• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1333852
審判番号 不服2016-14885  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-04 
確定日 2017-11-14 
事件の表示 特願2012-126065号「ナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-250194号、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月1日に出願されたものであって、平成27年4月8日付けで拒絶理由が通知され、平成27年6月3日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年12月8日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成28年1月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年6月29日付けで平成28年1月29日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、それに対して平成28年10月4日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成28年11月11日に前置報告がされ、平成28年12月20日に審判請求人から前置報告に対する上申書が提出され、平成29年7月11日付けで当審において拒絶理由が通知され、平成29年9月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年10月4日提出の手続補正書により補正された明細書及び平成29年9月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)。

「 【請求項1】
地図画面に対する所定のタッチ操作を認識する操作認識部と、
車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記操作認識部にて認識された前記所定のタッチ操作と、前記車両情報取得部にて取得された前記車両情報とに基づいて、前記地図画面の表示制御を行う地図画面表示制御部と、
を備え、
前記地図画面表示制御部は、前記地図画面を表示する表示モードと、前記地図画面に対する前記所定のタッチ操作が可能な操作モードとの切り替えを行い、前記操作モードの場合において前記地図画面の表示制御を行い、かつ、前記表示モード時の前記地図画面と前記操作モード時の前記地図画面とが区別可能であり、前記操作モードであることを示すアイコンを表示するような表示制御を行うことを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記操作認識部は、前記所定のタッチ操作をコマンドとして認識し、当該コマンドを、所定のパラメータを含むイベントとして前記地図画面表示制御部に出力することを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記地図画面表示制御部は、前記車両情報に基づいて前記所定のパラメータを調整して前記表示制御を行うことを特徴とする、請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記所定のパラメータは、単発的あるいは連続的に調整されることを特徴とする、請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
自車両の車速を検知する車速検知部と、
前記自車両の旋回を検知するジャイロセンサと、
をさらに備え、
前記車両情報取得部は、前記車速検知部にて検知された前記車速の情報である車速情報と、前記ジャイロセンサにて検知された前記旋回の情報である旋回情報とを前記車両情報として取得することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記地図画面表示制御部は、前記地図画面の地図方位を制御することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記地図画面表示制御部は、前記地図画面の縮尺を制御することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記地図画面表示制御部は、前記地図画面のスクロール動作を制御することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記地図画面表示制御部は、前記車両情報に基づいて、前記自車両が走行中であり、かつ旋回している場合は前記表示制御を行わないことを特徴とする、請求項6ないし8のいずれかに記載のナビゲーション装置。」

第3 引用文献、引用文献等
1.刊行物1(特開2007-3841号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された上記刊行物1には、「ナビゲーション装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物1の記載事項
1a)「【請求項1】
車両走行時に表示する地図の縮尺を、地図表示可能な全縮尺の中から選択して登録する車両走行中表示縮尺登録手段と、
利用者による表示地図の拡大或いは縮小の指示信号を入力する指示信号入力手段と、
車両が走行しているか否かを検出する車両走行検出手段とを備え、
前記車両走行検出手段で車両の走行を検出したときにおいて、前記指示信号入力手段で前記指示信号を入力したとき、前記車両走行中表示縮尺登録手段に登録した縮尺の地図表示を行う地図表示処理手段を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記地図表示処理手段は、車両停止時には利用者による前記指示信号に応じて地図を連続的に拡大または縮小するフリーズーム機能により地図表示し、
車両の走行時には前記フリーズーム機能による地図表示を行わないことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記地図表示処理手段は、車両走行時に前記車両走行中表示縮尺登録手段に登録した縮尺を選択して地図表示を行っているとき、利用者の指示により、前記表示可能な全縮尺の地図を表示可能としたことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)

