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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1332894
審判番号 不服2016-13421  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-07 
確定日 2017-09-28 
事件の表示 特願2014-124313「太陽電池ユニットの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日出願公開、特開2014-197700〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年5月20日に出願した特願2004-150373号(優先権主張平成15年9月5日:以下、「原出願」という。)の一部を平成21年5月21日に新たな特許出願とした特願2009-123330号の一部を平成24年3月26日に新たな特許出願とした特願2012-069108号の一部を平成26年6月17日に新たな特許出願としたものであって、平成27年4月30日付けで拒絶理由が通知され、同年5月7日付けで手続補正書が提出され、同年11月19日付けで拒絶理由が通知され、同年12月14日付けで意見書が提出され、平成28年5月31日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、同年9月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正について却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に、
「【請求項1】
異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、接着剤として前記フィルム状接着剤のみが前記接続部材に接着される、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項2】
異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、前記フィルム状接着剤以外の接着剤が前記接続部材に接着されない、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項3】
異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、前記接続部材の端部のみに接着剤が接着される、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項4】
異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、前記接続部材の端部以外に接着剤が接着されない、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項5】
異方導電性を有する複数の硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記接続部材の一端における受光面とは反対側が一の前記硬化物を介して一の前記結晶系太陽電池セルの受光面側に接続され、
前記接続部材の他端における受光面側が他の前記硬化物を介して他の前記結晶系太陽電池セルの受光面とは反対側に接続され、
前記熱圧着工程において、前記接続部材の前記一端における受光面側、及び、前記接続部材の前記他端における受光面とは反対側の少なくとも一方に接着剤が接着されない、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記太陽電池ユニットが、前記複数の結晶系太陽電池セルの少なくとも一つの受光面側に配置された充填材層を更に有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記太陽電池ユニットが、前記充填材層及び前記結晶系太陽電池セルの間に配置されたフィルム状光透過性樹脂層を更に有する、請求項6に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記太陽電池ユニットが、前記充填材層の受光面側に配置されていると共にエンボス模様を有するフィルム状光透過性樹脂層を更に有する、請求項6又は7に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項9】
前記充填材層が熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂の少なくとも一方を含み、
前記充填材層の波長400?1100nmの全エネルギーにおける光透過率が加重平均で80%以上である、請求項6?8のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記太陽電池ユニットが、前記結晶系太陽電池セルにおける前記充填材層とは反対側に配置されていると共に有機高分子樹脂からなるフィルム状支持層を更に有する、請求項6?9のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項11】
前記太陽電池ユニットが、前記フィルム状支持層における前記充填材層とは反対側に配置された発泡体層を更に有する、請求項10に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項12】
前記太陽電池ユニットが、前記フィルム状支持層及び前記発泡体層の間に配置された反射膜を更に有する、請求項11に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを150℃以下で熱圧着する、請求項1?12のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項14】
前記結晶系太陽電池セルが、シリコン単結晶太陽電池セル、シリコン多結晶太陽電池セル、又は、シリコン単結晶にアモルファスシリコンを積層した太陽電池セルである、請求項1?13のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。」
とあったものを、
「 【請求項1】
半田接続を行うことなく、異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、接着剤として前記フィルム状接着剤のみが前記接続部材に接着される、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項2】
半田接続を行うことなく、異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、前記フィルム状接着剤以外の接着剤が前記接続部材に接着されない、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項3】
半田接続を行うことなく、異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、前記接続部材の端部のみに接着剤が接着される、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項4】
半田接続を行うことなく、異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記熱圧着工程において、前記接続部材の端部以外に接着剤が接着されない、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項5】
半田接続を行うことなく、異方導電性を有する複数の硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る熱圧着工程を備え、
前記接続部材の一端における受光面とは反対側が一の前記硬化物を介して一の前記結晶系太陽電池セルの受光面側に接続され、
前記接続部材の他端における受光面側が他の前記硬化物を介して他の前記結晶系太陽電池セルの受光面とは反対側に接続され、
前記熱圧着工程において、前記接続部材の前記一端における受光面側、及び、前記接続部材の前記他端における受光面とは反対側の少なくとも一方に接着剤が接着されない、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記太陽電池ユニットが、前記複数の結晶系太陽電池セルの少なくとも一つの受光面側に配置された充填材層を更に有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記太陽電池ユニットが、前記充填材層及び前記結晶系太陽電池セルの間に配置されたフィルム状光透過性樹脂層を更に有する、請求項6に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記太陽電池ユニットが、前記充填材層の受光面側に配置されていると共にエンボス模様を有するフィルム状光透過性樹脂層を更に有する、請求項6又は7に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項9】
前記充填材層が熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂の少なくとも一方を含み、
前記充填材層の波長400?1100nmの全エネルギーにおける光透過率が加重平均で80%以上である、請求項6?8のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記太陽電池ユニットが、前記結晶系太陽電池セルにおける前記充填材層とは反対側に配置されていると共に有機高分子樹脂からなるフィルム状支持層を更に有する、請求項6?9のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項11】
前記太陽電池ユニットが、前記フィルム状支持層における前記充填材層とは反対側に配置された発泡体層を更に有する、請求項10に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項12】
前記太陽電池ユニットが、前記フィルム状支持層及び前記発泡体層の間に配置された反射膜を更に有する、請求項11に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを150℃以下で熱圧着する、請求項1?12のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項14】
前記結晶系太陽電池セルが、シリコン単結晶太陽電池セル、シリコン多結晶太陽電池セル、又は、シリコン単結晶にアモルファスシリコンを積層した太陽電池セルである、請求項1?13のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法。」
に補正するものである。

