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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A63F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A63F |
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管理番号 | 1335180 |
異議申立番号 | 異議2017-700865 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-09-11 |
確定日 | 2017-12-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6096154号発明「プログラム、及びサーバ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6096154号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6096154号の請求項1乃至11に係る特許についての出願は,平成18年10月11日に特許出願された特願2006-278007号の一部を,平成26年8月21日に特願2014-168435号として特許出願され,平成29年2月24日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許に対し,特許異議申立人横田修孝により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 特許第6096154号の請求項1乃至11の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,請求項1に記載された発明を「本件特許発明1」という。さらに請求項の項番に従い「本件特許発明2」乃至「本件特許発明11」という。) 「【請求項1】 所与のコンテンツをユーザーに提供するためのプログラムであって, 特殊コンテンツを含む複数種類のコンテンツを記憶する記憶部と, ユーザーの操作情報に基づいて,1の前記コンテンツを選択する処理を行う第1のコンテンツ選択処理と,2以上の予め定められた数の前記コンテンツを選択する第2のコンテンツ選択処理と,を行うコンテンツ選択部と, 前記第1のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツを前記ユーザーに提供する第1のコンテンツ提供処理と,前記第2のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツを前記ユーザーに提供する第2のコンテンツ提供処理と,を行うコンテンツ提供部としてコンピュータを機能させ, 前記記憶部が, 複数種類のコンテンツに対応する識別情報が格納された通常テーブル及び特殊テーブルを記憶し, 前記特殊テーブルには,前記特殊コンテンツに対応する識別情報が前記通常テーブルよりも多い割合で格納されており, 前記コンテンツ選択部が, 前記通常テーブルから前記識別情報を選択する通常選択処理と,前記特殊テーブルから前記識別情報を選択する特殊選択処理と,を行い,前記第1のコンテンツ選択処理において,前記通常選択処理により1の前記識別情報を選択する処理を行い,前記第2のコンテンツ選択処理において,前記通常選択処理と前記特殊選択処理により前記2以上の予め定められた数の前記識別情報を選択する処理を行うことを特徴とするプログラム。 【請求項2】 請求項1において, 前記コンテンツ選択部が, 前記第2のコンテンツ選択処理において,前記通常選択処理と前記特殊選択処理とを行う割合を変化させることを特徴とするプログラム。 【請求項3】 請求項1又は2において, 所与の時間の経過に応じて,前記通常テーブル及び前記特殊テーブルの少なくとも一方に格納された識別情報を更新する識別情報更新部としてコンピュータを更に機能させることを特徴とするプログラム。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項において, 前記コンテンツ選択部が, 所与の乱数値に基づいて前記コンテンツを選択することを特徴とするプログラム。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか1項において, 前記コンテンツ選択部が, 所与の順序に基づいて前記コンテンツを選択することを特徴とするプログラム。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項において, 前記コンテンツ選択部が, 前記記憶部に記憶されたコンテンツのうち,既に選択したコンテンツ以外のコンテンツを選択することを特徴とするプログラム。 