1b)「【0018】
本発明は、車両の停止中はナビゲーション装置の地図の縮尺をきめ細かく順に表示できるとともに、車両の走行時において運転者が所望の縮尺の地図を容易に、且つ直ちに表示することことができるようにするという目的を、車両走行時に表示する地図の縮尺を、地図表示可能な全縮尺の中から選択して登録する車両走行中表示縮尺登録手段と、利用者による表示地図の拡大或いは縮小の指示信号を入力する指示信号入力手段と、車両が走行しているか否かを検出する車両走行検出手段とを備え、前記車両走行検出手段で車両の走行を検出したときにおいて、前記指示信号入力手段で前記指示信号を入力したとき、前記車両走行中表示縮尺登録手段に登録した縮尺の地図表示を行う地図表示処理手段を備え留事によって実現した。」(段落【0018】)

1c)「【0024】
図1に示すナビゲーション装置においては、モニタ22に地図を表示するための地図表示処理部30を備えており、DVD、HDD等の地図・情報データ記録媒体18から所定の地点を中心とし、所定の縮尺の地図データを、地図データ入力部31で入力している。その際入力する地図データとして、車両位置検出部13で検出した自車両の位置、或いは地図をスクロールするリモコン15等の操作を指示信号入力部17で入力してこれを前記所定の地点とし、後述する地図表示縮尺設定部33で設定した地図縮尺を指示することにより、所望の地図データを得ることができる。
【0025】
上記のようにして所定の地点を中心とし、所定の縮尺の地図データが入力され、地図表示処理部内の表示処理部で地図画面を作成した後、ズーム処理部32では、その地図について指示信号入力部17からの利用者の指示信号により、画像の拡大・縮小の処理を行い、縮尺を変更しているのと同様の画面表示処理を行う。特にこの地図表示処理部において全ての縮尺の地図についてズーム処理を行い、所定のズームで次の縮尺の地図データを読み込んで表示を行い、更にズーム処理を行うという作動を連続的に行うことにより、最小縮尺から最大縮尺まで連続的にズーム表示を行うフリーズーム機能を行わせることもできる。
【0026】
地図表示縮尺設定部33は、上記のようにモニタ22に表示する地図の縮尺を設定する部分であり、利用者が現在表示している地図を拡大して詳細な地図を見たいとき、或いは現在表示している地図を縮小して広域の地図を見たいときに、リモコン15等の操作によりその指示信号を出力すると、その信号は指示信号入力部17からシステム制御部10によって地図表示縮尺設定部33の指示信号入力部34に入力される。」(段落【0024】ないし【0026】)

1d)「【0031】
図1の地図表示縮尺設定部33には車両走行検出入力部38を備え、その車両が備えている車両信号入力系から、車両が所定の速度以上で走行しているか否かを検出している。その信号は地図表示縮尺選択部39に出力され、地図表示縮尺選択部39では、前記のようにして入力した車両が現在走行しているか否かの信号によって、そのナビゲーション装置が備えている地図表示縮尺のうち、例えば前記図4(a)のような全ての縮尺を記憶している地図表示全縮尺記憶部40か、または図4(b)のように車両の走行中に表示する地図の縮尺を選択して登録する車両走行中表示縮尺登録部37のデータを用いるようにしている。
【0032】
車両の停止中に利用者から表示地図の縮尺変更指示があったときには、地図表示縮尺選択部39は地図表示全縮尺記憶部40を選択し、現在表示している地図の縮尺の次の縮尺の地図を表示し、またはズーム表示による拡大縮小を行う。それに対して車両が走行中である信号が車両走行検出部38から入ったときには、地図表示縮尺選択部39は車両走行中表示縮尺登録部37を選択し、ここに登録している縮尺のうち、現在表示している地図の縮尺の次の縮尺を選択できるようにする。地図表示縮尺出力部41は、前記のような車両の走行中か停止中かに応じて地図表示縮尺選択部39が選択した、地図表示全縮尺記憶部40に記憶している全ての縮尺、或いは車両走行中表示縮尺登録部37に登録している縮尺が順に出力し、現在表示している地点を中心とした所定の縮尺の地図を、地図・情報データ記録媒体18から取り込む指示を行う。」(段落【0031】及び【0032】)

