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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1333750
審判番号 不服2016-6227  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-26 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2014-238991号「車両用ミラー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月23日出願公開、特開2015-77968号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年11月29日に出願した特願2010-265250号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年11月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年6月30日付け:拒絶理由の通知
平成27年8月18日 :意見書の提出
平成28年1月25日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成28年4月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成29年2月27日付け:拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。 )の通知
平成29年4月26日 :意見書、手続補正書の提出

2.本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年4月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりである。

「車両のミラーの鏡面を露出させた状態で前記ミラーを収容する収容体と、
前記収容体に組付けられると共に、前記被覆部材に露出孔が設けられ、前記ミラーの裏面側において前記収容体を被覆する被覆部材と、
前記露出孔内に挿入されて前記露出孔から露出される露出部が設けられ、前記露出部が前記被覆部材の前記露出孔周縁部分に当接されない状態に前記被覆部材に位置決めされて前記被覆部材の前記露出孔周縁部分の全体と前記露出部との間に隙間が形成される透過部材と、
前記透過部材の内側に配置され、発光した光が前記透過部材を透過する発光手段と、
を備えた車両用ミラー装置。」

なお、本願発明における「前記被覆部材に露出孔が設けられ、」との記載は、この記載より前に「被覆部材」が記載されていないものの、本願明細書および図面の記載から、被覆部材に露出孔が設けられていることを特定するものと解されるから、以下、そのような意味に解釈して検討する。

