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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1334716
審判番号 不服2016-13217  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-05 
確定日 2017-11-16 
事件の表示 特願2012-214465「情報コード読取システム及び情報コード読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 71465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月27日の出願であって、平成27年11月20日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月28日付けで手続補正され、同年2月15日付けで拒絶理由が通知され、同年4月20日付けで手続補正され、同年5月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年9月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、請求項1を、以下のように補正する補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
光を透過する透明性のコード形成対象物を有すると共に、前記コード形成対象物の内部に情報コードが形成され、前記コード形成対象物に対して可視光が当てられているときに前記情報コードが表示されずに当該コード形成対象物が透明状態で維持され、前記コード形成対象物に対して可視光の波長帯とは異なる第1波長帯の照射光が当てられたときに所定色の可視光の波長帯で情報コードを構成する複数の暗色セル及び明色セルのうち各暗色セルの部分が発光する情報コード表示体と、
前記情報コード表示体に形成された前記情報コードを読み取る情報コード読取装置と、
を備え、
前記情報コード読取装置は、
前記第1波長帯の照明光を照射する照明光源と、
前記所定色の可視光の透過度合いが、前記所定色とは波長帯の異なる他色の可視光の透過度合いよりも大きくなるように構成された波長選択フィルタと、
前記情報コード表示体に対して前記第1波長帯の照明光が照射されているときに、前記波長選択フィルタを透過した前記情報コードからの前記所定色の可視光を受光する受光センサと、
前記受光センサによる前記所定色の光の受光結果に基づいて前記情報コードを解読する解読手段と、を有し、
前記受光センサは、所定範囲に亘る受光領域全体に前記波長選択フィルタを透過した光が入射するように構成されており、
前記解読手段は、前記受光領域での受光結果に基づいて前記情報コードを解読し、
前記照明光源は、前記受光センサを収容するケースとは別体の照明器具として構成されて、前記受光センサによる撮像範囲に対して前記第1波長帯の照明光を照射することを特徴とする情報コード読取システム。」

(2)補正の適否
本件補正の上記補正事項は、補正前の請求項1の構成要件である「所定色の可視光の波長帯で情報コードの部分が発光する情報コード表示体」について「所定色の可視光の波長帯で情報コードを構成する複数の暗色セル及び明色セルのうち各暗色セルの部分が発光する情報コード表示体」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載した発明と補正後の請求項1に記載した発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア.引用文献
(1)引用文献1・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された“Invisible two-dimensional barcode fabrication inside a synthetic fused silica by femtosecond laser processing using a computer-generated hologram、[online],2011年1月25日,URL,http://proceedings.spiedigital library.org/proceeding.aspx?articleid=1349341” (以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審で注目する箇所を示す。)
a.第6頁第4行?第16行
「 4. EXPERIMENTAL INVISIBLE 2D BARCODE
As an application of invisible marking, we show an invisible 2D barcode inside an ES silica glass. In this experiment, we focus on the QR Code which is a kind of 2D barcode and industrial standard, JIS-X-0510 and ISO/IEC18004 (QR Code is registered trademark of DENSO WAVE INCORPRATED.). QR Code consists of black modules arranged in a square pattern on white background. Fig. 9(a) shows an actual QR Code pattern stored “NEW GLASS FORUM”. The QR Code can be read by the existing QR Code readers such as smartphones and mobile phones with a camera as it is.
We fabricated an invisible QR Code by DDH with LFD-CGH inside an ES silica glass based on the pattern in Fig. 9(a). Fig. 9(b) shows that the QR Code evidently appeared under the 254 nm UV light. On the other hand, under white light shown in Fig. 9(c), the sample was kept transparent, and we could not see CR Code pattern. Thus that is the invisible OR code.
Although the sharp square pattern was displayed by the strong red PL emission, the red QR Code on black background cannot be read by the existing QR Code readers.So we had to extend the QR Code reader software to read the red and black code. 」