1e)「【0036】
これらの処理は、図1における地図表示縮尺設定部33における指示信号入力部34の登録用指示入力部36が、モニタ22に表示された地図データの全縮尺の表示に従い利用者がリモコン15等を操作して選択した信号を入力し、車両走行中表示縮尺登録部37にこれを登録することによって行われる。
【0037】
上記のようにして登録された車両走行中表示縮尺のデータを用いて、例えば図3に示す作動フローに従って処理を行うことにより本発明が実施可能となる。即ち、図3に示す地図表示の際の地図縮尺選択処理は、最初に地図縮尺の拡大・縮小の指示があるか否かを判別する(ステップS11)。ここでその指示がないと判別したときには、この作動を繰り返して待機する。ここで前記指示があったと判別したときには、車両は走行中であるか否かを判別する(ステップS12)。これらの判別は、図1の指示信号入力部34の地図拡大・縮小指示入力35に、利用者からの地図の拡大或いは縮小の指示信号が入力されたとき、車両走行検出部38の検出作動によって、車両が走行しているか否かを判別することにより行われる。
【0038】
ステップS12で車両が走行中であると判別したときには、図示実施例では登録した縮尺における次の縮尺の地図はあるか否かを判別し(ステップS13)、次の縮尺の地図があると判別したときには登録した縮尺における次の縮尺の地図を指示する(ステップS14)。即ち、例えば図4(b)(c)のように選択し登録した走行時に表示可能な縮尺において、現在1目盛り200mの地図を表示しているときにその地図の拡大、或いは縮小の指示があったときには、いずれもその次の縮尺の地図が存在するので、その縮尺の地図表示を指示する。1目盛り1kmの地図を表示しているときも同様である。
【0039】
それに対して、現在1目盛り50mの地図を表示しているときに地図の拡大指示があったとき、即ち、より詳細な地図の表示指示があったときには、次の縮尺の地図は存在せず、同様に現在1目盛り5kmの地図を表示しているときに地図の縮小指示があったとき、即ち、より広域の地図の表示指示があったときには、次の縮尺の地図は存在しないので、前記ステップS13ではそのような地図は存在しないと判別され、ステップS15に進んで、次の縮尺の地図はない旨の表示を行う。これらの処理は、図1の地図拡大・縮小指示入力部35で入力した利用者の地図の拡大或いは縮小の指示に対応する地図の縮尺が、車両走行中表示縮尺登録部37に登録された地図縮尺の中にあるか否かを判別することにより行われる。
【0040】
前記ステップS14で登録した縮尺における次の縮尺の地図の指示が行われたとき、またステップS15で次の縮尺の地図は無い旨の表示を行ったときには、再びステップS11に戻って、更に利用者による地図の縮尺の拡大・縮小の指示があるか否かを判別し、以下同様の作動を繰り返す。上記のような車両走行中での利用者による、例えばリモコン操作等によっての現在表示している地図の拡大或いは縮小の指示に際しては、従来のナビゲーション装置においては、リモコン操作によって次第に地図が拡大し、或いは縮小していくことにより、どこでその操作を止めたらよいのか迷うのに対して、本発明においては上記のように処理される結果、直ちに利用者の希望に添った所望の縮尺の地図を表示することができるようになる。
【0041】
前記ステップS12において、車両が走行中ではない、即ち車両が停止していると判別したときには、従来と同様の作動が行われ、次の縮尺の地図はあるか否かの判別を行い(ステップS16)、存在するときには次の縮尺の地図へ、フリーズームによって縮尺変更する処理を行う(ステップS17)。また、ステップS16で次の縮尺の地図はないと判別したときには、前記ステップS15と同様に、次の縮尺の地図はない旨の表示を行う(ステップS18)。前記ステップS17及び S18の後は、前記と同様にステップS11に戻り、上記作動を繰り返す。」(段落【0036】ないし【0041】)

