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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K |
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管理番号 | 1335461 |
審判番号 | 不服2017-2627 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-23 |
確定日 | 2018-01-09 |
事件の表示 | 特願2012-281952「感冒薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開、特開2013-151486、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月26日(優先権主張平成23年12月27日)の出願であって、平成28年5月30日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年9月27日付けで手続補正がされ、平成28年11月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1 本願請求項8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2001-199882号公報 2.特開2011-246433号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正(以下「補正」という。)は、当該補正前の請求項2,3,6,8を削除するとともに、補正前の請求項1に「(c)メキタジン及び/又はフェキソフェナジンから選ばれる1種以上を」とあるのを「(c)フェキソフェナジンを」に変更して特許請求の範囲を減縮するものであるから、補正が新規事項を追加するものでなく、特許法第17条の2第5項に掲げられた事項を目的することは明らかである。 そして、「第4 本願発明」から「第6 本願発明1、2について」までに示すように、補正後の請求項1に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 第4 本願発明 1.本願発明 本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成29年2月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (a)ロキソプロフェン、(b)カフェイン、及び、(c)フェキソフェナジンを含有する感冒薬組成物(但し、ロキソプロフェンナトリウム、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エピナスチン、dl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソール及び無水カフェインを含有する感冒用組成物及びその液剤を除く)。 【請求項2】 ロキソプロフェンによる胃粘膜障害を軽減することを特徴とする、請求項1に記載の感冒薬組成物。 【請求項3】 (a)ロキソプロフェン、(b)カフェイン、及び(c)エピナスチンを含有する、胃粘膜障害が軽減された感冒薬組成物(但し、ロキソプロフェンナトリウム、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エピナスチン、dl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソール及び無水カフェインを含有する感冒用組成物及びその液剤を除く)。 【請求項4】 フェキソフェナジン及びカフェインを含有する、胃粘膜障害が軽減されたロキソプロフェン製剤。」 2.本願発明の効果 本願の明細書には、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 ロキソプロフェンはプロドラッグであるため、胃粘膜障害は他のNSAIDに比べて少ないと考えられているが、それでも胃粘膜障害は存在する。一方で、NSAIDの薬効を増強するためにカフェインを配合する技術は公知であるが、ロキソプロフェンにカフェインを併用した場合、ロキソプロフェンによる胃粘膜障害が軽減されないという課題は本発明者によって見出された。 すなわち、本発明の課題はロキソプロフェンとカフェインを含有した場合の胃粘膜障害を軽減する技術を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 ロキソプロフェンにカフェインを併用した場合における胃粘膜障害の軽減方法を鋭意探索する中で、抗ヒスタミン薬のうち、メキタジン、エピナスチン又はフェキソフェナジンを含有させた場合に限って、当該胃粘膜障害が顕著に抑制できるという驚くべき事実を見出し、本発明を完成するに至った。」 