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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H02K 審判 全部申し立て 2項進歩性 H02K |
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管理番号 | 1335121 |
異議申立番号 | 異議2016-700431 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-05-16 |
確定日 | 2017-10-04 |
異議申立件数 | 3 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5816822号発明「モータおよびそれを搭載した電気機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5816822号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正することを認める。 特許第5816822号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第5816822号に係る出願は、2011年3月24日(優先権主張2010年3月25日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月9日に特許の設定登録がなされた。 これに対して、特許異議申立人橋爪慎哉より、平成28年5月16日に、本件請求項1ないし9に係る発明の特許について特許異議の申立(01)がなされ、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所より、平成28年5月17日に、本件請求項1ないし9に係る発明の特許について特許異議の申立(02)がなされ、特許異議申立人梅森嘉匡より、平成28年5月18日に、本件請求項1ないし9に係る発明の特許について特許異議の申立(03)がなされ、平成28年8月26日付で取消理由が通知され(発送日:平成28年8月31日)、これに対し特許権者より平成28年10月20日付で意見書及び訂正請求書が提出され、平成28年11月9日付で訂正拒絶理由が通知され(発送日:平成28年11月15日)、これに対し特許権者より平成28年12月14日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月27日付で取消理由(決定の予告)が通知され(発送日:平成29年3月3日)、これに対し特許権者より平成29年4月24日付で意見書及び訂正請求書が提出され、特許異議申立人に対して平成29年5月8日付で訂正があった旨の通知が通知され(発送日:平成29年5月12日)、これに対し、特許異議申立人橋爪慎哉より平成29年6月8日付で意見書が提出され、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所より平成29年6月9日付で意見書が提出されたものである。 2.平成29年4月24日付訂正請求書による訂正についての判断 (1)訂正の内容 訂正事項1:請求項1に係る「(2/3)M<P<(4/3)M、かつM≠Pとし、ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、0.18<(t1/DS)<0.25とした」を、「P=(10/12)Mとし、ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、0.18<(t1/DS)≦0.215とした」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.一群の請求項について 訂正前の請求項1?9について、訂正前の請求項2?9は、訂正前の請求項1を引用しているものであるから、これらの訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。 イ.訂正の適否 a 訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 上記aに記載したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 上記aの理由から明らかなように、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 d 本件は、訂正前の全ての請求項1?9について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)むすび したがって、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 3.特許異議の申立について (1)本件発明 本件訂正により訂正された請求項1ないし9に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等といい、請求項1ないし9に係る発明を「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 磁極数をPとする永久磁石を有するロータと、前記永久磁石に空隙を介して対向するように周方向にM個のティースを配置したステータとを備えたインナロータ型のモータであって、 前記ステータは、前記M個のティースを備えたステータコアと、前記ティースそれぞれに巻回した巻線とを含み、 前記磁極数Pと前記ティース数Mとの関係を、 P=(10/12)Mとし、 テータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、 0.18<(t1/DS)≦0.215としたことを特徴とするモータ。 【請求項2】 前記ステータコアは、複数の磁性薄板を厚さ方向に積層して構成したことを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項3】 前記ティースに巻回されている巻線は、占積率が60%以上であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項4】 前記ステータは樹脂でモールドされていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項5】 前記永久磁石は、リング磁石であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項6】 前記永久磁石は、希土類ボンド磁石であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項7】 前記永久磁石は周方向に表面磁束波形が略矩形状に着磁されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項8】 モータ効率の低下が最高値から0.2%以内であり、かつ、コギングトルクが2mNm以下である請求項1に記載のモータ。 