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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C09B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09B
管理番号 1335131
異議申立番号 異議2016-701098  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-25 
確定日 2017-10-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5924282号発明「着色組成物、カラーフィルタ及び表示素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5924282号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲(平成29年6月7日付けの手続補正による補正後のもの)のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕及び〔11?13〕について訂正することを認める。 特許第5924282号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 特許第5924282号の請求項2?13に係る特許を維持する。 
理由
第1 手続の経緯

特許第5924282号の請求項1?13に係る特許(以下それぞれ「本件特許1」?「本件特許13」といい、これらを併せて「本件特許」という
。)についての出願は、平成25年2月8日(特許法第41条第1項の規定に基づく優先権主張 平成24年4月18日)にJSR株式会社(以下「特許権者」という。)により出願され、平成28年4月28日にその特許権の設定登録がされ、同年5月25日に特許公報の発行がされ、その後、本件特許1?13に対し、平成28年11月25日に特許異議申立人伊藤範子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
そして、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年11月25日 特許異議申立書
平成29年 1月13日付け 取消理由通知
同年 3月13日 意見書、訂正請求書(特許権者)
同年 3月29日付け 手続補正指令
同年 4月20日 手続補正書(特許権者)
同年 5月 8日付け 訂正拒絶理由通知
同年 6月 7日 意見書、手続補正書(特許権者)
同年 6月16日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、平成29年6月16日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、特許異議申立人は、特許法第120条の5第5項の規定により審判長が指定した期間内に意見書を提出しなかった。

第2 訂正の適否

1 はじめに

平成29年3月13日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)の平成29年4月20日付けの補正は特許法第120条の5第9項で準用する同法131条の2第1項の規定に適合すると認められるので、まず本件訂正請求書の同年6月7日付けの補正(以下「本件補正」という。)が同法同条同項の規定に適合するかを検討し、その上で本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否について検討する。

2 本件補正が特許法131条の2第1項の規定に適合するか

(1)本件補正の内容

本件補正は、本件補正前の本件訂正の内容である訂正事項A^(1)?F^(1)及びA^(2)?E^(2)について、訂正事項A^(1)?D^(1)及び訂正事項E^(2)の削除(補正事項1?4及び30)、訂正事項I^(1)の追加による訂正事項F^(1)の変更(補正事項7)並びに訂正事項G^(1)、H^(1)及びJ^(1)?N^(1)の追加(補正事項5、6及び8?12)をするとともに、請求の理由の変更(補正事項13?29及び31?34)をするものであると認める。
そして、訂正事項I^(1)の追加による変更後の訂正事項F^(1)並びに追加される訂正事項G^(1)、H^(1)及びJ^(1)?N^(1)は、以下のとおりである。

ア 訂正事項F^(1)

訂正前の請求項4に「(B)共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000?100,000である、請求項1?3のいずれか1項に記載の着色組成物。」とあるを、「カラーフィルタ用である、請求項2又は3に記載の着色組成物。」と訂正する。

イ 訂正事項G^(1)

訂正前の請求項1を削除する。

ウ 訂正事項H^(1)

訂正前の請求項3に「請求項1又は2に記載の着色組成物。」とあるを、「請求項2に記載の着色組成物。」と訂正する。

エ 訂正事項J^(1)

訂正前の請求項5に「請求項1?4のいずれか1項に記載の着色組成物。」とあるを、「請求項2?4のいずれか1項に記載の着色組成物。」と訂正する。

オ 訂正事項K^(1)

訂正前の請求項6に「請求項1?5のいずれか1項に記載の着色組成物。」とあるを、「請求項2?5のいずれか1項に記載の着色組成物。」と訂正する。

カ 訂正事項L^(1)

訂正前の請求項7に「請求項1?6のいずれか1項に記載の着色組成物。」とあるを、「請求項2?6のいずれか1項に記載の着色組成物。」と訂正する。

キ 訂正事項M^(1)

訂正前の請求項8に「請求項1?7のいずれか1項に記載の着色組成物。」とあるを、「請求項2?7のいずれか1項に記載の着色組成物。」と訂正する。

ク 訂正事項N^(1)

訂正前の請求項9に「請求項1?8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された着色層を備えてなるカラーフィルタ。」とあるを、「請求項2?8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された着色層を備えてなるカラーフィルタ。」と訂正する。

(2)本件補正による請求の趣旨の補正についての判断

ア 訂正事項A^(1)?D^(1)の削除及び訂正事項G^(1)の追加について

訂正事項A^(1)?D^(1)の削除及び訂正事項G^(1)の追加は、全体として、訂正前の請求項1を削除するものである点で、審理対象を拡張し又は変更するものではないから、本件訂正請求書の要旨を変更するものではない。

イ 訂正事項F^(1)の変更及び訂正事項H^(1)?N^(1)の追加について

訂正事項F^(1)の変更及び訂正事項H^(1)?N^(1)の追加は、いずれも、上記アで述べた訂正前の請求項1の削除に整合させるためのものである点で、審理対象を拡張し又は変更するものではないから、本件訂正請求書の要旨を変更するものではない。

ウ 訂正事項E^(2)の削除について

訂正事項E^(2)の削除により、概略、繰り返し単位(1)?(3)を有するA-Bブロック共重合体である共重合体(B)について、A-Bブロック共重合体であるという特定がなくなり、主鎖に繰り返し単位(1)?(3)を有するものに拡張される。
しかし、本件補正の対象となっていない訂正事項E^(1)による訂正後の請求項2が、概略主鎖に繰り返し単位(1)?(3)有する共重合体(B)を発明特定事項とするものであることに照らし、上記拡張が審理対象を拡張し又は変更するものであるとまではいえないから、訂正事項E^(2)の削除が本件訂正請求書の要旨を変更するものであるとまではいえない。

(3)本件補正が特許法131条の2第1項の規定に適合するかについてのまとめ

上記(2)ア?ウで述べたところから、本件補正による請求の趣旨の補正が本件訂正請求書の要旨を変更するものであるとはいえない。
また、本件補正による請求の理由の補正は特許法第131条の2ただし書第1号に該当する。
よって、本件補正は特許法第120条の5第9項で準用する同法131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。

3 本件訂正の適否について

(1)本件訂正の請求の趣旨及びその内容

上記2で述べたとおり、本件訂正請求書についての本件補正を認めたので、本件訂正の請求の趣旨は「特許第5924282号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した特許請求の範囲(平成29年6月7日付けの手続補正書に添付したもの)のとおり、訂正後の請求項1?10、11?13について訂正することを求める。」というものであって、その内容は以下の訂正事項E^(1)及びG^(1)?N^(1)並びに訂正事項A^(2)?D^(2)からなるものである。

ア 訂正事項E^(1)

訂正前の請求項2に
「前記(B)共重合体が、更に下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有する、請求項1に記載の着色組成物。
【化2】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化3】

〔式(2)において、
R^(4)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(5)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕」
とあるを、
「(A)レーキ顔料を含む着色剤、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(3)で表される含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を与える単量体とを含む単量体の共重合体、及び、
(C)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなる架橋剤
を含有し、
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系レーキ顔料及びキサンテン系レーキ顔料から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(B)共重合体は、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体の含有割合が、全繰り返し単位中に、5?80%であり、
前記(B)共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000?100,000である、
着色組成物。
【化1】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化2】

〔式(2)において、
R^(4)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(5)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【化3】

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕」
と訂正する。

イ 訂正事項F^(1)?H^(1)及びJ^(1)?N^(1)

上記2(1)ア?クで述べたとおりである。

ウ 訂正事項A^(2)

訂正前の請求項11に
「(B)含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を含む共重合体」
とあるを、
「(B)下記式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(3)で表される含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を与える単量体とを含む単量体の共重合体」
と訂正する。

エ 訂正事項B^(2)

訂正前の請求項11の「前記レーキ顔料が、・・・少なくとも1種であり、」と、「含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位が、下記式(3)で表される繰り返し単位である、」との記載の間に、「前記(B)共重合体は、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体の含有割合が、全繰り返し単位中に、5?80%である、」との記載を付加する。

オ 訂正事項C^(2)

訂正前の請求項11における「含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位が、下記式(3)で表される繰り返し単位である、」との記載を削除する。

カ 訂正事項D^(2)

訂正前の請求項11に
「【化4】

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕」
とあるを、
「【化4】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化5】

〔式(2)において、
R^(4)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(5)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【化6】

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕」
と訂正する。

(2)本件訂正請求は一群の請求項ごとにするものか

訂正後の請求項1?10に対応する訂正前の請求項1?10は、訂正前の請求項2?10が、直接的又は間接的に訂正前の請求項1を引用するものであって、訂正事項G^(1)によって記載が訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項(以下「一群の請求項」という。)である。
また、訂正後の請求項11?13に対応する訂正前の請求項11?13は、訂正前の請求項12及び13が、直接的又は間接的に訂正前の請求項11を引用するものであって、訂正事項A^(2)?D^(2)によって記載が訂正される訂正前の請求項11に連動して訂正されるものであるから、やはり、一群の請求項である。
これに対し、本件訂正請求は、上記(1)頭書きで述べたとおり訂正後の請求項1?10、11?13について訂正することを求めるものである。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求するものである。

(3)本件訂正に係る各訂正事項が各訂正要件に適合するか

ア 訂正前の請求項1?10に係る各訂正事項について

(ア)訂正事項G^(1)について

訂正事項G^(1)は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項本文及び同法同条第6項の規定に適合する。

(イ)訂正事項H^(1)及びJ^(1)?N^(1)について

訂正事項H^(1)及びJ^(1)?N^(1)は、いずれも、請求項1の削除に伴い訂正前の請求項1との引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項本文及び同法同条第6項の規定に適合する。

