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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1333110 |
審判番号 | 不服2016-12343 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-16 |
確定日 | 2017-10-05 |
事件の表示 | 特願2011-279988「無停電電源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日出願公開、特開2013-132132〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年12月21日の出願であって、平成27年9月14日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年11月30日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成28年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成28年8月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成28年8月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年8月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 1-1.本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線を付した箇所は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池を充電するものであってゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路と、 前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、 前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項2】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の放電終止レベルを設定する放電終止レベル設定器と、 前記放電電圧検出回路の出力と前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルとを比較し、前記放電電圧検出回路の出力が前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記比較器からの報知信号と、前記ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記放電回路の放電動作を阻止する放電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項3】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池を充電するものであって、ゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路と、 前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、 前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する第1の比較器と、 前記第1の比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート生成回路からのゲート信号を入力し、前記第1の比較器からの報知信号が入力されたとき、前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の放電終止レベルを設定する放電終止レベル設定器と、 前記放電電圧検出回路の出力と前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルとを比較し、前記放電電圧検出回路の出力が前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する第2の比較器と、 前記第2の比較器からの報知信号と、前記ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記第2の比較器からの報知信号が入力されたとき前記放電回路の放電動作を阻止する放電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項4】 前記リチウムイオン電池は、過電圧及び又は過放電を管理する機能を有するもの、或いは過電圧及び又は過放電を管理する機能を有していないもののいずれかである請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無停電電源装置。 【請求項5】 前記充電動作阻止回路と、前記放電動作阻止回路は、いずれも論理積素子で構成した請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無停電電源装置。」 1-2.本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成27年11月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池を充電するものであってゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路と、 前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成器と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、 前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記比較器からの報知信号と、充電回路用ゲート信号生成器からのゲート信号に基づき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項2】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の放電終止レベルを設定する放電終止レベル設定器と、 前記放電電圧検出回路の出力と前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルとを比較し、前記放電電圧検出回路の出力が前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記比較器からの報知信号と前記ゲート信号生成回路からのゲート信号に基づき前記放電回路の放電動作を阻止する放電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項3】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池を充電する充電回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、 前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する第1の比較器と、 前記第1の比較器からの報知信号に基づき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の放電終止レベルを設定する放電終止レベル設定器と、 前記放電電圧検出回路の出力と前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルとを比較し、前記放電電圧検出回路の出力が前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する第2の比較器と、 