のとおり特許請求の範囲の請求項13について補正がされた。(下線は補正個所を示し,当審で付加した。) ・補正前 「下部物質層上に形成された中間物質層と、 前記中間物質層上に存在する上部物質層及びドレイン電極と、 前記中間物質層と前記上部物質層とのうち少なくともいずれか1層の上に形成されたゲート電極と、 前記中間物質層と前記上部物質層とのうち少なくともいずれか1層の上に形成されたソース電極と、を含み、 前記中間物質層の極性は、前記上部物質層及び下部物質層の極性と異なり、 前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に、デュアル・デプレション領域が存在する高電子移動度トランジスタ。」 ・補正後 「下部物質層上に形成された中間物質層と、 前記中間物質層上に存在する上部物質層及びドレイン電極と、 前記中間物質層と前記上部物質層とのうち少なくともいずれか1層の上に形成されたゲート電極と、 前記中間物質層と前記上部物質層とのうち少なくともいずれか1層の上に形成されたソース電極と、を含み、 前記中間物質層の極性は、前記上部物質層及び下部物質層の極性と異なり、 前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に、デュアル・デプレション領域が存在し、 前記ソース電極及び前記ゲート電極に連結された第1電源と、 前記ドレイン電極に連結され、前記ソース電極及び前記ゲート電極に連結されない第2電源とを含む高電子移動度トランジスタ。」 (2)判断 本件補正により請求項13に「前記ソース電極及び前記ゲート電極に連結された第1電源と、前記ドレイン電極に連結され、前記ソース電極及び前記ゲート電極に連結されない第2電源とを含む」(以下,「本件補正事項」という。)が付加されたが,本件補正事項は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されておらず,それらの記載から自明のものとも認められないので,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 なお,請求人は,本件補正事項は,出願当初の図10に基づくと主張するが,図10には,電源S1及び電源S2を,いずれも下向きの矢印に接続することが記載されており,これはいずれも接地レベルに接続することを意味するから,電源S1とS2は接地レベルを介して電気的な接続を有するものと解される。 とすれば、図10には、電源S2は、ドレイン電極32及び接地レベルであるソース電極28と連結されていることが記載されているから、本件補正事項の根拠とはならない。 (3)むすび したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について (1)本願発明 本願の請求項13に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年4月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項13に記載された,次のとおりのものと認める。 「下部物質層上に形成された中間物質層と、 前記中間物質層上に存在する上部物質層及びドレイン電極と、 前記中間物質層と前記上部物質層とのうち少なくともいずれか1層の上に形成されたゲート電極と、 前記中間物質層と前記上部物質層とのうち少なくともいずれか1層の上に形成されたソース電極と、を含み、 前記中間物質層の極性は、前記上部物質層及び下部物質層の極性と異なり、 前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に、デュアル・デプレション領域が存在する高電子移動度トランジスタ。」 (2)引用文献1の記載 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-134608号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (ア)【発明が解決しようとする課題】 【0025】 本発明が解決しようとする課題は、リサーフの効果を用いて、窒化物系ヘテロ接合トランジスタの高耐圧化を行うことであり、具体的には、窒化物半導体ヘテロ接合トランジスタにおいて、ドレインのオフ耐圧やオン耐圧が向上した窒化物半導体のトランジスタ構造を提供することにある。 (イ)【0059】 ドレイン電流が飽和している場合、あるいは、ゲート電圧がしきい値電圧以下の場合において、つまり、ドレイン電流の飽和領域および遮断領域となっている場合において、n型の2次元電子ガスチャンネルは空乏化する。このn型の2次元電子ガスチャンネルが空乏化すると、2次元状のホールからなるp型の電界制御チャンネルも空乏化することが可能なように、n型チャンネルに平行にかつ近接させて、電界制御チャンネルを位置させる必要がある。 (ウ)【0124】 (実施例3) 図10は、本発明の実施例3の窒化物半導体ヘテロ接合トランジスタの構造を示す図である。図10において、41は基板、42はA1_(x)Ga_(1-x)Nバリアー層、43はGaN層、44はAl_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層、45はGaN層である。46はソース電極、47はゲート電極、48はドレイン電極、49は絶縁膜である。この層構造は、チャンネルを上下から電界制御チャンネルで挟んだ構造である。素子の層構造は、基板41、Al_(x)Ga_(1-x)N層42、GaN層43、Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44、GaN層45からなっている。チャンネルは、GaN層43とAl_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44のヘテロ界面に形成される。基板41の側の電界制御チャンネルはAl_(x)Ga_(1-x)N層42とGaN層43のヘテロ界面に形成される。素子表面側の電界制御チャンネルはAl_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44とGaN層45のヘテロ界面に形成される。 (エ)図10には、GaN層43上に形成されAl_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44と、Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44上に存在するGaN層45及びドレイン電極48と、GaN層45上に形成されたゲート電極47と、Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44上に形成されたソース電極46が記載されていると認められる。 