「【0025】 (試験例)抗潰瘍効果試験 (1)被検物質 ロキソプロフェンナトリウム・2水和物は第一三共製のものを、無水カフェインは東京化成工業製のものを、クロルフェニラミンマレイン酸塩は金剛化学製のものを、メキタジンは和光純薬工業製のものを、エピナスチン塩酸塩は東京化成工業製のものを、フェキソフェナジン塩酸塩はアミノケミカル製のものをそれぞれ使用した。 被験物質はトガラント(SIGMA製)を注射用水(大塚製薬製)に溶解した0.5%トガラント溶液中に懸濁させて調整した。 (2)使用動物 Slc:Wistar/ST雄性ラット7週齢(日本エスエルシー)を5日間の検疫及び2日間の馴化後に使用した。動物は温度20-26℃、湿度40-70%、照明時間6-18時に制御されたラット飼育室内で個別飼育した。固形試料(オリエンタル酵母工業ラット用固形飼料、CRF-1)および水道水を自由に摂取させ、1週間予備飼育した後、毛並、体重増加などの一般症状の良好な動物を選別して供試した。 (3)試験方法 18時間以上絶食したラットに、ディスポーザブルラット用経口ゾンデ(フチガミ器械製)を取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒(テルモ製)を用いて、被験物質を経口投与した。なお、被験物質はマグネチックスターラーを用いて攪拌しながら使用した。 被験物質投与後5時間に、20%イソフルラン軽麻酔下での頚椎脱臼により動物を安楽死させ、速やかに胃を摘出し、内部に生理食塩液を10mL充填後、1%ホルマリンに浸して翌日まで固定する。 固定した胃を大湾に沿って切開し、デジタルノギスを用いて胃粘膜傷害の長さを測定す る。個体の胃粘膜傷害の長さは、長径を計測しそれらの総和(傷害総長)を算出した。 (4)試験結果 上述の課題を解決したものが以下の結果である。 ロキソプロフェン(L)及び無水カフェイン(C)に、抗ヒスタミン薬乃至抗アレルギー薬のクロルフェニラミンマレイン酸塩(CP)、メキタジン(MQ)、エピナスチン塩酸塩(EP)、フェキソフェナジン塩酸塩(FX)をそれぞれ併用した場合の結果を表4に示す。なお、いずれの投与群も1群6匹の平均値であり、胃粘膜障害抑制率(%)は、ロキソプロフェンとカフェインを併用した場合を基準に、次式により求めた。 【0026】 【数1】 【0027】 (表3) 被験薬(mg/Kg) 胃粘膜障害抑制率% ?????????????????????????????? L(80)+C(27) 0 L(80)+C(27)+MQ(10) 41 L(80)+C(27)+EP(20) 39 L(80)+C(27)+FX(80) 38 L(80)+C(27)+CP(10) -1 ?????????????????????????????? 【0028】 表3より、ロキソプロフェンとカフェインに、抗ヒスタミン乃至抗アレルギー薬をさらに併用しても、一意的に胃粘膜障害が軽減されるわけではなく、特定の成分、メキタジン(MQ)、エピナスチン(EP)、フェキソフェナジン(FX)においてのみ軽減されることが判明した。 【0029】 以上、メキタジン、エピナスチン又はフェキソフェナジンを含有させると、ロキソプロフェンにカフェインを併用した場合の胃粘膜傷害が著しく軽減されるという驚くべき知見が得られた。」 これらの記載から、本願発明は、ロキソプロフェンとカフェインに、フェキソフェナジン又はエピナスチンを併用することによって、ロキソプロフェンにカフェインを併用した場合の胃粘膜傷害が他の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を併用した場合に比べて著しく軽減されるという効果を有するといえる。 第5 引用文献の記載 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由の引用文献1には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 下記(a)および(b)を配合してなる感冒・鼻炎用組成物。 (a)ロキソプロフェン類 (b)抗アレルギー薬および抗ヒスタミン薬からなる群から選ばれる少なくとも1種」 「【請求項7】 (b)成分がエピナスチンまたはその塩類であり、(a)成分1重量部に対する(b)成分の配合量が0.05?0.5重量部である請求項1記載の感冒・鼻炎用組成物。」 「【0008】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、目的を達成するために種々検討した結果、有効成分としてロキソプロフェンおよび抗アレルギー薬または抗ヒスタミン薬を同時に配合することにより、鼻粘膜の炎症症状(鼻閉など)の除去あるいは軽減に対し劇的な効果が発現することを見い出し、本発明を完成した。 【0009】すなわち本発明は、(a)ロキソプロフェン類、(b)抗アレルギー薬または抗ヒスタミン薬を配合してなる感冒および鼻炎用組成物である。」 「【0011】本発明で抗アレルギー薬または抗ヒスタミン薬としては、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、ケトチフェン、メキタジン、エピナスチン並びにこれらの塩類などが好ましい。