3.刊行物に記載の事項および発明
(1)当審拒絶理由において引用された特開2002-96684号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、記載事項のうち「サイドターンランプ11」は「サイドターンランプ12」の誤記である。また、下線は当審で付与した。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、サイドターンランプを一体的に備えた車両用ドアミラーに関するものである。」
(1b)「【0018】ドアミラー1は、後側が開口した湾曲容器形状のミラーハウジング2を備えている。このミラーハウジング2の車幅方向外側端3は、後側へ回り込んだ状態になっており、このミラーハウジング2の前面から車幅方向外側端3にかけて、車幅方向外側が開放した横長の切欠部4が形成されている。
【0019】このミラーハウジング2の内面における切欠部4の上方部位には、後向きに突出した第1係合部5(図8参照)が形成されている。また、切欠部4の車幅方向内側端6付近には、車幅方向外側向きの第2係合部7(図9参照)が形成されている。更に、切欠部の車幅方向外側端3付近には、車幅方向内側向きの第3係合部8(図10参照)が形成されている。そして、ミラーハウジング2の内面における切欠部4の上方部には、更に下向きの第4係合部4が形成され、切欠部4の上方位置及び下方部位には、それぞれ2つのボス部10、11が形成されている。
【0020】ミラーハウジング2の切欠部4には、切欠部4に相応する横長形状のサイドターンランプ11が後側から取付けられている。サイドターンランプ11は、図7に示すように、ベース13の表面側をレンズ14にて覆った構造で、内部に光源(LED)15が設けられている。ベース13の周囲には、レンズ14よりも外側に張り出した状態で、パッキンを介して、ミラーハウジング2の内面に密接した状態のフランジ16が形成されている。
【0021】また、サイドターンランプ11のベース13における第1係合部5に対応する部位には、該第1係合部5を挿入可能な孔17を有する突片18が形成されている。また、ベース13の車幅方向内側端における第2係合部7に対応する位置に、突片19が形成されている。ベース13には2つのボス部10、11に対する対応部20、21が形成され、切欠部4の下方部位のボス部10に対する対応部20には、該ボス部10に対して外接する筒状のフランジ22が形成されている。」
(1c)「【0022】次に、サイドターンランプ11の取付け手順を説明する。サイドターンランプ11の車幅方向内側端の突片19を、ミラーハウジング2に形成した第2係合部7と、内面との間に挿入し、その突片19を第2係合部7と内面との間で挟持した状態にする。そして、この突片19を支点にして、サイドターンランプ11の車幅方向外側部分を切欠部4に対して押しつける。すると、サイドターンランプ11の上部に形成された孔17が第1係合部5に通され、サイドターンランプ11の車幅方向外側端が第3係合部8に係合すると共に(図10)、サイドターンランプ11の上端部が第4係合部9に係合し(図11)、更に、サイドターンランプ11の対応部20に形成した筒状のフランジ22が対応するボス部10に被せられる。
【0023】第1係合部5にサイドターンランプ11の孔17を通すことにより、サイドターンランプ11が第1係合部5に吊り下げされた状態となる。そして、第2係合部7及び第3係合部8により、サイドターンランプ11の車幅方向両端部が後側から押された状態になるため、最低限この第1係合部5、第2係合部7、第3係合部8の作用により、サイドターンランプ11は切欠部4に対して仮止めされた状態となる。
【0024】このように仮止めされたサイドターンランプ11の対応部20、21にネジ23を通してボス部10、11に螺合することにより、サイドターンランプ11は完全に切欠部4に対して取付けられた状態になる。サイドターンランプ11が切欠部4に対して予め仮止めされているため、ネジ23によるサイドターンランプ11の取付け作業が容易である。また、ネジ23による取付け作業自体も、特に下側の対応部20に関しては、フランジ22をボス部10に外接させることにより、対応部20とボス部10とが正確に位置合わせされた状態になっているため容易である。上側の対応部21には筒状のフランジ22が形成されていなが、下側の対応部20が正確に位置決めされるため、それに応じて、上側の対応部21のボス部11に対する位置合わせもある程度正確になり、作業の容易性は阻害しない。更に、切欠部4の上下に、違いに前後方向以外の方向への変位が規制された第1係合部5と孔17との係合、及び、対応部20とボス部10との取付けが存在することにより、サイドターンランプ11を介して切欠部4の上下が連結された状態になり、切欠部4の開き方向への変形が防止される。」
(1d)「【0027】切欠部4にサイドターンランプ11が取付けられた後に、ミラーハウジング2の内部には、各種の機構が後側から順に取付けられる。すなわち、サイドターンランプ11が取付けられた後に、ドアミラー1の下方の足下を照らすフットランプ24(図3)が組付けられたユニットブラケット25が取付けられ(図4)、更にユニットブラケット25に対してアクチュエータ26が取付けられる。次に、ユニットブラケット25のアクチュエータ26以外の部分を覆い隠すリム27を取付け、更にその後側からアクチュエータ26に対してミラーホルダ28を取付ける。ミラーホルダ28には、ミラーブラケット29とミラー30が取付けられ、アクチュエータ26の駆動により、ミラー30の角度を任意に変化させることができる。このように、サイドターンランプ11だけでなく、それ以外の部品も全てミラーハウジング2に対して後側から順に取付けることができるため、ドアミラー1の組立作業が容易である。」

(2)上記記載および図面から引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 引用文献1に記載された技術は、車両用ドアミラーに関するものである(1a)。
イ 上記(1a)、(1d)および図1、4-6の記載内容からみて、ユニットブラケット25およびリム27が車両のミラー30の鏡面を露出させた状態でミラー30を収容している。
ウ 上記(1d)および図4-6の記載内容からみて、ミラーハウジング2はユニットブラケット25およびリム27に組付けられている。
エ 上記(1d)および図4-6の記載内容からみて、ミラーハウジング2はミラー30の裏面側においてユニットブラケット25およびリム27を被覆している。
オ 上記(1b)および図2、4の記載内容から見て、ミラーハウジング2には、車幅方向外側が開放した横長の切欠部4が形成されている。
カ 上記(1b)および図2、7-11の記載内容からみて、ベース13の表面側をレンズ14で覆った構造で、内部に光源(LED)15が設けられたサイドターンランプ12が、ミラーハウジング2の切欠部4に取付けられており、また、サイドターンランプ12のレンズ14は切欠部4内に挿入されて切欠部4から露出している部分を具備する。