【請求項7】 請求項1?6のいずれか1項において, 前記コンテンツの提供に対する価値の支払いをユーザーから受付ける価値処理部としてコンピュータを更に機能させ, 前記コンテンツ選択部が, ユーザーから受付けた価値に応じて,前記第1のコンテンツ選択処理と前記第2のコンテンツ選択処理のいずれか一方を行うことを特徴とするプログラム。 【請求項8】 請求項1?7のいずれか1項において, 前記コンテンツ提供部が, 前記コンテンツとしてゲームに用いるゲーム情報を提供し, 前記コンテンツ選択部が, 前記第2のコンテンツ選択処理として,前記ゲームに用いるゲーム情報群に対応する数のゲーム情報を選択することを特徴とするプログラム。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか1項において, 前記特殊コンテンツは,ゲームにおいて設定される所与のパラメータを,前記特殊コンテンツ以外のコンテンツよりも大きな変化率で変化させるものであることを特徴とするプログラム。 【請求項10】 請求項1?9のいずれか1項において, 通信機能を有する端末装置から受信したユーザー識別情報に基づいて,ユーザーのログイン処理とログアウト処理とを含むアクセス処理を行うアクセス処理部としてコンピュータを更に機能させ, 前記コンテンツ提供部が, 前記ログイン処理が行われたユーザーの端末装置に前記コンテンツを提供することを特徴とするプログラム。 【請求項11】 所与のコンテンツをユーザーに提供するためのサーバ装置であって, 特殊コンテンツを含む複数種類のコンテンツを記憶する記憶部と, ユーザーの操作情報に基づいて,1の前記コンテンツを選択する処理を行う第1のコンテンツ選択処理と,2以上の予め定められた数の前記コンテンツを選択する第2のコンテンツ選択処理と,を行うコンテンツ選択部と, 前記第1のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツを前記ユーザーに提供する第1のコンテンツ提供処理と,前記第2のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツを前記ユーザーに提供する第2のコンテンツ提供処理と,を行うコンテンツ提供部と, を含み, 前記記憶部が, 複数種類のコンテンツに対応する識別情報が格納された通常テーブル及び特殊テーブルを記憶し, 前記特殊テーブルには,前記特殊コンテンツに対応する識別情報が前記通常テーブルよりも多い割合で格納されており, 前記コンテンツ選択部が, 前記通常テーブルから前記識別情報を選択する通常選択処理と,前記特殊テーブルから前記識別情報を選択する特殊選択処理と,を行い,前記第1のコンテンツ選択処理において,前記通常選択処理により1の前記識別情報を選択する処理を行い,前記第2のコンテンツ選択処理において,前記通常選択処理と前記特殊選択処理により前記2以上の予め定められた数の前記識別情報を選択する処理を行うことを特徴とするサーバ装置。」 第3 申立理由の概要 1 理由1 主たる証拠として「特許第3222869号公報」(以下「刊行物1」という。),及び従たる証拠として「インターネット・アーカイブ『モンスターのお宝』 平成14年7月1日 公開URL http://web.archine.org/web/20020701065112/http:ff3.csidenet.com/central/kouryaku/monster_otakara.htm」(以下「刊行物等2」という。),特開2006-68221号公報(以下「刊行物3」という。)及び特開2004-105444号公報(以下「刊行物4」という。)を提出し,請求項1乃至11に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1乃至11に係る特許を取り消すべきものである。 2 理由2 請求項2に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではないから,本件の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号の規定を満たしておらず,請求項1乃至11に係る特許を取り消すべきものである。 第4 理由1について 1 刊行物の記載 (1)刊行物1には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。他の下線についても同じ。) ア「【0006】本発明は,上記の課題に鑑みなされたものであり,その目的は,携帯性を損なわずにカード等のゲーム媒体を用いたゲームが行えるゲーム情報配信システムおよび情報記憶媒体を提供することにある。」 