ここで塩類とは、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などがあげられる。」 「【0016】本発明の感冒・鼻炎用組成物を製造するときには、必要に応じて他の非ステロイド性抗炎症薬、消炎酵素薬類、気管支拡張薬、中枢神経興奮薬、鎮咳薬、去痰薬、他の抗ヒスタミン薬、他の抗アレルギー薬、抗コリン薬、ビタミン類、制酸薬、生薬などを配合することもできる。」 「【0021】実施例4 pH調整剤(リン酸緩衝液)を溶解した水溶液(pH=4.5)に、防腐剤、甘味剤および香料を加え完全に溶解した。その溶液にショ糖脂肪酸エステルを均一に分散した後、ナプロキセンおよびその他の薬剤を加え溶解させた後、精製水を加えて全量を1000mlにして液剤を得た。 ロキソプロフェンナトリウム 120g リン酸ジヒドロコデイン 24g 塩酸エピナスチン 20g dl-塩酸メチルエフェドリン 60g 塩酸アンブロキソール 45g 無水カフェイン 75g ビタミンB1硝酸塩 8g ビタミンB2 4g ショ糖脂肪酸エステル 15g マンニトール 15g ステビア 10g アミノ安息香酸エチル 5g オレンジフレーバー 0.8g」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由の引用文献2には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 ロキソプロフェン又はその塩、及び抗ヒスタミン剤を含有する医薬組成物。」 「【請求項10】 抗ヒスタミン剤を有効成分とするロキソプロフェン又はその塩に起因する消化管障害の軽減又は抑制剤。 【請求項11】 抗ヒスタミン剤を有効成分とする非ステロイド性消炎鎮痛剤に起因する消化管障害の軽減又は抑制剤。」 「【0009】 本発明者らは、ロキソプロフェン又はその塩の消化管障害の軽減・抑制について鋭意検討したところ、ロキソプロフェン又はその塩と、抗ヒスタミン剤とを併用すると、ロキソプロフェン又はその塩に起因する消化管障害を軽減又は抑制できることを見出し、本発明を完成した。」 「【0016】 本発明の医薬組成物に含まれる抗ヒスタミン剤の好適な具体例としては、・・・等が挙げられる。 これらの中でも、アゼラスチン塩酸塩、エバスチン、エピナスチン塩酸塩、エメダスチンフマル酸塩、オキサトミド、オロパタジン塩酸塩、カルビノキサミンジフェニルジスルホン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、セチリジン塩酸塩、フェキソフェナジン、ベポタスチンベシル酸塩、メキタジン、ロラタジンが好ましく、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、メキタジンが特に好ましい。」 第6 本願発明1、2について 1.引用発明1 引用文献1の【請求項1】、【請求項7】、【0008】、【0009】、【0021】の記載から、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 <引用発明1> ロキソプロフェンナトリウム120g、無水カフェイン75g、塩酸エピナスチン20g、リン酸ジヒドロコデイン24g、dl-塩酸メチルエフェドリン60g、塩酸アンブロキソール45gを含有する感冒・鼻炎用組成物 2.対比・判断 (1)対比 本願明細書の【0014】には、「本発明のロキソプロフェンは、ロキソプロフェンナトリウム水和物として第16改正日本薬局方に掲載されている。また、メキタジン、フェキソフェナジン塩酸塩、無水カフェイン及びカフェイン水和物も第16改正日本薬局方に収載されている。本発明のエピナスチン塩酸塩も、市販されており容易に入手できる。」と記載されているから、引用発明1の「ロキソプロフェンナトリウム」、「無水カフェイン」は、それぞれ本願発明1の「ロキソプロフェン」、「カフェイン」に相当する。 また、引用発明1の「感冒・鼻炎用組成物」が本願発明の「感冒薬組成物」に相当することは明らかである。 そして、引用文献1の【0011】の記載や、エピナスチンが抗ヒスタミン剤として周知であること、本願明細書の【0011】に「抗ヒスタミン薬のうち、メキタジン、エピナスチン又はフェキソフェナジンを含有させた場合に限って」と記載されていることから、引用発明1の「塩酸エピナスチン」と本願発明1の「フェキソフェナジン」は、いずれも「抗ヒスタミン剤」であるといえる。 そうすると、引用発明1は本願発明1とは、「ロキソプロフェン、カフェイン、及び、抗ヒスタミン剤を含有する感冒薬組成物」という点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明1では抗ヒスタミン剤がフェキソフェナジンであるのに対し、引用発明1では抗ヒスタミン剤が塩酸エピナスチンである点。 <相違点2> 本願発明1では、ロキソプロフェンナトリウム、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エピナスチン、dl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソール及び無水カフェインを含有する感冒用組成物及びその液剤を除くとされているのに対し、引用発明1では、ロキソプロフェンナトリウム、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エピナスチン、dl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソール及び無水カフェインを含有する感冒用組成物である点。 (2)相違点についての判断 まず、相違点1について検討する。 引用文献1の【0011】には、抗ヒスタミン剤についてエピナスチンと並んで、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、ケトチフェン、メキタジンが挙げられている一方でフェキソフェナジンは挙げられていないから、引用発明1において塩酸エピナスチンをフェキソフェナジンに置換することは、引用文献1の記載に基き当業者が容易に想到し得たとはいえない。 また、引用文献1の【0016】には、他の抗ヒスタミン剤を加えてもよいことが記載されているものの、数多くある抗ヒスタミン剤の中からフェキソフェナジンを選択することは記載も示唆もされていないから、引用発明1においてフェキソフェナジンを加えることも、引用文献1の記載に基き当業者が容易に想到し得たとはいえない。 一方、引用文献2の【請求項1】、【請求項10】、【請求項11】、【0009】には、ロキソプロフェンに抗ヒスタミン剤を併用することによって、ロキソプロフェンによる消化管障害を低減できることが記載されており、同【0016】には、好ましい抗ヒスタミン剤としてフェキソフェナジンも挙げられているものの、同段落には特に好ましい抗ヒスタミン剤として「カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、メキタジン」と記載されていることから、仮に引用発明1において消化管障害を軽減することが自明の課題であったとしても、引用文献2の記載に接した当業者が抗ヒスタミン剤としてフェキソフェナジンを選択して引用発明1に加える動機付けは乏しい上、本願発明1は、第4で説示したとおり、ロキソプロフェンとカフェインに、フェキソフェナジン又はエピナスチンを併用することによって、ロキソプロフェンにカフェインを併用した場合の胃粘膜傷害が他の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を併用した場合に比べて著しく軽減されるという効果を有するものであるところ、当該効果は、引用文献1,2のいずれにも記載も示唆もされていないから、相違点1は引用文献1,2の記載や技術常識に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1と引用文献1,2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3.本願発明2について 本願発明2は本願発明1をさらに「ロキソプロフェンによる胃粘膜障害を軽減すること」という作用によって特定したものであるが、2.で説示したとおり、本願発明1は、引用発明1と引用文献1,2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本願発明2も引用発明1と引用文献1,2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 本願発明3について 1.対比 本願発明3と引用発明1とを対比すると、両発明は「ロキソプロフェン、カフェイン、及びエピナスチンを含有する、感冒薬組成物」である点で一致し(詳細については第6の1.を参照。)、以下の点で相違する。 <相違点3> 本願発明3は胃粘膜障害が軽減された感冒薬組成物であるのに対し、引用発明1は胃粘膜障害が軽減されることが特定されていない点。 <相違点4> 本願発明3は「ロキソプロフェンナトリウム、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エピナスチン、dl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソール及び無水カフェインを含有する感冒用組成物及びその液剤を除く」とされているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 2.相違点についての判断 <相違点3について> 本願請求項3の「胃粘膜障害が軽減された」との記載は、「(a)ロキソプロフェン、(b)カフェイン、及び(c)エピナスチンを含有する、感冒薬組成物(但し、ロキソプロフェンナトリウム、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エピナスチン、dl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソール及び無水カフェインを含有する感冒用組成物及びその液剤を除く)」が有している作用を単に記載したものであって、感冒薬組成物の具体的な組成や用途を特定するものではないから、相違点3は実質的な相違点ではない。 <相違点4について> 引用文献1の【0021】に記載された実施例4は、同【請求項1】に記載された感冒・鼻炎用組成物の具体的な例であり、当該具体的な例の問題点等についての記載があるわけでもない。また、仮に、医薬品において同じ作用を有する成分同士は置換可能であるとの周知技術が存在するとしても、引用発明においてはリン酸ジヒドロコデインやdl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソールがどのような作用を期待されている成分であるか明記されていないため、当業者がこれらの成分を他の成分で置換することを着想し得たとはいえない。さらに、仮に、同文献の【0016】の記載から、引用発明1のリン酸ジヒドロコデイン及びdl-塩酸メチルエフェドリンは鎮咳剤、塩酸アンブロキソールは去痰剤、カフェインは中枢神経興奮剤としてそれぞれ含まれていると認識できるとしても、引用発明1において上記周知技術を適用するにあたっては、リン酸ジヒドロコデインやdl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソールだけでなく、エピナスチンとカフェインも置換可能な対象であるといえるから、引用発明1において、エピナスチンとカフェインとの組合せを残したまま、リン酸ジヒドロコデイン及びdl-塩酸メチルエフェドリン、塩酸アンブロキソールのみを成分を他の鎮咳剤や去痰剤に置換する選択をすることは、当業者が容易に為し得たこととはいえない。 そして、第4の2.で説示したとおり、本願発明3は、ロキソプロフェンとカフェイン、エピナスチンを併用することによって、ロキソプロフェンにカフェインを併用した場合の胃粘膜傷害が他の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を併用した場合に比べて著しく軽減されるという、引用文献1,2の記載から予測できない効果を有するものである。 そうすると、相違点4は、引用文献1,2の記載や技術常識に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、本願発明3は、引用発明1と引用文献1,2に記載された事項や技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第8 本願発明4について 1.対比 引用発明1はロキソプロフェンを含有する医薬品製剤であるから、本願発明4と引用発明1は「抗ヒスタミン剤及びカフェインを含有する、ロキソプロフェン製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5> 本願発明4では抗ヒスタミン剤がフェキソフェナジンであるのに対し、引用発明1では抗ヒスタミン剤が塩酸エピナスチンである点。 <相違点6> 本願発明4は胃粘膜障害が軽減されたロキソプロフェン製剤であるのに対し、引用発明1は胃粘膜障害が軽減されることが特定されていない点。 2.相違点についての検討 相違点5は相違点1と同じ内容であるから、第6の2.で説示したとおり、引用文献1,2の記載や技術常識に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない(なお、相違点6は相違点3と同じ内容であるから、第7の2.で説示したとおり、実質的な相違点とはいえない。)。 したがって、本願発明4は、引用発明1と引用文献1,2に記載された事項や技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第9 原査定について 原査定の理由1は、請求項8に係る発明を対象とするものであるが、第3に記載したとおり、当該請求項8は審判請求時の補正により削除されたから、原査定の理由1は維持することができない。 また、第3から第8で説示したとおり、本願請求項1?4に係る発明は、いずれも引用発明1と引用文献1,2に記載された事項や技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由2も維持することはできない。 第10 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-12-12 |
出願番号 | 特願2012-281952(P2012-281952) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山中 隆幸、渡部 正博 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
山本 吾一 前田 佳与子 |
発明の名称 | 感冒薬組成物 |
代理人 | 石橋 公樹 |
代理人 | 竹元 利泰 |