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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G05D
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G05D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G05D
審判 全部申し立て 特174条1項  G05D
管理番号 1333182
異議申立番号 異議2016-700509  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-01 
確定日 2017-08-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5826240号発明「整圧装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5826240号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5826240号の請求項1-4及び6に係る特許を維持する。 特許第5826240号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5826240号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成22年8月10日に出願された特願2010-179682号の一部を、新たに平成25年12月5日に特許出願したものであって、平成27年10月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人大阪瓦斯株式会社(以下「特許異議申立人」という)により特許異議の申立てがされ、平成28年9月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年11月16日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、それに対して平成28年12月28日に特許異議申立人から意見書が提出され、さらに、平成29年3月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年5月2日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、それに対して平成29年6月23日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年5月2日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という)による訂正の内容は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1
(ア)訂正事項1A
請求項1に
「・・・メインガバナと、
パイロット通路と、
前記パイロット通路内の流体の流量に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段と
を備え、
前記パイロット通路は、前記配管の前記メインガバナよりも下流側と前記ガバナ開閉手段とを連通し、」
とあるのを
「・・・メインガバナと、
前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、
前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段と
を備え、」
に訂正する。

(イ)訂正事項1B
請求項1に
「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、」
とあるのを
「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、」
に訂正する。

(ウ)訂正事項1C
請求項1に
「前記制御手段は、
・・・前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にし、
前記制御手段は、
前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断するとともに、
所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間は、・・・短時間である」
とあるのを
「前記制御手段は、
・・・前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、
前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、
所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、・・・短時間となるように制御する」
に訂正する。

イ 訂正事項2
請求項2に
「前記パイロット通路開閉手段は、各パイロット通路を連通状態または遮断状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、
前記制御手段は、
前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度に制御する
ことを特徴とする請求項1記載の整圧装置。」
とあるのを、
「前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、
前記パイロット通路は、
前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路と、
前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、
前記制御手段は、
前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御する
ことを特徴とする請求項1記載の整圧装置。」
に訂正する。

ウ 訂正事項3
請求項3に
「前記複数のパイロット通路は、
前記第1電磁弁が設けられた第1パイロット通路と、
前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるとともに前記第2電磁弁が設けられた第2パイロット通路と、からなる
ことを特徴とする請求項2記載の整圧装置。」
とあるのを、
「前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の整圧装置。」
に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項5を削除する。

オ 訂正事項5
請求項6に
「・・・を特徴とする請求項2?5のいずれかに記載の整圧装置。」
とあるのを、
「・・・を特徴とする請求項2?4のいずれかに記載の整圧装置。」
に訂正する。

カ 訂正事項6
(ア)訂正事項6A
明細書の段落【0008】に
「本発明は、前提として、・・・メインガバナと、パイロット通路と、パイロット通路内の流体の流量に応じてメインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段とを備えている。
パイロット通路は、配管のメインガバナよりも下流側とガバナ開閉手段とを連通している。」とあるのを、
「本発明は、前提として、・・・メインガバナと、配管のメインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する分岐通路内の流体の圧力に応じてメインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段とを備えている。」に訂正する。

(イ)訂正事項6B
明細書の段落【0010】に
「上記の構成を前提として請求項1に記載の発明は、・・・二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、ガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との開度を可変させるパイロット通路開閉手段・・・を備えている。
制御手段は、・・・所定時間が経過したところでパイロット通路の開度を稼働時の開度にしている。
制御手段は、停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、パイロット通路開閉手段を閉弁してパイロット通路を遮断するとともに、所定の停止操作信号が出力されてからパイロット通路が遮断されるまでに要する時間は、・・・短時間である。」とあるのを、
「上記の構成を前提として請求項1に記載の発明は、・・・二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、パイロット通路におけるガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段・・・を備えている。
制御手段は、・・・所定時間が経過したところでパイロット通路の開度を稼働時の開度にする一方、停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、パイロット通路開閉手段を閉弁してパイロット通路を遮断し、所定の停止操作信号が出力されてからパイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、・・・短時間となるように制御する。」に訂正する。

(ウ)訂正事項6C
明細書の段落【0016】に
「請求項1に記載の発明を前提として、請求項2に記載の発明は、前記パイロット通路開閉手段は、各パイロット通路を連通状態または遮断状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、前記制御手段は、前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度に制御することを特徴とする。」とあるのを、
「請求項1に記載の発明を前提として、請求項2に記載の発明は、前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、前記パイロット通路は、前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路と、前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、前記制御手段は、前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御することを特徴とする。」に訂正する。

(エ)訂正事項6D
明細書の段落【0018】に
「また、請求項2に記載の発明において、第2電磁弁を複数設けることとした場合には、・・・第2電磁弁を所定の間隔で順次開弁していくようにしても構わない。
また、請求項2に記載の発明において、・・・」とあるのを、
「また、請求項2に記載の発明において、第2電磁弁を複数設けることとした場合には、・・・第2電磁弁を所定の間隔で順次開弁していくようにしても構わない。」に訂正する。

(オ)訂正事項6E
明細書の段落【0019】に
「請求項2に記載の発明を前提として、請求項3に記載の発明は、前記複数のパイロット通路は、前記第1電磁弁が設けられた第1パイロット通路と、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるとともに前記第2電磁弁が設けられた第2パイロット通路と、からなることを特徴とする。」とあるのを、
「請求項2に記載の発明を前提として、請求項3に記載の発明は、前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成されることを特徴とする。」に訂正する。

(カ)訂正事項6F
明細書の段落【0022】に
「請求項2?5のいずれかに記載の発明を前提として、請求項6に記載の発明は、・・・」とあるのを、
「請求項2?4のいずれかに記載の発明を前提として、請求項6に記載の発明は、・・・」に訂正する。

(キ)訂正事項6G
明細書の段落【0080】に
「・・・また、上記実施形態における一次圧調整管4および二次圧調整管5が本発明のパイロット通路に相当する。
また、上記第1実施形態におけるオキジャリボール14、第2実施形態および第3実施形態におけるベンチュリ・レストリクタ53が本発明のガバナ開閉手段に相当する。・・・」とあるのを、
「・・・また、上記第1実施形態における一次圧調整管4、中圧補助ガバナ12におけるガスGが流通する部分、調整管3、低圧補助ガバナ13におけるガスGが流通する部分および二次圧調整管5、第2実施形態?第4実施形態における一次圧調整管4および二次圧調整管5が本発明のパイロット通路に相当する。
また、上記第1実施形態におけるオキジャリボール14および調整管3(第2調整管3b)とオキジャリボール14とを接続する配管、第2実施形態?第4実施形態におけるベンチュリ・レストリクタ53および調整管52が本発明のガバナ開閉手段に相当する。・・・」に訂正する。

(ク)訂正事項6H
明細書の段落【0021】を削除する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正事項1A
訂正事項1Aは、「パイロット通路」により連通される部分について、訂正前の請求項1では「配管のメインガバナよりも下流側」と「ガバナ開閉手段」とを連通することのみが明示されていたのに対し、訂正により「配管のメインガバナの下流側」と「ガバナ開閉手段」とを「パイロット通路から分岐する分岐通路」で連通したことを明確にするとともに、「メインガバナの上流側」とも連通すると特定するものであり、さらに、「ガバナ開閉手段」が「メインガバナの開閉量を制御する」のを、訂正前の請求項1では「パイロット通路内の流体の流量に応じて」行っていたのに対し、訂正により「パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する分岐通路内の流体の圧力に応じて」行うものに具体化したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1Aについては、明細書の段落【0027】の「・・・この整圧装置10は、上流側配管1と下流側配管2との間に接続されたメインガバナ11と、調整管3(第1調整管3aおよび第2調整管3b)を介して互いに連結された中圧補助ガバナ12、低圧補助ガバナ13およびオキジャリボール14と、を備えている。・・・」、段落【0030】の「・・・ガスGが消費されて二次圧力P2が低下すると、中圧補助ガバナ12および低圧補助ガバナ13が稼働するとともに、二次圧調整管5を介して調整管3から下流側配管2へとガスGが流通してオキジャリボール14内の圧力が低下する。・・・」、段落【0061】の「なお、この第3実施形態においては、メインガバナおよびガバナ開閉手段を第2実施形態と同様の構成としたが、これらは第1実施形態と同様の構成であってもよい・・・」との記載からみて、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ)訂正事項1B
訂正事項1Bは、パイロット通路開閉手段が可変させる「開度」について、訂正前の請求項1では「ガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との開度」と記載されていたものを、訂正により「パイロット通路におけるガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との間の開度」と明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、各図面に記載された「開閉手段30」の位置からみて、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)訂正事項1C
訂正事項1Cは、「制御手段」が行う制御内容について、訂正前の請求項1では、「前記制御手段は、・・・前記稼働時の開度にし」、「前記制御手段は、・・・遮断するとともに」と並列の形式で記載されていたものを、訂正により「前記制御手段は、・・・前記稼働時の開度にする一方、・・・遮断し」と1つにまとめて記載するとともに、訂正前の請求項1では「・・・前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間は、・・・前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間である」と記載されていたものを、訂正により「・・・前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、・・・前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」と、時間が制御の対象であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1Cは、記載の体裁を整えて意味を明確にしたにすぎないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、平成28年9月29日付け取消理由通知での理由2についての指摘に対応し、パイロット通路の全体構造及びパイロット通路の開度について明確になるよう特定しているものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項3及び5の記載、明細書の段落【0050】の「・・・第1パイロット通路61および第2パイロット通路62には、それぞれ第1電磁弁63および第2電磁弁64が並行して設けられており、これら両電磁弁63,64によって開閉手段30が構成されている。これら両電磁弁63,64は、通常、第1パイロット通路61および第2パイロット通路62を連通状態に維持しており、通電されることによって、第1パイロット通路61および第2パイロット通路62を遮断状態に切り換えるものである。・・・」、段落【0055】の「・・・上記ステップS11において、入力した操作信号が起動操作信号であると判断した場合には、CPU101aは、第2電磁弁64の通電を停止して、第2パイロット通路62を連通状態とする。整圧装置60の稼働が停止している状態では、両電磁弁63,64が通電されて閉弁しているが、当該ステップS14の処理によって、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とが第2パイロット通路62を介して連通することとなる。・・・」、段落【0058】の「・・・上記ステップS16において、セットした時間が経過したと判定した場合には、CPU101aは、第1電磁弁63の通電を停止して第1パイロット通路61を連通状態にする。」という記載からみて、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項3に記載された事項の一部が請求項2に移動したことに伴って、請求項3の記載を整えるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項4により請求項5が削除されたことにより、訂正前の請求項6が請求項5を引用する記載であったのを、請求項5を引用しない記載にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項5は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ 訂正事項6について
(ア) 訂正事項6A?6F、6H
訂正事項6A?6F、6Hは、訂正事項1?5により訂正前の請求項1?3、5及び6が訂正されたことに伴い、明細書中の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ) 訂正事項6G
訂正事項6Gは、平成29年3月22日付け取消理由通知での指摘に対応し、実施例における部材について、パイロット通路及びガバナ開閉手段に対応する部材を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、明細書の【0027】、【0030】、【0047】、【0050】や図1、図4、図5、図9を参酌すれば、各実施例の部材が、訂正事項6Gに記載されたようにパイロット通路又はガバナ開閉手段に対応することは、当業者には当然理解されるものであるから、訂正事項6Gは、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