(2)引用発明
上記(1)及び図面からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「表示地図に対する利用者のリモコン等の操作による指示信号を入力する指示信号入力部34と、
車両が走行しているか否かを検出する車両走行検出入力部38と、
指示信号入力部34に入力された利用者のリモコン等の操作の指示信号と、車両走行検出入力部38にて検出された車両が走行しているか否かの信号とに基づいて、表示地図の縮尺を選択する地図表示縮尺選択部39とを備え、
指示信号入力部34により、利用者による地図拡大・縮小の指示があった場合、車両走行検出入力部38により車両が走行中であると判別した場合は、車両走行中表示縮尺登録部37に登録されている縮尺のうち、現在表示している地図の縮尺の次の縮尺を選択できるようにするとともに、車両走行検出入力部38により車両が停止中であると判別した場合は、現在表示している地図の縮尺の次の縮尺の地図を表示し、またはズーム表示による拡大縮小を行う、ナビゲーション装置。」

2.刊行物2(特開2008-209915号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された上記刊行物2には、「表示装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物2の記載事項
2a)「【0022】
このようにナビゲーション装置では、表示画面9bに地図が表示され、その地図上に使用者により入力された目的地、該目的地までのルート、自車の現在位置に対応する自車位置マーク、及びそれまでの自車の走行軌跡等が重ねて表示されるようになっており、使用者は、この表示画面9bを逐次参照することで、進路情報を得ることができ、その進路情報に従うことで目的地に到達することができるようになっている。
【0023】
図中10は、表示画面9bへの物理的な接触を検出する接触検出手段10を示しており、接触検出手段10は、使用者が地図画像などの画像の拡大や縮小、回転、スクロールなどの操作を入力するために、画像が表示された表示画面9b上に接触させた指などを検出するためのものであり、表示画面9bに透明なタッチパネルなどが積層されて構成されている。また、接触検出手段10で検出されたデータについては、マイコン1に入力されるようになっている。」(段落【0022】及び【0023】)

(2)刊行物2技術
上記(1)及び図面からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2技術」という。)が記載されている。

「ナビゲーション装置において、地図が表示される表示画面9bに、使用者が地図画像などの画像の拡大や縮小、回転、スクロールなどの操作を入力するための接触検出手段10を設ける技術。」

3.刊行物3(特開2008-109688号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された上記刊行物3には、「通信装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物3の記載事項
3a)「【請求項5】
タッチパネル式の操作モード又は情報を表示する表示モードに切り替え可能な第1表示部を有する第1筐体と、タッチパネル式の操作モード又は情報を表示する表示モードに切り替え可能な第2表示部を有する第2筐体と、制御手段と、ヒンジ部とを有し、前記第1筐体と前記第2筐体とは前記ヒンジ部を介して回動可能な通信装置であり、
前記第1表示部は、前記表示モードに切り換えられている状態でもユーザの操作を検出可能であり、
前記制御手段は、前記第2表示部が操作されたと判定すると、前記第2表示部を操作モードに切り換えると共に前記第1表示部を表示モードに切り替え、前記第1表示部が前記表示モードで縦長に表示されていると共に、前記第2表示部が前記操作モードである状態で、前記第1表示部がユーザの操作を検出したと判定すると、前記第1表示部を縦長表示から横長表示に切換表示するよう制御することを特徴とする通信装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項5】)

3b)「【0009】
前記第1筐体100は、電話番号や画像等を表示する表示モードか、操作キー表示を行い当該キー表示部分が押圧されたことを出力するタッチパネル式の操作モードに切り替え可能な第1表示部110と、アンテナ120とを有しており、前記アンテナ120は通話やメールの送受信の為に使用される。尚、本実施例装置はテレビジョン画像を表示可能であり、テレビジョン信号を受信する為のアンテナも搭載している(図示せず)。
【0010】
前記第2筐体200は、電話番号や画像等を表示する表示モードかタッチパネル式の操作モードに切り替え可能な第2表示部210を有している。
【0011】
尚、前記第1表示部110を表示モードとして使用する際には、前記第2表示部210を操作モードとして使用し、前記第2表示部210を表示モードとして使用する際には、前記第1表示部110を操作モードとして使用される。」(段落【0009】ないし【0011】)