前記第2の比較器からの報知信号と前記ゲート信号生成回路からのゲート信号に基づき前記放電回路の放電動作を阻止する放電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項4】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能な複数のセルからなるリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の放電終止レベルを設定する放電終止レベル設定器と、 前記放電電圧検出回路の出力と前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルとを比較し、前記放電電圧検出回路の出力が前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記リチウムイオン電池のセル単体の放電終止電圧の検出回路と、 前記比較器からの報知信号と、前記セル単体の放電終止電圧の検出回路の検出信号と、前記インバータのゲートに与えるゲート信号生成回路からのゲート生成信号に基づき前記インバータを点弧消弧するインバータ点弧消弧回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項5】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能な複数のセルからなるリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記放電電圧検出回路からの出力から前記セル単体の電池電圧を算出するセル単体電池電圧算出回路と、 前記セル単体の放電終止レベルを設定するセル単体放電終止レベル設定器と、 前記セル単体電池電圧算出回路の出力である電池電圧が前記セル単体放電終止レベル設定器で設定されたセル単体放電終止レベルを下回ったことを報知する報知信号を出力するセル単体放電終止電圧比較器と、 前記セル単体放電終止電圧比較器からの報知信号と前記ゲート信号生成回路の出力に基づき前記インバータを駆動する前記ゲート信号生成回路からのゲート信号をブロックする回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項6】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能な複数のセルからなるリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池のセル単体の過電圧を検出するセル単体過電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池を充電する充電回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、 前記充電電圧検出回路の充電電圧が前記過電圧レベル設定器で設定された過電圧レベルを超えたことを報知する過電圧比較器と、 前記過電圧比較器からの報知信号と前記セル単体過電圧検出回路からの検出信号と前記ゲート信号生成回路の出力に基づき、前記充電電圧検出値が過電圧レベルを超えるか、前記セル単体の電圧が過電圧レベルを超えた時に前記充電回路を駆動する信号をブロックする充電回路駆動停止信号発生回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項7】 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能な複数のセルからなるリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池を充電する充電回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記充電電圧検出回路の出力からセル単体の充電電圧を算出するセル単体充電電圧算出回路と、 前記リチウムイオン電池のセル単体の過電圧レベルを設定するセル単体過電圧レベル設定器と、 前記セル単体充電電圧算出回路の出力が前記セル単体過電圧レベル設定器で設定されたセル単体過電圧レベルを超えたことを報知し、この報知信号により前記充電回路を駆動する信号をブロックする充電回路動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 【請求項8】 前記リチウムイオン電池は、これを構成するセル単体の過電圧及び又は過放電を管理する機能を有するもの、或いはセル単体の過電圧及び又は過放電を管理する機能を有していないもののいずれかである請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の無停電電源装置。 【請求項9】 前記充電動作阻止回路と、前記放電動作阻止回路と、前記インバータ点弧消弧回路と、前記インバータゲート信号ブロック回路は、いずれも論理積素子で構成した請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の無停電電源装置。」 1-3.補正の内容についての小括 前記1-2.及び1-1.に摘記した本件補正前後の特許請求の範囲の記載を比較すると、特許請求の範囲についての本件補正は、 請求項1について、本件補正前の「ゲート信号を与える」、「充電回路用ゲート信号生成器」及び「前記比較器からの報知信号と、充電回路用ゲート信号生成器からのゲート信号に基づき」の記載を、それぞれ、「ゲート信号を与えられる」、「充電回路用ゲート信号生成回路」及び「前記比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき」に変更し、 請求項2について、本件補正前の「前記比較器からの報知信号と前記ゲート信号生成回路からのゲート信号に基づき」の記載を「前記比較器からの報知信号と、前記ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき」に変更し、 請求項3について、本件補正前の「前記リチウムイオン電池を充電する充電回路」及び「前記第1の比較器からの報知信号に基づき」の記載を、それぞれ、「前記リチウムイオン電池を充電するものであって、ゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路」及び「前記第1の比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート生成回路からのゲート信号を入力し、前記第1の比較器からの報知信号が入力されたとき、」に変更するとともに、「前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路と、」を加入し、 本件補正前の請求項4?7を削除し、 本件補正前の請求項4?7の削除に伴い本件補正前の請求項8を請求項4として、本件補正前の「これを構成するセル単体の過電圧及び又は過放電を管理する機能を有するもの」及び「セル単体の過電圧及び又は過放電を管理する機能を有していないもの」の記載から、それぞれ、「これを構成するセル単体の」及び「セル単体の」の記載を削除し、 本件補正前の請求項4?7の削除に伴い本件補正前の請求項9を請求項5として、本件補正前の「前記インバータ点弧消弧回路と、前記インバータゲート信号ブロック回路」の記載を削除するものである。 2.補正の適否 請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同条同項第4号に規定する明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、請求項2,3についての本件補正は、同条同項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件補正前の請求項4?7を削除する補正は、同条同項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。 