イ引用発明1 前記(ウ)の記載において、「チャンネル」とは、「2次元電子ガスチャンネル」の意味であるから、「GaN層43」と「Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44」のヘテロ界面に「2次元電子ガスチャンネル」が形成される。また、「電界制御チャンネル」とは、「2次元状のホールからなるp型の電界制御チャンネル」の意味であり、「層構造は、チャンネルを上下から電界制御チャンネルで挟んだ構造である」という記載から、2つの2次元状のホールから成るp型の電界制御チャンネル領域(一つは、基板41の側であり、Al_(x)Ga_(1-x)N層42とGaN層43のヘテロ界面、他の一つは素子表面側のAl_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44とGaN層45のヘテロ界面)が当該2次元電子ガスチャンネルを挟み込む形で平行にかつ近接して形成されているものといえる。 また、前記(イ)の記載から、当該n型2次元電子ガスチャンネルに平行にかつ近接させた位置にp型の電界制御チャンネルを形成すると、ドレイン電流が飽和している場合、あるいは、ゲート電圧がしきい値電圧以下の場合において、つまり、ドレイン電流の飽和領域および遮断領域となっている場合において、n型の2次元電子ガスチャンネルは空乏化し、当該n型の2次元電子ガスチャンネルが空乏化により、2次元状のホールからなるp型の電界制御チャンネルも空乏化することが可能となる。ここで、「空乏化している領域」は「デプレション領域」と技術的に同義であり、「デュアル」というのは、p型とn型のチャンネル領域の両方の領域を意味するものと解される。 さらに、前記(エ)の記載から、図10には、これらの各チャンネルを形成する層構造の上部に互いに離間したゲート電極47とドレイン電極48を備えている窒化物半導体ヘテロ接合トランジスタの構造が記載されている。 したがって、前記(イ)、(ウ),(エ)の記載より、ゲート電極47とドレイン電極48の間に、当該2次元電子ガスチャンネル、p型の電界制御チャンネルが各々空乏化している領域、換言すれば「デュアル・ディプレッション領域」として存在するものといえる。 よって、前記(ア)乃至(エ)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「GaN層43上に形成されたAl_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44と、 前記Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44上に存在するGaN層45及びドレイン電極48と、 前記GaN層45の上に形成されたゲート電極47と、 前記Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44上に形成されたソース電極46と、を含み、 前記ゲート電極47と前記ドレイン電極48との間に、デュアル・デプレション領域が存在する窒化物半導体ヘテロ接合トランジスタ。」 (3)本願発明と引用発明1との対比 ア 引用発明1の「GaN層43」、「Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44」、「GaN層45 」は、その順に積層されているから、本願発明の「下部物質層」、「中間物質層」、「上部物質層」に相当する。 イ 引用発明1の「ドレイン電極48」は、「Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44」上に存在するので、本願発明の「中間物質層上に存在するドレイン電極」に相当する。 ウ 引用発明1の「ゲート電極47」は、「GaN層45」上に形成されているので、本願発明の「上部物質層の上に形成されたゲート電極」に相当する。 エ 引用発明1の「ソース電極46」は、「Al_(y)Ga_(1-y)Nバリアー層44」上に形成されているので、本願発明の「中間物質層の上に形成されたソース電極」に相当する。 オ 引用発明1の「窒化物半導体ヘテロ接合トランジスタ」はAl_(y)Ga_(1-y)N層44を電子供給層、GaNを2次元電子ガスチャンネル層として動作するHEMTであることから、本願発明の「高電子移動度トランジスタ」に対応する。 カ してみると,本願発明と引用発明1とは,下記キの点で一致するが,下記クの点で相違すると認められる。 キ 一致点 「下部物質層上に形成された中間物質層と、 前記中間物質層上に存在する上部物質層及びドレイン電極と、 前記上部物質層の上に形成されたゲート電極と、 前記中間物質層の上に形成されたソース電極と、を含み、 前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に、デュアル・デプレション領域が存在する高電子移動度トランジスタ。」 ク 相違点 本願発明においては,「前記中間物質層の極性は、前記上部物質層及び下部物質層の極性と異な」るのに対し,引用発明1においては,このことが明示されていない点。 (4)相違点についての検討 引用発明1において、下部物質層、上部物質層は、GaN、中間物質層はAlGaNを材料として用いており、本願発明の積層構造と同一の材料である。そして、本願発明においてこれらの材料は極性が異なる物質層となることが記載されている(本願明細書【0041】参照)ことから、引用発明1でも、中間物質層の極性は、必然的に前記上部物質層及び下部物質層の極性と異なるものと認められる。 してみると,相違点は実質的には相違点ではない。 (5)まとめ 本願発明は,引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に掲げられた発明に該当し,特許を受けることができない。 4 結言 したがって,本願の請求項13に係る発明は,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-04-21 |
結審通知日 | 2017-04-24 |
審決日 | 2017-05-10 |
出願番号 | 特願2011-45430(P2011-45430) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須原 宏光、小川 将之 |
特許庁審判長 |
深沢 正志 |
特許庁審判官 |
大嶋 洋一 小田 浩 |
発明の名称 | デュアル・デプレションを示す高電子移動度トランジスタ及びその製造方法 |
代理人 | 木内 敬二 |
代理人 | 崔 允辰 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 阿部 達彦 |