(ウ)訂正事項E^(1)について

a 訂正の目的

訂正事項E^(1)は、
(a)共重合体の、繰り返し単位(1)?(3)を主鎖に含むものへの限定
(b)共重合体の、繰り返し単位(2)の含有割合の限定
(c)共重合体の、分子量の限定
(d)請求項1の削除に伴う引用関係の解消
をするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。

b 訂正の根拠

上記a(a)は、本件特許明細書の【0073】の「(B)共重合体は・・・例えば、上記各繰り返し単位を導入する単量体を、リビング重合することにより製造することができる」との記載及び【0141】?【0146】の実施例の記載を根拠とするものであるといえる。
また、上記a(b)は、本件特許明細書の【0065】の「(B)共重合体において・・・繰り返し単位(2)の含有割合は、分散性の観点から、全繰り返し単位中に、5?80質量%・・・であることが好ましい。」との記載を根拠とするものであるといえる。
さらに、上記a(c)は、本件特許明細書の【0071】の「(B)共重合体は・・・ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000?100,000・・・である。このような態様とすることにより、耐熱性と耐溶剤性を高水準で両立することができる。」との記載を根拠とするものであるといえる。
以上から、訂正事項E^(1)は、本件特許に係る明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項本文の規定に適合する。

c 特許請求の範囲の拡張・変更

上記aで述べたとおり、訂正事項E^(1)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項E^(1)は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(エ)訂正事項F^(1)について

a 訂正の目的

訂正事項F^(1)は、
(a)着色組成物の、用途の限定
(b)訂正後の請求項4が直接的に又は請求項3を介して間接的に引用するする訂正後の請求項2に「(B)共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000?100,000である、」という記載が追加されることと整合させるための、同様の記載の削除
(c)請求項1の削除に伴う引用関係の解消
をするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。

b 訂正の根拠

上記a(a)は、本件特許明細書の【0001】の「本発明は、着色組成物・・・に関わり、より詳しくは・・・カラーフィルタに好適に用いられる着色組成物・・・に関する。」との記載を根拠とするものであるといえる。
したがって、訂正事項F^(1)は、本件特許に係る明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項本文の規定に適合する。

c 特許請求の範囲の拡張・変更

上記aで述べたとおり、訂正事項F^(1)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項F^(1)は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(オ)訂正前の請求項1?10に係る訂正事項についてのまとめ

以上のとおり、訂正後の請求項1?10に係る訂正事項である訂正事項E^(1)?H^(1)及びJ^(1)?N^(1)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項本文及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正後の請求項1?10に対応する訂正前の請求項1?10はいずれも特許異議の申立てがされている請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かを判断すべき請求項は存在しない。

イ 訂正前の請求項11?13に係る訂正事項について

(ア)訂正事項A^(2)、C^(2)及びD^(2)について

a 訂正の目的

訂正事項A^(2)、C^(2)及びD^(2)は、全体として、
(a)共重合体の、繰り返し単位(1)?(3)を主鎖に含むものへの限定
をするものであるから、全体として、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする。

b 訂正の根拠

上記a(a)は、本件特許明細書の【0073】の「(B)共重合体は・・・例えば、上記各繰り返し単位を導入する単量体を、リビング重合することにより製造することができる」との記載及び【0141】?【0146】の実施例の記載を根拠とするものであるといえる。
したがって、訂正事項A^(2)、C^(2)及びD^(2)は、全体として、本件特許に係る明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項本文の規定に適合する。

c 特許請求の範囲の拡張・変更

上記aで述べたとおり、訂正事項A^(2)、C^(2)及びD^(2)は、全体として、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項A^(2)、C^(2)及びD^(2)は、全体として、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(イ)訂正事項B^(2)について

a 訂正の目的

訂正事項B^(2)は、
(a)共重合体の、繰り返し単位(2)の含有割合の限定
をするものであるから、全体として、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする。

b 訂正の根拠

上記a(a)は、本件特許明細書の【0065】の「(B)共重合体において・・・繰り返し単位(2)の含有割合は、分散性の観点から、全繰り返し単位中に、5?80質量%・・・であることが好ましい。」との記載を根拠とするものであるといえる。
したがって、訂正事項B^(2)は、本件特許に係る明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項本文の規定に適合する。

c 特許請求の範囲の拡張・変更

上記aで述べたとおり、訂正事項B^(2)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項B^(2)は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(ウ)訂正前の請求項11?13に係る訂正事項についてのまとめ

以上のとおり、訂正後の請求項11?13に係る訂正事項である訂正事項訂正事項A^(2)?D^(2)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的し、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項本文及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正後の請求項11?13に対応する訂正前の請求項11?13はいずれも特許異議の申立てがされている請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かを判断すべき請求項は存在しない。

(4)本件訂正の適否についてのまとめ

上記(2)で述べたとおり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、上記(3)で述べたとおり、本件訂正に係る各訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項本文及び第6項の規定に適合するし、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かを判断すべき請求項は存在しない。
以上のとおりであるから、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲(平成29年6月7日付けの手続補正による補正後のもの)のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕及び〔11?13〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記第2で述べたとおり、訂正後の請求項〔1?10〕及び〔11?13〕について訂正を認めたので、特許第5924282号の請求項1?13に係る発明(以下それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明13」という。)は、平成29年6月7日付けの手続補正書に添付した訂正後の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
(削除)

【請求項2】
(A)レーキ顔料を含む着色剤、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(3)で表される含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を与える単量体とを含む単量体の共重合体、及び、
(C)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなる架橋剤
を含有し、
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系レーキ顔料及びキサンテン系レーキ顔料から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(B)共重合体は、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体の含有割合が、全繰り返し単位中に、5?80%であり、
前記(B)共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000?100,000である、
着色組成物。
【化1】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化2】

〔式(2)において、
R^(4)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(5)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【化3】

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕

【請求項3】
前記レーキ顔料が、ヘテロポリ酸を用いて調製されたものである、請求項2に記載の着色組成物。

【請求項4】
カラーフィルタ用である、請求項2又は3に記載の着色組成物。

【請求項5】
前記(A)着色剤として、更に顔料(但し、前記レーキ顔料を除く。)を含有する、請求項2?4のいずれか1項に記載の着色組成物。

【請求項6】
更に(D)バインダー樹脂(但し、前記(B)成分を除く。)を含有する、請求項2?5のいずれか1項に記載の着色組成物。

【請求項7】
前記(B)共重合体のアミン価が1?250mgKOH/gである、請求項2?6のいずれか1項に記載の着色組成物。

【請求項8】
前記(B)共重合体のアミン価の上限値が150mgKOH/gである、請求項2?7のいずれか1項に記載の着色組成物。

【請求項9】
請求項2?8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された着色層を備えてなるカラーフィルタ。

【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタを具備する表示素子。

【請求項11】
(a1)レーキ顔料、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(3)で表される含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を与える単量体とを含む単量体の共重合体、及び
(F)溶媒
を含有し、
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系レーキ顔料及びキサンテン系レーキ顔料から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(B)共重合体は、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体の含有割合が、全繰り返し単位中に、5?80%である、
顔料分散液
【化4】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化5】

〔式(2)において、
R^(4)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(5)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【化6】

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕

第4 特許異議申立人が申し立てた取消理由及び当審が通知した取消理由の概要

1 特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要

特許異議申立人が平成28年11月25日付けで特許異議申立書により申し立てた取消理由の概要は、以下のとおりである。

[申立取消理由1-1]
本件特許発明1、3及び9?11は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である以下の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
甲第1号証:特開2011-145346号公報
よって、本件特許1、3及び9?11は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[申立取消理由1-2]
本件特許発明4?6及び12は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許4?6及び12は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[申立取消理由2]
本件特許発明1?13は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び以下の甲第2号証の記載に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第2号証:特開2011-207963号公報
よって、本件特許1?13は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[申立取消理由3]
本件特許発明1、3?6及び9?12は、その優先日前の特許出願であってその優先日後に出願公開がされた以下の特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、その発明をした者が本件特許発明1、3?6及び9?12の発明者と同一の者ではなく、また本件出願の時に本件出願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
特願2012-073767号(甲第3号証:特開2013-203858号公報)
よって、本件特許1、3?6及び9?12は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 当審が通知した取消理由の概要

当審が平成29年1月13日付けの取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

[当審取消理由1-1]
本件特許発明1、3、4及び8?12は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件特許1、3及び9?11は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[当審取消理由1-2]
本件特許発明4、5及び12は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件特許発明6は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び刊行物5の記載に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許4?6及び12は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[当審取消理由2]
本件特許発明1?13は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明並びに甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許1?13は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[当審取消理由3]
本件特許発明1、3?6及び8?12は、先願当初明細書等に記載された発明と同一であり、その発明をした者が本件特許発明1、3?6及び8?12の発明者と同一の者ではなく、また本件出願の時に本件出願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許1、3?6及び8?12は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[当審取消理由4]
本件特許発明1?8及び11?13は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明及び甲第2号証の記載に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許1?8及び11?13は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

第5 当審の判断

上記第2及び第3で述べたとおり訂正により請求項1が削除されたため、本件特許1についての特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない特許についてのものであるから、却下すべきものである。
また、当審は、当審が平成29年1月13日付けの取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由によっては、本件特許2?13を取り消すことはできないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 特許異議申立人が提出した証拠及び平成29年1月13日付けの取消理由通知書で提示した刊行物

甲第1号証:特開2011-145346号公報
甲第2号証:特開2011-207963号公報
甲第3号証:特開2013-203858号公報
甲第4号証:国際公開第2012/039417号公報
刊行物5:特開2011-22542号公報

2 甲第1?4号証及び刊行物5の記載

(1)甲第1号証の記載

甲第1号証には、以下のとおりの記載がある。

(1a)
「【請求項1】
基材上に開口部を有する遮光部と該開口部に複数の着色層を有するカラーフィルタ基板であって、該遮光部は、近赤外線を反射する特性を有する顔料を含み、波長1000nmの近赤外線の反射率が20%以上であることを特徴とするカラーフィルタ基板。」