(3)以上のア-カをも踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両のミラー30の鏡面を露出させた状態で前記ミラー30を収容するユニットブラケット25およびリム27と、
前記ユニットブラケット25およびリム27に組付けられると共に、車幅方向外側が開放した横長の切欠部4が形成され、ミラー30の裏面側においてユニットブラケット25およびリム27を被覆しているミラーハウジング2と、
ベース13の表面側をレンズ14で覆った構造で、内部に光源(LED)15が設けられたサイドターンランプ12が、ミラーハウジング2の切欠部4に取付けられており、サイドターンランプ12のレンズ14は切欠部4内に挿入されて切欠部4から露出している部分を具備する、
車両用ドアミラー。」

4.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「ミラー30」および「車両用ドアミラー」は、それぞれ、本願発明の「ミラー」および「車両用ミラー装置」に相当する。また、引用発明における「ユニットブラケット25およびリム27」は、「ミラー30を収容するもの」であるから、本願発明の「収容体」に相当する。
したがって、引用発明の「車両のミラー30の鏡面を露出させた状態で前記ミラー30を収容するユニットブラケット25およびリム27」は、本願発明の「車両のミラーの鏡面を露出させた状態で前記ミラーを収容する収容体」に相当する。
イ 上記アも踏まえると、引用発明の「ミラーハウジング2」は、本願発明の「被覆部材」に相当する。また、引用発明の「車幅方向外側が開放した横長の切欠部4」は、機能的にみて本願発明の「露出孔」に相当する。
したがって、引用発明の「前記ユニットブラケット25およびリム27に組付けられると共に、車幅方向外側が開放した横長の切欠部4が形成され、ミラー30の裏面側においてユニットブラケット25およびリム27を被覆しているミラーハウジング2」は、本願発明の「前記収容体に組付けられると共に、被覆部材に露出孔が設けられ、前記ミラーの裏面側において前記収容体を被覆する被覆部材」に相当する。
ウ 引用発明の「サイドターンランプ12」は、「ベース13の表面側をレンズ14で覆った構造で、内部に光源(LED)15が設けられ」ているものであるから、引用発明の「レンズ14」は、技術的にみて、本願発明の「透過部材」に相当する。
また、引用発明の「サイドターンランプ12」は、「ミラーハウジング2の切欠部4に取付けられて」いるものであるところ、サイドターンランプ12の対応部20、21にネジ23を通してボス部10、11に螺合することにより、完全に取付けられた状態となっているから(上記引用文献1の摘示事項(1c)段落【0024】、参照。)、サイドターンランプ12はミラーハウジング2に対して不動に固定されている、すなわち、サイドターンランプ12は、ミラーハウジング2に位置決めされているといえる。したがって、上記サイドターンランプ12の構造を踏まえれば、引用発明の「レンズ14」は、引用発明の「ミラーハウジング2」にベース13を介して位置決めされているといえる。さらに、引用発明の「レンズ14」は、その「レンズ14」を「切欠部4内に挿入されて切欠部4から露出している部分を具備する」ものである。
よって、引用発明の「ベース13の表面側をレンズ14で覆った構造で、内部に光源(LED)15が設けられたサイドターンランプ12が、ミラーハウジング2の切欠部4に取付けられており、サイドターンランプ12のレンズ14は切欠部4内に挿入されて切欠部4から露出している部分を具備する」ことは、本願発明の「前記露出孔内に挿入されて前記露出孔から露出される露出部が設けられ、前記露出部が前記被覆部材の前記露出孔周縁部分に当接されない状態に前記被覆部材に位置決めされて前記被覆部材の前記露出孔周縁部分の全体と前記露出部との間に隙間が形成される透過部材」「を備える」こととの対比において、「前記露出孔内に挿入されて前記露出孔から露出される露出部が設けられ、前記被覆部材に位置決めされる透過部材」「を備える」の限度で共通する。
エ 引用発明の「サイドターンランプ12」は、「ベース13の表面側をレンズ14で覆った構造で、内部に光源(LED)15が設けられ」ているものであり、光源(LED)15がレンズ14の内側に配置されており、かつ、光源(LED)15が発光した光がレンズ14を透過するものである。
したがって、引用発明の「光源(LED)15」は、本願発明の「前記透過部材の内側に配置され、発光した光が前記透過部材を透過する発光手段」に相当する。
オ 以上ア-エより、本願発明と引用発明との一致点および相違点は次のとおりである。
<一致点>
「車両のミラーの鏡面を露出させた状態で前記ミラーを収容する収容体と、
前記収容体に組付けられると共に、露出孔が設けられ、前記ミラーの裏面側において前記収容体を被覆する被覆部材と、
前記露出孔内に挿入されて前記露出孔から露出される露出部が設けられ、前記被覆部材に位置決めされる透過部材と、
前記透過部材の内側に配置され、発光した光が前記透過部材を透過する発光手段と、
を備えた車両用ミラー装置。」
<相違点>
本願発明の「透過部材」は、「被覆部材」との位置関係において、「前記露出部が前記被覆部材の前記露出孔周縁部分に当接されない状態に前記被覆部材に位置決めされて前記被覆部材の前記露出孔周縁部分の全体と前記露出部との間に隙間が形成される」るものであるのに対し、引用発明の「レンズ14」は、「ミラーハウジング2」との位置関係、特に、レンズ14の切欠部4から露出している部分と、切欠部4との間の隙間に関し、そのように特定されていない点。

