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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01Q
管理番号 1334404
異議申立番号 異議2017-700240  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-07 
確定日 2017-09-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第5989722号発明「アンテナ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5989722号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5989722号の請求項1に係る特許についての出願は、平成26年8月4日に特許出願され、平成28年8月19日に特許の設定登録がされ、同年9月7日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し特許異議申立人荒木亜彩子により特許異議の申立てがされたものである。
2 本件発明
特許第5989722号の請求項1の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(以下、「請求項1に係る発明」という。)
「車両に取り付けられるアンテナ装置であって、
アンテナが固定されるベース部と、
前記ベース部に取り付けられるカバーと、
前記ベース部の縁を覆って支持すると共に前記カバーの縁に接しており、前記車両と前記カバーとの間に位置する可撓性のパッドと、
を備え、
前記パッドにおける前記カバー側の表面には、前記ベース部の前記縁に沿って形成された本体部分と、前記本体部分から前記パッドの縁に向かって延在する複数のリブ状部分とを有する突起部が設けられている、
アンテナ装置。」
3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1ないし2号証を提出し、請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。
甲第1号証:特開2008-182663号公報
甲第2号証:特開2007-38987号公報
4 甲号証の記載
(1) 甲第1号証
甲第1号証(【0001】、【0014】、【0015】、【0016】、【0021】、【0023】、図2(b)参照)には、次の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認める。
(甲第1号証記載の発明)
「車両に設けられるアンテナ装置であって、
アンテナモジュール1が固定されるグランドベース2と、
前記グランドベース2に締結されるカバー5と、
前記グランドベース2の周縁部全体を覆い、差し込まれフィットするブラケット4と、前記カバー5の周縁部が差し込まれる周縁ブラケット40と、前記車両と前記カバー5との間に位置する弾性部材からなる底部パッド3とを、一体成形したものと、
を備え、
前記一体成形したものにおける前記カバー5側の表面には、前記グランドベース2の前記周縁部を覆うように形成されたブラケット4が設けられている
アンテナ装置。」
(2) 甲第2号証
甲第2号証(【0005】、【0006】、【0026】、【0031】、図4-図7参照)には、クッション材の先端部の垂れ下がりによる組み付け作業の困難性という課題を解決するために、「端部クッション材の垂れ下がりを抑制するため、垂れ下がる方向と反対側の表面に、基端側から先端側に延びる複数の補強用リブを備えること。」(以下、「甲第2号証記載事項」という。)が記載されていると認める。
5 対比・判断
(1) 請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比する。
甲第1号証記載の発明の「アンテナモジュール1」、「グラウンドベース2」、「カバー5」及び「ブラケット4」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「アンテナ」、「ベース部」、「カバー」及び「本体部分」に相当する。
また、請求項1に係る発明の「前記ベース部の縁を覆って支持すると共に前記カバーの縁に接しており、前記車両と前記カバーとの間に位置する可撓性のパッド」と、甲第1号証記載の発明の「前記グランドベース2の周縁部全体を覆い、差し込まれフィットするブラケット4と、前記カバー5の周縁部が差し込まれる周縁ブラケット40と、前記車両と前記カバー5との間に位置する弾性部材からなる底部バッド3とを、一体成形したもの」とは、「前記ベース部の縁を覆って支持すると共に前記カバーと密着するように構成され、前記車両と前記カバーとの間に位置する可撓性のパッド手段」で共通する。
さらに、請求項1に係る発明の「前記パッドにおける前記カバー側の表面には、前記ベース部の前記縁に沿って形成された本体部分と、前記本体部分から前記パッドの縁に向かって延在する複数のリブ状部分とを有する突起部が設けられている」と、甲第1号証記載の発明の「前記一体成形したものにおける前記カバー5側の表面には、前記グランドベース2の前記周縁部を覆うように形成されたブラケット4が設けられている」とは、「前記パッド手段における前記カバー側表面には、前記ベース部の前記縁に沿って形成された本体部分を有する突起手段が設けられている」で共通する。
請求項1に係る発明と、甲第1号証記載の発明とを対比すると、以下の点で、一致し、相違する。
(一致点)
「車両に取り付けられるアンテナ装置であって、
アンテナが固定されるベース部と、
前記ベース部に取り付けられるカバーと、
前記ベース部の縁を覆って支持すると共に前記カバーと密着するように構成され、前記車両と前記カバーとの間に位置する可撓性のパッド手段と、
を備え、
前記パッド手段における前記カバー側表面には、前記ベース部の前記縁に沿って形成された本体部分を有する突起手段が設けられている、
アンテナ装置。」
(相違点1)