3c)「【0041】
又、筐体を開いてから例えば、初めに第1表示部110に操作があると第1表示部110を操作モードにすると共に第2表示部210を表示モードとし、この状態を筐体を閉じるまで維持しても良い。尚、第2表示部210に操作があった場合についても同様にしても良い。このような構成としても良い理由は、一旦ユーザが筐体を開いてから、筐体を回転させることはあまりなく、従って、一旦下側の筐体を操作モードにしてしまったら、ユーザが通信装置の使用を終了するまではその状態を維持しても何ら差し支えがないからである。」(段落【0041】)

(2)刊行物3技術
上記(1)及び図面からみて、刊行物3には以下の技術(以下、「刊行物3技術」という。)が記載されている。

「タッチパネル式の操作モード又は情報を表示する表示モードに切り替え可能な第1表示部110を有する第1筐体100と、タッチパネル式の操作モード又は情報を表示する表示モードに切り替え可能な第2表示部210を有する第2筐体200と、制御手段と、ヒンジ部とを有し、第1筐体100と第2筐体200とがヒンジ部を介して回動可能な通信装置において、第2表示部210が操作されたと判定すると、表示部を操作モードに切り換えると共に第1表示部を表110を表示モードに切り替える技術。」

4.刊行物4(特開2005-173702号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された上記刊行物4には、「運転余裕度判定装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

4a)「【請求項1】
車両の走行状態から車両情報を検出する車両情報取得手段と、
前記車両情報取得手段において取得された前記車両情報を記憶する車両情報記憶手段と、
運転者による車載機器の操作タイミングを取得する車載機器操作取得手段と、
前記操作タイミングの前後所定時間分における前記車両情報の変動特性を比較して、運転者の余裕度を判定する判定手段とを備えることを特徴とする運転余裕度判定装置。
【請求項2】
請求項1の運転余裕度判定装置において、
判定された前記余裕度の結果に基づいて、前記車載機器の制御を行う車載機器制御手段をさらに備えることを特徴とする運転余裕度判定装置。
【請求項3】
請求項1または2の運転余裕度判定装置において、
前記車両情報の変動特性について、操作前の変動よりも操作後の変動が大きい場合、前記車載機器制御手段が前記車載機器の操作を制限する制御を実行し、一方、操作前の変動よりも操作後の変動が小さい場合、該車載機器制御手段が前記車載機器に対して、運転者に運転注意を喚起するよう制御することを特徴とする運転余裕度判定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの運転余裕度判定装置において、
前記車両情報取得手段が、前記車両情報として舵角、アクセル開度、加速度、速度、および車間距離のいずれか1つ以上を検出することを特徴とする運転余裕度判定装置。」
(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】)

4b)「【0009】
車両情報取得装置101は、舵角やアクセル開度、加速度、車速、車間距離といった車両情報を検出する。車両情報記憶装置102はメモリ等の記録媒体を有しており、車両情報取得装置101により所定時間間隔で取得した車両情報を記録して一定時間保持する。
車両用機器操作取得装置104は、ナビゲーション106やオーディオ107といった車両用機器108のボタン、スイッチ等の操作部材の操作タイミングを検出する。」

(2)刊行物4技術
上記(1)及び図面からみて、刊行物4には以下の技術(以下、「刊行物4技術」という。)が記載されている。

「舵角やアクセル開度、加速度、車速、車間距離などの車両情報の変動特性について、操作前の変動よりも操作後の変動が大きい場合、車載機器制御手段が車載機器の操作を制限する制御を実行する技術。」