イ「【0042】なお,このような携帯型の電話機を用いて表示可能な情報を提供するサービスとしては,例えば,株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモのiモードサービス等が実現されている。」 ウ「【0055】携帯電話200は,上述したように,操作部210と,操作部210からの操作情報を含む配信要求情報を送信し,ゲーム情報配信装置100からのゲーム情報を受信する送受信部290と,受信したゲーム情報を一時的に記憶する記憶部230と,記憶部230に記憶したゲーム情報を,ブラウザを用いて整形して液晶画面に表示する表示部220と,記憶部230に記憶したゲーム情報に基づき音声を出力する音声出力部222とを含んで構成されている。なお,音声出力部222は,受話部分である携帯電話200のスピーカー等により実現される。 【0056】なお,ここで,ゲーム情報とは,例えば,ゲームを実行するためのデータ,プログラム,データとプログラムが一体となったオブジェクト等を意味する。また,ゲーム情報は,ゲーム画像だけでなくゲーム音声を含んでもよい。 【0057】一方,ゲーム情報配信装置100は,携帯電話200からの配信要求情報を受信し,ゲーム情報やメールを送信する送受信部190と,受信した配信要求情報に基づき,どの携帯電話200が送信したかを識別し,記憶部120に記憶された携帯電話200用のユーザーデータ122を更新したり,ゲームの進行管理等を行う制御部112と,受信した配信要求情報に基づき,ゲーム情報を生成するゲーム情報生成部111と,メール生成部117とを含んで構成されている。 【0058】また,ゲーム情報生成部111は,ゲーム画像情報を生成する画像生成部113と,ゲーム音声情報を生成する音声生成部114とを含んで構成されている。 【0059】また,制御部112は,カードの管理等を行う管理部115と,対戦の勝敗を決定する勝敗決定部116とを含んで構成されている。 【0060】ゲーム情報生成部111,制御部112,メール生成部117は処理部110として一体化され,その機能は例えばCPU等により実現される。より具体的には,画像生成部113は,例えば,CGI(Common Gateway Interface)を用いたソフトウェアにより動的にゲーム画像ページを生成するように構成されている。また,音声生成部114は,例えば,音生成IC等により実現され,メール生成部117は,例えば,メール生成プログラム等により実現される。」 エ「【0063】ここで,上記情報としては,例えば,ゲーム情報生成部111,送受信部190等を実現する場合には,携帯電話200からの配信要求情報を送受信部190に受信させる手段と,受信した配信要求情報および記憶部120に記憶された後述するキャラクター情報を前記ゲーム媒体を表示するためのカードデータ121に基づき,ゲーム情報を生成するゲーム情報生成手段と,生成したゲーム情報を携帯電話200へ向け送信する手段とを実現するための情報を含む。」 オ「【0068】また,記憶部120には,カードを表示するための媒体データであるカードデータ121と,ユーザーIDやユーザーの所有しているカード情報等を含むユーザーデータ122と,カードの交換を行う場合に用いられる交換用データ123とが記憶される。次に,これらのデータについて説明する。」 カ「【0070】媒体データであるカードデータ121には,複数のキャラクター情報が記憶される。当該カードの属性を示すキャラクター情報としては,具体的には,カードのID,そのカードに対応するキャラクター等の名称,HP(ヒットポイント),MP(マジックポイント),有効な特殊効果,出現確率等が該当し,これらがカードデータ121の項目として用いられる。 【0071】なお,カードの種類としては,キャラクターカードと特殊効果カードがある。カードを用いた対戦を行う場合,所定枚数のカードを同時に使用し,HPやMP等の対戦用情報に基づき,勝敗が決定する。」 キ「【0074】例えば,図4に示すように,「法皇の緑」という名称のキャラクターカードを用いる場合に,「法皇の緑」にとって有利に作用する「地震」という名称の特殊効果カードを同時に用いることにより,「法皇の緑」の攻撃力が増し,勝負に有利になる。すなわち,複数のカードの相互作用により,攻撃力等が変化する。 【0075】これにより,プレーヤーは,最も戦力が大きくなるように,同時に使用する複数のカードの組み合わせを考えながらゲームを楽しむことができる。また,キャラクター情報が反映された画像が表示されたり,カードというなじみのあるゲーム媒体を適用することにより,プレーヤーにとって,親しみやすくのめり込みやすいゲームを行うことができる。 【0076】また,各カードには,出現確率がある。