キ 一群の請求項について
訂正前の請求項1?6は、請求項2?6が訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
よって、上記訂正事項1?6による訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)本件訂正請求に対する特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、平成29年6月23日付け意見書において、本件訂正が訂正要件違反であると主張しているので、検討する。

ア 訂正事項1Aについて(意見書の〔項目A1〕及び〔項目A2〕参照)
特許異議申立人は、訂正事項1Aにより、「パイロット通路」はガバナ開閉手段との関係が不明でガバナ開閉手段と無関係なものに変更されたため、訂正要件を満たしていないと主張する。しかし、訂正事項1Aでは、「ガバナ開閉手段」について「パイロット通路から分岐する分岐通路を有」するものであることも特定されており、「パイロット通路」と「ガバナ開閉手段」との関係は明示されていると認められるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、訂正事項1Aにより、「ガバナ開閉手段」が「パイロット通路から分岐する分岐通路を有」するものであると定義されたが、この訂正は新規事項の導入であり訂正要件を満たしていないと主張する。しかし、当初図面である図1には、調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管が記載されており、当該図1の記載に基づいて、調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管を分岐通路と定義し、同時にガバナ開閉手段に分岐通路も含まれることを明示して、ガバナ開閉手段の構成を明確にするとともにパイロット通路との切り分けをはっきりさせたものである。よって、ガバナ開閉手段が分岐通路を有するとした訂正は、新規事項を含むものではない。

イ 訂正事項6Gについて(意見書の〔項目A3〕?〔項目A5〕参照)
特許異議申立人は、訂正事項6Gは、訂正後の「パイロット通路開閉手段」の設置範囲が広がることになり、訂正要件を満たしていないものと主張する。しかし、当該訂正は、訂正事項1Aにより本件発明1の「パイロット通路」の定義が明確にされたのに伴い、訂正前の図1において、一次圧調整管4及び二次圧調整管5が含まれていること以外が不明であった「パイロット通路」の構成部材に、中圧補助ガバナ12におけるガスGが流通する部分、調整管3、低圧補助ガバナ13におけるガスGが流通する部分も含まれることを明確にしただけであり、「パイロット通路」の意味するものは実質的に変わっていないものである。
また、特許異議申立人は、訂正事項6Gは、調整管3と二次圧調整管5との意味を変更するものであり、訂正要件を満たしていないものと主張する。しかし、訂正事項6Gでは、上記のとおり「パイロット通路」の構成を明確化するために、どの部材が「パイロット通路」に含まれるかを特定しただけであり、各部材それぞれの技術的意味合いが変更されるものではない。
よって、訂正事項6Gは訂正要件を満たしている。

ウ 訂正事項1Cについて(意見書の〔項目A6〕参照)
特許異議申立人は、訂正事項1Cは、「所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間」について、訂正前は「短時間である」という単なる事象を示す結果が得られる内容に留まっていたものを、「短時間となるように制御する」という内容に変更したもので、訂正要件を満たしていないと主張する。しかし、訂正前の「短時間である」という表現においても、「制御手段は、」という主語に対して係り受ける記載であるから、制御内容を意味しているものと認められ、「短時間であるような制御を行う」という意味に解されるものである。そうすると、訂正後の「短時間となるように制御する」という表現と実質的に変わらないものといえる。よって、訂正事項1Cは、日本語としてわかりやすい言い回しとなるよう形式的に変更しただけで、内容については変わらないものと言えるから、訂正要件を満たしていないものとは言えない。

(4)小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」などという)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
流体が流通する配管に開閉動作可能に接続されたメインガバナと、
前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、
前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段と
を備え、
前記ガバナ開閉手段は、
前記下流側の二次圧力が降下すると前記パイロット通路内の流体の流量増加にともなって前記メインガバナを開動作させ、
前記二次圧力が上昇すると前記パイロット通路内の流体の流量減少にともなって前記メインガバナを閉動作させて、前記二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、
前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、
前記パイロット通路開閉手段によって前記パイロット通路が遮断されて前記メインガバナの稼働が停止しているときに、前記メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段と、
前記メインガバナが稼働しているときに、前記メインガバナの稼働を停止させるための停止操作信号を出力する停止操作信号出力手段と、
前記起動操作信号出力手段によって起動操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を開弁して、前記パイロット通路の開度を前記メインガバナの稼働時の開度に制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、
前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、
所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する
ことを特徴とする整圧装置。
【請求項2】
前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、
前記パイロット通路は、
前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路と、
前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、
前記制御手段は、
前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御する
ことを特徴とする請求項1記載の整圧装置。
【請求項3】
前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の整圧装置。
【請求項4】
前記第2パイロット通路には、前記第1パイロット通路よりも流量を制限する絞りが設けられた
ことを特徴とする請求項3記載の整圧装置。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記制御手段は、
前記第1電磁弁を開弁するとともに前記第2電磁弁を閉弁することを特徴とする請求項2?4のいずれかに記載の整圧装置。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1?6に係る特許に対して、平成28年9月29日付け及び平成29年3月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、それぞれ次のとおりである。
ア 特許法第17条の2第3項(平成28年9月29日付け取消理由通知)
請求項1に係る特許は、平成27年4月7日付け手続補正書でした「パイロット通路を備え、前記パイロット通路は、前記配管の前記メインガバナよりも下流側と前記ガバナ開閉手段とを連通し」とした補正は、パイロット通路がメインガバナの上流側に連通されていない構成も含むから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

イ 特許法第36条第6項第2号(平成28年9月29日付け取消理由通知)
(ア)請求項2の「各パイロット通路」という記載は、パイロット通路の全体構造が特定できず、また、請求項1に記載された「パイロット通路」との関係も不明瞭であり、発明が不明確になっている。
(イ)請求項2の「前記パイロット通路の開度」が、何を意味しているのか不明で、発明が不明確になっている。
(ウ)請求項3の「前記複数のパイロット通路」という記載は、引用しているものが不明で、発明が不明確になっている。

ウ 特許法第36条第6項第1号(平成29年3月22日付け取消理由通知)
(ア)請求項1の「前記パイロット通路は、前記配管の前記メインガバナの上流側及び下流側と、前記ガバナ開閉手段とをそれぞれ連通し、」という記載は、「パイロット通路」及び「ガバナ開閉手段」を発明の詳細な説明に発明として記載されたものと対比すると、対応関係が明確でなく、記載が整合しないため、サポート要件を満たしているとは認められない。
(イ)請求項1の「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記ガバナ開閉手段および前記メインガバナの下流側の開度をそれぞれ可変させるパイロット通路開閉手段」という記載は、発明の詳細な説明には、ガバナ開閉手段についてその開度を可変させることの記載はなく、メインガバナの下流側の開度を可変とすることについても、発明の詳細な説明のどの箇所の記載を根拠としているのか不明であり、請求項1-4、6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(3)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法第17条の2第3項について
本件訂正の上記訂正事項1Aにより、本件発明1は「前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路」を備えたものとして訂正された。よって、本件発明1には、パイロット通路がメインガバナの上流側に連通されていない構成は含まれないことになったため、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているものとなった。

(イ)特許法第36条第6項第2号について
本件訂正の上記訂正事項2により、本件発明2から「各パイロット通路」という記載は削除されるとともに、パイロット通路が「前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路」及び「前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路」と全体構造が明確に定義され、請求項1の「パイロット通路」との関係も明確にされた。
また、上記訂正事項2により、本件発明2において「前記パイロット通路における全体の開度」と訂正され、第1パイロット通路及び第2パイロット通路をまとめた全体の開度を意味することも明確になった。
さらに、本件訂正の上記訂正事項3により、本件発明3から、訂正前の「前記複数のパイロット通路」という不明確な記載は削除された。
よって、請求項2及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは言えない。