5.その他の文献(前置報告書において新たに引用された文献)について
また、前置報告書において引用された刊行物5(特開2007-314128号公報)の【特許請求の範囲】、段落【0054】及び【0055】には、「車載操作システム1において、運転手操作モード及び同乗者操作モードのうちのいずれを設定しているかを、表示画面全体の意匠(背景色)を区別することにより、操作者が区別可能とする技術」(以下、「刊行物5技術」という。)が記載されており、
刊行物6(特開2011-258223号公報)の【特許請求の範囲】及び段落【0044】には、「目標物検出装置の画面領域において、検出対象物となる目標物の種類を報知するためのアイコンを表示する技術」(以下、「刊行物6技術」という。)が記載されており、
刊行物7(特開2000-98884号公報)の【特許請求の範囲】及び段落【0020】ないし【0024】には、「地図表示装置において、最大拡大地図モード、同一縮尺地図モード及び手動選択モードの各モードにおける画面下部にアイコンを表示して、実行中のモード用のアイコンを反転表示させる技術」(以下、「刊行物7技術」という。)が記載されている。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「表示地図」は、その機能、構造及び技術的意義から、本願発明1の「地図画面」に相当し、以下同様に、「指示信号を入力する」は「認識する」に、「指示信号入力部34」は「操作認識部」に、「車両が走行しているか否かを検出する」は「車両情報を取得する」に、「車両走行検出入力部38」は「車両情報取得部」に、「入力された」は「認識された」に、「検出された」は「取得された」に、「車両が走行しているか否かの信号」は「車両情報」に、「縮尺を選択する」は「表示制御を行う」に、「地図表示縮尺選択部39」は「地図画面表示制御部」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明における「利用者のリモコン等の操作」と本願発明1における「所定のタッチ操作」とは、「所定の操作」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「地図画面に対する所定の操作を認識する操作認識部と、
車両情報を取得する車両情報取得部と、
操作認識部にて認識された所定の操作と、車両情報取得部にて取得された車両情報とに基づいて、地図画面の表示制御を行う地図画面表示制御部と、を備えるナビゲーション装置。」

[相違点1]
「所定の操作」に関して、本願発明1においては、「所定のタッチ操作」であるのに対して、引用発明においては、「利用者のリモコン等の操作」である点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
本願発明1においては、「地図画面表示制御部は、地図画面を表示する表示モードと、地図画面に対する所定のタッチ操作が可能な操作モードとの切り替えを行い、操作モードの場合において地図画面の表示制御を行い、かつ、表示モード時の地図画面と操作モード時の地図画面とが区別可能であり、操作モードであることを示すアイコンを表示するような表示制御を行う」のに対して、
引用発明においては、「指示信号入力部34により、利用者による地図拡大・縮小の指示があった場合、車両走行検出入力部38により車両が走行中であると判別した場合は、車両走行中表示縮尺登録部37に登録されている縮尺のうち、現在表示している地図の縮尺の次の縮尺を選択できるようにするとともに、車両走行検出入力部38により車両が停止中であると判別した場合は、現在表示している地図の縮尺の次の縮尺の地図を表示し、またはズーム表示による拡大縮小を行う」ものであるが、「表示モード」及び「操作モード」を備えるものであって、かつ、「表示モード時の地図画面と操作モード時の地図画面とが区別可能であり、操作モードであることを示すアイコンを表示するような表示制御を行う」か不明である点(以下、「相違点2」という。)。