例えば,カードを購入してカードデータ121を用いる場合,出現確率に応じて配信されるカードが決定する。すなわち,出現確率の高いほど配信されやすくなっている。」 ク「【0099】画面410でプレーヤーが,例えば,「法皇の緑」というキャラクターカードを選択した場合,「法皇の緑を選択しました。 これでいいですか?」という確認用の画面412が携帯電話200の画面に表示される。 【0100】画面412でプレーヤーが「Yes」を選択すると,「あと2枚選択してください。」という選択用の画面414が携帯電話200の画面に表示される。 【0101】ここでは,キャラクターカードを3枚,特殊効果カードを1枚選択して対戦を行うものとする。」 ケ「【0104】画面420の「ゲームを始めますか?」という問いに対して,プレーヤーが操作部210を用いて「Yes」を選択すると,「送信中 対戦相手 検索中」という画面422が携帯電話200の画面に表示される。」 コ「【0111】勝敗決定のゲーム演算が終了,すなわち,対戦が終了すると,ゲーム情報生成部111は,勝敗決定部116の演算結果に基づき,ゲーム情報を生成する。携帯電話200は,このゲーム情報を受信し,画面に「対戦が終わりました。 ・法皇の緑 撃破 ・魔法使いの赤 撃破 ・銀の戦車 HP100 MP50負けました。」という画面432が表示される。」 サ「【0116】本実施例におけるカードの収集方法としては,購入による方法,対戦による方法等がある。 【0117】例えば,購入による方法の場合,図11(A)の「次のどのコースで始めますか?」という携帯電話200で表示される画面440で,プレーヤーはコースを選択する。 【0118】例えば,Basicコースであれば,¥100を支払うことにより,カードが5枚,Superコースであれば,¥200を支払うことにより,カードが10枚,Excellentコースであれば,¥300を支払うことにより,カード10枚とレアカード1枚が手に入る。 【0119】このように,高いお金を支払った人にはレアカードを与えるように構成することもできる。なお,ここで,レアカードとは,図4のカードデータ121の出現確率が例えば5%以下といった極めて低く,通常は手に入りにくいカードのことである。 【0120】また,通常のカードは,管理部115により,カードデータ121の出現頻度情報である出現確率に基づき,携帯電話200に配信するカードが決定される。 【0121】これによれば,配信されやすいキャラクター等と,配信されにくいキャラクター等が存在することになり,プレーヤーは,配信されにくい希少なキャラクター等を手に入れるため,熱中してゲームを行うため,ゲームを盛り上げることができる。」 刊行物1の上記記載事項を含め,刊行物1の全記載を総合すると,刊行物1には以下の事項(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 「携帯電話200は,操作部210と,操作部210からの操作情報を含む配信要求情報を送信し,ゲーム情報配信装置100からのゲーム情報を受信する送受信部290と,受信したゲーム情報を一時的に記憶する記憶部230と,記憶部230に記憶したゲーム情報を,ブラウザを用いて整形して液晶画面に表示する表示部220と,記憶部230に記憶したゲーム情報に基づき音声を出力する音声出力部222とを含んで構成され, ゲーム情報配信装置100は,携帯電話200からの配信要求情報を受信し,ゲーム情報やメールを送信する送受信部190と,受信した配信要求情報に基づき,どの携帯電話200が送信したかを識別し,記憶部120に記憶された携帯電話200用のユーザーデータ122を更新したり,ゲームの進行管理等を行う制御部112と,受信した配信要求情報に基づき,ゲーム情報を生成するゲーム情報生成部111と,メール生成部117とを含んで構成される処理部110として一体化され,その機能は例えばCPU等により実現され, ゲーム情報は,ゲームを実行するためのデータ,プログラム,データとプログラムが一体となったオブジェクト等を意味し, 記憶部120は,カードを表示するための媒体データであるカードデータ121と,ユーザーIDやユーザーの所有しているカード情報等を含むユーザーデータ122と,カードの交換を行う場合に用いられる交換用データ123とが記憶され, 各カードには,出現確率があって,カードを購入してカードデータ121を用いる場合,出現確率に応じて配信されるカードが決定し, 購入による方法の場合,携帯電話200で表示される画面440で,プレーヤーはコースを選択し, Basicコースであれば,¥100を支払うことにより,カードが5枚,Superコースであれば,¥200を支払うことにより,カードが10枚,Excellentコースであれば,¥300を支払うことにより,カード10枚とレアカード1枚が手に入り, レアカードとは,カードデータ121の出現確率が例えば5%以下といった極めて低く,通常は手に入りにくいカードのことであり, 通常のカードは,管理部115により,カードデータ121の出現頻度情報である出現確率に基づき,携帯電話200に配信するカードが決定されることで,配信されやすいキャラクター等と,配信されにくいキャラクター等が存在することになるゲーム情報配信システムにおけるプログラム。」 (2)刊行物等2には,以下の事項が記載されている。 シ「・モンスターとの戦闘後お宝を落とす事があります。お宝を持っているモンスターは予め設定されておりどんなアイテムを落とすかも確率が設定されています。」 ス「・モンスターの出現場所はスペースの都合上一カ所しか書いていませんが複数の場所で登場する事もあります。詳しくはモンスターデータを参照して下さい。」 セ 表の第1欄の上段の「エリクサー」は,「1.5%」との記載。 ソ 表の第1欄の下段に「ゴブリン,カーバンクル,ブルーウィスプ(祭壇の洞窟),ルフ(山頂へ続く道),リリパット(ネプト神殿),デュラハン(ハインの城)」の記載。 タ 表の第10欄の上段の「エリクサー」は,4.5%もしくは1.5%との記載。 チ 表の第10欄の下段に「あくまのうま,うしにんげん(魔方陣の洞窟),キングリザード(時の神殿),ガーブ(古代遺跡),バッサゴ(暗黒の洞窟),スレイプニル(エウレカ),ダークジェネラル(クリスタルタワー)」の記載。 ツ 上記セ及びタに記載の「エリクサー」は「お宝」のことであって,「1.5%」もしくは「4.5%」は,モンスターがアイテムを落とす確率といえる。 テ 上記ソ及びチに記載のうち「ゴブリン,カーバンクル,ブルーウィスプ」などはモンスターの名称,括弧内に記載された「(祭壇の洞窟)」などはモンスターの出現場所といえる。 刊行物等2の上記記載事項を含め,刊行物等2の全記載を総合すると,刊行物等2には以下の事項(以下,「刊行物等2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「複数の場所で登場する事もあるモンスターとの戦闘後,モンスターがお宝を落とす事があり,お宝を持っているモンスターは予め設定されており,モンスターがどんなアイテムを落とすかについての確率も設定されており,第1欄の下段に記載されたモンスターが所定の場所で,お宝「エリクサー」を落とす確率は1.5%であって,第10欄の下段に記載されたモンスターが所定の場所で,お宝「エリクサー」を落とす確率は4.5%もしくは1.5%である。」 (3)刊行物3には,図面とともに,以下の事項が記載されている。 ト「【0061】 このメダルゲーム装置10は,メダルプッシャーゲームを行うもので,図1の正面から見た斜視図に示すように,筐体12内の正面上部にゲーム盤面14が設けられ,このゲーム盤面14の下端位置に前後方向で往復移動を行うプッシャープレート16を有するメダル載置用のゲームフィールド18が設けられている。」 ナ「【0089】 ここで抽選イベント処理部112は,前記コマの位置又は移動軌跡が所定の条件を満たしたか否か判断し,所定の条件を満たした場合には抽選イベントを発生させ,ペイアウト率に基づき抽選イベントの抽選確率を決定して抽選処理を行い,抽選結果に基づき遊技媒体の払い出し決定処理を行う。」 ニ「【0168】 Z=F(H,I,E,N) ここでHは実際のペイアウト率(リアルタイムに演算されるペイアウト率),Iは設定ペイアウト率(システムで設定している予定ペイアウト率),Eは移動パネルに乗らず消費したチャッカー数であり,Nは現在出現しているミニ移動パネル個数である。またFはパラメータH,I,E,Nに基づきZを求めるための関数である。 【0169】 そしてアイテム出現パラメータZに応じてミニ移動パネルの発生確率を決定し,ミニ移動パネルの発生を制御する。アイテム出現パラメータZに応じたミニ移動パネルの発生確率は,予めさだめた関数等やアルゴリズムを用いて演算して求めてもよいし,予め用意したテーブルを参照して求めるようにしてもよい。 【0170】 図10はアイテム出現パラメータ(Z)とアイテムの出現確率を表したアイテム発生確率テーブルの一例である。 【0171】 予め図10に示すようなアイテム発生確率テーブル410を用意しておき,当該アイテム発生確率テーブル410を参照して,リアルタイムに演算されるアイテム出現パラメータ(ペイアウト率やゲーム状況でもよい)に対応したにアイテム(この場合ミニ移動パネル)の出現確率414を求めるようにしてもよい。 【0172】 なおアイテム発生確率テーブル410は,例えばアイテム毎に用意しておくようにしてもよい。また1つのアイテムについて複数用意しておき,ゲーム状況や設定モード等に応じて切り替えて参照するようにしてもよい。」 