(1b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)現象を利用したOLED(有機発光ダイオード)やLEP(発光ポリマー)等を具備する表示装置に用いられるカラーフィルタ基板及びそれを搭載した有機EL表示装置に関する。」

(1c)
「【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のカラーフィルタ基板の一例を示す概略平面図である。
・・・
【図3】本発明のカラーフィルタ基板を搭載した有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
・・・」

(1d)
「【0014】
(2)遮光部組成物
本発明の好ましい態様によれば、カラーフィルタ基板10の遮光部を形成するための遮光部組成物は、上記の近赤外線反射顔料を溶剤に分散させた分散体である。・・・
【0015】
本発明において、顔料の分散方法は、特に限定されず、公知の分散機を用いて分散させることができる。・・・」

(1e)
「【0017】
(a)その他の成分
本発明の好ましい態様によれば、遮光部組成物は、上記の顔料以外にも、必要に応じて、溶剤、分散剤、モノマー、オリゴマー、ポリマー、重合開始剤、重合禁止剤等を適宜含むものである。」

(1f)
「【0019】
(ii)分散剤
・・・好ましい態様では、分散剤の含有量は、近赤外線反射顔料及び他の黒色顔料等の顔料の合計質量100質量部に対して10?80質量部である。」

(1g)
「【0024】
(4)着色組成物
本発明に係る着色層13を構成する各着色層に用いられる赤色着色組成物、緑色着色組成物、青色着色組成物、マゼンタ着色組成物又は黄色着色組成物は、上記の遮光部組成物の顔料を以下の染料及び/又は顔料の色材に変更することにより得られる。・・・」

(1h)
「【0027】
・・・青色着色組成物に用いる青色顔料としては、C.I.ピグメント ブルー 1、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、1、62、60等が挙げられる。青色着色組成物には、これらの青色顔料の少なくとも一種にさらに紫色顔料を混合して用いることができる。
・・・
上記の各着色組成物は、上記遮光部組成物と同様に、必要に応じて、上述の溶剤、分散剤、モノマー、オリゴマー、ポリマー、重合開始剤、重合禁止剤等を適宜含むものである。」

(1i)
「【0028】
(5)着色層
本発明に係る着色層13は、遮光部12の開口部に形成されるものであって、例えば、以下のようにして形成できる。まず、上記の各着色組成物を基材11上の遮光部12の開口部に塗布し、減圧乾燥後、プリベークして、溶剤を除去する。・・・続いて、紫外線を露光して、組成物を硬化させる。さらに、焼成することで着色層13のパターンを基材上に形成させることができる。
・・・」

(1j)
「【0050】
実施例1?6及び比較例1
0.7mmのガラス基材(旭硝子株式会社製 AN材)上に第1表及び第2表に示す遮光部組成物からなる遮光部(厚さ1.0μm)を図1に示すようにフォトリソグラフィー法により形成し、遮光部の開口部に第1表に示す赤色着色組成物からなる赤色着色層を構成する画素(厚さ2.0μm)と第1表に示す青色着色組成物からなる青色着色層を構成する画素(厚さ2.0μm)と第1表に示す緑色着色組成物からなる緑色着色層を構成する画素(厚さ2.0μm)とを図1に示すように配列し、更に図3に示すようにポリメチルメタクリレートからなる光硬化型樹脂をスピンコート法により塗布してオーバーコート層(厚さ1.5μm)を形成して実施例1?6及び比較例1の7種類のカラーフィルタ基板を作製した。これら7種類のカラーフィルタ基板を用い、反射率(1000nm)、光学濃度及び基板温度(30分後)を上記の方法に従って評価した。結果を第2表に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
(注)
1) 赤色レーキ顔料: PB48:3、商品名「Lithol Scarlet K 4165」、BASF社製
2) 青色レーキ顔料: PB1、商品名「Fanal Blue D 6390」、BASF社製
3) 緑色レーキ顔料: PG1、商品名「Fanal Green D 8330」、BASF社製
4) 分散剤: 商品名「Disperbyk 111」、ビックケミー・ジャパン株式会社製
5) モノマー: ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、商品名「SR399」、サートマー社製
6) ポリマー: 下記共重合樹脂溶液(固形分50質量%)
7) 重合開始剤: 2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、商品名「イルガキュア907」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
8) 溶剤: 3-メトキシブチルアセテート、ダイセル化学工業株式会社製

共重合樹脂溶液(固形分50質量%)の組成
・メチルメタクリレート(MMA)(株式会社クラレ製): 63質量部
・アクリル酸(AA)(株式会社日本触媒製): 12質量部
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(株式会社日本触媒製): 6質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)(純正化学株式会社製): 88質量部
・2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(商品名:ABN-R、株式会社日本ファインケム社製): 7質量部
・グリシジルメタクリレート(GMA)(日油株式会社製): 7質量部
・トリエチルアミン(和光純薬工業株式会社製): 0.4質量部
・ハイドロキノン(精工化学株式会社製): 0.2質量部」

(1k)
「【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のカラーフィルタ基板は、携帯電話等の携帯情報端末機器、カーオーディオ、テレビ用モニターやパーソナル・コンピュータ用の有機EL表示装置に好適に用いられる。」

(1l)
「【符号の説明】
【0057】
10 カラーフィルタ基板
11 基材
12 遮光部
13 着色層
13a 赤色着色層
13b 青色着色層
13c 緑色着色層
14 オーバーコート層
20 有機EL素子側基板
21 基板
22 背面電極層
23 有機EL層
23a 赤色有機EL層
23b 青色有機EL層
23c 緑色有機EL層
24 透明電極層
25 有機EL素子
25a 赤色有機EL素子
25b 青色有機EL素子
25c 緑色有機EL素子
26 絶縁層
27 シール剤
30 有機EL表示装置
【図1】

【図2】
・・・
【図3】

【図4】
・・・」

(2)甲第2号証の記載

甲第2号証には、以下のとおりの記載がある。

(2a)
「【請求項1】
少なくとも、(A)顔料、及び、(B)オキセタン環を含む構造単位と顔料吸着性基を含む構造単位とを有する高分子分散剤を含む顔料分散物。
【請求項2】
前記オキセタン環を含む構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位である請求項1に記載の顔料分散物。
【化1】

一般式(1)中、R^(1)は、水素原子、又はメチル基を表す。W^(1)は、-CO-、-COO-、-CONR_(3)-、-OCO-、又はフェニレン基を表す。R^(3)は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。X^(1)は、単結合、又は2価の連結基を表す。Y^(1)は、下記一般式(2)で表される基を表す。
【化2】

一般式(2)中、R^(21)?R^(26)は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R^(21)?R^(26)のうちいずれか1つの位置で、単結合又はR^(21)?R^(26)の水素原子が外れた連結基を介して一般式(1)のX^(1)と結合している。
【請求項3】
前記顔料吸着性基を含む構造単位が、下記一般式(3)で表される構造単位である請求項1または請求項2に記載の顔料分散物。
【化3】

一般式(3)中、R^(2)は、水素原子、又はメチル基を表す。W^(2)は、-CO-、-COO-、-CONR_(4)-、-OCO-、又はフェニレン基を表す。R^(4)は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。X^(2)は、単結合、又は2価の連結基を表す。Y^(2)は、複素環残基を表す。」

(2b)
「【0001】
本発明は、顔料分散物、該顔料分散物を用いたインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法、印刷物に関するものである。
詳しくは、分散性及び保存安定性に優れた顔料分散物、及び該顔料分散物を含み、高画質の画像を形成することが可能で、活性放射線の照射により硬化しうるインクジェット印刷に好適なインク組成物に関し、これを用いたインクジェット記録方法、及び印刷物に関するものである。」

(2c)
「【0006】
また、インク組成物をインクジェット記録用として用いる場合には、ヒートサイクル性に優れていなければならない。インクジェット記録用のインク組成物は、カートリッジ内に収納され、吐出時には液粘度を低下させるために加熱されるが、非吐出時、保存時には降温するため、加熱-冷却の繰り返し温度変化を受ける。この温度変化もまた、顔料の分散性に悪影響を与え、経時的に顔料の分散性が低下し、顔料の凝集や増粘などが生じやすくなるという問題もあった。」

(2d)
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、分散時間が短く、顔料の分散性が良好な顔料分散物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、長期間保存或いは繰り返し温度変化を経た後であっても顔料の分散安定性に優れ、かつ、硬化性に優れ、インクジェット用途に好適なインク組成物を提供することにあり、さらに該インク組成物を用いたインクジェト記録方法、印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、顔料とともに、オキセタン環を含む構造単位と顔料吸着性基を含む構造単位とを有する高分子分散剤を使用することにより、顔料の分散性に優れ、長期間保存、或いは、繰返し温度変化を経た後でも分散安定性の低下が効果的に抑制された顔料分散物が得られることを見出した。また、オキセタン環を含む構造単位と顔料吸着性基とをそれぞれ一つ以上有する高分子分散剤を使用することにより分散進行が速く、短時間の分散で、分散安定性に優れた顔料分散物が得られることを見出した。」

(2e)
「【0035】
本発明の顔料分散物が含有する(A)顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の種々の顔料を適宜選択して用いることができる。・・・
・・・
【0040】
青或いはシアン色を呈する顔料としては、例えば、・・・C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、・・・C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料・・・等が挙げられる。」

(2f)
「【0051】
<(B)オキセタン環を含む構造単位と顔料吸着性基を含む構造単位とを有する高分子分散剤(特定分散剤)>
本発明の顔料分散物は、(B)オキセタン環を含む構造単位と顔料吸着性基を含む構造単位とを有する高分子分散剤(特定分散剤)を必須成分として含む。
本発明においては、この(B)特定分散剤は、(A)顔料の分散剤として機能する。
このような(B)特定分散剤としては、オキセタン環を含む構造単位と顔料吸着性基を含む構造単位とを有するものであれば特に制限はない。」