さらに、補正前の請求項8(補正後の請求項4)についての本件補正及び補正前の請求項9(補正後の請求項5)についての本件補正は、いずれも、同条同項第4号に規定する明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そこで、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮をも目的とする請求項1についての本件補正後の同請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2-1.本件補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、前記「1-1.」に記載したとおりのものである。 2-2.引用例の記載事項 (1)引用例1 (1-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-58170号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数個のリチウムイオン二次電池のセルを直列接続してなる電池モジュールを複数個直列接続して所要の出力電圧を得るようにした電池電源を備え、前記電池モジュールには、前記セルの直列回路に接続されてそのセル群の充電を行う充電回路と、前記各セルの過充電及び過放電を防止する機能を備えた電池保護回路とを備えることを特徴とする無停電電源装置。 ・・・(中略)・・・ 【請求項3】 複数個のリチウムイオン二次電池のセルを直列接続してなる電池モジュールを複数個直列接続して所要の出力電圧を得るようにした電池電源と、この電池電源の直流出力を交流に変換して負荷に供給するインバータ回路とを備え、前記電池モジュールには、前記セルの直列回路に接続されてそのセル群の充電を行う充電回路と、前記各セルの状態を検出して過充電及び過放電を防止する機能と備えた電池保護回路と、前記セル間の電圧を検出して所定電圧以上のセルを放電させるセルバランス回路とを備えることを特徴とする無停電電源装置。 【請求項4】 前記電池モジュールの前記電池保護回路は前記各セルの電圧を検出可能となっており、その電圧が所定値以下に低下したことを検出した場合には前記インバータ回路の動作を停止させることを特徴とする請求項3記載の無停電電源装置。」 (イ)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、二次電池を備えた無停電電源装置に関する。 【0002】 【従来の技術】無停電電源装置は、商用交流電源に停電が発生した場合に二次電池に蓄えた電力を負荷に供給する構成である」 (ウ)「【0005】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、リチウムイオン二次電池の使用を可能にして小型軽量の無停電電源装置を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため請求項1の無停電電源装置は、複数個のリチウムイオン二次電池のセルを直列接続してなる電池モジュールを複数個直列接続して所要の出力電圧を得るようにした電池電源を備え、前記電池モジュールには、前記セルの直列回路に接続されてそのセル群の充電を行う充電回路と、前記各セルの過充電及び過放電を防止する機能を備えた電池保護回路を備えたところに特徴を有する。 【0007】この場合、電池モジュールには更に所定電圧以上のセルを放電させるセルバランス回路を備えることもでき(請求項2の発明)、また、セルの温度を検出する温度センサを設け、前記電池保護回路は温度センサにより所定温度以上の温度が検出された場合には前記充電回路の充電動作を停止させる構成とすることができる(請求項5の発明)。また、電池電源の直流出力を交流に変換するインバータ回路を備えた構成でもよく(請求項3の発明)、その場合、電池モジュールの電池保護回路は、前記各セルの電圧を検出可能とし、その電圧が所定値以下に低下したことを検出した場合には前記インバータ回路の動作を停止させるようにしてもよい(請求項4の発明)。 【0008】 【発明の作用および効果】本発明では、電池電源としてリチウムイオン電池を使用することにより、放電レートが高くても小さな定格容量の電池で済み、しかもエネルギー密度が高いから、大幅な小型・軽量化を達成することができる。また、電池電源は、複数のリチウムイオン二次電池のセルを直列接続してモジュール化してあり、各電池モジュールに充電回路及び電池保護回路を備えるから、充電途中に一つのセルでも電圧が所定値以上に上昇したら充電を中止して過充電を防止し、また、一つのセルでも電圧が所定値以下に低下したら放電を中止して過放電を防止することができる。さらに、各電池モジュールにセルバランス回路を設けた場合には、各セルの電圧を検出して所定電圧以上となるセルがあるときには、そのセルの放電を行わせるから、セル間のバランスをとることができて局部的な過電圧が生じてしまうことを確実に防止することができる。」 (エ)「【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明を常時インバータ給電方式の無停電電源装置に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。交流入力端子10は入力トランス11及びチョークコイル12を介してコンバータ13に接続され、ここで交流電力が直流変換されてインバータ14に与えられる。インバータ14の出力トランス15は交流スイッチ16を介して交流出力端子17に連なる。コンバータ13とインバータ14との間には本発明に係る電池電源20が接続され、図示しない交流ラインから充電されると共に、インバータ14に逆流阻止ダイオード18を介して直流電力を供給できるようになっている。 【0010】さて、上記電池電源20は複数台(例えば7台)の電池モジュール30を直列接続して所要電圧を得るようになっており、その電池モジュール30は全て標準化された同一構成である。これを詳細に示すと、図2に示すようになっており、これを説明する。各電池モジュール30には、リチウムイオン二次電池のセル31が計4個直列接続され、定格出力電圧は例えば14.4Vに設定してある。各セル31の直列回路に対して充電回路32が設けられ、フロート充電できるようになっている。この充電回路32は、例えば交流100Vを入力として直流16.4Vを出力するスイッチング電源により構成してある。 【0011】また、この電池モジュール30には電池保護回路33が設けられ、各セル31毎の電圧信号と、例えば2個ずつを2列に並べた4個のセル31群の中央に配置した温度センサ34からの温度信号が与えられるようになっている。そして、この電池保護回路33は、 (1)(「(1)」は、丸数字の1の代替表示。)4個のうちのいずれかのセル31の電圧が所定電圧以下に低下した場合、又は (2)(「(2)」は、丸数字の2の代替表示)4個のセル31群の直列電圧が所定電圧以下に低下した場合には、前記インバータ14に放電停止信号Ss を出力してインバータ14の運転を停止するようになっており、これにて各セル31の過放電を防止するようになっている。また、電池保護回路33は、 (1)(「(1)」は、丸数字の1の代替表示。)4個のうちのいずれかのセル31の電圧が所定電圧以上に上昇した場合、 (2)(「(2)」は、丸数字の2の代替表示)4個のセル31群の直列電圧が所定電圧以上に上昇した場合、又は (3)(「(3)」は、丸数字の3の代替表示)前記温度センサ34によってセル31の温度が所定温度以上に上昇した場合には、前記充電回路32の動作を停止してセル31の過充電を防止するようにしている。 【0012】一方、各セル31には、これらに並列に抵抗35及び例えばFETからなるスイッチング素子36を直列接続した放電回路37がそれぞれ接続されている。そして、前記電池保護回路33は各セル31毎の電圧を監視し、いずれかのセル31が所定電圧以上に上昇したときには、前述したように充電動作を停止すると共に、そのセル31に対応するスイッチング素子36をオンさせて放電を行わせる。これにてそのセル31の電圧が低下すると、そのスイッチング素子36はオフに復帰する。これにより、4個のセル31群のうちのいずれかが局部的に過充電状態となることを防止してセル31間のバランスをとることができ、上記電池保護回路33の一部と上記放電回路37がセルバランス回路を構成する。 