(当審訳: 4. 実験の不可視2次元バーコード
不可視のマーキングの応用として、 ESシリカガラスの中の不可視の2次元バーコードを示す。この実験で、一種の2次元バーコードで工業規格、JIS -X -0510と ISO / IEC18004 (QRコードは DENSO WAVE INCORPRATED の登録商標である。)であるQRコードに焦点を当てる。QRコードは白い背景上に正方形のパターンで配置される黒いモジュールからなっている。図9 (a)は、実際のQRコードパターンに“NEW GLASS FORUM”という情報が記録されていることを示す。QRコードは、スマートフォンおよびカメラ付き移動電話のような既存のQRコードリーダによって読むことができる。
私たちは図9 (a) のパターンに基づいて ES シリカガラスの内側に LFD - CGH でDDH によって不可視のQRコードを製造した。図9 (b) は、254ナノメートルのUVライトの下でQRコードが明りょうに表れたことを示ししている。他方、図9 (c) に示されるように白い光の下では、サンプルは透明のままで、QRコードパターンは見えなかった。それゆえ、それは不可視のQRコードである。
くっきりした正方形のパターンが強い赤のフォトルミネセンス放射によって表示されたが、黒い背景上の赤いQRコードは既存のQRコードリーダによって読むことはできない。それで赤と黒のコードを読むのにQRコードリーダソフトウェアを拡張しなければならなかった。)

b.第7頁第1行?第6行
「Fig.10 shows our invisible QR Code decoding system. We could extract the QR Code information from observed red PL emission by using a CMOS web camera (UCAM DLY300TA, ELECOM) and QR Code reader software (QRCodeReader,Spark project20) extended for the contrast of red and black. The decode window in FIG.10 expresses “NEW GLASS FORUM” stored in the QR Code. Since we required no expensive detectors, optical microscopes and software, the system was very simple. In the experiment, we provided a novel invisible 2D barcode and reading method by red PL emission.」
(当審訳: Fig.10は、不可視のQRコードデコーディングシステムを示す。 私たちは、CMOS Web カメラ(UCAM DLY300TA、ELECOM)と赤と黒のコントラストのための拡張QRコードリーダソフトウェア(QRCodeReader、Spark project20)を使うことによって、観察された赤いフォトルミネセンス放射からQRコード情報を抽出することができた。Fig.10におけるデコードウィンドウは、QRコードに記録された“NEW GLASS FORUM”を表している。高価な検知器、光学マイクロスコープとソフトウェアを必要としなかったため、システムは非常にシンプルでした。私たちは 実験において、かってない新たな不可視の2次元バーコードと赤いフォトルミネセンス放射による読み取り方法を提供した。)

c.第7頁第15行?第17行
「As an application of invisible markings, we showed the invisible QR Code fabrication in ES silica glass and reading method of the code appeared with red PL mission. The invisible QR Code system is very simple to be composed of a CMOS web camera and easily extended QR Code reader software.」
(当審訳:不可視のマーキングの応用として、ES シリカガラスの中の不可視のQRコード製造と赤いフォトルミネセンス放射で現われたコードを読む方法を示した。不可視のQRコードシステムは CMOS Web カメラと簡単な拡張QRコードリーダソフトウェアで構成されているために非常にシンプルです。)

d.
また、Fig.10には、不可視のQRコードデコーディングシステムにおいて、「UV Light」で照らされて赤く発光しているQRコードパターンを、ノートPCと別装置である「Web camera」を使って撮像すること、ノートPCのディスプレイの「Decode Window」に「NEW GLASS FORUM」と表示されることが示されている。

上記下線部の記載及びFig.10の記載を技術的常識に照らせば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「“NEW GLASS FORUM”という情報が記録されている実際のQRコードパターンに基づいて、ES シリカガラスの内側に不可視のQRコードを製造し、254ナノメートルのUVライトの下ではQRコードパターンが赤いフォトルミネセンス放射により明りょうに観察され、他方、白い光の下では、サンプルは透明のままで、QRコードパターンは不可視であり、
前記赤いフォトルミネセンス放射をCMOS Web カメラで撮影し、赤と黒のコードを読むための拡張QRコードリーダソフトウェアを使ってQRコード情報をデコードし、ノートPCのディスプレイの「Decode Window」に「NEW GLASS FORUM」と表示する不可視のQRコードデコーディングシステム。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2005/178841号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
a.[0067]第1行
「[0067] The emission filter 6 shapes the optical emission spectrum of the excited Mark.」
(当審訳:エミッションフィルタ6は励起されたマークの視覚的放射スペクトルを形成する。)

b.[0067]第7行?第8行
「The emission Filter must pass spectral power in the emission wavelength bands of the Mark luminescence.」
(当審訳:エミッションフィルタはマーク発光の放射光波長域でのスペクトルエネルギーを通過させなければならない。)