(ウ)特許法第36条第6項第1号について
本件訂正の上記訂正事項1Aにより、「パイロット通路」及び「ガバナ開閉手段」について、「前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路」及び「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段」と定義され、それに対して、本件訂正の上記訂正事項6Gにより、明細書の段落【0080】が、「上記第1実施形態における一次圧調整管4、中圧補助ガバナ12におけるガスGが流通する部分、調整管3、低圧補助ガバナ13におけるガスGが流通する部分および二次圧調整管5、・・・が本発明のパイロット通路に相当する。 また、上記第1実施形態におけるオキジャリボール14および調整管3(第2調整管3b)とオキジャリボール14とを接続する配管、・・・が本発明のガバナ開閉手段に相当する。」訂正されたことで、本件発明1の「パイロット通路」及び「ガバナ開閉手段」と第1実施形態との対応関係が明確になり、サポート要件を満たしているものと認められる。
また、本件訂正の上記訂正事項1Bにより、「パイロット通路開閉手段」が「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させる」ものであるとされたことで、明細書の段落【0032】や図1に示された開閉手段30との対応関係も明確になり、発明の詳細な説明に記載されたものと認められる。
よって、請求項1に係る特許並びに請求項1を引用する請求項2?4及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは言えない。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許法第29条第2項
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、請求項1?6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2?6号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に想到し得るか、又は、甲第2号証に記載された発明に甲第3?6号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に想到し得る、と主張しているので、検討する。

a.甲第1号証を主引用例とした場合について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証の段落【0010】?【0015】の記載からみて、甲第1号証に記載された「流体圧調整弁1」、「一次側配管A1と二次側配管A2とを接続する調整管4と、中圧補助ガバナ6及び低圧補助ガバナ5におけるガスが流通する部分」、「導入管8」、「助動球盤3」、「流量調整弁19」、「制御装置21」が、本件発明1の「メインガバナ」、「パイロット通路」、「分岐通路」、「ガバナ開閉手段」、「パイロット通路開閉手段」、「制御手段」に相当するものと認められる。
また、甲第1号証の段落【0015】の「前記制御装置21は、・・・ガスの流量を大きく減少させるべく、流量調整弁19を自動調節操作するように構成してある。つまり、・・・平均検出圧力Qが許容圧力R2に達すると弁開度(%)をゼロにして、それ以上の圧力上昇を防止するように構成してある。」という記載からみて、甲第1号証には本件発明1の「停止操作信号出力手段」も備わっているものと認められる。
そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とは、以下の点で相違し、その余の点では一致するものと認められる。
<相違点1>
本件発明1の「制御手段」が、「前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」のに対し、甲第1号証に記載された発明の「制御装置21」は、このような制御を行うかは不明である点。
<相違点2>
本件発明1が「前記パイロット通路開閉手段によって前記パイロット通路が遮断されて前記メインガバナの稼働が停止しているときに、前記メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段」を有するのに対し、甲第1号証に記載された発明は、このような「起動操作信号出力手段」については不明である点。

上記相違点1について検討する。特許異議申立人は、甲第3号証の段落【0048】には「・・・流体供給制御装置100は、・・・第2弁109をクイックシャットさせることができる・・・」、段落【0049】には「・・・流体供給制御装置100は、第2弁をスローオープンさせることができる・・・」という記載があり、これらの記載から甲第3号証には、「a:メインガバナを起動させるとき、メインガバナの開放に要する時間を長くさせること、b:メインガバナの稼働を停止させるとき、メインガバナの遮断に要する時間を短くさせること、c:メインガバナの遮断に要する時間は、メインガバナの開放に要する時間よりも短時間であること」が記載されているとし、当該a、b、cの事項が、甲第3号証を引用するまでもなく、都市ガスや水道等の流体取扱分野において、緊急時の流体の停止はできる限り短時間で弁等を閉め、流体の通流開始時は徐々に弁等を開けるということは技術常識であると主張する。しかし、特許異議申立人の主張は、メインガバナの開閉の仕方に係る事項であって、メインガバナの上流側と下流側とを連通したパイロット通路に設けられた「パイロット通路開閉手段」の開閉の制御に係る事項ではないから、甲第1号証に記載された発明に上記メインガバナの開閉の仕方に係る事項を適用したからといって、相違点1に係る発明特定事項に係る構成には至らないから、当業者が容易に想到するものとは言えない。
また、甲第4号証には、6ページ左欄下から5行?右欄2行に「レギュレータの運転は次の手順に従います。図2を参照してください。 1)ハンドバルブAを徐々に開きます。 2)上流側ブロックバルブを徐々に開きます。 3)下流側ブロックバルブを徐々に開きます。 4)ハンドバルブBを徐々に開きます。 5)バイパスバルブを徐々に閉じます。」と記載され、特許異議申立人は当該記載内容が、本件発明1の「制御手段」が「前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする」という事項に相当すると主張している。しかし、甲第4号証に記載の当該事項は、単にレギュレータの手動運転操作の方法を開示したものであり、特に6ページ右欄の「4-3.シャットダウン」の「注意」には、「・・・各バルブの開閉はゆっくりと行なって下さい。」という記載があることを参照すると、甲第4号証には起動と停止のいずれにおいてもゆっくり作動させることが示されていると解するのが相当である。そうすると、甲第4号証からは、ハンドバルブ等を手動で開閉する際にゆっくり作動させることは読み取れても、パイロット通路開閉手段の自動制御について、上記相違点1に係る本件発明1の特定事項に至るものとは認められない。そして、甲第4号証の他の記載を見ても、相違点1に係る発明特定事項を当業者が容易に想到するものではない。
さらに、甲第6号証には、ガス供給を迅速に停止させるため、ガバナ2を遮断するガス遮断電磁弁を遮断するSI制御部について記載されている(段落【0016】)が、当該記載事項はメインガバナの閉止に係るもので、パイロット通路開閉手段の開閉制御に係るものではない上、開弁時のタイミングについては不明であるから、上記相違点1に係る発明特定事項を公知とするものではない。
そして、上記相違点1に係る本件発明1の特定事項は、甲第2及び5号証も含め、他の文献に記載されている事項とは認められず、当該技術分野における技術常識でもない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2?6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
また、本件発明2?4及び6については、直接又は間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様、甲第1号証に記載された発明、甲第2?6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

b.甲第2号証を主引用例とした場合について
本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証の3ページ左下欄14行-5ページ左上欄16行の記載からみて、甲第2号証に記載された「メインガバナー4」、「メインガバナー4」の上流側配管に接続し「2進デジタルバルブ61」を経由して「メインガバナー4」の下流側配管に接続される配管、「2進デジタルバルブ61」と「メインガバナー4」の操作部とを接続し途中で分岐した配管、「2進デジタルバルブ61」、「ドライバー回路62及びマイクロコンピュータ67」が、本件発明1の「メインガバナ」、「パイロット通路」、「分岐通路」、「ガバナ開閉手段及びパイロット通路開閉手段」、「制御手段」に相当するものと認められる。
そうすると、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明とは、以下の点で相違し、その余の点では一致するものと認められる。
<相違点3>
本件発明1の「制御手段」が、「前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」のに対し、甲第2号証に記載された発明の「ドライバー回路62及びマイクロコンピュータ67」は、このような制御を行うかは不明である点。
<相違点4>
本件発明1が「前記パイロット通路開閉手段によって前記パイロット通路が遮断されて前記メインガバナの稼働が停止しているときに、前記メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段」及び「前記メインガバナが稼働しているときに、前記メインガバナの稼働を停止させるための停止操作信号を出力する停止操作信号出力手段」を有するのに対し、甲第2号証に記載された発明は、このような「起動操作信号出力手段」及び「停止操作信号出力手段」を有するかは不明である点。

上記相違点3について検討すると、当該相違点3は上記相違点1と実質的に同じである。
よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第3?6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
また、本件発明2?4及び6については、直接又は間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様、甲第2号証に記載された発明、甲第3?6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(イ)特許法第36条第6項第2号
a.請求項1の「前記起動操作信号出力手段によって起動操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を開弁して、前記パイロット通路の開度を前記メインガバナの稼働時の開度に制御する」という記載は、明細書の段落【0037】、【0041】-【0045】に説明されているとおり、「起動操作スイッチ40」から「起動操作信号」が出力されると、「CPU101a」は「開閉手段30」を開弁方向に動作させ、「二次圧調整管5」が「整圧装置10」の稼働時の開度にすることを意味しており、「整圧装置10」は「メインガバナ11」とも言えるから、上記記載の技術的意味は明確である。

b.請求項1の「パイロット通路」の定義は、本件訂正により「前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路」となり、下流側の二次圧力の降下又は上昇によりパイロット通路内の流体の流量増加又は流量減少が生じることも明確である。

ウ 平成29年6月23日付け意見書における特許異議申立人の主張について
(ア)明確性
特許異議申立人は、本件発明1?4及び6は、以下の点で、特許を受けようとする発明が明確ではないため、取り消されるべきものであると主張するので、検討する。

a.「ガバナ開閉手段」の構成の点(意見書の〔項目B1〕及び〔項目B2〕参照)
特許異議申立人は、ガバナ開閉手段及びガバナ開閉手段が有する分岐通路に関して、明細書に記載された第1?4実施形態の部材との対応関係が不明瞭になっており、本件発明1が不明確になっていると主張する。
ここで、本件発明1の「ガバナ開閉手段」は、「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」ものである。
そして、明細書に記載された第1実施形態においては、段落【0080】や図1にも示されたように、「オキジャリボール14および調整管3(第2調整管3b)とオキジャリボール14とを接続する配管」が「ガバナ開閉手段」であることが示されており、「調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管」が「分岐通路」に相当することも明らかであるから、本件発明1は明確であると認められる。
一方、明細書に記載された第2?4実施形態については、「ベンチュリ・レストリクタ53および調整管52」が、「前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」機能を有する「ガバナ開閉手段」であると理解できる。ただし、「ベンチュリ・レストリクタ53」は上流側及び下流側のパイロット通路に接続されるが、分岐部分は「ベンチュリ・レストリクタ53」内に設けられており、分岐通路に相当する「調整管52」は「ベンチュリ・レストリクタ53」から分岐しているから、本件発明1の「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有」する構成とは、一見対応していないようにみえる。しかし、明細書の段落【0049】の「なお、上記第2実施形態においては、ベンチュリ・レストリクタ53を設けることとしたが、ベンチュリ・レストリクタ53の代わりに固定絞りを設けることも可能である。」という記載や、段落【0061】の「なお、この第3実施形態においては、メインガバナおよびガバナ開閉手段を第2実施形態と同様の構成としたが、これらは第1実施形態と同様の構成であってもよい・・・」という記載からみて、第2?4実施形態においても、「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有」する「ガバナ開閉手段」を認識できるから、本件発明1は明確である。

b.「パイロット通路における」「開度」の記載の点(意見書の〔項目B3〕参照)
特許異議申立人は、パイロット通路における「開度」とはどの部分の開度を変化させることをいうのか、また、「開度」という用語の意味が不明確であると主張する。
しかし、本件発明1の「パイロット通路開閉手段」は、「前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させる」ものであるから、「前記パイロット通路における」「開度」とは、「前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の」「パイロット通路開閉手段」の「開度」であることは明確である。
また、本件発明2における「前記パイロット通路における全体の開度」とは、「パイロット通路開閉手段」である「第1電磁弁」及び「第2電磁弁」の開閉により得られる、各パイロット通路をまとめた全体の開度を意味していることも明らかであり、本件発明1の「開度」と矛盾した記載であるとも認められない。