【0013】また、上述のように4セルの電池モジュール30を7個直列にすることにより、28個ものリチウムイオン二次電池のセル31が直列接続された形態になるが、モジュール化によって4個ずつが電池保護回路33によって充放電が監視されて保護され、かつ、セルバランス回路によってセル31間のバランスが保たれているから、安全に高電圧化することができる。このような電池モジュール30単位の電池保護及び充電を確保するという構成によって、初めてリチウムイオン二次電池の利用が可能となり、大幅な小型・軽量化が達成できる。」 (オ)「【0014】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施の形態も本発明の技術的範囲に属する。 ・・・(中略)・・・ (3)上記実施形態では、電池モジュール30は4個のセル31を直列接続し、この電池モジュール30を7個直列接続して電池電源20を構成したが、セルの直列接続数や電池モジュールの直列接続数はこれに限られないことは勿論である。」 (1-2)そうすると、これらの記載からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「交流入力端子10は入力トランス11及びチョークコイル12を介してコンバータ13に接続され、ここで交流電力が直流変換されてインバータ14に与えられ、 インバータ14の出力トランス15は交流スイッチ16を介して交流出力端子17に連なり、 コンバータ13とインバータ14との間には電池電源20が接続され、交流ラインから充電されると共に、インバータ14に逆流阻止ダイオード18を介して直流電力を供給でき、 電池電源20は複数台の電池モジュール30を直列接続して所要電圧を得るようになっており、各電池モジュール30には、リチウムイオン二次電池のセル31が計4個直列接続され、 各セル31の直列回路に対して充電回路32が設けられ、この充電回路32は、スイッチング電源により構成され、 この電池モジュール30には電池保護回路33が設けられ、各セル31毎の電圧信号が与えられ、 電池保護回路33は、4個のうちのいずれかのセル31の電圧が所定電圧以上に上昇した場合又は4個のセル31群の直列電圧が所定電圧以上に上昇した場合には、前記充電回路32の動作を停止してセル31の過充電を防止する、 無停電電源装置。」 (2)引用例2 (2-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-343850号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (カ)「【請求項2】 半導体スイッチのオンオフ動作によって制御された直流電力により蓄電池を充電する充電器と、前記充電器から前記蓄電池への充電電流の通路に設けられたスイッチと、前記蓄電池の満充電状態を検出する満充電検出部と、前記蓄電池の充電電流を検出する電流検出器とを具備し、前記電流検出器によって検出された充電電流値と前記満充電検出部の出力信号とに基いて前記充電電流の異常の有無を判断し、異常有りと判断した場合に前記スイッチおよび前記半導体スイッチをともにオフするよう制御する制御部を有することを特徴とする充電システム。」 (キ)「【0019】 本発明の第二の実施形態例の充電システム動作を、図2を参照しながら以下に説明する。 【0020】 整流器1は商用電源に接続し、商用電源からの電力(交流)を整流して直流電力として出力し、その直流電力は充電器2aに供給され、充電器2aは蓄電池3を、電流検出器5およびスイッチ6を介して、例えば0.1CAの充電レートで、定電流で充電する。PWM回路26の出力に従ってオンオフ動作する半導体スイッチ23によって制御され、連続パルスとなった直流電力は、ダイオード21、コンデンサ22およびリアクトル24によって構成された平滑回路によって平滑化されて、充電器2aから出力される。 【0021】 PWM回路26は、電流検出器5の検出電流とあらかじめ設定しておいた例えば0.1CAの充電レートに対応する充電電流値とを比較して両者が一致するようにPWM(pu1se width modu1ation)変調を行い、半導体スイッチ23の駆動用PWM信号を発生する。AND回路25は、中央制御部11bからのゲートブロック信号SgbとPWM回路26からの駆動用PWM信号との論理積をとり半導体スイッチ23の駆動信号とする。 【0022】 満充電検出部12は蓄電池3の電圧を検出し、温度補正を行った後充電完了したか否かを判断し充電完了と判断した場合に充電完了信号を出力する。中央制御部11bは満充電検出部12より充電完了信号を受け取るとゲートブロック信号Sgbを「0」とし、その他の場合にはゲートブロック信号Sgbを「1」とする。 【0023】 ゲートブロック信号Sgbが「1」の場合、すなわち、蓄電池3が満充電状態に達していない場合、PWM回路26の出力(駆動用PWM信号)がそのまま半導体スイッチ23に入力され、整流器1からの電流は半導体スイッチ23のオンオフ動作によって制御され、充電器2aからは、あらかじめ設定しておいた例えば0.1CAの充電レートに対応する充電電流が蓄電池3に供給される。 【0024】 ゲートブロック信号Sgbが「0」の場合、半導体スイッチ23の駆動信号は「0」となり、半導体スイッチ23はオフする。」 (2-2)以上のとおりであるから、引用例2には、次の技術が記載されている。 「直流電力が供給される充電器2aが蓄電池3を定電流で充電する充電システムであって、 充電器2aは、半導体スイッチ23のオンオフ動作によって制御された直流電力により蓄電池3を充電するものであり、 PWM回路26は、半導体スイッチ23の駆動用PWM信号を発生し、 満充電検出部12は、充電完了と判断した場合に充電完了信号を出力し、中央制御部11bは、満充電検出部12より充電完了信号を受け取るとゲートブロック信号Sgbを「0」とし、その他の場合にはゲートブロック信号Sgbを「1」とし、 AND回路25は、中央制御部11bからのゲートブロック信号SgbとPWM回路26からの駆動用PWM信号との論理積をとり半導体スイッチ23の駆動信号とし、 ゲートブロック信号Sgbが「1」の場合、駆動用PWM信号がそのまま半導体スイッチ23に入力され、充電器2aは、直流電力を半導体スイッチ23のオンオフ動作によって制御し、あらかじめ設定しておいた例えば0.1CAの充電レートに対応する充電電流を蓄電池3に供給し、 ゲートブロック信号Sgbが「0」の場合、半導体スイッチ23の駆動信号は「0」となり、半導体スイッチ23はオフする。」 (3)引用例3 (3-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-65031号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3。以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (ク)「UPS(3)は、交流を直流に変換する交流直流変換器即ち整流器(31)と、この整流器(31)に直流回路(32)を介して接続されて直流を交流に変換するインバータ(33)と、直流回路(32)に接続されたエネルギ蓄積手段即ち蓄電池(34)と、整流器(31)の入力側に挿入されたサーキットブレーカ(以下、開閉器という)(35)と、整流器(31)に供給される整流器電流i_(R)を検出する変流器(36)とを備えている。」(第2ページ右上欄第16行?左下欄第4行) (ケ)「UPS(3)及び切換回路(5)には、両者を制御するための無停電電源制御回路〈以下、UPS制御回路という〉(7)が接続されており、・・・(中略)・・・ UPS制御回路(7)は、開閉器制御信号TC、整流器制御信号RC、インバータ制御信号IC及び切換制御信号SC等を生成するシーケンス制御部(70)と、整流器(31)及び他要因の故障信号Eを出力する故障信号生成部(71)と、開閉器制御信号TCと故障信号Eとの論理和をとるオアゲートG1と、整流器制御信号RCと故障信号Eの否定信号との論理積をとるアンドゲートG2と、インバータ制御信号ICと故障信号Eの否定信号との論理積をとるアントゲートG3と、切換制御信号SCと故障信号Eとの論理和をとるオアゲートG4と、オアゲートG1の出力に基づいて開閉器(35)を閉成又はトリップ(遮断)させるトリップ回路 (72)と、アンドゲートG2の出力に基づいて整流器(31)を駆動又は停止させる整流器制御部(73)と、アンドゲートG3の出力に基づいてインバータ(33)を駆動又は停止させるインバータ制御部(74)と、オアゲートG4の出力に基づいて切換回路(5)内の交流スイッチ(51)及び(52)を切換える切換制御部(75)とを備えている。」