【請求項9】 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のモータを搭載したことを特徴とする電気機器。」 (2)取消理由 訂正前の請求項1ないし9に係る特許に対して平成29年2月27日付で通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 「請求項1、5、8、9に係る発明は、刊行物1[特開2009-44913号公報(申立番号01甲第1号証)]に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、又、請求項2-4、6、7、9に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?9に係る特許は取り消されるべきものである。」 (3)刊行物1(申立番号01甲第1号証) 刊行物1には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 a「図1に示すように、EPS1のハウジング2は、略円筒形状に形成されている。ハウジング2には、ステアリング操作により回転するピニオン軸3の先端が内挿されている。」(【0014】) b「更に、ハウジング2には、ラック軸4と同軸にモータ(モータ装置)5が配置されている。本実施形態では、モータ5には、回転子側に界磁用永久磁石が設けられた回転界磁型モータ(ブラシレスモータ)が用いられている。EPS1は、ステアリング操作に伴ってモータ5を駆動制御することにより、ラック軸4の往復動にアシスト力を付与する。 図2に示すように、モータ5のステータ11は円環状に形成され、ハウジング2の内周面2aに固着されている。ステータ11のステータコア12は、円筒部13が環状に形成され、その円筒部13から径方向内側に向かって複数のティース14が突出形成されている。ティース14は、周方向に等角度間隔に形成されている。各ティース14にはインシュレータ15を介して巻線コイル17が巻回されている。ステータコア12は、円筒部13がティース14毎に周方向に分割された複数(本実施形態では12個)の分割コア30により構成されている。そして、ステータコア12は、円環状に配列した分割コア30を加熱したハウジング2内に挿入する、所謂焼きばめによりハウジング2に固定されている。 ステータ11の内側には、ロータ21が配設されている。ロータ21のモータシャフト22は中空筒状に形成され、その外周面には、ティース14の先端と対向するように周方向に複数の磁極(本実施形態では、10極)を有する界磁石としてのリング磁石23が外嵌されている。」(【0015】-【0017】) c「突出部31aの先端から突出部31bの先端までの周方向に沿った長さ(円弧長さ)は、1つのスロット32当たりの内周円の長さ(隣り合うティース14の周方向中心間の円弧長さ)よりも短く設定されている。従って、隣り合うティース14に形成された突出部31a,31b間には隙間33が形成される。周方向に沿った隙間を、スロットオープンといい、1つのスロット32当たりの内周円の長さに対するスロットオープン長さの比をスロットオープン比という。このスロットオープン比αは、1つのスロット32当たりの内周円の長さをD1、スロットオープン長さをD2とすると、 α=(D2/D1)×100 により求められる。」(【0020】-【0021】) d「このモータ5を使用したEPS1の使用上によりコギングトルクに対する第1の設定値とトルクリプルに対する第2の設定値が設定される。そして、12次のコギングトルクが第1の所定値より小さく、且つ30次のトルクリプルが第2の所定値より小さい範囲、つまり、スロットオープン比αが、値α1から値α2までの範囲(例えば、9?11[パーセント])となるようにモータ5を形成する。これにより、コギングトルクを低減するとともにトルクリプルの増加を抑え、操作フィーリングが向上した電動パワーステアリング装置を得ることができる。」(【0024】) 上記記載事項及び図面を参照すると、ステータのティースがリング磁石に空隙を介して対向するように配置されたインナロータ型のモータである。 上記記載事項及び図面を参照すると、ステータ内径DS、ティース先端部幅t1、ティースの数が12個とすると、(t1/DS)は、1つのスロット当たりの内周円の長さD1、スロットオープン長さD2、スロットオープン比αを用いると、t1=(1-α)D1、D1=πDS/12から、t1/DS=π(1-α)/12となり、α=9%のときt1/DS=0.238、α=11%のときt1/DS=0.233となる。 上記記載事項からみて、刊行物1には、 「磁極数をP=10とするリング磁石を有するロータと、前記リング磁石に空隙を介して対向するように周方向にM=12個のティースを配置したステータとを備えたインナロータ型のモータであって、 前記ステータは、前記M=12個のティースが形成されたステータコアと、前記各ティースに巻回した巻線コイルとを含み、 前記磁極数P=10と前記ティース数M=12との関係を、 P=(10/12)Mとし、 ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、 0.18<(t1/DS)=0.233?0.238<0.25としたモータ。」 との発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。 (4)判断 (4-1)特許法第29条第1項第3号 本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明は、「ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、0.18<(t1/DS)≦0.215とした」事項を有していないから、本件発明1は、刊行物1発明と同一とすることはできない。本件発明5、8、9も同様である。 (4-2)特許法第29条第2項 本件発明2と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明は、「ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、0.18<(t1/DS)≦0.215とした」事項を有していない。そして、当該事項により、本件発明2は、コギングトルクを低減するとともに効率の低下を抑えることができるという効果を奏するものであり、本件発明2は、刊行物1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。本件発明3、4、6、7、9も同様である。 (4-3)特許異議申立人の意見 特許異議申立人橋爪慎哉は、訂正事項1に関し、本件明細書に記載されたものではない旨主張しているが、「2.(2)」で述べたように、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所は、訂正事項1に関し、参考資料1[特開2000-209829号公報(申立番号02甲第12号証)]に記載された発明と同一である旨主張するが、訂正事項1の「P=(10/12)Mとし、テータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、0.18<(t1/DS)≦0.215とした」は、訂正前の「(2/3)M<P<(4/3)M、かつM≠Pとし、ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、0.18<(t1/DS)<0.25とした」の範囲に含まれるものであるから、当該主張は特許異議申立時に主張できる事項であり、時機を失した主張であり採用できない。しかも、参考資料1に記載のモータは、コギングトルクの低減を固定子鉄心歯部先端部を円弧形状とすることにより行うものであり、「ロータの永久磁石に空隙を介して対向するように周方向にティースを配置するステータを有するモータ」ものではないから、この点から判断しても当該主張は採用できない。 (4-4)取消理由に採用しなかった特許異議申立理由 特許異議申立人橋爪慎哉、特許業務法人虎ノ門知的財産事務所、梅森嘉匡は、訂正前の特許請求の範囲に係る発明に関し証拠を提出して、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、又、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?9に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。しかし、提出された何れの証拠にも「ロータの永久磁石に空隙を介して対向するように周方向にティースを配置するステータを有するモータ」において「ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、0.18<(t1/DS)≦0.215とした」ことは記載されていないから、上述のように、本件発明は特許異議申立人により提出された証拠に記載された発明と同一とすることはできず、又、本件発明は特許異議申立人により提出された証拠に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 磁極数をPとする永久磁石を有するロータと、前記永久磁石に空隙を介して対向するように周方向にM個のティースを配置したステータとを備えたインナロータ型のモータであって、 前記ステータは、前記M個のティースを備えたステータコアと、前記ティースそれぞれに巻回した巻線とを含み、 前記磁極数Pと前記ティース数Mとの関係を、 P=(10/12)Mとし、 ステータ内径DSに対するティース先端部幅t1の比(t1/DS)を、 0.18<(t1/DS)≦0.215としたことを特徴とするモータ。 【請求項2】 前記ステータコアは、複数の磁性薄板を厚さ方向に積層して構成したことを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項3】 前記ティースに巻回されている巻線は、占積率が60%以上であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項4】 前記ステータは樹脂でモールドされていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項5】 前記永久磁石は、リング磁石であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項6】 前記永久磁石は、希土類ボンド磁石であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項7】 前記永久磁石は周方向に表面磁束波形が略矩形状に着磁されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。 【請求項8】 モータ効率の低下が最高値から0.2%以内であり、かつ、コギングトルクが2mNm以下である請求項1に記載のモータ。 【請求項9】 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のモータを搭載したことを特徴とする電気機器。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-09-22 |
出願番号 | 特願2012-506853(P2012-506853) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H02K)
P 1 651・ 113- YAA (H02K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | マキロイ 寛済 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 堀川 一郎 |
登録日 | 2015-10-09 |
登録番号 | 特許第5816822号(P5816822) |
権利者 | パナソニックIPマネジメント株式会社 |
発明の名称 | モータおよびそれを搭載した電気機器 |
代理人 | 鎌田 健司 |
代理人 | 前田 浩夫 |
代理人 | 前田 浩夫 |
代理人 | 特許業務法人有古特許事務所 |
代理人 | 鎌田 健司 |
代理人 | 特許業務法人 有古特許事務所 |
代理人 | 藤井 兼太郎 |
代理人 | 藤井 兼太郎 |