(2)当審の判断
上記相違点について検討する。
内側に発光手段を配置した透過部材を被覆部材の開口部に配置する構成の車両用ドアミラー装置において、透過部材の露出部と被覆部材の開口部周縁部分の間に隙間を形成する配置構成は、構造的又は外観的にも、原出願の出願日前に周知・慣用の事項であるといえる(特開2009-46037号公報(段落【0004】-【0005】、【0032】)、特開2007-308074号公報(段落【0027】、【0029】、図5-7)、参照。)。
引用発明の車両用ドアミラー装置は、ミラーハウジング2の切欠部4(上記周知・慣用の事項の「開口部」に対応)にサイドターンランプ12のレンズ14(上記周知・慣用の事項の「透過部材」に対応)を配置する構成であること、かかる構成とした場合に、レンズ14の露出している部分と切欠部4の周縁部分の間に全く隙間を生じさせることなく製造することは、部品の加工精度等の点から容易ではないと認識しうることから、引用発明において、上記周知・慣用の事項を参考にする動機付けは十分存在するといえる。
ここで、車両用ドアミラー装置において、製品の外観品質(見映え・見栄え)を向上させることも当業者が通常考慮すべき事項といえるところ、引用発明に上記周知・慣用の事項を参考にして、レンズ14の露出している部分と切欠部4の周縁部分の間に隙間を形成する配置構成を採用する場合に、前記露出する部分の一部が前記周縁部分に当接状態となり、隙間が不均一になるような配置構成では外観品質上好ましくないことは明らかであるから、車両用ドアミラー装置の外観品質を向上させることをも考慮することで、引用発明におけるレンズ14の露出している部分がミラーハウジング2の切欠部4の周縁部分に当接されない状態に前記レンズ14に位置決めされて前記ミラーハウジング2の切欠部4の周縁部分の全体と前記露出している部分との間に隙間が形成されるように構成すること、すなわち上記相違点に係る本願発明の構成を備えるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明および上記周知・慣用の事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明及び上記周知・慣用の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-15 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2014-238991(P2014-238991)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山尾 宗弘森本 哲也岩▲崎▼ 則昌  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
尾崎 和寛
発明の名称 車両用ミラー装置  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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