(イ)サポート要件
特許異議申立人は、本件発明1?4及び6は、以下の点で、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないため、取り消されるべきものであると主張するので、検討する。

a.ガバナ開閉手段が分岐通路を有する点(意見書の〔項目C1〕及び〔項目C4〕参照)
特許異議申立人は、ガバナ開閉手段の「パイロット通路から分岐する分岐通路」は、発明の詳細な説明に記載されていないと主張する。
しかし、本件発明1の「ガバナ開閉手段」が「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し」とした点については、上記(ア)a.で述べたとおり、明細書の第1?4実施形態として記載されているので、発明の詳細な説明に記載したものである。
なお、ガバナ開閉手段に、「分岐通路」以外に「中圧補助ガバナ12及び低圧補助ガバナ13」や「ニードルバルブ22」の手段が含まれるか否かは、本件発明1?4及び6には特定されておらず、特許異議申立人の主張するように本件発明1?4及び6のガバナ開閉手段にこれらの手段が「含まれない」と限定されるものでもない。よって、特許異議申立人の主張は失当である。

b.パイロット通路の開閉速度制御の点(意見書の〔項目C2〕参照)
特許異議申立人は、「所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間」を、目標とする「前記稼働時の開度になるまでに要する時間」よりも短時間に調節するという制御は、発明の詳細な説明に記載されていないと主張する。
しかし、「所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」点については、明細書の段落【0041】に「・・・入力した操作信号が起動操作信号であると判断した場合には、CPU101aは、開閉手段30の開弁速度を規制する処理を行う。ここで、例えば、開閉手段30の開弁速度は、閉弁速度の10分の1程度に規制される。」と記載されており、開弁速度を閉弁速度よりも遅くする制御を行うことが示されている。そして、開弁速度が閉弁速度よりも遅いということは、開弁に要する時間が閉弁に要する時間よりも長くなるように制御しており、つまり、遮断されるまでに要する時間が開弁に要する時間よりも短時間となるように制御していることと同じである。
よって、上記のように制御する点は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