(2)上記(1)の特許請求の範囲についての補正は、本件補正前の請求項1?5の発明特定事項である「異方導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セル」の「接続」について「半田接続を行うことなく、」との限定をするものである。

したがって、本件補正後の特許請求の範囲に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物
原出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-313126号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同じ。)

(1)「【0015】〈第1の実施形態〉図3は、本発明に係る第1の実施形態の太陽電池素子の構成を示す断面図である。従来技術と同様の構成部分には同一の符号を付記した。14は基板、1は基板内に設けられたp-n接合面、2は裏面電極、3は受光面電極、5は反射防止膜である。尚、受光面電極3の表面15は表面処理が施されている。」

(2)「【0030】以上、第1と第2の実施形態では、結晶系シリコンの半導体を用いていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、アモルファスシリコンあるいは銅インジウムセレナイド、ガリウム砒素、カドミウムテルライド等の化合物系の半導体を用いても応用できるものである。」

(3)「【0037】〈第4の実施形態〉以下、本発明に係る第4の実施形態の太陽電池モジュールについて説明する。本実施形態の太陽電池モジュール21は、第3の実施形態と同様に、第1または第2の実施形態で作製した複数の太陽電池素子16から構成されるものである。
【0038】本実施形態は、第3の実施形態とは、太陽電池素子16を接続するために用いるリード線9が異なる。本実施形態では、厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線により、複数の太陽電池素子16を所望の出力が得られるように直列あるいは並列に接続する。
【0039】前記導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、有機溶剤や希釈剤、硬化剤等の添加剤から構成されている。導電性フィラーとしては、金、銀、銅、アルミニウム等の金属の微粉末やカーボンブラックやグラファイト粉末が用いられる。
【0040】導電性接着剤は、バインダーの種類により、常温乾燥型、常温硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型、高温焼成型に分類される。本実施形態では、どの型の導電性接着剤を用いてもよい。以下、各型の導電性接着剤について説明する。
【0041】常温乾燥型の導電性接着剤は、アクリル等の熱可塑性樹脂をバインダーに用い、常温?100゜Cで数十秒?数十分間放置すると乾燥し接着する。常温硬化型の導電性接着剤は、通常二液型のエポキシ樹脂をバインダーに用い、常温?100゜Cで数十秒?数十分間乾燥すると硬化し接着する。
【0042】熱硬化型の導電性接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーに用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する。紫外線硬化型の導電性接着剤は、エポキシアクリレート等のオリゴマーを用い、UVランプで数十秒?数十分間紫外線を照射することにより接着する。高温焼成型の導電性接着剤は、バインダーとしてガラスフリットを用い、300゜C以上の高温で数十秒?数十分間加熱することにより接着する。
【0043】本実施形態の導電性接着剤には、必ずカーボンブラック等の着色剤を加えるようにする。これにより、導電性接着剤は黒色に着色されることになる。
【0044】後は、第3の実施形態と同様にして、太陽電池モジュール21を作製する。尚、本実施形態において、リード線9の端部の太陽電池素子16の電極2、3へ接着は、上記導電性接着剤によるものでもよいし、はんだ付けによるものであってもよい。
【0045】本実施形態では、耐湿性がよく、劣化、腐食等の少ない高信頼性を有する太陽電池モジュール21が得られる。また、その電極3部分が目立つということもない。太陽電池モジュール21の変換効率更に関しても、従来のものと変わりない。リード線9との接続に導電性接着剤を用いた場合は、はんだを一切使用しない、つまりはんだに含まれる有害物質である鉛を一切使用しないことになる。よって、環境問題へ配慮した太陽電池モジュール21となる。」