(2g)
「【0052】
〔オキセタン環を含む構造単位〕
特定分散剤は、分子中にオキセタン環を含む構造単位を有する。オキセタン環を含む構造単位としては、オキセタン環を含む構造単位であれば、どのような構造でもよい。
オキセタン環を含む構造単位としては、下記一般式(1)で表される構造単位が好ましい。
【0053】
【化4】

【0054】
一般式(1)中、R^(1)は、水素原子、又はメチル基を表す。W^(1)は、-CO-、-COO-、-CONR_(3)-、-OCO-、又はフェニレン基を表す。R^(3)は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。X^(1)は、単結合、又は2価の連結基を表す。Y^(1)は、下記一般式(2)で表される基を表す。
・・・
【0062】
前記一般式(1)で表される構造単位を有する(B)特定分散剤は、以下のモノマーを用いて好適に合成することができるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0063】
【化6】

・・・」

(2h)
「【0064】
(B)特定分散剤が有するオキセタン環を含む構造単位の含有量は、(B)特定分散剤に対して、1質量%?30質量%であることが好ましく、1質量%?20質量%がより好ましく、1質量%?10質量%が最も好ましい。オキセタン環を含む構造単位の含有量が、この範囲において、分散進行が早く、また後述する顔料に対する特定分散剤における顔料吸着性基の含有量も十分に確保しうるので、分散性が良好で分散安定性にも優れた顔料分散物を得ることができる。さらに、オキセタン環を含む構造単位があるため、硬化した時に特定分散剤自体が硬化膜を形成するので、硬化感度に優れたインク組成物を得ることができると考えられる。」

(2i)
「【0065】
〔顔料吸着性基を含む構造単位〕
本発明において(B)特定分散剤は、顔料吸着性基を含む構成単位を含有する。
ここで顔料吸着性基としては、顔料に吸着性を有する基であれば、どのような構造の基でもよい。
また、顔料吸着性基としては、有機色素に含まれる複素環と同一又は類似の骨格を有する複素環の残基、酸性基、塩基性基などが好ましく、分散安定性の観点から有機色素に含まれる複素環と同一又は類似の骨格を有する複素環の残基(以下、適宜「特定複素環残基」と称する。)であることがより好ましい。
また、これら顔料吸着性基は、特定複素環残基、酸性基、塩基性基を2種以上組み合わせることも好ましい態様である。
・・・
【0067】
特定複素環残基としては、分子中に水素結合基を少なくとも1つ有する複素環残基が好ましく、具体例としては、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、キナクリドン、アントラキノン、フタルイミド、キナルジン、及び、キノフタロン等から水素原子を1つ除いた残基が挙げられる。これらのなかでも、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、キナクリドンおよびフタルイミドに由来する複素環残基が特に好ましい。
【0068】
このような特定複素環残基を有する構造単位としては、下記一般式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
下記一般式(3)で示される構造単位を有する特定分散剤は、(A)顔料と(B)特定分散剤との間での強力な吸着効果、また顔料表面へ吸着した特定分散剤の高分子鎖間での立体反発効果による著しい分散安定性の向上が可能となる。
【0069】
【化7】

【0070】
一般式(3)中、R^(2)は、水素原子、又はメチル基を表す。W^(2)は-CO-、-COO-、-CONR_(4)-、-OCO-、又はフェニレン基を表す。R^(4)は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。X^(2)は、単結合、又は2価の連結基を表す。Y^(2)は複素環残基を表す。
・・・
【0076】
一般式(3)中、Y^(2)は複素環残基を表すが、複素環残基は前述した特定複素環残基の具体例が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
以下に、本発明の(B)特定分散剤が含む顔料吸着性基を含む構造単位として、前記一般式(3)で表される構造単位の好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
【化8】

・・・
【0079】
顔料吸着性基としての塩基性基は、塩基性を有する基であればよい。特に好ましい化合物の例としては、1級、2級、3級アミン構造を有する化合物、アミド構造を有する化合物、ピリジン、イミダゾールのような含窒素ヘテロ環構造を有する化合物などが挙げられ、これらの中でも1級、2級、3級アミン構造を有する化合物、アミド構造を有する化合物、ピリジン、イミダゾールのような含窒素ヘテロ環構造を有する化合物を含有するモノマーを共重合成分としていることが特に好ましい。」

(2j)
「【0084】
本発明において、特定分散剤は、さらに構成単位として末端にエチレン性不飽和2重結合を有する重合性オリゴマーを共重合単位として含むグラフト共重合体であることが好ましい態様である。なお、このような末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーは、所定の分子量を有する化合物であることからマクロモノマーとも呼ばれる。
【0085】
前記重合性オリゴマーは、ポリマー鎖部分と、エチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基部分とからなる。前記エチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基部分は、前記重合性オリゴマーにおいて、前記ポリマー鎖の一端にのみ存在していることが、所望のグラフト重合体を得るという観点からは好ましい。
前記エチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などが好適に挙げられ、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
前記重合性オリゴマー(マクロモノマー)の分子量としては、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で、1000?10000が好ましく、2000?9000がより好ましい。
【0086】
前記ポリマー鎖部分としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル、並びに、ブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体又は共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリカプロラクトン、などが好適に挙げられる。
・・・
【0096】
特定分散剤は、更に、これらと共重合可能な他のモノマーを共重合成分としていてもよい。
前記他のモノマーとしては、例えば、・・・(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレートなど)・・・が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル、カルボン酸ビニル
エステルなどが好ましい。」

(2k)
「【0104】
特定分散剤の重量平均分子量(Mw)としては、1000?200000が好ましく、10000?200000がより好ましく、10000?150000が最も好ましい。特定分散剤の重量平均分子量がこの範囲であることにより、分散安定性に優れ、かつ分散剤自体によるインク粘度上昇を抑制したインク組成物を得ることができる。
重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定することができ、ポリスチレン換算重量平均分子量として算出される。
【0105】
以下に、特定分散剤の好ましい具体例を示す。なお、本発明は、これらの具体例に何ら制限されるものではない。なお、以下の具体例において、「/」の前後に表示される化合物は、該重合体を構成する各構成成分であることを意味している。
【0106】
1)例示化合物M-1/例示構造単位M-11/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:125,000)、
2)例示化合物M-1/例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:120,000)、
3)例示化合物M-1/例示構造単位M-16/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:105,000)、
4)例示化合物M-3/例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:140,000)、
5)例示化合物M-5/例示構造単位M-13/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:145,000)、
6)例示化合物M-5/例示構造単位M-15/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:10/10/10/70、Mw:170,000)、
7)例示化合物M-6/例示構造単位M-22/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:140,000)、
8)前記例示化合物M-7/前記例示構造単位M-23/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/15/5/75、Mw:180,000)、
9)前記例示化合物M-8/前記例示構造単位M-15/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/10/10/75、Mw:175,000)、
10)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-11/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:3/20/10/68、Mw:120,000)、
【0107】
11)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/10/5/80、Mw:190,000)、
12)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-16/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:120,000)、
13)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-19/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/30/10/55、Mw:80,000)、
14)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-11/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:10/20/70、Mw:140,000)、
15)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-14/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:10/20/70、Mw:145,000)、
16)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-16/末端メタクリロイル化ポリブチルアクリレート共重合体(組成質量比:10/20/70、Mw:130,000)、
17)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-12/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体(組成質量比:10/20/70、Mw:70,000)、
18)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-13/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン共重合体(組成質量比:10/20/70、Mw:80,000)、
19)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-17/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリブチルアクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:120,000)、
20)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-24/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/35/30、Mw:132,000)、
【0108】
21)前記例示化合物M-1/前記例示構造単位M-14/2-ビニルピリジン/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:110,000)、
22)前記例示化合物M-3/前記例示構造単位M-15/p-ビニルベンジル-N,N-ジメチルアミン/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:100,000)、
23)前記例示化合物M-3/前記例示構造単位M-16/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート/末端メタクリロイル化ポリn-ブチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:140,000)、
24)前記例示化合物M-3/前記例示構造単位M-16/スチレン/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/5/70、Mw:124,000)、
25)前記例示化合物M-6/前記例示構造単位M-14/N,N-ジメチルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:150,000)、
26)前記例示化合物M-6/前記例示構造単位M-16/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:100,000)、
27)前記例示化合物M-6/前記例示構造単位M-19/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:135,000)、
28)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-11/4-ビニルピリジン/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:120,000)、
29)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-14/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:60,000)、
30)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-16/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成重質比:5/20/10/65、Mw:120,000)、
31)前記例示化合物M-10/前記例示構造単位M-23/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/10/65、Mw:120,000)、
32)前記例示化合物M-1/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体(組成質量比:5/20/75、Mw:146,000)」

(2l)
「【0114】
〔インク組成物〕
本発明のインク組成物は、本発明の顔料分散物を含有することを特徴とする。
本発明のインク組成物は、特定分散剤を含有する顔料分散物を含むことから、顔料の分散性、および分散安定性が良好で、粒子径の小さい顔料粒子を用いた場合でも、均一で安定なインク組成物とすることができる。
・・・
【0118】
本発明のインク組成物には、本発明の顔料分散物の他に、必要に応じて、適宜、選択したその他の成分を含有させることができる。含有させることが好ましい成分としては、(C)重合性化合物、(D)光重合開始剤が挙げられ、これらの成分を含むことにより、活性エネルギー線の照射によりインク組成物が硬化することになる。
・・・
【0119】
<(C)重合性化合物>
本発明のインク組成物は、(C)重合性化合物を含有することが好ましい。(C)重合性化合物としては、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される(D)光重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、カチオン重合性化合物として知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
【0120】
重合性化合物は、顔料分散物をインク組成物に適用する場合であれば、反応速度、硬化膜物性、インク物性等を調整する目的で、1種又は複数を混合して用いることができる。
また、重合性化合物は、単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。単官能化合物の割合が大きいと硬化物は柔軟なものになりやすく、多官能化合物の割合が大きいと硬化性に優れる傾向がある。従って、単官能化合物と多官能化合物とを併用することが好ましく、単官能化合物と多官能化合物との割合は用途に応じて任意に決定されるものである。
・・・
【0126】
また本発明のインク組成物には、カチオン性でない重合性化合物も使用可能であり、ラジカル重合性のエチレン性不飽和化合物を含有することも好ましい。エチレン性不飽和化合物は目的のインク組成物の粘度、顔料の分散安定性、硬化感度、硬化膜物性を鑑みて、本発明の効果を損ねない範囲で含有することができる。エチレン性不飽和化合物としては、公知のラジカル重合性モノマーを用いることができる。これらの例としては、たとえば、例えば特開2008-208190号公報や同2008-266561号公報に記載の(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物、スチレン化合物、N-ビニル化合物などのモノマーが挙げられる。
これらのうち、本発明においては、ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、から選ばれる1種または複数のモノマーを用いることが好ましい。硬化速度、インク組成物の粘度、印字サンプルの膜物性の観点から重合性官能基を複数有する多官能の重合性モノマーと単官能の重合性モノマーを併用することも好ましい。」