(第2ページ右下欄第8行?第3ページ左上欄第13行) (コ)「故障信号生成部(71)は、変流器(36)の出力に基づいて整流器電流i_(R)の過電流即ち整流器(31)の短絡などを検出する整流器故障検出部(76)と、整流器(31)以外の他の要因による故障を検出する他要因故障検出部(77)と、整流器故障検出部(76)からの整流器故障検出信号Aと他要因故障検出部(77)からの他要因故障検出信号との論理和をとるオアゲートG5と、オアゲートG5の出力に基づいて故障信号Eを出力するフリップフロップFFとを備えている。」(第3ページ左上欄第14行?右上欄第3行) (サ)「整流器(31)は、互いに同方向に接続された2対のサイリスタSRI及びSR2、SR3及びSR4からなる単相整流部と、サイリスタSRI及びSR3のカソード測に接続されたフィルタリアクトルL_(F)と、フィルタリアクトルL_(F)とサイリスタSR2及びSR4のアノードとの間に挿入されたフィルタコンデンサC_(F)とを含み、ゲート駆動回路(図示せず)によって単相整流部が位相制御されることにより、フィルタコンデンサC_(F)の両端間から所定の直流電圧を出力するようになっている。尚、整流器(31)は、単相整流器に限らず三相整流器であってもよい。又、整流素子としてサイリスタでなくダイオードなどを用いてもよい。」(第3ページ右上欄第10行?左下欄第2行) (シ)「次に、第11図の波形図を参照しながら、第9図及び第10図に示した従来の無停電電源(UPS)制御装置の動作について説明する。ここでは、整流器(31)の短絡故障発生時の動作に注目し、他要因故障検出部(77)については特に説明しない。 通常状態においては、UPS制御回路(7)内のシーケンス制御部(70)は、手動操作等により、UPS(3)を選択駆動するための各制御信号TC、RC、IC及びSCを出力している。又、整流器電流i_(R)に過電流はなく、故障信号Eは「L」レベルであり、各アンドゲートG2及びG3は有効(導通状態)となっている。この結果、UPS(3)においては、開閉器(35)が閉成されると共に、整流器(31)及びインバータ(33)が動作し、切換回路(5)においては、交流スイッチ(51)が導通し、交流スイッチ(52)が切り離される。従って、負荷(6)はUPS(3)を介した交流電路に接続され、UPS(3)は、第11図のインバータ給電区間に示すように、入力電圧V_(P)の位相に同期した交流出力電圧V_(L)を生成する。このとき、直流回路(32)に接続された蓄電池(34)は、整流器(31)からの直流電圧を蓄えており、交流電源(1)に停電又は瞬停などが発生しても、インバータ(33)を動作させて、安定で良質な交流出力電圧V_(L)を常に負荷(6)に供給し続けるようにする。 いま、時刻T_(1)(第11図参照)において、整流器(31)内のサイリスタSR3(第10図参照)が、逆導通モードで破損したとする。 この状態で、サイリスタSR2を点弧させると、整流器(31)内の単相整流部が交流短絡状態となり、交流電源(1)が電源インピーダンス(2)を介して短絡され、入力電圧V_(P)は0となる。これと同時に、整流器(31)に入力される電流i_(R)は、第11図のように、定常状態より非常に大きい値となる。この整流器電流iRは、整流器故障検出部(76)内で電圧レベルに変換され、比較器CMにおいて、過電流検出レベルに相当する基準電圧V_(R)と比較される。比較器CMは、整流器電流i_(R)のレベルが基準電圧V_(R)を越えた時点例えば時刻T_(2)で動作し、整流器故障検出信号Aを「H」レベルにする。 整流器故障検出信号Aは、オアゲートG5を介してフリップフロップFFのセット端子Sに入力され、フリップフロップFFの出力を「H」レベルにする。続いて、整流器電流i_(R)のレベルが基準電圧V_(R)以下となった時刻T_(3)で、整流器故障検出信号Aは「L」レベルとなるが、フリップフロップFFは、「H」レベルの故障信号Eを出力してこれを保持し続ける。 この故障信号Eは、オアゲートG1及びG4を介してトリップ回路(72)及び切換制御部(75)に入力され、開閉器(35)をトリップすると共に、切換回路(5)内の交流スイッチ(51)を切り離して交流スイッチ(52)を導通させる。又、故障信号Eは、アンドゲートG2及びG3を無効にして、各制御信号RC及びICの状態にかかわらず整流器制御部(73)及びインバータ制御部(74)を停止させ、整流器(31)及びインバータ(33)を停止させる。」(第3ページ左下欄第12行?第4ページ右上欄第8行) (3-2)以上のとおりであるから、引用例3には、次の技術が記載されている。 「交流を直流に変換する交流直流変換器即ち整流器(31)と、この整流器(31)に直流回路(32)を介して接続されて直流を交流に変換するインバータ(33)と、直流回路(32)に接続されたエネルギ蓄積手段即ち蓄電池(34)と、整流器(31)に供給される整流器電流iRを検出する変流器(36)とを含む無停電電源装置(UPS) (3)において、 整流器(31)は、互いに同方向に接続された2対のサイリスタSRI及びSR2、SR3及びSR4からなる単相整流部を含み、ゲート駆動回路によって単相整流部が位相制御されることにより所定の直流電圧を出力するようになっており、 UPS(3)には、UPS(3)を制御するための無停電電源制御回路(UPS制御回路)(7)が接続され、 UPS制御回路(7)は、整流器制御信号RC、インバータ制御信号IC等を生成するシーケンス制御部(70)と、整流器(31)及び他要因の故障信号Eを出力する故障信号生成部(71)と、整流器制御信号RCと故障信号Eの否定信号との論理積をとるアンドゲートG2と、インバータ制御信号ICと故障信号Eの否定信号との論理積をとるアントゲートG3と、アンドゲートG2の出力に基づいて整流器(31)を駆動又は停止させる整流器制御部(73)と、アンドゲートG3の出力に基づいてインバータ(33)を駆動又は停止させるインバータ制御部(74)と、を含み、 故障信号Eは、アンドゲートG2及びG3を無効にして、各制御信号RC及びICの状態にかかわらず整流器制御部(73)及びインバータ制御部(74)を停止させ、整流器(31)及びインバータ(33)を停止させる。」 2-3.本件補正発明と引用発明との対比・判断 (1)対比 (ア)引用発明は、コンバータ13で交流電力が直流変換されてインバータ14に与えられるものであるから、引用発明の「交流入力端子10」が交流電源に接続されていることは明らかである。そして、交流入力端子10は、入力トランス11及びチョークコイル12を介してコンバータ13に接続されているから、引用発明の「入力トランス11」、「チョークコイル12」及び「コンバータ13」は、合わせて、本件補正発明の「コンバータ」に相当する。そうすると、引用発明の「交流入力端子10は入力トランス11及びチョークコイル12を介してコンバータ13に接続され」ることは、本件補正発明の「交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータ」を備えることに相当する。 (イ)前記のとおり、引用発明は、コンバータ13で交流電力が直流変換されてインバータ14に与えられ、インバータ14の出力トランス15が交流スイッチ16を介して交流出力端子17に連なるものであるから.引用発明の「インバータ14」がコンバータ13で直流変換された電力を交流変換していることは明らかであって、引用発明の「インバータ14」及び「出力トランス15」は、合わせて、本件補正発明の「インバータ」に相当する。そして、引用例1の記載、特に記載事項(イ)からみて、引用発明の「無停電電源装置」は、商用交流電源に停電が発生した場合に二次電池に蓄えた電力を負荷に供給する構成であるから、引用発明の「インバータ13」が「交流出力端子17」を介して電力を負荷に供給することは明らかである。