c.「前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」点(意見書の〔項目C3〕参照)
特許異議申立人は、ガバナ開閉手段は、分岐通路内の流体の圧力ではなく、パイロット通路内の流体の圧力に応じてメインガバナの開閉量を制御していると解釈できるから、「前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」点は、発明の詳細な説明に記載されていないと主張する。
しかし、本件発明1では、例えば図1に記載された第1実施形態をみると、パイロット通路内の流体の圧力の変動により、オキジャリボール14内の圧力が変動し、ダイヤフラム14aが作動するものである(明細書の段落【0030】を参照)。そうすると、パイロット通路内の流体の圧力の変動により、分岐通路である「調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管」内の流体の圧力の変動に伴って、ダイヤフラム14が作動し、メインガバナ11の開閉量が制御されるものであることが理解できる。よって、「前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」点は、発明の詳細な説明に記載されているものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項5に係る特許は、訂正により削除されたため、本件請求項5に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
整圧装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を調整する整圧装置、特には上流側と下流側とを連通するパイロット通路の流量に応じてメインガバナを開閉させる整圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばガス用配管に設けられた整圧装置として、特許文献1に示すものが知られている。この整圧装置は、配管に接続されたメインガバナを有し、このメインガバナの開閉動作によって上流側から下流側への流体の流量を調整することにより、下流側の二次圧力を設定圧に維持している。このように、二次圧力を設定圧に維持するためのメインガバナの開閉動作は、上流側と下流側とを連通するパイロット通路に設けられたガバナ開閉手段(ベンチュリ・レストリクタ)によって制御される。
【0003】
このガバナ開閉手段は、メインガバナに接続されており、二次圧力が設定圧よりも低くなると、パイロット通路内のガスの流量増加にともなってメインガバナに作用する圧力を低下させる。その結果、メインガバナを開動作させて上流側から下流側へのガスの流量を増加させ、二次圧力を設定圧まで上昇させる。一方、二次圧力が設定圧よりも高くなると、パイロット通路内のガスの流量が減少するのにともなってメインガバナに作用する圧力を上昇させる。その結果、メインガバナを閉動作させて上流側から下流側へのガスの流量を減少させ、二次圧力を設定圧まで降下させる。
以上のように、メインガバナ(整圧装置)の稼働時においては、二次圧力の変化にともなって自動で圧力調整を行うことが可能となっている。
【0004】
ここで、上記のように整圧装置をガス用の配管に設けた場合には、例えば災害時やメンテナンス時などに、外部操作によってメインガバナよりも下流側へのガス供給を停止させるようにすることが望ましい。このように、下流側へのガス供給を停止させる簡易な方法として、例えば、パイロット通路に開閉弁を設けるとともに、外部操作によって開閉弁を制御してパイロット通路を強制的に遮断することが考えられる。この方法によれば、配管よりも小径のパイロット通路を遮断するだけでメインガバナ(整圧装置)の稼働を即座に停止させることができるため、装置の小型化や低コスト化ばかりか、ガス供給を停止させる際の省電力化をも図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-249300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにパイロット通路の開閉によってメインガバナ(整圧装置)を稼働すると、メインガバナの挙動が不安定となり、二次圧力が設定圧に維持されるまでに長時間を要してしまう。その結果、需要家の使用環境に悪影響を与えたり、不安定な挙動によって不用意に安全装置が作動してしまい、意図せずにガスの供給が遮断されてしまったりするおそれがある。
具体的には、停止状態にある整圧装置を稼働する場合には、パイロット通路に設けられた開閉弁を開いて、パイロット通路の開度を稼働時の開度にする必要がある。ところが、開閉弁を開くと、パイロット通路内において、上流側から設定圧よりも低い圧力になっている下流側に向かって流れるガスの流量が瞬間的に大きくなることに起因して、メインガバナが一気に開かれてしまう。その結果、二次圧力が急激に上昇するとともに、この二次圧力の急激な変化にともなって、今度はパイロット通路内においてガスの流量が瞬間的に小さくなってしまい、上記とは逆にメインバルブが一気に閉じられてしまう。こうしたメインガバナの極端な開閉動作が短時間の間に繰り返されることにより、挙動が不安定となって二次圧力が設定圧になるまでに長時間を要し、需要家の使用環境に悪影響を与えたり、不安定な挙動によって不用意に安全装置が作動してしまい、意図せずにガスの供給が遮断されてしまったりするおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、起動および稼働停止を簡易に行いながらも、起動する際の安定挙動を実現する整圧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前提として、流体が流通する配管に開閉動作可能に接続されたメインガバナと、配管のメインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する分岐通路内の流体の圧力に応じてメインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段とを備えている。
【0009】
上記のように、ガバナ開閉手段は、パイロット通路に導かれる二次圧力の上昇によってメインガバナを閉動作させ、二次圧力の降下によってメインガバナを開動作させる構成であれば、その具体的な構成は特に限定されない。
例えば、メインガバナとパイロット通路をベンチュリで接続するガバナ開閉手段を構成し、ベンチュリ効果によってメインガバナに作用する圧力を変化させることで、メインガバナを開閉動作させることが考えられる。
また、例えば、パイロット通路の流量や圧力を計測する計測手段(流量計や圧力計)を設け、この計測手段の計測結果に基づいてアクチュエータを駆動して、ガバナを開閉動作させることが考えられる。この場合には、計測手段とアクチュエータとによってガバナ開閉手段が構成される。
いずれにしても、本発明のガバナ開閉手段には、二次圧力の変化に起因するパイロット通路内の流体の流量変化に応じて、メインガバナを開閉させるものが広く含まれる。
また、本発明のメインガバナについても、上記のガバナ開閉手段の制御によって開閉動作を行い、この開閉動作によって下流側の二次圧力を調整することができれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0010】
上記の構成を前提として請求項1に記載の発明は、ガバナ開閉手段は、下流側の二次圧力が降下するとパイロット通路内の流体の流量増加にともなってメインガバナを開動作させ、二次圧力が上昇するとパイロット通路内の流体の流量減少にともなってメインガバナを閉動作させて、二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、パイロット通路におけるガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、パイロット通路開閉手段によってパイロット通路が遮断されてメインガバナの稼働が停止しているときに、メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段と、メインガバナが稼働しているときに、メインガバナの稼働を停止させるための停止操作信号を出力する停止操作信号出力手段と起動操作信号出力手段によって起動操作信号が出力されたとき、パイロット通路開閉手段を開弁して、前記パイロット通路の開度をメインガバナの稼働時の開度に制御する制御手段と、を備えている。
制御手段は、起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、パイロット通路の開度を稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、所定時間が経過したところでパイロット通路の開度を稼働時の開度にする一方、停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、パイロット通路開閉手段を閉弁してパイロット通路を遮断し、所定の停止操作信号が出力されてからパイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、起動操作信号が出力されてからパイロット通路が稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する。
【0011】
請求項1に記載の発明において、パイロット通路開閉手段の具体的な構成は特に限定されない。例えば、パイロット通路開閉手段は、パイロット通路の開度を無段階で可変する電動弁によって構成することとしてもよいし、あるいは請求項2に記載の発明のように電磁弁によって構成することとしてもよく、また、これらとはさらに別の構成としてもよい。いずれにしても、パイロット通路開閉手段は、パイロット通路の開度を、整圧装置によって二次圧力を設定圧に調整する際に要求される開度(稼働時の開度)にしたり、整圧装置を停止させるためにパイロット通路を遮断したりすることができればよい。
請求項1に記載の発明において、起動操作信号出力手段は、メインガバナの稼働が停止しているときに、メインガバナすなわち整圧装置を稼働するための信号(起動操作信号)を出力するものである。起動操作信号出力手段は、例えば、スイッチ等が人為的に操作されたときに信号を出力するものや、タイマが所定の時間を計時したときに信号を出力するものなど、所定の条件が満たされることによって信号を出力するものを広く含むものである。
【0012】
請求項1に記載の発明において、制御手段は、起動操作信号の出力を契機として、パイロット通路開閉手段を制御してパイロット通路の開度を可変させるものである。この制御手段は、起動操作信号が出力されてから所定時間経過したときに、パイロット通路の開度が、メインガバナの稼働時に必要となる予め設定された開度すなわち本発明でいう稼働時の開度となるように、パイロット通路開閉手段を制御する。このとき、制御手段は、所定時間が経過したところでパイロット通路の開度が稼働時の開度になるようにし、所定時間が経過するまでは、パイロット通路の開度が、稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に保持されるようにパイロット通路開閉手段を制御する。
ここでいう緩衝開度というのは、予め設定された一の開度に特定されるものであってもよいし、稼働時の開度よりも小さい範囲で幅を有するものであってもよい。具体的には、緩衝開度を稼働時の開度の半分として特定し、パイロット通路の開度を所定時間にわたって緩衝開度に一定に保持した後に、所定時間が経過したところでパイロット通路の開度を稼働時の開度にするようにしてもよい。一方で、パイロット通路の開度を所定時間かけて徐々に稼働時の開度に近づけるようにしてもよく、この場合には、緩衝開度が一定の幅を有するものとなる。
【0014】
請求項1に記載の発明において、停止操作信号出力手段は、メインガバナが稼働しているときに、メインガバナすなわち整圧装置の稼働を停止させるための信号(停止操作信号)を出力するものである。停止操作信号出力手段は、起動操作信号出力手段と同様に、例えば、スイッチ等が人為的に操作されたときに信号を出力するものや、タイマが所定の時間を計時したときに信号を出力するもの、さらには感震センサや温度センサ、圧力センサなどの異常を検知する異常検知手段など、所定の条件が満たされることによって信号を出力するものを広く含むものである。したがって、常に「遮断時間<連通時間」となるように制御手段が制御してもよいし、通常は遮断時間と連通時間とが等しく制御されるが、所定の信号が出力された場合に限って、「遮断時間<連通時間」となるように制御手段が制御するものであってもよい。
請求項1に記載の発明によれば、メインガバナ(整圧装置)を稼働状態から停止状態にするまでに要する時間を、メインガバナ(整圧装置)を停止状態から稼働状態にするまでに要する時間に比べて短時間にすることができる
【0016】
請求項1に記載の発明を前提として、請求項2に記載の発明は、前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、前記パイロット通路は、前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連涌する第1パイロット通路と、前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、前記制御手段は、前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御することを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明において、各パイロット通路は、第2電磁弁を開弁したときに緩衝開度に制御され、第1電磁弁を開弁したときに稼働時の開度に制御されるものであれば、個々のパイロット通路の管の径は特に限定されない。例えば、全てのパイロット通路の開口断面を同じにして同一の開度としてもよいし、パイロット通路ごとに異なる開度としてもよい。