c.[0068]第1行?第2行
「[0068] The light that passes through the Emission Filter may be further formatted spatially by a Scanning element.」
(エミッションフィルタを通過する光はさらに走査要素によって空間的にフォーマットされる。)

d.[0091]第20行?第25行
「Dyes labeled # 5 (green emission, short wavelength UV), and # 6 (red emission, short wavelength UV) were also used. All of these ink jet printed compositions showed bright luminescence under the respective UV illuminations and provided well solved spectral images of variety of printed 1D and 2D bar codes.」
(当審訳:# 5(緑の放射光、短波長UV)と # 6(赤い放射光、短波長UV)というラベルの染料が使われた。これらすべてのインクジェットによってプリントされた構造はそれぞれ、UV 照明 の下で明るい発光を示し、そしてプリントされた色々な 1次元 と2次元バーコードを解析したスペクトル画像を提供した。)

e.[0092]第1行?第4行
「[0092] In this embodiment, the convert barcode emits luminescence with unique spectral, spatial and temporal properties. The emitted light is collected, filtered, and focused onto a standard silicon photodiode detector.」
(当審訳:この実施例において、コンバートバーコードは、固有のスペクトル、空間的、時間的な特性で光を放出します。 放出された光は集められて、フィルタされ、そして標準的なシリコンフォトダイオード検出器にフォーカスされる。)

f.[0094]第4行?第12行
「The device is placed near or contact with a surface 4(e.g. paper) that may contain arbitrarily shaped convert marks 5.A Xenon flashlamp 3 is employed as source of fast pulses of ultraviolet light. A UV excitation filter is chosen with a band-pass that contains the excitation(absorption) spectra of both the luminescent compounds.The emission filters are chosen to provide optimum matching of the compound’s emission characteristics.」
(当審訳:装置は、任意に形成されたコンバートマーク5を含む表面4(例えば、紙)の近くに配置されるか接触される。キセノンフラシュランプ3が紫外光の速いパルス源として用いられる。UV励起フィルタが両方の発光性の化合物の励起(吸収)スペクトルを含むバンドパスで選択される。エミッションフィルタは、化合物の放射光の特徴と最も一致するように選ばれる。)

上記記載及びFigure7、Figure13によれば、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「コンバートバーコードは、UV光の下で固有のスペクトルで発光し、エミッションフィルタは、前記固有のスペクトルの波長域と最も一致するように選ばれ、エミッションフィルタを通過した光は標準的なシリコン フォトダイオード検出器にフォーカスされ、コンバートバーコードは、標準的な白い紙の上に、インクジェットプリントされ、インクの染料は、ラベル#5(緑の放射光,短波長UV)とラベル#6(赤の放射光,短波長UV)が使われること。」