そうすると、引用発明の「ここで交流電力が直流変換されてインバータ14に与えられ、インバータ14の出力トランス15は交流スイッチ16を介して交流出力端子17に連な」ることは、本件補正発明の「前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータ」を備えることに相当する。 (ウ)引用発明は、「電池電源20は数台の電池モジュール30を直列接続して所要電圧を得るようになっており、各電池モジュール30には、リチウムイオン二次電池のセル31が計4個直列接続され」ているから、電池電源20は、直列接続された(電池モジュール30の台数)×4個のリチウムイオン二次電池のセル31を備え、この直列接続された(電池モジュール30の台数)×4個のリチウムイオン二次電池のセル31は、本件補正発明の「リチウムイオン電池」に相当する。そして、電池電源20は、「交流ラインから充電されると共に、インバータ14に逆流阻止ダイオード18を介して直流電力を供給でき」るから、当然、直列接続された(電池モジュール30の台数)×4個のリチウムイオン二次電池のセル31は、充放電可能とされている。そうすると、引用発明の「コンバータ13とインバータ14との間には電池電源20が接続され、交流ラインから充電されると共に、インバータ14に逆流阻止ダイオード18を介して直流電力を供給でき、電池電源20は複数台の電池モジュール30を直列接続して所要電圧を得るようになっており、各電池モジュール30には、リチウムイオン二次電池のセル31が計4個直列接続され」ることは、本件補正発明の「前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池」を備えることに相当する。 (エ)引用発明の「充電回路32」は、本件補正発明の「充電回路」に相当する。そして、充電回路32は、各電池モジュール30のリチウムイオン二次電池の4個のセル31の直列回路に対して設けられているから、当然、該4個のセル31を充電するものである。さらに、充電回路32は、スイッチング電源により構成され、電池保護回路33により動作を停止され得るものであることから、ゲート信号を供給可能なスイッチング素子を備えていることは明らかであり、このゲート信号を供給可能なスイッチング素子は、本件補正発明の「ゲート信号を供給可能な半導体素子」に相当する。そうすると、引用発明の「各セル31の直列回路に対して充電回路32が設けられ、この充電回路32は、スイッチング電源により構成され」ることは、本件補正発明の「前記リチウムイオン電池を充電するものであってゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路」を備えることに相当する。 (オ)引用発明は、電池モジュール30に設けられた電池保護回路33に各セル31毎の電圧信号を与えるものであるから、電池保護回路33に前記電圧信号を与えるための手段を備えていることは明らかであり、この手段は、本件補正発明の「前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路」と、「リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧手段」である点で一致する。 引用発明は、該電池モジュール30の4個のセル31のうちのいずれかのセル31の電圧が所定電圧(以下、「第1の所定電圧」という。)以上に上昇した場合又は4個のセル31群の直列電圧が所定電圧(以下、「第2の所定電圧」という。)以上に上昇した場合、電池保護回路33が充電回路32の動作を停止するものであり、そのためには、当然、第1の所定電圧と第2の所定電圧が設定されていなければならないから、前記第1の所定電圧と前記第2の所定電圧を設定する手段を備えていることは明らかである。 引用発明は、電池保護回路33が、前記電圧信号を与えられ、前記2つの場合に充電回路32の動作を停止するものである。そうすると、電池保護回路33の一の部分が、前記電圧信号と第1の所定電圧とを比較するとともに、前記電圧信号から得られる4個のセル31群の直列電圧と第2の所定電圧とを比較し(以下、当該一の部分を「比較部」という。)、電池保護回路33の別の一の部分が、充電回路32の動作を停止させる(以下、当該別の一の部分を「充電回路停止部」という。)こと、そして比較部が、4個のセル31のうちのいずれかのセル31の電圧が第1の所定電圧以上であるとの比較結果及び4個のセル31群の直列電圧が第2の所定電圧以上であるとの比較結果を充電回路停止部に与えることは、いずれも、明らかである。 そして、引用発明は、充電回路32の動作を停止してセル31の過充電を防止するものであるから、 引用発明の第1の所定電圧と第2の所定電圧は、本件補正発明の「過電圧レベル」に相当し、引用発明の、第1の所定電圧と第2の所定電圧を設定する手段は、本件補正発明の「前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器」と、「リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル手段」である点で一致し、 引用発明の比較部が充電回路停止部に与える、4個のセル31のうちのいずれかのセル31の電圧が第1の所定電圧以上であるとの比較結果及び4個のセル31群の直列電圧が第2の所定電圧以上であるとの比較結果は、本件補正発明の「前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号」と、「リチウムイオン電池が過電圧であることを報知する報知信号」である点で一致し、引用発明の「電池保護回路33」のうちの比較部は、本件補正発明の「前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器」と、「充電電圧検出手段の出力と過電圧レベル設定手段の過電圧設定レベルとを比較し、リチウムイオン電池が過電圧であることを報知する報知信号を出力する比較器」である点で一致し、 引用発明の「電池保護回路33」のうちの充電回路停止部は、本件補正発明の「前記比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路」と、「比較器からの報知信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路」である点で一致する。 してみれば、引用発明の「この電池モジュール30には電池保護回路33が設けられ、各セル31毎の電圧信号が与えられ、電池保護回路33は、4個のうちのいずれかのセル31の電圧が所定電圧以上に上昇した場合又は4個のセル31群の直列電圧が所定電圧以上に上昇した場合には、前記充電回路32の動作を停止してセル31の過充電を防止する」ことは、 本件補正発明の「前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路と、前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、前記比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と」を備えることと、 「リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出手段と、前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する手段と、前記充電電圧検出手段の出力と前記過電圧レベル設定手段の過電圧設定レベルとを比較し、リチウムイオン電池が過電圧であることを報知する報知信号を出力する比較器と、前記比較器からの報知信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路とを備える」点で一致している。 (カ)引用発明の「無停電電源装置」は、本件補正発明の「無停電電源装置」に相当する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 【一致点】 「交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続された充放電可能なリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池を充電するものであってゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路手段と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定手段と、 前記充電電圧検出手段の出力と前記過電圧レベル設定手段の過電圧設定レベルとを比較し、リチウムイオン電池が過電圧であることを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記比較器からの報知信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。」 【相違点1】 本件補正発明は、充電電圧検出手段が充電電圧検出回路であるのに対し、 引用発明は、当該手段が何により実現されているのか明らかではない点。 【相違点2】 本件補正発明は、過電圧レベル設定手段が過電圧レベル設定器であるのに対し、 引用発明は、当該手段が何により実現されているのか明らかではない点。 【相違点3】 本件補正発明は、充電電圧検出手段の出力が過電圧設定レベルを超えると、リチウムイオン電池が過電圧であると判定するのに対し、 引用発明は、充電電圧検出手段の出力が過電圧設定レベル以上に上昇した場合に、リチウムイオン電池が過電圧であると判定する点 【相違点4】 本件補正発明は、充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路を備え、充電動作阻止回路が、比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記充電回路の充電動作を阻止するのに対し、 引用発明は、充電回路32が備えるスイッチング素子にゲート信号を与える手段が明らかではなく、電池保護回路33の判定部から比較結果を与えられたとき該電池保護回路33の充電回路停止部が充電回路32の動作を停止するものの、該充電回路停止部とゲート信号との関係も明らかではない点。 (2)判断 以下、相違点について検討する。 相違点1及び2について検討すると、所定の電圧を検出する手段が電圧検出回路として構成すること、及び所定の電圧レベルを設定する手段を電圧レベル設定器として構成することは、いずれも、慣用手段であるから、引用発明において、相違点1及び2に係る本件補正発明の特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。 相違点3について検討すると、引用発明は、充電電圧検出手段の出力が過電圧設定レベル(第1の所定電圧又は第2の所定電圧)を超えていれば、リチウムイオン電池(直列接続された(電池モジュール30の台数)×4個のリチウムイオン二次電池のセル31)が過電圧であると判定する点において、本件補正発明と異なるところはない。また、リチウムイオン電池が過電圧であるか否かをその充電電圧を基準値と比較して判定するにあたり、当該基準値を、前記充電電圧がそれをこえるとリチウムイオン電池が過電圧であると判定する値とするか、あるいは前記充電電圧がそれに達すると過電圧であると判定する値とするかは、当業者が適宜選択し得る事項である。 したがって、引用発明において、相違点3に係る本件補正発明の特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。 相違点4について検討すると、ゲート信号を供給可能な半導体素子を含み、該素子により駆動する回路を備える電力装置において、該ゲート信号を生成する回路を更に備えることは慣用手段であり、また前記半導体素子を含む回路の駆動を許可又は禁止する信号と前記ゲート信号との論理和をとり、当該論理和を前記半導体素子を含む回路に供給することにより、前記半導体素子を含む回路の駆動を禁止する信号が入力されたときには前記ゲート信号が前記半導体素子を含む回路に供給されないようにして当該回路の駆動を禁止することは、周知の技術的事項である(例えば、引用例2,3参照)。そうすると、引用発明において、充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路を備え、該充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を比較器からの報知信号(電池保護回路33の比較部が充電回路停止部に与える、4個のセル31のうちのいずれかのセル31の電圧が第1の所定電圧以上であるとの比較結果及び4個のセル31群の直列電圧が第2の所定電圧以上であるとの比較結果)とともに充電動作素子回路(電池保護回路33の充電回路停止部)に入力し、前記報知信号が入力されたとき充電回路(充電回路32)の充電動作を阻止するようにすることは、前記周知の技術的事項に基いて、当業者が容易になし得る事項である。 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び前記周知の技術的事項から当業者が予測される範囲内のものであって、格別顕著なものともいえない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の(2-3)において、「引用文献1から5のいずれも本願の特許請求の範囲の請求項1から請求項3に対応する発明の構成を備えたものは開示されておらず、しかも引用文献1から5を単に組み合わせても本願の特許請求の範囲の請求項1から請求項3に対応する発明の構成が得られないものと考えられることから、本願は特許法第29条第2項の規定に該当しないものとすべきです。 ・・・(中略)・・・ 引用文献2(当審注:本審決で引用した引用例2)の0019-0024には半導体スイッチにより駆動する回路において、半導体スイッチのゲート信号として入力される駆動信号と、駆動/停止を制御する信号の論理積をとり、回路の駆動/停止を制御することが記載されているに過ぎない。 引用文献3(当審注:本審決で引用した引用例3)の第3頁左上欄には、「…駆動信号に基づいて駆動する回路の動作を制御する際に、駆動信号と、駆動・停止の制御信号により生成されるゲートブロック信号とが入力されるAND回路(本願の充電動作阻止回路に対応。)を介して駆動信号を駆動回路に入力する点が記載されている。 ・・・(中略)・・・ 引用文献5(当審注:本審決で引用した引用例1)の段落[0009]-[0011]には、コンバータ13とインバータ14の間に接続される電池電源20は複数台の電池モジュール30を直列接続したもので、各電池モジュール30にはリチウムイオン二次電池のセル31が4個直列接続されたものであって、各セル31毎にスイッチング素子36を有する放電回路37が接続され、電池保護回路33は各セル31毎の電圧を監視し、いずれかのセル31が所定電圧以上に上昇したとき充電動作を停止すると共に、そのセル31に対応するスイッチング素子36をオンさせて放電を行わせる点、つまり各セル31毎の充放電の制御を行う点が記載されているに過ぎない。」と主張している。 審判請求人の前記主張を検討すると、審判請求人は、具体的な理由としては、引用文献1?5に記載された事項を指摘するに留まり、本件補正発明が引用文献1?5を記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない理由については、「引用文献1から5を単に組み合わせても本願の特許請求の範囲の請求項1から請求項3に対応する発明の構成が得られないものと考えられる」としか主張していない。そして、本件補正発明が引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることは、先に検討したとおりであるから、審判請求人の前記主張は、採用することができない。 3.本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成28年8月16日付けの手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年11月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1-2.」に記載のとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし3及びその記載事項は、前記「第2[理由]2-2.」に記載したとおりである。 