刊行物3の上記記載事項を含め,刊行物3の全記載を総合すると,刊行物3には以下の事項(以下,「刊行物3発明」という。)が記載されていると認められる。 「予めアイテム出現パラメータ(Z)とアイテムの出現確率を表したアイテム発生確率テーブルを用意し,当該アイテム発生確率テーブルを参照して,リアルタイムに演算されるアイテム出現パラメータに対応したにアイテムの出現確率を求めるメダルゲーム装置。」 (4)刊行物4には,図面とともに,以下の事項が記載されている。 ヌ「【0006】 【課題を解決するための手段】 (1)本発明は,複数の端末がネットワークを介して接続されてオンラインゲームを行うゲームシステムであって, 所与の時間ごとに,前記オンラインゲームへの前記端末のログイン数と,ゲーム空間上における前記オンラインゲームにログインしている端末のプレーヤが操作するプレーヤキャラクタと異なる他のゲーム資源の数と,を取得する手段と,前記ログイン数及び前記他のゲーム資源の数に関連付けて,前記他のゲーム資源の数を変更するゲーム資源調整処理を行う手段と, を含むことを特徴とする。」 ネ「【0009】 本明細書において,「ログイン数」とは,例えば,オンラインネットワークゲームに参加しているプレーヤの数と同義であり,少なくともオンラインネットワークゲームにおけるゲーム空間上にプレーヤキャラクタが存在している状態で足りる。 【0010】 また,「他のゲーム資源」とは,例えば,ゲーム空間に登場するコンピュータキャラクタやアイテムなど,オンラインゲームに参加するプレーヤがゲームプレイ中に利用可能なものを意味する。」 ノ「【0011】 本発明によれば,オンラインネットワークゲームにログインしているプレーヤの数と他のゲーム資源の数との関係において他のゲーム資源の数を変更することによって両者の数的関係を調整する。 【0012】 例えば,プレーヤのログイン数に比して他のゲーム資源の数が少ない場合には,他のゲーム資源の数が不足してプレーヤが満足にゲームを楽しむことができない。そこで,かかる場合には,他のゲーム資源の数を増やす処理を行うことで,ゲームのバランスを調整することができる。」 刊行物4の上記記載事項を含め,刊行物4の全記載を総合すると,刊行物4には以下の事項(以下,「刊行物4発明」という。)が記載されていると認められる。 「オンラインネットワークゲームにログインしているプレーヤの数と,ゲーム空間に登場するコンピュータキャラクタやアイテムなど,オンラインゲームに参加するプレーヤがゲームプレイ中に利用可能なものである他のゲーム資源の数との関係において他のゲーム資源の数を変更することによって両者の数的関係を調整,例えば,プレーヤのログイン数に比して他のゲーム資源の数が少ない場合には,他のゲーム資源の数を増やす処理を行うことで,ゲームのバランスを調整するオンラインゲームを行うゲームシステム。」 2 対比・判断 (1)請求項1に係る発明について 本件特許発明1と刊行物1発明とを対比する。 後者の「カード」は,前者の「コンテンツ」に相当する。 同様に,「ユーザー」は「ユーザー」に, 「プログラム」は「プログラム」に, 「記憶部120」は「記憶部」に相当する。 後者の「操作部210からの操作情報」は,ユーザーによる操作のことであるから,前者の「操作情報」に相当する。 後者の「カードを表示するための媒体データであるカードデータ121」は,カードの種類毎に対応していることは明らかであるから,前者の「コンテンツに対応する識別情報」に相当する。 後者のカードデータ121は,カードの種類によって出現確率に差があることを踏まえると,後者のカードデータ121のうち,レアカードカードの「カードデータ121」と,通常のカードの「カードデータ121」は,前者の「特殊コンテンツに対応する識別情報」及び「特殊コンテンツを除いた複数種類のコンテンツに対応する識別情報」に,それぞれ相当するといえる。 後者は,プレーヤーによるコースの選択に応じて,プレーヤーに配信する複数枚のカードの組み合わせを決定しているのであるから,前者の「コンテンツ選択部」及び「コンテンツ提供部」に相当する構成を有していることは明らかである。 後者のゲーム情報配信装置100は,「携帯電話200からの配信要求情報を受信し,ゲーム情報やメールを送信する送受信部190と,受信した配信要求情報に基づき,どの携帯電話200が送信したかを識別し,記憶部120に記憶された携帯電話200用のユーザーデータ122を更新したり,ゲームの進行管理等を行う制御部112と,受信した配信要求情報に基づき,ゲーム情報を生成するゲーム情報生成部111と,メール生成部117とを含んで構成される処理部110として一体化され,その機能は例えばCPU等により実現」されており,さらに前者の「記憶部,コンテンツ選択部,コンテンツ提供部」に相当する構成を有しているのであるから,後者の「プログラム」は,前者と同様に「記憶部,コンテンツ選択部,コンテンツ提供部としてコンピュータを機能」させていることは自明である。 