(4)上記(1)?(3)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の導電性接着剤が施されたリード線により、結晶系シリコンの半導体を用いた複数の太陽電池素子を所望の出力が得られるように直列に接続するはんだを一切使用しない太陽電池モジュールの作製方法であって、
前記導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、
熱硬化型の導電性接着剤は、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する太陽電池モジュールの作製方法。」

3 対比
本願補正発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「はんだを一切使用しない」は、本願補正発明の「半田接続を行うことなく」に、引用発明の「『導電性接着剤は』『硬化』」は、本願補正発明の「導電性を有する硬化物」に、引用発明の「金属片」は、本願補正発明の「接続部材」に、引用発明の「結晶系シリコンの半導体を用いた複数の太陽電池素子を所望の出力が得られるように直列に接続する」は、本願補正発明の「互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する」に、引用発明の「太陽電池モジュールの作製方法」は、本願補正発明の「太陽電池ユニットの製造方法」に、引用発明の「『導電性フィラー』『を主成分と』する『導電性接着剤』」は、本願補正発明の「『導電粒子を含有する』『接着剤』」に、引用発明の「導電性接着剤は、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する」は、本願補正発明の「接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る』『工程』」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明の「『導電性接着剤は』『硬化』」は、本願補正発明の「導電性を有する硬化物」に、引用発明の「金属片」は、本願補正発明の「接続部材」に、引用発明の「結晶系シリコンの半導体を用いた複数の太陽電池素子を所望の出力が得られるように直列に接続する」は、本願補正発明の「互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する」にそれぞれ相当することから、引用発明の「『金属片より成り、その全表面に』『導電性接着剤が施されたリード線により、結晶系シリコンの半導体を用いた複数の太陽電池素子を所望の出力が得られるように直列に接続する』」は、本願補正発明の「導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する」に相当する。

(3)引用発明の「『導電性フィラー』『を主成分と』する『導電性接着剤』」は、本願補正発明の「『導電粒子を含有する』『接着剤』」に、引用発明の「結晶系シリコンの半導体を用いた複数の太陽電池素子」は、本願補正発明の「複数の結晶系太陽電池セル」に、引用発明の「金属片」は、本願補正発明の「接続部材」にそれぞれ相当することから、引用発明の「『金属片より成り、』『導電性フィラー』『を主成分と』する『導電性接着剤が施されたリード線により、結晶系シリコンの半導体を用いた複数の太陽電池素子を所望の出力が得られるように直列に接続』し、『熱硬化型の導電性接着剤は、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する』」と、本願補正発明の「導電粒子を含有するフィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着する」は、「導電粒子を含有する接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを加熱することにより接着する」点で一致する。

(4)引用発明の「『はんだを一切使用しない』で、『金属片より成り、』『導電性接着剤が施されたリード線』の『熱硬化型の導電性接着剤は、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する』」と、本願補正発明の「熱圧着工程において、接着剤として前記フィルム状接着剤のみが前記接続部材に接着される」は、「加熱することにより接着する工程において、接着剤として前記接着剤のみが前記接続部材に接着される」点で一致する。