一致点の「前記カバーと密着するように構成され」る「パッド手段」に関し、請求項1に係る発明では「パッド」が「前記カバーの縁に接して」いるのに対し、甲第1号証記載の発明では、「周縁ブラケット40」に「前記カバー5の周縁部が差し込まれる」点。
(相違点2)
一致点の「突起手段」に関し、請求項1に係る発明が、更に、「前記本体部分から前記パッドの縁に向かって延在する複数のリブ状部分」を有するのに対して、甲第1号証記載の発明は、そのような構成を有しない点。
事案に鑑み(相違点1)について検討する。
「パッド」と「アンテナカバー」とを密着するため、「アンテナカバーの縁」に「パッド」を接する構成は、甲第1号証、甲第2号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
なお、車両に取り付けられるアンテナ装置において、アンテナカバーの縁にパッドを接する構成が、周知であると仮定しても、甲第1号証記載の発明の「前記カバー5の周縁部が差し込まれる周縁ブラケット40」を「アンテナカバーの縁にパッドを接する」構成に置き換える動機が見当たらず、さらに、甲第1号証には、「周縁ブラケット40」を「底部パッド3」に設ける効果として、「底部パッド3をカバー5の開口部と同様の形状とし、周縁ブラケット40にカバー5の周縁部を差し込むことで、カバー5を安定的に底部パッド3に固定できると共に、底部パッド3はカバー5に張架された状態となるため撓まず板状になる。」(【0023】)と記載されている一方で、上記「アンテナカバーの縁にパッドを接する構成」では、そのような効果を奏することができないことは当業者に自明の事項であるから、上記置き換えには、阻害要因があると認める。
してみると、甲第1号証記載の発明に基づいて、請求項1に係る発明における(相違点1)に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、(相違点2)について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明、及び甲第2号証記載事項から、当業者が容易に発明することができたものではない。
(2) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)
「車両に取り付けられるアンテナ装置であって、
アンテナモジュール(1)が固定されるグラウンドベース(2)と、
前記グラウンドベース(2)に取り付けられるカバー(5)と、
前記グラウンドベース(2)の縁を覆って支持すると共に前記カバー(5)の縁に接しており、前記車両と前記カバーとの間に位置する可撓性のパッド(3,4)と、
前記パッド(3,4)における前記カバー(5)側の表面には、前記グラウンドベース(2)の前記縁に沿って形成されたブラケット(4)が設けられている、
アンテナ装置。」
が記載されおり、それを踏まえて、甲1発明の「前記カバー(5)の縁に接しており、前記車両と前記カバーとの間に位置する可撓性のパッド(3,4)」は、請求項1に係る発明の「前記カバーの縁に接しており、前記車両と前記カバーとの間に位置する可撓性のパッド」と一致する旨主張している。
そこで上記主張について検討する。
特許異議申立書の「イ 引用発明の説明 (ア) 甲第1号証」の項において、「図2に、第2実施例として底部パッド3が大きくされて、底部パッド3がカバー5の周縁部(縁)に接しており、車両とカバー5の間に位置する様子が示されている。」(5頁最終行?6頁3行)と記載され、併せて「カバーの縁」との記載を含めた図2(b)が図示されていることから、甲1発明は、甲第1号証に記載された第2実施例に基づくものと解される。そして、甲第1号証には、第2実施例に関し、「周縁ブラケット40は、カバー5の周縁部が差し込まれフィットするように構成されている・・・(中略)・・・また、周縁ブラケット40は、底部パッド3とは別体で成形して接着等により底部パッド3に固定しても良いが、底部パッド3と一体成形されても良い。」(【0022】)と記載されているから、「カバー5の周縁部」が差し込まれる対象は「周縁ブラケット40」であることは明らかである。そして、「周縁ブラケット40は、・・・(中略)・・・底部パッド3と一体成形されても良い。」の記載から、「周縁ブラケット40」が、「底部パッド3と一体成形され」た場合には、「カバー5の周縁部」が「底部パッド3」に「差し込まれ」ている、とまではいえるものの、「周縁部」が「差し込まれる」構造と、「縁に接して」いる構造とは、「カバー」と「パッド」との物理的な密着構造が明らかに異なるから、甲第1号証に記載された第2実施例に基づいて、「前記カバー(5)の縁に接しており」と認定することはできず、よって、上記の点において一致する旨の主張は、妥当でない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用できない。
(3) 小括
以上のとおり、請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明、及び甲第2号証記載事項から、当業者が容易に発明することができたものではない。
6 むすび
したがって、異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-08-22 
出願番号 特願2014-158802(P2014-158802)
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H01Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩井 一央  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山中 実
中野 浩昌
登録日 2016-08-19 
登録番号 特許第5989722号(P5989722)
権利者 原田工業株式会社
発明の名称 アンテナ装置  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 上村 勇太  
代理人 黒木 義樹  
代理人 寺澤 正太郎  
代理人 阿部 寛  

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