3 対比・判断 請求項1についての本件補正は、前記「第2[理由]1-3.」に記載したとおり、本件補正前の「ゲート信号を与える」、「充電回路用ゲート信号生成器」及び「前記比較器からの報知信号と、充電回路用ゲート信号生成器からのゲート信号に基づき」の記載を、それぞれ、「ゲート信号を与えられる」、「充電回路用ゲート信号生成回路」及び「前記比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき」に変更するものであって、前記「第2[理由]2.」において検討したとおり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同条同項第4号に規定する明りようでない記載の釈明を目的とするものである。 すなわち、本件補正により、本願発明の発明特定事項である「前記比較器からの報知信号と、充電回路用ゲート信号生成器からのゲート信号に基づき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路」が「前記比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路」に変更され、これは、実質的に、「前記比較器からの報知信号が入力されたとき」との発明特定事項を付加するものであって、特許請求の範囲を減縮するものである。また、本願発明の発明特定事項である「前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成器」が「前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路」に変更されたが、これは本件補正前の明りようでない記載を明りようにするものであって、実質的な相違をもたらすものでない。 そうすると、本願発明は、前記「第2[理由]2.」で検討した本件補正発明から、充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路に関して、「前記比較器からの報知信号が入力されたとき」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]2-3.」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、審判請求人は、平成28年12月26日付けの上申書において、以下の特許請求の範囲の補正案を提出する機会を希望する旨を上申している。 「[請求項1] 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続され、複数のセル単体で構成され、前記セル単体は放電可能であって、過電圧及び又は過放電を管理する機能を有するリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池を充電するものであってゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路と、 前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、 前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 [請求項2] 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続され、複数のセル単体で構成され、前記セル単体は放電可能であって、過電圧及び又は過放電を管理する機能を有するリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の放電終止レベルを設定する放電終止レベル設定器と、 前記放電電圧検出回路の出力と前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルとを比較し、前記放電電圧検出回路の出力が前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する比較器と、 前記比較器からの報知信号と、前記ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記比較器からの報知信号が入力されたとき前記放電回路の放電動作を阻止する放電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。 [請求項3] 交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、 前記コンバータで変換された直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するインバータと、 前記インバータのゲートに与えるゲート信号を生成するゲート信号生成回路と、 前記インバータと前記コンバータの接続点に接続され、複数のセル単体で構成され、前記セル単体は放電可能であって、過電圧及び又は過放電を管理する機能を有するリチウムイオン電池と、 前記リチウムイオン電池を充電するものであって、ゲート信号を供給可能な半導体素子を含む充電回路と、 前記充電回路の半導体素子のゲートにゲート信号を与えられることで前記充電回路を活かす充電回路用ゲート信号生成回路と、 前記リチウムイオン電池の充電電圧を検出する充電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の過電圧レベルを設定する過電圧レベル設定器と、 前記充電電圧検出回路の出力と前記過電圧レベル設定器の過電圧設定レベルとを比較し、前記充電電圧検出回路の出力が前記過電圧設定レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する第1の比較器と、 前記第1の比較器からの報知信号と、前記充電回路用ゲート生成回路からのゲート信号を入力し、前記第1の比較器からの報知信号が入力されたとき、前記充電回路の充電動作を阻止する充電動作阻止回路と、 前記リチウムイオン電池の電圧を放電する放電回路と、 前記リチウムイオン電池の放電電圧を検出する放電電圧検出回路と、 前記リチウムイオン電池の放電終止レベルを設定する放電終止レベル設定器と、 前記放電電圧検出回路の出力と前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルとを比較し、前記放電電圧検出回路の出力が前記放電終止レベル設定器の放電終止レベルを超えたことを報知する報知信号を出力する第2の比較器と、 前記第2の比較器からの報知信号と、前記ゲート信号生成回路からのゲート信号を入力し、前記第2の比較器からの報知信号が入力されたとき前記放電回路の放電動作を阻止する放電動作阻止回路と、 を備えた無停電電源装置。」 本件補正後の請求項1の記載と前記補正案の請求項1の記載を比較すると、前記補正案の請求項1は、インバータとコンバータの接続点に接続されたリチウムイオン電池について、「充放電可能な」との記載を「複数のセル単体で構成され、前記セル単体は放電可能であって、過電圧及び又は過放電を管理する機能を有する」と変更したものである。 しかしながら、前記補正案の請求項1に記載された当該事項は、引用例1に記載されているから(特に記載事項(エ)参照)、前記補正案の請求項1に係る発明も、前記「第2[理由]2-3.」において検討した理由と同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-08-04 |
結審通知日 | 2017-08-08 |
審決日 | 2017-08-21 |
出願番号 | 特願2011-279988(P2011-279988) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J) P 1 8・ 57- Z (H02J) P 1 8・ 121- Z (H02J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横田 有光、坂本 聡生 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
久保 竜一 矢島 伸一 |
発明の名称 | 無停電電源装置 |
代理人 | 特許業務法人スズエ国際特許事務所 |