(2m)
「【0134】
<その他の成分>
本発明のインク組成物は、(A)顔料、(B)特定分散剤、(C)重合性化合物および(D)光重合開始剤の他に、目的に応じて、適宜選択したその他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、例えば、増感色素、安定剤、樹脂、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、吐出安定剤、密着性向上剤、レベリング添加剤、マット剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
・・・
【0140】
[樹脂]
本発明のインク組成物は、記録した画像の膜物性を調整する目的で、(B)特定分散剤とは異なる樹脂を含有していてもよい。
この樹脂としては、例えば、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本発明においては、樹脂に代えて公知のワックス類を使用してもよい。」

(2n)
「【0159】
<特定分散剤の合成>
-例示化合物M-3(オキセタン環を含有するモノマー)の合成-
テトラヒドロフラン(120mL)、3-エチル-3-オキセタンメタノール12.8g(0.11mol)の混合溶液へ、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート15.1g(0.11mol)を室温で滴下した。その混合溶液を室温で7時間攪拌した後、溶媒留去することにより、例示化合物M-3(オキセタン環を含有するモノマー)の粗生成物 27.1g(0.10mol、収率91%)を得た。
・・・
【0161】
-例示構造単位M-14を構成するモノマーの合成-
無水N,N-ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略称する)(500mL)にNaOH26.4g(0.66mol)を加え、室温で9(10H)-Acridanone100g(0.51mol)を加えた。30分攪拌した後、クロロメチルスチレン 85.5gを1時間かけて滴下し、その後60℃で12時間攪拌した。メタノール/水=1/1 200mLを加え、ろ過することにより、例示構造単位M-14を構成するモノマーの粗生成物 102.0g(0.33mol、収率65%)を得た。
【0162】
-例示構造単位M-16を構成するモノマーの合成-
アセトニトリル(120mL)、2-アミノアントラキノン24.1g(0.11mol)の混合溶液へ、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート15.1g(0.11mol)を室温で滴下した。その混合溶液を室温で7時間攪拌した後、溶媒留去することにより、例示構造単位M-16を構成するモノマーの粗生成物 39.0g(0.10mol、収率91%)を得た。
【0163】
-特定分散剤(例示化合物2)の合成-
〔例示化合物2:(例示化合物M-1/例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(=5/20/10/65(質量比)によるグラフト共重合体))
例示化合物M-1(市販品:3-Ethyloxetan-3-ylmethyl methacrylate)1.25g、上記の合成で得た例示構造単位M-14を構成するモノマー 5g、3-(N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)2.5g、末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(数平均分子量6000、東亜合成化学(株)製、AA-6)16.25g、およびメチルエチルケトン46.4gを窒素置換した三口フラスコに加えて、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温した。別に調製した下記の開始剤溶液A 2.05gを添加して3時間加熱攪拌した。滴下後、さらに開始剤溶液A 2.05gを添加し、78℃にて3時間加熱攪拌を行った。得られた反応液をヘキサン1500gに攪拌しながら注ぎ、生じた沈殿を加熱乾燥させることにより、特定分散剤(例示化合物2)を合成した。重量平均分子量は120000であった。
【0164】
(開始剤溶液A)
2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製V-65sw 0.05g
メチルエチルケトン 2g
【0165】
-特定分散剤(例示化合物3)の合成-
〔例示化合物3:例示化合物M-1/例示構造単位M-16/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(=5/20/10/65(質量比)によるグラフト共重合体)
特定分散剤(例示化合物2)の合成例において、例示構造単位M-14を構成するモノマーを例示構造単位M-16を構成するモノマーに変更し、また、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミドを2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートに変更した以外は、特定分散剤(例示化合物2)の合成と同様にして、特定分散剤(例示化合物3)を合成した。重量平均分子量は105000であった。
【0166】
-特定分散剤(例示化合物4)の合成-
〔例示化合物4:例示化合物M-3/例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(=5/20/10/65(質量比)によるグラフト共重合体)〕
特定分散剤(例示化合物2)の合成例において、例示化合物M-1を例示化合物M-3に変更した以外は、特定分散剤(例示化合物2)の合成と同様にして、特定分散剤(例示化合物4)を合成した。重量平均分子量は140000であった。
【0167】
-特定分散剤(例示化合物32)の合成-
〔例示化合物32:例示化合物M-1/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(=5/20/75(質量比)共重合体によるグラフト共重合体)〕
例示化合物M-1(市販品:3-Ethyloxetan-3-ylmethyl methacrylate)1.25g、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート5g、末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(数平均分子量6000、東亜合成化学(株)製、AA-6)18.75g、およびメチルエチルケトン46.4gを窒素置換した三口フラスコに加え、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温した。別に調製した上記の開始剤溶液Aを2.05g添加して3時間加熱攪拌した。滴下後、さらに開始剤溶液A 2.05gを添加し、78℃にて3時間加熱攪拌を行った。得られた反応液をヘキサン1500gに攪拌しながら注ぎ、生じた沈殿を加熱乾燥させることにより、特定分散剤(例示化合物32)を合成した。重量平均分子量は146000であった。」

(2o)
「【0172】
<顔料分散物の調製>
〔実施例1〕
合成した特定分散剤(例示化合物2) 4.0gを、重合性化合物であるオキセタン化合物(東亜合成(株)製 OXT-221、化合物名 3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン)66gに溶解し、キナクリドン顔料(PR122)30gと共に、モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速7m/sで分散を行い、実施例1の顔料分散物1-1を得た。
【0173】
〔実施例2〕
実施例1において、特定分散剤(例示化合物2)を、特定分散剤(例示化合物3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の顔料分散物1-2を得た。
【0174】
〔実施例3〕
実施例1において、特定分散剤(例示化合物2)を、特定分散剤(例示化合物4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の顔料分散物1-3を得た。
【0175】
〔実施例4〕
実施例1において、特定分散剤(例示化合物2)を、特定分散剤(例示化合物32)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の顔料分散物1-4を得た。
・・・
【0180】
〔実施例9?12、及び比較例6、7〕
実施例1?4、および比較例1、2において使用した「キナクリドン顔料(PR122)」を「フタロシアニン系顔料(PB15:3)」に変更した以外は、実施例1?4、および比較例1、2とそれぞれ同様にして、実施例9の顔料分散物1-9、実施例10の顔料分散物1-10、実施例11の顔料分散物1-11、実施例12の顔料分散物1-12、比較例6の顔料分散物2-6、及び比較例7の顔料分散物2-7を調製した。」

(2p)
「【0181】
<顔料分散物の評価>
得られた各顔料分散物を下記の方法に従って評価した。結果を表1に示した。
【0182】
(顔料分散物の粘度)
各顔料分散物の40℃における粘度を、E型粘度計を用いて測定した。粘度の評価は、以下の基準に従って行った。顔料の凝集が生じると粘度が上昇するため、粘度が低いほど顔料分散性に優れると評価する。
A:300mPa・s未満
B:300mPa・s以上、700mPa・s未満
C:700mPa・s以上
【0183】
(平均粒子径)
各顔料分散物について、光散乱回折式の粒度分布測定装置(LA910、(株)堀場製作所製)を用いて体積基準平均粒子径D50を測定し、以下の基準に従って平均粒子径を評価した。顔料が凝集体を形成すると、平均粒子径が大きくなるため、平均粒子径が小さいほど、顔料分散性に優れると評価する。
A:D50が200nm未満
B:D50が200nm以上、300nm未満
C:D50が300nm以上
【0184】
(分散進度)
各顔料分散物をアイガーミルで分散する際に、30分おきに顔料分散物を採取し、平均粒経D50が300nm未満になるまで分散し、分散時間が2時間以内で平均粒経D50が300nm未満に到達したものに関しては、引き続き2時間まで分散した。平均粒経D50が300nm未満になるまでの分散時間が短いほど分散進度が優れると評価する。
A:分散時間が2時間以内
B:分散時間が2時間?3時間
C:分散時間が3時間以上
【0185】
【表1】

【0186】
表1から、本発明に係る特定分散剤を用いて調製した各実施例の顔料分散物は、顔料の種類に依らず、いずれも良好な粘度、顔料の粒子径であり、分散進度が速いことが分かる。特に、複素環残基を有する特定分散剤を用いた実施例1?3、実施例5?7、および実施例9?11は、いずれも顔料分散物も粘度が低く、顔料の粒子径も小さく、このことから、微細な顔料の凝集が抑制され、分散性に優れることがわかる。これに対し本発明の特定分散剤を用いない顔料分散物(2-1?2-7)を用いた比較例1?7は、顔料を充分に微細化するまでの分散進度が遅いことが分かる。このことから、比較例は実施例にくらべ、顔料の分散進度に劣り、分散性が劣ることがわかる。」