事案に鑑み、まず、上記「相違点2」について検討する。

[相違点2について]
上記刊行物2技術は、「ナビゲーション装置において、地図が表示される表示画面9bに、使用者が地図画像などの画像の拡大や縮小、回転、スクロールなどの操作を入力するための接触検出手段10を設ける技術」であり、
上記刊行物3技術は、「タッチパネル式の操作モード又は情報を表示する表示モードに切り替え可能な第1表示部110を有する第1筐体100と、タッチパネル式の操作モード又は情報を表示する表示モードに切り替え可能な第2表示部210を有する第2筐体200と、制御手段と、ヒンジ部とを有し、第1筐体100と第2筐体200とがヒンジ部を介して回動可能な通信装置において、第2表示部210が操作されたと判定すると、表示部を操作モードに切り換えると共に第1表示部を表110を表示モードに切り替える技術」であり、
上記刊行物4技術は、「舵角やアクセル開度、加速度、車速、車間距離などの車両情報の変動特性について、操作前の変動よりも操作後の変動が大きい場合、車載機器制御手段が車載機器の操作を制限する制御を実行する技術」であり、
上記刊行物5技術は、「車載操作システム1において、運転手操作モード及び同乗者操作モードのうちのいずれを設定しているかを、表示画面全体の意匠(背景色)を区別することにより、操作者が区別可能とする技術」であり、
上記刊行物6技術は、「目標物検出装置の画面領域において、検出対象物となる目標物の種類を報知するためのアイコンを表示する技術」であり、
上記刊行物7技術は、「地図表示装置において、最大拡大地図モード、同一縮尺地図モード及び手動選択モードの各モードにおける画面下部にアイコンを表示して、実行中のモード用のアイコンを反転表示させる技術」である。
しかしながら、刊行物2技術及び刊行物4ないし7技術においては、「表示モード」及び「操作モード」についての開示や示唆がなく、刊行物3技術は、通信装置における第1表示部と第2表示部の一方を「操作モード」、他方を「表示モード」とすることについて開示するものであるが、地図画面を「表示モード」、あるいは「操作モード」と切り替える制御を行うものではない。
そして、刊行物5技術は、操作モードによって表示画面の意匠(背景色)を区別するものであり、刊行物6及び7技術は、アイコン表示を行うものであるが、いずれも本願発明1でいう操作モードに対応したアイコンを表示するものではない。
したがって、上記刊行物2ないし7技術のいずれにも、「地図画面表示制御部」が、「地図画面を表示する表示モードと、地図画面に対する所定のタッチ操作が可能な操作モードとの切り替えを行い、操作モードの場合において地図画面の表示制御を行い、かつ、表示モード時の地図画面と操作モード時の地図画面とが区別可能であり、操作モードであることを示すアイコンを表示するような表示制御を行う」ことについて開示や示唆がされていない。

よって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び刊行物2ないし7技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

2.本願発明2ないし9について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし9は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし9は本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし9は、本願発明1と同様に、引用発明及び刊行物2ないし7技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし9について、上記刊行物1ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年9月13日付け手続補正により補正された請求項1は、「地図画面表示制御部は、地図画面を表示する表示モードと、地図画面に対する所定のタッチ操作が可能な操作モードとの切り替えを行い、操作モードの場合において地図画面の表示制御を行い、かつ、表示モード時の地図画面と操作モード時の地図画面とが区別可能であり、操作モードであることを示すアイコンを表示するような表示制御を行う」という事項を有するものとなっているから、原査定の理由において引用された刊行物1ないし4に記載された発明又は技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項9が請求項5の引用形式で記載された場合に不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年9月13日付けの補正により、「【請求項9】・・・請求項6ないし8のいずれかに記載の・・」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

2.特許法第36条第4項第1号について
当審では、明細書段落【0071】(実施例1)、【0087】(実施例2)、【0100】(実施例3)の記載における「ユーザが「・・・」のタッチ操作を行っても地図画面の表示は変更されない」という表示制御は、明細書段落【0063】、【0079】、【0092】の記載における「以下、操作モード時において・・・具体的な動作について説明する。」によれば、一見して、いずれも操作モード時における表示制御と認められるところ、上記「ユーザが「・・・」のタッチ操作を行っても地図画面の表示は変更されない」という表示制御は、表示モードそのものであるのか、あるいは、操作モードの中にもそのような表示制御の形態が存在するのか不明確であるとの拒絶理由を通知しているが、平成29年9月13日提出の意見書における「・・・このように、本願発明では、条件(1)?(3)の条件を満たす場合であっても条件(4)?(6)を満たす場合は、操作モードへの切り替えは行われません。また、条件(1)?(3)の条件を満たして操作モードになっても、条件(4)?(6)を満たす場合はタッチ操作による表示制御を行いません。上記より、「ユーザが「・・・」のタッチ操作を行っても地図画面の表示は変更されない」という表示制御は、「操作モードの中にもそのような表示制御の形態が存在する」であることは明確です。」との釈明により解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし9に係る発明は、いずれも引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物7技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-30 
出願番号 特願2012-126065(P2012-126065)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01C)
P 1 8・ 536- WY (G01C)
P 1 8・ 537- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩田 玲彦  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 松下 聡
佐々木 芳枝
発明の名称 ナビゲーション装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