以上のことより,両者は, 〈一致点〉 「所与のコンテンツをユーザーに提供するためのプログラムであって, 特殊コンテンツを含む複数種類のコンテンツを記憶する記憶部と, ユーザーの操作情報に基づいて,コンテンツ選択処理を行うコンテンツ選択部と, コンテンツ選択処理により選択されたコンテンツを前記ユーザーに提供するコンテンツ提供処理と,を行うコンテンツ提供部としてコンピュータを機能させ, 前記コンテンツ選択部が,予め定められた数の前記識別情報を選択する処理を行うプログラム。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 <相違点> 相違点1 コンテンツの選択と提供に関し,本件特許発明1では「1のコンテンツを選択する処理を行う第1のコンテンツ選択処理」に対応した「第1のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツをユーザーに提供する第1のコンテンツ提供処理」と,「2以上の予め定められた数のコンテンツを選択する第2のコンテンツ選択処理」に対応した「第2のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツをユーザーに提供する第2のコンテンツ提供処理」を行っているのに対して,刊行物1発明ではカードを購入するコースの選択はあるから,複数のコースが用意されているといえ,該コースに対応した「選択処理及び提供処理」が行われているといえるが,本件特許発明1のような「第1のコンテンツ選択処理及び第2のコンテンツ選択処理」,「第1のコンテンツ提供処理及び第2のコンテンツ提供処理」」ではない点。 相違点2 記憶部に関し,本件特許発明1では「複数種類のコンテンツに対応する識別情報が格納された通常テーブル及び特殊テーブルを記憶」し,「特殊テーブルには,特殊コンテンツに対応する識別情報が前記通常テーブルよりも多い割合で格納」され,「通常テーブルから識別情報を選択する通常選択処理」と,「特殊テーブルから識別情報を選択する特殊選択処理」が存在し,「第1のコンテンツ選択処理」は,「通常選択処理により1の識別情報を選択する処理」を行うものであり,「第2のコンテンツ選択処理」は,「通常選択処理と特殊選択処理により2以上の予め定められた数の識別情報を選択する処理」を行うものであるのに対して,刊行物1発明の記憶部は,「テーブル」を有しておらず,通常テーブルから識別情報を選択する「通常選択処理」も,特殊テーブルから識別情報を選択する「特殊選択処理」も行っていない点。 上記相違点について検討する。 相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項,つまり「『1のコンテンツを選択する処理を行う第1のコンテンツ選択処理』に対応した『第1のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツをユーザーに提供する第1のコンテンツ提供処理」と,『2以上の予め定められた数のコンテンツを選択する第2のコンテンツ選択処理』に対応した『第2のコンテンツ選択処理により選択されたコンテンツをユーザーに提供する第2のコンテンツ提供処理』」について,刊行物等2記載事項、刊行物3及び4発明のいずれにも記載されておらず,上記の発明特定事項が,この技術分野において設計的事項であるとも,周知事項であるとも認める事はできない。 なお,この点について,特許異議申立書において何らの主張もない。 したがって,請求項1に係る発明は,上記刊行物1発明及び刊行物等2記載事項、刊行物3及び4発明に記載された発明から当業者が容易になし得たものではない。 相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項,つまり「『複数種類のコンテンツに対応する識別情報が格納された通常テーブル及び特殊テーブルを記憶』し,『特殊テーブルには,特殊コンテンツに対応する識別情報が前記通常テーブルよりも多い割合で格納』され,通常テーブルから識別情報を選択する『通常選択処理』と,特殊テーブルから識別情報を選択する『特殊選択処理』が存在し,『第1のコンテンツ選択処理』は,『通常選択処理により1の識別情報を選択する処理』を行うものであり,『第2のコンテンツ選択処理』は,『通常選択処理と特殊選択処理により2以上の予め定められた数の識別情報を選択する処理』を行う」ことについて,刊行物等2記載事項、刊行物3及び4発明のいずれにも記載されておらず,上記の発明特定事項が,この技術分野において設計的事項であるとも,周知事項であるとも認める事はできない。 