(3)甲第3号証の記載

甲第3号証には、以下のとおりの記載がある。

(3a)
「【0061】
本発明の有機顔料組成物をカラーフィルタの画素部を形成するために用いる場合には、必要に応じて、ε型銅フタロシアニン顔料やジオキサジン顔料を更に含有させることが出来る。」

(3b)
「【0076】
(合成例1)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1540部を仕込み、窒素気流下で110℃に昇温した後、メチルメタクリレート597部、n-ブチルメタクリレート261部、グリシジルメタクリレート142部及びTBPEH18部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃にて7時間反応させて、不揮発分39.8%、重量平均分子量15,000の共重合体(B-1)の溶液を得た。」

(3c)
「【0077】
(合成例2)
<ドーソン型(P_(2)MoW_(17)O_(62))^(6-)ヘテロポリオキソメタレートでレーキされたトリアリールメタン顔料の合成>
【0078】
「K_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))」の調整
Na_(2)WO_(4)・2H_(2)O(和光純薬工業株式会社製試薬)44.0g、Na_(2)MoO_(4)・2H_(2)O(関東化学株式会社製試薬)1.90gを精製水230gに溶解した。この溶液に攪拌しながら85%リン酸64.9gを滴下ロートを用いて添加した。得られた溶液を8時間、加熱還流した。反応液を室温に冷却し、臭素水1滴を加え、攪拌しながら塩化カリウム45.0gを添加することで、K_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))を得た。
さらに、1時間攪拌後、生じた黄色の沈殿K_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))を濾別した。得られた個体を90℃で乾燥し、収量29.4gを得た。
【0079】
FT-IR分析結果:(KBr/cm^(-1))
1091,960,915,783,530。
上記FT-IR分析結果から、この乾燥物は、K_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))であることを確認した。
【0080】
C.I.ベーシックブルー7(東京化成株式会社製試薬)5.30gを精製水350gに投入し、40℃で攪拌させて溶解した。次に、上記調製例1の方法で得たK_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))10.0gを精製水40.0gに溶解した後、C.I.ベーシックブルー7溶液にゆっくりと加え、そのまま40℃で1時間攪拌した。次いで、内温を80℃に上げ、さらに該温度で1時間攪拌した。冷却後ろ過し、300gの精製水で3回洗浄した。得られた固体を90℃で乾燥させた後、黒青色固体が10.4g得られた。該固体を市販のジューサーにて粉砕して、上記式(I)においてR_(1)がいずれもエチル基であり、X^(-)が(P_(2)MoW_(17)O_(62))/6で表されるヘテロポリオキソメタレートからなるアニオンであるトリアリールメタン顔料を得た。
【0081】
FT-IR分析結果:(KBr/cm^(-1))
2970,1579,1413,1342,1273,1185,1155,1073,954,911,786。
【0082】
C.I.ベーシックブルー7のFT-IRの分析結果、及びK_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))のFT-IR分析結果及び上記生成物のFT-IRの分析結果から、この生成物は、C.I.ベーシックブルー7のカチオン構造とK_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))のアニオン構造が維持されていることを確認した。一次粒子の平均粒子径は、100nm以下であった。」

(3d)
「【実施例1】
【0083】
上記合成例2で得たトリアリールメタン顔料20部を容器に入れ、酢酸エチル(試薬一級)400部に入れて撹拌翼でゆっくり撹拌し、均一なスラリーが得られたことを確認した後、そこに上記合成例1の共重合体(B-1)溶液(固形分39.8%)2.5部を加え、引き続き60分間撹拌翼で撹拌した後、吸引濾過し、減圧乾燥を行うことで、質量換算でトリアリールメタン顔料(A)100部当たり、側鎖の炭素原子数が異なる(メタ)アクリル酸エステル2種以上の共重合体(B)不揮発分0.1?15部の範囲にある有機顔料組成物を得た。」

(3e)
「【実施例2】
【0084】
上記実施例1で得た有機顔料組成物1.80部、BYK?2164(ビックケミー社製分散剤)2.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.10部、0.3-0.4mmφセプルビーズをポリビンに入れ、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散し、顔料分散液を得た。
この顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックス(商標名)M7100、東亜合成化学工業株式会社製)5.50部、ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD(商標名)DPHA、日本化薬株式会社製)5.00部、ベンゾフェノン(KAYACURE(商標名)BP-100、日本化薬株式会社製)1.00部、ユーカーエステルEEP(ユニオンカーバイド社製)13.5部を分散撹拌機で撹拌し、孔径1.0μmのフィルターで濾過し、カラーレジストを得た。このカラーレジストは50mm×50mm、1mmの厚ガラスに乾燥膜厚が2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、その後90℃で20分間予備乾燥して塗膜を形成させ、青色画素部を含むカラーフィルタとした。」

(3f)
「【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、トリアリールメタン顔料(A)と、特定共重合体(B)との相互作用による特異な耐熱性により、熱履歴を受けても色相変化の小さい着色物を提供でき、特に、カラーフィルタの画素部の調製に用いた際に、高輝度で、熱履歴を長時間に亘って受けても、輝度に優れた液晶表示が可能となる液晶表示装置を提供できる。」

(4)甲第4号証の記載

甲第4号証には、以下のとおりの記載がある。

(4a)
「[0005] このC.I.ピグメントブルー1としては、以下の化学構造のBASF社のファナルカラー(FANAL BLUE D6340、同D6390)が著名であり、C.I.ピグメントブルー1は、塩基性トリアリールメタン染料であるビクトリアピュアブルーBOを、リンモリブデン酸やリンタングステンモリブデン酸の様なヘテロポリ酸でレーキ化して得られる。こうして得られたC.I.ピグメントブルー1は、カチオンの対イオンX-がケギン型PMoxW12-xO40であるとされている。
[0006][化1]

[0007]〔但し、一般式(II)中、R^(1)、R^(2)およびR^(3)はいずれもエチル基、R^(4)は水素原子、X^(-)は、ケギン型リンタングストモリブデン酸アニオンまたはリンモリブデン酸アニオンである。〕」

(5)刊行物5の記載

刊行物5には、以下のとおりの記載がある。

(5a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は・・・透過型あるいは反射型のカラー液晶表示素子、カラー撮像管素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等に用いられるカラーフィルタに有用な着色層の形成に用いられる着色組成物・・・に関する。」

(5b)
「【0078】
本発明において、バインダー樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
・・・。」

(5c)
「【0128】
実施例1
感放射線性着色組成物の調製
顔料分散液(A-1)100質量部、(C)バインダー樹脂として樹脂溶液(C1)10質量部(固形分換算)、(D)多官能性単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート15質量部、(E)光重合開始剤として2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン4質量部と4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン1質量部、及び(F)溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、固形分濃度22%の液状組成物(CR1)を調製した。
・・・。」

3 刊行物等に記載された発明

(1)甲第1号証に記載された発明

甲第1号証には、携帯電話等の携帯情報端末機器、カーオーディオ、テレビ用モニターやパーソナル・コンピュータ用の有機EL表示装置30に用いられるカラーフィルター基板10に青色着色層13bが形成されていることが記載されている(摘記(1a)?(1c)、(1i)、(1k)、(1l))。
また、甲第1号証には、青色着色層13bは、青色着色組成物に紫外線を露光して硬化したものであることが記載されている(摘記(1g)?(1i))。
また、甲第1号証には、青色着色組成物は、青色レーキ顔料6部、分散剤3部、モノマー4部、ポリマー5部、重合開始剤2部及び溶剤80部からなり、これら青色レーキ顔料、分散剤、モノマー、ポリマー、重合開始剤及び溶剤は各々以下のとおりのものであることが記載されている(摘記(1j))。

・青色レーキ顔料:PB1、商品名「Fanal Blue D 6390」、BASF社製
・分散剤:商品名「Disperbyk 111」、ビックケミー・ジャパン株式会社製
・モノマー:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、商品名「SR399」、サートマー社製
・ポリマー:下記共重合樹脂溶液
・重合開始剤:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、商品名「イルガキュア907」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
・溶剤:3-メトキシブチルアセテート、ダイセル化学工業株式会社製

共重合樹脂溶液(固形分50質量%)の組成
・メチルメタクリレート(株式会社クラレ製):63質量部
・アクリル酸(株式会社日本触媒製):12質量部
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート(株式会社日本触媒製):6質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル(純正化学株式会社製):88質量部
・2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(商品名:ABN-R、株式会社日本ファインケム社製):7質量部
・グリシジルメタクリレート(日油株式会社製):7質量部
・トリエチルアミン(和光純薬工業株式会社製):0.4質量部
・ハイドロキノン(精工化学株式会社製):0.2質量部

したがって、甲第1号証には、
「有機EL表示装置に用いられるカラーフィルタ基板の青色着色層を形成するための青色着色組成物であって、
青色レーキ顔料6部、分散剤3部、モノマー4部、重合開始剤2部、溶剤80部及びポリマー5部からなり、
ここで、青色レーキ顔料は、PB1、商品名「Fanal Blue D 6390」(BASF社製)であり、
分散剤は、商品名「Disperbyk 111」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)であり、
モノマーは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートであり、
重合開始剤は、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンであり、
溶剤は、3-メトキシブチルアセテートであり、
ポリマーは、共重合樹脂溶液(固形分50質量%)であって、その組成は
・メチルメタクリレート:63質量部
・アクリル酸:12質量部
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート:6質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:88質量部
・2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル):7質量部
・グリシジルメタクリレート:7質量部
・トリエチルアミン:0.4質量部
・ハイドロキノン:0.2質量部
である、
青色着色組成物」
の発明(以下「引用発明1a」という。)が記載されているといえる。

また、甲第1号証には、「引用発明1aに係る青色着色組成物を紫外線により硬化してなる青色着色層を有するカラーフィルタ基板」の発明(以下「引用発明1b」という。)及び「引用発明1bに係るカラーフィルタ基板を具備する有機EL表示装置」の発明(以下「引用発明1c」という。)も記載されているといえる。