また、第1電磁弁が設けられたパイロット通路と、第2電磁弁が設けられたパイロット通路とが少なくとも1つずつあればよく、第1電磁弁が設けられたパイロット通路や第2電磁弁が設けられたパイロット通路がそれぞれ複数設けられていてもよい。
また、請求項2に記載の発明においては、第1電磁弁を開弁した後に第2電磁弁を開弁したままでもよく、この場合には、全てのパイロット通路の開度の合計が稼働時の開度となる。一方で、請求項6に記載の発明のように、第1電磁弁を開弁した後に、第2電磁弁を閉弁させることとしてもよい。この場合には、第1電磁弁が設けられたパイロット通路によって稼働時の開度が特定され、第2電磁弁が設けられたパイロット通路によって緩衝開度が特定されることとなる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明において、第2電磁弁を複数設けることとした場合には、第2電磁弁を一斉に開弁することとしてもよいし、第2電磁弁を所定の間隔で順次開弁していくようにしても構わない。
【0019】
請求項2に記載の発明を前提として、請求項3に記載の発明は、前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成されることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明を前提として、請求項4に記載の発明は、前記第2パイロット通路には、前記第1パイロット通路よりも流量を制限する絞りが設けられたことを特徴とする。
【0021】(削除)
【0022】
請求項2?4のいずれかに記載の発明を前提として、請求項6に記載の発明は、前記制御手段が、前記第1電磁弁を開弁するとともに前記第2電磁弁を閉弁することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、パイロット通路開閉手段を制御するだけで容易にメインガバナすなわち整圧装置の起動および稼働停止を行うことができるので、整圧装置の停止機能を、小型化や低コスト化さらには省電力化を実現しつつ備えることができる。しかも、整圧装置を停止状態から起動する際には、パイロット通路の開度が稼働時の開度になる前に緩衝開度に保たれるので、メインガバナの急激な開閉動作を抑制することができる。このように、メインガバナの急激な開閉動作が抑制されれば、二次圧力の急激な変化によって生じるメインガバナの不安定挙動が抑制される。したがって、需要家の使用環境に悪影響を与えたり、不安定な挙動によって不用意に安全装置が作動してしまい、意図せずにガスの供給が遮断されてしまったりすることなく、速やかに二次圧力を設定圧に調整することが可能となる。
【0024】
特に請求項2に記載の発明によれば、メインガバナを起動する場合に比べて短時間でメインガバナの稼働を停止させることができるので、災害が発生した場合などの緊急時に即座にガスの供給を停止させることができる。
【0025】
特に請求項2?6記載の発明によれば、パイロット通路の開度を電磁弁によって可変させることとしたので、装置を一層小型化および低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の整圧装置の構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態の制御装置の処理機構を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の整圧装置を起動または停止する処理を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態の整圧装置の構成を示す模式図である。
【図5】第3実施形態の整圧装置の構成を簡略して示す回路図である。
【図6】第3実施形態の制御装置の処理機構を示すブロック図である。
【図7】第3実施形態の整圧装置を起動または停止する処理を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態のさらなる変形例を示す図である。
【図9】第4実施形態の整圧装置の構成を簡略して示す回路図である。
【図10】各パイロット通路の開閉状態を示す図である。
【図11】第4実施形態の制御装置の処理機構を示すブロック図である。
【図12】第4実施形態の整圧装置を起動または停止する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の整圧装置をガス用の配管に適用した第1実施形態について図1?図3を用いて説明する。
図1は、上流側配管1から下流側配管2へ流れるガスGの圧力を調整する整圧装置10の概略構成を模式的に示した図である。この整圧装置10は、上流側配管1と下流側配管2との間に接続されたメインガバナ11と、調整管3(第1調整管3aおよび第2調整管3b)を介して互いに連結された中圧補助ガバナ12、低圧補助ガバナ13およびオキジャリボール14と、を備えている。
なお、中圧補助ガバナ12は、一次圧調整管4を介して上流側配管1に接続され、低圧補助ガバナ13は、二次圧調整管5を介して下流側配管2に接続されている。
【0028】
メインガバナ11は、上流側配管1と下流側配管2とを連通したり、あるいはその連通を遮断したりするメインバルブ11Vを備えている。このメインバルブ11Vは、開閉動作によって上流側配管1から下流側配管2へ流れるガスGの流量を調整することにより、そのガスGの圧力を調整するものである。
中圧補助ガバナ12は、圧力調整用の設定スプリング12aおよびトックルバルブ12bを備えており、後述するニードルバルブ22よりも上流側の第1調整管3aを流れるガスGの中間圧力PMを所定の圧力に維持する。
低圧補助ガバナ13は、圧力調整用の設定ウエイト13aおよびトックルバルブ13bを備えており、下流側配管2の二次圧力P2が低下した際に、ガスGを、第2調整管3bを介して下流側配管2に供給するものである。なお、低圧補助ガバナ13の供給量に応じて、第2調整管3bの圧力は変動する。
オキジャリボール14は、上記した第2調整管3bの圧力変化に応じて作動するダイヤフラム14aを備えており、図示のように吊棒15および揺動部材16を介してメインガバナ11に連結されている。
【0029】
具体的には、吊棒15は、その一端がダイヤフラム14aに連結され、ダイヤフラム14aに連動して軸方向に進退するように設けられている。また、揺動部材16は、その一端が支持軸17aを介してメインガバナ11に固定され、他端が連結部17bを介して上記の吊棒15に連結されており、さらに連結部17cを介してメインバルブ11Vに連結されている。
そして、オキジャリボール14のダイヤフラム14aが第2調整管3bの圧力変動により作動すると、当該ダイヤフラム14aに連動して吊棒15が軸方向に進退する。吊棒15が軸方向に進退すると、この吊棒15の動作に連動して揺動部材16が支持軸17aを支点として揺動するとともに、この揺動部材16の揺動によってメインバルブ11Vが開閉動作することとなる。
なお、吊棒15および揺動部材16には、主ウエイト18および補助ウエイト19がそれぞれ設けられており、吊棒15の進退や揺動部材16の揺動動作が安定するようにしている。
【0030】
上記の整圧装置10によれば、下流側配管2から供給されるガスGが消費されていない場合には、中圧補助ガバナ12および低圧補助ガバナ13の全てが停止して、図1に示すようにメインガバナ11のメインバルブ11Vが閉じる。したがって、上流側配管1と下流側配管2との連通が遮断され、上流側配管1から下流側配管2へのガスGの供給が停止されることとなる。
一方、ガスGが消費されて二次圧力P2が低下すると、中圧補助ガバナ12および低圧補助ガバナ13が稼働するとともに、二次圧調整管5を介して調整管3から下流側配管2へとガスGが流通してオキジャリボール14内の圧力が低下する。オキジャリボール14内の圧力が低下すると、ダイヤフラム14aが作動して吊棒15が図中下方に移動するとともに、この吊棒15の移動にともなって揺動部材16が下方に押し下げられ、この揺動部材16の揺動によってメインバルブ11Vが開かれる。このようにしてメインバルブ11Vが開かれると、上流側配管1から下流側配管2へガスGが供給され、下流側配管2内の二次圧力P2が調整されることとなる。
【0031】
なお、図中符号20は、吊棒15の移動量を検出することによりメインバルブ11Vの開度を計測する開度計測装置である。また、図中符号21は、一次圧調整管4に設けられた中圧補助ガバナ取り出しコック、符号22は、上記したように、中圧補助ガバナ12近傍の調整管3に設けられ、中圧補助ガバナ12により圧力調整されたガスGの流量を絞るニードルバルブを示している。
また、符号24は、上流側配管1内のガスGの一次圧力P1を検出する一次圧力計、符号25は、下流側配管2内のガスGの二次圧力P2を検出する二次圧力計を示している。
【0032】
そして、第1実施形態においては、電動モータMを駆動源とするとともに、当該電動モータMの駆動によって二次圧調整管5の開度を無段階で変位可能な電動弁からなる開閉手段30が設けられている。この開閉手段30は、整圧装置10を停止状態から起動したり、あるいは稼働状態から停止させたりするためのものである。
具体的には、整圧装置10が稼働しているときに、整圧装置10の稼働を停止して下流側配管2へのガスGの供給を停止する場合には、開閉手段30を閉弁させて二次圧調整管5を遮断する。二次圧調整管5が遮断されると、調整管3から二次圧調整管5および下流側配管2へのガスGの流通が停止する結果、調整管3内の圧力が高まるとともに、メインバルブ11Vを閉動作させるようにオキジャリボール14が作動する。これにより、整圧装置10は、メインバルブ11Vによって上流側配管1と下流側配管2との連通を遮断した状態で稼働を停止することとなる。
【0033】
一方、整圧装置10の稼働停止状態から、整圧装置10を起動して下流側配管2へのガスGの供給を開始する場合には、開閉手段30を開弁させればよい。開閉手段30が開弁すれば、以後、上記したとおりに整圧装置30が二次圧力P2を設定圧に調整するように稼働することとなる。
このように、整圧装置10を起動したりあるいは稼働を停止したりするにあたって、開閉手段30を開閉制御するのが制御装置101であるが、この制御装置101の構成および処理について以下に説明する。
【0034】
図2は、制御装置101の処理機構を示すブロック図である。この図に示すように、制御装置101は、プログラムを読み出して各種の演算処理を実行するCPU101a、各種のプログラムが記憶されたROM101b、および演算処理を実行する際にデータの処理領域として機能するRAM101cを備えている。
この制御装置101の入力側には、開度計測装置20、一次圧力計24および二次圧力計25が接続されている。制御装置101は、一次圧力計24から出力される圧力信号に基づいてガスGの一次圧力P1を検出し、二次圧力計25から出力される圧力信号に基づいて二次圧力P2を検出する。
【0035】
また、制御装置101の入力側には、通信ケーブルを介して遠隔制御装置102が接続されている。この遠隔制御装置102は、例えばガスGの供給状況などを監視する監視センターに設けられるものであり、整圧装置10の状態を監視したり、遠隔操作によって制御したりするものである。この遠隔制御装置102には、人為的に操作が可能な起動操作スイッチ40および停止操作スイッチ41が設けられており、これらスイッチ40,41が操作されると、制御装置101に対して操作信号が出力される。
一方、制御装置101の出力側には、開閉手段30の駆動源である電動モータMが接続されている。
【0036】
以下に、制御装置101によって実行される処理のうち、起動操作スイッチ40から起動操作信号が出力されたときの処理、および停止操作スイッチ41から停止操作信号が出力されたときの処理について図3を用いて説明する。
【0037】
(ステップS1)
起動操作スイッチ40または停止操作スイッチ41から出力される起動操作信号または停止操作信号が制御装置101に入力すると、CPU101aは、入力した操作信号が停止操作信号であるかを判断する。その結果、入力した操作信号が停止操作信号であると判断した場合にはステップS2に処理を移し、入力した操作信号が停止操作信号ではなく起動操作信号であると判断した場合にはステップS5に処理を移す。
【0038】
(ステップS2)
上記ステップS1において、停止操作信号が入力したと判断した場合には、CPU101aは、電動モータMを正転方向に回転させるように通電し、開閉手段30を閉弁方向に動作させる。
【0039】
(ステップS3)
次に、CPU101aは、開閉手段30が二次圧調整管5を完全に遮断する閉弁位置に移動したかを判断する。なお、開閉手段30には、不図示の位置検出センサが設けられている。この位置検出センサは、開閉手段30が、二次圧調整管5を完全に遮断する位置(閉弁位置)に移動したとき、および、二次圧調整管5が整圧装置10の稼働時の開度になる位置(開弁位置)に移動したときに、それぞれ位置検出信号を出力するものである。
CPU101aは、位置検出センサによって開閉手段30の閉弁位置への移動が検出されるまで、当該ステップS3の判定処理を繰り返して待機し、開閉手段30の閉弁位置への移動が検出された場合にはステップS4に処理を移す。
【0040】
(ステップS4)
次に、CPU101aは、電動モータMの通電を停止して当該処理を終了する。これにより、開閉手段30によって二次圧調整管5が遮断され、整圧装置10の稼働が停止することとなる。
【0041】
(ステップS5)