イ.対比
補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「ES シリカガラス」は、「内側に不可視のQRコードを製造」するから、補正発明の「光を透過する透明性のコード形成対象物」に相当し、引用発明の「ES シリカガラスの内側に不可視のQRコードを製造」することは、補正発明の「前記コード形成対象物の内部に情報コードが形成」されることに相当する。
(イ)引用発明の「白い光の下では、サンプルは透明のままで」あることは、補正発明の「前記コード形成対象物に対して可視光が当てられているときに前記情報コードが表示されずに当該コード形成対象物が透明状態で維持」されることに相当するといえる。
(ウ)引用発明の「254ナノメートルのUVライトの下ではQRコードが赤のフォトルミネセンス放射により明りょうに観察」されることは、不可視のQRコードの元になっている実際のQRコード(図9(a))が白い背景上に正方形のパターンで配置される黒いモジュール(「暗色セル」に相当する。)からなっているから、補正発明の「前記コード形成対象物に対して可視光の波長帯とは異なる第1波長帯の照射光が当てられたときに所定色の可視光の波長帯で情報コードを構成する複数の暗色セル及び明色セルのうち各暗色セルの部分が発光する」ことに相当するといえる。
(エ)上記(イ)、(ウ)から、引用発明の「内側に不可視のQRコードを製造」した「ES シリカガラス」は、補正発明の「前記コード形成対象物に対して可視光が当てられているときに前記情報コードが表示されずに当該コード形成対象物が透明状態で維持され、前記コード形成対象物に対して可視光の波長帯とは異なる第1波長帯の照射光が当てられたときに所定色の可視光の波長帯で情報コードを構成する複数の暗色セル及び明色セルのうち各暗色セルの部分が発光する情報コード表示体」に相当するといえる。
(オ)引用発明は「254ナノメートルのUVライトの下ではQRコードが赤のフォトルミネセンス放射により明りょうに観察」されているから、UVライトの光源を有していることは明らかであり、当該UVライトの光源は、補正発明の「前記第1波長帯の照明光を照射する照明光源」に相当する。そして、引用発明の「CMOS Web カメラ」は、赤のフォトルミネセンス放射によるQRコードを撮影しているから、引用発明のUVライトの光源は、「CMOS Web カメラ」の撮像範囲に対して「UVライト」を照射していることも明らかであり、このことは、補正発明の「前記照明光源は、前記受光センサを収容するケースとは別体の照明器具として構成されて、前記受光センサによる撮像範囲に対して前記第1波長帯の照明光を照射する」ことと、「前記照明光源は、前記受光センサによる撮像範囲に対して前記第1波長帯の照明光を照射する」点では共通するといえる。
(カ)引用発明の「CMOS Web カメラ」は、赤のフォトルミネセンス放射によるQRコードを撮影しているから、当該「CMOS Web カメラ」の撮像部は、補正発明の「前記情報コード表示体に対して前記第1波長帯の照明光が照射されているときに、前記波長選択フィルタを透過した前記情報コードからの前記所定色の可視光を受光する受光センサ」と、「前記情報コード表示体に対して前記第1波長帯の照明光が照射されているときに、前記情報コードからの前記所定色の可視光を受光する受光センサ」である点では共通するといえる。
(キ)引用発明の「赤と黒のコードを読むための拡張QRコードリーダソフトウェア」は、ノートPCと協働して、CMOS Web カメラで撮影した赤と黒のコードの画像に基づいて「QRコード情報をデコード」していることは明らかであるから、補正発明の「前記受光センサによる前記所定色の光の受光結果に基づいて前記情報コードを解読する解読手段」に相当し、受光センサの「受光領域での受光結果に基づいて前記情報コードを解読」しているといえる。
(ク)上記(オ)?(キ)によれば、引用発明は、後述する相違点を除き、補正発明の「前記情報コード表示体に形成された前記情報コードを読み取る情報コード読取装置」に相当する構成を備えているといえる。
(ケ)引用発明の「不可視のQRコードデコーディングシステム」は、後述する相違点を除き、補正発明の「情報コード読取システム」に相当するといえる。

したがって、引用発明と補正発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「光を透過する透明性のコード形成対象物を有すると共に、前記コード形成対象物の内部に情報コードが形成され、前記コード形成対象物に対して可視光が当てられているときに前記情報コードが表示されずに当該コード形成対象物が透明状態で維持され、前記コード形成対象物に対して可視光の波長帯とは異なる第1波長帯の照射光が当てられたときに所定色の可視光の波長帯で情報コードを構成する複数の暗色セル及び明色セルのうち各暗色セルの部分が発光する情報コード表示体と、
前記情報コード表示体に形成された前記情報コードを読み取る情報コード読取装置と、
を備え、
前記情報コード読取装置は、
前記第1波長帯の照明光を照射する照明光源と、
前記情報コード表示体に対して前記第1波長帯の照明光が照射されているときに、前記情報コードからの所定色の可視光を受光する受光センサと、
前記受光センサによる前記所定色の光の受光結果に基づいて前記情報コードを解読する解読手段と、を有し、
前記解読手段は、前記受光センサの受光領域での受光結果に基づいて前記情報コードを解読し、前記照明光源は、前記受光センサによる撮像範囲に対して前記第1波長帯の照明光を照射することを特徴とする情報コード読取システム。」

(相違点1)
情報コード読取装置は、補正発明では、「前記所定色の可視光の透過度合いが、前記所定色とは波長帯の異なる他色の可視光の透過度合いよりも大きくなるように構成された波長選択フィルタ」を有し、「受光センサ」が「前記波長選択フィルタを透過した前記情報コードからの前記所定色の可視光を受光」するものであって、「所定範囲に亘る受光領域全体に前記波長選択フィルタを透過した光が入射するように構成」されているのに対し、引用発明では、「波長選択フィルタ」を有しておらず、「CMOS Web カメラ」が「波長選択フィルタを透過した前記情報コードからの前記所定色の可視光を受光する」ものではなく、「所定範囲に亘る受光領域全体に波長選択フィルタを透過した光が入射するように構成」されていない点。