(2)先願当初明細書等に記載された発明

甲第3号証には、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタに青色画素部が形成されていることが記載されている(摘記(3e)、(3f))。
また、甲第3号証には、青色画素部は、カラーレジストを塗膜としたものであることが記載されている(摘記(3e))。
また、甲第3号証には、カラーレジストは、顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックス(商標名)M7100、東亞合成化学工業株式会社製)5.50部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート5.00部と、ベンゾフェノン1.00部と、ユーカーエステルEEP13.5部からなることが記載されている(摘記(3e))。
また、甲第3号証には、顔料分散液は、有機顔料組成物1.80部、BYK-2164(ビックケミー社製分散剤)2.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.10部からなることが記載されている(摘記(3e))。
また、甲第3号証には、有機顔料組成物は、合成例2で得たトリアリールメタン顔料20重量部、酢酸エチル400部、合成例1の共重合体(B-1)の溶液(固形分39.8%)2.5部の混合物を吸引濾過し減圧乾燥を行って得たものであることが記載されている(摘記(3d))。
また、甲第3号証には、合成例2で得たトリアリールメタン顔料は、C.I.ベーシックブルー7をK_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))でレーキしたトリアリールメタン顔料であることが記載されている(摘記(3c))。
また、甲第3号証には、合成例1の共重合体(B-1)の溶液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1540部に、メチルメタクリレート597部、n-ブチルメタクリレート261部、グリシジルメタクリレート142部及びTBPEH18部からなる混合液を滴下し、滴下終了後、110℃にて7時間反応させて得た、不揮発分39.8%、重量平均分子量15,000の共重合体(B-1)の溶液であることが記載されている(摘記(3b))。

そして、甲第3号証は先願に係る公開特許公報であって、その発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、先願当初明細書等の記載と同一である。

したがって、先願当初明細書等には、
「液晶表示装置に用いるカラーフィルタの青色画素部を形成するカラーレジストであって、
顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックス(商標名)M7100、東亞合成化学工業株式会社製)5.50部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート5.00部と、ベンゾフェノン1.00部と、ユーカーエステルEEP13.5部からなり、
ここで、顔料分散液は、有機顔料組成物1.80部、BYK-2164(ビックケミー社製分散剤)2.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.10部からなり、
ここで、有機顔料組成物は、合成例2で得たトリアリールメタン顔料20重量部、酢酸エチル400部、合成例1の共重合体(B-1)の溶液(固形分39.8%)2.5部の混合物を吸引濾過し減圧乾燥を行って得たものであり、
ここで、合成例2で得たトリアリールメタン顔料は、C.I.ベーシックブルー7をK_(6)(P_(2)MoW_(17)O_(62))でレーキしたトリアリールメタン顔料であり、
合成例1の共重合体(B-1)の溶液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1540部に、メチルメタクリレート597部、n-ブチルメタクリレート261部、グリシジルメタクリレート142部及びTBPEH18部からなる混合液を滴下し、滴下終了後、110℃にて7時間反応させて得た、不揮発分39.8%、重量平均分子量15,000の共重合体(B-1)の溶液である、
カラーレジスト」
の発明(以下「引用発明3aという。)が記載されているといえる。

また、甲第3号証には、「引用発明3aに係るカラーレジストから形成された青色画素部を有するカラーフィルタ」の発明(以下「引用発明3b」という。)、「引用発明3bに係るカラーフィルタを具備する液晶表示装置」の発明(以下「引用発明3c」という。)及び「引用発明3aに係るカラーレジストの原料である顔料分散液」の発明(以下「引用発明3d」という。)も記載されているといえる。

(3)甲第2号証に記載された発明

甲第2号証には、実施例1として、特定分散剤(例示化合物2) 4.0gを、重合性化合物であるオキセタン化合物(東亜合成(株)製 OXT-221、化合物名 3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン)66gに溶解し、キナクリドン顔料(PR122)30gと共に、モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速7m/sで分散を行い、顔料分散物1-1を調製したことが記載されている(摘記(2o))。
また、甲第2号証には、特定分散剤(例示化合物2)は、例示化合物M-1/例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート=5/20/10/65(質量比)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量が120000のグラフト共重合体であり、ここで、例示化合物M-1及び例示構造単位M-14は、それぞれ

及び

であることが記載されている(摘記(2g)、(2i)、(2k)、(2n))。
また、甲第2号証には、実施例1において使用した「キナクリドン顔料(PR122)」を「フタロシアニン系顔料(PB15:3)」に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9の顔料分散物1-9を調製したことが記載されている(摘記(2o))。

したがって、甲第2号証には、実施例9として、
「フタロシアニン系顔料(PB15:3)30g、特定分散剤(例示化合物2)4.0gが溶解した3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン66gからなる、インク組成物に用いられる顔料分散物であって、
ここで、特定分散剤(例示化合物2)は、例示化合物M-1/例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート=5/20/10/65(質量比)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量が120000のグラフト共重合体であり、
ここで、例示化合物M-1及び例示構造単位M-14は、それぞれ

及び

である、顔料分散物」
の発明(以下「引用発明4a」という。)が記載されているといえる。

また、同様に、甲第2号証には、実施例10?12として、
「フタロシアニン系顔料(PB15:3)30g、特定分散剤(例示化合物3)4.0gが溶解した3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン66gからなる、インク組成物に用いられる顔料分散物であって、
ここで、特定分散剤(例示化合物3)は、例示化合物M-1/例示構造単位M-16/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート=5/20/10/65(質量比)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量が105000のグラフト共重合体であり、
ここで、例示化合物M-1及び例示構造単位M-16は、それぞれ

及び

である、顔料分散物」
の発明(以下「引用発明4b」という。)、
「フタロシアニン系顔料(PB15:3)30g、特定分散剤(例示化合物4)4.0gが溶解した3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン66gからなる、インク組成物に用いられる顔料分散物であって、
ここで、特定分散剤(例示化合物4)は、例示化合物M-3/例示構造単位M-14/3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート=5/20/10/65(質量比)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量が140000のグラフト共重合体であり、
ここで、例示化合物M-3及び例示構造単位M-14は、それぞれ

及び

である、顔料分散物」
の発明(以下「引用発明4c」という。)及び、
「フタロシアニン系顔料(PB15:3)30g、特定分散剤(例示化合物32)4.0gが溶解した3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン66gからなる、インク組成物に用いられる顔料分散物であって、
ここで、特定分散剤(例示化合物32)は、例示化合物M-1/2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート=5/20/75(質量比)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量が146000のグラフト共重合体であり、
ここで、例示化合物M-1は

である、顔料分散物」
の発明(以下「引用発明4d」という。)が記載されているといえる(摘記(2g)、(2i)、(2k)、(2n)、(2o))。

4 本件特許2について

(1)当審取消理由1-1及び1-2について

上記第4の2で述べたとおり、当審取消理由1-1及び1-2に係る特許を受けることができないとする理由は訂正前の本件特許発明2を対象とするものではない。
これに対し、上記第2の3(1)ア及び(3)ウで述べたとおり、訂正後の本件特許発明2は、訂正前の請求項2を減縮することにより訂正前の本件特許発明2を限定したものである。
したがって、当審取消理由1-1及び1-2に係る特許を受けることができないとする理由が訂正後の本件特許発明2に妥当するものではないことは明らかであるといえる。
よって、本件特許2は、当審取消理由1-1又は1-2により取り消されるべきものとはいえない。

(2)当審取消理由2について

ア 本件特許発明2と引用発明1aとの対比

引用発明1aにおける「青色レーキ顔料」及び「青色着色組成物」は、本件特許発明2における「(A)レーキ顔料を含む着色剤」及び「着色組成物」に相当する。
また、引用発明1aにおける「モノマー」は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートであって、複数のアクリロイル基を有する化合物であるから、本件特許発明2における「(C)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなる架橋剤」に相当する。
さらに、引用発明1aにおける「分散剤」は、本件特許発明2における「(B)・・・共重合体」に対応し、両者は「着色組成物に配合される物質」であるという点で一致する。

したがって、本件特許発明2と引用発明1aとを対比すると、両者は、
「(A)レーキ顔料を含む着色剤、
(B)着色組成物に配合される物質、及び
(C)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなる架橋剤
を含有する、
着色組成物」という点で一致し、少なくとも、
(相違点1)着色組成物に配合される物質が、前者は、本件共重合体であるのに対し、後者は、分散剤「Disperbyk 111」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)である点、
で相違する。

イ 相違点についての検討

甲第2号証には、インク組成物において、繰り返し温度変化が顔料の分散性に悪影響を与え、経時的に顔料の分散性が低下し、顔料の凝集や増粘などが生じやすくなるところ、オキセタン環を含む構造単位と顔料吸着性基を含む構造単位とを有する高分子分散剤を使用することにより、繰り返し温度変化を経た後でも分散安定性の低下が効果的に抑制された顔料分散物が得られることが記載されている(摘記(2b)?(2d))。
また、甲第2号証には、かかる高分子分散剤は、オキセタン環を含む構造単位があるため、硬化したときにかかる高分子分散剤自体が硬化膜を形成するので、硬化感度に優れたインク組成物を得ることができると考えられることも記載されている(摘記(2h))。
そして、甲第2号証には、かかる高分子分散剤の具体例として、「例示化合物2」、「例示化合物3」、「例示化合物4」及び「例示化合物32」がその合成方法及び評価結果とともに記載されている(摘記(2n)?(2p))。

しかし、甲第2号証に記載された「例示化合物2」、「例示化合物3」、「例示化合物4」及び「例示化合物32」は、「式(2)で表される繰り返し単位」を側鎖にのみ有するものである点で、本件共重合体に相当しない。
したがって、引用発明1aにおいて、繰り返し温度変化による顔料の凝集の抑制やオキセタン環による硬化を期待して、分散剤として「Disperbyk 111」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)に代えて甲第2号証に記載された「例示化合物2」、「例示化合物3」、「例示化合物4」又は「例示化合物32」を用いても、本件特許発明2にならない。
また、甲第1号証及び甲第2号証には、引用発明1aにおいて、分散剤として「Disperbyk 111」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)に代えて本件共重合体に相当するものを用いることを当業者に動機付けるような記載も示唆もない。