また、上記ステップS1において、入力した操作信号が起動操作信号であると判断した場合には、CPU101aは、開閉手段30の開弁速度を規制する処理を行う。ここで、例えば、開閉手段30の開弁速度は、閉弁速度の10分の1程度に規制される。具体的には、開閉手段30を閉弁して整圧装置10の稼働を停止する場合に、開閉手段30が開弁位置から閉弁位置まで1秒で到達するとする。このとき、開閉手段30を開弁して整圧装置10を起動する場合には、閉弁位置から開弁位置に到達するまで10秒を要することとなる。
【0042】
なお、開閉手段30の開弁速度を規制する方法はさまざまであるが、一例として、電動モータMを逆転方向に回転させる場合に、回路上の抵抗値を大きくして、電動モータMを低速回転させることが考えられる。この場合の開弁速度規制処理は、CPU101aが抵抗値の大きい回路にスイッチングする処理となる。
また、他の一例としては、電動モータMが正転方向に回転する場合には、所定の減速比の減速機によって出力を減速し、電動モータMが逆転方向に回転する場合には、正転方向に回転するときの減速機よりも減速比の大きい減速機によって出力を減速することが考えられる。
【0043】
(ステップS6)
次に、CPU101aは、電動モータMを逆転方向に回転させるように通電し、開閉手段30を開弁方向に動作させる。
【0044】
(ステップS7)
次に、CPU101aは、開閉手段30が開弁位置に到達したか、言い換えれば、二次圧調整管5が整圧装置10の稼働時の開度になったかを判断する。なお、開閉手段30が開弁位置に到達したか否かは、位置検出センサから位置検出信号が出力されたか否かによって判断される。
CPU101aは、位置検出センサによって開閉手段30の開弁位置への移動が検出されるまで、当該ステップS7の判定処理を繰り返して待機し、開閉手段30の開弁位置への移動が検出された場合にはステップS4に処理を移して、電動モータMの通電を停止する。これにより、二次圧調整管5が整圧装置10の稼働時の開度となり、整圧装置10が稼働して二次圧力P2が設定圧に調整されることとなる。
なお、開閉手段30が開弁位置または閉弁位置まで移動したか否かは、位置検出センサによる検出に限られるものではない。例えば、開弁動作または閉弁動作が開始してから、開閉手段30が完全に開弁または閉弁するまでに要する時間を予め記憶しておき、この時間が経過したか否かをタイマで計測することも可能である。
【0045】
以上のように、第1実施形態によれば、整圧装置10の稼働を停止する場合には、電動モータMによって開閉手段30が即座に閉弁するので、速やかに下流側配管2へのガスの供給を停止することができる。
また、整圧装置10を停止状態から稼働する場合には、電動モータMの回転速度が規制され、二次圧調整管5が徐々に開弁していく。これにより、二次圧調整管5は、整圧装置10の稼働時の開度に到達するまでの間、所定時間にわたって、当該稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御される。このように、二次圧調整管5が、所定時間にわたって緩衝開度に制御された後に、稼働時の開度に到達するので、メインバルブ11Vの急激な開閉動作が抑制されて、メインガバナ11すなわち整圧装置10の安定挙動を実現することができる。
【0046】
なお、第1実施形態においては、二次圧力P2の変化に起因する調整管3内の圧力変化をオキジャリボール14に作用させるとともに、オキジャリボール14を介してメインガバナ11を開閉動作させることとした。つまり、第1実施形態においては、メインガバナ11を開閉動作させる構成、すなわち本発明のガバナ開閉手段をオキジャリボール14等によって構成したが、ガバナ開閉手段は上記の構成に限らず、例えば、図4に示す第2実施形態のように構成してもよい。
以下に第2実施形態の整圧装置50について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、上記第1実施形態と同一の符号を付するとともに、ここでは第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0047】
この第2実施形態の整圧装置50は、ゴムスリーブ51aによって二次圧力P2を調整するメインガバナ51を備えている。ゴムスリーブ51aの外側には調整管52が接続されており、調整管52内の圧力がゴムスリーブ51aに作用するようになっている。
また、一次圧調整管4と二次圧調整管5との間には、ベンチュリ・レストリクタ53が設けられており、このベンチュリ・レストリクタ53に上記の調整管52が接続されている。
なお、ベンチュリ・レストリクタ53よりも下流側、すなわち二次圧調整管5には、開閉手段30および二次圧力P2の設定圧を決定するパイロットガバナ54が設けられている。詳細な説明は省略するが、パイロットガバナ54には二次圧力P2の設定圧を決定する設定スプリングが設けられており、この設定スプリングと二次圧力P2とをバランスさせるようにしている。
【0048】
この整圧装置50によれば、二次圧力P2が設定圧に維持されている場合には、パイロットガバナ54に設けられた設定スプリングのバネ力と二次圧力P2とがバランスして、一次圧調整管4から二次圧調整管5に所定量のガスGが流れる。これのガスGの流れによって調整管52内の制御圧力すなわちゴムスリーブ51aの外側に負荷される制御圧力が、ゴムスリーブ51aの内側の圧力とバランスする。これにより、ゴムスリーブ51aと不図示の弁体との間を流れるガスGすなわち二次圧力P2が設定圧に調整される。
また、二次圧力P2が設定圧以上に上昇すると、パイロットガバナ54に作用する二次圧力P2が設定スプリングのバネ力に打ち勝って閉弁動作し、一次圧調整管4から二次圧調整管5へのガスGの流量を制限する。これにより、ゴムスリーブ51aに負荷される制御圧力が上昇するとともに、ゴムスリーブ51aが上記弁体に密着して上流側配管1から下流側配管2へのガスGの供給を停止する。
一方、二次圧力P2が設定圧よりも低くなると、パイロットガバナ54が開弁動作し、一次圧調整管4から二次圧調整管5へのガスGの流量が増加する。これにより、ゴムスリーブ51aに負荷される制御圧力が降下するとともに、ゴムスリーブ51aが弁体から離れる方向に伸長して上流側配管1から下流側配管2へのガスGの流量が増大する。
【0049】
以上の構成からなる整圧装置50においても、上記第1実施形態の整圧装置10と同様に、二次圧力P2の変化に応じてメインガバナ51が開閉動作し、二次圧力P2を設定圧に調整することができる。そして、この整圧装置50において、上記第1実施形態と同様の開閉手段30および制御装置101を設けることにより、第1実施形態と同様の作用効果を実現可能である。
なお、上記第2実施形態においては、ベンチュリ・レストリクタ53を設けることとしたが、ベンチュリ・レストリクタ53の代わりに固定絞りを設けることも可能である。
【0050】
次に、図5?図7を用いて本発明の整圧装置の第3実施形態について説明する。
なお、この第3実施形態の整圧装置60は、メインガバナ51およびベンチュリ・レストリクタ53を備える点において上記第2実施形態と共通し、開閉手段30と二次圧調整管5の構成のみを上記第2実施形態と異にする。したがって、ここでは上記第2実施形態と異なる構成について説明することとする。
整圧装置60は、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とを連通する第1パイロット通路61と、この第1パイロット通路61から分岐する第2パイロット通路62とによって二次圧調整管5を構成している。
第1パイロット通路61および第2パイロット通路62には、それぞれ第1電磁弁63および第2電磁弁64が並行して設けられており、これら両電磁弁63,64によって開閉手段30が構成されている。これら両電磁弁63,64は、通常、第1パイロット通路61および第2パイロット通路62を連通状態に維持しており、通電されることによって、第1パイロット通路61および第2パイロット通路62を遮断状態に切り換えるものである。
なお、第2パイロット通路62には、第1パイロット通路61よりも流量を制限するための絞り65が設けられている。
【0051】
上記の第1電磁弁63および第2電磁弁64は、図6に示すように、制御装置101の出力側に接続されている。そして、制御装置101は、起動操作スイッチ40および停止操作スイッチ41から信号が出力されると、第1電磁弁63および第2電磁弁64を通電制御して、整圧装置60を起動したりあるいは稼働を停止させたりする。この制御装置101の処理について図7を用いて説明する。
【0052】
(ステップS11)
起動操作スイッチ40または停止操作スイッチ41から出力される起動操作信号または停止操作信号が制御装置101に入力すると、CPU101aは、入力した操作信号が停止操作信号であるかを判断する。その結果、入力した操作信号が停止操作信号であると判断した場合にはステップS12に処理を移し、入力した操作信号が停止操作信号ではなく起動操作信号であると判断した場合にはステップS14に処理を移す。
【0053】
(ステップS12)
上記ステップS11において、停止操作信号が入力したと判断した場合には、CPU101aは、第1電磁弁63を通電して、第1パイロット通路61を遮断状態にする。
【0054】
(ステップS13)
次に、CPU101aは、第2電磁弁64を通電して、第2パイロット通路62を遮断状態にする。
このように、停止操作信号が入力すると、制御装置101によって二次圧調整管5が遮断されるので、ベンチュリ・レストリクタ53によってメインガバナ51が閉じられて整圧装置60の稼働が停止することとなる。
【0055】
(ステップS14)
また、上記ステップS11において、入力した操作信号が起動操作信号であると判断した場合には、CPU101aは、第2電磁弁64の通電を停止して、第2パイロット通路62を連通状態とする。整圧装置60の稼働が停止している状態では、両電磁弁63,64が通電されて閉弁しているが、当該ステップS14の処理によって、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とが第2パイロット通路62を介して連通することとなる。なお、この状態では、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2との開度が、絞り65によって設定される緩衝開度に維持されるため、一次圧調整管4から二次圧調整管5へと流通するガスGの流量が制限されている。
【0056】
(ステップS15)
次に、CPU101aは、第1電磁弁63を開弁するまでの時間をタイマにセットする。
【0057】
(ステップS16)
次に、CPU101aは、上記ステップS15でセットした時間が経過したか否かを判定する。その結果、セットした時間が経過するまで当該ステップS16の判定処理を繰り返して待機するとともに、セットした時間が経過したと判断した場合には、ステップS17に処理を移す。
【0058】
(ステップS17)
上記ステップS16において、セットした時間が経過したと判定した場合には、CPU101aは、第1電磁弁63の通電を停止して第1パイロット通路61を連通状態にする。
【0059】
(ステップS18)
次に、CPU101aは、第2電磁弁64を通電して、再び第2パイロット通路62を遮断する。これにより、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とが第1パイロット通路61のみを介して連通することとなり、第1パイロット通路61によって稼働時の開度が設定されることとなる。
【0060】
以上のように、この第3実施形態によれば、第1電磁弁63および第2電磁弁64を段階的に通電制御するだけで、整圧装置60の起動時に、緩衝開度および稼働時の開度に制御することができるので、上記各実施形態と同様に安定挙動を実現しながらも、装置の低コスト化および小型化をも実現することができる。
なお、この第3実施形態においては、第2電磁弁64を開弁してから所定時間経過後に第1電磁弁63を開弁することとした。しかしながら、例えば、二次圧力を検出するセンサを設けるとともに、二次圧力が所定圧力まで上昇したときに第1電磁弁63を開弁することも可能である。
【0061】
なお、この第3実施形態においては、メインガバナおよびガバナ開閉手段を第2実施形態と同様の構成としたが、これらは第1実施形態と同様の構成であってもよいし、さらには他の構成であっても構わない。
また、さらには、図8に示す変形例のように、複数のパイロット通路は、それぞれベンチュリ・レストリクタ53(ガバナ開閉手段)と下流側配管2とを直接接続するものであってもよい。
【0062】
また、図8に示すように、第2パイロット通路62を複数設ける(図では62a,62bの2つ)とともに、これらの第2パイロット通路62のそれぞれに第2電磁弁64a,64bを設け、整圧装置60の起動時に、各第2電磁弁64a,64bを順次開弁させるようにしてもよい。このようにすれば、整圧装置60の起動時の緩衝開度を徐々に稼働時の開度に近づけることができ、整圧装置60の挙動を一層安定化させることができる。
なお、整圧装置60の稼働時においては、第1パイロット通路61のみを連通させてもよいし、第1パイロット通路61と第2パイロット通路62との双方を連通させることとしてもよい。
【0063】
次に、図9?図12を用いて本発明の整圧装置の第4実施形態について説明する。
なお、この第4実施形態の整圧装置70は、二次圧調整管5の構成および二次圧調整管5に設けられる開閉手段30の構成のみを上記第3実施形態と異にし、その他の構成は上記第3実施形態と同様である。したがって、ここでは上記第3実施形態と異なる構成について説明することとする。