(5)上記(1)ないし(4)からみて、本願補正発明と引用発明とは、
「半田接続を行うことなく、導電性を有する硬化物と、接続部材とを介して互いに電気的に接続された複数の結晶系太陽電池セルを有する太陽電池ユニットの製造方法であって、
導電粒子を含有する接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを加熱することにより接着すると共に前記接着剤を熱硬化させて前記硬化物を得る工程を備え
加熱することにより接着する工程において、接着剤として前記接着剤のみが前記接続部材に接着される、太陽電池ユニットの製造方法。」である点で一致し、
次の相違点で相違する。

相違点1:導電粒子を含有する接着剤について、本願補正発明では、「フィルム状」であるのに対して、引用発明では、フィルム状であるか明らかでない点。

相違点2:硬化物について、本願補正発明では、「異方導電性を有する」のに対して、引用発明では、「導電性」と特定されている点。

相違点3:本願補正発明では、「熱圧着」するのに対して、引用発明では、「加熱することにより接着する」と特定される点。

4 判断
(1)相違点1、2について
異方導電性を有するフィルム状接着剤は、例えば、特開2001-31915号公報(請求項1、段落【0001】?【0004】、【0036】等参照)、特開平11-61060号公報(段落【0018】?【0022】等参照)、特開昭62-188184号公報(第7頁右上欄第14行?同頁右下欄第19行等参照)に示されるように、原出願の優先日時点で、周知技術である。
また、異方導電性フィルムの使用対象に太陽電池が含まれることは、例えば、特開2001-202830号公報(段落【0001】)、特開2001-297631号公報(段落【0001】)に示されるように、原出願の優先日時点で、周知技術である。
引用発明では「厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の導電性接着剤が施されたリード線」とあることから、導電性接着剤の形状について記載されていないものの、導電性接着剤は厚み100?200μmの銅等の金属片の全表面に施すことは把握できる。そして、薄い金属片にフィルム状のものを両面、すなわち、「全表面」において「施す」ことは一般的に行われていること(例えば、周知例として、特開昭62-33641号公報第2図に関する記載等参照。周知例の「ラミネート」は、引用発明の「施す」ことに相当する。)から、引用発明の金属片の両面に施す導電性接着剤としてフィルム状のものを採用することは、当業者が容易になし得る事項にすぎない。
そうすると、引用発明の「『導電性フィラー』『を主成分と』する『導電性接着剤』」において、周知の異方導電性を有するフィルム状接着剤を選択することは、当業者が容易に想到し得ることである。
ここで、審判請求書の手続補正書における請求人の主張(リード線のような細線の対象物の全表面を、フィルム状の接着剤を「巻き回す」ことによりコーティングすることが困難)に対して、引用発明のリード線が厚み100?200μmの銅等の金属片より成るものであることから、フィルム状の接着剤を全表面にコーティングする場合においては、上記周知例からも推察できるように「ラミネート」等によりコーティングすることが通常であるものと認められ、「巻き回す」必要がないから、その主張は採用できない。

(2)相違点3について
一般に、熱硬化性樹脂をバインダーとして用いた導電性接着剤により接着する際には、加熱だけでなく、加圧も行う、すなわち、熱圧着することはごく普通のことであるから(例えば、特開2001-31915号公報(請求項1、段落【0001】?【0004】、【0036】等参照)、特開平11-61060号公報(段落【0018】?【0022】等参照)、特開昭62-188184号公報(第7頁右上欄第14行?同頁右下欄第19行等参照)、引用発明においても、「導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、バインダーとして熱硬化性樹脂を用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する」際に、加熱だけでなく、熱圧着することは、当業者が適宜なし得る事項である。

(3)効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(4)結論
本願補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年5月7日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」で、本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の優先日前に頒布された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明において、その発明を特定するために必要な事項である「半田接続を行うことなく、」との限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕4」に記載したとおり、当業者が、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-28 
結審通知日 2017-08-01 
審決日 2017-08-17 
出願番号 特願2014-124313(P2014-124313)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 元彦  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
野村 伸雄
発明の名称 太陽電池ユニットの製造方法  
代理人 阿部 寛  
代理人 平野 裕之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 古下 智也  
代理人 城戸 博兒  

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