以上から、引用発明1aにおいて、分散剤として「Disperbyk 111」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)に代えて本件共重合体に相当するものを用いることが甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

ウ 当審取消理由2についてのまとめ

上記イで述べたところから、本件特許発明2が甲第1号証に記載された発明並びに甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許2は、当審取消理由2により取り消されるべきものとはいえない。

(3)当審取消理由3について

上記第4の2で述べたとおり、当審取消理由3に係る特許を受けることができないとする理由は訂正前の本件特許発明2を対象とするものではない。
これに対し、上記第2の3(1)ア及び(3)ウで述べたとおり、訂正後の本件特許発明2は、訂正前の請求項2を減縮することにより訂正前の本件特許発明2を限定したものである。
したがって、当審取消理由3に係る特許を受けることができないとする理由が訂正後の本件特許発明2に妥当するものではないことは明らかであるといえる。
よって、本件特許2は、当審取消理由3により取り消されるべきものとはいえない。

(4)当審取消理由4について

ア 本件特許発明2と引用発明4a?4dとの対比

引用発明4a?4dにおける「フタロシアニン系顔料(PB15:3)」は、本件特許発明2における「(A)レーキ顔料を含む着色剤」に対応し、両者は「顔料を含む着色剤」であるという点で一致する。
また、引用発明4a?4dにおける「例示化合物2」、「例示化合物3」、「例示化合物4」又は「例示化合物32」を構成する単量体である、例示化合物M-1及び例示化合物M-3は、本件特許発明2における「式(3)で表される繰り返し単位を与える単量体」に相当する。
また、引用発明4a?4dにおける「例示化合物2」、「例示化合物3」、「例示化合物4」又は「例示化合物32」を構成する単量体である、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、例示構造単位M-14を与える単量体及び例示構造単位M-16を与える単量体は、本件特許発明2における「式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体」に相当する。
ただし、引用発明4a?4dにおける「例示化合物2」、「例示化合物3」、「例示化合物4」又は「例示化合物32」は、「末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート」の「ポリメチルメタクリレート」部分に「式(2)で表される繰り返し単位」を有するものではあるが、主鎖に「式(2)で表される繰り返し単位」を有するものではないから、本件共重合体に相当するとはいえない。
さらに、引用発明4a?4dにおける「顔料分散物」は、「着色組成物」であるといえる。

したがって、本件特許発明2と引用発明4a?4dとを対比すると、両者は、
「(A)レーキ顔料を含む着色剤、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(3)で表される含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を与える単量体とを含む単量体の共重合体、
を含有する、
着色組成物。

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕」という点で一致し、少なくとも、
(相違点2)共重合体が、前者は、本件共重合体であるのに対し、後者は、「例示化合物2」、「例示化合物3」、「例示化合物4」又は「例示化合物32」であって、主鎖に「式(2)で表される繰り返し単位」を有するものではない点、
で相違する。

イ 相違点についての検討

甲第2号証には、特定分散剤は(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどを共重合成分としていてもよいことが記載されている(摘記(2j))。
しかし、甲第2号証には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを特定分散剤の共重合成分とすること技術的意義については、何ら記載されてない。
また、甲第2号証には、32の特定分散剤が例示されている(摘記(2k))が、そこに(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合成分とするものは挙げられていない。
そうすると、甲第2号証の上記記載は、引用発明4a?4dにおいて、特定分散剤の単量体として「式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体」に相当するものを用いることを当業者に動機付けるような記載であるとはいえない。
したがって、引用発明4a?4dにおいて、特定分散剤の単量体として「式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体」に相当するものを用いることが甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるということはできない

ウ 当審取消理由4についてのまとめ

上記イで述べたところから、本件特許発明2が甲第2号証に記載された発明及び甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許2は、当審取消理由4により取り消されるべきものとはいえない。

5 本件特許3?10について

本件特許発明3?10は、上記第3で述べたとおりのものであって、請求項2を直接的又は間接的に引用することにより、本件特許発明2の発明特定事項の全部を発明特定事項とするものである。
そうすると、本件特許発明3?10は、上記4(1)及び(3)で述べたのと同様に、当審取消理由1-1、1-2又は3に係る特許を受けることができないとする理由が妥当するものではない。
したがって、本件特許3?10は、当審取消理由1-1、1-2又は3により取り消されるべきものとはいえない。
また、本件特許発明3?8、9及び10は、上記4(2)アで述べたのと同様にそれぞれ引用発明1a、1b及び1cに対し少なくとも相違点1の点で相違し、上記4(4)アで述べたのと同様に引用発明4a?4dに対し少なくとも相違点2の点で相違するところ、この相違点についての判断は上記4(2)イ及び(4)イで述べたのと同様であるから、本件特許発明3?10は、当審取消理由2又は4に係る特許を受けることができないとする理由が妥当するものではない。
したがって、本件特許3?10は、当審取消理由2又は4により取り消されるべきものとはいえない。

6 本件特許11?13について

本件特許発明11?13は、上記第3で述べたとおりのものであって、本件共重合体を発明特定事項とするものである。
そして、本件特許発明11?13と同様に本件共重合体を発明特定事項とするものである本件特許発明2が上記4(1)?(4)で述べたとおり当審取消理由1-1、1-2又は2?4に係る特許を受けることができないとする理由が妥当するものではないことに照らし、本件特許発明11?13も、当審取消理由1-1、1-2又は2?4に係る特許を受けることができないとする理由が妥当するものではないといえる。
したがって、本件特許11?13は、当審取消理由1-1、1-2又は2?4により取り消されるべきものとはいえない。

7 特許異議申立人が申し立てた取消理由について

上記第4の1で述べたとおり、特許異議申立人が申し立てた取消理由は申立取消理由1-1、1-2、2及び3からなるところ、上記第4の1及び2で述べたところから、申立取消理由1-1は当審取消理由1-1の一部として採用され、申立取消理由1-2は当審が職権で調査し発見した刊行物5を補充して当審取消理由1-2として採用され、申立取消理由3は当審取消理由3の一部として採用されているといえる。
したがって、特許異議申立人が申し立てた取消理由についての検討は、上記4?6で尽くされているといえる。

第6 むすび

上記第2で述べたとおり、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲(平成29年6月7日付けの手続補正による補正後のもの)のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕及び〔11?13〕について訂正することを認める。
また、上記第5の頭書で述べたとおり、本件特許1についての特許異議の申立ては却下すべきものである。
また、上記第5の4?7で述べたとおり、当審が平成29年1月13日付けの取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた取消理由によっては、本件特許2?13を取り消すことはできない。
そして、ほかに本件特許2?13を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(A)レーキ顔料を含む着色剤、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(3)で表される含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を与える単量体とを含む単量体の共重合体、及び
(C)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなる架橋剤
を含有し、
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系レーキ顔料及びキサンテン系レーキ顔料から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(B)共重合体は、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体の含有割合が、全繰り返し単位中に、5?80質量%であり、
前記(B)共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000?100,000である、
着色組成物。
【化1】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化2】

〔式(2)において、
R^(4)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(5)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【化3】

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕
【請求項3】
前記レーキ顔料が、ヘテロポリ酸を用いて調製されたものである、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
カラーフィルタ用である、請求項2又は3に記載の着色組成物。
【請求項5】
前記(A)着色剤として、更に顔料(但し、前記レーキ顔料を除く。)を含有する、請求項2?4のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項6】
更に(D)バインダー樹脂(但し、前記(B)成分を除く。)を含有する、請求項2?5のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項7】
前記(B)共重合体のアミン価が1?250mgKOH/gである、請求項2?6のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項8】
前記(B)共重合体のアミン価の上限値が150mgKOH/gである、請求項2?7のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項9】
請求項2?8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された着色層を備えてなるカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタを具備する表示素子。
【請求項11】
(a1)レーキ顔料、
(B)下記式(1)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体と、下記式(3)で表される含酸素飽和ヘテロ環基を有する繰り返し単位を与える単量体とを含む単量体の共重合体、及び
(F)溶媒
を含有し、
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系レーキ顔料及びキサンテン系レーキ顔料から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(B)共重合体は、下記式(2)で表される繰り返し単位を与える単量体の含有割合が、全繰り返し単位中に、5?80質量%である、
顔料分散液。
【化4】

〔式(1)において、
R^(1)は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、-NR^(2)R^(3)(但し、R^(2)及びR^(3)は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、
X^(1)は、2価の連結基を示す。〕
【化5】

〔式(2)において、
R^(4)は、水素原子又はメチル基を示し、
R^(5)は、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。〕
【化6】

〔式(3)において、
R^(8)は、水素原子又はメチル基を示し、
Qは、含酸素飽和ヘテロ環基を示し、
X^(2)は、単結合又は2価の連結基を示す。〕
【請求項12】
(B)共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000?100,000である、請求項11に記載の顔料分散液。
【請求項13】
前記(B)共重合体のアミン価が1?250mgKOH/gである、請求項11又は12に記載の顔料分散液。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-18 
出願番号 特願2013-23438(P2013-23438)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C09B)
P 1 651・ 121- YAA (C09B)
P 1 651・ 161- YAA (C09B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 憲彦  
特許庁審判長 守安 智
特許庁審判官 木村 敏康
加藤 幹
登録日 2016-04-28 
登録番号 特許第5924282号(P5924282)
権利者 JSR株式会社
発明の名称 着色組成物、カラーフィルタ及び表示素子  
代理人 村田 正樹  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 山本 博人  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 高野 登志雄  
代理人 村田 正樹  
代理人 山本 博人  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 高野 登志雄  

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