(相違点2)
「照明光源」は、補正発明では、「前記受光センサを収容するケースとは別体の照明器具として構成されて」いるのに対し、引用発明では、照明光源の構成が特定されていない点。

ウ.判断
まず相違点1について検討する。
引用文献2記載の技術的事項には、光検出器の前にエミッションフィルタを配置し、当該エミッションフィルタは、UV光の下でコンバートコードが放出する赤い光の固有のスペクトルの波長域と最も一致するように選ぶことが含まれており、引用発明もUVライトの下においてQRコードパターンの赤いフォトルミネセンス放射を撮像するものであるから、引用発明に上記引用文献2記載の技術的事項を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
引用発明に上記引用文献2記載の技術的事項を採用すれば、引用発明において、「CMOS Web カメラ」の撮像部の前面に、赤色の可視光の透過度合いが、他色の可視光の透過度合いよりも大きくなるように構成された波長選択フィルタを配置することになり、撮像部の所定範囲に亘る受光領域全体に前記波長選択フィルタを透過した光が入射するように構成されることになることは明らかである。

次に相違点2について検討する。
引用文献1には、「UVライト」を発生する光源の具体的構成は記載されていないが、「CMOS Web カメラ」は、「CMOS Web カメラ(UCAM DLY300TA、ELECOM)」と記載されており、Fig.10を参照すれば、「CMOS Web カメラ」と「UVライト」を発生する光源は、一体的に構成されていないことは明らかである。そうすると、引用発明の「UVライト」を発生する光源は、「前記受光センサを収容するケースとは別体の照明器具として構成」されているといえるから、この点は実質的な相違点とは認められない。

そして、補正発明の奏する作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術的事項から当業者であれば予想できる範囲内のものである。

したがって、補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術的事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない発明である。

エ.結論
以上のとおり、本件補正は,特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
以上のとおり、平成28年9月5日付けの手続補正は却下されたので、本願発明は、平成28年4月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
光を透過する透明性のコード形成対象物を有すると共に、前記コード形成対象物の内部に情報コードが形成され、前記コード形成対象物に対して可視光が当てられているときに前記情報コードが表示されずに当該コード形成対象物が透明状態で維持され、前記コード形成対象物に対して可視光の波長帯とは異なる第1波長帯の照射光が当てられたときに所定色の可視光の波長帯で情報コードの部分が発光する情報コード表示体と、
前記情報コード表示体に形成された前記情報コードを読み取る情報コード読取装置と、
を備え、
前記情報コード読取装置は、
前記第1波長帯の照明光を照射する照明光源と、
前記所定色の可視光の透過度合いが、前記所定色とは波長帯の異なる他色の可視光の透過度合いよりも大きくなるように構成された波長選択フィルタと、
前記情報コード表示体に対して前記第1波長帯の照明光が照射されているときに、前記波長選択フィルタを透過した前記情報コードからの前記所定色の可視光を受光する受光センサと、
前記受光センサによる前記所定色の光の受光結果に基づいて前記情報コードを解読する解読手段と、を有し、
前記受光センサは、所定範囲に亘る受光領域全体に前記波長選択フィルタを透過した光が入射するように構成されており、
前記解読手段は、前記受光領域での受光結果に基づいて前記情報コードを解読し、
前記照明光源は、前記受光センサを収容するケースとは別体の照明器具として構成されて、前記受光センサによる撮像範囲に対して前記第1波長帯の照明光を照射することを特徴とする情報コード読取システム。」

(2)引用文献・引用発明等
引用文献・引用発明及び引用文献2記載の技術的事項は、前記「第2 平成28年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定」、[理由]、「(2)補正の適否」、「ア.引用文献」の「(1)引用文献・引用発明」、「(2)引用文献2」の欄で説明したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「第2 平成28年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定」、[理由]、「(2)補正の適否」、「イ.対比」の欄で引用発明と対比した「補正発明」から、「情報コードを構成する複数の暗色セル及び明色セルのうち各暗色セルの部分が発光する」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正発明が、上記「第2 平成28年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-13 
結審通知日 2017-09-19 
審決日 2017-10-02 
出願番号 特願2012-214465(P2012-214465)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 正悟  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山澤 宏
和田 志郎
発明の名称 情報コード読取システム及び情報コード読取装置  
代理人 田下 明人  

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