なお,異議申立人は,この点について,ソフトウェアの設計において「テーブル」が至極一般的であり技術常識であり,刊行物等2の「データセット」,刊行物3の「アイテム発生確率テーブル」が「テーブル」相当することは明らかであるから,当業者が容易に想到可能である旨主張している。(特許異議申立書第22頁第6行?第25頁第6行) しかしながら,ソフトウェアの設計において「テーブル」が至極一般的であり技術常識であること,刊行物等2の「データセット」,刊行物3の「アイテム発生確率テーブル」が「テーブル」相当することが認められるとしても,複数のテーブルのそれぞれに何を格納するかについてまでは,一般的とも技術常識ともいえず,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項のようにテーブルに格納することについて,刊行物等2及び3には記載も示唆もなく,かかる主張は理由がない。 そして,本件特許発明1は,当該発明特定事項によって,第1のコンテンツ選択処理よりも第2のコンテンツ選択処理の方が,特殊コンテンツを得るという観点でユーザーに有利となるという顕著な効果を奏しているものである。 (2)請求項2乃至10に係る発明について 請求項2乃至10に係る発明は,請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから,上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により,上記刊行物1発明、刊行物等2記載事項、刊行物3及び4発明から当業者が容易になし得たものではない。 (3)請求項11に係る発明について 請求項11に係る発明は,請求項1に係る発明と末尾が異なるだけで実質的に同じ内容の発明であるから,上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により,上記刊行物1発明、刊行物等2記載事項、刊行物3及び4発明から当業者が容易になし得たものではない 3 小括 以上のとおり,請求項1乃至11に係る発明は,刊行物1発明及び刊行物等2記載事項、刊行物3及び4発明から当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定に違反したものではない。 第5 理由2について 1 判断 本件特許発明2における「前記コンテンツ選択部が,前記第2のコンテンツ選択処理において,前記通常選択処理と前記特殊選択処理とを行う割合を変化させる」点については,異議申立人が主張しているように,本願明細書の段落【0076】に明瞭に記載されているとはいえないものの,同段落【0078】には「なお第2のコンテンツ選択処理において,通常選択処理と特殊選択処理とを行う割合は動的に変化させることができる。」と明瞭に記載されているから,請求項2に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。 2 小括 以上のとおり,請求項2に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであるから,本件の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号の規定を満たしている。 第6 むすび したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1乃至11に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1乃至11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-12-05 |
出願番号 | 特願2014-168435(P2014-168435) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(A63F)
P 1 651・ 121- Y (A63F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 彦田 克文 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 畑井 順一 |
登録日 | 2017-02-24 |
登録番号 | 特許第6096154号(P6096154) |
権利者 | 株式会社バンダイナムコエンターテインメント エヌエイチエヌ エンターテインメント コーポレーション NHN comico株式会社 |
発明の名称 | プログラム、及びサーバ装置 |
代理人 | 大渕 美千栄 |
代理人 | 布施 行夫 |
代理人 | 布施 行夫 |
代理人 | 大渕 美千栄 |
代理人 | 大渕 美千栄 |
代理人 | 布施 行夫 |