整圧装置70は、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とを第1パイロット通路71によって接続するとともに、この第1パイロット通路71から第2パイロット通路72および第3パイロット通路73を並列的に分岐させている。したがって、この第4実施形態においては、第1パイロット通路71?第3パイロット通路73によって二次圧調整管5が構成されることとなる。
なお、第1パイロット通路71および第3パイロット通路73は開口径が等しく設定されている。
【0064】
第1パイロット通路71には、第1の電磁弁74が設けられている。この第1の電磁弁74は、通常、未通電状態で開弁しており、第1パイロット通路71を連通状態に維持している。一方で、第1の電磁弁74は、通電によって閉弁して第1パイロット通路71の連通を遮断する。ただし、第1の電磁弁74は、ひとたび通電されて閉弁すると、以後は手動によってのみ開弁可能となるように構成されている。
【0065】
また、第2パイロット通路72には、絞り65、第2の電磁弁75および第3の電磁弁76が直列的に接続されている。第2の電磁弁75は、通常、未通電状態で閉弁しており、第2パイロット通路72の連通を遮断している。一方で、第2の電磁弁75は、通電によって開弁することとなるが、ひとたび通電されて開弁すると、以後は手動によってのみ閉弁可能となるように構成されている。
第3の電磁弁76は、通常、未通電状態で開弁している。一方で、第3の電磁弁76は、通電によって閉弁して第2パイロット通路72の連通を遮断するように構成されている。
【0066】
第4の電磁弁77は、通常、未通電状態で閉弁しており、第3パイロット通路73の連通を遮断している。一方で、第4の電磁弁77は、通電によって開弁して第3パイロット通路77を連通させる。ただし、第4の電磁弁77は、ひとたび通電されて開弁すると、以後は手動によってのみ閉弁可能となるように構成されている。
【0067】
図10を用いて、各電磁弁74?77の開閉状態と、整圧装置70の稼働状態との関係について説明する。
図10(a)は、整圧装置70の通常の稼働時における各電磁弁74?77の開閉状態を示している。図10(a)からも明らかなように、整圧装置70は、通常、各電磁弁74?77の全てが未通電状態となっており、第1の電磁弁74と第3の電磁弁76とが開弁するとともに、第2の電磁弁75と第4の電磁弁77とが閉弁している。したがって、整圧装置70の通常の稼働時には、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とが、第1パイロット通路71によって連通することとなる。
【0068】
この状態から、整圧装置70の稼働を停止させる場合には、第1の電磁弁74のみを通電する。すると、図10(b)に示すように、第1の電磁弁74が閉弁して第1パイロット通路71の連通が遮断されることによって、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2との連通が遮断されることとなる。
そして、上記の稼働停止状態から整圧装置70を再稼働する場合には、まず、第2の電磁弁75を通電する。これにより、図10(c)に示すように、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2との開度が、絞り65によって設定される緩衝開度に維持されることとなる。
【0069】
次に、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2との開度が緩衝開度に維持された後、所定時間が経過したところで、図10(d)に示すように、第4の電磁弁77を通電して開弁した後に,第3の電磁弁76を通電して閉弁する。これにより、第3パイロット通路73が連通状態となるとともに、第2パイロット通路72の連通が遮断され、図10(a)と同様に整圧装置70が再稼働することとなる。
なお、各電磁弁74?77は、図11に示すように、制御装置101に接続されており、制御装置101によって通電または未通電状態に切り換え制御されることとなる。
【0070】
そして、制御装置101は、起動操作スイッチ40および停止操作スイッチ41から信号が出力されると、上記のように各電磁弁74?77を通電制御して、整圧装置70を起動したりあるいは稼働を停止させたりする。この制御装置101の処理について図12を用いて説明する。
【0071】
(ステップS21)
起動操作スイッチ40または停止操作スイッチ41から出力される起動操作信号または停止操作信号が制御装置101に入力すると、CPU101aは、入力した操作信号が停止操作信号であるかを判断する。その結果、入力した操作信号が停止操作信号であると判断した場合にはステップS22に処理を移し、入力した操作信号が停止操作信号ではなく起動操作信号であると判断した場合にはステップS23に処理を移す。
【0072】
(ステップS22)
上記ステップS21において、停止操作信号が入力したと判断した場合には、CPU101aは、第1の電磁弁74を通電して、第1パイロット通路71の連通を遮断する。これにより、整圧装置70は、図10(a)に示す状態に維持されて、稼働が停止することとなる。
【0073】
(ステップS23)
また、上記ステップS21において、入力した操作信号が起動操作信号であると判断した場合には、CPU101aは、第2の電磁弁75を通電して、第2パイロット通路72を連通状態とする。なお、この状態では、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2との開度が、絞り65によって設定される緩衝開度に維持されるため、一次圧調整管4から二次圧調整管5へと流通するガスGの流量が制限されている。
【0074】
(ステップS24)
次に、CPU101aは、第4の電磁弁77を通電するまでの時間をタイマにセットする。
【0075】
(ステップS25)
次に、CPU101aは、上記ステップS24でセットした時間が経過したか否かを判定する。その結果、セットした時間が経過するまで当該ステップS25の判定処理を繰り返して待機するとともに、セットした時間が経過したと判断した場合には、ステップS26に処理を移す。
【0076】
(ステップS26)
上記ステップS25において、セットした時間が経過したと判定した場合には、CPU101aは、第4の電磁弁77を通電して開弁させ、第3パイロット通路73を連通させる。
【0077】
(ステップS27)
次に、CPU101aは、第3の電磁弁76を通電して閉弁し、第2パイロット通路72の連通を遮断する。これにより、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とが第3パイロット通路73のみを介して連通することとなり、稼働停止前と同じ開度に設定されることとなる。
【0078】
この第4実施形態によっても、上記第3実施形態と同様に、安定挙動を実現しながらも、装置の低コスト化および小型化をも実現することができる。
しかも、停電やバッテリ切れが生じた場合にも稼働状況が維持されるので、停電などによって不意にガスGの供給ができなくなってしまったり、あるいはガスGの供給が開始されてしまったりすることがない。
なお、この第4実施形態においては、第2の電磁弁75を開弁してから所定時間経過後に第4の電磁弁77を開弁することとしたが、上記と同様に、二次圧力を検出するセンサを設けるとともに、二次圧力が所定圧力まで上昇したときに第4の電磁弁77を開弁することも可能である。
【0079】
以上、上記各実施形態においては、ガス用の配管に本発明の整圧装置を適用する場合について説明したが、本発明が適用可能な配管すなわち流体は必ずしもこれに限られるものではなく、ガス以外の他の流体、例えば水道用の配管等にも適用可能である。
【0080】
なお、上記実施形態における上流側配管1および下流側配管2が本発明の配管に相当する。
また、上記第1実施形態における一次圧調整管4、中圧補助ガバナ12におけるガスGが流通する部分、調整管3、低圧補助ガバナ13におけるガスGが流通する部分および二次圧調整管5、第2実施形態?第4実施形態における一次圧調整管4および二次圧調整管5が本発明のパイロット通路に相当する。
また、上記第1実施形態におけるオキジャリボール14および調整管3(第2調整管3b)とオキジャリボール14とを接続する配管、第2実施形態?第4実施形態におけるベンチュリ・レストリクタ53および調整管52が本発明のガバナ開閉手段に相当する。
また、上記実施形態における開閉手段30、より具体的には第1実施形態の電動弁、第2実施形態および第3実施形態の第1電磁弁63、第2電磁弁64、第4実施形態の第1の電磁弁74?第4の電磁弁77が本発明のパイロット通路開閉手段に相当する。
また、上記実施形態における起動操作スイッチ40が本発明の起動操作信号出力手段に相当する。
また、上記実施形態における停止操作スイッチ41が本発明の停止操作信号出力手段に相当する。
【符号の説明】
【0081】
1 上流側配管
2 下流側配管
3,52 調整管
4 一次圧調整管
5 二次圧調整管
10,50,60 整圧装置
11,51 メインガバナ
14 オキジャリボール
30 開閉手段
40 起動操作スイッチ
41 停止操作スイッチ
53 ベンチュリ・レストリクタ
61 第1パイロット通路
62 第2パイロット通路
63 第1電磁弁
64 第2電磁弁
65 絞り
71 第1パイロット通路
72 第2パイロット通路
73 第3パイロット通路
74 第1の電磁弁
75 第2の電磁弁
76 第3の電磁弁
77 第4の電磁弁
101 制御装置
101a CPU
101b ROM
101c RAM
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する配管に開閉動作可能に接続されたメインガバナと、
前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、
前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段と
を備え、
前記ガバナ開閉手段は、
前記下流側の二次圧力が降下すると前記パイロット通路内の流体の流量増加にともなって前記メインガバナを開動作させ、
前記二次圧力が上昇すると前記パイロット通路内の流体の流量減少にともなって前記メインガバナを閉動作させて、前記二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、
前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、
前記パイロット通路開閉手段によって前記パイロット通路が遮断されて前記メインガバナの稼働が停止しているときに、前記メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段と、
前記メインガバナが稼働しているときに、前記メインガバナの稼働を停止させるための停止操作信号を出力する停止操作信号出力手段と、
前記起動操作信号出力手段によって起動操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を開弁して、前記パイロット通路の開度を前記メインガバナの稼働時の開度に制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、
前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、
所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する
ことを特徴とする整圧装置。
【請求項2】
前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、
前記パイロット通路は、
前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路と、
前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、
前記制御手段は、
前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御する
ことを特徴とする請求項1記載の整圧装置。
【請求項3】
前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の整圧装置。
【請求項4】
前記第2パイロット通路には、前記第1パイロット通路よりも流量を制限する絞りが設けられた
ことを特徴とする請求項3記載の整圧装置。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記制御手段は、
前記第1電磁弁を開弁するとともに前記第2電磁弁を閉弁することを特徴とする請求項2?4のいずれかに記載の整圧装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-08 
出願番号 特願2013-252354(P2013-252354)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G05D)
P 1 651・ 841- YAA (G05D)
P 1 651・ 537- YAA (G05D)
P 1 651・ 55- YAA (G05D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 栗田 雅弘
刈間 宏信
登録日 2015-10-23 
登録番号 特許第5826240号(P5826240)
権利者 東京瓦斯株式会社
発明の名称 整圧装置  
代理人 特許業務法人エビス国際特許事務所  
代理人 植村 貴昭  
代理人 特許業務法人 エビス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 植村 貴昭  

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